「Sunn O)))」と一致するもの

Talker - ele-king

 インダストリアル・リヴァイヴァルにおける再評価が高まるリージス(Regis)ことカール・オコナーであるが、しかしリージスも彼の〈ダウンワーズ(Downwards)〉も90年代から徹頭徹尾ブレない美意識を探求してきたわけで、単なるリヴァイヴァルに回収されない強靭な核を有していると思うのだ。

 とは言え、昨今のシーンの動向、具体的にはUSのニューウェイヴやミニマルウェイヴ流れのインダストリアルなアプローチにも柔軟に反応しているのが現在のカールの確固たる地位を維持してもいるわけで。〈ダウンワーズ〉は現在、活動拠点をNYに移し、スローペースながらも時代を反映した確実に良質なリリースを継続、昨年はレーベル20周年のコンピレーションをドロップ、また〈ダウンワーズ・アメリカ〉なるサブ・レーベルをサイレント・サーヴァント(Silent Servant)の協力の下に設立、カールの美意識の一旦であるノワールな世界観を共有するLAのポストパンク・ユニット、ディーヴァ・ダマス(Dva Damas)のリリースなんかも手掛けていたりする。

 んで先月〈ダウンワーズ〉からリリースされたシカゴのデュオ、トーカー(Talker)の12インチをいま聴いているわけなんだけども、じつはあんまりピンときていない。前振りで〈ダウンワーズ〉は最近の流行とはちがうんだぜ! みたいなことを抜かしといて申し訳ないんだけども。けっこう前の紙『ele-king』のインダストリアル対談で、インダストリアルは鉄槌感とファッショ感でしょ! みたいなことを言ってしまってじつは最近ものすごく後悔していて、これだけインダストリアルってタームが完全に飽和化し、コンポジション云々よりもテクスチャーや雰囲気を重視したレコードが氾濫している現状を目の当たりにしているとさすがにゲンナリしてくるわけですよ。いや、何が言いたいかっていうと、けっしてこのレコードが悪いわけではなくて(むしろ完成度は高いです)、2014年現在、ビートやコンポジションをないがしろにしてインダストリアルな質感や雰囲気のトラックをつくってもべつにもう尖ってないよってことなんです。

 先日ペインジャークの五味さんとそのあたりのシーンについていろいろとお話する機会があり、ウィリアム・ベネット(元ホワイトハウス)のカット・ハンズ(Cut Hands)なんかは、いい歳こいてぜんぜんいまの若手のノイズ→テクノなんかより尖りまくっているという意見には激しく同意したのが記憶に新しいわけで。個人的にもニューウェイヴ、ミニマル・ウェイヴ流れの雰囲気インダストリアル・テクノよりも、トライバルに、パーカッシヴに、プリミティヴに土臭い方向性を持った、暴力的な電子音楽のほうがいまは魅力的だ。と思っていた矢先に前述の雰囲気系インダストリアルのパイオニア、ドミニク・フェルノウの〈ホスピタル・プロダクション〉からこのイタリアのパーカッション・デュオ、ニノス・ドゥ・ブラジル(Ninos Du Brasil)がドロップ。ここでまた話の流れがふたたび崩壊してしまうわけですが、このアフロ・テクノ・パンク・サンバ祭りには有無を言わせずにブチあげられてしまう。夏には〈DFA〉からのリリースも控えている。

 やっぱりレーベルを偏見的に捉えてしまうのはよくない、と思わざるをえない昨今の2枚。猛烈にあのインダストリアル対談をアップデートしたい。


 ニノス・ドュ・ブラジルのYoutubeクリップを見ていて気づいた。この微妙にイケてない感じどっかで見たことがあるな。と思ってちゃんと調べてみたらやはりニコ・ヴァッセラーリ(Nico Vascellari)であった。ニコはもともとミラノのパンク畑のミュージシャンで、ミラノのスクワット・パンク・シーンをコンテンポラリー・アートに繋げたパイオニアである。サン(SUNN O))))のスティーヴン・オマリーとジョン・ウィーゼ等とおこなったカッコー(Cuckoo)や巨大なブロンズのモノリスをガンガン打ちまくり、ブリアル・ヘックス(Burial Hex)がフィードバッグをコントロールしたアイ・ヒア・ア・シャドウ(I hear a shadow)など、国内外のアーティストとのパフォーマンス・アートでのコラボレーションをおこなっている。

 本人名義でのハーシュ・ノイズは過去にドミニクのプリュリエントとのスプリットもリリースしていたはずだ。てなわけでなぜ〈ホスピタル〉なのかも納得がいきました。

ele-king presents
AKRON/FAMILY Japan Tour 2013
- ele-king

【 AKRON FAMILY】

 
「この雑食動物たちは人食い族である。この50年間のポップ/ロック音楽を挽肉器でミンチにして、電解液とハチミツを加えて発酵させたような......。彼らがこれほど貪欲な獣と化すとは、誰が想像し得ただろう。」マイケル・ジラ(スワンズ)

 2002年にニューヨークでの共同生活から現れたアクロン/ファミリー。いまやメンバーはポートランド、ロスアンジェルス、ツーソン......とバラバラに生活しているけれど、この距離感がさらなる奇跡を生み出したのか、3人が集まったときの激烈マジックと言ったら! そんな奇跡に溢れた最新作『サブ・ヴァ―シズ』は、とにかくヴォリュームがハンパなかった。もうお腹一杯なのに、さらに食べさせられ、そしてコッチもまだまだガンガン食べられちゃう......そんなモーレツな作品に仕上がっていたのです。
そして今作のプロデュースはSunn O)))、Earth、Boris、Wolves In The Throne Roomなどを手掛けていた大注目のRandall Dunn。ジャケット・デザインはSunn O)))の御大Stephen O' Malley。そんなわけで最新型アクロン/ファミリーは、ドゥーム〜ハードコア〜エクスペリメンタル・エッセンスがバリバリの強靭轟音モードに。ノイズやらメタルやらインダストリアルやら雄叫びやらが大爆発し、ジャズ、プログレ、サイケ、アフロ、ファンク、エスノ、ジャム......と目まぐるしく大展開。しかしそんな刺激的なサウンドに乗っかるメロディー、ハーモニー、唄心の美しさがこれまた別次元であり、それらは彼等最大の武器でもあります。ソウル、ゴスペル、ブルースの魂も確実にアクロン/ファミリーには存在しているのです。
 過去二度にわたるジャパン・ツアーでその圧倒的パフォーマンスもお墨付き。イルカ風船が舞い、花火をして怒られた1回め。灰野敬二と怒濤のセッションを繰り広げ、呆れられた2回め。ともに年間ベスト・ライヴに挙げられたほど、彼等のライヴは凄まじく、そして心底楽しい。共演者との合体タイム、お客さんをステージに上がらせてのドンチャン・コーナー。怒濤のノイズコアで発狂したかと思えば、激メロ&ハーモニーでしっとり優しく......ああ! アクロン/ファミリーのライヴは本当に本当に素晴らしい! ぜひぜひご一緒に叫び、踊り、笑顔で涙しようではありませんか!!



【Boris】代官山UNIT公演出演!

 92年より活動開始、96年にTakeshi、Wata、Atsuoという現在のメンバー編制へ。活動当初よりワールドワイドなスタンスを志し、96年からはじめた海外ツアーも03年以降はほぼ毎年行い、繊細かつ流麗な静寂パートから、眼球を揺らすような、まさに"体感"の轟音パートまで、おそるべきダイナミクスをもって類のないライヴを展開。ナイン・インチ・ネイルズのUSアリーナ・ツアー・サポートを含み全100本のショウを披露したワールド・ツアー(08)、映画『リミッツ・オブ・コントロール』『告白』への楽曲提供(09/10)、ATPフェスへの日本人最多出演、といった大掛かりな話題にも事欠かないが、話題先行に終わらないのは、長きに渡り世界中で数々のレーベルと交流を持ち無数の作品を発表し、真摯にライヴを続けてきた音楽的な探究心があればこそ。その姿勢と成果は『Pink』(05)、『Smile』(08)、サン O)))との共作『Altar』(07)といった作品への全世界での評価とセールス面で証明されている。2011年3月に日本ではメジャーからの初リリースとなる『New Album』を、5月には日本を含む全世界で『Attention Please』『Heavy Rocks』を同時リリース、内容とコンセプトが全く異なる3枚のアルバムを発表することに。その3作品を携え、約2年間にわたりワールド・ツアーを続けた。2013年に入り約7年振りとなる小文字boris名義で『präparat』『目をそらした瞬間 -クロニクル-』『vein』の3作品を連続リリース。4月から5月に掛けてのUSヘッドライン・ツアー中に7大都市(ワシントンDC/ボストン/ニューヨーク/シカゴ/シアトル/サンフランシスコ/ロサンゼルス)で、また6月に東京でレジデンシー・ショウ(同一都市で2日間連続公演を行うにあたり日ごとに違う演目を披露)を行った。


【Moan a.k.a Shinji Masuko】名古屋APOLLO THEATER、大阪CONPASS公演出演!

 日本を代表するサイケデリック・ロック・バンドDMBQのギター/ヴォーカルとして、また世界随一のエクスペリメンタル・ミュージック・バンド、BOREDOMSではギタリストとしてのみならず、特殊多弦楽器セブンナーⅠ&Ⅱの製作/オペレート、トラック制作、システム構築の他、ボアダムス公演用に組織した総勢16名からなるギター・オーケストレーション・ユニット、The Floating Guitar Borchestraの作・編曲、総指揮等も担当。また、N'夙川BOYSや木村カエラ等のプロデュース/エンジニアリング等ポップ・フィールドにおいても幅広く活動している。2011年4月、米国の名門レーベル〈Jagjaguwar/Brah〉よりShinji Masukoソロ名義の作品『Woven Music』を発表、Pitchfork, The Phoenix, New York Taper, New York Times等数多くのメディアで取り上げられ、重層的な弦楽器によるドローンを用いた独自の音世界を高く評価された。また、Chicagoの〈Thrill Jockey〉から発表された震災復興支援作品『Benefit for The Recovery Japan』へも参加、曲提供のみならずアドバイザリー・スタッフとしてもクレジットされるなど、 単にアーティストとしてのみでは収まりきらない活動を続けている。 2011年10月には、米ニュージャージーでPortisheadキュレートのもと、Mogwai, The Battles, The Pop Group等を迎えて行われた〈All Tomorrow's Parties〉へThe Ocropolisのギター要員として参加後、米国ツアーへ。2012年のOOIOOとの国内ツアーより、ユニット名義を『Moan』とし、Water Faiマキコとの2人ユニットとなる。2013年11月に、米〈Revolver〉内Akron/Familyのレーベル〈Lightning Records〉よりアルバム『Think About Forgotten Days』を発表。またPhiladelphiaを拠点とする先鋭的な電子音楽レーベル〈Data Garden Records〉よりPlantable Music Seriesの植物種子入り紙による作品『Bookshelf Sanctuary』をリリース予定。日本はもとより海外でも幅広く活動を続けている。


【skillkills】浜松G-SIDE公演出演!

skillkills [スグルスキル(bass),リズムキルス(drums),マナブスギル(Vo,Gt),ヒカルレンズ(key)] 2011年1月に突如として現れ,ライブごとに各地で衝撃を与えつづける。完全にネクスト・レヴェルのビートによって、凄まじき世界観を叩きだす4人組。アヴァン・ヒップホップ・レーベル〈BLACK SMOKER〉が誇る黒い突然変異体。


【のいず】浜松G-SIDE公演出演!

 エレクトロ・ゴシック・ガールズ・バンド「のいず」。おもしろおかしい奇妙な曲の展開にドッキドキ! 私たち、はずかしガリーなんですっ! 照






ele-king presents AKRON/FAMILY Japan Tour 2013


■12/4(水) 代官山UNIT (03-5459-8630)
AKRON/FAMILY / Boris
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:213-844)
ローソンチケット(Lコード:77662)
e+
(チケット発売10/5〜)

■12/5(木) 名古屋APOLLO THEATER (052-261-5308)
AKRON/FAMILY / Moan a.k.a Shinji Masuko(Boredoms,DMBQ)
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 19:00 start 19:30
チケットぴあ(Pコード:214-017)
ローソンチケット(Lコード:43376)
e+
(チケット発売10/5〜)

■12/6(金) 大阪CONPASS (06-6243-1666)
AKRON/FAMILY / Moan a.k.a Shinji Masuko(Boredoms,DMBQ)
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:213-846)
ローソンチケット(Lコード:59288)
e+
(チケット発売10/5〜)

■12/7(土) 浜松G-SIDE (053-541-5067)
sone records & Super Go!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! presents
// FLASH NIGHT SPECIAL vol.5 /
AKRON/FAMILY / skillkills / のいず / DJ:BlaqCZA
adv 3,500yen door 4,000yen(without drink) ※限定100名
open/DJ start 18:00
前売りチケットはメール予約のみとなります。
(10/14(祝・月)PM1:00より前売り予約受付開始)
info@sonerecords.com までメールタイトルを「AKRON/FAMILY」としていただき、 お名前、人数、連絡先を明記のうえ、送信してください。
こちらから予約確認の返信メールを送信させていただきます。
その時点で予約完了となります。
予定数(限定100名)に達し次第受付終了となりますので、確実に見たい方は御予約をよろしくお願いいたします。
浜松公演INFO :
sone records
https://www.sonerecords.com
tel:053-453-8852

*追加公演決定!!!!!!

■12/8(日) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
AKRON/FAMILY
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:213-980)
ローソンチケット(Lコード:77661)
e+
(チケット発売11/23〜)


*浜松公演を除く各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。

主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン / sone records / Super Go 
TOTAL INFO:ele-king / P-VINE RECORDS 03-5784-1256
event@ele-king.net
www.ele-king.net

アクロン/ファミリー
『サブ・ヴァ―シズ』

PCD-93697
定価2,415yen
解説:福田教雄
Amazon





1. No-Room
2. Way Up
3. Until The Morning
4. Sand Talk
5. Sometimes I
6. Holy Boredom
7. Sand Time
8. Whole World is Watching
9. When I Was Young
10. Samurai


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Miles Cooper Seaton(AKRON/FAMILY)Solo Tour 2013


12/10(火)
『Miles Cooper Seaton(AKRON/FAMILY) IN NAGOYA』
supported by THISIS(NOT)MAGAZINE
出演:Miles Cooper Seaton (AKRON/FAMILY) / 旅行気分(名古屋)/ DJ Thrushez a.k.a. kamitani (ex.サージェリーアフロ)/ DJ のうしんとう
会場:名古屋KAKUOZAN LARDER https://tabelog.com/aichi/A2301/A230107/23048923/
OPEN/START:20:00
料金:前売予約1500円+1ドリンク 当日2000円+1ドリンク *限定30名!
INFO:THISIS(NOT)MAGAZINE  tkbcdef@gmail.com
https://www.facebook.com/events/229454407221588/?source=1


12/12(木)
『感染ライブ』
出演:Miles Cooper Seaton (AKRON/FAMILY) / THE OBSERVATOR(from singapore) / Llama / 魚雷魚 / and more
会場:京都メトロ  https://www.metro.ne.jp/
OPEN:18:30
料金:980円(ドリンク代はかかりません)
INFO:京都メトロ 075-752-4765
https://www.metro.ne.jp/


12/13(金)
『Miles Cooper Seaton(AKRON/FAMILY) IN KYOTO』
出演:Miles Cooper Seaton (AKRON/FAMILY) / 丸尾丸子
会場:もしも屋 音楽室   https://moshimo-ya.com/
OPEN:18:30 START:19:00
料金:前売予約2000円+1ドリンク  当日2500円+1ドリンク
   ①お名前②人数③連絡先を明記の上、mail@moshimo-ya.com までお申し込みください。
   ※25名様限定。申し込み先着順となります。
INFO:もしも屋 音楽室 075-748-1181
https://moshimo-ya.com/ 


12/14(土)
『SuperGo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
出演:Miles Cooper Seaton (AKRON/FAMILY) / NObLUE(K'DLOKK) / ryohadano
会場:浜松 中区 田町 creative lab AmaZing
OPEN:18:30 START:19:00
料金:前売予約2500円 当日3000円
(限定50名)
※前売りチケット予約はメールのみとなります。 supergo1214@gmail.com 宛へ「件名」に「予約」としていただき、「本文」にお名前、枚数、連絡先を明記の上、送信下さい。
こちらからの返信をもって予約完了とさせて頂きます。
INFO:SuperGo supergo1214@gmail.com


12/15(日)
『逆まわりの音楽 その10~アーリントン・デ・ディオニソの24時間ドローイング・パフォーマンスのグランド・フィナーレ篇』
出演:アーリントン・デ・ディオニソ、マイルス・クーパー・シートン(アクロン/ファミリー)、一樂誉志幸(FRATENN)、nan!ka?(shibata+マコハセガワ)
会場:立川・砂川七番 ギャラリー・セプチマ https://galleryseptimablog.blogspot.jp/
OPEN:17:00 START:17:30
料金:2000円(予約/当日とも)
チケット予約及びお問い合わせ:
・スウィート・ドリームス・プレス(www.sweetdreamspress.com
・安永哲郎事務室(www.jimushitsu.com
・ギャラリー・セプチマ(https://galleryseptimablog.blogspot.jp/

Robedoor - ele-king

 ローブドアのアクトを初めて観た日の記憶は決して忘れることなどできまい。

 ローブドアは〈ノット・ノット・ファン〉主宰としてして知られるブリット・ブラウンがレーベル発足と同時にアレックス・ブラウンとともに活動をはじめたデュオだ。(ちなみに彼らは兄弟ではない。たまたまふたりともブラウン姓というだけである。)あらゆるフォーマットで膨大な量のリリースを積み重ねてきた彼らの(改めて「ディスコグス」を見ると本当に驚くべき軌跡だ。)サウンドは結成から現在まで首尾一貫してブリットのヴィジョンを、彼に言わせるところの「Caveman's Rock(洞穴人のロックとでも訳すべきであろうか......)」を具現化することにある。

 初期の彼等のサウンドは2000年代を象徴するサンの贖罪とも言える「僕もわたしも演奏はできないけどこれならできるかも!? ドローン・ミュージック」......的ムーヴメントの影響下にあったことは否定できないものの、ブリットが持つ世界観の特徴のひとつである非常にドライな虚無感がそれを単なるエクストリームな表現に終わらせないものに仕上げている。

 2007年に発表された『ランカー・キーパー』(〈リリース・ザ・バッツ〉)と2008年の『エンドレスリー・ブレイジング』(〈ウッジスト〉)は初期のデュオ編成での作品群のなかでもアカ抜けたセンスの光る2枚だ。

 話は再びあの晩に遡る。そう、初めて観るローブドアのアクトに僕は完全に消し飛ばされた。それは久々に感じる芸術行為がもたらす最高の恍惚状態。いわゆる自分が誰で何処にいて何をしているのかが認識できなくなる文字通りのアレだ。サイケ・クラウト、ラーガ・フォークロア、Dビート・クラスト、インダストリアル・ノイズ、ドゥーム・マントラ等々、いくら自分の好物だからといってそれを全部一皿に盛りつけたら普通は激不味になるのがセオリーだが、彼等のサウンドは初めて体験するそれらの奇跡の共存であった。

 ゲド・ゲングラスを新たなメンバーとして迎え入れたことはローブドアにとって大きなターニング・ポイントとなった。トリオ編成として発表した音源『レイダーズEP』(2009年)、『バーナーズLP』(2010年)、『ペイガン・ドラッグスEP』(2009年)はどれも後にマジで死ぬほど聴いた。人工の楽園であるLAに巣食う闇(例えばのマンソン・ファミリーからポール・シンメルのヘルター・スケルター展までに連続する暗黒LA史をイメージして頂きたい)をテーマにしたソング・ライティングや象徴的な言葉選びの退廃的なリリックも秀逸だ。

 その晩の彼等のライヴ・セットは当時リリース間近であった『バーナーズ』からの選曲であったと記憶している。プリミティヴなビートのなかにもダビーなグルーヴを含むゲドのドラミングはブレイクごとに振り上げるスティックとともに僕の魂を高揚させ、アレックスのクソ・カシオ・キーボードと安物ペダルが紡ぎ上げる在り得ないハーモニーはSunn O)))Beta Leadアンプのコーンをブッ飛ばさん限りの音波となり僕の全身の血液を逆流させ、そしてブリットの情熱的なギターと呪術的なヴォーカルが僕の脳髄を麻痺させた。前年からの精力的なツアーを経た彼等はバンドとして最も熟した状態にあったことに間違いはない。

 2011年に発表した『トゥー・ドーン・トゥ・ダイ』でこれらのサウンド・スタイルはひとつの完成を迎える。クソッタレ・ロス市警の乱入で惜しくも対バンできなかったこの年(......というか日本で考えれば夜中に民家の点在する丘の上のスケート・パークで無許可かつ超爆音でパーティを催していれば当然なわけで......その辺りがLAクオリティー)も彼らは圧倒的なパフォーマンスを披露してくれた。大曲"パラレル・ワンダラー"のライヴ・セットはレコーディングを遥かに凌ぐ完成度であったことをここに明記しておこう。また、この頃から彼等は新たなサウンド・スタイルの模索を開始する。同時期にゲドの家のポーチを寝床にしていた僕は、彼等が毎週バカバカしいほどの機材を机に並べ、暗闇でキャンドルを灯し、ワイン瓶とジョイントを廻しながら試行錯誤するなかにコッソリと紛れ込み、儀式的様相を呈する彼等の模索を存分に満喫していた。ブリットのヴィジョンである「ケイヴマンズ・ロック」はよりサイファイ色を帯び、嗜好はインダストリアルに傾倒しはじめていた。僕はこの素晴らしいトリオが新たなフェイズに移行していくのを非常に楽しみにしていた......が、残念ながら同年ゲドはローブドアを脱退することとなる。

 昨年の夏頃、僕はブリットに「多分近々LAに行くのでそっちでくさ代を賄うためにローブドアのテープを作らせてくんろ。それが駄目ならせめて最近の〈NNF〉のレコードの間にあしっどを挟んでこっちに送ってくれたまえ」......というような旨を伝え、半ば脅迫でゲットした音源を聴きながら白熱していた。再びデュオ編成となったローブドアの新境地は僕の予想を遥かに越えていた。凄まじく土臭いマシン・ビート、ブレることのないヴィジョン、衰えるどころか増していくネガティヴィティー......その後のLAでの対バンではメタル・パーカッションとマシン・ビートを大々的にフィーチャーした新たに獲得したバンド・フォームを披露してくれた。

 この度、三田氏が大絶賛するカンクンのリリースが記憶に新しいフランスの〈ハンズ・イン・ザ・ダーク〉よりドロップされたこの『プライマル・スフィア』には彼等が昨年から築き上げた新生デュオ・ローブドアとしてのトラックが収録されている。彼等の新たなサウンドを耳にする度に高まるミュージシャン、ブリット・ブラウンへの尊敬の念。それはヒップなレコード・レーベルのオーナーとしての彼とは完全に断絶していると言っても過言ではない。もちろん、インダストリアルというタームにおいては(なんせ紙エレキングで声高に言っちゃってるからね......)今日的な風潮を感じ取れる作風かもしれない。しかしながら僕は彼ほど自身のヴィジョンをストイックに追い続ける、いや、もとい、自身の「洞窟」を掘り下げるアーティストを他に知らない。

 おそらくこの音源も含め、ローブドアが大々的なブレイクを遂げることはないであろう。何故ならばその「洞窟」の深い闇のなかには日の光など届く筈はない。しかし勇気があるなら松明の明かりを頼りにひたすら下っていくといい。道はひとつだから迷うことはないだろう。気がつけば天にはこの世のものではない星空が輝き、その先にふたりがあなたを待っているだろう。

Master Musicians of Bukkake - ele-king

 シアトル空港に到着してキヨスクでコーヒーを買おうとした僕は、残金が24ドルしかないことに気がついた。そして例によってクレジットカードは停止していた......

 ロスでのクレイジー過ぎる毎日に少し疲れを感じていた僕は旅立ちを考えていた。ルームメイトのゲドは先ほど諸事情により急遽東海岸へ行くことになってしまったし、僕が合法的に米国で滞在出来る時間も僅かとなっていた。そろそろ潮時だ。
 ......と、一見シリアスな状況に置かれているにも関わらず、僕といえばカウチに沈み込み、ゲドのガンジャを勝手に吸いながらネットフレックスで『ツイン・ピークス』を見直すという堕落を絵に描いたような有様で、頭に浮かぶ考えはオードリーことシェリリン・フィンはマジでマブいなー、こんな子とデートしたいなーという思いばかりで一向に考えがまとまらない。しかし、『ツイン・ピークス』のロケ地の一部がシアトルであることを思い出し、僕はシアトルに住む元バイト先ハイドラ・ヘッド・レコーズ〈Hydrahead Records〉社長、アーロン・ターナー(ex-ISIS, Mammifer, House of Low culture etc...)に電話をし彼の家に滞在する許可を得たのだった。

 24ドルではヴァショーン島行きのフェリー乗り場まで行くことすらできないことをあらゆるタクシーの運ちゃんに悉く説かれ、僕はバス乗り場でシケモクを拾いながらバスは永遠に来ないんじゃないかと思うほど待った。ようやく辿り着いたフェリー乗り場でもかなり待つハメとなり、僕は待合室の向かいに座っていたじじいと世話話をはじめた。じじいはヴァショーン島の歴史をフェリー内に展示される写真を用いて丁寧に解説してくれたうえ、最終的に僕のフェリー代を奢ってくれた。島の船着き場に迎えに来てくれたアーロンは僕がじじいに別れを告げているのに首をかしげた。あれは誰だ? 友だちだよ。いきさつを話すと彼は爆笑していた。久々に会った彼のよりモジャモジャとなった顔を見ながら、かつてヘアー・メタルと呼ばれたジャンルがあったが、2000年代以降のドゥーム/ストーナーやポスト・ロックを通過したヘヴィ・ミュージックをビアー(髭)・メタルと呼んでもいいんじゃないかとどうでもいい事を夜の森を疾走する車のなかで思っていた。

 アーロンの1日は忙しい。ISISはすでに解散しているが(バンドとしてのビジョンをすべて達成した上での潔い終わり方だったと思う)自身のハイドラヘッドのアートワーク、デザインなどの業務に加え、新たにスタートしたシージ・レコーズ〈SIGE Records〉と夫婦バンド・マミファー(Mammifer)、外注で請け負う国内外のレーベルやアーティストのアートワークとデザイン......もともとを妻のフェイス(ex-Everlovely Lightning Heart)とともに自宅でテキパキとこなしている。残金が24ドルの僕は彼の雑用を手伝い、最高のヴィーガン手料理を御馳走になった僕は、大自然と動物達に囲まれた最高にクリエイティヴな環境の元に制作と仕事に打ち込む事ができる彼に、多くのアーティストが夢見る理想形態を見た。果たして自分がいつの日かこのような環境と仕事を得ることができるのだろうか?
 ......と真剣な思いとは裏腹に僕といえば湖が一望出来る彼の家の庭で寝そべり、彼のチャラスを吸いながら(やっぱ立派な大人は吸うものも違うぜ!)彼の猫のパン・ケーキ(名前)を揉んでいるというノー・フューチャーを絵に描いたような有様であった。

 見ていてときどきイラっと来るぐらい仲睦まじい夫婦のアーロンとフェイス、そしてトラヴィス・ロメインで構成されるマミファーの結成当初はあくまでこの夫婦のいままでのバンド遍歴から安易に想像がつくポスト・ロック、サッド・コアの文脈下にある、正直もう聴き飽きたサウンドであったが、このテープや近年のレコーディングを聴く限り、よりオーガニックなノイズ/アンビエント・ミュージックに移行している。ベテラン・ノイジシャンであるダニエル・メンチェ(Daniel Menche)や秋田昌美との深い交流も理由として挙げられるが、僕は個人的にヴァショーン島の土地そのものが彼らにおよぼすものを感じる。彼らとともに散歩した島のランドスケープは何処をとっても比類なく美しい、しかし大自然のそれは人智を越えた美であり、人に畏怖の念を感じさせるパワーがある。アーロンも『ツイン・ピークス』の大ファンであるし、フェリーでじじいが語ってくれたネイティヴ・アメリカンの聖地の話も相まり、このような諸星大二郎的な産神ロマンを感じながら僕は彼等のサウンドを聴いている。

 シアトル・シティーに買い出しに出掛けた帰り、僕らはバーに立ち寄った。アーロンは優雅な着こなしをした熊のような男と挨拶をかわし、彼はランダルだと紹介した。あんたがマスター・ミュージシャンか!? と驚く僕を尻目に彼は、いやいやいや、まだまだ全然修行の身だからそんな事ないよ......とおそらくお馴染みとなっているだろう掴みのジョークを優雅に返した。ランダル・ダン(Randall Dunn)はEarthやSUNN O)))等でお馴染みのレコーディング・エンジニアでありマスター・ミュージシャンズ・オブ・ブッカケ(Master Musicians of Bukkake)のブレインだ。
 すでにMMOBの相棒のドン・マッグリーヴィと飲んでいたらしく、僕らが席に着くなりランダルは先日濃縮サルビアを通じて得たサイケデリック体験について語りはじめた。一応補足すると、サルビアはポピュラーなリーガル・ドラッグであり、そのヴィジョンは強烈であるものの完全にアン・コントロールである上に飛翔時間はものの数分である。よって全く実用性がない......って何の話だよ。話を戻そう。自宅のカウチでくつろいでいたランダルは突然天から突き出て来た巨大な掌によってつぶされたランダル、気がつくと目の前には鹿が一匹彼を覗き込んでいる。鹿はランダルに「お前の音楽ってどんなの?」といたって普通に訊ね、彼はこれこれこうだと普通に答えた(失礼、ランダルが何と答えたかは失念)。鹿は「なるほど、わかった。みんなに伝えておこう」と言い残しランダルの元を去っていった。「......ってみんなって誰やねん!」と、ランダルはひとりツッコミをしながらシラフに戻ったという。かくもバカバカしい話を聞いて僕はすぐにゴーダマ・ブッダを思い出した。ブッダが初めに説法を説いたのは鹿だった気がする。一匹の鹿がブッダの説法を聞き、それを他の鹿達に翻訳したという(所詮手塚先生のブッダだから実際の教典は知らんけどね)。
 Totemシリーズのアルバム・コンセプトを本人から聞いたわけじゃないが、少なくとも人間と動物の垣根を超越するトーテミズムがランダルのブッ飛びエピソードと完全にシンクしている事は真剣に興味深い。

 また、説明するまでもなく「Master Musicians of Jajouka」のパロディである彼らのフザけたバンド名は実は妙に彼らのサウンドを表しているように感じる。
 サン・シティ・ガールズがやっていた世界各地のあらゆる民族音楽や宗教音楽を超絶スキルでパロディにするという、(実際リック・ビショップとも一緒にやってるんだけども)重厚なバックグラウンドを持つミュージシャンにこそ実践出来る方法論を、アーロンやフェイスも含むシアトルにおける真にプロフェッショナルなミュージシャン・コレクティブならではの2000年代以降のドゥーム/ストーナーを通過した非常にリラックスしたジャムとういう形で現代的なサイケ・マントラに仕上げている。
 伝統的である民族音楽や宗教音楽の現代的なパロディと、モザイクがある故に"ガンシャ"を発明した日本のポルノのエクストリームな進化形態である"ブッカケ"が異文化圏においてはかくもバカバカしく、それでいて一見すると儀式的な様相が呈しているという事実は、どちらも時代と文化を越えた一種のディス・コミュニケーションであるとも捉えられるのではないだろうか?

Die Antwoord - ele-king

 ここ数年間ディ・アントウッドには腹が捩れるほど爆笑させられているのだが、不思議とこの新時代のポップ・アイコンについてはあまり日本国内の音楽メディアで語られていない。
 2009年にエンター・ザ・ニンジ、ビートボーイの鮮烈過ぎるユーチューブにあがったクリップとともにメディアに姿を表したニンジャ、ヨランディ・ヴィサー(Yo-Landi Vi$$er)、DJハイテック(DJ Hi-Tek)のレペゼン南アフリカ、自称ゼフ(Zef)、ラップ・レイヴ・クルーであるディ・アントウッドを初めて見た者は、これはCGなんじゃないかって思うほど無限のツッコミ所に腰が抜ける。僕は彼らの最初のふたつのクリップを見て悶絶し、またコラボレートしていたDJソラライズ(Solirize)ことレオン・ボッサというプロジェリアのアーティストの姿を見ながら、ディ・アントウッドの強烈なメッセージ性がギリギリのバランスを持って保たれていることに感動した。それはニンジャが10年の歳月を経て築き上げたいち部のスキもない緻密な計算に基づいたものなのだ。前身ユニットのマックス・ノーマル・TVなど、それまでポップ・アイコンとしてのラップ・ミュージックの実験性を模索して来た彼の素晴らしき最終回答がディ・アントウッドであり、ネクスト・レヴェルなのだ。

 南アフリカの訛りの英語という英語圏の人間がもっとも嫌う言葉遣いを全面にフィーチャーした爆笑リリック、ユーチューブの最高のセンスな自称DIYなクリップには(自称というのはおそらく最初のヴィデオにはディストリクト9の監督であるニール・ブロムキャンプの協力が噂される)世界中のポップ・ミュージックのアイコンのパロディを詰め込んだキャラクター、そして何より南アフリカの土着性と事実をユーモアを持ってアピールしている。
 先日「アルジャジーラ」で見たドキュメンタリーで、南アフリカにあるアルビノたちのコミュニティが恐れる、いまだに息づく土着のウィッカンにフォーカスしたものがあった。それは若いアルビノの体は幸運を運ぶ魔術のマテリアルになりうるとして、アルビノの死体が金銭対象となりしばしば襲われるケースを追ったものだった。
 そう言えば、ディ・アントウッドのイーヴル・ボーイのリリックで南アフリカでの伝説の淫獣トコロシを唄ったものがあり、彼らが地元でその魔術について取材したViceの番組があったっけ(そもそもあのクリップの衝撃はさらなる高みへ押し上げたであろう程の完成度だった)。まったくもって信じがたい話だが、この地球上で文化人類学的にこれほど良くも悪くもロマンチックな土地がまだ存在するんだろうか? この衝撃は、彼らを題材にしたショート・ムーヴィーがハーモニー・コリンに監督されたりと、音楽以外の文脈でのほうが広がりがあるようだ。オッド・フューチャーといい近年のユーチューブ・カルチャーにおいて最高のユーモアで切れ味のいいジョークを披露してくれる次世代を日本でももっと期待したい。片桐えりりかの素股ギターはアングラ・ミュージックの各方面からも話題だったが、僕はあれではモノ足りないのだ(僕はSUNN O)))のスティーヴンのブログで逆輸入的に知った)。

 〈インタースコープ〉との決別を経て、自身の合い言葉である〈Zef〉(南アフリカのスラングで呪いの言葉である)レコーズを立ち上げ、取り巻く巨額の金を管理し、新たにドロップした今作、よりダークに病んだヴィデオ・クリップ、よりスカスカのチャラーいトラックに乗るニンジャとヨランディ、そして(毎回異なるコラボレーターである)覆面DJハイテックの壮絶なスキルとリリック......、それは笑わせられながらもこちらの暴力衝動を掻き立てる魔力を秘めている。

Galactic - ele-king

 昔の話だが、アメリカの友人(有名なDJである)と渋谷の街を歩いていたら、いわゆるストリート・ミュージシャンの数の多さ、そしてその下手っぷりに驚かれたことがある。この程度の技術でよく路上でやれたものだと彼は呆れていたが、たしかにアメリカでは演奏力というものが、日本やイギリスよりもいまでも価値を持っている。DJにしてもそうだ。アメリカの黒人のDJは、ほとんどみんなうまい。イギリス人では人気があって、しかも下手くそというDJが少なくない。いずれにせよ、ジミ・ヘンドリックスというジャンルを超越した巨星を生んだ国だけあって、ことメインストリームの文化において演奏力という価値観が衰えていないし、また、ライヴハウスが生活に根付いているがゆえに自力がなければ這い上がってこれないというのもあるのだろう。
 即興を特徴とするジャム・バンドという文化も、早い話、演奏力の文化だと言える。コンセプトありきのヨーロッパ型のシーンにはなかなか見られない、いまではある種の伝統にもなっている。そもそもジャム・バンドはジャンル的に言えば、ブルース、ジャズ、ファンク、サイケデリック......などなど実に多様で、マーズ・ヴォルタやSunn O)))、ザ・フレミング・リップスまでもがこの文化圏に含まれるらしい。とにかく線が太く、野外の大きなところを得意とするような、演奏に迫力がある連中だ。昨年のメタモルフォーゼで演奏する予定だったジャズ・ファンク・バンド、ギャラクティックもそうしたジャム・バンドのひとつに数えられる。

 1994年にニューオーリンズで結成された5人組のこのバンドは、すでに9枚のアルバムを発表している。2007年からは〈エピタフ〉傘下の〈アンタイ〉(ジョー・ストラマーの最後のアルバムを出したレーベル)に移籍して、本作『カーニヴァル・エレクトリコス』は〈アンタイ〉からの4枚目のアルバムとなる。ニューオーリンズのマルディグラ、リオのカーニヴァルと並んで有名な地元の謝肉祭がアルバムのテーマで、なぜこの時期にリリースされるのかといえば、マルディグラがこの季節だからだ。
 ギャラクティックといえば、1960年代末に登場したニューオーリンズ出身の偉大なファンク・バンド、ザ・ミーターズの現代版であるとたびたび謳われている。ある意味その陽気な感覚は継承しているが、基礎体力の高さのみならず、それ以上にアッパーな何か、大はしゃぎの人食った演奏をこのバンドは展開する。ファンクが基本だが、本作ではサンバも大胆に取り入れている。セルジオ・メンデスのカヴァーもしている。ジャズ・ファンク・サンバの祭典といったところで、なんでこいつらこんなにハッピーなのかと意表を突かれる思いだ。お祭りの音楽だから当たり前と言えば当たり前だが、アメリカのジャズ系のジャム・バンドは、ソウライヴもそうであるように、イギリスにはないハッピーなグルーヴがある。メタモルフォーゼが声をかけたのも充分に理解できる演奏だ。iPodでは聴きたくない音楽だろう。

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