「IR」と一致するもの

G.RINA - ele-king

ここのところのMELODY & DUBSTEP


1
Where You Should Be - Original Mix / Skream, Sam Frank

2
I Need Air / Magnetic Man

3
My Friends Will Always Say... / Faltydl

4
CMYK / James Blake

5
Maybe - James Blake Remix / Mount Kimbie

6
Better Off Alone / Kastle

7
Feel So Real / Rusko

8
Gaga / Dub & Run

9
The One / Terror Danjah ft Wiley & Sadie Ama

10

Cut You Down / High Rankin

interview with Sherard Ingram (a.k.a. Urban Tribe) - ele-king

ネット上で他人になりすましたり、他人のプライバシーに立ち入る、デマを流す、ネット詐欺といったIT技術の誤った使い方も氾濫している。思うに、社会の成熟が科学技術の進展の速さに追いつくことはないだろうから、こういったモラルの問題はどんどんおこるだろう。


Urban Tribe
Urban Tribe

Mahogani Music

 

 シェラード・イングラム、またの名前をDJスティングレー、より多くの音楽ファンのあいだではアーバン・トライブの名で知られる男......それはホアン・アトキンスからはじまるもうひとつのデトロイト・テクノである。それは地上を呪ったドレクシアであり、アメリカを"ファシスト・ステイト"と定義したドップラーエフェクトであり、そして"モダン文化の崩壊"をデビュー・アルバムのタイトルにしたアーバン・トライブ、すなわちオリジナル・ドレクシアの3人のメンバーであり、そのうちのひとりがシェラード・イングラムというわけだ。
 ドレクシアの死後、つまりゼロ年代以降、これら"もうひとつのデトロイト・テクノ"は、主にUKの〈リフレックス〉、ベルリンの〈トレゾア〉、ミュンヘンの〈インターナショナル・ディージェイ・ジゴロ〉、あるいはオランダの〈クローン〉によってプロモートされている。〈リフレックス〉はドレクシアの変名トランスリュージョンやアーバン・トライブ、〈ジゴロ〉はドップラーエフェトやジャパニーズ・テレコム、〈トレゾア〉はドレクシアとその変名のシフテット・フェイシズ、〈クローン〉はジ・アザー・ピープル・プレイス、ラブ・ラットXLなどといったドレクシアの変名......を出している。これらデトロイト・テクノにおける奇妙なダーク・エレクトロはヨーロッパにおいてそれなりの高い評価と人気があったのである。
 
 シェラード・イングラムによるアーバン・トライブは、1998年に〈モワックス〉から最初のアルバムを発表している。それから〈リフレックス〉で2枚のアルバムを残し、2010年の夏には4枚目のアルバム『アーバン・トライブ』を〈マホガニー・ミュージック〉から発表している。
 
 そしてこの9月、デトロイトとヨーロッパでのみ知られているアーバン・トライブとしてのライヴPA、そしてDJスティングレーのプレイ(筆者の知る限りでは、より深いアンダーグラウンドなフィーリングを持っている)がようやく日本で聴けるわけだ。以下、来日を控えたシェラード・イングラムへのメール・インタヴューである。

あなたが1998年に〈モワックス〉から発表したアルバム・タイトルが『The Collapse Of Modern Culture(モダン文化の崩壊)』でした。それから10年以上経った現在、あなたは"collapse"をどのように捉えていますか?

シェラード:資源の奪い合いや文化や宗教の違いによる衝突といったことは昔からあることだけど、最近の科学技術の急速な進歩は社会的・経済的な不確実性を世界規模でもたらしたと、多かれ少なかれ言えるのではないかと思っている。科学技術というのもは両刃の剣のようなものだ。30億塩基からなるヒトゲノムが解読されということは、何千年も人類を苦しめてきた疾患の治療にたしかにつながる。が、しかし、その新しい治療法は誰でもすぐにうけられるわけではないし、お金もかかるし、実際に臨床でつかうにはいろいろと技術的な整備も必要であるし、なによりも人体で(実際に効くかどうか)実験しなければならないという問題もまた生じる。また、いわゆるIT革命は、インターネットがないような地域は除いて、いろいろな人たちと情報を共有したり交流したりするのを可能にした。が、そのいっぽうで、ネット上で他人になりすましたり、他人のプライバシーに立ち入る、デマを流す、ネット詐欺といったIT技術の誤った使い方も氾濫している。思うに、社会の成熟が科学技術の進展の速さに追いつくことはないだろうから、こういったモラルの問題はどんどんおこるだろう。

当時、あなたは何故、どういう理由からあの言葉をアルバム・タイトルにしたんですか? 

シェラード:当時の世界や1990年代初期、中期の出来事を自分の視点から見たものに基づいている。都会のスプロール現象、政治的動揺、犯罪率の上昇、モラルの欠如や欲深さが世界の生命体を消耗していると思っていた。

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ミスター・オバマの選出は国の選挙や社会構成の信頼性を再生したと思うが、直面する国家の急務のために、一般的には都市の大きな変化に影響を与える充分な時間はなかった。人はみんなもう少し辛抱して、過程を見守るべきだと思う。

オバマ大統領になって時間が経ちますが、デトロイトに変化がありましたか?

シェラード:アメリカ国民のある階層の人たちのあいだには、ミスター・オバマの選出は活気のある影響力があり、国の選挙や社会構成の信頼性を再生したと思う。これはデトロイトにも同じく広がった。正直にいうと、直面する国家の急務のために、一般的には都市の大きな変化に影響を与える充分な時間はなかった。人はみんなもう少し辛抱して、過程を見守るべきだと思う。

あなたの名前を最初に知ったのは、〈レトロアクティヴ〉のコンピレーションに収録された"Covert Action"でしたが、あなたにとって公式に発表された最初の作品は何ですか? NASA名義で1987年に出した「Time To Party」?

シェラード:ははは! そうだ! 「Time To Party」は私の最初のレコードで、〈Express Records〉からリリースされた。

ホアン・アトキンスとはどういう風に知り合ったんですか? 彼があなたの音楽活動のきっかけだったんですか?

シェラード:ホアンとは私が〈Buy Rite Records〉(ケニー・ディクソン・ジュニアもリック・ウィルハイトも働いていたことがある)で働いていたときに出会った。我々(リック・ウィルハイト、スキャン7、ドネル・ウィリアムス)はホアンのスタジオでレコーディングをし、ホアンがミックスをした。

あの当時のあなたはどんな風に生活をしていたのですか? 音楽活動はしていたんですか?

シェラード:「Covert Action」は1990年に〈レトロスペクティヴ〉(カール・クレイグとデイモン・ブッカーのレーベル)からりリースされた、1990-1998年のあいだは〈MASS〉というデトロイト・ベースのレーベルから12インチを1枚出したり、レーベル〈KDJ〉の1枚の12インチ(Emotional Content。KDJ002とミスプリントされているが実は001)のミックスをやった。またNFDというプロジェクトの1曲をミックスした。バイカーズ・クラブみたいなところでDJもやってたよ。

DJスティングレーとしての活動が最初だったんですか? また、どのようにドレクシアと関わりを持ったのでしょうか?

シェラード:ジェームズ・スティンソンとジェネラル・ドナルド(ドップラーエフェクトほか)とは〈Buy Rite Records〉で出会った......。

1998年の『The Collapse Of Modern Culture』から2006年の『Authorized Clinical Trials』までのおよそ8年間は何をしていたんでしょうか? 

シェラード:音楽は続けてずっとやっていたが、無意味なプロジェクトに巻き込まれて、くだらない問題で気が動転してたんだ。いまはもう克服したけどね。

Mystic Tribe A.I名義では〈クローン〉レーベルからの1枚だけですか?

シェラード:そうだよ。ジェームズ(ドレクシア)とサージ(〈クローン〉の主宰者)のおかげだ。あの曲は『Collapse~』LPに収録されるはずだったんだが、外れて、ジェームズに聴かせると彼が気に入ってくれてね......。

音楽シーンから身を引こうと考えたことはありますか?

シェラード:その日が来るのは我々アーティストの情熱が無くなってしまったときだと思う。自分にはまだまだ提供したいモノがあるし、みんなに聞いてもらいたいモノがある。

当時、いきなり〈リフレックス〉からあなたの作品が出たときはびっくりしたものでしたが、〈リフレックス〉とはどうやって出会ったんですか?

シェラード:〈リフレックス〉のグラントとは〈ワープ〉の「Magic Bus Tour」にDJスティングレーとして参加したときに出会った。そして忘れてしまったが、どこかの空港で彼と会ったときいろいろと話し込んで、その2年後コネクトしたわけだ。

2006年に〈リフレックス〉から『Authorized Clinical Trials』を発表し、続いて翌年の2007年にもサード・アルバム『Acceptable Side Effects』を出しています。12インチ・シングルも〈リフレックス〉や〈プラネット・E〉、そして昨年は〈トラスト〉から出しています。今年に入ってからも〈プラネット・E〉からシングルを切っていますね。なぜ最近になってから堰を切ったようにリリースが続いているのでしょうか? 過去の20年よりも、ここ数年になって、あなたはますます熱心に音楽活動をしているように見えるのですが。

シェラード:気持ちが変わって、ネガティヴなところがなくなったんだと言っておこうか。またラップトップとAOLのアカウントも取得したしね! 機材もアップロードしてもっといろいろと表現できるようになったし、他の人やスタジオに頼ることなく、もっと時間をかけて、プロジェクトを完成できるようになった。

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デトロイトの人たちは逆境に強く、また用心深いが、メディアの差別的な要素が違うイメージにデトロイトを塗り替え、バランスの取れた報道を正直に試すことなく、ネガティヴなことだけを引き出した。

あなたの音楽の背景からは、ジャズやソウルなどからの影響も感じますが、やはり根底にあるのはエレクトロじゃないかと思います。ホアン・アトキンス、ドレクシア、ドップラーエフェクトといったデトロイト・エレクトロの系譜にいるんじゃないかと思うのですが、もしそうだとしたら、あなたにとってエレクトロが特別である理由はなんでしょうか?

シェラード:1980年代、1990年代当時"electro"という言葉に出会ったとき、"electro"は自分にとって他と違う何かを意味した。「自分はエレクトロのトラックを作ろう」と思ってやったわけでなく、いまのカテゴリーでは自分の音楽はそうはめこまれた。キミの言うグループや音楽ジャンルだけでなく、産業や自分の環境から結論を出している。自分自身をエレクトロのアーティストだとは思っていないし、もし自分の作品の全体像を聴いてもらえればわかってもらえると思う。けれども、自分は自由さを好むし、良いエレクトロという意味合いでの公然上のアプローチでなら大歓迎だ。個人的には4つ打ちでなく、フィルターのかかったシンセラインがあるものならなんでもエレクトロという言葉が使われているような気がするけどね。

あなたの音楽にはダークでメランコリックな要素があります。優美さや躍動ばかりではなく、悲しみ、怒り、醜さ、汚さのようなものも表現しているように思いますが、そうしたダークサイドは純粋にデトロイトという環境から来るものなのでしょうか? あるいは、具体的に影響を受けた作品がもしあるようであればぜひ教えてください。

シェラード:デトロイトはならずものや犯罪者によって動かさせていると認識されていると思うが、それだけではないと言わせていただこう。デトロイト市民の多くは勤勉で、家族を愛しており、彼らは税金もちゃんと払って、町を愛している。政治的な立場にいる人のなかには欲深く、町を改善するための資源(富)を分配しない人もいる。"醜さ"は都市圏を作り上げたコミュニティのいち部の人たちの差別や冷酷さであって、"汚さ"は町があまりにも急速に改善されると利益が無くなり困るいち部の人たちがいるからだ。こういった事柄が自分のサウンドに衝動を与えている。犯罪で支配されていて、仕事もなく、ここに住むのを拒んでいる、みたいな典型的なありきたりの見方ではなく。デトロイトの人たちは逆境に強く、また用心深いが、メディアの差別的な要素が違うイメージにデトロイトを塗り替え、バランスの取れた報道を正直に試すことなく、ネガティヴなことだけを引き出した。

"Low Birth"がとても好きなんですが、あれはどんな思いが込められているのでしょうか?

シェラード:ありがとう! スペルは正しくは"Low Berth"なんだけど、(注:〈モワックス〉からのシングルには"Low Birth"、アルバムには"Low Berth"とある)。社会的に不利な立場にいて、絶えて頑張ってそこから這い上がろうとする人を意味する。リスナーにインスピレーションを与えつつ哀愁の漂ったムードを沸き立たそうとした。

もうすぐ〈マホガニー・ミュージック〉から4枚目のアルバムが出るそうですね。すべて曲名が"Program"という言葉で統一されているらしいですが、コンセプチュアルなアルバムなのでしょうか? それはどのようなコンセプトのアルバムなのでしょうか?

シェラード:このLPはリスナーに音楽に集中してもらうのが目的だ。

いままでのどのアルバムとも違ったものになったと思うのですが、参加メンバーはカール・クレイグ、アンソニー・シェイカー、ケニー・ディクソン・ジュニア、そしてあなたの4人でいいんですか?

シェラード:私自身、アンソニー・シェイカー、ケニー・ディクソン・ジュニア、カール・クレイグ、それから何人かの新人も参加しているよ。

素晴らしい女性ヴォーカリストも参加していますね?

シェラード:これは機密情報。悪いね。

とても素晴らしい音楽だと思うのですが、1曲がすべて3分未満で、レコードでは片面に6曲ずつ入っています。これはどんな理由からですか?

シェラード:伝統を踏襲した分割とでも言おうか。

ケニー・ディクソン・ジュニアとはどんなところで気が合うんですか?

シェラード:自分と同じデトロイトウェストサイド出身の長年の友だちだよ!

来日でのライヴを楽しみにしています。どんな感じのショーになりますか? あなたの音楽のように、ハードで、ダークな演奏になるのでしょうか?

シェラード:今回は初来日なのでとてもエキサイトしているよ! 忘れられないsonic experience (音響体験)をしてもらえるのを楽しみにしているよ。

Urban Tribe (DJ Stingray, Sherard Ingram)

デトロイトのシーンに25年もの間関わり続けており、またデトロイトテクノ/エレクトロのカルト的存在であるDrexciyaのDJ、DJ Stingrayとしての活動歴をもつ。Urban Tribeとしても知られ、〈Mo Wax〉からリリースされた「Eastward」、アルバム『The Collapse Of Modern Culture』、また〈Retroactive〉からリリースされた「Covert Action」はUrban Tribeの代表作である。Aphex Twinのレーベル〈Rephex〉からは、よりエレクトロな作風で2枚のアルバム『Authorized Clinical Trials』と『Acceptable Side Effects』をリリースしている。2008年、自主レーベル〈Micron Audio Detroit 〉を始動。今年夏には、Anthony Shake Shakir、Carl Craig、Kenny Dixon Jr(Moodymann)が参加したUrban Tribeとしての最新アルバム『Program 1-12』を〈Mahogani Music〉からリリースしている。またその素敵なアルバムアートワークは『Wax Poetics』のアートディレクターJoshua Dunnによるもの。さらに今後は、Heinrich Mueller (aka Gerald Donald/Dopplereffekt)、Nina Kraviz (Underground Quality/Rekids)らが参加のUrban Tribeのアルバムをリリース予定とのこと。

https://www.myspace.com/djstingray313
https://www.myspace.com/micronaudio
https://planet-e.net
https://www.mahoganimusic.com
https://www.myspace.com/mahoganimusic313

DJ Stingray DJ MIX
(AT THE CAID DETROIT W/EGYPTIAN LOVER NOVEMBER 4, 2006 MEMBERS ONLY DETROIT/MICRON-AUDIO)
https://soundcloud.com/futurityworks/dj-stingray-c-a-i-d-stereotype-mix

DJ Stingray RA Podcast
https://soundcloud.com/futurityworks/dj-stingray-ra-podcast-190

石野卓球 - ele-king

 石野卓球という存在をはじめて知ったのはたしか92年か93年、僕がまだ小学3~4年生の頃だ。機械をいじるのが好きだった僕は、ある日父親からラジオのタイマー録音の方法を教えてもらった。当時、自分が眠っているあいだに世のなかでは何が起こっているのか? という、子供なら誰しもいちどは考える疑問を抱えていた僕は、これ幸いと手当たり次第に深夜のラジオ放送をエアチェックしまくった。そしてある日、たまたまテープに収められていたのが『電気グルーヴのオールナイトニッポン』だった。いちぶのギャグ(風俗ネタなど)は、何を言っているのか当時の僕にはイマイチわからなかったけれども、なんだかイケナイ世界を覗き見しているようでドキドキしたし、何よりそこでかかっていた聴いたことも無い音楽の数々には瞬く間に魅了されてしまった。

 この番組には毎週石野卓球がセレクトしたお薦め曲を紹介するコーナーがあって、当時バリバリの新譜だったオービタルの"ラッシュ"や、デリック・メイの"アイコン"なんかが取り上げられていた。あのオールナイトニッポンで、当時J-WAVEなどのFM局でもほとんど取り上げられていなかったアンダーグラウンドなダンス・ミュージックをガンガン流しまくっていた。ミニマル・テクノを流すときには「これはラジオの故障じゃないよ」というエクスキューズ入りだった。オールナイトニッポンというメディアなわけだから、当然聴いているのは熱心なクラバーや音楽マニアだけではない。深夜に受験勉強をしている中高生やタクシーの運転手、はたまた当時の僕のような小学生まで聴いているメジャーなメディアだ。加えてインターネット前夜である。ラジオはいまの中高生が思っている何倍も影響力があった。そこでハードフロアやらユーロマスターズやらを流しまくるというのは、当時は幼かったせいでなんとなく受け止めていたけど、相当パンクでラディカルな行為だ。石野卓球は、"シーンの種"を撒きつづけていた。

 いまでこそ多くの音楽の情報はインターネット上に並列的なアーカイヴとして存在していて、関心さえあればどこに居てもアクセスすることは容易い。しかしこの頃は、海の向こうのアンダーグラウンドな音楽シーンで何が起こっているのかを知るのは、そう簡単なことではなかった。そもそも、国内にしたっていまでは考えられないくらい情報的にも、物質的にも格差があった。東京のリスナーは放送の翌日にシスコやウェイヴまでレコードを買いに行くことが出できたが、僕のように地方で聴いていた人間はなす術も無かったわけだ。当時アンダーワールドの"REZ"が取り上げられたときに、この曲がどうしても欲しくて小学生ながら街のCDショップに買いに行ったことはいまでも忘れられない。結果はもちろん、けんもほろろにあしらわれておしまいだった。ビートポートで何処に居ても品切れも無く買い物出できることがどんなに幸せなことか! 僕にとっては"今週のおすすめ曲"だけを抜き出してダビングしたカセットテープがバイブルだった。気づいたときには、この音楽から完璧に逃れられなくなっていた......。けっして悪い意味じゃなく、完全に「踊らされて」いた。

 そしてそのままときは過ぎて、10数年たったいま、DJをしたり、音楽を作ったり、こんな文章を書いたりしている。僕も無数に居る"石野卓球に扇動された人間"のひとりだ。そして、世代的には僕より上の世代、つまりオールナイトを聴いて直ぐに行動を起こすことができた世代たちは、思い思いの手段で石野卓球の撒いた種を芽吹かせようとしていた。ある者はミニマル・テクノを......、またある者はトランスを......、ユーモア・センスとサンプリングという手法に感銘を受けた者はナードコアを......、ロッテルダム・テクノやユーロマスターズのサウンドに衝撃を受けた者は、現在J-COREと呼ばれているようなシーンに繋がるような活動をはじめた。石野卓球の撒いた種はもしかしたら本人の思う以上に広範囲に広がっていたのかもしれない。

 その後もソロ・ワークスや〈WIRE〉のオーガナイズなどを通じて、石野卓球がテクノ・シーンの発展のために尽力したきたのはご存知の通りだ。そこにはつねに、シーンの開拓者としての意識や気概のようなものを強く感じることができた。もちろん、そういう意識はいまも持ち続けているとは思う。

 しかし、前作から6年ぶりのソロ作である本作からは、いままでに無く肩の力が抜けた感じというか、リラックスしたムードが漂っている。それは本作がミニ・アルバムというフォームだからというだけではないだろう。そこには、この10数年で日本におけるテクノ・シーンがだいぶ成熟したことが関係していように思う。ベルリン発のニュ・ーハウスやミニマル的な感触のビートに、どこか『ベルリン・トラックス』の頃を思い出させる質感のパーカッションやシンセが重なる"Feb4"や、シンプルながらもオールドスクールなレイヴ感のあるシンセリフが印象的な"SpinOut"、跳ねたビートにチョップされたサックスのサンプルと「ポンポンポン、イヨォー!」というヴォイス・サンプルがエラく陽気な"Hukkle"など......、どれをとっても音から透けて見えてくるのはリラックスしてブースに立つ、シーンのなかのいちDJとしての石野卓球の姿だ。自らが種をまき、そしていまやしっかり根を張ったシーンと慈愛をもって対峙し、そして戯れているような印象も受ける。併せて感じたのが、いままでの作品と比べてもとりわけ石野卓球のドメスティックな部分、いうならば染み付いた手癖のようなものが音楽に反映されていることだ。いままではどこかに、海の向こうで起こっていることを咀嚼して伝えるという部分があったように思えるが、今作からそういうところはあまり感じられない。

 この後にもアルバムの予定が控えているらしいが、それが今作のように、ある種肩の荷が下りた状態の作品になるのか? はたまた新しく何らかの道標になるような作品になるのか? 現状ではまったく予想もできないが、僕としては楽しみでならないし、身体的にも精神的にも「踊らされる準備」はできているつもりだ。

Chart by UNION - ele-king

Shop Chart


1

MOODYMANN

MOODYMANN Black Mahogani PEACEFROG / JPN »COMMENT GET MUSIC
初期最高傑作「Shades Of Jae」、乾いたブレイクビーツと黒いベースラインの上で跳ねるフェティッシュなエレピが奇跡の恍惚感を放つ「Black Mahogani」等を収録したベスト的1枚。深みを極めたグルーヴがアルバム全体を支配した傑作中の傑作だ。

2

CRUE-L GRAND ORCHESTRA

CRUE-L GRAND ORCHESTRA (You are)More Than Paradise CRUE-L / JPN »COMMENT GET MUSIC
延期が続き日に日に問合せの声が耐えない(You are)More Than Paradise"のTheo Parrish Remix。既に国内の現場で数多くプレイされその度に独特なフロアの空気を作り出している。DJ Harveyが「最近の新譜の中で一番アメイジングだ」 と絶賛したのも頷ける圧倒的な存在感、こんな曲、他には無い。

3

PLASTIKMAN

PLASTIKMAN Kompilation MINUS / JPN »COMMENT GET MUSIC
現行ダンス・ミュージック・シーンのトップRichie Hawtinによる、幻覚体験を基にして始まったプロジェクトPlastikmanのベスト・アルバムが緊急リリース。初期の作品から一貫して実験的な音作りを進めてきたPlastikmanの集大成がここに刻み込まれている。

4

MARCELLUS PITTMAN (3 Chairs)

MARCELLUS PITTMAN (3 Chairs) Loneliness Leave Me Alone/Razz09 UNIRHYTHM / US »COMMENT GET MUSIC
浮遊感溢れるシンセがシャッフル・ビートと相まって独特の空気を醸し出すA面"Loneliness Leave Me Alone"、緩めのアシッド・シンセをアクセントに使いつつレイドバックしたメロウなサウンドがたまらないB面"Razz09"と、今作もPITTMANNのポテンシャルが遺憾なく発揮された実に魅力的な1枚。

5

SCHERMATE

SCHERMATE CD Volume 3 SCHERMATE / ITA »COMMENT GET MUSIC
リリースの度に反響を呼ぶミニマル・レーベル"SCHERMATE"の限定CD-Rシリーズ第3弾!今回はカタログ7,8,9番、そしてリミックス盤からPETER GRUMMICHのリミックスを抜粋! 恒例のSE集も充実したCD派も大満足の1枚! LTD200、ナンバリング入り。

6

UNKNOWN

UNKNOWN Rose 2 Red RAL(RICARDO AND LUCIANO) / GER »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOS & LUCIANOによるシークレット・プロジェクトシリーズ。今作ではST GERMAIN "Rose Rouge"をサンプリング、オリジナルのヴァイブを損なわずに、パーカッシブかつタイトにシェイプしたフロア仕様のキラーボム。

7

ANDRES

ANDRES Andres MAHOGANI / JPN »COMMENT GET MUSIC
Andresのレアな1stアルバムが再発。哀愁を帯びた統一感のある中に、ソウル、Pファンク~ラテン、サルサなどが絶妙にブレンドされ、Moodymannにも劣らぬコラージュと、デトロイト特有のざらつきがアルバム全体に散りばめられている。

8

DEE EDWARDS/S.L.P.P.O

DEE EDWARDS/S.L.P.P.O Why Can't There Be Love/Accelerate UBIQUITY / US »COMMENT GET MUSIC
プロモーションCMにて使用されたDee Edwardsの"Why Can't There Be Love?(Pilooski Edit)"が限定500枚でのリリース。さらに数々のMIXにも収録された、その人気レア・グルーヴのオリジナルをオフィシャルに収録、カップリング曲にはShawn Leeによる初期QUANTICを思わせるパーカッシヴな変則アフロビートトラックも!

9

UNKNOWN

UNKNOWN Eno + Hall RAL(RICARDO AND LUCIANO) / GER »COMMENT GET MUSIC
VILLALOBOS & LUCIANOによるシークレット・プロジェクト"RAL"!A面は 映画「HEAT」のサントラからBRIAN ENO "Force Marker "を、そしてB面は「2001年宇宙の旅」からHAL9000のヴォイスサンプルを借用したおもしろい1枚。

10

砂原良徳

砂原良徳 Subliminal Ki/oon / JPN »COMMENT GET MUSIC
その優美なフォルムで世界的な評価を獲得した「LOVEBEAT」以来となる5thアルバムに先駆けた4曲入り先行シングル。いしわたり淳治&砂原良徳+やくしまるえつこ名義でリリースしたシングル「神様のいうとおり」のサウンドもさすがというべき仕上がりでより時間をかけて丹念に制作したというその内容に注目。

Chart by JETSET - ele-king

Shop Chart


1

TAKKYU ISHINO

TAKKYU ISHINO CRUSE
»COMMENT GET MUSIC
石野卓球氏にとって6年振りとなるオリジナル・ソロ作品が遂に完成!!ほぼ毎週のように日本各国のクラブ、そしてフェスでDJを行っている彼のテクノ/ DJという側面にフォーカスしたダンストラック6曲を集めたミニアルバムが到着!!

2

V.A

V.A WIRE 10 COMPILATION
»COMMENT GET MUSIC
8月28日(土)に開催される国内最大級の屋内レイヴ・パーティー、WIREのオフィシャル・コンピ!!オーガナイザーである石野卓球氏、DJ Tasakaによる新曲を始め、現在のテクノ・シーンで「注目を集めるアーティストらによる楽曲が集結!!JET SET TOKYOにてチケット発売中です!!

3

MARK E

MARK E NOBODY ELSE
»COMMENT GET MUSIC
やはりこの男も進化しています。Mark E、文句無しの新作!!Alex From Tokyo、MCDE、Roman Flugel、James Holden、Roy Dunk(Wurst Music)、Tim Sweeney、Rozzo(Mountain People)、D'Julz等など各界からサポートの嵐!!

4

CASSIUS

CASSIUS 99
»COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆なんとFour TetとNathan Fakeリミックスを搭載。美し過ぎます!!リミキサーを務めたFour Tetの特大ヒット"Angel Echoes"でファン層を拡げたDominoオフシュートDouble Sixの至宝Jon Hopkins。今度は2大天才によるリミックス12"をお届けします!!

5

DIRTY BEACHES

DIRTY BEACHES TRUE BLUE
»COMMENT GET MUSIC
遂に入荷しました(号泣) Dirty Beachesのノスタルジック・リバーブ・ポップ激名曲!!Zoo Musicからの限定盤をリストック!!あるうちマストでお願いします。

6

BLACKBIRD BLACKBIRD / PAO PAO (FT. PRIZES)

BLACKBIRD BLACKBIRD / PAO PAO (FT. PRIZES) SPLIT
»COMMENT GET MUSIC
トロけ死にます。。。話題沸騰のフロウティング・チルウェイヴ・ユニット、超待望の初アナログ・リリース!!絶対オススメ★既にネット上で大変な人気を集めているサン・フランシスコの新星、Blackbird Blackbird。待ち望まれたアナログ・リリースが、ロンドンの新レーベルから!!

7

JNEIRO JAREL

JNEIRO JAREL AMAZONICA / SEE THEM CRY
»COMMENT GET MUSIC
噂の新作アルバム"Fauna"から未収録曲も含んだ限定7"が登場!どちらも心地良すぎるダウンテンポ・ビートを展開する要注目の2曲です。特に、Cilla KをゲストVo.に迎えた"See Them Cry"はこの盤でしか聴けません!

8

BILAL

BILAL AIRTIGHT'S REVENGE
»COMMENT GET MUSIC
この内容の濃さ、文句無し!! 待望過ぎるBilalの新作アルバムが到着。Shafiq Husayn(Sa-Ra)、Nottz、88Keys等「間違いない」メンツと仕上げた全11曲、最強のカムバック作です

9

PARIAH

PARIAH DETROIT FALLS
»COMMENT GET MUSIC
☆歴史的傑作デビュー10"☆James BlakeやGold Pandaファンは確実にどうぞ!!天才James Blakeの"CMYK EP"が爆裂ヒット中のベルギー老舗から、またしてもロンドンの超新星がデビュー。エディットとパウダーシュガー音響が魅力の新型です!!

10

PETER'S HOUSE MUSIC

PETER'S HOUSE MUSIC JUMP
»COMMENT GET MUSIC
ブルックリン発・注目の新興レーベル"All Hands Electric"からの新作が面白いです。当店インディ・コーナーで御馴染みの"Silk Flowers"のメンバーでもあるPeter Schuetteソロ・デビューEP!!

Martina Topley Bird - ele-king

 マルティナ......といえばトリッキーのデビュー・アルバムのパートナーで、シングル「オーヴァーカム」のジャケットを思い出す人もいまだに多いだろう。化粧をして女装したトリッキーの隣に座っていたチャップリン姿の彼女――デヴィッド・リンチの映画に憧れているような、ブリストルのエキセントリックでちょっといかれたカップルを気取ったあの写真だ。

 良くも悪くも、マルティナのキャラクターは、『マキシンクェーイ』で決定している。彼女はトリッキーが演出した残酷劇場のヒロインであり、暗い回廊の怪しげな案内人で、彼女はその役を見事に演じ、そしてトリップホップのファーストレディとなった。ビョークが太陽だとしたら彼女は月で、怪物に恋をする女だった。あのパーティの時代、女性シンガーはたびたび夢の世界のガイドを務めていたものだが、陽気な笑い声に飽きた連中が選んだのが、マルティナ・トプレイ・バードだった。

 あれが1995年だから、15年後の、そして彼女にとっての3枚目のソロ・アルバムがロンドンの〈オネスト・ジョンズ〉から出ることになった。『サム・プレイス・シンプル』は、マルティナが初めてトリップホップの呪縛から逃れた作品である......といってもこれは過去2枚――主にデンジャー・マウスと作ったセカンド・アルバム『ザ・ブルー・ゴッド』から選曲した11曲の新ヴァージョンと4つの新曲による、いわば編集盤である。そして、『サム・プレイス・シンプル』というタイトルが示しているように、トラックは彼女の歌と声を際だたせるためにいたってシンプルな構成へと差し替えられている。これは世話好きのデイモン・アルバーンのアイデアで(マルティナはザ・ゴリラズの『デイモン・デイズ』、マッシヴ・アタックの『ヘリゴランド』にも参加している)、彼のスタジオで1週間かけて録音しなおしたという話だが、実際この路線は素晴らしい結果を生んでいる。

 耳障りなエレクトロニック・サウンドは控えめな生楽器に差し替えられている。ウクレレ、オルガン、エレクリック・ピアノ、タンバリン......音楽から肉ははぎ取られ骨と彼女の声だけが残されている。そしてサッドコアの女王と呼ばれたキャット・パワーもしくはポーティスヘッドのような"悲しい女"の感覚はより美しく研ぎ澄まされている。ウクレレで歌われる"ベイビー・ブルー"、オルゴールの音色とスキャットの"ダ・ダ・ダ"、物憂げなワルツ"オーキッズ"、エレガントでジャジーな"ヴァレンタイン"、ピアノの伴奏のみで歌われる"キス・キス・キス"......アルバムは支離滅裂だが、何度でも最後まで繰り返し聴いてしまう。どこにも到達することなく宙づりにされたマルティナは、しかし歌うことで呼吸しているようである。そしてリスナーは彼女がなぜ『マキシンクェーイ』のヒロインとなったのかをあらためて理解する。

高橋透 (GODFATHER / Smoker) - ele-king

最近よくプレイしたテクノ中心で


1
Richie Hawtin - The Tunnel_Original Mix. - Minus

2
Cassegrain - Cotton_Original Mix - Mikrowave

3
Jesper Dahlback - Samba OJ_Original Mix - International Sound Laboratory

4
Mike Shannon - Under The Radar feat Fadila_Deadbeat Mix - Cynosure Records

5
Aldo Cadiz_Antonio De Angelis - Thunder_Original Mix - off

6
dOP_Wareika - PlayPlay Play_Original Mix - Watergate Records

7
Samuel L Session - Inner City Dust_Part 2 - Figure

8
John Talabot - Sunshine_Luke Abbott Remix - Hiven Disc

9
Margot - Punch_Original Mix - Margot Records

10
Antix - Miro_Original Mix - Iboga Records

Den (Trapez / Op.disc) - ele-king

Summer 2010(alphabetical order)


1
Cassy - Seteachotherfree - Perlon

2
La Pena - La Pena #7 - La Pena

3
Lb/Ko - Fre/Dad - Pup Music

4
Mark Henning & Den - La Galaxia Llorona - Trapez Ltd

5
Melchior & Pronsato - Puerto Rican Girls - Smallville

6
Now This Is Congo - Tribal Gathering - Sacred Rhythm

7
STEREOCiTI - Cosmoride - Mojuba

8
STL - Traveling Dubs And Echoes - Echocord

9
Various Artists - The Helping Hand - House Is The Cure

10
Yaya - Ca Na Negretti - Carnibal

DJ SHUI - ele-king

BEAT COLOR VINYLIST 2010 MY BEST10


1
Arthur Oskan - Look Up - Beretta Music

2
Louis Guilliaume - Beyond The Stars(Heat Of The Storm Remix) - Sd Records

3
Taster Peter - Bombscare(Original Mix) - Hell Yeah Records

4
Pub - Feeling Engine - Alchemy

5
The Fireman - Strawberries Oceans Ships Forest - Palophone

6
Jenifa Mayanja - Unveiling You - Bu-Mako Records

7
Lump - Shot Bobby - Blues

8
Seefeel - More Like Space - Too Pure

9
Muslimgauze - Fond Memories Of Ldiamin - Important Records

10
Rising Sun - Sun Dance(Sven's Latennight Dub) - Realsoon

DJ Monolith(miston) - ele-king

King & Queen Chart


1
The Basement Boys - Love Don't Live Here No More - Jump street records

2
Ruffneck featuring Cheri Williams - The Power-The Rhythm - New York Underground Records

3
Musto & Bones - Dangerous On The Dancefloor - CITYBEAT

4
Sub Sub - SPACE FACE TECHNO TODD DUB - TEN RECORDS

5
The Reese Project - Direct Me - Network Records

6
C.F.M.Band - LET'S GO TAP DANCING - UNDERWORLD Records

7
Kenlou - The Bounce - MAW RECORDS

8
Tikkle - Movin On - HOUSEJAM RECORDS

9
Logic - BLUES FOR YOU - Strictry Rhythm Records

10
Slam - Positive Education - Soma Quality Recordings
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