「Not Waving」と一致するもの

夜の力──ウエストバム自伝 - ele-king

「ウエストバム、前にも言ったと思うけど、レナーは〝ディスコ・ドイチュラント〟が大好きなのよ。DJはダンスだけではなくて、人びとを挑発して、さらに政治的な影響力も持てるだろうって言っているわ」 ──(本書より)

70年代末、西ドイツにパンクの波が押し寄せ、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレがはじまった。1988年、ベルリンのクロイツベルク地区で大暴動が起きた同じ時刻、すぐその傍らでは、ひとりの若者がシカゴ・ハウスをスピンして、何千人もの人間を踊らせていた。DJの名前はウエストバム。西ドイツにレイヴ革命を起こした男である。

たちのぼる3000の夜のにおい。
汗、ニコチン、酒、グミベア、ヘアスプレー、セックス、ドラッグ、テクノ、灰、腐敗、堕落、そして笑顔と涙……。

ベルリンは、いかにしてテクノの拠点となったのか? パンク、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ、DAF、DJカルチャー、ゲイ・カルチャー、シカゴ・ハウス、デトロイト・テクノ、UKレイヴ・カルチャー、セカンド・サマー・オブ・ラヴ、ベルリンの壁、東側の熱狂、ラヴ・パレード、ジャーマン・トランス、祝福された世代、そしてレイヴ共同体の衰退……ドイツ・テクノのあまりにもドープな物語

石野卓球の盟友としても知られる、ドイツの国民的な人気DJ、ウエストバムが描くその半生と90年代レイヴの狂騒。ドイツ・テクノのあまりにもドープな物語。待望の翻訳!

「是非日本語訳で読みたかったんで出版社に話持って行きました。案の定スーパー面白い! ETM (Elektronische Tanz Muzik)! Not EDM.」 ──石野卓球

R.I.P David Mancuso - ele-king

 目と目を合わせるだけでチカラが湧いてきて元気をくれる人というのが稀にいます。最初に会ったときからDavid Mancusoは自分にとってそういう人でした。深く誠実な眼差し。そして握手を交わしたときの優しい笑顔と伝わってくるポジティヴなエネルギーは一生忘れられません。
 2016年11月14日。そのDavid Mancusoが亡くなったと聞いて、とても残念で、悲しく、寂しい気持ちです。

 私は仲間とはじめたパーティ、Sunday Afternoon Session “gallery”をやっていくなかで、札幌の“Precious Hall / Filmore North”の力を借りて、1999年~2011年まで年に1回くらいのペースでDavidを東京に招き“Music is Love”というパーティを開催してきました。David Mancusoが長年かけて積み上げて来たものをなるべくアウトプットできるように心がけて。

 Davidは常にパーティに来てくれる人のために生きていたように思います。音楽が好きなすべての私たちのために。そしてそれはおなじように音楽そのもののために私たちにパーティを開いていたとも言えるでしょう。
 音楽のために。私たちのために。常に音響を追求し、皆がベストな状況で音楽を感じられるようにと優しく細やかな配慮がパーティーには溢れてました。彼はアナログ・レコードにこだわり、ターンテーブル、カートリッジ、アンプ、スピーカーを選び抜き、サウンドシステムのセッテングに注力していました。
 ドライヴ感のある締まった低音。抜けの良い中高音域。そして特筆すべきはフロアの天井の辺りで、その音楽と皆の発するヴァイブレーションとがミックスされて、常に反復され響いているマジカルでものすごく心地よい倍音。それはまさにミュージック・マジックでした。

 彼の音楽に対する深いリスペクト。そして音楽を愛する人たちへのホスピタリティー。これが何よりあの素晴らしいミュージック・マジックを創り出していたのでしょう。音楽の持つメッセージとその気持ち良い音で最高の瞬間を何度もシェアしてくれました! そして私たちにポジティヴなエネルギーを与えてくれました。
 45年以上に渡りパーティ本来の在り方を実践し続け、音楽をプレイし続けてくれた彼の愛とスピリットに感謝します。
 そして、彼が伝えてくれたこれらの大切なものを未来に繋げていきたいと思います。

 Thank you David.
 Rest in Peace.
 Music is Love.

2016.11.19
Kenji Hasegawa (gallery)

 毎年恒例でアイスランド・エア・ウエイブスのレポート。18回目のエアウエイズで、私にとっては4回目の参加。滞在期間は2日と短かったが、中身は濃かった。
 いったい、この国の良いバイブがどこから来るのだろう。アイスランドは、2008年に経済破綻したというが、初めてアイスランドに行った2013年にも、そんな様子はまったく見えなかった。レコード屋に行ったらエスプレッソが出て来るし、バーは夜中の3時でも列が出来ているし、高級レストランにも多くの人がいる。若くして子供を持っている人が多く、町は綺麗で、ホームレスもいない。どう言うこと?
 たしかに、オーロラは日常的に見れるし、ブルーラグーンや、この世の物とは思えない美しい自然が目の当たりに見れるから、観光客もエア・ウエイブスに関わらず多い。レイキャビックの町は小さく、NYで言うとベッドフォードくらいで、端から端まで歩いても1時間ぐらいなので、自転車に乗っている人が多い。町の中心にある、ミュージック・ホールのハーパ周辺の港と景色は、何処を写真撮っても絵になり(ピンク色の空)、歩くのがとても楽しい町である。
 どのようにアイスランドが、経済復興したのかと、地元の人に聞いたところ、やっぱり観光業のお陰だと言う。ただ、この小さな国にとって、クローナの価値が上がり過ぎて、またバブルが弾けるだろうと言う。エアbnbなどで、観光業が調整されず、アイスランド人にとっては家賃はどんどん高騰しているし、クローナがこのまま上がり、上がらないところまで達したら、後は下がるしかないので、政府が次にどんな対策に出るかがキーだと言う。それが資本主義だけど、もし政府が、観光業を調節しはじめ、家賃レートを守れるなら、滅茶苦茶な状態は避けることができるはず、と。とにかく2016年、アイスランドはバブリーな状態にある。因みに、NYから来た身としては、アイスランドは何でも高い。ビールが大体$9、サンドイッチを買ったら$15など。

   

 さて、私のメインの目的は、オフ・べニューと呼ばれる、昼間行われるイベント。日本やアメリカでは見れない、地元のアーティストからツアーバンドまでが、レイキャヴィックのバー、レストラン、洋服屋、洗濯屋、レコード屋、ホテル、銀行など、音楽をプレイできるところなら何処でもライヴをしている。バンドによっては1日3ステージこなし、エアウエイブス期間に10以上のライヴをこなすこともあるし、新しいバンドに出会うのに、こんなに良い機会はない。何となく予定は立てるが、もちろん予定通りにいかない。偶然良いバンドに出会ったり、知り合いに出くわしたり、人が親切なので、心地の良い所にずーっと居てしまったりする。エア・ウエイブスのいい点は、時間にきっちりしているので、何かをミスっても、すぐ予定を立てやすい。

 今回の新しい会場ベスト2は、港近くのbryggjan brugghúsとBar Ananas。どちらも、レストラン・バーで、普通のお客さんもいながら、オープン・スペースでバンドがプレイしてる。bryggjan brugghúsはビストロ風、Bar Ananasは常夏風でトロピカルなサーフ気分が味わえる。ハングアウトも出来、バンドも見れ、ご飯も食べれ、来た誰もが楽しめるようになっているのが、アイスランド風。

 新しいバンドで印象に残ったのは、Skrattar , GANGLY, GKRで、リピートとしてはSamaris, Mammút, Hermigervill, Fufanu, Mr.Sillaが良かった。キー人物がいろんなバンドでプレイしているので、それを追いかけると、だいたい良いバンドに出会える。例えば、SamarisのJofridurは、Samaris以外に、 Pascal Pinon, GANGLY,そしてソロのJFDRをやっていて、どれも彼女の個性で成り立っている。GANGLYはまったく知識がなく、感で見に行ったのですが、見てすぐに彼女がシンガーだと気づいた。何か、引き寄せられる物がある。
 見れなくて残念だったのは、やっぱりビョーク。私はDARLINGリストバンドをもっていたが(列に並ばず入れるVIPリストバンド)、それでも入れず、会場のハーパで雰囲気だけを味わっていた。見れた人は本当にラッキー。アメリカのバンドはNYでも見れるので、ことごとくスキップしたが、Santogold, Warpaint, Frankie cosmosは見たかった。
 2日の滞在だったが、新しいバンド、新しいものごと、上から下まで十分にインスパイアされた。気候がどんどん温暖化して、今年は軽装で行ったのだが、難なく快適に過ごせた。
 アイスランドは本当に、何を食べても美味しいし、人びとは、朝まで普通にパーティしているが、モラルがあり、嫌な目にあったことがない。何処でもクレジットカードが使え、Wi-Fiがあり、英語が通じる。そして、アイスランドは安全、親切。朝6時にバスを待っていると、シリアから来たという男の子と簡単に友だちになったり、バスの乗り場を間違えて待っていたら、ホテルの男の子スタッフが、わざわざ正解のバス停まで連れて行ってくれ、バス会社に電話して、私がミスっていないかを確認してくれ、バスが来たら、わざわざ止めて、そのバスがあってるかどうか確認してくれたうえで「良い旅を!」と、送り出してくれる。これが平均的なアイスランド人。涙が出そうになった(とくにNYにいると)、マジカルなアイスランド体験だった。

 

最後に今回見たバンドのリスト。

Fri 11/4
Just another snake cult @bio Paradis
Samaris @bryggjan brugghús
Mammút @bryggjan brugghús
Kótt grà pje @bryggjan brugghús
SiGRUN @12 tonar
THROWS (UK) @12 tonar
Gruska Babuska @ Bar 12
GKR @ American bar
Dolores Haze (Sweden) @gaukurinn
IDLES (UK) @gaukurinn
Hermigervill @ gamla bíó

Sat 11/5
asdfhg. @ Hlemmur Square
Kaelan Mikla @ Hlemmur Square
Fufanu @ Bar Ananas
Mr.Silla @ NASA
Skrattar @ Gaukurinn
GANGLY @ Gamla Bio
Chinah (DK) @ Gamla Bio

公式サイト
https://icelandairwaves.is/

エアウエイブス・サバイバルガイド
https://grapevine.is/culture/music/airwaves/2016/10/31/iceland-airwaves-survival-guide/?=rcar

Yoko Sawai
11/12/2016

RYOTA OPP(Meda Fury / R&S) - ele-king

ロンドンのツアーに持って行くレコード Best 10

 これはドイツのテクノの情熱と狂騒の物語である。90年代のはじまりとおわりの物語。本書で、ベルリンの壁崩壊後、ヨーロッパ、ことドイツにおいてテクノがいかに重要な意味を持っていたのかをぼくたちは知ることになる。過去を振り返らず、前途洋々たる未来を見つめ、自らを祝福することで生まれた革命──テクノを要求した人たち(西側)とテクノを必要とした人たち(東側)との邂逅。ドイツのテクノが、のちにラヴ・パレードに代表される巨大なレイヴとなったのには理由があった。
 ウエストバムは、ドイツにおいて、お茶の間でも知られるDJである(そこは盟友、石野卓球と同じ)。彼は、ドイツでもっとも早くシカゴ・ハウスをスピンしたDJであり、ドイツで最初のアシッド・ハウスと言われる「モンキー・セイ、モンキー・ドゥ」(曲名はイギー・ポップの歌詞からの引用)を作ったプロデューサーだ。メガ・レイヴのメイデイを主宰し、ドイツにおけるレイヴ・カルチャーの土台を築いた最重要人物でもある。『夜の力』は、そんな彼の半生が描かれている。同時に、80年代のノイエ・ドイチェ・ヴェレからハウスの時代へと、そしてテクノとレイヴの時代へと展開する模様がユーモラスなタッチで描かれている(冗談が好きなのも卓球と同じ)。

 それにしても……みなさんはウエストバムという名前にどんなイメージをもってらっしゃるだろうか。ドイツ・テクノ界の巨匠、じつは技術のあるターンテーブリスト、卓球が尊敬するDJ……他には? まあ、いろいろあるかもしれないけれど、彼の口からアドルノやショーペンハウアーという思想家の名前が出てくるとは、思わないのではないでしょうか? また、〈ミル・プラトー〉のアヒムと仲良しだってこととか。つーか、ヒッピー左翼系の大学教授の息子だったんですね。などなど、意外な事実やさりげない知性も垣間見れる。たとえば、90年代初頭のジャーマン・テクノを聴き漁っていた世代が読んだら、スヴェン・フェートをけっこうおちょっくているところは笑えます。ウエストバムはジャーマン・トランスが本当に嫌いだった……。大丈夫ですよ、愛とギャグのある批判なんで。
 DAFのガビ・デルガドと一緒に手作りのシカゴ・ハウスをかけるパーティを主宰するといういい話もあるし、UKセカンド・サマー・オブ・ラヴ体験はもちろん、デリック・メイをベルリンに初めて招聘したときのエピソード、URとの思い出も出てくるし、ウエストバムがデトロイトでまわした話もある。さらにまたもうひとつ言うと、ドイツ語で書かれ、ドイツの出版社から昨年刊行された本書には、しっかり石野卓球とWIREのエピソードも描かれている。
 これは90年代の終わりの物語ではあるが、あらたな祝祭を要求する物語でもある。
 テクノ・ファンは必読。発売は11月21日です!


ウエストバム (著),
楯岡三和+トーマス・シュレーダー (翻訳)
『夜の力──ウエストバム自伝』
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interview with Romare - ele-king


Romare
Love Songs: Part Two

Ninja Tune/ビート

HouseDisco

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 ロメアーが昨年リリースしたアルバム『Projections』は、この日本でもじわじわと、時間をかけながら受け入れられている。その音楽はデトロイトのアンドレスのディープ・ハウスのムードに近く、ムーディーマンやマッドリブの“古きブラック・ミュージック愛”とも連なる。コラージュ的で、しかもそのセンスはアフリカン・アメリカンへの愛情と強く共振する。
 そんなわけで、ハウスやヒップホップのリスナーは、この1年のあいだそれぞれゆっくりとロメアーと出会い、いまではたくさんの人が聴いている……のだが、ロメアーはブリストルの〈ブラック・エイカー〉からデビューしたイギリス人で、アメリカの貧民街に暮らしているわけではない。
 話は変わるが、PC前の妄想もぼくは好きだが、こうして取材をすることは、その人の作品を理解するうえではものすごく大切な行為である。ロメアーに関して、ぼくは大きな誤謬を犯していたので、今回の取材はひじょうにためになった。
 2012年のデビュー・シングルに「Afrocentrism(アフリカ中心主義)」という言葉を冠したロメアーは、続く2013年の「Love Songs」においても、シカゴのフットワークの影響を取り入れていた。こうなるとこの人は、UKの音楽シーンに昔からいる、いわゆる“ブラック・ミュージック・フリーク”かと思ってしまっても無理もないだろう……と自己弁護めいて嫌な気分になるが、じつは彼の本質はそこではなかった……とういことが明らかになった取材だった。
 新作の『ラヴ・ソングス:パート2』は、前作同様クオリティの高い作品であり、ロマンティックなダンス音楽でもある。カリブーのような最良のUKダンス・ミュージックともリンクする。照れることなく「ラヴ・ソング」と言ってしまう純な心意気、ぜひ聴いて欲しい。

今回のアルバムはもっとヨーロピアンやブリティッシュ・フォークからの影響が強いね。他にもディスコやアイリッシュ音楽とかの影響もあったんだけど、僕はいろいろな違う場所の文化の音楽を取り入れたいんだ。

ロメアー・ベアーデンといえば、ハーレムにおけるさまざまな場面のアフリカ系アメリカ人を描いた芸術家です。彼の何があなたをそこまで強く捉えたのですか?

ロメアー:もともとあるものに自分が作ったものをはめ込んでいくという手法にとても惹かれたんだ。新聞や雑誌という従来からあるもののコラージュに自分のペインティングを加えて新しい作品として出すという形にとても興味を惹かれた。僕がやりたいのはこれの音楽ヴァージョンだったし、まさしくこの手法だと思ったね。

音楽とは別のところで、あなたはアフリカ史、アフリカン・アメリカン史を学んでいたのでしょうか?

ロメアー:学校では勉強したけど、いつも音楽をやりたいと思ってたし、そのときは興味があって勉強してたけど、いまはいろいろなことに興味を持っているよ。

アフリカン・アメリカンの文化全般に興味があるのでしょうか?

ロメアー:アフリカン・アメリカン音楽シーンに興味があるんだ。彼らが生んできたジャズ、ブルースやゴスペル、ディスコ、ヒップホップなどの音楽は、今日のメジャー音楽へとても影響を与えているからね。だから僕は、彼らの生んできたものにとてもリスペクトを払っているんだ。
 ただ『Projections』に比べたら今回の作品への影響は少ないかな。今回のアルバムはもっとヨーロピアンやブリティッシュ・フォークからの影響が強いね。他にもディスコやアイリッシュ音楽とかの影響もあったんだけど、僕はいろいろな違う場所の文化の音楽を取り入れたいんだ。

こんな現在だからこそ、新作は、『Love Songs』シリーズの『Part Two』になったのではないかと邪推してみたのですが。

ロメアー:『Part Two』は、世界に向けたラヴ・ソングだよ。結構サンプリングの素材が多かったしね。基本的に僕は、自分のリリースするものに毎回テーマを設けるようにしているんだけど、今回のテーマはサンプリングの楽曲のなかの歌詞によるところが大きい。テーマを設けるとサンプリングするときの選曲がわりとスムーズなのとまとめやすいという利点があるんだ。というのも、僕はあらゆる感情をアルバムに詰め込みたいから、そうなるとわりと膨大の量のサンプルが必要になってくる。でもテーマがあればその膨大な量のサンプルもまとめることができるからとてもいいんだよ。

「Part One」はまだジュークやアフリカのエレクトロの影響下にあり、しかし『Part Two』の音楽性はより寛容で、洗練されています。ということは、音楽的には『Projections』を発展させたもので、コンセプト的に「Part One」を継承するものだと考えられます。あなたが托した「Love Songs」の意味について話してください。

ロメアー:うん、それはとても的確にとらえていると思う。たしかに僕が使ってるリズムやサンプルの使い方とかその通りだと思う。“Part Two”はトラックの数も10あるから、そういう意味では言ってる通り寛容だと思うし、洗練もされていると思う。最初の曲はジミ・ヘンドリックスと彼のガールフレンドについての関係性を描いたものなんだけど、テーマはひとつだけど形が違うっていうものを表したかったんだ。

曲名からも今回が“LOVE”で統一されていることが伺えるのですが、ここには啓発的な意図もあるのでしょうか?

ロメアー:いま言ったことと同じなんだけど、「LOVE」ってとても大きなテーマだし、どの音楽ジャンルでも取り上げているもっとも大きなテーマだと思うんだよね。人間として永遠に考えて、乗り越えなくちゃいけない問題だと思うんだ。それに興味深い歌詞が一番多いテーマでもあるしね。

“L.U.V”のような曲には、ある種のニューエイジ的なセンス(たとえば最近のマシューデイヴィッドが試みているような)も感じるのですが、そう言われるのは心外ですか?

ロメアー:えーっと、まずマシューデイヴィッドが誰なのかちょっとわからないんだけど……まずこのタイトルは、歌ってる歌詞のなかから選んだんだ。僕はサンプルを使う時にサンプルのなかで歌ってる歌詞のなかから歌詞をつけることが多いんだ。

その“L.U.V”でサンプリングしている声について教えてもらえますか? 

ロメアー:サンプルだから誰が歌ってるかは明かせないんだ、ごめん。

“New Love”なんかはいわゆるスピリチュアルで、瞑想的なんですが、ここにも啓発的なものを感じるんですよね。この曲に込めたあなたの思いとは?

ロメアー:テクノのパーティに行って影響されて作った曲なんだけど、あんまり7分の曲って作らないんだけど、トランスな感じにしたかったんだよね。それがたぶんスピリチュアルな感じを生んでいるんだと思う。

世界に向けたラヴ・ソングだよ。結構サンプリングの素材が多かったしね。基本的に僕は、自分のリリースするものに毎回テーマを設けるようにしているんだけど、今回のテーマはサンプリングの楽曲のなかの歌詞によるところが大きい。

「Love Songs: Part One」は2013年にEPとしてリリースされましたが、『Part Two』は当初からアルバムになる予定だったのでしょうか?

ロメアー:いや、最初はアルバムを作ろうとは思ってなかったんだ。最初に「Love Songs」を“Part One”としたのは、テーマが大きすぎておさまりきれなかったから、シリーズ化するためにわざと“Part One”とつけたんだ。そうすれば色んな形でまたLove Songsを捉えることも出来るし次につなげられると思ったんだ。正直“Part Two”はアルバムにしようと考えてたわけじゃないんだけど、いまはアルバムとしてリリースしたいと思ってたからこの形にできて良かったと思ってる。

デビュー・シングルに“Afrocentrism(アフリカ中心主義)”とまで謳っていますが、それはいまのあなたにも継承されているコンセプトなのでしょうか? 

ロメアー:僕はいろいろな国のいろいろな文化に興味があってひとつのことに捉われていたくないというのもある。だからいまはもっとイギリスやヨーロッパの歴史やカルチャーに興味があるね。

〈ブラック・エーカー〉時代はいろいろなリズムを試していたと思うんですけど、『Projections』で、ハウス・ミュージックというフォーマットのなかにそれらを組み込みましたね。その経緯について話してください。

ロメアー:ハウス・ミュージックについてはよく知らないんだ。ディスコの方がずっと興味はあるけど。もしかして僕の音楽をどこかにあてはめるには、ハウスのところにはめるしかないのかもしれないけど、僕はディスコ音楽を取り入れているし、みんなが踊れるダンス・ミュージックがいいなって。DJしてて楽しい音楽の方がいいしね。

逆に、〈ブラック・エーカー〉時代はレーベルのカラーに合わせて、ジュークやエレクトロをやったフシもあったんですか?

ロメアー:いや、そういうわけじゃないよ。かなり昔にジュークやフットワークに熱心だった時もあったんだけど、そこで感じたのは、ダンスっていうジャンルは必ずその音楽に合わせないといけないってことだった。だから僕は、音楽をやっている者としてもっと違うこともやってみたいなって思ったから興味の先が移ったっていうのがあるね。

ムーディーマンやセオ・パリッシュについて訊きますが、彼らのどこを評価してますか?

ロメアー:好きなのは断然ムーディーマンなんだけど、彼の音楽にはソウルを感じるんだよね。それに限界を押し上げる力があるというか。

「Meditations On Afrocentrism」から今作まで、あなたのアートワークがあなた自身の手によるコラージュ作品であるように、あなたはサンプリングを扱い、音楽を作っています。あなたのサンプリングは、なんでもいいわけではなく、サンプリング・ソースそのものにも意味がありますよね? 今回は、サンプリングにおいて前作までとどのような変化がありましたか?

ロメアー:前作との違いはサンプリングの数が減ってることだね。今回はサンプリングを減らして楽器をもっと使ってるのがいちばんの違いだね。前よりもっとキーボードやシンセイサイザーを使いたくて取り入れているんだ。

“Je T'aime”とか、“All Night”とか。こういう曲はクラブ・フレンドリーの典型的な曲だと思うんですけど、あなたはクラブ・カルチャーのどんなところを良きものと思うんですか?

ロメアー:音楽って自分が音から受ける影響だと思うんだよね。クラブ・カルチャーって新しい音楽に出会える場でもあると思う。そこでまたレコードにも興味を持ったりね。いろんな垣根を越えられる空間じゃないかな。

USのヒップホップやUKのグライムからインスパイアされることはありますか?

ロメアー:グライムからはまったくインスパイアされたことはないね。ヒップホップは多分にあると思う。結局はサンプルだけど、ウータン・クランとかは、なんていうかダスティーだけど温かみがあって、ナチュラルでオーガニックな音楽だと思う。

The Gaslamp Killer - ele-king

 現在のLAのビート・シーンがクローズ・アップされるきっかけを作ったひとつに、ダディ・ケヴが主催するパーティーのロウ・エンド・セオリーがある。DJとミュージシャンによるライヴ、さらにライヴ・ペインティングなどを組み合わせた複合イベントで、2000年代後半には世界的に注目を集めるようになっていった。そこでレジデントDJを務めたのがガスランプ・キラーことウィリアム・ベンスーセンである。もともとサンディエゴのガスランプ地区でヒップホップDJとしてスタートした彼は、ロサンゼルスに移住してからはヒッホップに加えてジャズ、ファンク、ロック、サイケなどのロウなサウンドと、エレクトリックなベース・サウンドやIDMをミックスし、ヘヴィでダークで幻覚的な世界を作り出していく。既にDJとして絶対的な評価を得るようになっていた彼は、2012年にフライング・ロータスの〈ブレインフィーダー〉からデビュー・アルバム『ブレイクスルー』を発表する。デイダラス、ミゲル・アトウッド=ファーガソン、ゴンジャスフィ、コンピューター・ジェイ、エイドリアン・ヤング、ザムアイアム、シゲト、ディムライトらが参加し、ヒッピホップ、グリッチ・ホップ、IDMを土台としたビートメイキングに、コズミックなエレクトロニック・サウンドやディープ・ファンク、サイケデリックなモチーフをコラージュしたこのアルバムは、サン・ラー・アーケストラの世界観を現代に引き継ぐものだった。アトウッド=ファーガソンのヴァイオリンをフィーチャーした“フランジ・フェイス”が絶品だったほか、“アパレーションズ”や“ニッシム”のようなエチオピア・スイタイルのジャズ、中近東風作品が印象的だった。

 2015年には自身のレーベルから『ライヴ・イン・ロサンゼルス』を発表するが、これはガスランプ・キラー・エクスペリエンスというバンドを率いてのライヴ録音で、LAジャズ・シーンの若手ミュージシャンが大挙参加している。顔ぶれはカマシ・ワシントン、デクスター・ストーリー、トッド・サイモン、アミール・ヤマグチなどで、ちょうどカマシが『ジ・エピック』でブレイクしたこともあり、そうした流れとも合流する作品だった。『ブレイクスルー』の収録曲も演奏しているが、ライヴ・アルバムということもあり、ジャズの生演奏の度合が強まった印象だ。ガスランプ・キラーの次のステップがどうなるかを予感させていたのだが、そうした中で新しいアルバム『インストゥルメンタルパシー』がリリースされた。今回の参加者はミゲル・アトウッド=ファーガソン、ゴンジャスフィ、アミール・ヤマグチ、MRR(マイケル・レイモンド・ラッセル)など『ブレイクスルー』にも参加した馴染みの面々に、ヒーリオセントリックスなどで知られるドラマーのマルコム・カトゥー(彼は昔からMRRともセッションしており、今回はMRRと一緒に参加している)。人数的にはより少数精鋭となり、『ブレイクスルー』の世界観をより凝縮させた方向へ導いたアルバムである。『ブレイクスルー』は全体的に荒々しくてローファイな印象が強く、本作では“グッド・モーニング”や“シュレッド・ユー・トゥ・ビッツ”などがその系統となるが、一方“パセティックス・ドリームズ”のようなアンビエントで繊細な作品もあり、表現の幅が広がっていることも示す。『ライヴ・イン・ロサンゼルス』でのライヴ・パフォーマンスの延長線上にあるのが“ウォーム・ウィンド”で、エチオピアン・ジャズとジャズ・ファンク、ジャズ・サンバにサイケデリック・ファンクと様々な要素が結びついた作品だ。“ガーマラサー・キル”もエキゾティックなモチーフに溢れたファンク・サウンドで、“ハレヴァ”のギターの音色は中近東のウードのようだ。このあたりはLAシーンとも結びつきの深いエチオ・ジャズの祖、ムラトゥ・アスタトゥケからの影響を感じさせる。“ライフ・ガード・タワー #22”や“リッスン・フォー・マイ・ホイッスル”のストリングスほか、全体にワールド・ミュージック的なエッセンスが感じられるのも本作の傾向と言えるだろう。北アフリカや中近東のモチーフを取り入れたジャズやディープ・ファンク、サイケ・サウンドは、2000年代半ばよりヒーリオセントリックスなどもやってきており、US西海岸でもマッドリブやイーゴン、ラスGなどにもその影響が表われていた。そうした点で本作のアプローチ自体は特別に目新しいものではないが、デクスター・ストーリーの新しいアルバム『ウィンデム』もエチオ・ジャズの影響が色濃く、『インストゥルメンタルパシー』は現在のLAシーンの傾向のひとつを示す作品だと言えよう。

interview with POWELL - ele-king

 俺は間違っても君がやっている音楽のリスナーではない。俺は機械化されたダンス・ミュージックが大嫌いなんだ。それがプレイされるクラブも、クラブに行くような連中も、連中が摂っているドラッグも、話している内容も、着ている服装も、やつらのなかのいざこざも、基本的に、100パーセント、そのすべてを憎んでいる。
 俺が好きなエレクトロニック・ミュージックは、ラディカルで他と違ったもの──ホワイト・ノイズ、クセナキス、スーサイド、クラフトワーク、それから初期のキャバレー・ヴォルテール、SPKやDAFみたいな連中だ。そういうシーンや人たちが/クラブに吸収されたとき、俺は敗北感すら覚えたものだ。俺はダンスこの地球上の何よりも深くクラブ・カルチャーを憎んでいる。そう、俺は君がやっていることに反対しているし、君の敵なんだ。 

──パウウェルがビッグ・ブラッグをサンプリングしたことを
スティーヴ・アルビニに知らせたところ、
本人から返信されたメールより

 いや、だからこっちはそれどころじゃないんだって。日曜日のサッカーの時間がはじまる1時間前からもうほかのことは考えられない。時間がずれていたらライヴァルたちの試合も見なければならない。試合後は、監督インタヴュー/選手コメントを3回以上は読み返す。ホント、応援するほうもたいへんだよ。J1昇格、すなわち人生がかかっているんだから。
 もちろん某君にとってはどうでもいいことだった。アレックス・スモークもゾンビーも、アルバム、いまひとつだったな、と彼はぶっきらぼうにつぶやいたのだ。それから、彼はこういう。もっとできたはず。
 もっとできたはず? いや、いまはどんなに泥臭くてもいいから勝って欲しいし、こう言ってはナンだが、連中はまだずっとマシな部類に入る。多くのクラブ・ミュージックがいま見失っているものはアティチュードにほかならない。テクノというジャンル名は、ホアン・アトキンスによってアルビン・トフラーの『第三の波』の“テクノ・レベル”から取られたという話は有名だが、早い話、その“レベル”の部分が欠落している。つまり、スリーフォード・モッズと〈Editions Mego〉との溝を埋める存在はおらんのかと。パウウェルが注目されなければならない理由はまずここにある。
 「絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……」と、パウウェルは説明する。台頭する右翼勢力、シリア内戦と難民、あるいはブリグジットにトランプ、いまやネットで世界中のニュースにアクセスできる。この10年で、未来/フューチャーという、80年代~90年代のハウス/テクノの楽天的な合言葉も喪失したわけだが、パウウェルときたら、まさに日々更新される恐怖のなかで、それでもぼくたちは楽しくやっているんだと言わんばかりだ。笑いがあるんだな。ここにもうひとつ、パウウェルに惹かれる理由がある。
 ジョン・サヴェージの『イングランズ・ドリーミング』によれば、否定者とは時代を切り拓くものであるから、期待しましょう。『スポート』は、パンク40周年の2016年にリリースされたテクノ界のブライテスト・ホープの最初のアルバム、アンダーグラウンド・ロックンロールの声明である。
 え、もっとできたはず? 

エレクトロニック・ミュージックにはもっとアティテュードが必要だ。極端に味気なく(flat)になってるし、政治性も閃きもアイデンティティも欠落しきっている。あまりにも無難で刺激がない。いまや、フェスティヴァルが音楽界の風景をコントロールしているような気分になってるどこかのエージェントがつまらない出演者ばっかりブッキングして悦に入っているが、ぼくは音楽でエンターテイナーになるのはごめんだ。


Powell
Sport

XL Recordings/ホステス

Techno not TechnoUnderground Rock'n'Roll

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最初の質問はちょっとファニーに聞こえるかも、ですが、なぜスイカ(https://www.youtube.com/watch?v=8bYsnJfRcdA)なんですか?

パウウェル:えぇと……、全部は話せないな、ちょっと汚い話なんで。その……どうしよう、誰にも裏話は教えられないな、ちょっと恥ずかしいから。ただ、14才のとき、ぼくの身にあるおかしな出来事が起こった、とだけ言っておく(笑)

それだと余計に興味を持たれそうだけど(笑)、とにかく何かを象徴してはいるんですね、スイカは。

P:象徴するものはあるよ。ただ、メロン自体はぼくが自分のラジオ番組をメロン・マジックにしたり、ちょこちょこ使ってるうちにぼくのファニーなアイデンティティのようになっていたんで、今回はそれを茶化したってとこだね、ほんとのところ。

なるほど。じゃあ、こちらで

P:うん。

さて、あなたは作っているヴィデオもおかしくて興味深くて行間を読みたくなるという……

P:うん、もちろん。

観る人に「これはどういうこと?」と考えさせようという意図もあるんでしょうか。

P:いや、そんなことないよ。なんだろう……ぼくがやることはみんな、音楽もそうだし、音楽について語るときも、自分の見せ方にしても、ありのままの自分を可能な限り真実で正直な姿で表現しようとしているだけなんで、ヴィデオも……あのメロンにしても、ぼくが友だちとツアー先でメロンで遊んでるっていう、それだけのこと。ぼくが作るヴィデオはどれも自分自身を反映しているにすぎない。みんなに、何がぼくの動機付けになっていて、ぼくがどういう人なのかをわかってもらいたいだけで、わざとらしいものを作ろとしてるわけじゃない。そういう意味じゃ、推測すべきことなんて何もないんだよね。すべてはぼくなんであって、これが真実ってこと、基本的に。

“ジョニー”のヴィデオもそうだし、“アンダーグラウンド・ロックンロール”(https://www.youtube.com/watch?v=bamMBFc8AtU)も……

P:あぁ、“アンダーグラウンド・ロックンロール”のヴィデオはぼくも好きで、何が好きかっていうと……ぼくはポピュラー・カルチャーの搾取が大好きなんだよ。アンダーグラウンドのどん底あたりにいるアーティストがポピュラー・カルチャーを利用して、搾取して、それで遊んでしまうというのが面白い。ぼくは前からその手のものが大好きだった。ポップ・アートが好きだから、アンディ・ウォーホルを真似て自分の顔を描く、なんてことも、もっと若い頃にはやってみたし。そうやってカルチャーを搾取することには、前々から関心があったんだ。そういうのって、やっていることに注目してもらう手段として面白いし、そこに周囲とのインタラクションを生み出すのもまた面白い。
 ぼくはけっこう肯定派なんだよね、その……、マーケティングとかプロモーションとかいう言葉を使うのは好きじゃないけど、ぼくがアートとしてやっていることと別物だとは思っていなくて、実は同じことだと考えているんだ。ぼくは自分の音楽をみんなに聴いてもらう術を探し出すこともまた楽しいと思ってる。だって、結局のところぼくはこれを生涯ずっとやっていきたいんだから、みんなに聴いてもらいたいよ。じゃないと、作り続けていけないし。

アクセスしやすさ、というのもアートの一環、ということでしょうか。祭り上げるのではなく。

P:そうだね。ただ、アクセスしやすい、という言い方は間違いかも。というのも、ぼくはとっつきやすいものを創ろうとしたことはないんで。出来たものに対して人びとを呼び込もうとはするけど、わかりやすい音楽を作って気に入ってもらおうとしているわけじゃない。ぼくはぼくのやることをやって、その上でみんなに入ってきてもらうための方法を模索する、ということ。入って来ずらいようにはしたくない。

同じことがタイトルにも言えますか。『スポーツ(SPORT)』というのは、どう解釈したらいいのか。

P:“SPORT”って、ぼくは素敵な概念だと思うんだ。人びとが競い、闘い、苦しみ、努力し……スポーツにはそういうのがみんな詰まってる。精神的なものも、肉体的なことも、そして難しくもあり、楽しくもあり。そこがぼくにはすごく重要なんだよね。ぼくにとってこのレコードは心と体と両方に働きかけるものだ。いまのダンス・ミュージックは体だけ……になっているとぼくは思うんだけど……じゃなくて、もっと全方向的な体験……ゲームみたいな感じかな。多角的で、進んだ先々で予想もつかない楽しみが待っている。ぼくとしては、レコードを中心にゲーム的な感覚を生み出す、という発想が気に入っていて、作りながら自分でもそんな感覚を味わっていたんだ。だから、この言葉がいちばん相応しいように感じた。それに、なかなか素敵な言葉だと思うよ、スポーツって。人によって意味するものがいくらでも変わってくるだろうから、好きに解釈してもらえるのもいいところだ。

スポーツって、アートとは対極のイメージがありますが。

P:ぼくも子供の頃はスポーツやってたけど、いまはスポーツが得意なタイプじゃない。いまでも観るのは好きだけどね。とはいえ、POWELLのショウを持ちこたえるには、かなり運動能力が必要だから、ね、その意味でも相応しいかも。

ダンス・ミュージックはおっしゃるとおりフィジカルだし。

P:そう。

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いま、悪いことばっかりあるだろ? シリアもそうだし、ドナルド・トランプも、BREXITも、経済もそう。常にこう、カオスの淵に立たされているような感じがする。落ちてしまったらすべてがダメになる、と。でも、実際にそうなってしまう気配はない。その感じがぼくの音楽に表れている。絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……。

ところで、質問者はあなたのやっていることのパンクな側面に注目しているようで、このアルバムも幕開けはあなたのトレードマークでもあるノイズで始まりますが、ペル・ウブやザ・フォールやフガジをサンプリングしているあたりなど……

P:うん。

あなたの音楽はシカゴのハウスとかではなく、スロビング・グリッスルズやコイルなど、もっと政治性のある音楽と比較できるのではないか、と。もっとも、あなたのやっていることはまったく政治的ではありませんが……。

うん。

そういった側面と関わることは避けているのか……。

P:ぼくの音楽は常に、ある意味政治的だと自分では思ってる。自分の信じるものを目指して本気で闘っているから。わかる? ぼくはそう思うんだ。狙いとしては、反発なり、行動なりをぼくが思うところの非常に退屈なエレクトロニック・ミュージックに対して起こしているつもりだ。過去20年、リサイクルばかりで同じことしかやっていないからね、ああいう音楽は。
 あと、質問者の指摘はまったくそのとおりで、ぼくの育ちは、DIYクラブに通ったりギターをブッ壊したりボトルを人の顔に投げつけたりするタイプのパンクではなかったけど、やっていることにはたしかにパンクな側面がある。なぜかというと、パンクって必ずしもパンク・ミュージックを聴いていることをいうんじゃなくて、姿勢に表れるものだから。あと、意思を持って……刺激を与えることで何かを変えようとする姿勢、それがぼくの音楽の根本にあることは間違いない。いま、名前が挙がったようなバンドの方が、物事との対峙を迫るというか、音楽に限らずアートや世界や色んなものに対する見方を変えてしまうというか、そういう点でワクワクさせられるんだ。こうやって、ちゃんとしたレコード会社で作品をつくれるようになっても、その発想を固持できているというのは、ぼくとしてはすごく恵まれていると思う。エクセルみたいなレコード会社が、こういう音楽と、こういう音楽を作る人間をそこまで信じてくれているんだから本当にありがたい。
 ぼくは、エレクトロニック・ミュージックにはもっとアティテュードが必要だと思ってる。最近、極端に味気なく(flat)になってるし、政治性も閃きもアイデンティティも欠落しきっているからね。あまりにも無難で刺激がない(dull)。いまや、フェスティヴァルが音楽界の風景をコントロールしているような気分になってるどこかのエージェントがつまらない出演者ばっかりブッキングして悦に入っているが、ぼくは音楽でエンターテイナーになるのはごめんだ。レコードの冒頭に残虐なノイズを持ってくるのも、そこに理由がある。「あんたを楽しませるつもりはない、ぼくなりに音楽に大切だと思うものを届けにきただけだ」という、ぼくからの宣言さ。だから、取りようによっては警告、だね。でも、それを理解しないバカなやつをそこで排除する策でもある。

ただ、そういうのを直球で深刻にぶつけてくるだけではなく、そこはかとなくおかしいユーモアに包んでいる感じもあなたの音楽にはありますよね。前述のパンクなバンドにもあった要素です。それもまた、あなたがパンクに共感する部分ですか。

P:ユーモアはぼくにはすごく重要だよ、うん。ただ、やっぱり意図的なものではない。さっきも言ったように誠実に、正直にやっていれば人間性が滲み出るんだと思う。世のなかにはシリアスな音楽がいっぱいあるよね、実験音楽の世界とか、まあ、名称は何でもいいけど。でも、そこにも楽しんでしまう隙間はあるんじゃないか、とぼくは感じてる。自分も楽しんで、聴く人を笑わせてしまう余地が。ぼくは前から、カオス&ノイズと遊び心&ノリ(groove)の狭間の微妙な境界線がすごく好きで、そのギリギリのところに佇んで、いつどっち側に転がるかわからない、みたいな感じを楽しんでいる。カオスの方に落ち込んでいくのか、はたまた遊び心に誘われてパーティに行ってしまうのか。ね? その感覚が、ぼくはすごく興味深いと思ってる。そんな感覚で音楽を体験することが。先を読み切れないっていうのは、最高に興奮するよ。

どっちかに転がり落ちてしまうこと、あるんですか。

P:曲によると思う。難解だったりカオスだったり、それだけのモーメントは作りたくないけど、そうなってしまうときはあるね。でも、カオスがあったら、それに対してもっとこう……グルーヴ主体のものとか、コントラストがあるのがぼくは好きだから、ぼくの音楽は基本、そういうふたつの対照のあいだを行ったり来たりしてるんじゃないかな。それも、できるだけ普通じゃない、ヘンなやり方で。

世界的にそうですが、特に英国では BREXIT以降、ユーモアが失われて緊張感が高まっているように思えます。そんな現状に対するひとつの答として、こういう音楽を提示している、という意識はありますか。

P:夕べ、ガールフレンドと一緒にぼくの音楽について話をしてたんだけど、まあ、ぼくら、よく音楽論議をするんだけどね、昨日は特に、あるインタヴュアーからこのレコードは時代を興味深く反映していると言われたんで、そのことについて……、いま、悪いことばっかりあるだろ? シリアもそうだし、ドナルド・トランプも、BREXITも、経済もそう。常にこう、カオスの淵に立たされているような感じがする。落ちてしまったらすべてがダメになる、と。でも、実際にそうなってしまう気配はない。その感じがぼくの音楽に表れている、と指摘されたんだ。自分では考えたことがなかったんだけど。絶え間なく新たな難題に直面しているような感覚……。でも、それは注意力欠陥というふうにも捉えられるのかな、とぼくは思った。
 ぼくの音楽って、どんどん跳ね回って跳ね返されて変化しながら聴いている人をどこかへ引っ張って行っては何か珍しいものを見せていく、というような。なんでそうなるのかは自分でもよくわからないけど、何もかもがこう……短くて、早くて、シャープで、どんどん変化して、常に何もかもが変わっていく世のなかの動きと繋がっているところは確かにあるのかも。

ある意味ではぼくの音楽もたしかにテクノだとは思うけどね、アルビン・トフラーがその言葉を使ったときの、未来を意味するものだったテクノという本質的な意味においては。ぼくの音楽にとって“未来”はとても大切だ。過去を引き合いに出して語ろうとする人は多いけど、ぼくの希望としては、みんなにこれを古い音楽ではなく新しい音楽として見てもらいたい。


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ところで、あなたは自身のレーベル〈Diagonal〉を持っていますが、その立ち上げから「The Ongoing Significance Of Steel & Flesh」(2011)のリリースに至るまでの経緯を教えてもらえますか。

P:うん、といっても別に経緯ってほどのことはなくて、15年間ずっと作ってきた音楽をリリースしたいと思ったのがきっかけなんだ。それで、色んな人に相談して実現させた。いまの時代、レコード・レーベルを始動させるのは実に簡単なことだからね。ただ、レコード1枚だけ出して終わるレーベルにはしたくない、という思いはあった。で、2作目を出して、気が付いたら35作になってた。ぼくは音楽をプレイするのも大好きだけど、同じくらい自分のレーベルを愛してるんで、もっとそっちに費やす時間があったら、と思う。ここ1年は本当に異常に忙しかったから。

ここでいくつか既存のレーベルの名前をあげますので、あなたがそのレーベルや出している作品についてどう思うかコメントしてもらえますか。まずは〈Blackest Ever Black〉と〈Modern Love〉。

P:うん、〈Blackest Ever Black〉を運営してるキーランのことはよく知ってるよ。20年~10年だったか、ぼくの最初のレコードが出る前、〈Blackest Ever Black〉もはじまる前に会ったことがある。その時、キーランはレインの連中と一緒で、みんなで自分たちのレコードをリリースする話で盛り上がった。その後、〈Blackest Ever Black〉がやるようになったパーティの、最初の2回ぐらいはぼくも参加してプレイしたし、キーランの活動とはぼくは何かと繋がりを持ってきた。〈Modern Love〉も同じで、運営してるシュロム・アブンカはぼくの友だちで〈Diagonal〉のディストリビューションをやってくれてるんだ。だから、すごく近い関係だよ。音楽的には当然、違いがあるけどね。それぞれのアイデンティティがあるし、重要視するものも、提示の仕方もそれぞれだから、音楽的にはそのふたつのレーベルと必ずしも親近感を持ってはいない。でも、姿勢の面では間違いなく共感する。

ふたつ目のグループは〈Pan〉、〈Editions Mego〉、〈Raster-Noton〉.

P:うん、〈Pan〉と〈Mego〉はぼくも大好きだ。理由はやっぱり、〈Pan〉をやってるビルも〈Mego〉をやってるピーターも友だちだからね。音楽に関してぼくがいちばんワクワクするのは、好きなことをやっているなかで出会ったそういう友だちができることなんだ。音楽をやっているから行けるような場所へ旅して、人生や音楽やアートについて素晴らしい考えを追っている人たちと出会って話をしてパーティをして楽しむことができる。そういうレーベルはどれもリスペクトしてるよ。大変な努力と献身が必要だということはぼくもよくわかっているからね。しかも、結局のところそれでほとんど儲かるわけでもない。この手のレーベルを運営している人はみんな尊敬に値する。

そして、いきなりなんですがスリーフォード・モッズは好きですか。

P:あぁ、好きだよ。最高だ。演奏しているところを実際に見たことはないけど、レコードはけっこう持ってる。音は好きだし、すごくいいと思う。いまの時代にすごく必要だ。

必要というのは、メッセージの面で?

P:うん、というか……要は声(voice)、だよね。代表する声……、イングランドの状況を描き出しつつ、それを極めて新しい、独創的でスタイリッシュで革新的なやり方で提示している。だから人は耳を傾ける。そこが素晴らしいとぼくは思う。

彼らが伝えているいまのUK社会は、あなたも同意するところですか。

P:正直、あんまり歌詞には注目していないんだ。いつも音楽の方に耳がいってしまうから。ぼくが感じとっているのは感覚的な……、いや、もちろん言葉は聞こえているし、めちゃめちゃおかしいから印象にも残るけど、具体的にここがこう、というのは必ずしもないな。彼らは自分たちの暮らしを題材にして、その暮らしが自分たちの目にどう映っているか、を表現しているんだと思う。だから、怒りとか、募る不満とか、そういうのは感覚的に伝わってくる。いまこの国で暮らす人の生活が浮き彫りになってくるんだ。別に攻撃的な言葉を使わなうても、敵意みたいなものが伝わってくる彼の声がぼくは好きだな。ああいう音楽にああいう言葉、という組み合わせから伝わるフィーリングが多くを伝えてくる。そこがぼくにはエキサイティングだ。なんかこう、エネルギーが炸裂している感じがする。あと、やってる人の姿勢が伝わってくる。ぼくはそういう音楽が好きだ。

話は戻りますが、あなたがテクノ・ミュージックを好きになったきっかけは何ですか。

P:っていうか、ぼくはテクノ・ミュージックに入れ込んだこと、ないよ。

あら……

P:(苦笑)、正直テクノはすごく退屈だと思ってるから。とはいって、18歳から25歳ぐらまではそれなりにテクノも聴いていて、レコードもずいぶん買った。ただ、テクノの大ファンだったことはなくて、いまとなってはもう、テクノのクラブで一晩中をテクノを聴くなんて無理。退屈しきってしまう。良質なテクノなら好きだけどね。かつてのテクノの本質とか、その成り立ちなんかは興味があって、つまりは音楽を未来へと方向づけよう、そのためにマシーンを使って何か新しいものを創ろうとしていたわけだけど、いまのテクノにそういう意味合いはないと思う。いまのテクノの意味するものは、4拍子のキックドラムさ。あとハイハット。
 まあ、ある意味ではぼくの音楽もたしかにテクノだとは思うけどね、アルビン・トフラーがその言葉を使ったときの、未来を意味するものだったテクノという本質的な意味においては。ぼくの音楽にとって“未来”はとても大切だ。過去を引き合いに出して語ろうとする人は多いけど、ぼくの希望としては、みんなにこれを古い音楽ではなく新しい音楽として見てもらいたい。

たしかに、出始めのテクノにはパンクに通じる姿勢がよく指摘されましたが、その部分は失われているかも。

P:同じ感じはしないよね、もう。

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セックス・ピストルズとぼくが共有するものがあるとすれば唯一、彼らが登場したときの状況ぐらいかな。興味深い時代ではあったよね。そこで彼らはガラリと方向転換をはかった。音楽の可能性における別の選択肢を示したわけだ。ああいう姿勢を、もっとみんな示すべきだとぼくは思うな。何でもそうだけど、何か違うことをやろうとするのなら、ジワジワと違う方向へ押していくんじゃなくて、過激なまでに違うものをいきなり提示するのがいい。


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じゃあ、パンク・ミュージックとの出会いについて教えてもらえますか。

P:さっきも言ったように、いわゆるパンクスだったことはないんだ。聴いてたのはジャングルとかドラムンベースだから。それからテクノ・ミュージックを知って、その後は2004年、2005年あたりにダブステップが出てきてからは2年ぐらい、本気で入れ込んだ。でも、それでエレクトロニック・ミュージックに飽きてしまって、あらためてパンクやポストパンク、インダストリアル・ミュージックを聴いたり、本で読んだりするようになった。ノイズとか、実験音楽、コンピュータ音楽も含めて、そこから5年ぐらいかけていろいろ消化していったんだ。後追い、だよね。「ジーザス、なんでこんなに色んなのをぼくは知らずに来てしまったんだろう!」って感じで。
 なんで、ずっと音楽の旅を続けていて、どこか特定の場所に沈没することはなかったんだ。その代わり、あらゆる音楽を楽しんでこられた。とくに……、なんだろう、それぞれ理由があって何でも好きなんだよな、明瞭な姿勢があるやつ、とか、そういう条件はあるけど……、まあ、願わくばぼくの音楽に、何か特定のひとつからの影響だけでなく、あらゆるものから受けた影響が組み合わさった何かが聞こえていてほしい。だからこそのPOWELLミュージックだと思ってるんで。

たしかに折衷的な音楽性で、いったいどこから作りはじめるんだろう、何がヒントになるんだろうと考えてしまうわけですが、例えばアルバム冒頭の不快にも思えるノイズとか。多幸感溢れるクラブ・ミュージックとは対極ですよね。

P:うん、だけど、自分ではあれが不快だとは思っていない。まあ、ある意味そうなのはわかるけどね。アルバムの冒頭であれが鳴るのは不快ではあるかもしれない。でも自分ではそうは思わないし、耳障りな音だから使った、というのでは決してない。気に入ったから使ったんだ。だから、あの音楽をクラブでプレイするときは、やっぱりみんなを不快な気持ちにさせたいからじゃなくて、純粋にその音がいいと信じているからで。

はい。

P:イライラさせるのが狙いではなく、ぼく自身は大好きで、すごくいい音だと思って使っているわけ。あと、ぼくが使う音って、けっこうブライトでプラスチックなんだよね。歪んでるって言う人が多いんだけど、そんなことはない、かなりのハイディフィニションだ。そういう高周波がぼくは大好きで、脳みそに聴いている音楽について考えさせる効力があるように思う。いつもベースとキックドラムとサブベースにばかり依存するんじゃなくて。そういう低音は伝統的に体に訴えてくるものとされているけど、ぼくは頭のど真んなかと胸の真んなかと、両方にドリルをねじ込んでくるような音のコンビネーションが好ましいと思ってる。

さっき名前を挙げたレーベルの作品は、とても知的だけれどもときにシリアスでオタクっぽさもあるのに対して、あなたのレーベルの作品はそれもありつつ、実験的で、すでに話に出たようにユーモアが必ず含まれている。そこがあなたやあなたのレーベルの作品の好きなところだ、と質問者は言っています。

P:それはまったくその通りだし、ぼくらの見解そのものだよ。ぼくらはみんな、背景は似ていて、音楽的にも……クレイジーで意外性があってファニーで美しくて……というのが好きだし、そういうのをライヴでも、リリースするレコードを通じても届けたいと思ってやっているのも同じだけど、要は自分らしさ、だね。

あなたのクラブ・ミュージックEPをフランケンシュタインのモンスター・サウンドと称した人がいるそうですが……

P:うん。

それは認めます?

P:あぁ。

わかりました。ところで、その後、スティーヴ・アルビニから折り返しの連絡はありましたか。

P:Yeah yeah yeah!  Eメールで話してるよ。あれはぼくが彼を攻撃する意味合いじゃなかったんだ。彼が言っていることをぼくもその通りだと思ったから、発言を引用したんだよ。コミュニケーションの機微ってやつをみんなわかってないんだな、と思った。ぼく自身は間違いなく、スティーヴと同じ考えだ。あのEメールに名前が出たバンドをぼくも大好きなんで、スティーヴ・アルビニの声を借りてぼくがしゃべっている、という主旨だったんだけど……。彼は理解してくれている。
 でもま、あれがきっかけで興味深い会話があちこちで生まれて、みんなが音楽の状況について語り合うようになったらしいから、ね。ロック・シーンからパンク、エレクトロニックからEDMに至るまで、色んなジャンルの人を巻き込んで、あの一風変わった広告から議論が巻き起こったんだから面白い。ヘンな広告ではあったけど、あれはぼくがスティーヴの言うことに賛同したから出したんであって、反論の意味ではなかった。

みんな誤解してますね。しかし、ホワイト・ノイズ、ゼネキス、スーサイド、クラフトワーク……とくれば、あなたのやっていることと共通点は多いですもんね。

P:まったく、その通り。

では、ここでNHKのコーヘイ・マツナがの話を。あなたのレーベルから出していますが、彼の作品についてはどう感じていますか。

P:コーヘイはスゴイよね。たしか2008年に彼はラスター・ノートンから1枚、「アヌミニアム(Unununium)」ってレコードを出している。黄色と白のやつ。〈Raster-Noton〉がやってたシリーズの一環だったと思う。あれで俺が考えていた音楽の可能性が、ガラリと変わったのを覚えてる。ぼくは最初のレコードをやるにあたってコーヘイに 「ハイ! ロンドンのオスカーっていいます……」 みたいな手紙を書いたことがあったんだけど、それからまたたまに話しをするようになったり……って感じで、割と自然な流れでリリースが決まったんだ。それってスゴくない? ヒーローだったコーヘイと5年ぐらいしたら一緒に仕事してるんだから。最高だよ。すごく感謝してる、彼に対しても、だけど音楽というものに対して。音楽のおかげでぼくは彼に信頼して任せてもらえるようになったんだから。音楽ってスゴイよ。

イーロン・キャッツは?

P:イーロンもだけど、みんな経緯は似たり寄ったりで、自然と出会った人たちなんだ。知らない人のレコードをリリースしたことはない。決まって、家族なり友だちなりってのが先にある。インターネットの中だけに存在する実体のないレコード・レーベルを作るのなんて、お安い御用さ。ただ、それがどういう方向へ進んでいくか、となるとレーベルに関わる人間どうしのつながりがすごく重要になってくるからね。

ふたつ名前をあげます、まずはセックス・ピストルズ。彼らと音楽的に、あるいはメッセージなど姿勢の上で、何か自分と共通するものはありますか。

P:う~ん、ないな、別に。パンクを踏まえてるって意味では通じるところはあるけど、う~ん……、セックス・ピストルズとぼくが共有するものがあるとすれば唯一、彼らが登場したときの状況ぐらいかな。興味深い時代ではあったよね。そこで彼らはガラリと方向転換をはかった。音楽の可能性における別の選択肢を示したわけだ。ああいう姿勢を、もっとみんな示すべきだとぼくは思うな。何でもそうだけど、何か違うことをやろうとするのなら、ジワジワと違う方向へ押していくんじゃなくて、過激なまでに違うものをいきなり提示するのがいい。

もうひとつの名前はアンドリュー・ウェザオール。知っていますか?

P:もちろん! 会ったことあるし。

あ、面識もあるんですね。

P:うん、一度だけ、あれは……スイスか、去年の夏に。すごい人だよね。イギリスの音楽界ではアイコンのような存在だから、みんなリスペクトしてるよ彼のことを。ぼく自身はあんまり彼の活動をフォローしてなくて、長年追いかけてますって感じじゃないけど、英国の音楽に大きく貢献した人だから当然のようにリスペクトしている。

ありがとうございます。最後に、POWELLという自身の苗字でレコードを出すことにしたのはどうしてですか。

P:ほかに名前を思いつかなかったから。

(笑)

P:いや、他にも名前は山ほど考えた。でも、どれもピンとこなかったから本名にしたんだよ。

(以上)

Brian Eno - ele-king

 なんということだ。前作『The Ship』がリリースされてからまだ7ヶ月も経っていないというのに、そしてその『The Ship』を映像として発展させた「The Ship - A Generative Film」が公開されてからまだ2ヶ月しか経っていないというのに、もう新たなアルバムのリリースがアナウンスされるとは。
 老いては益々壮んなるべし――この言葉はブライアン・イーノにこそふさわしい。2017年1月1日、イーノの最新作『Reflection』が世界同時にリリースされる。
前作『The Ship』はそれまでのイーノ自身のスタイルとは異なる方向性を模索した野心作だったけれど、今回アナウンスとともに届けられた彼自身の言葉によれば、来る『Reflection』はこれまでの彼のスタイルをストレートに継承した作品になっているようだ。すなわち、「アンビエント」と「ジェネレイティヴ」。
 たしかに、ただ踊ることに特化したダンス・チューンも必要だ。たしかに、怒りのメッセージの込められたプロテスト・ソングも必要だ。でも、あまりに混迷を極めるいまのような時代だからこそ、聴くという行為そのものについて考えたり、偶然性について考えたりすることも必要なんじゃないか――
この正月、われわれは「考えるための音楽」の尖端を聴き取ることになる。それは、ブライアン・イーノという知性による長きにわたる実験の、最新の成果である。

『Reflection』は、長きに渡って取り組んできたシリーズの最新作である。
あくまでもリリース作品という観点で言えば、
その起源は1975年の『Discreet Music』にまで遡るだろう。
――ブライアン・イーノ


ブライアン・イーノが新たに完成させたアンビエント作品『Reflection』を2017年1月1日(日)にリリースすることを発表した。以下ブライアン・イーノより。


『Reflection』は、長きに渡って取り組んできたシリーズの最新作である。あくまでもリリース作品という観点で言えば、その起源は1975年の『Discreet Music』にまで遡るだろう(もしくは1973年のフリップ&イーノ作品だろうか? それとも1965年にイプスウィッチ・アート・スクールで、私が最初に制作した作品――金属のランプシェードの音を録音し、1/2倍速と1/4倍速のスピードで再生させた音源を重ねて録音したもの――だったろうか?)。

何れにしても、これは後に私が“アンビエント”と呼び始めるものである。もはや私自身も、この言葉の意味を理解しているとは言い難い。想定外の範囲にまで適応するよう、言葉が一人歩きしているように思えるからだ。それでも私は、同じ時間の中で、律動的に結びつき、一つにまとまる要素を備えた音楽作品を識別するために、この言葉を今でも使用している。

この系譜には『Thursday Afternoon』『Neroli』(サブタイトルは『Thinking Music IV』)、そして『LUX』が含まれる。“Thinking Music”をコンセプトにした音楽は数多く作ってきたが、そのほとんどは自分自身のために留めてきた。しかし今、人々は、私の初期作品を、当時私が活用してきたように――考える行為に最適な環境を作るために――活用していることに気がついた。だからこそ、皆さんに共有したい気持ちが芽生えたのだ。

このような作品には別の名前もある。これらは“自動生成的”なのだ。つまり自らが自らを作り出す。作曲家としての私の役割は、一つの場所に、複数のサウンドやフレーズを集め、それらに何が起こるのかというルールを設けること。それから全体のシステムを作動させ、何が生じるかを確認し、満足がいくまで、サウンドやフレーズ、ルールを調整する。そのようなルールは確率論的であるため(ほとんどの場合、それらは、Xという働きを、Yのタイミングで行う、というようなものである)、生み出される音楽は、システムを作動させる度に異なる結果をもたらす。あなたが手にすることになる作品は、それらの結果の一つなのだ。

『Reflection』と名付けたのは、今作が私に過去を振り返らせ、物事を熟考するように働きかけるからだ。自分自身との内在的な会話を促す心理的空間を誘発するように感じるのだ。その一方で、他者との会話をするときの背景音としても機能すると感じる人もいるようだ。このような作品を作る際、私の時間のほとんどは、聴く行為に費やされる。時には何日間にも渡って聴き込むことになる。異なるシチュエーションでどのようなことが生じるのか、またそれらによって、私がどのような気持ちになるのかを観察する。まず観察し、ルールを調整する。これらの作品を構成する要素は確率論的であり、様々な確率が積み重なるため、起こり得るすべてのバリエーションを理解するのに時間がかかるのだ。例えばルールの一つを「100音毎に音程を半音階5つ分上げる」というものとする。そしてまた別のルールを「50音毎に、音程を半音階7つ分上げる」というものとする。それら二つのルールを同時に走らせると、非常に稀だが、ある時点で二つが全く同じ音階を奏でることになる。つまり5000音毎に音程が半音階12個分上がるからだ。ただし、どの時点からの5000音がそれを生じさせるかどうかはわからない。なぜなら、あらゆる操作が、異なる形で並行して同時に行われているからである。ゆえに最終形は複雑かつ予測不可能なものになる。

アーティストという存在は、おそらく二つのカテゴリーに分類できるだろう。農耕民族と狩猟民族である。農耕民族は、一つの土地に定着し、そこを丁寧に耕し、その場所に多くの価値を見出す。狩猟民族は、新しい土地を探し求め、発見する行為自体や、まだ多くが踏み入れたことのない地に身を置く自由に喜びを見出す。私は、自分の気質上、農耕民族的であるよりかは、狩猟民族的であると以前は考えていた。しかし、この作品が属するプロジェクトがすでに40年以上に渡って続いてきたという事実は、自分の中に農耕民族的資質が多く存在していることを考えさせてくれる。

Brian Eno, November 2016


ブライアン・イーノ最新作『Reflection』は、2017年1月1日(日)世界同時でリリースされる。国内盤CDには、セルフライナーノーツと解説書が封入され、初回生産盤は特殊パッケージとなる。

Labels: Warp Records / Beat Records
artist: BRIAN ENO
title: Reflection

ブライアン・イーノ『リフレクション』

release date: 2017/01/01 SUN ON SALE
国内盤CD: ¥2,400+tax
BRC-538 初回生産特殊パッケージ

商品情報はこちら:https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Brian-Eno/BRC-538

ご予約はこちら:
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002121
amazon: https://amzn.asia/iWse0UP
iTunes Store: https://apple.co/2f015Xf

Ishan Sound & Rider Shafiqu - ele-king

 尖ったサウンドの伝統を持つブリストルで現在もっとも尖っているポッセ、ヤング・エコーのメンバーでもあるIshan Sound(アイシャン・サウンド)とRider Shafique(ライダー・シャフィーク)の2人が来日する。
 アイシャン・サウンドは、〈Peng! Sound〉や〈Hotline Recordings〉、〈Tectonic〉などからもリリースする、現在20代半ばのプロデューサー。マーラやザ・バグなどからもイヴェントに招かれ、またリリースされる曲はレゲエ系サウンドシステムでも好評を得ている。ルーツへの興味を示しつつ、ダブステップ~グライム~トラップ~ダンスホールを折衷する、まさに新世代感覚。
 もうひとりのライダー・シャフィークは、もっか注目もMC。ヒップホップ~ジャングル~ダブステップなど多くのDJやプロデューサーに招かれ、そのラップを披露している。Kahn、Sam Binga、Epoch、Gantz、Submotion Orchestraなどなどの作品に参加している。
 最近Young Echoはレーベルを立ち上げたが、その第1弾は、El KidとJabuがトラックを提供した、ライダー・シャフィークのスポークン・ワード作品(https://bs0jukebox.tumblr.com/post/152601400294/i-dentity-rider-shafique-official-video
 詩の邦訳: https://dsz-instagram.tumblr.com/tagged/ye001

 とにかく、ブリストルのアンダーグラウンド・ミュージックの気鋭の2人の来日、ぜひ生で体験してほしい。11月22日から、東京、名古屋、京都、福岡、金沢、宇都宮をまわります。

■Ishan Sound & Rider Shafique Japan Tour Nov/Dec 2016

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