「Nothing」と一致するもの

第3回:元カノ/元カレ系借りパクが疼く季節 - ele-king

 みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

 だいぶ冷え込んできた近頃。過去の人間関係の傷跡が疼きだすのも、ちょうどこういった秋から冬に向かっていく気候の遷移とゆるやかに連動しての話なのかもしれませんね。

 のっけから何を言っているんだかって感じですが、今回も筆者の借りパク音楽全集より、渾身の作をお届けして参りたいと思います。
 さて! 本日ご紹介するのはこちら。

(注:手書きポップに書かれているイニシャル「W.A」とは僕のこと。このポップを書いた2012年当時は33歳だったが現在はもう少し歳をとっている。以後すべて同。)

 まず、一言。このアルバム、名盤です。っていうか、あの齊藤由紀が全作詞&セルフプロデュースを担当した重厚なアルバムを制作していたことを、読者の中にご存知の方はおられるでしょうか? しかも歌と歌の間に全編に渡って彼女自身のナレーションが挿入される、いわゆるひとつのコンセプト・アルバム。この写真のパッケージ自体がまさしくそうなのですが、初回生産盤は5面折り特製ジャケット仕様で、棚に置いているだけで異様な存在感を放つジャケット・ワークとなっています。

 さて、なんでこんなCDが現在僕の手元にあるかと言いますと、ずばりこれは「元カノ系借りパク」というやつですね(べつにそんな分類ないけど)。大阪で大学生活をはじめたときに、僕は地元の書店でアルバイトをしていたのですが、そこで2才年上の先輩女子と恋に落ちたのです。彼女をひとまずOさんとします。Oさんはなかなかぶっとんだ女性で、当時小説家になることを夢見つつ(もちろん書店でも文庫担当)、京都の私立大学の4回生として就職活動という現実とのハザマで右往左往していた感じだったんだけど、とにかく浮き沈みが激しかった。でもまぁとても優しい方で、新入りの僕の指導をしてくれたり、いつしかお互いの音楽や映画の話で盛り上がったりしているうちに、まぁお付き合いがはじまったんですね。

 でも恋人同士になってみたらですね、すごく楽しい反面、まぁなかなか大変なことも多かったんですよ。まず年下の僕と付き合っているってことが父母にバレて、「そんな大学入りたての結婚する気もないような男とは別れろ。さもなくば勘当!」みたくなり、突然、二人で原付で逃亡(もちろん二人乗り、お巡りさんごめんなさい)。ラブホ暮らし数日。そしたら僕の親から電話がかかってきて、家に帰ったら先方の父母がおられて協議の時間へ。結局は、「まぁ若いもんには若いもんの世界がありますから、認めてあげましょう」みたいな話になって、正式なお付き合いがはじまる……みたいな。

 とにかく、波瀾万丈だったんです。彼女自身も躁鬱を患っていたし、いっしょに交通事故にあって警察にお世話になったり、彼女に恋心を抱いていた書店の上司からものすごいパワハラを受けたりとか。でもそんな困難を乗り越え、彼女もなんとか就職をしたんです。そう、小説家になるという夢は傍らに置きつつ、金融系の大手の職を得ました。そして、彼女は一人暮らしをはじめたんです。そこで僕の「棚漁り」がはじまります。CD、VHS、本……などなど。2日に1度は泊まりに行っていた僕と彼女は当然、同じものを聴き、同じものを観て、同じものを読むわけですよね。ああ、青春。そんななかで、突如として現れたのがそう、この斉藤由貴の『MOON』というアルバムでした。

 彼女は、中古CD屋でこれを手に入れてきたようで、「これさ、なんかすごいテンションのアルバムなんよ」って言いながら、僕に聴かせてくれました。そして、僕は斉藤由貴のこのあまりにも独特な歌世界が誘う時間旅行を体験したんです。とくに2曲めの“大正イカレポンチ娘”(笠置シヅ子風)と4曲めの“回転木馬”(サビの「まわれメリーゴーランド〜♫」という歌詞が頭にこびりつきます)はやばかった。

 さてさて、彼女とは1年ほどのお付き合いで結局別れてしまいました。別れてからも友人として会うこともたびたびあり、いまはご結婚もされてお子さんもおられて幸せな家庭を築かれているようです。何度もこのCDを返すタイミングはあったのですが、なんだか返せなかった。まぁ端的に言うと、こんな濃厚なアルバム(思い出とともにというのはもちろんあります)、なかなかもう手に入らないだろうなと思ったから、どっかで意図的に返さなかったんだと思います。Oさん、ごめんなさいね。もうお子さん、だいぶ大きくなったでしょう?


Illust:うまの

■借りパク音楽大募集!

この連載では、ぜひ皆さまの「借りパク音楽」をご紹介いただき、ともにその記憶を旅し、音を偲び、前を向いて反省していきたいと思っております。
 ぜひ下記フォームよりあなたの一枚をお寄せください。限りはございますが、連載内にてご紹介し、ささやかながらコメントとともにその供養をさせていただきます。

Kahn - Commodo - Gantz - ele-king

 あのエイフェックス・ツインもお気に入りのガンツ、ブリストル新世代の筆頭のカーン、そしてロンドンを拠点にするヘヴィー・ウェイト・ミュージックのベテラン、コモド。この三者によるスペシャル・コラボ作品がマーラやゴス・トラッド、スウィンドルでお馴染みのダブステップ名門レーベルDEEP MEDiよりリリース!本国ではアナログとデジタルのみとなるリリースだが、日本限定での嬉しいCD 化!

 
 そしてなんと、カーン、コモド、ガンツによる約60分のショーケース的なスペシャル・ミックスが公開! UKのベース・ミュージックの最前線。これ、ぜひチェックして欲しい。

https://soundcloud.com/deep-medi-musik/heavy-artilary-mix-by-kahn-commodo-gantz/s-JXvz7

さらに10月28日にはDEEP MEDiクルーがBOILER ROOMを生放送でジャック !!
boilerroom.tv/session/deep-medi/
4am: Dubkasm
5am: Mala
6am: Gantz
7am: Gorgon Sound (Kahn and Neek)
(日本時間28日の早朝です)

Kahn - Commodo - Gantz
ヴォリューム1

DEEP MEDi / Pヴァイン

Amazon



Joanna Newsom - ele-king

 ポール・トーマス・アンダーソンの映画『インヒアレント・ヴァイス』に、ジョアンナ・ニューサムがナレーター/登場人物として現れたことはちょっとしたサプライズだった。同作は大雑把に言って近年大作志向だったP・T・アンダーソン監督がポップを、言い換えれば「俗」を久しぶりに取り戻した作品だと見なせるが、その案内役に必要だったのがニューサムの声(と、カンの“ヴァイタミンC”!)だったというのが興味深い。そこで求められたのは誰もが思い浮かべる『イース』(2006)のジャケットの超然とした佇まいではなくて、60年代の理想が潰えたそのあとの、退廃と幻惑のLAへの導入としてあの甘みがかった声が召喚されたのである。

 そしてその縁でP・T・アンダーソンが監督した先行シングル“サポカニカン”のヴィデオ・クリップはさらに驚くべき……いや、胸を掴まれるものだった。90年代終わりごろの監督作のファンはみな泣いてしまうのではないだろうか。なんてことのない、ブレる手持ちカメラでニューサムそのひとが歌う姿を映すオーソドックスなスタイルのヴィデオだが、そこでの彼女とカメラの親密な視線のやり取りにはたしかな熱がこめられている。舞台は森ではなく、街だ。悪戯っぽく跳ねるピアノと、ふくよかなブラス、そして3分のところで堰を切ったように押し寄せる切ないメロディの高まり……。彼女はそこでハープを持たず、「歌姫」でもなく、ただひとりの女性としてそこにたたずみ、微笑み、歌い、弾み、そして最後は夜の街に颯爽と去っていく。カメラはただその毅然とした背中を見送るばかりだ。

 そのシングルの、ヴァシュティ・バニヤンよりもローラ・ニーロを連想するアーバンな響きもそうだが、どこかアンタッチャブルな聖性を纏っていたこれまでの彼女のイメージを鮮やかに更新する一枚である。ハープは鳴っている。だがそれだけではない。“リーヴィング・ザ・シティ”ではメロトロン、“グース・エッグス”ではハモンド・オルガン、“ワルツ・オブ・ザ・101st・ライトボーン”ではアコーディオン……曲ごとに楽器とスタイルをアレンジを変えて――衣装を変えて、その幻惑的な声をじゅうぶんに響かせる。ニコ・ミューリーやダーティ・プロジェクターズのデイヴ・ロングストレスといった華やかなアレンジャーもここではあくまでニューサムの声の引き立て役だが、3枚組の大作だった前作『ハヴ・ワン・オン・ミー』よりコンパクトな分、楽曲のレンジは広いように感じられる。11曲52分という近作を思えばずいぶんオーソドックスなパッケージとも相まって、ポップ・シンガーとしての顔がずいぶん前に出ている。これほどくっきりと彼女の生身の表情が見えるアルバムは初めてではないだろうか。

 もちろん、そこはジョアンナ・ニューサムである、「ポップ・ソング」と気安く呼ぶにはアレンジは入り組み複雑で、何よりドラマティックな展開を見せる楽曲が多い。タイトル・ナンバー“ダイヴァーズ”は本作ではもっとも長尺の(それでも7分少しだが)、ハープとピアノが巻き起こすうねりで聞かせる一曲、そして終曲“タイム、アズ・ア・シンプトン”ではオーケストラと小鳥の鳴き声を従えてシンフォニックな飛翔を演出する。だがいっぽうで、トラッドのカヴァー“セイム・オールド・マン”やカントリー風味の“ワルツ・オブ・ザ・101st・ライトボーン”の素朴な愛らしさは、聴き手と彼女自身をごく近い地平へと導いてくれる。

 『イース』の頃の過剰にアイコニックな佇まいはいま思えば、戦時下における聖女の役割を負わされていた部分もあるのだろう。ジョアンナ・ニューサムのアルバムを聴くときの何とも言えない緊張感は、ここではずいぶん緩和されている。“サポカニカン”のヴィデオが胸を打つのは、そこでの彼女が10年前の「女王期」よりも確実に年を重ねた姿を晒しているからだ。フリー・フォークの歌姫だと……アメリカからのある種の逸脱を象徴する存在だと見なされていた時期も、少なからずあったのかもしれない。だがそれは忘れてしまおう。いま彼女は街に両足をつけ、ひとりの女として、歌うたいとして、そのなかに渦巻く感情のドラマツルギーでこそわたしたちを魅了する。

現在、NPRにて『ダイヴァーズ』のフル試聴を実施中。
日本時間10/23(金)22:00まで!



New Order - ele-king

 最新作『ミュージック・コンプリート』が絶好調(日本では過去、最高のリアクションらしい)のニュー・オーダー。彼らの帰還を讃えるかのように、ニュー・オーダーに多大な影響を受けた世界中のアーティストたちが作品を寄せるサイト、「シンギュラリティ」(Singularity)にて、『トレインスポッティング』や『アシッド・ハウス』で知られる小説家、アーヴィン・ウェルシュが寄稿した。そのニュー・オーダーへの愛を綴っている文章、ぜひ、読んでみて。

https://trafficjpn.com/news/neworder-singularity/

 なんといってもバカバカしい。そして謎の高クオリティ。何の見返りもなしに、いまの日本のどこにこんなことのできる余裕があろうというのか……? いや、敬意を込めて。

 1985年に第1作めが公開され、一大ブームを巻き起こした傑作SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。第2作となる『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、主人公マーティが30年後の未来──2015年10月21日を訪れる。そう、日本時間にして今日この日である。

 国内でも本シリーズに登場する車型のタイムマシン「デロリアン」の再現イベントなどが大きな話題となっているが、その『PART2』劇中にて“2015年”に上映されている『ジョーズ19』(歴史は異なる道をたどったが──)と、実際に存在している『ジョーズ4 復讐編』の間に存在するはずの『ジョーズ5~18』を勝手に製作するという、ちょっとどうでもいい作業にかまけている人々もいるようだ。

『JAWS 5 :NEW HOPE』~『JAWS 18:WORLD WAR JAWS』
アーカイヴ
https://jaws-complete.tumblr.com/



 禁断の多数決……どこかできいたことのある名前である。

 ご存知、スティーヴン・スピルバーグ監督の大ヒット映画シリーズ『ジョーズ』。平和なビーチを襲うホオジロザメの恐怖をサスペンス的に描くスリラー映画の傑作だが、禁断の多数決によって撮られた、架空の欠番を埋める第1作めの名は『JAWS 5 :NEW HOPE』。カッコ笑と付け加えたい出落ちタイトルだが、笑えないほどよく作られた笑える作品で、まずは発句として、サメによる凄惨な襲撃事件とその復讐劇というモチーフがなぞられている。
 そうした笑いやお色気、また、うす柔らかいサイケデリアの中に現実世界のチープさないしはフェイクさをぺらりと露出させるこのバンドの手つきそのままに描き出された、奇妙なパロディだ。『JAWS 9 :SUPER DUPER』などフェイクドキュメンタリーとバラエティ番組を適当に組み合わせたような作品も、『ジョーズ』その後のシュミレーションとして穿っている。

 そして音楽ももちろんすべて禁断の多数決。シンセポップの甘美なリヴァイヴァル期は過ぎ去ったが、なるほどモードとしてではなく、彼らは本質的にシンセポップが好きなのだということが了解できる。ただチープなのでも懐古的なのでもない、フェティッシュに選択されたその音色が意外に沁みる。

 しかし、なんというか、これをつくってどうするんですか? と優秀な就活生諸氏などはツッコむことだろう。売り物でも、なにかのプロモーションでも、また、この企画自体をとくに宣伝しようという感じでもない。これだけの気合いが入っていながら、ソロバンの音がきこえてこない。つまりは損得や「いいね!」欲しさなどではないのだ。彼らはアーティスト。本気で遊ぶことのできる人々である。大人が、いい歳をして、なぜに──と頭の片隅では思いながらも、実験もハッタリもある、作品としての居ずまいをキリっと放ったこの楽しい「駄菓子屋映画」、そして彼らのどこかしら突き抜けたハローならぬグッバイワーク・メンタリティに一票を投じたい。

 さて、そもそもの『BTTF』を忘れかけてしまいそうだが、2015年を祝い呪うこの無償の作品群/作品愛にリスペクトを表しつつ、気まぐれに再生してみるとしよう。いまがご帰宅途中ならば、乗り換えまでに1本観られるかもしれません。

追記:
禁断の多数決は、もともとシアトリカルなライヴを行ったり映画をアルバムのモチーフにしたりと、映像表現へのモチヴェーションを強く抱いたバンドだったが、最近は本当にヴィジュアル制作に熱を傾けているようだ。中心メンバーのひとりであるほうのきかずなりも、近々アンディ・ウォーホルの『Kiss』にインスパイアされたというエロティックで幻想的なアートフィルムをリリース予定で(https://crbn.jp/)、音楽はもちろん禁断の多数決。サウンドトラックへと関心が向いているのも興味深い。そちらは80分に及ぶ「本腰の」作品であるようで、扇情的なトレーラーにびびりながらも期待される。

Kiss me, Kiss me, Kiss me
監督:ほうのきかずなり
出演:北見えり、みほの、湊莉久、水野しず、御茶海マミ
音楽:禁断の多数決
挿入歌:hakobune、Masaki Batoh、Rippei
カバーイラスト:大島智子
デコレーション:OLEO

詳細 https://crbn.jp/

禁断の多数決『Kiss feat.あの (ゆるめるモ!)』MV


予告編『Kiss me, Kiss me, Kiss me』



Ninsennenmondai - ele-king

 カミソリのようにソリッドだが、マシュマロのような柔らかさもある。ミニマルなアンサンブルなのに、音の奔流に没入すると驚くほど豊穣な音響世界が蠢いている。陶酔的な音だが、同時に冷めてもいる。記号的で匿名的であっても、彼女たちにしかだせない音が鳴り響いている。さまざまな二極を自在に往復する交通的な魅力。そう、にせんねんもんだいのことである。
 ギターの高田正子、ベースの在川百合、ドラムの姫野さやかによる3ピースのバンド、にせんねんもんだいは結成から16年、アルバム・リリースにおいても10年以上のキャリアを持つがつねにフレッシュな活動を続けている。近年では2013年の『N』の衝撃を覚えている方も多いはず。この作品で彼女たちは演奏と音響と録音の可能性を拡張した。

 『N』の衝撃から2年。新作『#N/A』においても彼女たちは新たな交通性を導入している。エイドリアン・シャーウッドをプロデューサーに(当然ミックスも担当)、〈ダブプレート&マスタリング〉のラシャド・ベッカーをマスタリング・エンジニアに迎えたのだ。経緯を簡単にまとめる。本年4月のエイドリアン・シャーウッド来日時(彼のプロデュースワーク・アルバムのリリース・イヴェント)、彼は、同イヴェントの、にせんねんもんだいのライヴにおいてダブ・ミックスを行った(4月18日/代官山ユニット)。
 本作は、その公演直前(4月14日、4月15日/レッドブル・スタジオ・トーキョー)にレコーディングされた音源である。このときのレコーディング・エンジニアは内田直之。音源はUKに持ち帰られ、シャーウッドの〈On-Uサウンド〉でミックスされた後に、ベルリンのベッカーによってマスタリングが行われ、坂本慎太郎のアートワークをまとうことでアルバムとして完成する。日本とイギリスとドイツ。にせんねんもんだいとエイドリアン・シャーウッドとラシャド・ベッカーというトライアングル=交通によって、本作の最高のサウンドが生まれたというわけだ。

 カラカラと乾いた音がミニマルなリズムを刻む“#1”から耳が持っていかれる。ビートは分解され、キックとハイハットを中心にミニマルなグルーヴを生む。そこにノイジーなギターが介入し、ベースは一定の音をクールに刻む。まさに彼女たちの鉄壁のアンサンブルだが、そこにエイドリアン・シャーウッドならではのダブな音響処理が施されサウンドを快楽的に飛ばすのだ。聴いているわれわれの意識もトぶ。2曲め“#2”は、ミカ・ヴァイニオの音響をバンドで演奏したかのような静寂と緊張に満ちたサウンドで、そこに極めてシンプルに打たれるキックの音は心臓の鼓動のように響く。つづく“#3”、“#4”、“#5”も、にせんねんもんだい特有のアンサンブルのポテンシャルを最大限に生かしながら、エイドリアン・シャーウッドは特有の秘境的なミックスを聴かせる(しかも演奏の魅力を崩すことはないように細心の注意をはらっている)。その余白の美は北園克衛(1902-1978)のマテリアリズムな詩作を思わせる。
 そう、にせんねんもんだい=エイドリアン・シャーウッド=ラシャド・ベッカー、日本とイギリスとドイツのトライアングルによって生まれた本作には、マテリアルな音の魅惑が横溢しているのだ。モノ的なものに感じる官能性を刺激してくれる。

 あの坂本龍一の『B-2ユニット』は、1980年におけるポスト・パンク/ダブの潮流を咀嚼し、東京とロンドンの交錯と交通性の中で生まれた歴史的な作品であるが、『#N/A』もまた2015年現在の日本とイギリスの交通性の中で生まれたインターテクスチュアリーな作品といえないか。まさにテン年代の『B-2ユニット』?

にせんねんもんだい(N)とエイドリアン・シャーウッド(A)による国境と世代を越境する強烈にして柔軟なミニマルかつダブのハードコア。あなたの耳を虜にするサウンドとリズム、その快楽と刺激がここにある。

interview with Fever The Ghost - ele-king


Fever The Ghost
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 テンションの高い、エキセントリックなサイケ・ポップはいま流行らないだろうか? しかし、まさにテームなドリーム・ポップ化を遂げてしまったテーム・インパラを多少歯がゆく感じている人などは、ぜひこのフィーバー・ザ・ゴーストにぶっ飛ばされてみてほしい(ドゥンエンの新譜もいいけれど)。テームなインパラがノンアルコール・ビールだとすれば、FTGはさしずめドクターペッパーか、ソーダ・フロートに花火の刺さったやつというところ。それは子どもが大好きな、目に悪い色をした、極端な味の、高カロリーの、悪趣味すれすれの、おいしい体験である。

 西海岸というサイケデリック・ロック揺籃の地から現れたサイケデリック・ロック・バンド、フィーバー・ザ・ゴースト。骨太なガレージ感、圧巻のグルーヴ、酩酊感も十分(このライヴが楽しい→https://www.youtube.com/watch?v=s97ZqaFv-O0)、ここでも答えてくれているようにキャプテン・ビーフハートあるいはラヴといった西海岸の先達の影響を奥底にしのばせながら、ホークウインド的なスペーシーなプログレ要素、あるいはグラム・ロックのカブいたポップ・センス、そしてフレーミング・リップスやオブ・モントリオールのエキセントリシティを放射する……とにかく派手なエネルギーを充溢させた4人組である。

 それでいてチャイルディッシュなヴォーカル・スタイルをはじめとして、PVから一連のアートワークにいたるまで、幼形成熟的で得体の知れないキュートさが大きな特徴になっている。彼らの奇矯さの象徴たるこのヴォーカル=キャスパーには、近年のロック・バンドにおける「コレクトな感じ」──グッド・ミュージック志向で行儀のいい、あるいはファッショナブルにヴィンテージ・ポップを奏でる器用さといったものから程遠い、ひとつの業のようなものも感じるだろう。リズム隊が年長でテクニカル、シンセ・マニアがいるのもいいバランスだ。ショーン・レノンによって発見され、ウェイン・コイン(フレーミング・リップス)が入れ込んだというエピソードにもうなずかされる。

 さて、今回取材したのはベースのメイソンだが、じつにマインド・エクスパンデッドな回答を戻してくれた。キャスパー(オバケのあれ)ばかりではない、みながそれぞれに大らかな世界観を持っているのだろう。フィーバー・ザ・ゴースト、そのアンチ・ビタミン・カラーのサイケデリアは、2015年というタイミングにおいてはとくに美味に感じられる。召されませ。

■Fever The Ghost / フィーヴァー・ザ・ゴースト
テンプルズを輩出した〈Heavenly Recordings〉と契約したロサンゼルス出身の4人組バンド。2014年にデビューEP『クラブ・イン・ハニー(Crab In Honey)』をリリース。これまでザ・フレーミング・リップス、ショーン・レノンやテンプルズとツアーを周り、2015年のレコード・ストア・デイには、テンプルズとお互いの楽曲をカヴァーするスプリット・シングルを発売。そして同年9月、デビュー・アルバム『ジルコニウム・メコニウム』の発売が決定した。ラインナップはキャスパー(vocal /guitar)、ボーナビン(synth)、ニコラス(drums)とメイソン(bass)。

僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

結成はいつで、どのような経緯で集まったメンバーなのでしょう? 年齢はみなさん近いのですか?

メイソン(bass):結成は2年半くらい前で、もともとはヴォーカルのキャスパーがひとりでシングルをいくつかレコーディングしたところからはじまった。その後いくつかの幸運な偶然が続いて、キャスパーとキーボードのボビーがいっしょにリハーサルをしたり、ショウで演奏するようになって、その少しあとに、僕らのプロデューサーでありゴッドファーザーのルーター・ラッセルが、ベーシストの僕(メイソン)とドラマーのニックをキャスパーに紹介したんだ。ニックと僕はそれ以前にも他のバンドでいっしょに演奏していて、いっしょにロサンゼルスに移ってきた。年齢は僕らのうち2人が30歳で、もう2人が23歳だから、少し離れているね。

西海岸はサイケデリック・ロックの揺りかごともなった土地ですが、実際に生まれ育った場所として、そうした影響の残る土地だと思いますか? また、自分たちの音楽性を決定する上で影響があったと思いますか?

メイソン:たしかにそういう面はあるし、僕ら自身も間違いなく西海岸出身のミュージシャンからの影響は受けていると思うよ。キャプテン・ビーフハートやアーサー・リーのラヴとか。でも僕らがどこで生まれたかに関わらず、そういった音楽に惹かれていたと思うし、それらが僕らが影響を受けた唯一の音楽ってわけでもない。僕らに影響を与えたものはたくさんあるんだ。拡張現実、テクノロジーの発達、森、YouTubeのフード・レヴュー……

(通訳)フード・レヴュー?

メイソン:うん、とくに「ゲイリーズ・フード・レヴューズ(Gary’s Food Reviews)」。ゲイリーは僕らバンドにとってのヒーローみたいな存在だよ。食べ物が好きだから観るというよりもゲイリーのレヴューの仕方が好きだから観るような感じさ。

あなたがたは、エキセントリックな雰囲気があるのに、とてもスキルフルなバンドだと思います。曲作りをリードしているのはどなたですか?

メイソン:曲作りのプロセスは、まずキャスパーが曲を書いて、バンドの他の全員にそのヴィジョンを共有する。そして僕らそれぞれが自分のパートを作って、曲が発展していくんだ。

視覚的な表現においても、斬新でありながら、ある意味では正統的なサイケの伝統を引いていると思います(“バーベナ/Vervain (Dreams Of An Old Wooden Cage)”など)。MVやアートワークのディレクションは誰が行っているのですか? また、その際にとくにこだわる部分や哲学について教えてください。

僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。

メイソン:誰かひとりがディレクションをしているというよりも、バンド・メンバー全員と、バンドのまわりに不思議と現れた人たちとのコラボレーションだよ。オリバー・ハイバートと弟のスペンサー・ハイバートとは人からの紹介で知り合って、それ以来いろいろなことをいっしょにやることができた。それと同じようにキャスパーはゲーム・デザイナーのテイト・モセシアンを家族ぐるみで子どもの頃からよく知っているんだけど、僕らの新しいアルバムのジャケットのアートはテイトが作ってくれた。そういうふうに僕らのまわりにはたくさん興味深い人たちがいて、僕らはいつもそういうまわりの人たちからインスピレーションを受けたり、コラボレーションしているんだ。僕らの美学は、「何であれナチュラルに感じることをする」ってことだよ。僕らが作る音楽、アート、着る服まで、どれも自由さの産物で、僕らは自分たちをひとつのスタイルやジャンルに縛ったりはしないんだ。表現の自由が僕らの哲学だよ。

ライヴ・ヴィデオなどでは、録音環境もあるのでしょうが、非常にガレージ―でラフなプロダクションが目指されているように感じます。対して、アルバムの方はクリアに整えられていますね。今作のサウンド・プロダクションについて、何か目指すところがありましたら教えてください。

メイソン:目指していたのは、僕らが自信を持って出すことができて、自分たち自身で聴きたくなるようなレコードだった。サウンドについて、バンド内でとくにはっきり「こういうサウンドにするべきだ」みたいな会話をしたわけじゃなくて、僕らが使ったスタジオや、制作に費やすことのできた時間といったいろいろなファクターが組合わさって、自然と彫刻が彫り出されるように、結果的にこのアルバムができ上がったんだ。

とはいえ、“サーフズ・アップ! ネヴァーマインド(Surf's UP!...Nevermind.)”などは絶妙にワイルドですね。エンジニアはどんな方なのでしょう?

メイソン:エンジニアはクリス・ステフェンって名前で、〈セージ・アンド・サウンド〉ってスタジオで仕事をしている。彼はキャスパーの父親と長いこといっしょに仕事をしていて、キャスパーともレコーディングをしたことがあった。すごくいいヤツで、パイレートって名前のすごく可愛い犬を飼っていて、その犬がいつもいっしょにいるんだ。それとヴィクター・インドリッゾ(キャスパーの父)も僕らのガイドになってくれたよ。

(通訳)ヴィクターがプロデューサー?

メイソン:うん、というか、プロデュースは基本僕ら自分たちでやったんだけど、彼は僕らのカウンセラー、ガイダンス、グル、友人としていっしょにいてくれたんだ。

僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。

このアルバムの制作の進め方についても教えてください。

メイソン:制作のプロセスは曲によってかなりちがっていたよ。いくつかの曲は実際のスタジオの中でキャスパーが作りはじめて、他のいくつかはAbleton Live上で作りはじめて、そのあとスタジオに持ち込んでバンドが加わって、さらに他の曲はバンドでライヴ・トラックとして生まれて、いったんそれを破棄して、それぞれのメンバーが別々に自分のパートを録音して作られた。それぞれの曲に必要な方法で形作っていったんだ。レコーディングのプロセスは全部で18ヶ月くらいにわたったよ。ときにはまったくレコーディングをしない時期があったり、逆に一週間毎日レコーディングを続けたり、スケジュールや時間が許すときに断続的にレコーディングを進めたんだ。

“1518”はドラムマシンを用いてダンス・ビートが敷かれていますね。ファンキーですが、曲調もくるくるとめまぐるしく表情を変えていきます。どんなプロセスででき上がった曲なのでしょう?

メイソン:“1518”にはドラムマシンも少し使っているけれど、大部分は生のドラムの録音なんだ。ニックのドラムに加えて、ヴィクター・インドリッゾの演奏するコンサート・タムもレコーディングに入っているよ──コンサート・タムを演奏できるとヴィクターはすごくハッピーになるから、少し彼に演奏する機会をあげる必要があったのさ。もともとキャスパーが以前に自分の部屋でレコーディングしたセッションからのステム・ファイルがあって、それを僕の家でドラマーのニックに聴かせたんだ。そのとき家の上階の住人からストラトキャスターを買って、僕らのヴァージョンのナイル・ロジャース・サウンドを作ろうとしたんだ。その後にそれを〈セージ・アンド・サウンド〉スタジオに持っていって、他のシンセサイザーのトラックや、ヴォーカルの大部分を加えていった。だから3つのちがったレコーディング環境の組み合わさった曲だと言える。

“イコール・ピデストリアン(Equal Pedestrian)”も非常に自由です。ヴォーカルにはオートチューンまでかかっていますね。とても意外な展開でもありましたし、あなたがたが柔軟なバンドだということもわかりました。少しJ-POP的であるとさえ思ったのですが……

メイソン:そう言ってくれてすごくうれしいよ! 僕らみんなきゃりーぱみゅぱみゅや(初音)ミクの大ファンなんだ。きゃりーぱみゅぱみゅはプロダクションも素晴らしいし、ミュージックビデオも最高で、サウンド面でも、ヴィジュアル面でもかなり影響を受けているよ。僕らのお気に入りのミュージックビデオのいくつかはきゃりーぱみゅぱみゅのビデオさ。

Massiveは複雑なシンセサイザーだから、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

これにヴィデオをつけるとすれば、どんな作品にしますか?

メイソン:この曲のヴィデオはほぼ間違いなく実際作ることになると思うよ。できればきゃりーぱみゅぱみゅのMVの監督に作ってもらいたいな。もしもこのインタヴューを読んでいたら、ぜひお願いしたいね!

ムーグも非常に大きな役割を果たしていると思います。あなたはシンセにも好みがありますか?

メイソン:僕らのキーボーディストのボビーはムーグのLittle Phattyを使っていて、このアルバム中の曲にもかなり使われているよ。それとネイティヴ・インストゥルメンツのデジタル・シンセであるMassiveもかなり多用しているよ。ボビーはサウンドデザインのエキスパートで、MassiveはLittle Phattyよりずっと複雑なシンセサイザーだから、それを使って、たとえばキャスパーが「ボビー、フワフワのピンクのスパイダーがたくさん空から降ってきて、地上2フィートのところに着地して、その下を屈んで歩かなきゃいけない、みたいなサウンドが欲しいんだけど」とか言ったとしても、それに対応することができるんだ。

デヴィッド・ボウイとマーク・ボランだとどっちに共感しますか?

メイソン:うーん、たぶんデヴィッド・ボウイかな。彼の方がマーク・ボランより宇宙が好きだと思うから。

シド・バレットとジム・モリソンなら?

メイソン:間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(シド・バレットとジム・モリソンなら)間違いなくシド・バレット。彼の方が自転車に乗るのが好きだから。レザー・パンツを履いてちゃ自転車に乗れないもの。

(通訳)ジム・モリソンは何に乗ると思いますか?

メイソン:彼はたぶん虎から生えた女性の頭に乗るね。

ニンジャとサムライなら?

メイソン:ニンジャとサムライ? いいね、この質問。ニンジャかな、サムライはもっとタフガイっぽいっていうか、英語で言う「bro」って感じがするけど、ニンジャはシャイだと思うから。ニンジャはきっと感情面が発達していると思う。

アリエル・ピンクは好きですか?

メイソン:うん、アリエル・ピンクは好きだよ。ときどきフランク・ザッパの、まるで子どもみたいな性格を思い起こさせるところがあってさ。新しいアルバムはいつも聴くといい時間が過ごせるよ。

現実と非現実というふうに世界を分けるのは馬鹿げていると思いますか?

メイソン:現実と非現実を分けずに考えるのは不可能だと思うよ。現実っていうのはそれを認識する個々人や存在ごとに分裂していっているから、現実と非現実で世界を分けるのは自然な認識で、馬鹿げているとは思わないな。そしてテクノロジーの面について言えば、僕らの世界の上によりよい世界が構築されて、そこに行けるようになるといいなと思うよ。

マインド・エクスパンディングとは、いまの世界を生きていくのに有効な考え方だと思いますか?

メイソン:マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。必ずしも達成されなければいけないものだとは思わないけれど、マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。いまの時代だけじゃなくて、これまでも、人類の進歩の途上から現在に至るまで、ずっと人間はマインドを成長させてきたと思う。いつか『スター・トレック』の世界が実現したらいいなと思うんだ。すべてが受け容れられて、すべてが与えられて、みなが芸術や科学や探求にフォーカスする世界。それがいちばん楽しいことだと思うし、人々はそういうことを十分していないと思うからさ。

マインド・エクスパンションはいつでも有効な考え方だよ。マインドを発達させていくことこそが、人間のもっともよい資質のひとつだと思うし、それをやめてしまったら(人間)みんながストップしてしまうよ。

アニメやゲームが好きなんですか? 好きな作品を挙げてもらえませんか?

メイソン:うん、アニメやゲームは僕らみんな好きだよ。『アドベンチャー・タイム』とか、『マインクラフト』なんかがお気に入りかな。

日本の作品で好きなものがあったら、ジャンルを問わず教えてほしいです。

メイソン:いろいろあるけど、さっきも言ったようにJ-POPは僕らみんな大好きだし、アニメだったら『(新世紀)エヴァンゲリオン』とかにはかなり影響を受けていると思う。

(通訳)『エヴァンゲリオン』はアメリカでも広く知られているんですか?

メイソン:うん、かなり有名だよ。もちろんメインストリームとしてのレベルで有名なわけではないけど、サブカルチャーとしては有名だと思う。

いまおもしろいなと思う同時代の音楽があれば教えてください。

メイソン:アワー・オブ・ザ・タイム・マジェスティ・トゥエルヴ(Hour Of The Time Majesty Twelve)っていって、略してHOTT MTっていうバンドがいるんだけど、彼らはクールだよ。あと、ヴァイナル・ウィリアムス(Vinyl Williams)も。彼はもうすぐアンノウン・モータル・オーケストラ(Unknown Mortal Orchestra)のサポートをすることになっているんだけど、アンノウン・モータル・オーケストラも好きだよ。HOTT MTとは、他の僕らの友だちのバンドも含めて12月にいっしょに大きなショウをしたいと思っているんだ。同じようなラインアップで日本にも行けたら最高だね!

休まず動悸する音と映像 - ele-king

 エレクトロニカ、IDM、ダブステップ以降のクラブ・ミュージックの交錯点において確実に新たな流れを予感させるアーティストの一人、アルビノ・サウンド。まさにいま世に問われようとしているデビュー・アルバム『Cloud Sports』から、新たなミュージック・ヴィデオが公開された。

Albino Sound - Restless

 廃墟の壁や天井のカットアップにはじまり、塀を越える少年が映し出される。彼が歩きはじめてから駆け出すまでの奇妙な緊迫感は、やがてさまざまな建造物の映写に重なりながら増幅し、主体の出発/前進/衝動もしくは脱出/逃亡/混乱をオブセッシヴに描き出す。モノクロームなサウンドと乾いたビートは、いつしか映像の心拍数にシンクロして、早鐘を打つようにその動悸を高めていく──気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督する、日本人離れしたMVセンスも楽しみたい。

 また、来月にはリリース・パーティーも予定されているようだ。あわせてチェックされたし!

電子音楽界の新たな才能、デビューアルバム『Cloud Sports』が好評のAlbino Sound<アルビノ・サウンド>が新MV「Restless」を公開した。映像は短編映画「Holy Disaster」の監督:石田悠介がドイツのベルリンで撮影した映像で作られている。

MVはアルバムのリード曲であり、都会の夜に合うアーバンな世界を持ちつつも、チル効果もあり、反復するビートが非現実的な中毒性を持った楽曲となっている。

またAlbino Soundはデビューアルバム『Cloud Sports』のリリースパーティーを11/19(木)中目黒solfaで開催する。詳細は後日公開予定。

■Albino Soundプロフィール
Albino Soundはプロデューサー兼マルチ・プレイヤー梅谷裕貴(ウメタニ・ヒロタカ)のソロ名義。今までに世界の第一線で活躍するアーティストをその卒業生に名を連ねるレッドブル・ミュージック・アカデミーが世界中から集まった応募者たちの中から選び抜いた日本人アーティスト。その活動は多岐にわたり、TAICO CLUBやRAINBOW DISCO CLUBへの出演の他、ウェブサイトTheDayMag.jp の制作した短編ドキュメンタリー・シリーズのサウンドトラックなどの提供を行っている。デビューアルバム『Cloud Sports』を10月7日にリリース、ミックスは日本を代表するエレクトロニカ/テクノ・アーティストAOKI takamasaが担当。マスタリングは中村宗一郎、MVの映像は短編映画「Holy Disaster」で知られる気鋭の若手ディレクター石田悠介が監督している。

■イヴェント
Albino Sound 『Cloud Sports』 リリースパーティー
日程:11月19日(木)
会場:中目黒solfa
詳細:後日公開

■リリース情報

Albino Sound / Cloud Sports
品番: PCD-20362
発売日:2015年10月7日
価格:¥2,000+税
発売日: 10月7日

<Track list>
01 Airports 1
02 Cathedral
03 Culture,Over again
04 library
05 Restless
06 Jump Over
07 Escape
08 Airports 2


ILLA J - ele-king

「の弟」であることに向かいあう 小川充

 1967年にコルトレーンが亡くなってからのジャズ界は、長年に渡ってその亡霊に憑りつかれていた。彼の死後に台頭したテナー・サックス奏者の多くは、コルトレーンからの影響を引き合いに出され(サックス奏者に限らず、実際にその影響を受けたジャズ・ミュージシャンは多かった)、比較され、結局そのフォロワーというような位置づけをされた。ヒップホップの世界ではジェイ・ディラが似たような立場にある。その死から9年を経た現在、彼の影響力はいまだに色褪せていなし、一種の神格化された存在に近い。ただ、一方で多くのジェイ・ディラ・フォロワーを生み出し、右へ倣えといった状況も生み出した。本人が望む、望まないにかかわらず、「ジェイ・ディラ風」というレッテルを貼られるアーティストも少なくない。実弟であるイラ・ジェイとなれば、なおさらそうした視線にさらされるわけだ。

 イラ・ジェイのデビュー・アルバム『ヤンシー・ボーイズ』は、ミルトン・ナシメントの『ミナス』を模したジャケットで、2008年にリリースされるやいなや大きな反響を集めた。いまも高く評価されるアルバムだが、純粋な意味でイラ・ジェイ個人が反映されたものかというと、少々様子が異なる。というのも、1995年から98年にかけて生前のジェイ・ディラ(この頃はジェイ・ディーと名乗っていた)が残した未発表トラックを使用し、そこにイラ・ジェイのラップをのせた変則的な作品だったからだ。当時はジェイ・ディラ・トリビュート企画が次々と生まれ、そうした流れの中で評価をされてきた。その後のイラ・ジェイは、2010年にはかつてジェイ・ディラが参加したスラム・ヴィレッジの新しいアルバム『ヴィラ・マニフェスト』に客演し、2013年にはフランクン・ダンクのフランク・ニットとヤンシー・ボーイズの名義でアルバム『サンセット・ブルーヴァード』をリリースするが、これらもジェイ・ディラのビートを使用していた。つまり、よくも悪くもイラ・ジェイはジェイ・ディラの亡骸を後ろ盾にしていたのだ。

 そんなイラ・ジェイにとって、2014年にカナダのモントリオールへ移住したことは、大きな転機となったようだ。それによってモカ・オンリー、ポテトヘッド・ピープル、ケイトラナーダといった現地のアーティストたちと新しい交流が生まれた。そうしていままでとは異なる自分のサウンドを見つけようとしていることが、『ヤンシー・ボーイズ』以来7年ぶりとなるこのニュー・アルバム『イラ・ジェイ』から感じ取れる。本作はポテトヘッド・ピープルとの共同制作となるが、彼らはヒップホップだけでなくハウス、ニュー・ディスコ、ブロークンビーツなどの要素も加え、より多彩なビート・メイクをするユニット。本作でも“ユニヴァース”のようなメロウ・ブギーは、こうしたポテトヘッド・ピープルとのコラボがあればこそ生まれた楽曲で、それこそデイム・ファンクやオンラなどに近いものを感じさせる。女性シンガーのアリーを交えたフュージョン・ソウルの“サンフラワー”は、フォーリン・エクスチェンジとか4ヒーローあたりの作品といってもいいくらいだ。このあたりはポスト・ジェイ・ディラとは異なる世界を感じさせる代表で、ほかにもアルバム前半はモカ・オンリーをフィーチャーしたコズミックな質感の“シー・バーンド”、ジャジーなグルーヴに満ちた“キャノンボール”や“オール・グッド”にしても、デトロイトのヒップホップとは異なるトーンを感じさせる。モントリオールで新しいサウンドへ取り組もうとするイラ・ジェイの現在の姿を反映した楽曲群といえるだろう。

 一方、“ストリッパーズ”は比較的ジェイ・ディラ・マナーのヒップホップと言え、サー・ラー・クリエイティヴ・パートナーズやプラティナム・パイド・パイパーズなど、ジェイ・ディラのキャリアの中でも後期に関わったアーティストたちの音に近い。アルバムの後半は“オール・アイ・ニード”“フレンチ・キッス”“フー・ゴット・イット”“パーフェクト・ゲーム”と、こうした流れが続く。イラ・ジェイがジェイ・ディラの影響から訣別することはできない。偉大な兄だから当然だろう。影響を素直に消化し、遺志を継ぎ、その上で新しく発展させるという姿勢が、とくに“フー・ゴット・イット”“パーフェクト・ゲーム”というフューチャリスティックな匂いを漂わせる2曲に表れているのではないだろうか。そして、アルバム最後のメロウな浮遊感に彩られた“ネヴァー・レフト”は亡き兄に捧げた曲となっている。


»Next 矢野利裕

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“ストリッパーズ”──よれたビート、浮遊するシンセ矢野利裕

 ジェイ・ディラの弟というイメージがついてまわらざるをえないイラ・ジェイ。とは言え、スラム・ヴィレッジに加入もする彼が、偉大な兄をリスペクトしているだろうことは間違いない。フランク・ニッティとのヤンシー・ボーイズも含め、ジェイ・ディラのビートのうえでラップを続けてきた経緯を考えても、イラ・ジェイは、ジェイ・ディラの影を真正面から引き受けてきた。しかし、イラ・ジェイは今回、次のステップを踏み出している。

 本作で注目すべきはやはり、新世代プロデューサー陣によるサウンドワークだろう。とくに、全編にわたって関わっているポテトヘッド・ピープルの活躍がめざましい。本作は確実に、イラ・ジェイとモカ・オンリー(本作でも多く関わっている)が客演したポテトヘッド・ピープル“エクスプローシヴ”の方向性で作られている。本作におけるポテトヘッド・ピープルのサウンドは、“ユニヴァース”のPVなどで早くに示されていた。電子音から始まる“ユニヴァース”は、そのメロウさとベースの強さに一瞬西海岸のギャングスタ・ラップを感じるが、イラ・ジェイのヴォーカルが入ると現代的なR&Bっぽいたたずまいになる。ラップのパートになると、シンセ・ベースとクラップ音のビートが、とてもグルーヴィーにラップに絡む。ラストの、ビートが抜けてシンセだけになる展開も気持ち良い。わかりやすい派手さがあるわけではないが、細部に聴きどころ満載の変則型シンセ・ブギーだ。あるいは、オープニングを飾る“シー・バーント・マイ・アート・ft・モカ・オンリー”は、タメのあるビートに、くぐもったベースと浮遊感のあるシンセ音が背後で薄く流れ続け、イラ・ジェイの変速的なフロウが映える。その他、挙げればキリがないが、ラストの“ネヴァー・レフト”なども、低音・中音・高音のシンセサイザーが絡まるように鳴らされていて、静謐なサウンドの印象とは裏腹の緊張感がある。同じように緊張感が抜群なのは“キャノンボール”だ。反復するキーボードのフレーズとスナップ音のフェイド・インからはじまり、その後、ピノ・パラディーノを彷彿とさせるベースが入ったところから、一気にグルーヴィーになっていく。と思ったら、今度は、ずっとくり返されていたフレーズが抜かれ、イラ・ジェイのラップのフロウが奔放になる。ラップやヴォーカルも含め、各レイヤーのサウンドが同じ曲のなかで奔放に振る舞っており、にもかかわらず、危ういながら統一感もあり、とてもスリリングだ。生楽器が入っているのが、いいアクセントになっている。同じように、ビートこそ4つ打ちだが、全体として生楽器のフィーリングを大事にしている“サンフラワー・ft・アリー”も、ビートがしっかりしているぶん、小節をまたいで鳴らされるギターが解放的に響く。このあたり、LAビートとジャズのフィーリングが融合したテイラー・マクファーリンなどを連想しながら聴いた。

 このように、イラ・ジェイのセカンド・アルバムが、ポテトヘッド・ピープルをはじめとするプロデューサー陣に支えられているのは間違いない。とくに、アルバム全体のそこかしこで聴くことのできる、浮遊感のあるシンセ音は、イラ・ジェイの新しい魅力を引き出して、曲全体に中毒性をもたらしているように感じる。“フレンチ・キス”の浮遊感など、とてもいい。このような現代的とも言えるシンセの使いかたは、たしかにジェイ・ディラのトラックには、あまり見られない。ジェイ・ディラに対して、90年代的なサンプリング・ヒップホップのイメージ――つまり、Jay Dee名義のころのイメージ――を持っているリスナーならば、なるほど本作は、宣伝文句にあるように「偉大すぎる兄の呪縛から解き放たれた」という面があるかもしれない。それはそれで事実だろう。しかしそれは、一面的な見方でしかないと思う。本作において同時に注目すべきは、そのビート感覚である。調子を少しずつズラされ、つんのめる感じのよれたビートこそ、一方で本作を特徴づけるものである。そして、もちろんそれこそは、ジェイ・ディラのビートの特徴にほかならない。クォンタイズ機能を使わずに打ち込んだ独特のビート、キックではなくスネアの響きを重視したドラム、その音響とゆらぎ――ジェイ・ディラの偉大さは、そうしたグルーヴ感の創出にこそあったはずだ。その点からすれば、本作もまた、ジェイ・ディラの偉大な影響下にある。さらに言えば、ジェイ・ディラ的ゆらぎを自身の作品に意欲的に取り込んだのがディ・アンジェロの『ヴードゥー』だが、たとえば“フー・ゴット・イット・ft・モカ・オンリー”のビート感と多重コーラスなどは、あきらかにネオ・ソウル以降のものとしてある。あるいは、すでに触れた“キャノンボール”も、コーラスから各楽器にいたるまで、ネオ・ソウルのフィーリングに溢れている。本作にとってコーラス・ワークというのはすごく重要で、イラ・ジェイとモカ・オンリーのコーラスこそが、ジェイ・ディラ的な抜けのいいビートに厚みを持たせている。モカ・オンリーと言えば、個人的には“ライヴ・フロム・リオ”におけるラップと歌の器用さが印象的だったのだが、そんなモカ・オンリーが本作に要請されるのは、したがって、納得と言えば納得である。多彩なヴォーカル技術は、ジェイ・ディラ以降の歌モノにおいて大事なのだ。その意味で、多彩なヴォーカルが飛び交う“オール・グッド・パート・2・ft・モカ・オンリー、アイヴァン・エイヴ”もまた、素晴らしい歌モノとして聴くことができる。ヒップホップともR&Bとも言えない/言える、美しいゆらぎとグルーヴに満ちた曲だ。

 本作はたしかに、イラ・ジェイの次なるステップだろう。現代的なシンセサイザーの音が、そのことを強く示しているようである。しかし、同時に本作は、ジェイ・ディラに端を発したクリエイティヴィティが詰まってもいる。だとすれば、中毒的で浮遊感のあるシンセサイザーが、よれたビートのうえで印象的に鳴らされる“ストリッパーズ”は、まぎれもなく本作のハイライトである。ところどころに入る多重コーラスによって演出されるネオ・ソウル感も聴き逃せない。というか、この楽曲自体、とても鮮烈なフィーリングを獲得していて、何度も聴き直したくなる。ケイトラナーダという新しい才能も関わった、とても素晴らしい曲だ。“ストリッパーズ”のような曲を聴く限り、「兄の呪縛」は解けたとも言えるし、とらわれたままだとも言える。まあ、なんだっていい。ジェイ・ディラがいたのは事実だし、時代が変わっていくのも事実だ。そして、“ストリッパーズ”が素晴らしい曲であることも、もちろん事実なのだから。イラ・ジェイは、それらすべての事実を真正面から引き受ける。

我が人生最悪の年 - ele-king

 開幕前から心配だったし、悪い予感は確実にあった。今年の正月、地元の友だちとは「ま、今年1年も残留が目標だな」と、したり顔で言い合ったものだった。とはいえ、心のどこかに、いや表向きにも、「まさかそんなことはないだろ」という根拠のない余裕というか盲信めいたものがあったことも事実だ。こんなにも不甲斐なく、弱いというのに……それでも清水エスパルスがJ2に落ちるなんてことはあり得ない。なぜならそこは日本でも指折りのサッカーの街であり、他のどこの街よりも幅広い年齢層におよぶ熱心なサッカー・ファンがいる。ぼくは清水に隣接する静岡市で生まれ育ったけれど、小学校の校庭にあったのはゴールネット、ソフトボール大会はあっても野球はなし。生まれて初めて賞状をもらったのは、ゴール・シーンを描いた絵。実家の4軒先には名物サッカー専門ショップがある。そんな環境だった。
 小さな港町の清水は、しかし、ぼくが住んでいた頃は、何かと静岡をライバル視して、サッカーにおいては静岡を見下していた。70年代半ばのぼくが小学生のとき、清水はブラジルからペレを招いてサッカー教室を開いているし、静岡の子供にとっても清水FCのユニフォームは別格だった。ちなみに、70年代後半、ぼくが中学生のとき、全日本少年サッカー大会で優勝したときの清水FCのFWが、今シーズンの清水エスパルスの最初の監督である。というように、あの選手は小学生/高校生のときからすごかったとか、そういう話が普通に話せる環境だったのだ。
 いや……、いまさらこの場で、こんな地元自慢めいたことを言ってどうなる? わかっている。ぼくは過去の亡霊に取り憑かれているのだ。はっきりしているのは、2015年は我が人生最悪の年である、ということ。悲しく、惨めで、ただただ空しい。この悲しみの前では世界がどうなろうと知ったことじゃないし、代表はもちろん、自分の子供の所属しているサッカーチームの試合なんぞ見る気もしない。海外リーグをほめそやしている輩を見ると虫ずが走る。
 我ながら無茶苦茶だが、それがサッカー・ファンの性というものだ(違うか!?)。華やかなプレミア・リーグだって、その昔、基盤を作ったのは地元チームへの愚直なまでの忠誠心だろう。自分のチームが勝ってくれればいい。それだけで安眠できるし、ゴール・シーンを頭のなかで反芻するだけで心地いい。それが人生における、数少ない自慢だ。しかし負ければ、重苦しく、鬱々とした日々に耐えなければならない。清水エスパルスを応援している人たちは、ここ数年、ずいぶん忍耐力がついたかもしれないが、そこに追い打ちをかけるように、いまこの時点では、迷走しまくりの無能フロント(素人目にもわかる偏ったチーム編成、哲学を欠いた監督選びなどなど)のおかげで楽観的な要素がまるでないという、すさまじくシビアな現実認識を強いられている。出直そうなどと自分に言い聞かせようにも、何の説得力もないのである。
 たまに、そんなに辛いのだったらサッカー・ファンなどやめればいいと言われる。だけどね、サッカー・ファン……いや違うな、Jリーグのスタジアムの自由席で声を出してきたぼくのような人間にとって、この辛さと引き替えに、とんでもない歓喜も味わっている。自分たちがどこに所属しているのかをわかっていて、見ず知らぬ者同士が喜びのあまり、ハイタッチをしたり、抱き合ったりする、老若男女のあれほどの大騒ぎは、熱狂は、まあぼくが知る限りサッカー・スタジアムでしかありえない。もっとも、2015年はそんな機会すらなかったのだが。
 ぼくは限りなく調布市に近い世田谷区に長いあいだ住んでいるので(飛田給までチャリで行くほど)、まわりは赤と青の人が多いし、悲しいかな、サッカーをやっている息子も小学校高学年となれば友だちとFC東京の試合に行く(物心つく前から日本平、埼スタ、等々力、味スタ、日産、湘南、そしてときにいまはなき国立の清水のホーム側自由席に連れて行って洗脳したはずなのにコレだ。いや、だからこそか……。いや、子供に「この選手のプレイを参考にしろ」と言える選手がいなかったことも大きいだろう)。
 と、ここまで書いてきて、ふと気がつけば負け犬のなんたらというか、本当に空しいのだが、これだけ恥をさらしつつ、さらにその上塗りを言うと、当たり前だが、ぼくは永遠にオレンジである。第二の故郷などない。人生の半分以上東京で過ごしているが、故郷はたったひとつだ。いまは自分にそう言い聞かせるしかない。自分で選んだわけではないけれど、ぼくを育てたのは静岡であり、そして、その静岡よりも圧倒的に小さな町でありながら、サッカーでは圧倒的に強かった清水を尊敬している。そして、そのチームはいまでもぼくの人生の重要な部分を占めている。アイデンティティとコミュニティは魅力的なものだが、そのチーム(ルーツ)はいま、情けないほど弱くなったという、ぼくには重大なことだが、興味がない人にはどうでもいい話なのである。
 つまりどういうことかと言えば、マクロに見れば、ぼくのような人間は、なんとも偏屈で、いびつで(なにせ、他で起こっているどんなことよりも我がチームの勝敗が気になるのだから)、そして排他的で(いや、でもJリーグのスタジアムに行っている人の多くには、決して表には出さないが、相手チーム/サポへのリスペクトがある)、ある意味ヒーローものに夢中になっている子供の自己投影と同じ……ではないよな、何をこんな弱いチームに自己投影する必要がある? まあ、あのアントニオ・ネグリだって資本主義の怪物であるACミランが好きじゃないかと、まあ、そうした人間の矛盾の吹き溜まりであるからして、サッカー(・スタジアム)には、何か超越したものがあるのだ……などといったこのとりとめのない原稿はもう終わりにしよう。ele-kingは私物ではないし、個人ブログではないし、サッカーの世界はもっと広い。が、狭いからこそ見える宇宙もある。ここまで読んで下さった方(とくにJ1、J2、J3の他チームのサポの方)には、深くお詫び申し上げます。あー、しかし本当にJ2なんだなぁ……しかも涙すらでないほど、ある意味清々するほど無様な試合ばかりだったなぁ、途中からはチームとして崩壊しているとしか見えなかったし……この悲しみ、惨めさ、いかようにも癒しがたい。つい数日前のできごととはいえ、いまだに自分は悪い夢を見ているのではないかと錯覚するし、息子も気を遣ってか、家ではこの話題にはいっさい触れない。なんて哀れだろう。“いいことばかりはありゃしない”、それだけだ。

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