「AY」と一致するもの

[house & techno] #3 by Kazuhiro Abo - ele-king

1. Munk / La Musica | Gomma


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 このところは梅雨のバッドヴァイブスに完璧に日々ノックアウトされている。今年は入梅が遅かったせいか梅雨のジメジメに夏のムンムンまでプラスされ、それこそヴァイナルもカビれ! もしくは曲がれ! という勢いだ。そういえば、友人曰く日本の気候っていうのはだんだん亜熱帯に近づいているらしい。たしかに最近スコールのようなゲリラ豪雨も多いし、ともすると未来には日本もマラリアの流行地帯になる可能性すらあるとか。また、レコードディガーの別の友人曰くやっぱりレコード文化が残っている国というのは湿度が低い国が多いらしい。だから東南アジアとかの古いレコードをいい状態で手に入れるのは至難の業なのだとか。そんな話を思い出しつつ、我が家のレコード部屋の行く末を遠い目で案じる日々だ(水とりぞうさんを設置しながら)。
 そんなわけで、前回のサウンドパトロールでは「梅雨どきには暗いレコードが聴きたくなる......」などと書いておきながら、今年の梅雨の予想を超えたハーコーっぷりに完璧、前言を翻している。雨だけなら良いが、この暑さとのダブルパンチを食らいながら陰鬱なレコードなんか聴いてしまっては苦笑ひとつできなくなってしまう。そこは僕も人の子なので、こういうときはついつい景気がいい音に手が伸びる。
 そこでまず紹介するのは、先日ジョナス・インベリーが脱退し、マティアス・モディカのソロユニットになったムンクのEPだ。どことなくラテンの匂いがするベースラインにピアノがユニゾンするフレーズや、フックの清涼感溢れるシンセのコードワークだけとればコテコテのサマーチューンなのだが、そこはムンク、一筋縄ではいかない。いたるところにエレクトロ・パンクやニューウェイヴの毒っけを混ぜてくる。過剰にゴリゴリしたベースの音色も軽い違和感をもって耳に残るし、後半登場してくるFM変調を過激に使ったアシッド風シーケンスも印象的だ。夏っぽい女性ヴォーカルとスキャットが心地よいが、そこに暑苦しいダミ声のオヤジヴォイスが絡んでくるというのもいろいろな意味でニクい。
 この感じ、どこかで聴いたことがあるな? と思いつつ聴いていたのだけれども、思い出した! DAFのヴォーカル、ガビ・デルガドと元リエゾン・ダンジュルーズのサバ・コマッサとのユニット、デルコムだ。ジャーマン・ニューウェイヴ×バレアリック×アシッドという組み合わせからはやっぱりデルコムの匂いがする。スエーニョ・ラティーノの影響を受け当時ラテン・アシッドとすら言われたあの折衷感に、かなり通じるところがあるんじゃなかろうか。
 リミックスには昨年の日本ツアーも好評で、先日DJ CHIDAのレーベル〈Ene〉からシングルをリリースしたポルトガルの奇才ティアゴを起用。こちらはシンセ・ベースが裏打ちになり、よりサイケディスコ感を強めたリミックスになっている。ダビーな音響処理が施されたシンセリードは空間を切り裂くように鋭く、ロッキンだ。azari & IIIのリミックスに至ってはシンセ・ストリングスのコード弾きとベンドするシーケンスがモデル500みたいだ。
 なんにせよ折衷的なシングルになっているが、どのミックスもジャーマン・ニューウェイヴというところで1本筋が通っている。ラテン・フレーヴァーがするのに極めてドイツっぽい1枚。

2. Tiago / Rider | Ene Records

 DJ CHIDAが主催し、東京地下シーンとワールドワイドな地下シーンをシームレスに接続しているレーベル〈Ene〉の3枚目は、前述のムンクのリミックスもかっこよかったティアゴの12インチ・シングルだ。4月のサウンド・パトロールでも取り上げた前作は東京屈指のコズミック・ディスコ・バンド、スライ・マングースvs北欧のディスコ王子、プリンス・トーマスという組み合わせだったが、今回はリミキサーにイセネエヒヒネエ所属のデュオ、コス/メス(COS/MES)がフィーチャーされている。
 ティアゴによるオリジナルは、プログレやクラウトロックの影響を感じるドラムレスなサイケ・チューンだ。3連のシンセベースが延々ステイし、ビートはシンプルなパーカッションのみ。ミニマルに反復するリズムの上に、サイケロック調のピアノやハモンド・オルガン、そしてスパイス的にマリンバとシンセストリングスが添えられる。シンセ・ストリングスも基本的にはピアノのフレーズと同調するもので全体としては押し殺したようにストイックかつヒプノティックな作風だ。ジャン・ミッシェル・ジャールの作品に通じるような暗さもある。ムンクのリミックスで見せたアグレッシブなアプローチは完全に影を潜めている。
 そもそもティアゴはその作風の広さに定評がある。いままでも数多くの変名を使い分けて音楽活動をおこなっており、例えば変名のひとつであるスライト・ディレイ(Slight Delay)名義では、90sピアノ・ハウス・ミーツ・ビートダウンといった趣のトラックや、オールドスクールエレクトロ・ミーツ・バレアリックのようなクロスオーヴァーな作風を見せるなど、とにかく多才だ。
 コス/メスのリミックスは、そもそもドラムが鳴らないこのトラックをヒプノティックな側面を保ったまま10分越えのサイケ・ディスコに昇華している。クイーカの音が印象的な2分に渡るイントロの後ようやくと太いキックが鳴りはじめ、その後も派手な展開は無く、ひたすらストイックに10分間をフルに使ってジワジワと楽曲をビルドアップしていく。中盤ではデニス・フェラーの"サンド・キャッスル"をぐっとピッチダウンしたようなフレーズが現れ、そして終盤で頭上を旋回するようなシンセ・ソロとオルガンのリフが現れるという構成はとにかく「ハメる」ためのトラックという意図を強く感じる。
 このシングルには、このコス/メスのリミックスをDJ CHIDA自身がさらにリエディットしたヴァージョンも収録されている。こちらは、ダンストラックとしての強度をさらに増して、90'sハウスのエッセンスを追加したような仕上がりだ。オールドスクール・ハウス的なリズムマシンによるフィルインや、レイヴ感のあるシンセリフが追加されており、よりトラックにメリハリがついている。個人的にDJで使うならこのヴァージョンだろうな。

3. Kyle Hall / Must See EP | Third Ear


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 先日急逝したカガミしかり、ハタチそこそこで〈R&S〉の社長のレナードに「んで、いくら欲しいんだ?」と言わしめたリチャード・D・ジェイムスしかり、若く、そして底知れぬ天賦の才を感じさせる作り手の登場は、それだけで血沸き肉踊るものがある。デトロイトのジャズ・ジャイアント、ローランド・ハンナの甥っ子としてこの世に生を受けた現在19歳のカイル・ホールもまた、そんな存在のひとりだ。17歳の頃にオマー・Sのフックアップでシーンに認知され、カール・クレイグがウォンキーをやったようなシングル『ケイチャンク/ユー・ノー・ホワット・アイ・フィール』を名門〈ハイパーダブ〉からリリースしたかと思うと、〈ムード&グルーヴス〉からはメロウなエレピをフィーチャーした小洒落たジャジー・ハウスをリリースするなど、そのオープン・マインドな作家性も魅力的だ。野田努氏的にもストライクといったところだろう。
 〈サード・イヤー〉からリリースされた今作は、独特に荒れたビートの質感が印象的なデトロイト感溢れるディープ・ハウス・トラックだ。セオ・パリッシュのくすんだ黒さにも通じる独特の汚し感覚は、彼に深く刻み込まされたデトロイトの遺伝子を感じさせる。A2に収録された"ゴーステン"は、MPC1000を使用している(YouTubeの動画で確認できる)ことに起因していると思われるヒップホップ的なビートの荒れと、流麗なピアノとシンセの対比が美しい。
 この曲や、B2に収録されている"ボディ・オブ・ウォーター"からは随分と大人びた印象を受けるが、B1に収録された"OSC2"では、リズムマシンと、タイトルどおりふたつのオシレータのみを使ってリズムがヨレヨレのヘンテコなミニマル・テクノを作るような遊び心も健在だ。コンピュータを使っておらず、MPCで完結しているからだろうか、全曲通して非常に編集が荒っぽい。ブッツリとパートがミュートされたり、「あ、ストップボタン押したな」という感じで曲が終わったりする。でも、それもまた妙にデトロイトくさくていい。願わくばこの先ずっとPC使わずにこのスタイルを貫き通して欲しいな。
 ところで、このように才能溢れる10代は実は日本でもちゃんと出現している。カイル・ホールの作品を聴くたびに、そしてYouTubeでおもちゃのキーボードやらシンセやらサンプラーと戯れているその姿を見るたびに思い出すのは、同じく19歳の奇才トーフビーツだ。高校生だった17歳の頃に石野卓球主催の屋内レイヴ〈WIRE〉のサード・ステージの新人アーティスト枠に抜擢されたり、またカイルと同じくヒップホップマナーでラフなビートの質感と、おそらく手癖なのだろう、小洒落たキーボードのフレージングなどある種のシンクロニシティとでも言うべきか、被るところが多い。彼が今年の1月にユーストリームで披露した即興ライヴ・パフォーマンスは、デトロイト/シカゴファンにが見ても相当面白いと思うので併せて紹介しておく。(https://www.ustream.tv/recorded/4067945)
 また、7月18日には早稲田のクラブ・茶箱にて18歳のDJやアーティスト出演者が全員18歳(大学受験生)のサンデー・アフタヌーン・パーティがおこなわれる。最近話題のレーベル〈マルチネレコーズ〉からもリリースしているダブステップ少年miiiや、ジロー・シロサカ、関西からはどす黒いシカゴ・ハウスを卓越したテクニックでスピンすることで話題を呼んでいるDJ、アフロミュージック(AFRMUSIC)も参加するというこのパーティ、若い芽チェッカーな人は無視できないだろう。この国にもカイル・ホールに匹敵する才能はきっとゴロゴロ眠っているはずだ。

4. Simon Hinter / Take Care EP | Phil

 さっきのカイル・ホールもそうなのだけれども、ここ最近はイーヴン・キックな曲でもビートにちょっとした引っ掛かりみたいなものがある曲が気に入っている。〈プロッグシティ・ディープトラックス〉などから有機的なテック・ハウスをリリースしているサイモン・ヒンターが新設した自身のレーベルからリリースしたのは、オーガニックな持ち味をさらに前進させた、一風変わったディープ・テック・ハウスだ。
 まず、表題曲になっている"テイク・ケア"は、6連を基調としたタップダンスのタップ音のソロとアコースティック・ピアノで幕を開ける。やがてイーヴン・キックが現れ、ベル系の音色でメランコリックなメロディを奏でる。スウィングするビートと、鍵盤の絡み、物憂げな世界観などはドクター・ロキットが〈インナーヴィジョンズ〉以降のテック・ハウスをやっているみたいだ。エレピやパイプオルガン、民謡からサンプリングしたような女性ヴォーカルなどのフォーキーなマテリアルはグラニュラーシンセシスによって引き伸ばされたり、再構築されたりしてざらついた、しかし何故か耳に優しい音に加工されている。
 B1に収録された"ナイト・ライツ"では、デトロイティッシュな寄せては返すシンセパッドにジャジーなアコースティック・ピアノを併せた白眉のアンビエン・トハウスだ。ここでもシンセ・パッドには複雑な滲みを伴ったフィルターがかけられており、エレクトロニカ以降のテクノロジーを自由自在に使いこなしているという印象を受ける。それでいても音は電子音電子音せずにどこまでもオーガニックな印象だ。
 B2収録の"ミスター・ブルー"で聴ける冒頭のアコースティック・ギターにしてもそうなのだが、実際にギターを弾くとしたら明らかに不自然なベンドの仕方をしているのに、不思議と違和感を感じさせず体に染み込んでくるようなマジックがサイモン・ヒンターの音にはある。この感動は、レイ・ハラカミのサウンドを初めて耳にしたときの感動にも近いかもしれない。
 ところでこれは余談なのだが、この盤はグレーのカラーヴァイナルになっている。最近レコード屋にいって思うのは、一時期とくらべてカラー・ヴァイナルやクリア・ヴァイナルの数がかなり増えたことだ。DJもデジタルデータを扱うのがごく一般化して久しいが、そのなかでヴァイナルにこだわってリリースするからには、物としての価値を高めようという方向に向かっているのだろう。ジャケットのアートワークも面白い物が増えた印象だ。個人的にもアートワークはやっぱりあの大きさで見たい。

5. Moebius / Light My Fire | Light Sound Dark


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 最後に、ともすると「珍盤」というカテゴリーにすら入りかねないがグッと来た1枚を紹介しよう。"ライト・マイ・ファイヤー"というタイトルのこの盤は、"ハートに火をつけて"の邦題でも御馴染みなドアーズの名曲"ライト・マイ・ファイヤー"のシンセ・カヴァーだ。初出は1980年だというこのヴァージョン、今回の再発にあたってマドンナをプロデュースしたことでも知られるミルウェイズによるリミックスと、エクステンド・エディットが収録されている。
 ちなみにこのレコードを作っているメビウスというアーティストには二説あって、ひとつは70年代の終わりから80年代にかけて活動していたロスのシンセバンドのメビウス。もうひとつはクラスターやハルモニアとして活動しているディーター・メビウスの作という説。個人的には前者じゃないかと思うんだけれども、はっきりしていない。
 それこそガーション・キングスレイの作品だったり、クラフトワークの『アウトバーン』なんかにも通じるように、シンセサイザーの音というのはどこかカートゥン的な側面がある。とくに80年代のシンセポップ的な音にはその傾向が顕著で、例えばダニエル・ミラーのシリコンティーンズだったり、〈アタタック〉からリリースしていたアンドレアス・ドラウの作品からは子供の遊び感がプンプンしていた。
 今回のメビウスによるカヴァーも例外ではなく、そこからはジム・モリスンが纏っていたシリアスさというのは微塵も感じられない。どちらかというと、ドラウの"フレッド・フォン・ジュピター"なんかに通じる牧歌的な感覚さえ覚える。ミルウェイズによるリミックスは流石のスキルで現代的なディスコ・エレクトロにブラッシュ・アップしているが、肝心のヴォーカルが妙にヘロヘロなのでイマイチ格好つけきれていないところが逆に良い。
 後半、ヴォーカルをオートチューンによって局所的に変調させているのだが、ミルウェイズは本来ヘロヘロなピッチをアジャストするためのテクノロジーであるオートチューンを使って、ヴォーカルにデタラメとも思えるビブラートを付加してさらにヘロヘロにしている。その開き直りっぷりが小気味よい。クールでスタイリッシュなのも大事だが、それだけじゃパーティはきっとつまらない。こういう、言ってみればバカバカしくもあるレコードもまた夜の宴には欠かせないものだと思う。

interview with Seiichi Yamamoto - ele-king


山本精一 / Playground
P-Vine

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 Dommuneで6月10日に放送したPhewの「45回転であいましょう」の司会をした私はゲスト出演した山本精一の歌を隣で歌詞カードに記した特徴のある文字を目で追いつつ聴きながら、彼の歌をまぢかで体感できる至福を感じた。そのときはまだこのアルバムを聴いていなかったが、あれから何度も『Playground』を繰り返し聴き、なぜこれはこう何度も聴いてしまうのか考えるうちに、考えるよりも聴くのがおもしろくなった。
 山本精一の『Playground』はサイケデリックでありながらアシッドであり、ソフト・ロックの音色のイメージも抱かせるが、身辺雑誌のように親密な気持ちにもさせる。つまりこの50分弱にはきわめてシンプルにみえても多くのものが入っている。ここしばらくPARAのようにコンセプトを濃縮したグループや、企画作品、あるいは羅針盤や想い出波止場の再発などであいかわらずその名をみなかった時期はなかった山本精一の精髄は私はやはりソロにあり、その極点と思った『なぞなぞ』から7年、Phewとのダブル・ネーム『幸福のすみか』からすでに12年、「歌もの」という音楽のあり方を決定づけた羅針盤が終わりを告げてもう6年も経つ。山本精一は『Playground』を粗く、やりたいように、まちがってもいいと思いながら作ったといった。「遊び場=Playground」にいたように。しかしそう思ったとき、このひとは本領を発揮する。

このアルバムでは自分の部屋のなかと、半径500メートルくらいまでの範囲を表しています。そこでは基本的になにも起こらないんですよ。なんにも起こらないところでどうやって歌ができていくのか、それを試したかった。

『Playground』は資料では「6年ぶりの歌ものアルバム」となっていますが、どこから数えて6年目なんですか?

山本:羅針盤です。最後のアルバム『むすび』を録っていたのが04年なので、6年というよりは5年ぶりかな。

曲は書きためていたんですか?

山本:ライヴでやっている曲ばかりですよ。

いちばん古い曲は?

山本:みんな同じくらい。"飛ぶひと"だけはPhewとの98年の『幸福のすみか』のときですね。

なぜ"飛ぶひと"を再演しようと思ったんですか?

山本:ライヴで演奏しているからです。なんの狙いもなく、最近のライヴを作品化しただけですよ。

作品としては作りこんだ面もあると思いますが。

山本:作りこんではないですよ。足したところはありますけど、ほとんどワンテイク。

曲のヴァリエーションの面の工夫を感じましたが。

山本:それはたんに曲がそういった感じなだけでしょう。

今回千住(宗臣)さんが参加していますが、彼を起用したのは?

山本:いつもいっしょにやっているからです。

ご自分でドラムを叩いてもよかったかもしれないですね。

山本:そうやね。まあでも叩けないし、1曲目"Days"はロックっぽいからああいうタイコは僕にはむずかしいし、あれはやっぱり千住でしょ。

そうですね。私が山本さんがドラムを叩いた方がいいと思ったのは、『Playground』に非常に私的な印象を受けたからです。同じ歌でも羅針盤はバンドの音楽でありソロとはちがうと思いました。

山本:このアルバムでは自分の部屋のなかと、半径500メートルくらいまでの範囲を表しています。ブックレットに使っている写真も家のなかとか周辺とかそんなものばかりですもん。全部そう。

500メートル半径というはご自分の生活がみえる範囲ということですね。

山本:そうです。そこから離れて生活してないし、最近ずっと歌ってるのも身の回りのことばかりですからね。そこでは基本的になにも起こらないんですよ、ほとんど動かないから。なんにも起こらないところでどうやって歌ができていくのか、それを試したかった。

ある種のアンチロマンですね。たとえばいまのフォークであたらしいひとたち、前野健太さんや七尾旅人さんの歌をどう思います? 私は世代論はわかりませんが。

山本:世代論は僕はまったく関係ない。上の世代という感覚はないんですよ。21世紀に生きている人間のジェネレーションなんて全員いっしょですよ。だから世代は関係ないです。おもしろいかおもしろくないか。彼らの音楽は僕はいいと思いますよ、おもしろいと思います。

ご自分と比較して?

山本:すべてちがいます。比べることはないし、どっちにもいいところがあって悪いところがある。僕は他人のことはわからない。自分のことで精一杯です。子どものころはフォークを聴いていたりすると、いろんなひとがいたし好きなミュージシャンもいましたが、積極的にいまも他者の音楽を聴くかというとそんなことはない。

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でも僕、ボアダムスをやる前はずっと歌っていたんで、個人的にはそっちの方がイメージですよ。羅針盤にしても87年、ほとんどボアダムスと同じ時期に結成しているから。

今回はベースを弾かれていますが、このアルバムではベースがすごくポイントだと思うんですね。間をとるようなベースが全体のムードを作っていると思いました。

山本:ちょっとズレてね。全体の印象はすごくチープなんですけどね。

山本さんがドラムまで叩いた方がよいと思った理由はそこにあります。

山本:千住は上手いからね。

表題曲の"Playground"は譜面に書けるリズムではないですよね。

山本:そうね、このズレは譜面では表せないね。

この曲を千住くんにどう説明するんですか?

山本:「遊んでいるみたいに叩いてくれ」とか、そんな感じですよ。それで一発録り。まちがっていても全然オーケー。ワンテイクの方が勢いがあるし、「遊んでいる感じ」では2回はできない。歌は入れ直した曲はあるけど、演奏は全部テイクワン、弾きながら、歌いながらドラムといっしょに録音しました。だからライヴといっしょです。

曲をカチッと作るよりナマのままの歌を録音するという狙いだったんでしょうか?

山本:なんにも考えてないんですよ。「なんか今日レコーディングがあるな」という感じでスタジオに入ってなんとなくやっている、そのスタジオはお弁当が出るんですよ。エンジニアの方のお母さんがお弁当作ってくれるんですよ。だからマザーシップ・スタジオなんですが。大友(良英)くんとかふちがみとふなととかもそこで録ってますよ。ポコッといってポコッと録るにはいいんですよ。だからなんにもないんですよ。宅録みたいにね。

『なぞなぞ』と『幸福のすみか』の間の感じじゃないですか?

山本:そうですかね? 『なぞなぞ』は宅録以下やからね。僕はね、もう凝りはじめたらとめどないですからね。はっきりいって5年はかかります。このアルバムはそんなことはない。それがコンセプトといえばコンセプトかもしれない。

作りこまないアルバム。

山本:そう。粗い感じでやりたいようにやる作品。まちがってもそれはしょうがないというかね。完璧主義はもちだしませんでした。

羅針盤とはまるでちがう?

山本:羅針盤もディテールにはそれほどこだわってないですよ。羅針盤はポップスのつもりだったから。あれは一般のひとにも聴いてほしいと思ったから。

一般に届けるためのポイントはなんですか? 作曲ですか? アレンジですか?

山本:普通にラジオで聴いていても、そんなに違和感ないもの......ですかね。まあ違和感がないとはいいきれないけど(笑)。僕は歌がヘタなんで、極限まで普通に聴ける状態に近づけようと、一小節を100回くらい歌い直したこともあります。とくにシングル・カット曲では極限まで普通のポップスをやろうとしました。

"永遠のうた"(羅針盤のファースト・シングル)から山本さんの音楽を聴きはじめたというひとも多いでしょうね。

山本:入り口が広がったとは思いますね。

あの曲で歌に開眼したところはないですか?

山本:そんなことはない。普通のポップスをどこまでできるかということですよ。最終的には普通ではなくなったけど(笑)。

あれだけ作品を出しているということは、やっているなかに発見があったということですよね。

山本:それもあったし、元々ポップスは好きですからね。

羅針盤からそういった山本精一像はできた気がします。

山本:でも僕、ボアダムスをやる前はずっと歌っていたんで、個人的にはそっちの方がイメージですよ。羅針盤にしても87年、ほとんどボアダムスと同じ時期に結成しているから。

羅針盤の方が後発のイメージがありますね。

山本:ほとんど同じ。ズレていても一年か半年ですね。ボアダムスとかあの辺のバンドには僕はギター(と作曲)で入っているから参加している意識だったんです。ボアダムスに入ったのも田畑(満)が抜けたからだし。

そういはいってもボアダムスの在籍も結構長かったと思いますが、自分のバンドではないという意識だったんでしょうか?

山本:僕のなかのひとつの要素ではありましたけど、本来の僕のやりたいことではなかった。

歌とボア的な要素をミックスすると想い出波止場になる?

山本:想い出波止場はまたちがう。想い出は......説明しにくい(笑)。あれに類するバンドはあんまり思いつかない。ファウストとか。

想い出波止場も去年ライヴしましたね。

山本:まあでも当分やらないですね。

どうしてですか?

山本:やるモチベーションがない。あのときは旧譜が再発されたからね。

新譜は出さないですか?

山本:出さないです。

それは残念ですね。音楽が進化しない限り出す意味がない?

山本:基本は......想い出の話は止めましょうか。あのバンドはむずかしいんですよ。言葉にしにくい

わかりました(笑)。では『Playground』に戻りましょう。3曲目がタイトル曲になっていますが、その意図はどういったものでしょう?

山本:その曲は別な名前がついていたんです。タイトルが先にあって、それをつける曲を探していて、3曲目が一番いいと思った。3曲目は元は"めざめのバラッド"。名前を変えたんです。

この曲が全体を象徴していると思った?

山本:変えるのはそこしかなかった。"めざめのバラッド"は......あれ入ってるわ。元は"メール"って曲だったかもしれない。

曲名は気にしてなさそうですね。

山本:適当です。

歌詞はどうやって作るんですか?

山本:......適当(笑)。

このアルバムでは生活のなかから出てくる言葉が使われているんですよね?

山本:なんとなく出てくる言葉を書いているだけですよ。

曲が先にあって、そこに言葉の断片をあてはめていくということですか?

山本:そうです。だから自分の歌詞を全然憶えられないんですよ。考えてできたようなものじゃないし、ドラマになってないし、ツジツマが合わないから憶えられない。厳密にいうと僕のなかから出てきているとけど頭は通過してないんですよ。昔からいうんですけど、「落ち穂ひろい」というかね。地面に落ちている木の枝のたき火になりそうなものだけをひろう、その感じ。僕のなかにそれを選び分けるなにか、装置みたいなものは働いているけど、自覚的に自分が言葉をつなぎ合わせるというかね、創造的に言葉を選ぶ感じはない。ひろいあげていっている。

言葉の組み合わせには流れがいりますよね。歌詞もひとつの文章だから。

山本:そうかな?

すくなくとも言葉の連なりではありますよね?

山本:でもね、それは音素というか言葉がスケール(音階)やメロディラインに乗っかっていくと、言葉が耕されていくというかね。音楽に言葉をうまいこと乗っていくわけです。それは自動的な選択、エンター・キーが押される感じです。

たとえば2曲目の"待ち合わせ"のサビのあたりで、「孤独」「闇」「深い朝」と連なる流れにはイメージの起伏があると思うんですよ。これって意図しないと作れないフレーズだと思いますが。

山本:そこは意図しました。そこくらいはツジツマがあっていた方がいいと思ったから。

そういった落ち穂ひろい的な断片のなかにイメージを繋げられる言葉が入りこむから印象を残すのかもしれないですね。

山本:最初にある意味、自動筆記的に歌詞を書きはじめるんですよね。そうすると、俯瞰すると、意味が合う場所ができる。それをあとでまとめることはありますね。

出口ナオみたいな?

山本:お筆先? ちがう......いや、ちかいかもしれんな。出口王仁三郎があとでそれをまとめるというかね。

山本さんは王仁三郎の役割ですね(笑)。

山本:いや、僕はナオと王仁三郎がいっしょになってるのかも(笑)。勝手に出てくるものがあって、それをリライトする自分がいる。作るときはナオしかない。

山本さんは自分をものすごく客観視するところはありますよね。

山本:僕は批評性からは逃れられない。もともと僕、批評から音楽に入っているわけだし。だけど、批評臭さはでないようにしたようと思ってます。

私は『Playground』も1曲ごとに批評性はあると思いますよ。たとえば、1曲目なんかはシューゲーザーへの批評とも思いました。

山本:そんなことないよ。マイブラ、僕大好きやもん。1曲目はマイブラですよ。

『ラブレス』の1曲目("オンリー・シャロー")が元ネタですね。でもそれを山本さんがやるのは批評的なニュアンスがあるとも思います。

山本:批評には僕、否定的な意味合いがあると思うのよ、ちがう?

うーん。そうは思わないですね。

山本:僕はでも、否定的なところはないですよ。好きだからやったというだけでね。マネしてみました、みたいな。この感じが大好きなんやね。

それだけプライベートな作品だということですよね。それはたしかだと思いますけど、山本精一の名前で出ると批評的な色合いを帯びてくるとも思うんですね。

山本:因果なことですよ。

作っていくなかで、参照したものは本当にないですか?

山本:とりたててなにかを参照したというのはやっぱりないですよ。自分のなかには、いままで聴いてきた何十万枚という音楽が入っていて、そこからのアウトアップは意識的にも無意識的にも当然あります。それを影響といえばそうなるでしょうが、その意味で影響がない人間はいないということでもある。でも僕はもう、どこからそれがきたのはもうわからない。膨大な量があって、それはもう土壌のようなものですよ。そこから生えてくるキノコみたいなものでね。それはもちろん音楽だけじゃなくてね。

経験を土壌にできるかどうかでもあるとは思いますけどね。

山本:まあね。いい忘れたけど、今回もうひとつコンセプト的なものがあるとしたら質感ですね。

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戦前ブルースとかテクノロジーのない時代の音楽、簡素な録音設備を使って道端で録ったような音楽ですが、そういった録音物は何度も聴ける特性がある。リヴァーブがまったくかかってない素の音楽ね。

音の質感でいえば、Phewさんの新譜『Five Fingers』を聴いて『Playground』と似たものを感じました。

山本:そうね。Phewもそうやね。

あとジム(・オルーク)のバカラックのトリビュートなんかもそうでしたね。

山本:そうでしょ。そっちの方に行くんでしょうね。

その共通項は具体的にどういうものでしょう?

山本:アナログな感触ですね。それと、これまでの録音ではあまりよいとされてこなかったフレット・ノイズとかヒビリとか、ベースの音だったらラインで録ったような硬い音色。

それはいま、新鮮かもしれないですね。

山本:うん、いい。自分のなかで考えられるのは、いい音を聴きすぎて、そうじゃない音を生理的に聴きたくなっているのかなとは思う。単純にこういった感じの質感の音は中毒性があるんですよ。リヴァーブがカットされているというかね。

よい音の定義ではよく立体感というものがいわれますからね。

山本:それがリヴァーブだね。

あとサラウンドのような音響も含めてですね。そういった価値観からの変化をたしかに感じました。反動ではあると思うんですが、私が好きなミュージシャンがそういった作品を作るという符号のようなものは感じました。

山本:僕はずっとレコードを聴いてきて、重層的な音像とか広がりとかドリーミーなサウンド、たとえば『ペット・サウンズ』とかビートルズとか、ああいう世界は大好きなんだけど、それと別に好きな世界があるんです。戦前ブルースとかテクノロジーのない時代の音楽、簡素な録音設備を使って道端で録ったような音楽ですが、そういった録音物は何度も聴ける特性がある。リヴァーブがまったくかかってない素の音楽ね。ほとんどCDは売ってしまったけど、ブルース関係とか、Dommuneでも紹介したイングランズ・グローリーとか、そのへんは残してるからね。

イングランズ・グローリーは私も聴きましたが、よかったですね。

山本:宅録みたいでしょ。とくにベースなんかあんな音では録れないですよ。

あの感じは......

山本:まあヴェルヴェット・アンダーグラウンドですね。

そうですね。でもヴェルヴェッツほどノイジーでもなくもっとスムーズですよね。

山本:そうやね。

陰影があってイギリスらしい音楽ですね。

山本:ニック・ドレイクとか、そういった陰りがあるね。

あの手のものは日本には似たバンドはないですよね?

山本:どうかなー。しいていえばスターズ。石原(洋)くんがちかいかもしれない。

そう考えると、『Playground』は石原さんがプロデュースしたゆらゆら帝国と似た質感はあると思いますよ。

山本:そうかもしれない。坂本(慎太郎)くんとか柴山(慎二)くんにも通じるかもしれないですね。

東京でのレコ発(8月27日、吉祥寺スターパインズ・カフェ)ではベースは入れないんですか?

山本:ベースはないですね。千住とふたりですね。ベースも入れたいけど、あの感じでできるひとがいないですからね。大阪のライヴ(10月10日、梅田シャングリラ)では須原(敬三)に弾いてもらうけど。あのニュアンスは伝えられないね。ベーシストはもっと太い音を好むからね。ベーシストが作る音じゃないからね。ギタリストが弾くベースの音ですよ。あと上手すぎないことね。テクニックには僕、全然興味ないんで。上手いのはあんまり好きじゃない。

テクニックはむずかしい問題ですからね。

山本:なにをもってテクニックというかですよ。ジャズやろうとしてテクニックがなかったらムリですからね。

音楽が求めるものを実現するのがテクニックだとすると、こうやって譜面化できない部分が重要な音楽を演奏するには通常のテクニックが問題になるわけではないということですね。

山本:そういうことですね。譜面にできないことしか僕はやりたくないですね。譜面にしようと思ったら書けないですよ。ニュアンスといってもむずかしい。

やらないと、聴かないと伝わらないですね。

山本:体感しないと意味がないんですよ。

カオス・ジョッキー(モストの茶谷雅之とのデュオ)の『1』がおなじタイミングで出たのは偶然ですか?

山本:あれは去年の暮れに録ったから相当前ですよ。

あれもギター・ミュージックとしては挑戦的でしたね。

山本:あれも一発録りですね。

ギターの音を複数のアンプに振っていますね。

山本:8台使ったかな。

エフェクトはそれぞれ別の系統をかませているんですか?

山本:そうだったと思う。というかどうやって録ったか忘れた。

あれもワンテイクですか?

山本:そうやね。GOKの近藤(祥昭)さん特性の、ヘッドフォンにマイクを合体させた録音機材があって、それを人形の頭に装着してターンテーブルに乗せて回転させるんですよ。ブックレットに写真が載ってるけど、回転しながら録音しているから音像が変化するんですよ。あれは近藤さんならではのアイデアですよ。そのマイクの名前はリンダだった。

山本さんの回りにはおもしろいアイデアをもったエンジニアの方がいますよね。オメガ・サウンドの小谷(哲也)さんもそうですが。

山本:小谷がスタジオをやめてしまったのが、とくに想い出波止場のようなバンドができなくなった要因かもね。アルケミー関係とか、みんないってる。ボアダムスもみんなあそこやったからね。ああいう感じの録音ができなくなったんですよ。あれはでっかいよね。

小谷さんは想い出波止場のメンバーといってもよかったですね。

山本:プラス・ワンですよ。高校の同級生だったからね。あいつとずっと作ってきた感じだからね。あいつとやれなくなったのは想い出ができなくなったひとつの要因になった。

スタジオのアイデアで想い出はできていますからね。

山本:アイデアもそうやし、僕らはあれを実現する技術的な知識はないわけだから、そこをサポートするのが彼の役割だったからね。

音響から逆算して音楽はできていく面もありますし、音響派でなくてもスタジオワークは音楽の重要な部分ですからね。

山本:すごく重要ですよ。僕らがいうアイデアは普通のスタジオでは通らないですよ。ムチャクチャやから。ああいうのをやらせてくれるのは同級生というのもあったし、それをおもしろいと思う感性があったからね。想い出なんて音に関しては半分はあいつの世界ですよ。だから想い出はライヴはできるかもしれないけど、あのバンドは音源ありきだからね。

ライヴは音源をどう無視するかという...

山本:そういった世界だからね。本当に困っていてね。探しているんですけど、ああいった人間には出会えない。変態やからね。完全な変態やからね。宅録ではできることが限られてしまう。俺らが普段使わない機材を使って録音する醍醐味というかね。そうじゃないとレコーディングする意味もあまりないでしょう。ものすごく高性能なマイク、1台百万くらいするマイクをビニールにくるんで水のなかに入れるとかね(笑)。何百万もするオープン・リールのテープ・デッキを手で回したり止めたりするとかね。たのんでもやらしてくれないですよ。

水の音はそうしなくても録れますからね。

山本:そうやらないとおもしろくない。強烈に金がかかった設備で極限までアホなことをする。想い出波止場は音のクオリティはすごく高いはずなんですよ。アメリカのロウファイのバンドなんかは音はチープですからね。

2010年6月23日/Pヴァインで

CHART by ZERO 2010.07.12 - ele-king

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1

QUANTIC PRESENTA FLOWERING INFERNO

QUANTIC PRESENTA FLOWERING INFERNO DOG WITH A ROPE TRU THOUGHTS / UK / 2010.6.2 »COMMENT GET MUSIC
住したコロンビアからの3枚目のアルバム。いきなりKING TUBBY直系の雷エコーから始まる、クンビア~ラテン音楽とレゲエの融合。今回も名作です!

2

ACTRESS

ACTRESS SPLAZSH HONEST JON'S / UK / 2010.6.15 »COMMENT GET MUSIC
テクノとビートダウンの質感/温度が絶妙に混ざり合った全14曲。ダブテックやエレクトロに、ニューウェイヴやディスコの感触までもが同居した極めてオリジナルなサウンド。

3

BENGA

BENGA PHAZE: ONE TEMPA / UK / 2010.5.31 »COMMENT GET MUSIC
"BENGA流B-MORE×ポスト・ダブステップ"といった風合いのキラー・ビーツの1はじめ、実験性とボム力が化学変化を起こしている素晴らしくマッシヴな内容。最高!

4

JOE

JOE CLAPTRAP / LEVEL CROSSING HESSLE AUDIO / UK / 2010.6.8 »COMMENT GET MUSIC
フラメンコ/スパニッシュなリズムのクラップと、骨格だけのリズム(ベースもリズム)が不思議な高揚感をもたらす1。ブラジルのサンバのようなリズムをミニマル/真空感たっぷりに表現した1。どちらも生音系のDJにも使っていただきたい!

5

JAMES BLAKE

JAMES BLAKE CMYK EP R&S / UK / 2010.6.8 »COMMENT GET MUSIC
メロディだけでなくリズムでも歌心を感じさせる非凡な才能を見せつけてくれる素晴らしい4曲。本当に素晴らしい、アルバムが楽しみでしょうがない才能です!

6

DARK SKY - SOMETHING TO LOSE

DARK SKY - SOMETHING TO LOSE GHOSTNOTES BLACK ACRE / UK / 2010.5.31 »COMMENT GET MUSIC
メランコリックなシンセからウォンキー的な展開かと思いきや、ブレイクが明けると一気にハードコア・ブレイクビーツ~初期ジャングル展開!の1。2はRAMP直系の荒れたシンセ・サウンドの新世代ビーツ。どちらもメランコリックで扇情的なメロディの空気もあるところが◎。

7

C156

C156 OINK DISBOOT / SP / 2010.6.8 »COMMENT GET MUSIC
バルセロナのベースライン・マスター。ダークなムードにブレイクスのノリが強いビートが疾走する1。いろんな音がユーモラスなテイストもありで飛び交うバースト・ナンバー2。3はラテン、サルサをネタに使ったフロア爆発チューン。

8

HYPNOTIC BRASS ENSEMBLE

HYPNOTIC BRASS ENSEMBLE HERITAGE EP CHOICE CUTS / UK / 2010.6.15 »COMMENT GET MUSIC
AY-Z「THE PRELUDE」、THE ART OF NOISE「MOMENTS IN LOVE」、OUTKAST「SPOTTIEOTTIEDOPALICIOUS」、MADVILLAIN「RAINBOWS」、FELA KUTI「WATER NO GET MONEY」を渋く、でもいつもよりブレイクビーツ度を増量してカヴァー。文句なし!

9

SEPALCURE

SEPALCURE LOVE PRESSURE EP HOTFLUSH / UK / 2010.6.15 »COMMENT GET MUSIC
浮遊感ある心地よい上音にオーガニックな要素で壮大な世界を描く1など、スペイシーでサイケデリックな透明感あるエレクトロニカ~ソウル~ダブステップ。

10

THE TCHIKY'S / TRIAL PRODUCTION

THE TCHIKY'S / TRIAL PRODUCTION OIDE / JUNGLE BATH RUDIMENTS / JP / 2010.6.18 »COMMENT GET MUSIC
人力アフリカングルーヴを奏でる話題沸騰中の3ピース・バンドと、KEN2-Dもメンバーのクセありレゲエ・バンドのスプリット。どちらも言うまでもなく最高!

[Post Dubstep & Techno & House] #1 - ele-king

1. James Blake / CMYK | R&S Records


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E王  わずか4枚のシングルによっていま急速に注目を集めているのがロンドンの21歳のプロデューサー、ジェイムス・ブレイクである。ジャイルス・ピーターソンは自分の番組に誘い、『ピッチフォーク』は12インチ・シングルなのに関わらずアルバムと同等の扱いをしながら「best new music」に選び、気の早いライターは「ヒップホップ革命における最終形態」とまで言い出す始末だ。
 ブレイクは、彼の音楽から察するところ、アメリカのR&Bとヒップホップのファンである。ある情報筋によれば彼のサンプル・ネタはブランディからR.ケリーまであるらしいが、しかしこの若者は弁護料の心配することなく、それらのビッグネームたちの素材を切り刻む。90年代末のティンバランドとネプチューンズの記憶は、そして彼のコンピュータに流し込まれるとサイエンス・フィクションの舞台へと移動する。"CMYK"に最初に針を落とすとR&Bヴォーカルが聴こえるが(情報筋によればそれはケリスとアリーヤらしい)、その声はさりげなく微妙に変調する――これはブリアルが"アーチェンジェル"で使った"技"だが、ブレイクはそれをさらに過剰に押し進めているようだ。レコードの回転数が不規則になったかのような不安を醸し出し、そして叩きつけるようなビートが鳴りはじめる。2曲目の"Foot Notes"を喩えるなら、ドラッグでいかれたアンドロイドのR&Bだ。声や音の変調と揺らぎによる不安定さはブレイクの"技"だが、ここではそれをずいぶんと引っ張って、そして無音状態を経て唐突にショーがはじまる。
 "I'll Stay"は潰されてペシャンコになったヴォーカルに解体されたファンクとジャズのコードを合成する。"Postpone"は採集したいくつかのR&Bサンプルを面白いようにゆがませながら、ソウル・ミュージックをレトロと未来の両側に引き裂いているようだ。
 ポスト・ダブステップとポストR&BのIDM展開と言ってしまえばそれまでだが、「CMYK」は新しい流れを作ってしまいそうな1枚である。そんなシングルが〈R&S Records〉から出ていることが、僕の世代ではなんとも感慨深い。

2. James Blake / The Bells Sketch | Hessle Audio


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 ジェイムス・ブレイクの最新盤で、ラマダンマンの〈ヘッスル・オーディオ〉から。「CMYK EP」ほど派手な使い方ではないが、やはりここでもヴォーカル・サンプルは彼の"技"として駆使されている。狂ったジャズ・ファンクと気が滅入るほどメランコリックな"The Bells Sketch"が素晴らしい。もったいぶった"Buzzard And Kestrel"で踊る人はあまりいないだろうが、"Give A Man A Rod"のダウンテンポにいたっては困惑した挙げ句、フロアから人は立ち去っていくであろう。それはブレイクの挑戦か、さもなければ自分の"技"に溺れてしまったかのどちからだ。

3. Pariah / Detroit Falls | R&S Records


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 〈R&S Records〉はこの路線が「いける!」と踏んで勝負を仕掛けているようだ。ロンドン在住のパリーア(アーサー・ケイザー)による「Detroit Falls」は、手法的にはジェイムス・ブレイクとほとんど同じで、つまりこれもまたブリアルの"アーチェンジェル"の発展型だ。あらためて『アントゥルー』(2007年)の影響力の大きさを思い知る。
 A面の表題曲は、"デトロイトは没落する"というそのタイトルが暗示するように、モータウンあたりのデトロイトのソウル・ミュージックをサンプリングしているのだろう。リック・ウィルハイトのレヴューでも書いたが、この不況によって容赦なく荒んでいくデトロイトへのいたたまれない気持ちが込められているのかもしれない。
 古いR&Bヴォーカルやホーンの音を変調させ、それをビートにリンクさせていく。「CMYK」と比較するとこちらのほうがダンサブルでヒップホップらしさがあり、ジェイディラへのリスペクトも感じる。
 B面に収録された"Orpheus"は典型的なポスト・ダブステップ・サウンドで、言ってしまえばラマダンマンの模倣だ。ダビーなビートが生み出す空間にメランコリックなソウル・ヴォーカルが流れるように挿入される。この曲を聴くと彼がザ・XXの"ベーシック・スペース"のリミックスを手掛けている理由がよくわかる。ザ・XXのファンなら間違いなく好きなタイプの曲。

4. Ramadanman / Ramadanman EP | Hessle Audio


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 先日、『スヌーザー』誌のためにカリブーに取材したら、ブリアルのおかげでダブステップを好きになれたと話していて、僕の場合もまったく同じだと思った。ブリアルの『アントゥルー』はファンを増やしたばかりか間違いなく多様化をうながし、そしてアントールドやラマダンマンに方向性を与えたのだ。
 ラマダンマンことデヴィッド・ケネディは写真で見るとずいぶん若いが、デビューは2006年だからそれなりのキャリアがある。自ら〈ヘッスル・オーディオ〉レーベルを運営しながら、〈ソウル・ジャズ〉からシングルを発表するなど2年ほど前から注目はされていたが、今年に入って発表したこの2枚組EPが僕にはずばぬけてよく聴こえている。DOMMUNEでも話したことだが、この音楽はプラスティックマンがダブステップをやっているように聴こえるのだ。A面に収録された"I Beg You"はまったくブリリアントなエレクトロニック・ファンクで、間違いなくテクノ耳を虜にする。裏面のふたつのトラックもファンク調だが、DJユースのパーツとして収録されているようだ。このあたりを上手にミックスしているテクノ系のDJが日本にいたら教えて欲しい。
 もう1枚のほうの3つのトラックはどれもがアシッド・ハウス的なテイストを持っている。ねじまげられた空間を「はぁはぁ」という男のあえぎ声がこだましているD面1曲目の"Bleeper"にはラマダンマンのユーモア精神を感じることができる。こうした自由と楽しさが、カリブーのように「それまではダブステップのいかめしさに距離をおいていた」人たちを惹きつけていることをあなたは知っているのだろうか?

5. Kyle Hall / Must See EP | Third Ear


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 昨年の秋に〈ハイパーダブ〉から発表されたダークスターのヒット・シングル「アンディのガールフレンドはコンピュータ」によってカイル・ホールの名前を知った。彼はこのシングルのリミキサーだった。そのときはオリジナルのほうが良いと思っていたけれど、先日〈ハイパーダブ〉からリリースされた彼のシングル「ケイチャンク/ユー・ノー・ホワット・アイ・フィール」が実に素晴らしかったので、追ってみることにした。
 ちなみにデトロイトのこのプロデューサーがどれぐらい若いかと言うと、1991年7月生まれだから、彼が生まれたとき、すでにデリック・メイは制作活動を休止していて、URのふたりは分裂しはじめている。恐ろしい話だ。デトロイトのジャズ・ミュージシャンの家系に生まれ育った早熟なホールは、16歳で〈ムーズ&グルーヴス〉からシングルを発表している。フライング・ロータスではないが、ある種のサラブレッドなのかもしれない。
 〈サード・イヤー〉からのリリースとなった4曲入りの「マスト・シー・EP」は、インパクトの点では「ケイチャンク/ユー・ノー・ホワット・アイ・フィール」に劣るかもしれないが、デトロイト系を追っているファンにとってはこっちのほうが親しみやすいと思われる。何よりもスローテンポ・ハウスの"Must See"やアンビエント・ハウスの"Ghosten"には、デリック・メイや若かりし頃のカール・クレイグを彷彿させる、息を呑むような美しさが受け継がれているのだ。メランコリックでジャジーなメロディラインが、シンプルで気の利いたドラムパターンと結びついている。リズミックな遊びを展開する" Osc_2"やディープ・ハウスを披露する"Body Of Water"も悪くはない。
 ポスト・ダブステップのような流行の音楽ではないが、これぐらい気持ちの入った12インチがコンスタントに出ているのなら、昔のように人はヴァイナルを探すようになるのだと思う。

6. T++ / Wireless | Honest Jon's Records


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 モノレイクといっしょに〈DIN〉を運営するトルステン・プレフロックによる12インチ2枚組で、すでにテクノDJのあいだでは人気盤となっている。彼は歴史のアーカイヴから、30年代末から40年代にかけて録音されたという東アフリカの楽器(ndingidi――読み方がわからない)の音、そしてその奏者であり歌手の声を見つけ、それらをサンプリング・ソースとして活用し、瞑想的な空間を作っている。面白いことにリズムは明白なまでにダブステップ(2ステップ、ジャングル)からの影響を取り入れている。ワールドカップをほぼ全試合観ているためにブブゼラの音にはすっかり慣れてしまい、よってこうしたエキゾティズムもとりたてて新鮮に思えなくなっているのだが、「ワイアーレス」はいわばブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』(これはモロッコだが)のミニマル・テクノ・ヴァージョンとして楽しめる。サイケデリックで、エクスペリメンタルで、とにかくぶっ飛んでいるのだ。
 2ステップのビートを取り入れた"Cropped"にしてもダブステップからヒントを得た"Anyi"と"Dig"にしても、10年以上にもおよんで懲りもせず、結局のところベーシック・チャンネルの物真似しかできなかった多くのフォロワーとは確実に一線を画している。交錯するコラージュとそれら裏打ちのビートとのコンビネーションがなかなか面白く、ふたつのスピーカーからはうねりのようなものが立ち上がってくる。ネタ勝負の安直なトラックではない。その料理の仕方のうまさがこのシングルでは際だっている。殺気立つパーカッションと地鳴りのような低音の"Voices No Bodies"も魅力的だ。モーリッツ・ファン・オズワルドへのリアクションとも受け取れるが、ドイツのミニマル音楽の最新型は、ドイツのサッカーより面白く思える。

CHART by JAPONICA 2010.06 - ele-king

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1

DJ NOBU

DJ NOBU 011 E.P. GRASSWAXX / JPN / 2010/7/3 »COMMENT GET MUSIC
ジャーマン・テクノ・シーンを牽引する世界最高峰のクラブ"BERGHAIN"でのプレイ等、ワールドワイドに活動の場を広げ邁進し続けるご存知<FUTURE TERROR>主宰DJ NOBU。今作も自身のプレイスタイルが滲み出たような野性味溢れる漆黒ディープ・グルーヴを披露!圧巻の濃厚密林トライバル"FRIDAY"に、C/W はセルフ・エディットによるズッブズブにハメ込まれるドープ・テック・チューンを収録!

2

HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY LET'S GET HOT CLAREMONT 56 / UK / 2010/6/16 »COMMENT GET MUSIC
クラウト・ロックの伝説グループCAN のベーシストであり、バンド解散後も活発なソロ活動を続けきたホルガー・シューカイ。その彼が1979 年にリリースした傑作アルバム「MOVIE」の1 曲目に収録された名曲"Cool In The Pool"のニューヴァージョンを2種収録!同アルバムに収録されていた超名曲"Persian Love"と共にLOFT CLASSIC としても知られ、DJ HARVEY をはじめ多くのDJ に愛され続けた名曲中の名曲。

3

ADMIRAL FREEBEE

ADMIRAL FREEBEE MY HIPPIE AIN'T HIP PLAY OUT! / BEL / 2010/6/26 »COMMENT GET MUSIC
DJ HARVEYリミックス収録!!ベルギーのシンガー・ソング・ライターADMIRAL FREEBEEを人気者DJ HARVEYが激烈エレクトロ・ディスコ・ダブへリミックス!この一曲だけで買いですっ!

4

DJ SPINNA

DJ SPINNA NIGHT CHANNEL -"AT NIGHT"NYC TIME- NIGHT CHANNEL / JPN / 2010/6/30 »COMMENT GET MUSIC
ジャンル無関係にフリースタイルなDJで世界中のダンス・フロアから愛されるDJ SPINNAによる渾身のミックスが到着!気になる内容ですが、自身による黒い感覚を元に一本筋の通った新旧レアグルーヴ、ディスコ、ハウスを縦横無尽に行き来し、さらに自身によるエディットも随所に挟み込んだ、隙の無い完璧なミックスに!この選曲、構成力、完成度、、脱帽の一言です。当店でもヘヴィー・プレイ中!!

5

DAICHI

DAICHI MBILITE EP RUDIMENTS / JPN / 2010/6/17 »COMMENT GET MUSIC
※JAPONICA限定特典!DJ DAICHIミックスCDR付き!ブギー、ファンク、ジャズ、ハウス、ブレイクビーツ・・様々なルーツ~ダンス・ミュージックの要素を高次元で昇華させ、あらゆる現場に対応できる柔軟さと普遍性を兼ね備えたハイブリッド・グルーヴ"MBILITE 2010"!C/Wには現場を知り尽くした御大DJ KENSEIさんによるオリジナルの雰囲気そのままにブレイクビーツ+αな絶妙なさじ加減でのクールなリミックスを収録!

6

AEROPLANE

AEROPLANE WE CAN'T FLY ESKIMO / BEL / 2010/6/26 »COMMENT GET MUSIC
ベルギーのニューディスコ~バレアリック・ユニットAEROPLANE、ホームレーベル<ESKIMO>より超絶ニュー・シングル・リリース!来るファースト・アルバムからの先行カットとなる本作。レゲエ/ダブ的なアレンジの光るベースラインにソウル・ネタからのヴォイス・サンプル、シンセ・コード、パーカッションとが絶妙に織り成す絶品ナンバー!これは片面プレスも頷ける即買級の完成度の高さ!

7

JUZU a.k.a. MOOCHY

JUZU a.k.a. MOOCHY JUZU PRESENTS "MOVEMENT" EP2 CROSSPOINT / JPN / 2010/6/26 »COMMENT GET MUSIC
ビートダウン系トラックにRAS TWEEDによる神妙なポエトリーがハマったスペイシー・ダビーな"KOZA"、そしてノスタルジーなブルースハープが響き渡る"VITAL"とA面にはいかにもMOOCHYらしいダンス・トラックを収録。B面にはオリエンタル調のサックス、ギターが織り成す幻想的トラックにSHING02をフィーチャーしたラップ・ナンバー"GRACE"、そして内田直之によるダブ・ミックスを収録と全曲気合のこもった強力盤!

8

DJ DUCT

DJ DUCT BACKYARD EDIT PT.3 THINKREC. / JPN / 2010/6/15 »COMMENT GET MUSIC
ビート/トラック・メイカーとしての確固たる実力に裏打ちされたオリジナリティ溢れるエディット・センスが国内はもとより海外からの反響も凄まじいDJ DUCTによる「BACKYARD EDIT」、第3弾となる今作はまさにシリーズ集大成と言わんばかりの超強力盤!いずれも現場感を意識し制作されたであろう極上トラック計5本収録です!

9

V.A.

V.A. JP MASSIERA THE UNRELEASED YDNY / UK / 2010/6/30 »COMMENT GET MUSIC
フランス産狂気のサイケデリック&ディスコを手がけるカルト・プロデューサー、JEAN PIERRE MASSIERAの音源をPBR STREETGANG、BONAR BRADBERRY、SOFT ROCKSら現行ニュー・ディスコ/リエディット界隈人気者がトリビュート的な意も込めてリエディット!近年再評価著しいJEAN PIERRE MASSIERAによるマッドでサイケなこの変態的雰囲気、今のクラブ・シーンにもまさにドンピシャ!

10

MARK E

MARK E SPECIAL FX MERC / UK / 2010/6/22 »COMMENT GET MUSIC
MARK Eによる本命路線、主宰レーベル<MERC>からのセカンド・シングル!80'Sライクな煌びやかなシンセ、ファットなビートでジワジワとビルドアップしていくビートダウン・ディスコ"SPECIAL FX"、中盤での爽やかな展開もこれからの季節にもぴったり!そしてC/Wにはシカゴ・ライクなファットなサウンドが光るテクノ・トラックを披露した"CHRISTO"!いやいや<MERC>からのMARK Eは気合入ってます!

"生きる"勇気――B.I.G JOE - ele-king

この国のラップ・ミュージックにおけるイリーガルなトピックやニュースを単純に善悪の問題へと矮小化することは、つまり、その背後にある人間の苦悩や葛藤、文化や社会の複雑さや本質から目を背ける愚かな行為と言わざるを得ない。

 すでに1ヶ月以上も前のことだが、5月14日、池袋のヒップホップ・クラブ〈bed〉にビッグ・ジョーのライヴを観に出かけた。終電後、家のある中野から1時間かけて歩いた。〈KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '10〉でのライヴを友だちと酒盛りに興じる間に見逃してしまったことを後悔していた。だから、その日は、酒は控え目にして、ライヴの時間を待っていた。ビッグ・ジョーは、「WORLD IS OURS」と冠された全国ツアーの一環で東京を訪れ、MSCの漢らが主催する〈MONSTER BOX〉に出演していたのだ。ハードでタフなスタイルを愛するBボーイが集まる、ハードコア・ヒップホップのパーティだ。DJ BAKU、CIA ZOOのTONOとHI-DEF、THINK TANKのJUBE、INNERSCIENCE、JUSWANNA、PUNPEE、S.L.A.C.K.、CHIYORI、PAYBACK BOYSのMERCYと、100人も入ればいっぱいのクラブには多くのラッパー、DJ、ミュージシャンも駆け付けていた。

 深夜3時過ぎ、ビッグ・ジョーは、圧倒的な存在感を持ってステージに登場した。オーディエンスを一瞬にして釘付けにする訴求力にはやはり特別なものがある。ステージで躍動するビッグ・ジョーは、ハードにパンチを繰り出す野性味溢れるボクサーのようであり、愛を説く説教師のようであり、また、街頭で群集に決起を呼びかける扇動者のようでさえあった。ストリートの知性とは何たるかを、スピリチュアルに、セクシーに、ポジティヴに表現し、光と影の世界を行き来していた。ライヴ前半、いま注目のトラックメイカーのBUNによるスペイシーなグリッチ・ホップ風のトラックの上で、ビッグ・ジョーが過去の追憶と未来への決意を歌う"DREAM ON"がはじまる。『RIZE AGAIN』に収録された曲だ。ビッグ・ジョーが「夢を持っているヤツら手を上げろ!」と叫ぶと、フロアが一瞬身構えたように見えたが、4、5人の女性ファンが豪快に体を揺らしながら、いかついBボーイたちを尻目に大きな歓声を上げるのが目に飛び込んできた。

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE
Rize Again

Triumph Records /
Ultra-Vibe
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 1975年、ビッグ・ジョーこと中田譲司は北海道・札幌に生まれる。ビッグ・ジョーは、『RIZE AGAIN』のなかでひと際メランコリックな"TILL THE DAY I DIE"という曲でも自身の幼少期について赤裸々に告白しているが、リーダーを務めるヒップホップ・グループ、MIC JACK PRODUCTION(以下、MJP)のHP内のブログで、生い立ちについて次のように綴っている。

「物心がついた頃、親父がヤクザだったのが判明して、悪いことするのがそんなに悪い事だとは思ってなかったんだ。悪いことと言っても万引き、ちょっとした盗み、ギャング団みたいなのを小6までに結成して中学入ってからは、喧嘩、カツアゲ、タバコ、バイク、夜遊び、マ-ジャン、e.t.c...あげればもう片手ぐらいは出てきそうだが、YOU KNOW?? いたって普通の悪いことだよ」(『Joe`s Colum』VOL.21 「BEEF&DRAMA」 08年2月)

 ストリートで生きる16歳の不良少年を音楽に目覚めさせたのは、レゲエのセレクターの兄が勤める美容室にあった2台のターンテーブルとレゲエ・ミュージシャン、PAPA Bのライヴだった。「兄貴がレゲエを買ってたんで、俺は違うのを買おうって。ビズ・マーキーとかEPMDとかを買ったりしてた」
 ビッグ・ジョーは、レゲエのディージェーやセレクターではなく、ヒップホップのラッパーとしてキャリアをスタートする。転機は19歳の頃に訪れる。RANKIN TAXIが司会を務める『TAXI A GOGO』というTV番組のMCコンテストに出場し、北海道予選で優勝を果たしたのだ。
 その流れでDJ TAMAとSTRIVERZ RAWを結成。その後、90年代中盤にRAPPAZ ROCKを結成し、当時の日本語ラップをドキュメントしたコンピレーション・シリーズ『THE BEST OF JAPANESE HIP HOP』に、"デクの棒""常夜灯"といった曲が収録される。先日亡くなったアメリカのラッパー、グールーを擁したギャング・スターやアイス・キューブが札幌に来た際には、彼らの前座を務め、ジェルー・ザ・ダマジャらとのフリースタイルも経験している。THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOがビッグ・ジョーのステージに感化され、ラップをはじめたエピソードは日本語ラップの熱心なリスナーの間では良く知られているが、ビッグ・ジョーは自他共に認める北海道のラッパーのオリジネイターとして名高い人物でもある。

 僕の手元には、RAPPAZ ROCKとILL-BOSSTINO(当時はBOSS THE MC)が〈NORTH WAVE〉という北海道のFM局に出演したときのCDRがある。MJPの取材で札幌を訪れた際、MJPのDJ KENからもらったものだ。そこでは、ビッグ・ジョー、ILL-BOSSTINO、SHUREN the FIREらが、荒削りなフリースタイルを30分近くに渡って披露している。ハードコアなラップ・スタイルは、たしかに90年代の日本語ラップの先駆的存在であるMICROPHONE PAGERやKING GIDDRAからの影響を感じさせるが、しかし同時に、胎動しつつあるシーンの渦中で、オリジナリティを獲得するために才能を磨き合う姿が刻み込まれている。前年に日比谷野外音楽堂で〈さんぴんCAMP〉が開かれた97年、まだ全国的に無名だった彼らの、地方都市のアンダーグラウンド・カルチャーを全国に認めさせたいという意地とプライドが札幌の分厚い積雪を溶かすような熱気となって放出されている。

 その2年後、99年にMJPは結成される。札幌、帯広、千歳、釧路など異なる出身地を持つ、ラッパーのビッグ・ジョー、JFK、INI、LARGE IRON、SHUREN the FIRE(現在は脱退)、DJ/トラックメイカー/プロデューサーのDOGG、KEN、HALT、AZZ FUNK(現在は脱退)から成るグループは、クラブでの出会いやマイク・バトルを通じて、徐々に形成されていった。そして、02年にファースト・アルバム『SPIRITUAL BULLET』を発表する。すでにMJPのサウンドのオリジナリティはここで完成している。ファンク、ジャズ、レゲエ、ダンス・ミュージックの要素を詰め込んだ雑食性豊かなこのアルバムは、全国のヒップホップ・リスナーの耳に届き、音楽メディアからも高く評価される。14分を超えるコズミック・ファンク"Cos-Moz"でラッパーたちは壮大なSF叙事詩を紡いでいるが、この曲は、SHING02の"星の王子様"がそうであるように、架空の宇宙旅行を通じて人類のあり方を問おうとする。同郷のTHA BLUE HERBと同じく、「生きる」というテーマに対するシリアスな態度は彼らのひとつの魅力である。
 また、MJPが所属する〈ill dance music〉というインディペンデント・レーベルの名が示すように、ヒップホップとダンス・ミュージックの融合はつねにMJPのサウンドの通奏低音として鳴り続けている。ライヴに行けば、MJPにとってダンスがどれだけ重要なファクターであるかがよくわかるだろう。そこでは、ハウスやテクノといったダンス・ミュージックの文化が独自の発展を遂げた札幌という土地の空気を吸い込んだ音を聴くことができる。『SPIRITUAL BULLET』はインディペンデントのアルバムとしてそれなりのセールスを記録するが、それでも彼らが期待したほどの劇的な展開をMJPにもたらしてはくれなかった。金銭的に潤ったわけではなかった。音楽だけで生活をすることはそんなに生易しいものではなかった。

 その矢先、事件は起きる。03年2月25日、ビッグ・ジョーが香港からオーストラリアに約3キロのヘロインを密輸しようとした際、シドニー空港の税関の荷物検査で摘発され、麻薬密輸の罪で逮捕、起訴されたのだ。当初は軽くても10~15年、最悪の場合は無期懲役の可能性もあった。「血の気が失せたというか、オレの人生は終わりだなって。自殺も考えました」
 黒幕の存在が認められたことなど、いくつかの要因が救いとなり、10ヶ月の裁判の後、6年間の実刑判決が言い渡される。少しずつ未来が見えはじめる。しかし、なぜ、そのような危険な仕事を引き受けたのだろう。「もちろん金もあるけど、それだけじゃないといまはっきりと言えるんです。例えば(運び屋の仕事が)成功したとしても自分にとっていいトピックになるのかなって。そこでアーティストとしてのオレはどういう風に変わっていくのかなって」
 ビッグ・ジョーは、09年2月の帰国後、渋谷のカフェで取材した際に穏やかな口調で僕にそう答えてくれた。

 犯罪行為へと向かった彼の動機を浅はかだと嘲笑することは容易だし、犯罪行為そのものを批判することも同じくである。果たして、犯罪を道徳的に断罪することにどれだけの意味があるのか。さらに、あえて書くが、断罪せずとも、この国のラップ・ミュージックにおけるイリーガルなトピックやニュースを単純に善悪の問題へと矮小化することは、つまり、その背後にある人間の苦悩や葛藤、文化や社会の複雑さや本質から目を背ける愚かな行為と言わざるを得ない。

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ビッグ・ジョーは持ち前の明るさとオープンな人柄で多様な国籍・人種―イタリア人、ギリシャ人、アメリカ人、フランス人、ロシア人、中国人、韓国人、レバノン人、アボリジヌー――の囚人たちと交流を深め、肉体を鍛え、哲学的思索に耽る。

小便やゲロまみれの裏路地で俺は生きてゆくために必要な日銭を稼いだ
小分けしたヤクをいくつも売りさばいた
UNKYのほとんどがヤクの奴隷さ
出口の無い迷宮に俺はいた
長い夜が永久にさえ思えて来た
さらに濃い霧が俺をつつみ込み
もう来た道がどちらかさえもわからないんだ "IN THE DARKNESS"

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE
THE LOST DOPE

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 逮捕以前に制作され、ビッグ・ジョーの評価を決定付けたソロ・ファースト・アルバム『LOST DOPE』(06年)に収録された"IN THE DARKNESS"では、出口の見えない漆黒の闇のなかで孤独感に苛まれる心情が吐露されている。儚くも美しいピアノのウワモノから死の匂いは漂えども、希望の香りを嗅ぎ取ることは難しい。ある意味、ビッグ・ジョーのその後を予見しているような曲だ。『イルマティック』の頃のナズと『レディ・トゥ・ダイ』の頃のノートリアス B.I.G.が、一人の人間の中で蠢いているとでも形容できようか。数年後に興隆する、この国の都市生活者の過酷な現実を炙り出した(ドラッグ・ディールを主題とした)ハスリング・ラップのニヒリズムの極致に、すでにこの曲は到達していたのではないだろうか。

 徹底的にリアリストになるか、露悪的なニヒリストになるか。00年代、この国のラップ・ミュージックのいち部は、過酷な現実を描写することで圧倒的な説得力を有した。01年に発足した小泉政権が推し進めた、相互扶助や社会福祉を切り捨て、経済的な競争原理を優先する新自由主義が、ヒップホップの拝金主義的なメンタリティやゲットー・リアリズムに拍車をかけたのは皮肉な話ではある。カネ、セックス、ドラッグ、貧困、暴力。メジャーの音楽産業が尻尾を巻いて逃げてしまうようなハードなリリックやトピックが、アンダーグラウンド・ラップ・ミュージックのシーンを席巻した。
 たしかに、たんなるセンセーショナリズムとしての表現もあっただろう。しかし、そのシーンにおいて、少なくない才能あるラッパーが登場し、切実な音と言葉が創造され、多くの若者が共鳴し、熱狂したのだ。MSCの漢はその代表格のひとりである。

 紋切り型な表現を使うならば、彼らの音楽は、マスメディアやジャーナリスト、社会学者さえ見向きもしない社会の片隅からの叫びであり、声なき声だった。そこからは希望の言葉も絶望の言葉も聞こえてきたが、彼らの反社会性や反抗は「不良」という酷く安直なカテゴライズに回収され、片付けられることが少なくなかった。だが、「不良」はひとつの属性であって、彼らのすべてではない。重要なのは、彼らが社会の片隅から生々しい声を上げ、出自や階層や性別を越え、このどうしようもない社会で生きるという感覚を持つ人びとと響き合ったということだ。彼らの強烈に毒気のある表現は階級闘争の萌芽を孕んでいると僕は考えている。

 80年代後半、レーガン政権下のアメリカでギャングスタ・ラップのオリジネイターであるN.W.Aが登場したとき、その暴走する反逆に議会を巻き込むほどの社会的な論議が起こり、物議を醸した。メンバーのアイス・キューブは、元ブラック・パンサー党員のアンジェラ・デイヴィスやフェミニストの論客と対談で激しくやり合った。アメリカのあるヒップホップ評論家は、ポップ・カルチャーへの影響力という観点から言えば、N.W.Aのデビュー・アルバム『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、セックス・ピストルズ『ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス』がイギリスに与えた衝撃に匹敵すると評価している。つまり、野蛮な反抗と最新の社会問題、そして、ストリート出身者ならば誰でも音楽を作れるというDIY精神に火を付けたという点において。

 日本のアンダーグラウンド・ラップ・ミュージックが国家を脅かしているかと言えば、もちろんノーである。あるいは、N.W.A.やセックス・ピストルズほどの社会的・文化的影響力を持っているかと言えば、それももちろんノーだ。このアンダーグラウンド・カルチャーは、積極的に平穏な昼間の世界に背を向け、メジャーの音楽産業から逸脱し、地下に潜ることで、その粗暴でアナーキーな感性を研ぎ澄ましている。現在のこの国の音楽という分野、あるいは社会においてはそのやり方しかなかったとも言える。
 話があまりにも拡散するので、その理由や詳細についてここでは書かない。いずれにしろ、この文化が新しく刺激的な才能あるアーティストを輩出し、また、日々刻々と変化するこの国のダークサイドをリアルタイムに描写し、問題を提起し続けているのは事実なのだ。

  先日リリースされたばかりのHIRAGEN(彼の存在を僕に教えてくれたのはPAYBACK BOYSのMERCYだ)の強烈なファースト・アルバム『CASTE』を聴いたとき、喉を潰したような声でスピットするラップとインダストリアルなビートに、UKのグライムに似た切迫感とノリを感じた。この乾いた路上のニヒリズムとデカダンスはどこまで行くのだろうか。そう思わせる得体の知れない荒々しいパワーが漲っている。HIRAGEN from TYRANTについては、いずれ改めて紹介するつもりだ。

 そろそろ話をビッグ・ジョーに戻そう。"IN THE DARKNESS"をアンプ・フィドラーを彷彿とさせるデトロイティッシュなビートダウン・トラックにリミックスしたDJ KENのヴァージョンは、深いニヒリズムをグルーヴィーなダンス・ミュージックの渦の中に放り込むことで未来への飛翔を試みている。ビッグ・ジョーと仲間たちのニヒリズムとの闘いの合図が鳴らされているとでも言えようか。そして、ここでの音楽的探究心こそ、ビッグ・ジョーとMJPの6年間を単なる空白期間にしなかったのだ。

 この電話は他でもなく盗聴されてるが
 ソウルまでは奪えはしないさ"LOST DOPE"

 ビッグ・ジョーがジェイル(刑務所)にいるあいだ、MJPのEP『ExPerience the ill dance music』(05年)、『LOST DOPE』、MJPのセカンド・アルバム『UNIVERSAL TRUTH』(06年)、獄中で出会ったアメリカの黒人ラッパー、エル・サディークとのEP『2WAY STREET』(07年)、ソロ・セカンド・アルバム『COME CLEAN』(08年)がリリースされる。『LOST DOPE』には、ジェイルの電話越しにラップを録音した表題曲や、ギターの弾き語りを伴奏にしたラップをテープレコーダーに録音し、テープのリールを封筒に忍ばせ札幌のMJPの元に送り再構築された曲が収められている。音楽への情熱と熱意を看守に訴えたビッグ・ジョーは、音楽スタジオのあるジェイルへの移転を許可され、そこでエンジニアとして働くことを実現させる。『UNIVERSAL TRUTH』以降のラップは、06~07年のあいだにそのスタジオで録音されている。

 オーストラリアのジェイルが日本の刑務所に比べれば、「自由」だったことは不幸中の幸いだった。僕はこれまでビッグ・ジョーに5回ほど取材しているが、そのうち3回はジェイル内の電話を通じて実現している。その貴重なコミュニケーション手段がなければ、この原稿は書けなかっただろうし、囚われの身となっている6年間にこれだけの作品がリリースされることもなかったに違いない。

 ビッグ・ジョーは持ち前の明るさとオープンな人柄で多様な国籍・人種―イタリア人、ギリシャ人、アメリカ人、フランス人、ロシア人、中国人、韓国人、レバノン人、アボリジヌー――の囚人たちと交流を深め、肉体を鍛え、哲学的思索に耽る。2パックは獄中で15世紀イタリアの政治思想家、マキャベリの『君主論』を愛読したというが、ビッグ・ジョーはドイツの詩人・小説家であるゲーテを座右の書として生き抜いた。『UNIVERSAL TRUTH』のインナースリーヴには、アメリカの詩人・批評家のエズラ・パウンドの言葉が引用されている。彼はラップで格言めいたパンチラインを時節展開する。それは、そこそこ哲学や古典文学の知識がある人間が鼻にもかけない類のものかもしれないが、彼が人生のどん底から這い上がるために、知識への飢えを満たすために獲得した言葉をいったい誰が簡単に否定できようか。

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ビッグ・ジョーが伝えたいメッセージも至ってシンプルだ。ずばりそれは、「世界は自分たちの手で変えられる」ということである。世界を変える必要はないと考える人びとにとっては、彼の直球な物言いは滑稽に聞こえるだろう。

 俺には聞こえるんだ......
 本当は病んで病んで病んでどうしようもないのに、
 一人じゃ不安で、
 何をどうしたいのかもわからず救いの無い大都会の海で、
 溺れている人間達の、澱んだ声が......
 俺達は何のためにこの世に生まれたんだ?
 何故こうして 息を吸って、今を生きているんだ?
 そこには、意味はあるんだろうか?
 そんな社会に生まれて、何かがおかしいと思ったおかげで、
 けだものあつかいにされ
 彼等の期待通り犯罪を犯し、囚われの身となり、
 もう誰にも顔は見せられない
 PSYCHO......彼等は俺の事をそう呼ぶんだ
 ......いい響きだ、最高じゃないか/
 これで良くも悪くも、彼等と境界線が引ける"PSYCHO"

B.I.G JOE / Rize Again
B.I.G JOE /
COME CLEAN

ILL DANCE MUSIC amazon iTunes Store

 『COME CLEAN』は、こんな哲学的な問いかけから幕を開ける。メタファーを多用したリリックとライム、ビートに絡みつくジャジーなフロウ、寓話的で文学的なストーリーテリング、社会意識を持ったアティテュード、汚れた魂と美しい魂が交錯するスピリチュアリズム、それらの要素を併せ持ったビッグ・ジョーのラップをバックアップするのは、アメリカナイズされたトレンドのヒップホップとは違う、自分たちの音を鳴らすことに情熱を傾けるトラックメイカーたちのユニークで果敢な挑戦だ。
 トラックメイカーたちはすでに録音されたラップに合わせる形で制作を進めた。LAのアンダーグラウンドなパーティ〈ロー・エンド・セオリー〉と共振する、Olive Oil、BUNによる凶暴で繊細なビートの実験、DADDY VEGA a.k.a. REVEL BEATZ によるファンキーなビート、あるいは、DJ QUIETSTORM の妖しいサイケデリック・ヒップホップ"SPEAK 2 THE SILENT"があり、ILLCIT TSUBOIの"CLINK RAP"に至ってはスピリチュアル・ジャズとラップの対決である。

 ビッグ・ジョーは、自身の体験を基にドラッグ・ディーラーの不幸な顛末を物語化し("D.D.D-Drug Dealer`s Destiny")、逮捕直後の絶望的な状況と心境を告白し("NOWHERE")、ドラッグ・ディールで身を滅ぼすことの愚かさをメッセージする("YOU WANNA BE ME")。「道ばたでドラッグを売りハッスルしながらマッポに追われる生活なんてクソだ」、"YOU WANNA BE ME"のファースト・ヴァースではこう言い切る。だが、ここで展開されるのはありきたりな更正物語や陳腐な道徳論ではない。また、アンチ・ハスリング・ラップやポスト・ハスリング・ラップという単純な図式化に収まるものでもない。僕も最初は、前述した冒頭の数曲に耳がいった。ある種のスキャンダリズムに関心を奪われていたのはたしかだ。しかし、アルバムを何度も繰り返し聴くうちに、"PUBLIC ENENY NO.1"や"WE`RE SOULJA"といったより深く彼の人生観や哲学や内省を抉っていくような曲の虜になっていった。

 "PUBLIC ENEMY NO.1"でビッグ・ジョーは、生い立ちや犯罪者という自身の置かれた立場から、社会からの疎外と異端者の誇りについてラップしていく。
 正義とは何か? テロリズムとは何か? 反体制とは何か? 異端者とは誰か? そして自分は何者か? 自分自身と聴く者を答えのない問いの迷宮に引き摺り込みながらも、最後のところで異端者を鼓舞し続ける。そこに答えを差し出すかのように、ストリングスとビートが厳かなムードを演出する"WE`RE SOULJA"で、「誰もがたたかっている今もどこかで/命をかけ、/僕等はこの世に生きている限り/戦場の上の兵隊さまるで」と呼応する。
 愛、家族、自由、正義、理想、芸術、民衆、未来、革命......、何かのために誰もが闘っているのだと、闘うことの美しさと気高さを、ときに詩人が朗読するように、沈黙を味方につけながら官能的にフロウする。この2曲をプロデュースしたBUNの、金属片を擦り合わせたような鋭角的なビートの響きと、静謐さと躍動が入り混じるフライング・ロータス以降のセンスを感じさせる構成は、ビッグ・ジョーをひとりのラッパーから雄弁で情感豊かな説教師か扇動者へと変貌させているようである。聡明なギャングスタ・スタイルと野性的なコンシャス・スタイルの融合とでも言えようか。こういう表現が的確かどうかはわからないが、ここには――ハスラーから革命家に転身したマルコムXのように――町の不良がストリートの代弁者へと脱皮する姿が刻み込まれていると思えるのだ。なんというか、本質的なまでに闘うこと、反抗することを肯定する。その愚直さがなんとも潔く、清々しく、かっこいいのだ。

 今年発表された通算3枚目のソロ・アルバムとなる『RIZE AGAIN』のCDのインナーには、力強く突き上げた拳のなかにガーベラと思われる真紅の花が握られた絵が描かれ、"HERE I AM"というアルバムの最後を飾る曲のタイトルが上書きされている。このアートワークは、闘いと希望と平和のメタファーなのだろう。アルバムでは、SD JUNKSTAのNORIKIYOを客演に迎えた、シンセが勢いよくうねる表題曲が象徴するように、ビッグ・ジョーがこれまで溜め込んできたエナジーとファンクネスが一気に放出されている。共同プロデューサーに抜擢されたBUNが『COME CLEAN』以上に見せるユニークな表情と、現在インディペンデント・レーベル〈TRIUMPH RECORDS〉の主宰を務め、トラックメイカー/プロデューサーとしても活動するビッグ・ジョーの新たな側面も楽しめる。

 ところで、少なからず期待を寄せた民主党政権のだらしなさといったらないが、管直人新首相に至っては就任会見で「政治の役割は最小不幸社会を作ること」とやたら景気の悪いことを言い出し、しまいには消費税を上げるという。「こら! ふざけるな!」と家で酒を飲みながら心のなかで叫んでしまった。
 とはいえ、自分の生活を振り返ってみると、そこには多くの快楽があり、遊びがあり、満足がある。酒を飲んで、パーティに行って、気持ちの良い音楽と気の合う連中と酔って大騒ぎするのは最高に楽しいし、こうやって自分の好きなことを書いてお金をもらい、また発言する自由も感じている。だが、この日々の幸せは、諦めと表裏一体じゃなかろうかというアンヴィバレンツな感慨に襲われてしまうときがある。そんな時、フェラ・クティやジェームス・ブラウンやボブ・マーリーといった理想主義と闘いの結晶のような最高にファンキーな音楽を聴くと、いまでも心底感動し勇気づけられるし、そこから湧き上がる躍動と闘争心を僕は深く愛している。

 そう、ビッグ・ジョーが伝えたいメッセージも至ってシンプルだ。ずばりそれは、「世界は自分たちの手で変えられる」ということである。変化を望まず、いまの世界でそこそこ上手くやることに疑いのない人びと、あるいは世界を変える必要はないと考える人びとにとっては、彼の直球な物言いは滑稽に聞こえるだろう。何を変えるのか? どんな世界を望むのか? そして、何のための闘いなのか? 体制と反体制、右翼と左翼、資本主義と共産主義という分かり易い二項対立など誰も信じていないし、これだけ価値観が多様化している時代に、何のための闘いなのかという問いはもっともややこしいい命題だ。しかし、ただ一つ言えるのは、生きることは正しく、そもそも生きることは闘いであるということだ。

 『RIZE AGAIN』の"SHE JUST..."という曲を聴くと、僕は、ビッグ・ジョーが何を背負いどこからやって来て、誰の味方であり、これからどこへ向かおうとしているのかが見えてくる。「彼女は天使の夢を見ていた/白い翼が空に散って目を開けた」というリリックからメロウに滑り出すソウル・フィーリングに溢れた"SHE JUST..."では、社会の片隅で寄り添って生きる国籍不明の若く無力な男女の儚く切ない物語が、女性ヴォーカリスト、TSUGUMIとの掛け合いのなかで丁寧に紡がれていく。
 そこでビッグ・ジョーが強烈に発している感情は、社会からはじかれた人びとへの深い慈愛のようなものである。彼が呼びかける相手は、ドラッグ・ディーラーであり、風俗嬢であり、サラリーマンであり、ヤンキーであり、オタクであり、Bボーイであり、その誰でもあり、誰でもないのかもしれない。ビッグ・ジョーが思い描く理想は、これから彼の音と言葉に力強いレスポンスを返すリスナーやオーディエンスとともにゆっくりと具体的な形を伴って立ち現れていくだろう。

 そして、この原稿も終盤を迎えた頃、ビッグなニュースが届けられた。ビッグ・ジョーは来たる7月21日に、ILL-BOSTTINO、Olive Oilと制作した「MISSION POSSIBLE」という、大胆にも、現在のこの国におけるもっともデリケートかつ重要な政治課題の一つである沖縄基地移設問題をテーマにしたシングルをリリースする。僕はその曲をまだ聴いていないが、勇敢な理想主義者である彼らの、音楽の力で世界を少しでもより良くしたいという強い信念に間違いはないと信じている。

 僕が1ヶ月以上前に観たビッグ・ジョーのライヴは素晴らしいものだった。全国各地を回る「WORLD IS OURS TOUR 2010」はまだ続いている。自分の目と耳でビッグ・ジョーの勇姿をたしかめ、大きな声を上げて欲しい。

Chart by TRASMUNDO 2010.06.29 - ele-king

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Budamonk&S.L.A.C.K.

Budamonk&S.L.A.C.K. 『Buda Space』 »COMMENT GET MUSIC

2

ONE-LAW

ONE-LAW 『FAMILY RE:UNION #8』 »COMMENT GET MUSIC

3

HIRAGEN from TYRANT

HIRAGEN from TYRANT 『CASTE』 »COMMENT GET MUSIC

4

DJ PK presents(CIAZOO、SEMINISHUKEI)

DJ PK presents
(CIAZOO、SEMINISHUKEI)
『TEKNO BOMBING』 »COMMENT GET MUSIC

5

Sunouchi Kemm

Sunouchi Kemm 『deconstruction』 »COMMENT GET MUSIC

6

SONETORIOUS(SEMINISHUKEI)

SONETORIOUS
(SEMINISHUKEI)
『Bedtime Beats vol.1』 »COMMENT GET MUSIC

7

KRBT A.K.A.DON.K(SEMINISHUKEI)

KRBT A.K.A.DON.K
(SEMINISHUKEI)
『Bed yu to eat』 »COMMENT GET MUSIC

8

LIL' MOFO(WAG.)

LIL' MOFO
(WAG.)
『BAJO EL SUELO spanish underground peeping』 »COMMENT GET MUSIC

9

平塚デコーダー

平塚デコーダー 『Drip On Sugar』(DEMO) »COMMENT GET MUSIC

10

ISEHARA KAIDO BOYS

ISEHARA KAIDO BOYS 『FUCK MONDAY』(DEMO) »COMMENT GET MUSIC

Chart by JETSET 2010.06.28 - ele-king

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1

THE BACKWOODS

THE BACKWOODS SUN STREAM / MIDNIGHT RUN »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!ご存知日本を代表するニュー・ディスコ・ユニット"Force Of Nature"のDJ KENTがラウンチしたニュー・プロジェクト"The Backwoods"による待望のデビュー・アルバムから先行12"カットが到着です!!

2

ALLO DARLIN'

ALLO DARLIN' S.T. »COMMENT GET MUSIC
無条件降伏しかありません。正統派UKキューティー・バンドの超感動ファースト・アルバム!!LPも到着しました!!大人気爆発のロンドンの4ピース、Allo Darlin'。瑞々しいヴォーカルと、躍動感溢れる爽やかなサウンド、愛らしく儚げな雰囲気、全てがスペシャルです!!

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9DW

9DW CALIFORNIA EP »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!サイトウケンスケ率いる日本が誇る世界標準コズミック・ファンク・バンド"9dw(Nine Days Wonder)"の'08年傑作アルバム"9dw"から、豪華気鋭アクトによるリミックス・カットがドロップ!!

4

ADMIRAL FREEBEE

ADMIRAL FREEBEE MY HIPPIE AIN'T HIP »COMMENT GET MUSIC
ベルギーのグルーヴィー・シンガー・ソングライターをDJ Harveyがリミックス!!当店人気のArsenalをリリースするPlay Out!から、ベルギーのディランな男気S.S.W.、Armiral Freebeeのシングル!!

5

KAORU INOUE

KAORU INOUE THE INVISIBLE ECLIPSE FEAT. JEBSKI »COMMENT GET MUSIC
ニュー・アルバムからの先行12"カット第2弾!!名作"Dancer"から5年振りのリリースを控える待望のニュー・アルバム"Sacred Days"から、DJ Yogurtとのコンビで御馴染み"Jebski"をフィーチャーした"The Invisible Eclipse"に加え、エンジニアNagとの共作"Ground Rhythm"の2トラックスを収録した先行12"カットが到着です。

6

D BRIDGE

D BRIDGE PRODUCER NO2 REMIX EP »COMMENT GET MUSIC
最新鋭UKGシーンを牽引する天才RamadanmanによるリミックスB1を搭載!!☆特大推薦☆UKブロークン・ヒップホップ最重要レーベルの一角を成す名門Fat Cityからの傑作コンピ・シリーズ第2弾収録トラックを、鬼才2組がリミックスした強力カット!!

7

TIAGO

TIAGO RIDER »COMMENT GET MUSIC
DJ Chida主宰の注目国産レーベル"ene"から3タイトル同時入荷です!!ene待望のニュー・リリースは、先日のHands Of Timeからのリリースも素晴しかったポルトガルの大注目アクト"Tiago"が登場!!加えてこちらも大注目の国産ユニット"Cos/Mes"が手掛けるリミックス・トラックも収録!!

8

SILENT FREQUENCIES & VIBROMASTER / SILENT FREQUENCIES

SILENT FREQUENCIES & VIBROMASTER / SILENT FREQUENCIES EAST TALES / SILENT PROPHECIES »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆姫神がダブステップ化したかのようなA1が激フレッシュです~!!フレンチ新興レーベルNeo Stepからの第1弾リリースを飾るのは、新鋭デュオSilent Frequenciesによるこちら。ヒーリング/ニューエイジ・ダブステップ特大ボムっ!!

9

FEMI KUTI

FEMI KUTI FEMI REMIXES »COMMENT GET MUSIC
アフロ・ビートの申し子、Femi KutiのリミックスEPが登場!リミキサーにGeneral Elektriks、Chinese Man、Boom Bass、Bost&Bimを迎え、より幅の広がったアフロ・グルーヴに仕上がっています!

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AEROPLANE

AEROPLANE WE CAN'T FLY »COMMENT GET MUSIC
傑作トラックを引っ提げ久々の登場。確実に押さえて頂きたい名作です!!同郷"Eskimo"から4作目のシングル・リリースとなった人気アクト"Aeroplane"。リリース控えるファースト・アルバム"We Can't Fly"から話題のリード・トラックが先行12"カットです!!お見逃し無く~

Rusko - ele-king

 2009年のダブステップのフロアヒットのひとつにイマルカイ(Emalkay)の"ホエン・アイ・ルック・アット・ユー"がある。重たく、汚れていて、やかましい、そしてクラクラする(英語で言えば、wobbly)ダブステップである。勝手な推測だが、この大ヒットが、あるいはまたキャスパと彼のレーベル〈ダブ・ポリス〉に代表されるような動きが、ローファーをポスト・ダブステップに駆り立て、ザ・XXとアントールドを近づけたのかもしれない。重たく、汚れていて、やかましい、そしてクラクラする――いわばダブステップ界におけるラモーンズたちは、コード9やDMZのようなオリジナル世代からしたら、違和感があるのだろう。UKファンキーやグライムならオッケー、が、このヤンキーくさい乱雑さだけはどうも......そんな思いがシーンから見えてくるようだ。が、無責任なことを言えば、これもまた一興なのである。
 シーンの過渡期を表すシグナルなのだろう。オリジネイターがシーンの限界を感じて"次"に向かう。よくあることだし、その"次"はもちろん楽しみだ。しかし、玄人たちの去った焼け野原で踊っている子供たちこそレイヴ・カルチャーそのものなのだ。汗だくなって踊る。若さゆえの暴走。作品主義に基づいた洗練さとは逆のベクトルだが、音にのめり込む度合いの強度においてそれらは圧倒的となる。2006年に〈ダブ・ポリス〉からデビューしたクリス・マーサー、ラスコという名で知られるプロデューサーも最初はそんなひとりだった。
 スクエアプッシャーを敬愛し、DMZを聴いてダブステッパーの仲間入りを果たしたリーズ出身の青年は、〈ダブ・ポリス〉と〈ダブ・ソルジャー〉を拠点にしながらキャスパとともにその人気を伸ばしていった。とくに2007年に「ファック!」を連呼する忌々しい"コックニー・サグ"が大当たりすると(それはまるで......セイバース・オブ・パラダイスの"ウィルモット"のダブステップ・ヴァージョンである)、リトル・ブーツやベースメント・ジャックス、ザ・プロディジーなどポップ畑においてもリミキサーとして進出。そしてディプロの〈マッド・ディセント〉と契約を交わすと、昨年の9月にロサジェルスに越し、M.I.A.の3枚目もサポートしつつ、晴れてこうしてデビュー・アルバムを発表するにいたったわけである。
 ディプロは、バイリ・ファンキにしてもボルチモア・ブレイクにしてもダンスホールにしても、音にのめり込む度合いの強度にアプローチする。それをポップでスタイリッシュにパッケージする才能に長けている。メジャー・レイザーのあの、ナンセンスなダンスホールを思い出せばいい。パロディ精神に根ざした彼らのレゲエは、しかも結局のところ本場キングストンの人たちをも虜にして、ジャマイカでも大ヒットしている。いま〈マッド・ディセント〉はポップ・ダンスの重要拠点としてピークを迎えつつあるのかもしれない。意味のある音楽ではないが、ここには創造性と"楽しみ"があるのだ。
 
 ラスコのデビュー・アルバムは〈マッド・ディセント〉らしい作品である。ブリトニー・スピアーズから声がかかるばかりか、USインディ・ロックのアンダーグラウンドにおいて目下もっとも評価の高いスライ・ベルズとのコラボレーションも噂になっている若きダブステッパーは、いまの勢いのまま、ブレーキを踏むことなくアルバムを発表する。それは若さゆえの暴走ではない。手をかけてパッケージされたモダン・ダンス・ミュージックだ。
 重たいベースの邪悪なドライヴからはじまる『O.M.G.!』は、ダーティ・プロジェクターズのアンバーのヴォーカルとともに加速したかと思えば、〈ダブ・ポリス〉の作品でお馴染みのMC、ロッド・エズランがレゲエのリズムに言葉をのせる。リスナーを退屈させることなく、ミラーボールが煌めくディスコやダーティ・ダブステップ、それからレイヴィーなジャングルへと突き進む。アルゼンチン代表の前線の3人がボールを奪うといっきに駆け上がり、そして相手ディフェンス陣を突破してシュートするように。
 アルバムを象徴するのは、モダン・ファンクを打ち鳴らす、ベン・ウェストビーチが参加した"フィール・ソー・リアル"、あるいはシンセベースが唸り、グッチ・メインの声が聴ける"ガット・ダ・グルーヴ"といった曲だ。それらは"Pファンクの後継者"と言われた1980年代前半に活躍したオハイオ州のグループ、ザップによるエレクトロ調のファンクを思い出させる。ザップと言えばロジャーによるトーク・ボックスが有名だが、あの変調された"声"は『オー・マイ・ゴッド!』のいたるところに顔を出している。
 ダブステップの観点から見れば意見は分かれるかもしれないが、鳴り物の入りのデビュー・アルバムとしては申し分のないできである。

Chart by JETSET 2010.06.21 - ele-king

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1

DAICHI

DAICHI MBILITE EP »COMMENT GET MUSIC
エレクトロニクスとジャズ・ファンクを高レヴェルで融合させたダンス・トラックが到着!SoftやBased On Kyotoの一員として活動を行い、アンダーグラウンド・ダンスミュージック・シーンを中心に熱い指示を受けるDaichiのソロ作がついにリリース!

2

WILD NOTHING

WILD NOTHING GEMINI »COMMENT GET MUSIC
ひとりRadio Dept.あるいはPainsなネオアコ・シンセ・ポップの爆裂感動アルバム!!メチャクチャ最高です。。。Captured Tracksの新星、ヴァージニア在住の天才Jack Tatumによるソロ・ユニット、Wild Nothing。2枚のシングルを経て、初のアルバム到着しました!!

3

RANKIN TAXI

RANKIN TAXI チンチンピンピン »COMMENT GET MUSIC
遂に7"で出ました!B面にはサイプレス上野参加のBuzzer Beats Remixも収録!ジャパニーズ・レゲエのオリジネイター、ランキンキン・タクシー!!昨年末から配信限定でリリースされ話題炸裂の超ビッグ・チューン(通称"CCPP")が遂にアナログ盤で登場です。これは絶対マストです!!スプリット・カラー・ヴァイナル。CCPPオリジナル・コンドーム付。

4

ALLO DARLIN'

ALLO DARLIN' S.T. »COMMENT GET MUSIC
無条件降伏しかありません。正統派UKキューティー・バンドの超感動ファースト・アルバム!!LPも到着しました!!大人気爆発のロンドンの4ピース、Allo Darlin'。瑞々しいヴォーカルと、躍動感溢れる爽やかなサウンド、愛らしく儚げな雰囲気、全てがスペシャルです!!

5

REBOOT

REBOOT SHUNYYATA »COMMENT GET MUSIC
パーティー・ピープルから注目度はピカイチの旬なクリエイターReboot!!Lucianoによるリミックスが話題となった先行シングル"Rambon"も只今ヒット中、Ricardo VillalobosやLucianoが認める才能の持ち主、Rebbotによるファースト・オリジナル・アルバムが遂に登場です!!

6

INFINITE BODY

INFINITE BODY CARVE OUT THE FACE OF MY GOD »COMMENT GET MUSIC
めちゃくちゃイイ・・・戻ってこれない・・・快楽指数マックスのドリーミー・ドローン・アルバム!!No Age主宰P.P.M.から、西海岸のKyle ParkerによるユニットInfinite Bodyの大傑作ファースト・アルバムが登場。これは参りました。

7

V.A.(DJ KIYO A.K.A DULO, DJ KEN, AKT THE JN, DJ HAL)

V.A.(DJ KIYO A.K.A DULO, DJ KEN, AKT THE JN, DJ HAL) TIGHTBOOTH PRODUCTION PRESENTS LENZ EP »COMMENT GET MUSIC
スケーター目線で日本のアングラ・シーンを切り取るドキュメンタリーからの12"がコチラ!日本が誇るクリエーター/トラックメイカー達がスケートボードの既痣哀楽をイメージし作り上げた音源を収録した映像作品『LENZ』から待望のアナログ・カットが実現!

8

MARK SEVEN

MARK SEVEN SWEPT AWAY »COMMENT GET MUSIC
スウェディッシュ・バレアリック大注目プロデューサーが早くもMule Musiq系列からデヴュー!!前作"Travelogue"の爆発的な売れ行きにも驚かされたスウェーデンのディープ・ディガー/DJ、Mark Sevenが国内Mule Musiqにフックアップされ、Endless Flightから2nd.シングルをリリース!!

9

DJ SPRINKLES VS K-S.H.E.

DJ SPRINKLES VS K-S.H.E. A SHORT INTRODUCTION TO THE HOUSE SOUNDS OF TERRE THAEMLITZ »COMMENT GET MUSIC
テーリ・テムリッツさんがSkylaxから初登場!!DJ Sprinkles名義での未発表曲"Hush Now"と、"上作延ハウス・エクスプロージョン"ことK-S.H.E.名義での'06年度アルバム『Routes Not Roots』から"B2B"をカップリング。

10

BOBMO

BOBMO FALLING FROM THE CRESSENT MOON »COMMENT GET MUSIC
師匠Oizo直系の痙攣エディテッド・ハウスへと仕上げられたFeadzリミックスB2も!!☆特大推薦☆盟友SurikinとのデュオHigh Powered Boysとしても大人気、Institubesが誇る若き精鋭Bobmoが2年振りにぶっ放す特大ボムがこちらっ!!
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