「IR」と一致するもの

interview with Tatsuhiko Nakahara - ele-king

 さて、今回の主役はアーティストではない。イヴェンターである。いっぷう変わったスタイルで注目を集めるライヴ・イヴェント〈月刊ウォンブ!〉(https://gekkanwomb.com/index.html)の企画者、仲原達彦氏に話をきかせてもらった。
 音楽産業の昨今をめぐっては、CDなどのフィジカル・リリースが苦戦をつづけるのに対し、大型ライヴ・イヴェントへの動員が増えているといった話が好んで取りあげられるが、仲原はそうした産業構造の変化を捉え颯爽とイヴェント業界に新規参入を果たした風雲児......とかではない。彼が活動するのは、もっと地味で、もっと儲からないフィールドだ。しかもその規模については、当人が明確に「自分の目の届く範囲」という限定を加えている。筆者がおもしろいと思ったのはこの独特の尺度である。

 仲原が企画するイヴェントは、アーティストありきの公演スタイルではなく、そこにひとつの場所性を生むことを優先するものであるように見える。たとえば〈月刊ウォンブ!〉は月1開催・12回完結という異色のライヴ・サーキットだが、この連続性のなかで〈ウォンブ〉はまるで場所のように機能しはじめる。毎月そこに行く。行くとこのイヴェントのコンセプトをゆるやかに共有した他のリスナーがいる。「○○が出るから観にいく」というよりも〈ウォンブ〉に行く、という感覚が芽生えはじめている印象だ。趣味のコミュニティのような雰囲気に近いかもしれないが、もちろん会員制などではないし、どんな動機で観にいってもかまわない、かつ出演者のタイプも多彩だから、ほどよい流動性と距離が保たれる。それぞれにとっての「行きつけ」となる可能性が入口に横たわっている。

 また、そこに集まる客とアーティストとオーガナイザーという三角形のなかで、やりたいことや金や充実感などがストレスなく回るような、三方一両得なシステムが模索されているようにも感じられる。詳しくは以下のインタヴューを読んでいただきたい。アートや音楽とそのマネタイズにまつわる問題は根深いが、それぞれに理想的な状態や条件を捨てずに運営できるサイズと方法が、たとえば〈ファクトリー〉のころには無理でも、いまならあるかもしれない。(こうしたことに異なった立場と方法で取り組んでいるひとりには、たとえば〈マルチネ〉のtomad氏などがいる。※ele-king vol.7参照)

 ......等々ということがらが、仲原の言う「自分の目の届く範囲」においてなら可能なのではないか。もちろん、仲間内のサークル活動ならば同様の動機によって発想されたものがほとんどだろう。しかし、商業的なイヴェントにこの単位を持ち込むのは難しい。両者は背反する原理を持っている。そのフィールドのなかで「自分の目の届く範囲」だからこそ守り、豊かにすることのできるものを、仲原ははっきりとつかまえている。そしてそうしたものが大切にされていること自体が、じつにいまらしい価値観であると感じられる。大規模イヴェントひとつの価値に、こうしたイヴェントひとつの価値が劣るということはない。むろんどちらにもそれぞれの楽しみがあり、欠点もあるだろう。単純に比べることはできないのだが、音楽イヴェントが提供できるもののなかで、音楽以外の部分が持っているたくさんの可能性について、彼らの活動はまだまだ多くを示唆している。

 仲原は大学在学中から複数のイヴェントを形にし、年若くして企画力も行動力も持ち、何よりも活動の根本にはっきりとコンセプトや理念を据えている青年だ。東京では毎夜たくさんの音楽イヴェントが開かれていて、そこにはさまざまなイヴェンターの思いや苦闘や工夫が、同じだけさまざまな形態と規模をもって展開されているわけだが、その一隅で芽吹きはじめた彼と彼らの活動に注目してみたい。

 では長くなりましたが、どうぞ本文を。収録は〈ウォンブ〉の第2回が行われた2月末。すでに第3回が行われた後のタイミングになってしまって恐縮だが、印象は変わらない。フロアにひとりとして知り合いはいないが、オオルタイチのノイズのカーテンを「やってる?」とくぐることができた。

月1開催・12回完結。〈月刊ウォンブ!〉とは?

僕は企業にいるわけでもないんで、ずっとつながっていてくれる人たちや環境があるというのはありがたいですね。

第1回めってシャムキャッツの印象も強かったためか、華やかでフレッシュな、ロック・バンドらしいバンド・サウンドをメインにした夜、という印象がありました。新しくて勢いのある存在をフック・アップしようという。

仲原:若くて男くさい感じですよね(笑)。初回は元気をつけたいなと思って。

あ、やっぱり「連続もののなかの初回」という意識があったんですね。それに対して第2回はシンガー・ソングライターの系譜を軸にしつつ、もっとじっくり歌とかムードを楽しんでもらおうというディレクションがなされていたと思います。実際にはブッキングについてどんな狙いや意図があったんでしょう?

仲原:そうですね、〈月刊ウォンブ!〉は12回あるわけじゃないですか。なので同じ傾向でずっとやっていくと、そこから外れることに不安が生じてくると思ったんです。変化させることが難しくなるといやなので、まずは最初の2~3回でできるだけいろいろなことをやろうと。試行錯誤の途上ですね。

3月はオオルタイチさんから柴田聡子さんまで、またヴァリエーションが広がりましたね。

仲原:はい。でも振り幅をさらに広げても大丈夫だという自信が生まれてきましたね。

実際すごくしっかり考えられてますよね、イヴェントの構想として。いい悪いは別として、イメージやヴィジョンを持たない企画も多いわけじゃないですか。

仲原:しっかり考えないとバレちゃいますから。何も考えてないなって。ただ集客が期待できそうだから組む、というのでは飽きられるし、僕自身がやってて楽しくないですね。スタッフ含め全員が楽しい状態でやりたいんですよ。

まさに次に訊きたかったことなんですが、〈月刊ウォンブ!〉って全12回完結ですよね。長いサーキットなわけです。そんなふうにあらかじめ回数が決まってたりとか、会場をリングに見立てる演出があったり等々、イヴェントありきではなくて、イヴェントをやる意義そのものを問い直そうというような気概を感じるんですよね。そもそもこのイヴェントの構想がどんなふうに生まれてきたのか、そのなかに何を見ているのか、教えていただきたいです。

仲原:本当にはじめのことからお話しすることになるんですが、僕が去年、一昨年とやっていた〈プチロックフェスティバル〉からはじまると思います。〈TOIROCK FES〉というのもやっていました。どちらも普段ライヴをやるような場所ではないので、ゼロからイヴェントを作っていました。〈プチロック〉は日芸(日本大学藝術学部)の学園祭でやるフェスで、学校の力を借りず個人で企画してました。〈TOIROCK〉のほうはさいたまスーパーアリーナにTOIROってスペースができて、そこのオープニングで5日間何かやれないかということで生まれたイヴェントです。
(2012年)12月の〈TOIROCK〉をWOMBのなかのライヴ事業をやっている部署のかたが観に来てくれていて、こういうイヴェントができないかという相談を受けたんです。
僕自身、既存のライヴハウスでやることにはそんなに興味がなかったのですが、熱心にWOMBのスタッフの方が声をかけてくれて。12月の中頃に下見に行って、「もしかしたら変なことできるかもなあ」って思って、そこから現実的に考えはじめました。1回だけのイヴェントだとテンション上がらないな、と思ったので、やるなら1月から毎月、1年間やるのはどうだろう、という話をして。WOMBで毎月ライヴ・イヴェントは誰もやってないことなんじゃないかなと思って、徐々にやる気がでてきました。
WOMB(ウーム)って最初は読めない人が多いと思うんです。実際僕もそうでした。なので読み間違いである「ウォンブ」というイヴェント名をつけました。

さらに「ウォンブ」と『週刊少年ジャンプ』って似てるし、響きもいいなというところから〈月刊ウォンブ〉に。どうせならフライヤーもマンガにしたいと思って、『シティライツ』等の作者、大橋裕之さんにお願いしました。友人のイラストレーター、ゴロゥちゃんにお願いして、『ジャンプ』みたいなウォンブ・ロゴも作ってもらって。そういった作業が全部面白かったですね。
イヴェントのフライヤーって、イヴェントが終わると価値がなくなるじゃないですか。かわいければ取っておくけど、大抵捨てられちゃう。でもマンガになっていると捨てるどころか、わざわざ遡って集めてくれる人までいるんですよ。次も欲しくなるし。こういうフライヤーって無かったなと思います。
あと、これは初めて言うんですが、12ヶ月分のフライヤーを綴じる「表紙」を12月の月刊ウォンブでご来場者全員に配布します。このマンガにだけ興味あって集めてる人もいるかと思うんですが、いつかイヴェントにも来てくれるとうれしいですね。

なるほどー。そうやってお訊きしたあとからこじつけるわけではないんですが、極端に言えばライヴというかたちを通したひとつのインスタレーションというかね、終幕とともに表紙をそれぞれが綴じるという、参加する側の行為によって完結するリレーション・アートみたいな側面があると思うんですよ。演者を観せとく、っていうものとは根本のところが違うと思うんですね。そういえば、日芸のご出身なんですか? なにか日芸コネクションというか、大学で会った仲間や知り合いが活動の母体になってたりします?

仲原:いや、あんまりいないんですよね。日芸の映画学科なんですけど。脚本コースってところがけっこうヒマで、よくライヴに行ったんです。そこでU-zhaanさんとかと仲良くなって、ライヴのお手伝いをするようになって、音楽の仲間も増えていきました。それで〈プチロック〉につながっていくんですが、そこで集まってもらったチームとほとんど変わっていませんね。アイディアを出してくれたり、発想や嗜好が近い人たちに集まってもらいました。仕事ができるというのはもちろんですが、おもしろがってくれる人を大事にしたいと思って。この3年間でだいぶチームとしてできあがってきたし、さらに今年の12回でまとまりも強くなっていくだろうなと感じています。〈プチロック〉で募集した学生のボランティアの人たちは十数人残ってくれてますし、すごく助けられてます。

イヴェントってスタッフと協力体制がとっても重要でしょうからね。

仲原:僕は企業にいるわけでもないんで、なおさらですね。ずっとつながっていてくれる人たちや環境があるというのはありがたいですね。

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〈roji〉というキー・ワード

〈roji〉は結構ゆるくて適当で、つながりを強要されずに自然にみんなが集まってくる場所なのがいいですね。

わたし自身、日本や東京のインディ・シーンに詳しいわけではないのですが、〈阿佐ヶ谷Roji〉ってひとつのキーワードになっているのかなと感じることがしばしばあるんですね。〈月刊ウォンブ!〉もフードの提供が〈Roji〉ってしっかり明記されてるんですけど、このイヴェントの本質をある部分から照らす存在なんじゃないかと思うんです。それについても後ほどうかがいたいんですが、まず〈Roji〉について紹介してもらってもいいですか?

仲原:ああ、なるほど。〈Roji〉っていうのは、ceroの高城くん(vo.)とお母さんのルミさんがやっているお店ですね。高城くんって、僕の大学の先輩なんですよ。時期はかぶってはいないんですけどね。大学1年生のときからceroのライヴによく行くようになって、〈Roji〉にもよく行くようになって、2011年の6月くらいに声がかかって週1で入ることになりました。〈Roji〉はシャムキャッツの夏目くんとか、王舟とか、他にもたくさんのミュージシャンが集まってくる店でもあるので、その界隈のミュージシャンと仲良くなりました。〈Roji〉で働くようになってから知ったミュージシャンも多いです。結構ゆるくて適当で、つながりを強要されずに自然にみんなが集まってくる場所なのがいいですね。
2月の〈ウォンブ〉のフードのことも、「火曜メシ出さない?」って店長のルミさんにきいたら「いいよー」ってふたつ返事で決まって、そんなくらいの気負わない店なんですよ。だから、僕にとっても大切な場所だけど、何か組織として機能している場所って感じではぜんぜんないですね。生活の一部くらいな感じです。

ああ、なるほど。その生活の一部だっていうような感じで、表には見えなくてもコンセプトの底の方に隠れてるものなんじゃないかなって思ったりしたんです。ひとつのカフェやバーという場所を起点にしてゆるやかに音楽コミュニティが形成されているっていうこと、しかもそれがいくつかのアーティストの成功によってそこそこ大きいかたちでシーンのなかに存在感を示しはじめている、そういうのはいまどき珍しいなと感じるんですよね。この数年はとくにネット・レーベルとかネット上のプラットフォームを利用して、様々なコミュニティとか刺激的な表現が生まれてきてると思うんですが、そういうものに比較して、地域性やリアル空間でのコミュニケーションに根ざして生まれてきているシーンを、仲原さんはどのように見ていらっしゃるんでしょう?

仲原:なんだろうなあ。〈Roji〉だけじゃなくて、阿佐ヶ谷ってベッドタウンみたいなところなので、わざわざ遊びに行くというよりは帰りに一杯飲んで帰る、みたいな雰囲気は良いですよね。ミュージシャンばっかりじゃなくて、ライヴ好きな若い音楽ファンも多くて、さらにお互いの距離が近い感じはあります。はたからみたらコミュニティだけど、内部ではそこまで意識してるわけではなくて、趣味の近い人が集まってるって感じですね。今回こんなふうに指摘されて、そういうこともあるなと気づいたくらいで。
ただ、たしかにイヴェントには〈Roji〉のお客さんも多いんですよね。べつに特に意識して呼びかけたわけじゃないんですけど。あとは〈TOIROCK〉〈プチロック〉もネットでしかチケットは買えなかったんですけど、唯一リアルな場所で買えるのは〈Roji〉だったりはしましたね。それも僕がバイトしてるから売りやすいってだけだったんですけど、もしかすると、無意識に〈Roji〉という場所の作用が働いていたりするのかもしれないですね。

〈ウォンブ〉が12回完結になることには様々な偶然や条件も働いたわけですけれども、やっぱり持続する場所性――1回きりじゃなくて、そこが「場所」であるということがどこかで意識されているんじゃないか、その意識の底には〈Roji〉みたいなものが原型としてあるのではないか、そんなことを感じるんですよ。

仲原:それは僕が2月のイヴェントを終えたときにすごく感じたことのひとつですね。すごくいい場所になったなあと思っていて。1回目じゃわかんなかったんですけど、2回目は「あ、この人前回も来てくれてたな」っていうのがあったし、「また来月ね」みたいなやりとりとかも聞こえたり、そういう人たちがまた新しい人を連れてきてくれたりっていうことを感じました。毎月1回の、みんなの決まった用事、みたいなことっていままでなかったなって。

ああー。

仲原:それはすごくうれしい言葉だし、こちらが強要するわけでなく、また来月ここに集まろうねっていう場所を作れているのならいいなって思います。来月の出演者に興味がなくても来てくれるとか。「場所」を作ったなっていうのは、ちょうど昨日ライヴが終わって感じたことですね。ツイッターとかを見てもそう思いました。「前より音よくなってるじゃん!」とか。前との変化をみんなが楽しんでくれて感想を言ってくれるのはすごくうれしいことでした。「ステージのかたち変わってたじゃん」「今回煽りVTRないの?」とか(笑)。

○○が出るから、というのではない動機が生まれている。

仲原:そうです。だんだんそうなっていけばなって思ってたのに、2回目からみんながそれを意識してくれている。僕以上に。だからけっこうびっくりしてますね。そうして場所っぽくなることに。

わたし職業的に問題がありますけど、ライヴって得意ではないんですよ。そこにいるだけで気が散ったり緊張してしまうし、演奏だけ観たい。ましてアーティストのMCに笑うとかそんな余裕がない。けど〈ウォンブ〉ってわりとつられて笑ったりできるんですよね。だから内輪かそうでないかギリギリのところで、でも排外的じゃない感じのインティメットな空気が流れていて、けっこう居心地がいいんです。それはやっぱりうまく場所を作れているということなんじゃないですかね。出演アーティストの種類だけで作れるものではない。

仲原:そうですね、僕だけでも作れませんしね。あそこの雰囲気を作っているのはお客さんがいちばんかなと思います。僕らが楽しんでいるということも大事なんでしょうけど、お客さんの感じがいいです。みんなずっと楽しそう。特定アーティストのときだけ観る、という感じじゃないですしね。〈プチロック〉も〈TOIROCK〉もそうで、本当に音楽が好きなお客さんたちなんだなって。それに毎回助けられています。

金と人間関係。すべてのコミュニティはかなしく滅びる!?

このまま続けて、結果を出したいと思ってます。このやり方で誰もが大丈夫っていう状態をつくれてはじめてイヴェントだというか......。とりあえずまだ諦められないですね。

あえて悪くきこえるかもしれない質問なんですが、ネットと違って、いまいったような「場所」の維持ってけっこうなコストがかかると思うんですよね。それは経済的にもそうだし、人間関係においても出てきたりするものではないか、一般的には。多くの音楽コミュニティやそれを母体にしたレーベルも、わりと悲しい歴史をたどっていたりしますよね。いくらマーケット・システムに、音楽や人間関係といった貴重な財を絡め取られないようにってがんばっても、たとえば〈クリエイション〉のアラン・マッギーとかも苦闘しつつレーベルを潰すわけだし、「アーティストに最大限のバックを」って考えてたトニー・ウィルソンの〈ファクトリー〉なんかも同様で、そういう顛末はみんなすでに物語になってるくらいです。そういった歴史に鑑みて、なかなか音楽コミュニティの永続というのは難しい。わたしは〈ウォンブ〉に12回という縛り、時限が設けられているのを興味深く思っているんですが、どこかでコミュニティとその限界みたいなものについての嗅覚が働いていたりするんでしょうか? 経済的な部分について、また人間関係的な部分について、お考えがきければなと思います。

仲原:いや、経済的なところはほんとにいろいろありますよ。お客さんや演者にはなるべくそこは意識させないようにって思っています。隠すという意味ではなくてね。この12回もいろいろ大変だっていうところはもちろん見えているわけで、正直そこはもう少しどうにかしなければいけないという意識があります。スタッフにも還元したいですしね。それはやる側のモチヴェーションにもつながる大事な話です。
 ではたとえば入場料を上げるのか? 3000円にすれば簡単なことではあるんです。けれどそれをやるとせっかくの「場所」をつくるという部分が損なわれてしまう。節約できる部分だってあるでしょうね。たとえばリングを特注していますが、あれにもすごくお金がかかっている。でも12回のイヴェントのそもそもの根本を考えて、必要だと判断しているわけです。ここはほんとに難しくって......。

いや、でもそこに挟まって苦闘されている話をこそききたいというか、それによって勇気づけられる人もいるでしょうし、たとえばここで仲原さんが斃(たお)れても、それを越えていく人のための大事な礎になると思うんですよ。音楽とかイヴェントにとって一種の理想主義はとっても重要なものですし、それがどのように達成され、あるいは失敗してしまうのか......達成してほしいですし、提示された音楽性とはまた別の部分で、この行く末って注目したいところです。

仲原:やっぱり、正直なところ経済的な部分は見せたくないって面もありますよ。普通のお客さんなら気にしないところだとは思いますけど。

じゃあ極端ですけど、究極的には貧乏しても理想を通したい? それとも儲からなければ理想も意味ない?

仲原:僕は、理想を通して儲からないかなって思ってます(笑)。

ああ、偉いですね。

仲原:このまま続けて、結果を出したいと思ってます。12回あるわけだからこのなかでどうにかしていきたい。僕はこれに賭けているという部分もあるので、〈ウォンブ〉がうまくいくかいかないかというのはとても重要です。おもしろいと思ってくれている人がいても、結果が出なかったり、誰かが過度に苦労したり、スタッフが困ってしまうような状況になったとすれば、それは続けないほうがいいんだと思ってます。このやり方で誰もが大丈夫っていう状態をつくれてはじめてイヴェントだというか......。とりあえずまだ諦められないですね。

うーん、応援したいです。一方で、イヴェントのもうひとつの柱である音楽的な方向性についてなんですが、やっぱり、〈ウォンブ〉も演奏を観せるだけではなくて、新しいアーティストや音を紹介していく場を兼ねてもいるわけじゃないですか。「こんなシーンがある」っていうのは、アーティストたちがそう名乗るわけじゃなくて、われわれメディアやイヴェントやファン・コミュニティなんかが歴史にしていくわけですよね。

仲原:そうですね。いまはピンときてないんですが、いつか「こんなシーンがあった」って語ってもらえたらうれしいなとは思います。

ぼくらに最適なサイズとは?

僕にとっては、僕自身の手の届く範囲のなかでやりたいということがいちばん大きいです。自分の手の届ききらないものになってしまったら、たぶんやめちゃうと思います。

ところで、またちょっとあえてネガめの質問なんですけど、このイヴェントが大きくなっていく未来があったとして、大きくなることは、ある意味で異物を巻き込んでいくことでもあると思うんですね。もしかするとわたしだってそうかもしれないですが、もっと無責任に参加してきて、悪意のある非難をする人も出てくるかもしれない。ステージの規模を上げるっていうのは、そういう危険を呼び込む可能性も高くなるということです。どうでしょう? それでも大きくなっていくべきなのか、そうなったときに守りたいものが何なのか、それにおいては規模を上げる必要もないということなのか。

仲原:うーん、異物を排除していきたいという気持ちはないです。実際に大きくならないとわからない部分はあるんですが、でも、うーん......あんまり気にしてないですかね(笑)。でも、僕にとっては、僕自身の手の届く範囲のなかでやりたいということがいちばん大きいです。自分の手の届ききらないものになってしまったら、たぶんやめちゃうと思います。顔が見える範囲でやっているのが楽しいし、大きくなっちゃったとしてもたぶんそのレベルが変わらないところまでというか。それに、このまま大きくなっていけるのかもしれないし。

そうか、そうですね。それは確かにいま考えることではないですから。でも「手の届く範囲」というすごくシンプルな、でも根本的なものさしを意識されているというのが印象的でした。その範囲においては問題というかブレは起こらないと。

仲原:そうですね。今回のイヴェントだって批判をする人はいるでしょうし、もちろんそれは受け入れていきます。ただそれに引っ張られるわけではなくて、僕はやっぱり、やりたいことをやりながら、いつかその人たちにも納得してもらえるようなものを目指していきたいですね。

やっていることも方法も違いますけれども、たとえば〈マルチネ〉のtomadさんたちなんかも、やりたいこととお金の問題と、それをどうアーティストやまわりに還元していくかということに対してとても繊細な工夫と挑戦をされていて感心するんですよ。イヴェントとレーベルでは役割も活動するレイヤーも違いますけど、そのへんの音楽とお金の構造をめぐっては、ぜひ妥協せずに実験なさってほしいなと思います。でかいビジネスにするんじゃなくて、アーティストにもスタッフにもユーザーにも理想的な状態や条件を捨てずに続けられるサイズと方法が、〈ファクトリー〉のころには無理でも、いまはあるかもしれない。それは音楽にとってもいいことのはずです。

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入場料とは何か

イヴェントを楽しめる/楽しめないということは料金設定にも関係しますから。モトが取れた感覚があると楽しい。

仲原:アーティストへの還元は僕も悩みながらいろいろ考えているところで。今回はチケット代をちょっと安めにして、そのかわりフードとか物販を大きくしたんですよ。物販ってその場でダイレクトにアーティストにお金がいく場所なので、けっこう重要だし、そこでひとつの還元が可能になるんです。CDショップだとそうでもないかもしれないけど、お客さんからしてもライヴ会場の物販でお金を払うときって、アーティストに直で渡してる感覚が強いと思うんですね。ライヴ・チケットが3000円だとすると、1000円のものを買うのに躊躇しちゃうけど、2000円だったら1000円くらいは財布のひもも緩む。だからその意味でも僕のイヴェントはできるかぎり入場を安く抑えようと思ってるんです。
 〈プチロック〉の入場料は1500円なので、ほんとに物販がすごく売れるんですよ。たくさん持ってきた物販が全部なくなってるとかってことが結構あって。お客さんの意識が高いのもありますが、これはすごいなって思います。来て、何か買うっていうスタイルがスタンダードになってほしいですね。CDだけだと見に来ないかもしれないけど、フードやフリマがいっしょに並んでると、ちょっと物販のぞこうかなという気にもなる。あまりたくさん出演料をお渡しできるイヴェントではないので、そのあたりの工夫でアーティストに少しでも還元したいです。

ああ、それは新鮮ですね。ストレートに入場料からではなく、物販への誘導という別ルートから還元のシステムをつくる。みんなやってることなんですか? オリジナルなアイディア?

仲原:どうなんでしょう。わざわざそういう話をしあうということはないんですが、僕には経験的な体感としてあったんですよ。入場料1500円なら確実に物販が売れる、っていうのは。それから、〈トイロック〉は2000円ですけど、そのうち1000円分はフード・ドリンク・チケットにしたんですよ。3000円でライヴだけだと、「3000円分ライヴ楽しまなくちゃ」って思っちゃうけど、その分何か付いてるとちょっと違ってくる。「あれ? 俺たちほとんどメシ食いにきただけじゃん?」っていうのもいいと思うんですよね。

チケット代のなかに入場以外のサーヴィス代も含まれていると感じられれば、楽しみ方も変わってくると。USとかだと、ライヴハウスがただのレストランみたいなところだったりして、出てるのが誰か知らなくても食べに来て音を聴くっていいますしね。

仲原:何か手本があってはじめたわけではなくて、ほんとに実感からはじめたことなんです。でもお金ってほんとに微妙で繊細なものでもあって、もし入場料で3000円とってたら、もっとイヴェントへの批判もあったかもしれませんね(笑)。そういうものだと思います。イヴェントを楽しめる/楽しめないということは料金設定にも関係しますから。モトが取れた感覚があると楽しい。

なるほど(笑)。もちろん、音楽だけでもそれは可能だと思うんですが、イヴェントというものの別のあり方をとても意識していらっしゃる、とくにそれが、音楽を聴く場であることを超えた居場所となることを考えておられるから出てくる発想だと思うんですよね。

仲原:だからといって、フリー・イヴェントが成功するということでもない。そこは自分がやることになったとしても、お客さんの目線でどうやって楽しめるものにするか考えます。

小規模ながら「フリマ」があるのも楽しかったですよ。文化祭みたいな手作り感で入りやすいし、かといって閉じた感じもなかったですね。物販っていう制度を押し付けられるわけでもなくて、参加型というか。やる側と観る側とスタッフの三角形のなかで、どうやって快適さとお金を回していくのか、まだ未完成なんでしょうが、そういう大きめのヴィジョンが感じられました。

仲原:フリマは基本的に僕の知り合いにお願いして出展してもらってるんですが、僕も当日まで何が出るとか把握しなくて、毎回すごく楽しみなんですよ。ライヴの転換中にフリマのフロアが賑わってるのを見るのもすごくうれしいし、楽しい。もしかしたらこういうのをいろんな制度とか、型にはめてやっちゃうと楽しくなくなるのかもしれないですね。

リングが可視化するもの

(リングに)ロープもつけてセッティングしたときに興奮しましたね。あれはまだまだアップグレードできるし、僕はお金をかけていくところだと思ってるんです。

仲原:あとはプロレスのリングのことですね。あれは単に、今年の1月4日に新日本プロレスの〈1.4〉に連れて行かれて、めちゃくちゃ感動したのがきっかけなんです。東京ドームだったんですけど、すごく興奮して。 格闘技は好きだったんですけど、WOMBでイヴェントやるってなったときに、真ん中にステージ置きたいなって思ってたのもあって、つながりましたね。次の日には僕の知り合いにプロレスの衣装を作っている人がいるので、その人に相談しました。その人の奥さんは内装のデザイナーみたいなことをされていたので、3人で話して、リングを特注しようということになりました。

えー。すでに本番2~3週前じゃないですか?

仲原:実際に話を進めたのは1週間前からで(笑)。制作期間は4日間で、当日の朝仕上がりました。もうどんなんができてるんだ!? って状態です。1本1本はただの鉄の棒なので、迫力もないし、大丈夫かなって。でもロープもつけてセッティングしたときに興奮しましたね。あれはまだまだアップグレードできるし、僕はお金をかけていくところだと思ってるんです。

へえー! そこですか(笑)。

仲原:もっと進化させます。誰も期待してない進化ですけどね(笑)。音響とかは僕もすごく意識して、よくなるように取り組んでますけど、映像とかリングとかって誰も進化することを想定してないと思うんですね。そこをよくしていくと「あ、変わった」っていう反応がくると思うんです。

これは意図したところではないかもしれないですけど、やっぱりライヴってステージという線があるかないかで別のものに変化すると感じました。観る側がステージというものを意識すると、どうしてもアーティストにこうべを垂れるというかたちになる。もちろんその構図はぜんぜん悪いものではないです。ですけど、そこにあの一本のロープが張られることで、あっちは見せ物だぞという感じが強調されると思うんですよね。極端な話、観客がゼロでも成立するのが音楽です。でもあのロープは、観てるやつがいないと成立しないぞ、ということを意識させる。客が優位になって、前のめりな参加ができる。

仲原:ちょっと喧嘩腰ですよね(笑)。

野次がいい感じに飛んでますよね。

仲原:そうですね、盛り上がるところで盛り上がってもらえるようになったなというか。そういう感じはありますね。

そうそう、音楽にとってそれが最良の聴かれ方だという意味ではなくて、イヴェントの魅せ方、楽しませ方としてやっぱり斬新なものはあると思うんです。

仲原:最初にミツメの映像が流れたとき、みんなポカーンとなったと思うんです。何だこれ? みたいな。でもビーサン(Alfred Beach Sandal)が悪役として出てきて、最後にシャムキャッツが現れたときには、異様なヒーロー感が出てたんですよね。それぞれが何かを残したわけではなくて、ああ、これプロレスを真似てんだなってお客さんが理解してくれるなかで、勝手にそういう見え方ができていくというか。シャムキャッツのときには花道に行ってハイタッチしてる人たちもいましたから(笑)。お客さんが楽しみ方を見つけてくれるということを感じて、すごくうれしかったし、あの仕掛けはそういうものなんだなって思いました。カメラマンがリングサイドからカメラでぐいってのぞき込んで撮ってるのも、そのまんまプロレスじゃねえかよ! って感じで楽しかった。

きっとリングは最初に思っていたこと以上の効果を持っていると思いますよ。

仲原:そうですね。きっかけはただプロレス観に行ったというだけだったんですけどね。不思議な気持ちがします。あんなに機能するとは思ってなくて。リングだけじゃなくて、WOMBっていう会場の力に助けられている所もたくさんあります。映像を大きく映せるので、SphinkSさんとmitchelさんに協力してもらってリアルタイムVJを投影してます。めちゃくちゃカッコいいですよね。あと全フロア、普段のWOMBではあり得ないくらい照明を明るくしていて、そのおかげか未来都市みたいな、不思議な雰囲気になりました。フロアが多いのもWOMBの魅力なので、そういった良さは全て活かしたいです。あと毎月、来月のウォンブのチケットを会場内に隠していて。WOMBを隅々までじっくり見て欲しくて(笑)。

なるほどー。ではちょっとインタヴュー・ドキュメンタリーみたいなシメになるんですが......そう儲かるわけでもない、苦労も多い、いってみれば裏方でもあるこんな取り組みを続けているのはなぜなんでしょうか?

仲原:これがいまやれることだから、ですかね......。僕が少しでも求められてるなって感じる場所でもあるし、同年代で同じようなことをしている人もいないから、やるべきことなんだろうなという気がする。12月までウォンブを続けるのは、そうスケジュールを決めちゃったから、というだけですね。なんかしまらないなあ(笑)。

Takako Minekawa & Dustin Wong - ele-king

「エフェクターの魔術師」なる『インフィニット・ラヴ』(2010)の秀逸な国内盤帯文を、多くの方が記憶しているのではないだろうか。元ポニーテールのダスティン・ウォングと、彼がファンであることを公言する嶺川貴子とのコラボ作品をご紹介しよう。カラフルで表情豊かな音色を持つウォングのギターと、透明感ある嶺川のヴォーカルが見事にはまったハッピー・エクスペリメンタル・ポップ。音といい世界観といい、コラボ作というにはあまりに息の合ったアーティスト同士であることがこのPVからも感じられる。ポニーテールの音色を穏やかにくすませたような内面的な響きは、ここに出てくる淡い色調にもよく反映されている。
 ふたりはこの5月に共作『トロピカル・サークル』をリリースするが、ジャケット等に使用されている絵も共作、このPVも彼らの手作りだという。嶺川のアルバム・リリースは『Maxi On』以来じつに13年ぶり。ウォングの繊細にして大胆な演奏のなかに嶺川の自然な呼吸が感じ取られる、新緑の季節にちょうど似つかわしい作品だ。

■リリース詳細
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/takako-dustin-toropical-circle/

Vol.7 『Dishonored』 - ele-king

 

 突然ですがみなさん、いま〈Looking Glass Studios〉が熱いです。と言っても何がなにやらわかりませんね。すみません、NaBaBaです。年度初めの今日このごろ、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 いきなりで失礼致しましたが、今回の連載は昨年から予告していた『Dishonored』のレヴューをついに行いたいと思います。〈Arkane Studios〉が開発したこのオリジナル新作は昨年遊んだ作品のなかでもとくに素晴らしいもので、ぜひ書こうと思いつつ延びに延びてこの時期になってしまいました。

 しかしいまこの時期となると、ゲーマーの間でいちばんの注目の的となっているのはやはり26日に発売された(国内では4月25日)『BioShock: Infinite』ではないでしょうか。現代のゲーム業界きっての名手、Ken Levine率いる〈Irrational Games〉が開発した同作の評判はすさまじいもので、海外ゲーム・レヴュー・サイト各所でも満点の続出で、「IGN」では「全てのジャンルを前に推し進める革新的な作品」と、異例の絶賛ぶりが披露されています。

 かくいう自分にとっても今年の一、二を争う期待作なのですが、じつはこの『BioShock: Infinite』と『Dishonored』はある種の兄弟関係にあることはご存知でしょうか。これら2作のそれぞれの開発スタジオは、どちらもあるひとつのスタジオから分離した会社なのです。

 その大元でいまや伝説となっているのが、冒頭で述べた〈Looking Glass Studios〉(以下LGS)。90年代に大活躍したこの技巧派のスタジオは、『Thief』や『System Shock 2』等のゲーム史に残る名作を数多く生み出し、後続に多大な影響を与えるとともに、多くの名クリエイターを輩出しました。

 たとえば連載第3回にご紹介した、『Deus Ex』を手掛けたWarren Spectorもそのひとりで、『Deus Ex』自体は〈Ion Storm〉という別スタジオが主導の作品ですが、『System Shock 2』のスタッフも多く出入りして開発されていたようで、〈LGS〉とは非常に深い関係にあったと言えるでしょう。

 しかしながら〈LGS〉は2000年に倒産しています。ではすでになきスタジオが何故いま熱いのか。それは〈LGS〉の遺伝子を受け継いだ人々が、近年各所で目覚ましい活躍を見せているからです。

 その先駆けとなったのが一昨年発売された『Deus Ex: Human Revolution』。開発した〈Eidos Montreal〉は〈LGS〉や初代『Deus Ex』の開発陣とは直接的な繋がりはありませんが、本作で確かな完成度を発揮し、シリーズのリブートを成功させました。

 また今年に入ってからは『BioShock』シリーズの前進である『System Shock 2』が、長きにわたる権利関係のゴタゴタによる販売凍結状態を乗り越え、遂に〈GOG.com〉で再販を果たし、さらに〈Eidos Montreal〉が今度は〈LGS〉のもうひとつの名作、『Thief』シリーズの9年ぶりの最新作を発表しています。

『System Shock 2』はKen Levineの実質デビュー作であり、後の〈LGS〉系作品の独特の自由度はこの作品で確立された。

 そしてもちろん忘れてはならないのが大本命の『BioShock: Infinite』と、今回主役の『Dishonored』です。〈Irrational Games〉と〈Arkane Studios〉はともに〈LGS〉から独立・派生したスタジオであり、比較的近い時期に両スタジオの作品が出揃ったのは、90年代来の洋ゲー・オタク的にはぐっと来るものがあるのです。熱い、これは熱いのですよ。

 こうした背景もあるので、当初は〈LGS〉を振り返りつつ、『Dishonored』と『BioShock: Infinite』の両方を同時にレヴューしようかとも思いましたが、ちょっと長くなりすぎるような気がしたのと、これを執筆している時点で『BioShock: Infinite』を遊ぶまでまだ少しかかりそうだったので、2回に分けて書いていきたいと思います。そういうわけで今回は『Dishonored』のレヴューです。

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■業界の異端児スタジオに多くの才能が集結した

 『Dishonored』はいまどきでは珍しい一人称視点のスニーク(隠密)アクション。女王殺害の冤罪を着せられた主人公が、自らを陥れた相手に復讐していくストーリーで、潜入からターゲットの暗殺に至るまでのアプローチの多彩さや、豊富なガジェットや特殊能力による自由度の高さが売りの作品です。

 開発した〈Arkane Studios〉は前述した通り〈LGS〉倒産後独立したスタジオのひとつで、これまで『Arx Fatalis』や『Dark Messiah: Might and Magic』等、〈LGS〉の名作『Ultima Underworld』の名残を感じさせるファンタジー作品を手掛けてきました。といっても両作品とも当時の主流からは外れたゲーム・デザインで、良く言えばユニーク、悪く言えば奇ゲーという評価が多数の、いまひとつマイナー・スタジオの域を出られていなかったように思えます。

 
『Dark Messiah: Might and Magic』は近接戦に力を入れたファンタジー作品で、そのノウハウは『Dishonored』にも生きている。

 『Dishonored』も、見た目やシステムの奇妙さがこれまでの〈Arkane Studios〉節を彷彿させ、発売直前まで一抹の不安があったのは事実です。しかし遊んでみると同スタジオらしさは良い方向に作用しているとともに、表面上の奇抜さに反して実際のゲーム・デザインは、〈LGS〉作品の持ち味をとても忠実に継承していると感じました。

 これは今回新たにプロジェクトに加わったViktor AntonovとHarvey Smith両氏の力が大きいのでしょう。

 Viktor Antonovは連載第1回でご紹介した『Half-Life 2』で特徴的なアートを手掛けた人物で、今回は氏の持ち味がさらに全面的に発揮されていますね。時代掛かったイギリス風の街並みに無機質な金属の構築物が埋め込まれたかのようなデザインは大変ユニークで、それに説得力をもたらす世界観の構築も非常に緻密。これまでの同スタジオの作品はもちろん、他の同時代のゲームも軽く凌駕するオリジナリティがある。ことアートワークに限って言えば、ここ4、5年でもトップクラスと断言出来ます。

 
骨組み剥き出しの建造物の数々が、作品に得も言われぬ威圧感を与えている。

 一方、本作のディレクターのHarvey Smithは、かつては〈LGS〉に在籍し、また『Deus Ex』ではプロデューサーを務めた人物で、本作のゲーム・デザインも彼の経歴がとても色濃く反映されています。
 それこそ遊んだときの第一印象、とりわけ問題解決のための手段の多さはすごく『Deus Ex』らしさを感じたし、豊富な超能力を駆使するところは『System Shock 2』や『BioShock』も想起させます。そしてダークな世界観や観視点でのスニーキングに主眼をおいたゲーム・デザインは『Thief』に通ずるものがある。

 実際のところ本作のゲーム・デザインの骨組みは、宝を盗むのがターゲットを暗殺することに替わっている以外は『Thief』にとても似通っています。むしろそうした骨子に適合する範囲で他の〈LGS〉系列のゲームのシステムや、その他諸々現代のトレンドを組み合わせたのが『Dishonored』とも言い換えられるでしょう。

■二つの方角から掘り下げられた自由度

 具体的に見ていくと、まずゲームはステージ性で、各ステージはターゲットの拠点とその周辺地域が舞台となり、その範囲内でプレイヤーは自由に歩きまわれるデザインです。ステージはとても複雑かつ立体的に構成されていて、主要な建物は内装がしっかり作りこまれている凝り具合。当然ターゲットのもとにたどり着くまでには無数のルートが存在し、どのように進めるかはプレイヤー次第となっています。

 このあたりの自由度はいかにも『Thief』や『Deus Ex』的と言え、自分の頭で考えて進むべき道を決めていけるのは楽しいし、ルートごとにしっかり差別化されつつゲームに破綻が生じないのは見事。『Deus Ex』のレヴューでも触れましたが、ゲームの自由度という点において即興性が重視されるようになった現代に、レベル・デザインの作り込みで遊ばせてくれる作品は希少です。

 逆に『Thief』や『Deus Ex』と違っていまどきのゲームらしいのは、ルートの多彩さが予めプレイヤーに開示されていることが多い点でしょう。どういうことかというと、本作では後述する特殊能力を駆使して屋根や屋上等高所を移動ルートとする機会が多いのですが、その高所は先の状況を一望できる絶好のポイントにもなるわけです。高所なら敵に見つかる心配がないので、安心してじっくり戦略を練ることができるというメリットもある。

 また市民の立ち話や拾った書類等に、秘密の部屋だとか警備が手薄な場所だとかの情報があると、自動的にジャーナルのリストに追加されます。いちいち覚えていなくてもジャーナルを見ればどんな攻め方が有効か一目瞭然で、これもまた選択肢をプレイヤーに開示している例のひとつでしょう。

 こういう親切設計はじつにいまどきのゲームらしく、『Deus Ex』当時ではあり得ないものですが、自由度の高さを楽しんでもらうための誘導としてよく機能しているシステムだと思います。

 
屋根に登って下を見下ろし、先へ進む戦略を考える。これが本作の基本だ。

 対してもうひとつの特徴である豊富なガジェットや超能力もよくできています。とりわけ超能力は『Deus Ex』のAugや『BioShock』のPlasmidを原型にしていると感じられますが、その種類は短い距離を瞬間移動するものから時を止めるもの、なかには周囲の小動物や人間に乗り移るもの等々、一見すると変てこなものも多いです。

 しかし実際に使ってみるとどの能力も意外なくらい使い勝手が良くて、たとえば瞬間移動は屋根から屋根、道なき道を進んでいく手段としてゲーム中もっとも重宝する他、敵の目前を気づかれずにすり抜けるのにも使えます。乗り移る能力であればネズミや魚に乗り移れば排水溝を伝って建物内に潜入できるし、ターゲットに乗り移れば人目のないところまで誘導してから暗殺するということも可能。

 
動物に乗り移れば不審がられることなく衛兵の横を通過できる。しかし足元に寄りすぎると踏まれるので注意。

 このように各能力は応用性が高く、プレイヤーの想像力次第でステルスから戦闘までいろいろな使い道が考えられます。これはレベル・デザインとは違いより即興的な自由度とも言え、その場の思いつきをその場で実験したくなる魅力がありますね。とくに戦闘時にこれは顕著で、瞬時の判断が求められる状況で創意工夫して敵を倒し弄ぶ楽しさは、『BioShock』もかくやと言わんばかり。

 こうした即興性は『Thief』や『Deus Ex』に欠けていた要素であり、逆に『BioShock』は即興性優先で、レベル・デザインの濃さは大分減退していました。『Dishonored』の優れているところはその両方を持っていることであり、〈LGS〉の系譜のさまざまな要素をまとめ上げた、これまでの総決算的な作品であると評価することが出できます。

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■「何でもできる」は良いことばかりではない

 さて、〈LGS〉の系譜の現代的復刻という点で思い出すのが『Deus Ex: Human Revolution』ですが、この作品と『Dishonored』は当然似ている部分がありつつも、根幹の方向性はやや異なっています。

 最大の違いは自由度の範囲で、『Deus Ex: Human Revolution』はオリジナルに比べ敵との戦闘に大きくフォーカスしていて、反面複雑・立体的なレベル・デザインは減退し、より直線的なゲーム進行になっていました。言ってしまえば普通のアクション・シューティングに近くなっていたと言えます。

 
『Deus Ex: Human Revolution』の戦闘重視のデザインは、これはこれでまた評価がわかれるところではある。

 対する『Dishonored』は自由度をかぎりなく拡張していく姿勢で作られており、その点をもって僕はこの作品は楽しめたわけですが、しかしこれは人によって評価が分かれるところだろうとも思うのです。

 本作はスニーク・アクションというジャンルではありますが、コソコソ隠れるだけでなく敵とガチンコで戦うことも可能で、なおかつその振れ幅も大きく、ひとりの敵にも見つからずにクリアすることができれば、正面玄関から殴りこんでの皆殺しも可能になっています。この手のゲームにしては主人公がかなり強いということもあり、本作のスニークというのは生存戦略上の必然というよりも、プレイヤーの好み次第という面が強いのです。

 しかし本作に限らずステルスも皆殺しも自由自在みたいなゲーム性は今世代のゲームではとてもよく聞く謳い文句のひとつなのですが、プレイ・スタイルをプレイヤーの好みに委ねている分、効率だけを追求されたら途端に味気ない遊びになる恐れや、どんなプレイ・スタイルでも遊べるということは、逆に何をやっても何とかなるという意味でもあり、全体的に緊張感が欠けてしまうという問題点が付きまとっています。

 本作もこの点を完全には払拭できていないのが残念なところで、無傷で手軽に進みたければ、屋上からペシペシ撃っていればそれでOKみたいな、身の蓋もない事態になる危険性は否定できません。自由度を高くしたがゆえの、楽勝な進め方が存在してしまっています。

 
ただ倒したいだけだったらピストルを何発も撃ちこめばいい。これもまた自由ではあるが味気ない。

 ただプレイヤー側が遊び方に明確な目的意識を持てば、それに見合った楽しさが返ってくるところに救いはある。敵にいちども見つからずに進めようと思ったらやはり相応の手応えは生じてくるし、なるべく多くの武器を使いこなして敵を殲滅してみようとすれば、こちらの戦術に柔軟に対応してくる敵の反応を見ることができるはずです。

 そういう意味では人を選ぶゲームであることには違いなく、おもしろさのポテンシャルは高いんですが、楽しみ方をわかってないとそれを十分に味わえない恐れがある。それに比べると『Deus Ex: Human Revolution』は、自由度が減退した分、遊び方は明快になっていて、どんな遊び方でも比較的一定のおもしろさや手応えが保障される面があるのは確か。

 だからと言ってどっちの方が優れているという話ではありませんが、少なくとも『Dishonored』を遊ぶ際は上記の点は予め留意しておいた方が、より楽しめるかと思います。

■まとめ

前述した〈LGS〉の系譜の総決算という言葉がふさわしい作品で、自由度の高さは近年では屈指のもの。〈LGS〉ファンはもちろん、自由度の高いゲームが好きな人や、ユニークな世界観が好きな人にピッタリの作品です。

逆にそれらが好きでない人には合わないゲームでもあり、また自由度が高いとは言え純粋なアクションやスニークと同等の面白さや緊張感を求めても期待外れになるでしょう。あくまでも自由度の高さを楽しみ、味わう作品だと思います。

THE OTOGIBANASHI'S - ele-king

 bim、in-d、PalBedStockの3人からなるTHE OTOGIBANASHI'S(以下、OTG)は、昨年YouTubeで発表した"Pool"で一気に好事家たちの話題をかっさらった。"Pool"はあらべぇという気鋭の若手プロデューサーが制作したナンバーで、BUNの『Adieu a X』に影響を受けたと語るその言葉通り、非常にエディット感/クリック感の強いトラックの上で3人が浮遊感というより、フワフワとしたラップを繰り広げるナンバーだった。しかしOTGがユニークだったのは、そのビデオクリップをただのPVとして仕上げるのではなく、自分たちのカルチャーをゲットー・ハリウッドイズムあふれるスタイルでぶち込んだことだろう。フォスター・ザ・ピープルにデヴィッド・ボウイ、SUPREME×Comme des Garcons SHIRTのキャップ、ピスト、スケートボード、代官山、カフェ......。ストリートのしがらみa.k.a.縦社会から完全に自由なOTGのスマートさ、というかボンボン感。それはついにRIP SLYMEの後継者が現れたことを感じさせた。

 今回リリースされるアルバム『TOY BOX』はPUNPEEの登場以降、徐々に声を上げはじめた文科系B-BOYというサイレント・マジョリティたちにとってはたまらない一枚と言えるだろう。内容は彼らが"Pool"のPVで見せた東京の(怖くないほうの)ストリート・カルチャーのごった煮感と、ディズニーのような寓話をミックスしたようなコンセプト・アルバムの体がとられている。リリックでも"Frozen Beer"では「NBの997でも履いてろ」、"kutibue"では「泥がオールデンに付いた / 味が出ると俺は許す」、"Fountain Mountain"では「映画館で観た映画が / 今の俺を作ってるとしたら / このTシャツもスナップバックもあいつの影響なのかな」などなど、露骨なまでに自分たちの嗜好を詳らかにしている。

 OTGはシングルやEPですら1枚もリリースしてないのに雑誌「POPEYE」や「WARP」などに登場しており、すでにファッション方面からも熱視線を注がれている。このあたりも、どんなに捻くれた作品をリリースしても、やたらとメジャー感だけは醸し出るRIP SLYMEに似ていると言えなくもない。前述の"Fountain Mountain"のトラックなどは明らかに"楽園ベイベー"へのオマージュを感じさせるし、OTGもRIP SLYMEのようにヒップホップセレブ化していってほしいものである。

 先週土曜は、ブシュウィックの会場シェ・スタジア(liveatsheastadium.com)で、インディ・ロックDIYのショーケースを見た。エド・シュレイダーを見に行ったのだが、結果見たすべてのバンドが面白かったのでひとつずつレポートします。日本のレコード店で見つけたらチェックしてみて!

■フリー・ブラッド:freeblood.bandcamp.com

 !!!のメンバーでもあったジョンがはじめたバンドで、昔、著者が働いていたカフェにメンバー、ふたりでよく来ていたので、ライヴを見にいっていたのだが、最近はご無沙汰していた。メンバーが、ふたりから4人になり、黒髪の女性から、金髪で赤い口紅、レザージャケットのLAっぽい女の子に変わっていた。サウンドは前と大きな変わりはなく、男女ツイン・ヴォーカルにギターとビートが乗ったエクスペリメンタル・ポップ・ソウル。ジョンはドラムを叩きながら歌い(片手にマイク、片手にスティック)、たまに鐘も鳴らす。前の女子メンバーが、お酒をステージに持ってきたりしていたので、関係は良好であるらしい。
 ショーの後に話したら、バンドは10年ぐらいやってるとか、日本ツアーも経験済み。

■ジャマイカン・クイーンズhttps://jamaicanqueens.com/

 今日の大発見! 男の子3ピースで、インディ・ポップと呼ぶには新しいので、サザン・ラップを取り入れたトラップ・ポップと呼んでみる。スタイルは、ウエィブスに近いかな?
 メンバーは、メインの男の子が、ギター、シンセを弾き、歌を歌い、ベースガイは、弾きながら、スティックを持ってエレキドラムを叩いたり、シンセを操作したり、ふたりともマルチ・プレイヤー。
 中盤で、メガネ、三つ編み、金髪、赤ニット、タイト黒パンツの可愛い女子が、1曲ゲストヴォーカルで登場する。ふわふわした高い声が裏返るところが、少しグライムスを思い起こさせる。2012年に結成されて、すでに全米ツアーも敢行する、2013年注目バンド。『Lマガジン』でも、このバンドを、なぜもっとみんなが注目しないのかと熱い思いが書かれている。
 
https://www.thelmagazine.com/...

■エド・シュレイダーズ・ミュージック・ビート:https://edschradersmusicbeat.blogspot.com

 何年か前にp.s1(クイーンズにある現代美術館)で彼らのプレイを偶然見て以来、もう1回見たいと思っていた。M.I.Aか本の展覧会を見に行って、帰ろうと、館内から外に出るときに、階段の踊り場でセットアップしていたのが彼らだった。ライトニングボルトに、ポップ・ソングを乗せた(+叫び系)と言ったらわかりやすいかな。

 2ピースで、ベースとフロア・タムそして歌、というシンプルなセット。ヴォーカル(エド)はフロア・タムを叩きながら、ライトのスイッチ(タムのなかから照らしている)を足でオン・オフしたり、Tシャツでタムを覆って音を調節したり(タムに直接ペンで演目が書いてある)、自分の家の鍵の束をタムに載せてジャラジャラ音を出しながらそのまま叩いたりの新世代感覚。普通、家の鍵をドラムに載せて音を出そうなんて発想は古典的なバンドには起こらないだろう。
 上半身裸で、タムにライトをチカチカさせ(下から照らすのでゴースト見たいに見える)、あまりに近くで見るので(ステージでなくフロア)、例えば、'I can't stop eating sugar'を言い続けているだけの歌なのに、訴えかけ方がハンパなく、がんがん心動かされる。
 すべての歌が短く、いきなり終わるし、後奏がないし、アカペラがあるし、ところどころで今日のバンドや会場、お客さんに感謝の念を忘れないし、とっちらかっているパワフルさがこのバンドの魅力。

 会場の都合で、共演バンドがバラバラなことが多く、目当てのバンドが終わるとさっさと帰ってしまうことも多いなか、今回は、最初から最後までいたお客さんが多かったように思う。共演バンドが、お互いを尊敬し合い、今日を「いままででいちばんのショー」、と思ってプレイするバンドの姿勢と気合が見えた。
 仲が良いので、一緒にツアーしているのかと思ったが、実際はバラバラで、フリー・ブラッドはプロヴィデンス、ジャマイカン・クイーンズはフィラデルフィア、エド・シュライダーは、フィラデルフィア(ジャマイカン・クイーンズとは違うショー)から別々に来たらしい。
 こんな貴重な瞬間に立ち会え、こんなバンドたちがいる限り、ショーに行くのはやめられない。オーガナイズをしたシェ・スタジアムに感謝しつつ、来週は誰が来るか、チェックしたら、ミネアポリスからハーマー・スーパースターの友だちの日本人男の子ふたり組が来るみたい。

Major Lazer - ele-king

 メジャー・レイザーが帰ってきた! 別にどこかに行っていたわけじゃないんだけど。
 僕は、メジャー・レイザーの『ガンズ・ドント・キル・ピープル・レイザーズ・ドゥ(銃は人を殺さない......レイザーはやる)』(2009年)が好きだ。レゲエが、冗談が、ポップが、軽薄さが好きだ。ジャマイカのゆるさが、リディムとベースが、いい加減さが......
 こう言ってはナンだが、この音楽は政治的だ。なにせ、同性愛嫌悪でリベラル派から非難を浴びていたダンスホールのMCを引っ張ってきて、一緒に踊らせている。説教くさい連中とはやり方がひと味違っている。

 メジャー・レイザーには、ディプロ、そしてスイッチのふたりがいるから良いという意見がある。その観点で言えば、4年ぶりの『フリー・ザ・ユニヴァース』には一抹の不安があるかもしれない。スイッチはプロジェクトを去った。新生メジャー・レイザーといっても、スイッチが抜けただけではないのか......と思っても無理はない。
 しかし、僕は、昨年リリースされた7インチ、「ゲット・フリー」、ダーティー・プロジェクターズのアンバー・コフマンがロックステディ風にレゲエを歌うこの曲を聴いたとき、心配が無用だとわかった。新作『フリー・ザ・ユニヴァース』を聴いたいま、自分がこの音楽のファンであることを再認識している。
 周知のように、メジャー・レイザーはディプロのレゲエ・プロジェクトだが、新作には、ジューク(ニューオーリンズ・バウンス)風のビート、ジャングル、レイヴ、ダブステップ、トライバルなど多彩なビートがミックスされている。MCやシンガーのメンツは、信じられないほど豪華だ。ダンスホールの大物、シャギーやエレファント・マン、ヴァイブス・カーテル、、ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグ、ダーティー・プロジェクターズのアンバー・コフマン、ピーチーズ、サンティゴールド、オランダのベテラン・テクノDJ、レイドバック・ルーク、UKのベテラン女性MC、ミス・ダイナマイト......そしてワイクリフ・ジョン等々。『フリー・ザ・ユニヴァース』は、4月10日に発売。


Watch Out For This(Bummaye Lyric Video)

Get Free (feat. Amber of Dirty Projectors) 

Jah No Partial (feat. Flux Pavilion)

4月に行きたい10の場所、その1 - ele-king

 2005年にデビュー作をリリースして以来、スペイン民謡集のカヴァーやシューマンやブラームスへの参照を通して独特のフォーク・スタイルを確立してきた異才、ジョセフィン・フォスターが来日する。フリー・フォーク・ムーヴメントへの関心が高まっていた当時は、そうしたムードのなかでさらにその名が知られるようになった。じっと動向を追ってきたファンの方もいらっしゃるだろう。最新作『Blood Rushing』は「WIRE」の2012年ベスト・アルバムにも選ばれ、じっくりとした活動の積み重ねの上に、いままさに彼女の時代が花開こうとしている。
 今回のツアーには先に挙げたスペイン民謡カヴァー作品『Anda Jaleo』でもお馴染みのギタリスト、ヴィクトール・エレーロが同行。4月23日(火)のWWW公演では彼女との親交も深いというドラマー、田中徳崇が加わる。また同日は灰野敬二もソロで登場。フォスター本人も興奮する豪華な組み合わせが実現した。全国10ヶ所で行われる公演のうちには、ボアダムスのYOSHIMIなどの参加も伝えられている。見逃せない機会だ。

Josephine Foster、待望の初来日。
WWW公演の共演には灰野敬二が決定。

 最新作『Blood Rushing』がイギリスの雑誌「WIRE」の2012年ベスト・アルバムの一枚として選ばれ、発売時には表紙も飾ったJosephine Foster。デビュー以来、最も来日が待望されていたアーティストの一人である彼女の初来日が決定しました。近年の彼女の作品・ライブには欠かせない、スペイン人ギタリスト・VICTOR HERREROも共に来日。WWW公演ではJosephineがシカゴで活動していた時期に親交の深かったドラマー田中徳崇を迎えます。共演には灰野敬二がソロで登場。Josephine自身も「とても名誉なこと」と云うこの組み合わせが実現するのはもちろん今回が初めてです。じつに幅広い音楽に造詣が深く、数々のジャンルのミュージシャンと多彩な共演を行ってきた灰野敬二とJosephine Fosterの一夜限りの邂逅。お見逃し無く。

■2013年4月23日(火)渋谷WWW
JOSEPHINE FOSTER & VICTOR HERRERO JAPAN TOUR APRIL 2013
出演:
JOSEPHINE FOSTER & VICTOR HERRERO with 田中徳崇(Noritaka Tanaka)
灰野敬二 Keiji Haino
open 18:30 / start 19:30
前売 ¥3,500 / 当日 ¥4,000(共にドリンク代別)
<TICKET>
▶メール予約
www.info@www-shibuya.jp
contactwindbell@gmail.com
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
予約ご希望の方は各公演・予約受付EMAIL address宛に
公演日時・出演者名を件名とし、
・お名前(カタカナフルネームでお願いします)
・予約枚数
・連絡先(メールアドレス、電話番号)
を明記の上、メールを送信してください。
ご入場は受付時にお伝えする整理番号順となります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
▶WWW・シネマライズ店頭販売
▶ローソンチケット[L:72848]
問い合わせ:WWW 03-5458-7685
主催:WWW
企画制作:WWW / windbell
イベント詳細URL → https://www-shibuya.jp/schedule/1304/003630.html

《出演者プロフィール》
■Josephine Foster
ジョセフィン・フォスター

アメリカ・コロラド州出身。
15歳で歌い始め、ロッキー山脈のログキャビン教会、葬儀や結婚式でも歌っていたという。
オペラ歌手になることを夢見てクラシックを学んだがシカゴ移住後自ら曲を書くようになる。
数年の間歌を教える教師として働くかたわら、Born Heller、The Children's Hour などシカゴの様々なバンドのライヴやレコーディングに参加。
自主制作でいくつかの作品をリリース後、2005年に1stアルバム"Hazel eyes I will lead you"をリリース。
2ndアルバム"A wolf in sheep's clothing"ではシューマン、ブラームス、シューベルトの歌曲を披露。
2009年リリースの4枚目のアルバム"Graphic as a star"は19世紀のアメリカの詩人・エミリー・ディッキンソンの詩に曲をつけた意欲作。
スペインの詩人・劇作家 フェデリコ・ガルシア・ロルカが採譜・編曲による
スペイン民謡集"Colleccion De Canciones Populares Españolas"に取り組んだ2010年リリースのアルバム"Anda Jaleo"、
スペイン各地に伝わる様々なトラディショナル、ソングブックの数々からの楽曲をとりあげた2011年リリースのアルバム"Perlas" の二作を
「Anda Jaleo/Perlas deluxe edtion」二枚組(WINDBELL four 112-113)としてリリースしたのが初の日本盤発売となった。
半年開けずにリリースされた最新作「Blood Rushing」(WINDBELL four 115)は
イギリスの雑誌「WIRE」の2012年のベスト・アルバムの一枚として選ばれ(発売時には表紙にもなっている。)、
ここ日本でも主にミュージシャン、DJたちが2012年のベストの一枚に選んだ。
ブリジット・フォンテーヌ、カレン・ダルトン、アネット・ピーコック、ニコ、バルバラ、ロッテ・レーニャ、ウム・クルスーム...など真のレジェンドたちに連なり、
まもなく名門NONESUCHから新作をリリースするデヴェンドラ・バンハートと同様に未来の子供たちが発見することになる現代を代表するアーティストの一人。
デビュー以来、最も来日が待望されていたアーティストの一人である彼女が遂に初来日する。

■灰野敬二
1952年、千葉県生まれ。非常に厳格な「音」へのこだわりをもとに、現在でも実験的な前進を続ける野心的な音楽家であり、ロック、サイケデリック、ノイズ、フリー・ジャズ、フ リー・ミュージックなど、扱う音楽のジャンルは非常に多岐に亘る。いかなるジャンルに着手するときにも極めてプリミティヴな即興性が大きな意味を持つ。
1970年代より活動を続け、常に新たなスタイルを探し続ける野心的な音楽家である。挑戦的で実験的な作品群は、日本のみならず海外での評価も高い。リリースしたレコードやCDは優に100を超える。ソニック・ユースのサーストン・ムーアをはじめ、彼を信奉するミュージシャンは世界的にも数多い。
一般的なイメージとしては、幾重にもエフェクトがかかったギターによる轟音とやや上ずったトーンでの絶叫や激しいヴォイスパフォーマンスをからめた、ノイズ的でもあるサイケデリック・ロックとガレージ・ロックの過激な折衷で知られている。しかし演奏する音楽のフォーマットはじつに幅広く、トラディショナルなブルースやジャズ、ハードコアにも意識を持つほか、哀秘謡において歌謡曲やフォーク、童謡、オールディーズなロックンロールをカヴァーしたり、雅楽や民族音楽(多くの民族楽器を我流でマスターする)、現代音楽、ノイズといったポピュラー音楽の埒外へのアプローチも行う。数々のジャンルのミュージシャンと多彩な共演を行う懐の深さを持ち、 演劇・舞踏・絵画といった他分野の芸術からの影響も大きい。
特筆すべき点はその音量に関してであり、尋常ではない大音量から微かに聴きとれるかどうかの繊細な音まで使いこなす。かつて「ライバルは雅楽」と述べたことから、轟音から静寂までといった極端なレンジ差をもった音楽は、「間」の感覚に関する延長線上のアプローチであるとされる。聴き取りにくいながらレパートリーの中には歌詞があるものも多く、音楽性の苛烈さと相反する内省的で柔らかなリリシズムを持ち味とする。
自らの作るべき気配を佇ませる場所を「黒」という色に求めており、身につける服や作品のジャケット等はほぼ黒一色に統一されてい る。また、黒という色は白を含め全ての色が混ざっており、黒という色のように全て(の音楽のジャンル)を内包したいと語っている。このことからも分かるように、彼は黒という色に対して並々ならぬ思い・考えを持っている。
2012年5月に還暦を迎え、7月には初のドキュメンタリー映画『ドキュメント灰野敬二』が公開された。

JOSEPHINE FOSTER & VICTOR HERRERO

■4月11日(木)神戸 bar Gospel
開場 19:00 開演 20:00
料金¥4000(1 drink + 1 plate Korean Tapas 付/限定 50 set)
予約受付 contactwindbell●gmail.com

■4月12日(金)岡山 城下公会堂
https://www.saudade-ent.com/index.php
開場19:00 開演20:00
料金 ¥3500(+1 drink)
予約受付 info●saudade-ent.com

■4月14日(日)金沢 shirasagi / 白鷺美術
https://www.shirasagi-art.net/
開場 19時 開演 20時
料金 ¥3500(前売)¥4000(当日)
予約受付 info●shirasagi-art.net
with 垣田 堂
https://do-kakita.cu-tablet.com/

■4月15日(月)大阪 Grotta dell Amore
(グロッタ・デ・アモーレ - ニューオーサカホテル心斎橋B1F)
https://www.newtone-records.com/
開場 19:30
料金 前売 3300円 当日 3800円
予約受付 info●newtone-records.com
with YOSHIMIOLAYABI (YOSHIMI with AYA+AI from OOIOO)
https://ooioo.jp/

■4月17日(水)京都 Urbanguild
https://www.urbanguild.net/
開場18:30 開演19:30
料金¥3500(+1 drink)
with 林拓
https://hayactaku.ciao.jp/

■4月18日(木)岐阜 nakaniwa
https://www.pand-web.com/
開場 19:00 開演 20:00
料金 前売¥3500 当日¥4000(+1 drink)
予約受付 info●pand-web.com

■4月19日(金)名古屋 KD ハポン
https://www2.odn.ne.jp/kdjapon/
開場18:30 開演 19:30
料金¥3500(+1 drink)
予約受付 kdjapon●gmail.com
with Gofish
https://www.sweetdreamspress.com/search/label/Gofish
https://dopplernahibi.jugem.jp/

■4月20日(土)立川 gallery SEPTIMA
https://galleryseptimablog.blogspot.jp/
開場19:00 開演19:30
料金¥3500(1drink付)
予約受付 galleryseptima●gmail.com
     contactwindbell●gmail.com

■4月21日(日)代官山 MAMA TARTE
開場20:00 開演20:30
料金¥4000(1drink付)
予約受付 contactwindbell●gmail.com

■4月23日(火)渋谷 WWW
https://www-shibuya.jp/index.html
開場18:30 開演19:30
料金 前売:¥3500 /当日:¥4000(共にドリンク代別)
予約受付
www.info●www-shibuya.jp
contactwindbell●gmail.com
WWW・シネマライズ店頭販売
ローソンチケット
出演:JOSEPHINE FOSTER&VICTOR HERRERO with 田中徳崇(Noritaka Tanaka)
灰野敬二 Keiji Haino
https://www.fushitsusha.com/
https://www.doc-haino.com/

予約ご希望の方は各公演・予約受付EMAIL address宛に
公演日時・出演者名を件名とし、
・お名前(カタカナフルネームでお願いします)
・予約枚数
・連絡先(メールアドレス、電話番号)
を明記の上、メールを送信してください。
ご入場は受付時にお伝えする整理番号順となります。

*上記予約受付Email address の●部分を@に差し替えてください。
予約受付 Email addressが明記されていない公演は
各会場HPからお申込ください。

ツアー全体詳細ページ
https://windbelljournal.blogspot.jp/2013/02/por-fin.html



Horace Andy - ele-king

 レゲエを聴かないリスナーが、マッシヴ・アタックの衝撃的デビュー作『Blue Lines』(1991)でホレス・アンディの存在を知ってから、もう20年以上経った。その後も彼の声はマッシヴ・アタックのブリストル・サウンドにとって透徹したフェティシズムの対象であり続け、今日まで彼らの作品に欠かせない要素になっている。そして、レゲエ歌手がモダンなダブ/エレクトロ・サウンドの"ヴォーカル・パート"に用いられるトレンドの嚆矢ともなった。
 もちろん、当初"トリップ・ホップ"と形容されたマッシヴ・アタックのサウンドはレゲエ、ヒップホップ、ダブ、ダウンビート、アンビエント等々のファクターを縫うものだったわけで、レゲエ自体とは薄からぬ血縁があった。しかし彼らの音のなかにレゲエから引かれていたものは、レゲエの軽快で陽性の側面よりもむしろ、鋭利な重量感に雄弁な精神性が宿るダブの前衛と、同時にそこからにじみ広がるアンビエントなサウンドスケイプであり、そこにメタリックな光沢さえ感じさせるアンディのハイ・トーン&ヴィブラート唱法が強烈なマッチングを見せたのだった。

 そうしたアンディの特質と合致した彼の代表作として、とくにマッシヴ・アタック以降のファンが愛聴するのが、NYの〈ワッキーズ〉レーベルに残された名盤『Dance Hall Style』だ。ここで聴かれる80年代初頭のワッキーズ・サウンドの、音が地面に重くめり込んで歪んでしまったかのようなドラム&ベイスの暴力的なブースト、それから硬く無機質なダブの質感は、それまでのジャマイカ産の音とは明らかに異なっている。そしてルーツ・レゲエの陰影から冷たい闇のエッセンスだけを抽出、培養したようなそのサウンドが、90年代以降のブリストル・サウンドや欧州のダブ・クリエイションの新潮流にとって、ひとつのプロトタイプとなったことは間違いない。マッシヴ・アタックが『Blue Lines』収録の"Five Man Army"でアンディに『Dance Hall Style』の収録曲"Cuss Cuss"や"Money Money"のリフレインを歌わせたり、続く2作目『Protection』では同じく『Dance Hall Style』収録の"Spying Glass"を丸々アンディ本人を迎えてカヴァーしたのは、自分たちのサウンドの指向性(ルーツ)のひとつを示した、リスナーに対する種明かし的啓蒙だと言えるだろう。

 2000年代に入って、その〈ワッキーズ〉レーベルのカタログがベルリンのテクノ・プロダクション/レーベル:ベイシック・チャンネルによってリイシュー配給されたことも象徴的な出来事だったが、その後もレゲエとディジタル・ダブとエレクトロニカの分野の相互干渉と拡張はヨーロッパ全体で実に自然な成り行きのなかで進行し、折りに触れてジャマイカの源流を仰ぎ見ながらも、独特の、低温度でダークでヘヴィーなサウンドを醸成してきた。

 本作はその"支流"の最先端から、またも欧州型ダブ・エレクトロ・クリエイションとホレス・アンディとの相性のよさを再発見しよう、という企画である。とはいえアンディは近年も(彼らもブリストル・サウンドの代表的ユニット)アルファとのコラボでアルバムを発表したり(『Two Phazed People』)、UKハウス界のレゲエ通アシュリー・ビードルとも、〈ストラット〉レーベルの人気の異種ジャンル交配シリーズ〈Inspiration Information〉の一環でアルバムを作ったり、クラブ・ミュージック・クリエイターからの引きが切れなかったゆえに、いまとなってはこの種の作品に新鮮味を感じない人も多いだろう。

 ただ、本作の出口はハンブルクのダブ・レーベルの名門〈エコー・ビーチ〉だけに、その支持者がヌルい音で満足しないことはプロダクション側が一番よくわかっている。参加したクリエイターはレーベルに縁の深い名だたる面々で、ブリストルの顔役ロブ・スミス(RSD)、ベルリン・レゲエ・シーンの重鎮フロスト&ヴァグナーのオリヴァー・フロスト、ベルリンのダブ・テクノ・クリエイターのラーズ・フェニン、オーストリア/ウィーンから世界的名声を獲得したダブ・バンド:ダブルスタンダート、スイスのダブ・ユニット:デア・トランスフォーマーetc.......。

 肝心の収録曲は、前掲"Cuss Cuss"や"Money Money"、さらには"Skylarking"など、アンディのクラシック・チューンの焼き直し。〈エコー・ビーチ〉は、UKの名レゲエ再発レーベル〈ブラッド&ファイアー〉の古典ダブ音源を新世代のテクノ・クリエイターにリミックスさせた刺激的な〈Select Cuts〉シリーズの発売元でもあるから、昔の曲を聴かせるならこれもリミックス企画でよかった、という声も上がりそうだ。あるいは、この面々の作る音で新たに吹き込むなら、新曲のオリジナル・アルバムが聴きたかった、という意見も出るに違いない。しかしながら、ミニマル・ダブもダブステップもブレイクビーツもクラシカルなダブのセオリーもすべてが手段として前提化している上に、楽曲自体にも目新しさがない、というところまで自らハードルを上げておいて、この面々でアンディ・クラシックスの2013年版を提示しようとするわけで、つまりはそのレーベルの野心とクリエイターそれぞれの手腕とイマジネイションこそがまさに聴きどころだと捉える人なら、多くの曲でかなりスリリングな体験ができるはずだ。

 7楽曲で15トラック。つまりダブ・ミックスへの展開まで収録した曲があれば、同一曲を複数のクリエイターがそれぞれのヴァージョンにいちから作り変えた曲もあって、豊かなヴァージョニング・アートの妙が展開される。といっても、奇矯なトラックやミックスで驚かせるわけではない。還暦越えにしてなおもみずみずしいアンディの声は、その美点を削がぬようにとても丁重に扱われている。そしてカネに狂わされる人間の性(Money Money)、仕事、階級社会、若者の退廃(Skylarking)、善悪観念(Bad Man)、争いごと(Cuss Cuss)といった普遍的な曲のテーマ、直截的でシンプルな歌詞のリフレインも入念に強調されながら、サウンドとヴォーカルの調和はどれも見事に保たれている。これエイドリアン・シャーウッドがアレで使った技じゃん、というようなツッコミが免れないパーツもあったり、全トラック同じように感心できるわけでもないが、1曲1曲が濃密な仕事の集積であることはたしか。12インチ・シングル4枚とかにバラして出してもらうとよろこぶ人も多いんじゃないか。

 微妙にムッシュ・アンドレやバンクシーもどきなグラフィティ仕立てのジャケットはぞっとしないが、中身はきちんとヨーロッパのストリートの音がする。さすがに20年前のインパクトは望むべくもないにせよ、この我らがレゲエ・レジェンドは、変わらず新しい音に興味と理解を示し、そしていまもその上で自分の特性をきちんとアピールできている。

フューチャー・ガラージの使者 Satol - ele-king


Satol
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Pヴァイン

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 昔クラブのフロアは、隣で踊っている人が見えないほどに真っ暗だったが、最近のクラブには闇がない。今日のインダストリアル・ミニマルにしろ、ニュースクール・オブ・テクノにしろ、ブリアル以降の流れは、クラブに闇を、暗さを、アンダーグラウンドを取り戻そうとする意志の表れとも言えないでしょうか。「フューチャー・ガラージ」と形容されるSatolも、そうした機運に乗っているひとりである。
 Satol(サトル)は、いわゆる新人ではない。一時期ベルリンに住み、すでに3枚のアルバム──『madberlin.com』(2010)、『Radically Nu Breed's Cre8』(2010)、『Superhuman Fortitude』(2011)──を出している。昨年、故郷である大阪に戻ってからは地元での活動に力を入れている。今回がデビューというわけではないし、すでにキャリアがある。とはいえ、〈Pヴァイン〉から出る新作『ハーモナイズ・ザ・ディファリング・インタレスツ』が、多くの人の耳に触れる最初の機会となるだろう。
 彼の音はブリアル直系の冷たく暗い2ステップ・ガラージの変形で、インダストリアル・ミニマルとも共通する音響を持っている。セイバース・オブ・パラダイスを彷彿させる刃物がこすれ合う音、ひんやりとしながらも、ダンスをうながすグルーヴが響いている。3月はO.N.Oとツアーをして、その闇夜のガラージを日本にばらまてきたようだ。
 彼の名前はまだ全国区になってはいないかもしれないけれど、Satolの作品が素晴らしいのは疑う余地のないところ。ブリアル~Irrelevant
Irrelevant~Satol......ニュー・インダストリアル、そしてフューチャー・ガラージの使者を紹介しましょう。



アンチ・エスタブリシュメントなところ、アナーキーなところ、反骨的なところ......やっぱあとは、自分が正直になれますよね。自分にも社会にも正直になれる。生きていれば、いつもニコニコしていられるわけじゃないですよね。だから「冷たい、暗い」というのは僕のなかで褒め言葉です。

生まれは大阪ですか?

Satol:愛媛の松山です。

では、大阪に住まれたのは?

Satol:僕が2歳のときからです(笑)。

そういうことですね(笑)。

Satol:いま親は、河内長野というところです。僕は、大阪市内です。

Satolさんはいまおいくつですか?

Satol:33です。

じゃあ、けっこうキャリアがありますね。

Satol:まあ、そう言ってもらえれば(笑)。

バンドをやっていたんですよね?

Satol:10代から20代にかけて、5~6年、バンドをやってましたね。

どんなバンドでしたか?

Satol:ハードコアです。

ああ、それって大阪っぽいんですかね?

Satol:そうですね。大阪にはハードコアがありますし、先輩もみんなどうだったんで。

いつぐらいからクラブ・ミュージックにアプローチしたんですか?

Satol:20代の前半のときにはヒップホップが好きでしたね。ウェストコーストも、2パックも、ノートリアスも、いろいろ好きでしたね。

ヒップホップのクラブには行っていたんですか?

Satol:20歳のときぐらいから行くようになりました。

DJはどういうきっかけではじめるんですか?

Satol:DJはやったことないんですよ(笑)。

えー、そうなんですか。ベルリンで暮らしながらDJやらないなんて......いちばんメシの種になるじゃないですか?

Satol:エイブルトンという機材、あるじゃないですか。僕はエイブルトンを使ってのライヴ・セットなんですよ。エイブルトンには自信があります(笑)。

先ほど、最初はヒップホップだと言ってましたが......

Satol:もっと最初を言うと、ブルー・ハーブとかなんですよ。精神的なものが大きかったんですよね。自分に正直になっていくと、まあ、いろいろなパイオニアも言ってることだと思うんですけど、自分に正直になっていくと、メロディが生まれてくるんですよ。悲しいことも思い出して、悲しいメロディも生まれる。それから、UKガラージのブリアルが好きになりましたね。

ブリアルがファーストを出したばかりの頃?

Satol:ファースト・アルバムです。

2006年ですね。それが大きなきっかけですか?

Satol:あと僕、ファッションが好きなんですよ。モードっぽいものが。

それがすごく意外ですね。パリコレみたいな?

Satol:そうそう、ミラノとか。あの、暗く、シュールな感覚が好きなんですよ。

好きなデザイナーは?

Satol:アレキサンダー・マックイーンは好きですね。

ビョークとかやってた......僕は、ジョン・ガリアーノとかの世代なんで(笑)。

Satol:格好いいですね。そういえば、ブリアルの曲は、絶対にショーで使われているだろうと思っていたら、アレキサンダー・マックイーンが使っていたんですね。

へー。まあとにかく、ブリアルがきっかけで作りはじめたんですか?

Satol:いや、ホントに最初に作りはじめたきっかけはブルー・ハーブとかなんですよ。ロジックとか使って、作りはじめましたね。クラッシュさんとか、ONOさんとか。

関西と言えば、クラナカ君とかは?

Satol:それが、僕は、まだお会いしたことないんですよね。

タトル君は?

Satol:いや、まだ知らないんです。

絶対に会ったほうが良いですよ。それはともかく、ブルー・ハーブがきっかけだったら、ラップを入れるでしょう。言葉が重要な音楽ですから。

Satol:ええ、そうですね。ですから、実は自分でそこもやっていたんですよ。

ラップしていたんですか?

Satol:いや、ラップというか......アンチコンのホワイの歌い方をアートって呼ぶらしいんですけど、頭のなかで浮かぶ言葉をオートマティックに出していく感じなんですけど、シュールレアリスムに似ているというか。それを僕もやっていました。それだとふだんは出てこないような、グロテスクな、ダークな言葉も出てくるんですね。だからラップじゃないですよね。ブルー・ハーブも韻を踏んでいますけど、アメリカのラップとは違いますよね。そこが好きでした。大阪だと土俵インデンとか。凄い研ぎ澄まされた人で、基本短髪な方で、僕らのイメージとしては僧侶みたいな人がいるんですけど、最初に自分でイヴェントをやったときに声をかけました。それとMSCの漢でした。

そこに自分も出て?

Satol:出ました(笑)。

ONOさんとツアーをまわるのも、その頃からの繋がりがあるんだ?

Satol:いや、全然なかったです(笑)。

ただ、いっぽうてきに好きだった?

Satol:ブルー・ハーブの全員が好きでした。ヌジャベスさんも好きでした。

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ただ、日本から逃げたみたいな後ろめたさもあったので、やり残したことをやってみようっていうか。そういう気持ちでしたね。日本の重力から逃れるのは良いと思うんですけどね。ビザは、僕にとっては、免許証みたいなものです。


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とにかく、2006年にブリアルを知って、それでガラージに行くわけですね。

Satol:はい。

そこから〈madberlin〉と出会って、それでベルリンに移住するまでの話をしてもらえますか?

Satol:まず、知り合い4人でクラブをはじめるんです。〈ルナー・クラブ〉っていうんですけど。テクノ、エレクトロ、ハウスに特化したクラブでした。あとは、自分がやりたいことをやってました。300人ぐらいのキャパで、入るときは400ぐらい来てましたね。そのクラブをやっているときにkill minimalを呼ぶんですよ。2009年ぐらいですか。

kill minimal?

Satol:マドリッドからベルリンに移住したヤツで、僕は本名でジュアンって呼んでるんですけど。

〈madberlin〉のmadって、Madridのmadだったんですね。狂ったベルリンじゃなかったんですね(笑)。

Satol:ハハハハ。マドリッドのほうとかけているんですけど、ただ、本人いわく「あのmadでもいいよ」と。

kill minimalを呼んだのは?

Satol:いっしょにやっていた連中が好きやったんですよ。ビートポートで聴いて、みんな好きだったんです。僕はあんま好きじゃなかったんですけどね。カローラ・ディアルっていう女の子とジュアンが〈madberlin〉をやっていたんですど、ふたりとも日本に来るのが夢だったみたいで、「ありがとうございます」みたいな、で、ふたりともスペイン人的な情熱的な人で、人懐こい人間で、それで、なんだか僕がふたりと仲良くなってしまったんです(笑)。そのときジュアンから、「エイブルトンを教えるから、おまえ、これでがんばってみろ」って言われて、教えてもらうんですよ。エイブルトンは、ベルリンに本社があるドイツのソフトなんですね。〈madberlin〉のアーティストのほとんどが使っていて、「難しいけど、面白い」って言ってましたね。ジュアンはベルリンで、そのソフトの使い方の講師のようなこともやっていました。

スペインは不況で、仕事がないから、多くの若者がベルリンにやって来たというけど、そのなかのひとりだったんでしょうかね?

Satol:ハハハハ、そんな感じだったと思います。kill minimalはいまは、ヨーラン・ガンボラ(Ioan Gamboa)という名前でやっています。

今回のアルバム『ハーモナイズ・ザ・ディファリング・インタレスツ(異なる利害関係を調和)』の前に、〈madberlin〉から3枚出しているんですよね?

Satol:はい。〈madberlin〉もかなりゆっくりやっているレーベルですから(笑)。

ベルリンに移住したのは?

Satol:いまから1年ちょっと前ですね。音楽活動が日本ではやりにくいかなと思ったんですね。いまは、反骨精神でがんばってますけど、でも、クラブで下手したらJ・ポップとか流れるんですよ(笑)。レディ・ガガとか。オールジャンルというか。

昔のディスコですね。ヒット曲がかかるみたいな。

Satol:そう、ディスコ化しちゃってるんですよ。

それはきついですね。

Satol:大阪はそうですよ。ガッツリ音楽をやっている人間には活動しにくいところです。

それでもう、ベルリンに行こうと?

Satol:そうです。後、特にクラブ摘発の件が大きく左右しました。

〈madberlin〉から作品を出しているという経歴もあって、アーティスト・ビザを収得できたんですか?

Satol:僕の場合は、マグレですね。簡単に取れる時期がありましたけど、いまは難しいです。

ユルかったですよね。

Satol:そうですね、昔はユル過ぎましたね。

良いことでしたけどね。では、ベルリンではジュアンたちといっしょに住んでいたんですか?

Satol:弁護士といっしょに(笑)。カイ・シュレンダーという。ハハハハ。彼のおかげです。

本当に良い友だちを持たれましたね。

Satol:ただ、いまは大阪でがっつりやっていますけどね。要するに、ビザが取れてしまったので、もういつでもベルリンに戻れるからっていうか、「もう一回大阪でがんばってみよう」って思うようになったんですね。ベルリンでがんばるんじゃなくて、大阪でがんばってみようって。

素晴らしい(笑)。

Satol:ホント、なんか、ギャグです(笑)。ただ、日本から逃げたみたいな後ろめたさもあったので、やり残したことをやってみようっていうか。そういう気持ちでしたね。日本の重力から逃れるのは良いと思うんですけどね。ビザは、僕にとっては、免許証みたいなものです。

今回リリースされることなった『ハーモナイズ・ザ・ディファリング・インタレスツ』ですが、何で、P-VINEから出すことになったんですか?

Satol:アンダーグラウンドなところを探すのが好きで、まあ、P-VINEをアンダーグラウンドって言ったら失礼かもしれないけど、とにかく送ってみて、そして栃折さん(担当者)に連絡しました。

Satolさんのスタイルは、「フューチャー・ガラージ」と呼ばれていますが、その定義について教えてください。

Satol:ガラージとダブステップの雑種ですよね。ブリアルの流れの、2ステップな感じで......。

ハウスのピッチで、アトモスフェリックで、それで、金属音のような効果音、ちょっとインダストリアルな感じもあって、アンディ・ストットなんかとも感覚的に似ているなと思ったんですよね。

Satol:ありがとうございます。アンディ・ストットは前から好きだったみたいです、名前は覚えないんですけど、曲は聴いてました。

Satolさんの音楽もひと言で言えば、非情にダークですよね。

Satol:ハハハハ、そうですね。

暗いなかにも艶があるというか。

Satol:日本では味わえないことをベルリンでは味わえるので、その経験も活かしつつ......。

ベルリンではクラブに行きました?

Satol:かなり行きました。たくさん行きましたけど、とくにベルグハインとトレゾアはすごいと思います。

どんなインスピレーションを受けましたか?

Satol:スタイルとしてはテクノやミニマルなんですけど、しかし音楽性は幅広いという、変な広がり方があって、それは影響されました。

しかし、冷たい音楽ですよね。

Satol:ゴス・トラッドさんは「ダーク・ガラージ」と呼んでくれました。

何を思って作っているんですか?

Satol:いや、もう思いつくままにやっています。ひたすら、テーマから逸れていくというか......僕は音楽をやる意味は、聴いてくれた人が前向きになってくれるかどうかなんです。

前向き?

Satol:外れたこと言ってるかもしれませんが、勇気というか。

このダークな音楽で? こんなアンダーグラウンドな音楽で?

Satol:ハハハハ、だから、逆にこんな音楽でもいいんだよっていうことをわかってくれたら。

こういうアンダーワールドな音楽のどこに価値があると思いますか?

Satol:アンチ・エスタブリシュメントなところ、アナーキーなところ、反骨的なところ......やっぱあとは、自分が正直になれますよね。自分にも社会にも正直になれる。生きていれば、いつもニコニコしていられるわけじゃないですよね。だから「冷たい、暗い」というのは僕のなかで褒め言葉です。冬だけど、でも、寒くないっていう感じでしょうか?

ああ、そういうことですか。

Satol:寒いけどやっていける、というか。

ブリアル以外に、Satolさんに方向性を与えた人っていますか?

Satol:ロシアのガラージですかね。名前は出てこないんですけど、ロシアのフューチャー・ガラージはよく聴いていました。

フォルティDLは?

Satol:やっぱ好きですね。

しかし、ブルー・ハーブ、DJクラッシュ、そしてゴス・トラッドというとひとつの世界が見えてくるようですが、Satolさんはそこにパリコレもあるんですよね(笑)。

Satol:いや、もう好きです。ウォーキングのときにかかる音楽が大好きです(笑)。

Chart Meditations 2013.03 - ele-king

Shop Chart


1

Ferial Confine - The Full Use Of Nothing Siren Records
英ドローン作家Andrew Chalkによる初期のノイズ名義、Ferial Confineの伝説的な85年録音ものが遂にCD再発。金属の軋みノイズの種を水分多めで育てあげ、野に放ち、野生化させたような、生々しく儚い感触があります。

2

Cankun - Culture Of Pink Hands In The Dark
Not Not Funでお馴染みのシンセシスト、Cankunの新LP。Co LaやHeatsick、Peaking Lightsらに通じる抜け感のポップさ、継ぎ接ぎのビートからは南国の風が吹き抜けて何処までも心地良くダンスします。

3

Robert Lawrence / Mark Phillips - The Dadacomputer: The Birth Of 5XOD Iceage Productions
81年の知られざるインダストリアル/電子音楽な怪作がCD再発。目玉はMinimal WaveのVAに収録されていたComputer Bankでしょう。早過ぎたアシッドハウス+インダストリアルとも言うべきバキバキの劣悪電子音が駆け巡ります。

4

MV & EE - Fuzzweed Three Lobed Recordings
ベテランのサイケ夫婦MV & EEの最新作。雄大なドローンのサイケデリア、優しく響くコーラスの調和、B面の組曲では爆発的な熱量のインプロ放出ありと、膨大な作品数と比例した宇宙ドローンの無限の広がりは目を見張るものがあります。

5

Gnod - Presents.. Dwellings & Druss Trensmat
サイケバンドGnodが突如として、ポストパンクやインダストリアル/ミニマル・テクノの黒い影響を感じさせる極圧振動ビートを発表。破壊力抜群で、再生した途端に目や耳には感じ取れない分厚く黒い雰囲気がモクモクと沸き上がります。再入荷予定あり。

6

Birds Of Passage / Je Suis Le Petit Chevalier / Motion Sickness Of Time Travel / Aloonaluna - Taxidermy Of Unicorns Watery Starve Press
現行地下シンセ界の強力女性作家4名によるスプリット2カセット。葉っぱや毛糸が挟み込まれたパッケージ+大判ジンという丁寧な作りで、フィジカルでこその感動があります。

7

CHXFX - The Unhaptic Synthesizer Further Records
Maurizio Bianchi、Kplr、Hieroglyphic Being、Conrad Schnitzler系の狂ったの出てきました。緩やかに起動した電子機器が徐々に勢力を増し、脱線&分離&集合を繰り返す強力な電子音の嵐。

8

Transmuteo - Transmuteo Aguirre
全新人類に...現行ニューエイジの雄、Transmuteoによる初LP。ナレーションに載せて満ちるデジタルの波、夕陽が浮かぶ楽園風景、神経内の機械都市が活発化するアシッド、ヴェイパー的スクリューなどなど、3Dヴァーチャルな世界観の更なる拡張がなされています。

9

Alex Cima - Cosmic Connection Private Records
シンセ狂レーベルPrivate Recordsより、79年のコズミック過ぎるディスコ/ジャズのカルト名盤が遂に再発。黄ばんだネオン管から広がる華やかな町並みや、快適な宇宙生活を夢見る幻想が、シンセの音色からモクモクと立ちこめて虜にさせてくれます。

10

S.M. Nurse - 30th Anniversary: 1980?-?1983 Domestica
80年代初期のオランダ地下のミニマルシンセユニットが発掘。プロト・テクノ/アシッドな熱量、秀逸なサンプリング、歪な電子音と男女ボーカルのダンスからなる圧倒的なグルーヴと、文句無しに唸らせられる必殺曲ばかりです。
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