「AY」と一致するもの

DJ Narciso - ele-king

 何年も前なら、音楽のリリースに関しては眠たくなるような、まるで冬眠期間のようだった11月と12月が、いまや「ニンジャ・センバー(Ninja-cember)」なのではないかと、私はますます考えはじめている。ホリデーシーズンがわずか数日後に迫り、北半球の多くが暗い冬の極寒の突風に備えているなか、信じられないようなリリースが次から次へと我々に忍び寄ってきていることが近年ではよくある。
 たとえば昨年の今頃なら、我々は夏のリリースをさえも霞ませるような強力なアルバムに真剣に向き合っていた。デビュー・アルバムを提げたBLACKPINKのROSÉによる『ロージー』やケンドリック・ラマーの『GNX』などだ。そしてこの12月、すでに私はまたしても真剣な昂りを感じている。なぜなら、イギリスのレーベル〈SVBKVLT〉がDJ Narcisoの『Dentro De Mim』(ポルトガル語で「私のなかに」の意)をリリースしたばかりだからだ。彼らはこれをEPだと言っているが、7つの強力なトラックとふたつの素晴らしいリミックスが収録されているいま、それが本当に重要だろうか。

 もし君が、DJ Narcisoがヨーロッパやアフリカで関わっている素晴らしい「バティーダ(Batida)」シーンを追っているなら、こうしたプロデューサーの多くが独自のEPやシングルをリリースしていることを知っているはずだ。DJ Narcisoも、自身のBandcampや他のレーベルから多くの作品を出している(編註:2025年7月にセカンド・アルバム『Capítulo Experimental』を〈Príncipe 〉からリリースしている)。そうなると、「なぜ今回の新しいEPが、彼の他の作品と比べて特別なのか」という疑問が浮かぶだろう。
 その問いにできるだけ率直に答えるなら、このEPはとくに、とにかく「深い」のだ。フォーカスがより研ぎ澄まされている。1曲目の“Segredo”は、通常のダンス・トラックよりもわずかにテンポが遅く、導入部としては控えめだ。普段なら私はこのようなトラックを飛ばしてしまうところだが、この3分間は報われた。ビートが遅いことで、より荒涼とした力強さが許容されていたからだ。この種のアフリカン・ビートのミニマリズムは、まるでシャドーボクシングのようだ。それらがどのように打ち込んでくるのか、常に予見できるわけではない。その引きずるようなビートは、まるでアフリカ版の「Godflesh(イギリスのインダストリアル界の伝説)」を聴いているような気分にさせてくれる。

 各駅停車の“Segredo”が駅に到着した後は、“Pesadelos”で高速列車さながらの全速力へと移る。ここでもまた、意図的な閉所恐怖症を伴う激しいコール・アンド・レスポンスのトンネルが続く。オールドスクールなインダストリアル・ミュージックを愛する人で、ここでのアプローチを気に入らない者は想像できない。DJ Narcisoは、即座に体を揺らす要素に焦点を当てるだけでなく、ビートに対する単純なノイズに安住することもない。彼は、ビートの間にこれほどまでの「無」が存在する、最高のテクノに通じる「間」を求めている。ダンス・ミュージックの最高の楽しみは、しばしばビートそのものではなく、その間にある空間にある。“Pesadelos”は、イギリスのBurialのようなトンネル・ヴィジョンの雰囲気と、より安定したフックを併せ持っている。
 “Agancha”は、私にとってアルバムの中心のように感じられる。ベースの明瞭さ、ノイズ、そして遠くの残響がすべて引き離されて配置されており、大きなアンプの環境で聴けば魔法のように響くことだろう。
 残りのトラックも同様に中毒性がある。クラブやジムに非常に適しており、最後の1拍までダンスへの献身を呼び起こすのにちょうど良いBPMで、ドラムのように正確に刻まれる。多くのプロデューサーが、1曲だけパンチのある曲を作って他のトラックで集中力を欠くのを見てきたが、DJ Narcisoにとってプロデュースとはジムに通うようなものなのだと感じる。
 1日で筋肉は作られない。それゆえに、彼の1年間だけでも膨大なアウトプットがあるのだ。SwimfulとDigita NgecheのKop-Zによるふたつのリミックスも、決して引けを取らないが、確かに本編と同じマニアックなエネルギーはない。幸運なことに、それらは最後に配置されている。7つのオリジナル・トラックがよどみなく流れ、繰り返し聴くことに価値がある資産となっている。願わくは、1時間のミックスも提供してもらえないだろうか。

【編註】

Ninja-cember(ニンジャ・センバー)
「Ninja(忍者)」と「December(12月)」を掛け合わせた造語。忍者が音もなく忍び寄るように、予期せぬタイミングで衝撃的な新作が次々とリリースされる12月の状況のこと。

Batida(バティーダ)
ポルトガルのリスボンを中心に、アフリカ系移民(アンゴラなど)のコミュニティから生まれたダンス・ミュージック。伝統的なアフリカン・リズムと荒々しい電子音との融合を特徴としている。

Godflesh(ゴッドフレッシュ)
1988年に結成されたイギリスのインダストリアル・メタル・バンド。


I am starting to think more and more that November and December which many years ago would be sleepy and more like hibernation time with music releases, is now Ninja-cember. Incredible release after release sneaking up on us while the holiday season is only days away and much of the northern hemisphere is bracing for the frigid blasts of dark winter.

Last year around this time, we were seriously dealing with some heavy hitting albums that even eclipsed summer releases such as Blackpink`s ROSE with her debut album and Kendrick Lamar with GNX. Already now in December, I am getting some serious feels again cause UK label SVBKVLT just released DJ Narciso`s DENTRO DE MIM (Portuguese for “INSIDE OF ME”). They say it`s an ep but with 7 heavy hitting tracks and 2 stellar remixes does it really matter at this point?

Now if you are following the incredible Batida scene that DJ Narciso is a part of in Europe and Africa, then you should know that many of these producers release their own ep`s and singles. DJ Narciso has a plethora of them on his own bandcamp and other labels. Which would lead to the suggestion - why is this new ep special from his other stuff?

Well to answer that as frankly as possible, this ep in particuilar is SO much deeper. The focus much more laser sharp. The first track “SEGREDO” is unassuming as an introduction as it moves slightly slower than usual dance tracks. I normally would skip such a track but the 3 minutes of my time were rewarded as the slower beat

allowed more starkness. The minimalism of these types of African beats is almost like shadow boxing. You can`t always see how they are gonna hit you. The dragging beat seriously makes me feel like I am listening to African GODFLESH (UK industrial legends).

After the local train of “SEGREDO” arrives at the station, it`s full speed ahead on the high speed with “PESADELOS.” Again, a tunnel of call and response intense with its intentional claustrophobia. I can`t imagine anyone who loves old school industrial music not loving the approach here. Besides focus on instant booty movers, DJ Narciso doesn`t rest on simple noise against the beats, he wants the MA (間) of the best techno where

there is so much of nothing between the beats. The best enjoyment of dance music often isn`t the beat but the space in between. “PESADELOS” gives the moody feels of BURIAL UK tunnel vision vibes with a better constant hook.

“Agancha” really feels to me the center of the album. The clarity of bass, noise, and distant echoes all spaced far apart I am sure would sound magical in a larger amp setting.

The rest of the tracks are just as infectious. Very club or gym friendly and tighter than a drum in lock step with just the right BMP to invoke dance devotion to the very last beat. I have heard many a producer make a banging track and then lose focus on other tracks. I get the feeling that producing is like going to the gym for DJ Narciso.

One day doesn`t make a good muscle. Hence his large output just in one year. The 2 remixes by Swimful and Digita Ngeche`s Kop-Z aren`t shabby either though for sure they don`t have the same manic energy. Luckily they are at the end. Seven original tracks flow effortlessly making repeated listenings a valuable asset. Could we get an hour mix, perhaps?

Fumiya Tanaka - ele-king

 30年以上にわたるキャリアを持つ日本を代表するDJのひとり、田中フミヤによるパーティ・シリーズ〈CHAOS〉が12月27日(土)に渋谷・WWW Xにて開催。日本でのオープン・トゥ・ラストは8月に続き2度目となる。

 〈CHAOS〉開催に際して、ハウス・コレクティヴ〈CYK〉に所属するDJ・DNGによるテキストの寄稿も。年の瀬の締めくくりに最適な一夜のチケットはLivePocket、RAにて販売中。以下詳細。

2025.12.27 saturday midnight
CHAOS
Fumiya Tanaka (Sundance) - all night long -

at Shibuya WWW X
open/start 23:59

Early Bird* ¥2,000
Adv.* ¥3,000
Under23 ¥2,500
Door ¥3,500
* LivePocket
* RA

※You must be 20 and over with photo ID.
info:WWW X 03-5458-7688

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 曰く、氏のオープンtoラスト・セットは約30年の"CHAOS"正史においては今年まで日本(東京&大阪)のみでしか開催されていなかったのだが、去る9月のマンチェスターを皮切りに、今後は世界中の実施可能な場所で敢行されていくとのこと。WWW Xでの"CHAOS"も、研究を重ね時勢に揉まれ拡大と純化を繰り返しているように思うが、とにかく大なり小なりの変化を伴いながらFumiya Tanakaの実践は続く。

 さて、2023年に同パーティーがWWW Xに移って以来、会場のブッキング担当者にこのパーティーの煽り文章を任命されてから幾度目かになる。実際のところ、未だに空を掴むような気持ちで取り組んでいる感が否めない。ジャンルという枠組みやキャリア/沿革から説明するにしても、このパーティーと噛み合う何かに成るのだろうか。手掛かりはあくまで手掛かりであるし、本来的には情報から逃れるべくあのダンスフロアに向かっている、という自覚も薄らある。言葉で語るのであれば、Fumiya Tanaka自身の(あの示唆とウィットに富む)主観的な文章以外なし得ないかもしれない。夜な夜な繰り広げられるレコードとレコード/DJとフロアの混触反応は、白熱や感嘆、爆笑、朦朧etcを生んでいる。"CHAOS"に赴いたことがある方には思い当たるであろうあの生々しい状態異常を、渦中の傍観者としてどう描写して良いものか。正直困惑している。

 ──詰まるところ「行ったらわかる、行かなければわからない」ということではあるのですが、錆びついた通り文句に頼ると拙文の意味もいよいよ無くなってしまうので、この足掻きをそのまま前段の文章としてお届けすることにいたしました。この困惑の原因たるエネルギーこそが"CHAOS"に人が集ってきた理由だと思えばあながち的外れではない、と手前勝手に思いたいです。年の瀬のパーティーに添えるにはなんとも緩い末筆となってしまいましたが、きっと"CHAOS"のフロアでこの1年がバチッと締まることでしょう。2025年がハッピーだった人も散々だった人も、このパーティーの一部になる事を願っています。

Text by DNG (CYK / Lighthouse Records)

ele-king vol. 36 - ele-king

 まず、この場を借りてTocagoにお詫び申し上げます。紙エレキング年末号には、ワタクシ野田がバンドに取材して書いたインタヴュー原稿が掲載されているのですが、記事のなかで、P155の上段後ろから8行目なのですが、バンド側から発言者が違っているという修正指示が修正されないまま残ってしまっておりました。修正指示がそのまま残っているので、最低限、発言者が違っていることはわかります。とはいえ、読者の皆様にも混乱を与えるでしょうし、ここに重ね重ねお詫び申し上げます。

 では、以下、最新号の案内です。

 2025年は、よしもとよしともの名作『青い車』のリイシュー版が太田出版から刊行されました。「紙の本として世に出るのは、おそらくこれが最後です」と、そのオビには記されています。象徴的な言葉だと思いましたが、果たして「これが最後」でしょうか。というのも、この夏、『青い車』を読みながら複雑な思いが湧き上がり、それ以来、ずっとその思いについて思考を巡らせているのです。

 昔、ポップ・ミュージック(ロック、R&B、ソウル、ヒップホップ、ハウス、テクノ、メタル、カントリーなどを含むすべて)には、その主要フォーマットとしてのレコードには“場所”がありました。『青い車』は音楽に溢れた作品ですが、CDは描かれていません。もちろん、CDというフォーマットが生まれなかったとしても、音楽がデジタル化されることは、そのレコーディング機材の発展を鑑みても避けられなかったことはたしかです。だからといってIT企業の介入による現在のリスニング文化が必然的な結果だったとは、どうにも納得できなかったりもします。ストリーミング・プラットフォームが提供する、ほぼなんでも聴けてしまう、過去も現在もない、時間感覚もない、すべてがフラットな文化、この状況にありがたみを感じながら、より深く音楽の世界に没入している人が30年前より多いとはぼくには思えないからです。
 『青い車』で何気に描かれている、うだつのあがらない若者たちには、しかし音楽という拠り所があります。レコード店やクラブがあり、音楽友だちがいます。レコード店が、音楽を売って儲けるためだけの資本主義に従属した場ではなかったことが、『青い車』を読んでいると思い出されます。そこは出会いの場でもあって、たとえ気が合わなくても人同士が繋がる場、そして、音楽の居場所が用意されている場所でもありました。
 ayaのレコードなら、店の端っこにある「experimental」系のコーナーに入れる店と面出しにする店とに分かれたでしょう。ビリー・ウッズのアルバムは、ヒップホップ専門店よりも、Sunn O))) をプッシュしている店のほうが多く仕入れたかもしれません。いまから10年以上前の話になりますが、初期のOPNやBurialは、扱う店とスルーした店とに分かれました。これは、「わかってる/わかってない」という話ではありません。音楽とリスナーとの緊張関係の話です。輸入盤を売るのは返品不可というリスクがあるので、売るほうも自分たちの耳を頼りに、真剣に吟味し、選盤しているわけです。
 音楽とリスナーとの緊張関係、思い込みの強さと言ってもいいでしょう。思い込みとはすなわち想像力のことで、それは文化の強度のことです。音楽の居場所があった時代、それと出会う困難さ、素性もよくわからぬその音楽を自らの想像力で補いながら聴いたときの没入感、こうしたリスニング体験は、ネットで調べれば大抵のことはわかってしまい、ほとんどが無料でなんでも聴けてしまう現在における音楽の接し方とは著しく異なっています。

 で、こうした「昔は良かった」話は、数年前までは老人の郷愁として片付けられていたことは周知の通りです。が、しかしですねぇ、一概にそうとは言えないような状況を最近はよく目にするようになりました。そのやるせないことのひとつが2025年のオアシス・ブームだったりするのですが、その話とは別に、レコードやCDを好む若者が増えてきているという変化があります。これはぼくの思い上がった妄想かもしれませんが、欲に目のくらんだ音楽産業が数年前に棄てたモノを、いまになってぼくよりずっと若い人たちが拾っているように思えるのです。
 これは、あながち誇張ではないかもしれません。SNSやスマホから離れ、ゆっくり本を読む時間を欲している人たちがじょじょに増えつつあるんじゃないかという話を、学生が立ち寄る古本屋を営んでいる知人から最近聞かされました。じっさいのところ書店は減りましたが、個人書店は増えています。同じように、個人レコード店も少しずつ増えています。はじめているのは、定年退職後の高齢者たちではありません。ぼくよりも若い人たちです。また、冥丁や井上園子や沖縄のハラヘルズ、こだま和文の近年の諸作なんかを見たり聴いたりしていると、古き良きものというか、20世紀の若者文化が破壊の対象としてきたものを彼ら・彼女らが修復しようとしているように思えることもあります。よしもとよしともの『青い車』の紙の本が、この先出ないとは限らない時点にまで針は進んでいるとしたらどうでしょう。多少、時間の感覚が混乱することがあったとしても、失われたものを取り戻す作業だと思えば、逆にこれが2025年という現在なのではないでしょうか。

 インターネットでできることはまだあるのかもしれませんが、その弊害はあからさまに噴出しています。SNSは、炎上好きが興奮するデジタル・コロシアムで、もうヘタなことは書けない、人気者には盲従するしかない——最近ある記事を読んでいたら、ボビー・ギレスピーが消費者ガイドと化した近年の音楽メディアにずいぶんとご立腹しておりました。テオドール・アドルノによれば、ファシズムは「批評」という言葉を追放し、その代わりに「芸術考察」という概念を使わせたといいます。なぜなら文化は最終的にファシズムを追放するからです。アドルノいわく「文化は “潜在的に批判的なもの” としてのみ、真である」

 時代がどうなるかわかりません。Instagramがなくなるとは思いませんが、惑星の植民地化やAIの進化に誰もが興奮しているわけではないのです。1990年代、マライアやブランディではなく、オウテカやビョークなんかをなぜ選んだのかと言えば、そっちのほうに変革の匂いがあったからです。しかし、“いま”という時代のややこしいところは、90年代にキャット・パワーやソニック・ユースを支持していたような連中が近年のチャーリーなんかに感化されてか、当時眼中になかったブリトニーなんかを「イイネ〜」と言ったりするその他方では、目をひんむいて「変えてやるー」とやる気満々のイーロン・マスクやピーター・ディールみたいな人たちがいることです。「破壊せよ、とアイラーは言った」の時代ではなく、「破壊せよ、とイーロンは言った」の時代に生きているという、ああ、面倒な時代です。音楽が、そのすべてではないにしても、あるいはそれが過去への回帰だとしても、テクノ・ファシズムからの避難所として機能していることは、ひとまず、すばらしい事実でしょう。長々と書きました。紙エレキング、今回もどうぞドネーションだと思ってよろしくお願い申し上げます。レコ店/アマゾンは、本日(18日)発売、書店では、25日発売になります。
 最後にひと言、『青い車』には90年代のエレキングに短期連載していた「NO MORE WORDS」が収録されております。減速主義者、ワタクシ野田と、そして近い将来掲載予定の、『青い車』の書評を担当した杉田元一が出てくるのは、P120です。

【目次】
キャロライン、インタヴュー(ジェイムズ・ハッドフィールド/野田祐一郎/江口理恵)
二階堂和美、インタヴュー(水越真紀)
Tocago、インタヴュー(野田努/野田祐一郎)

特集:日本のシンガーソングライター、その新しい気配

「シンガーソングライター」とは何か?(野田努)
オルタナティヴとしてのフォーク主義(松永良平)
小さき者たちの矜持(岡村詩野)
中野ミホ、インタヴュー(風間一慶/川島悠輝)
井上園子の登場は衝撃だった(大石始)
井上園子が選ぶ2025年もっともよく聴いた5枚
ヘイムラコルトが漂わせるノスタルジー(峯大貴)
ヘイムラコルトが選ぶ2025年もっともよく聴いた5枚
新潮流ディスクガイド30
(天野龍太郎、峯大貴、松島広人、小林拓音、田中亮太、風間一慶、野田努、三田格)
ポップスにクィアの想いを溶けこませる(木津毅)
シンガーソングライターに惹かれない理由(三田格)
エクスペリメンタル系SSW(野田努)

2025年ベスト・アルバム30枚
リイシュー&アーカイヴ23選

■ジャンル別チャート
テクノ(猪股恭哉)│インディ・ロック(天野龍太郎)│ジャズ(小川充)│ヒップホップ(高橋芳朗)│ハウス(猪股恭哉)│エクスペリメンタル(ジェイムズ・ハッドフィールド/青木絵美)│ポスト・ハイパーポップ(松島広人)│レゲエ/ダブ(河村祐介)│アンビエント(三田格)
■コントリビューター・チャート
青木絵美、天野龍太郎、小川充、小山田米呂、Casanova.S、河村祐介、木津毅、緊那羅:Desi La、篠田ミル、柴崎祐二、柴田碧(パソコン音楽クラブ)、高橋智子、TUDA、つやちゃん、DJ Emerald、デンシノオト、橋本徹、ジェイムズ・ハッドフィールド、二木信、Mars89、イアン・F・マーティン、松島広人、三田格

コラム:2025年のオアシス現象、その拭いがたき違和感(野田努)

flows - ele-king

 2010年にヌジャベスが他界して15年が経つ。彼の音楽を未来につなぐプロジェクト、Nujabes Metaphorical Ensembleによるイヴェント「flows」が、12月28日(日)恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催される。

 ラインナップには70歳を超えたいまもシーンに影響を与え続けているフランソワ・K.、ヒップホップを中心に幅広いリリースを重ねるレーベル〈Stones Throw〉に所属する次世代プロデューサー・Knxwledge、ヒップホップの枠を飛び越えた活躍を続けるSTUTS、東京が世界に誇るヴァイナル・ディガー、DJ NORIとMUROによるユニット・Captain Vinylを迎えるほか、レコード・コレクターとして知られ、さまざまパーティで辣腕をふるうAbiuと、メンバーそれぞれが個性ある活動をするクリエイティブ・コレクティブw.a.uの出演も決定している。

 開催当日は、Nujabes Metaphorical Ensembleと、ニューヨークを拠点に活躍する現代アーティストMeguru YamaguchiとのコラボレーションTシャツや、Francois K. のキャリアをモチーフにしたTシャツなどを会場限定で販売するとのこと。親子でも楽しんでもらえるよう、子どもたちとともに休息できるセーフティ・スペースも設置されるようだ。

flows
2025.12.28( Sun) 2PM-9PM
at The Garden Hall(東京都目黒区三田1-13-2)

LINE UP:
Nujabes Metaphorical Ensemble
Francois K.
Knxwledge
STUTS
Captain Vinyl(DJ NORI & MURO)
Abiu
w.a.u

ADV TICKET:
https://flows.zaiko.io/item/375732

Early Bird / ¥6,000 (Limited 100) SOLD OUT
Category 1 / ¥7,800 SOLD OUT
Category 2 / ¥8,800 SOLD OUT
Category 3 :¥9,800
U-23:¥6,000 (100枚限定)

HP : https://flows-jp.com
Instagram : https://www.instagram.com/flows_jp
X : https://x.com/flows_jp

GEZAN - ele-king

 現代日本におけるオルタナティヴ・シーンの筆頭とも呼ぶべきバンド、GEZANが7枚目のニュー・アルバムを2月11日にリリースする。『あのち』以来およそ3年ぶりのそれは『I KNOW HOW NOW』と題されており、日本各地でのツアーや世界をめぐった経験が活かされているようだ。
 3月14日には日本武道館での単独公演を控える彼らだが、今年つづけられてきたツアー「47+TOUR『集炎』」の最後の追加3公演が決定してもいる。詳しくは下記より。

GEZAN、7枚目のアルバム『I KNOW HOW NOW』を来年2月に発売決定。
先行シングル“数字”のMVを本日21時にYouTubeにて公開、12/15(月)0:00より配信スタート。
現在敢行中のツアー「47+TOUR『集炎』」最後の追加3公演も同時解禁。

GEZANが、“予感”と“新呼吸”をテーマに制作した7枚目となる最新アルバム『I KNOW HOW NOW』を、日本武道館での単独公演を控える来年2月に発売することを発表した。全国ツアーや世界を旅した痕跡が編み込まれた今作は、全編が透明な歌もので構成されている。

最新アルバムからの先行シングル「数字」は、12/15(月)0:00より各サイトにて配信リリース。アートワークは写真家 Kohei Kawatani が担当。
さらに、映像作家の堀田英仁が監督した同曲のミュージックビデオが12/14(日)21:00にYouTubeにて公開された。
ツアーの合間を縫って全編ロケされた映像は、新潟を舞台に、まるで映画のような重量感を持つ作品に仕上がっている。

堀田監督コメント

いつも楽曲を初めて聴いたときに浮かんできた映像のイメージをなるべく大事にするようにしているんですが、それが”耳から血飛沫”と”車の横転”でした。
ちょうど日比谷野音のライブを観た後だったので、マヒトくんのMC、「俺たちはGEZAN。おまえらの退屈をぶち壊すバンド。」って言葉が脳裏に焼き付いていたので、そことリンクしたんだと思います。 その”耳から血”というキービジュアルからストーリーを逆算し、過ぎ去っていく日常にどこか退屈を感じているキャストの3人が、GEZANの音楽に触発され、耳から血が噴射するといった企画にしました。血飛沫と言っても、ネガティブな破壊ではなく、身体がどんどん解放され、清々しくなっていくイメージを大事にしながら撮影しました。

撮影で意識したことは、GEZANをアイコニックに、POPに描くこと。GEZANのこれまでとこれからを考えたときに、今回はその方向性がタイミング的に良さそうという僕のなんとなくの勘です。

そして全国47都道府県に中国・上海公演を加えた全50公演で展開してきたGEZANのツアー「47+TOUR『集炎』」より、最後の追加3公演が決定した。
LIVE HOUSE FEVERでの2デイズ(DAY52&DAY53)にはNikoん、NOT WONK、the hatch、DOGOが出演。
そして最終追加公演となるDAY54では、11月の「尽未来祭 2025」で30周年を迎えたばかりのBRAHMANとの一騎打ちが再び実現する。
2025年4月より開始し駆け抜けてきた本ツアーの最終追加公演として、見逃せない3公演が出揃った。

ツアーの最終地点は、2026年3月14日(土) ・日本武道館での単独公演。
チケットのプレオーダー(抽選)はただいまよりe+にて受付スタート。

▼GEZAN最新アルバム情報
発売日:2026年2月11日(水曜日)
アルバムタイトル : I KNOW HOW NOW
※アルバムジャケット、トラックリスト等の詳細は追って公開予定。

▼先行シングル「数字」
配信LINKs : https://linkco.re/f6nqNp76
Music Video : https://youtu.be/sEDOdlmU2I8

▼十三月 presents GEZAN 47+TOUR「集炎」追加公演詳細

▽DAY52
・出演:GEZAN/Nikoん/NOT WONK
・日時:2026年1月20日(火曜日)開場/開演 17:45/18:30
・会場:LIVE HOUSE FEVER
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : info01@fever.co.jp

▽DAY53
・出演:GEZAN/the hatch/DOGO
・日時:2026年1月21日(水曜日)開場/開演 17:45/18:30
・会場:LIVE HOUSE FEVER
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : info01@fever.co.jp

▽DAY54
・出演:GEZAN/BRAHMAN
・日時:2026年2月23日(月曜日・祝日)開場/開演 17:00/18:00
・会場:CLUB CITTA'
・料金 : 前売 5,000円(税込)
・問い合わせ : CLUB CITTA' 044-246-8888 (平日12:00~19:00)


チケット情報
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・一般発売 : 2025年12月27日(土曜日)12:00
・前売券取扱箇所:e+ < https://eplus.jp/gezan/
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※チケット抽選先行あり
・受付URL : https://eplus.jp/gezan/
・受付期間:2025年12月14日(日曜日)21:00 ~ 12月21日(日曜日)23:59
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▽「47+TOUR『集炎』」会場限定 : GEZAN live album『炎奏録集』発売中!
詳細 : https://gezan.net/2025/07/08/ensourokusyuu/

▽47+TOUR「宣誓」動画URL
https://youtu.be/-OtsRrKevDk

▽47+TOUR「DAY1 難波BEARS」ドキュメンタリー動画URL
https://youtu.be/S-g5MZGwdgM

▽47+TOUR『集炎』日程
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DAY1・4月11日(金) 大阪・難波BEARS *SOLD OUT
DAY2・5月5日(月)  中国・上海 MAO Livehouse
DAY3・5月30日(金) 千葉・LOOK *SOLD OUT
DAY4・5月31日(土) 栃木・HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
DAY5・6月7日(土)  北海道・札幌PENNY LANE24 *SOLD OUT
DAY6 ・6月12日(木) 広島・4.14
DAY7・6月14日(土) 山口・BAR印度洋
DAY8・6月15日(日) 香川・TOO-NICE *SOLD OUT
DAY9・7月12日(土) 東京・Spotify O-EAST *SOLD OUT
DAY10・7月15日(火) 埼玉・HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
DAY11・7月17日(木) 群馬・前橋DYVER
DAY12・7月19日(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
DAY13・7月20日(日) 山梨・甲府KAZOO HALL
DAY14・7月23日(水) 長野・松本ALECX
DAY15・7月29日(火) 茨城・club SONIC mito
DAY16・7月31日(木) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA *SOLD OUT
DAY17・8月2日(土)  島根・出雲APOLLO
DAY18・8月3日(日) 鳥取・米子AZTiC laughs
DAY19・8月9日(土)  福島・club SONIC iwaki
DAY20・8月10日(日) 山形・酒田市 出羽遊心館 *SOLD OUT
DAY21・8月11日(月祝) 宮城・仙台MACANA
DAY22・8月19日(火)  宮崎・LAZARUS
DAY23・8月20日(水) 鹿児島・SR HALL
DAY24・8月21日(木)  熊本・NAVARO
DAY25・8月23日(土) 福岡・BEAT STATION
DAY26・8月24日(日) 長崎・STUDIO DO!
DAY27・8月26日(火) 佐賀・RAG.G
DAY28・8月27日(水)  大分・club SPOT *SOLD OUT
DAY29・8月30日(土)  静岡・磐田 FMSTAGE *SOLD OUT
DAY30・8月31日(日)  愛知・CLUB UPSET *SOLD OUT
DAY31・9月14日(日) 沖縄・Output
DAY32・9月18日(木)  福井・CHOP
DAY33・9月20日(土)  富山・Soul Power
DAY34・9月21日(日)  石川・金沢vanvanv4
DAY35・9月23日(火祝) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE *SOLD OUT
DAY36・9月25日(木)  岩手・the five morioka
DAY37・9月27日(土) 青森・ 八戸 6かく珈琲
DAY38・9月28日(日) 秋田・Club SWINDLE
DAY39・10月3日(金)  兵庫・太陽と虎 *SOLD OUT
DAY40・10月5日(日)  大阪・GORILLA HALL OSAKA *SOLD OUT
DAY41・10月7日(火)  滋賀・B-FLAT
DAY42・10月9日(木) 京都・磔磔
DAY43・10月11日(土) 和歌山・CLUB GATE
DAY44・10月12日(日) 奈良・NEVER LAND *SOLD OUT
DAY45・10月13日(月祝)三重・LIVE SPACE BARRET *SOLD OUT
DAY46・10月15日(水) 岐阜・柳ヶ瀬ANTS
DAY47・10月21日(火) 高知・X-pt.
DAY48・10月23日(木) 徳島・CROWBAR
DAY49・10月25日(土) 愛媛・W studio RED
DAY50・10月26日(日) 岡山・YEBISU YA PRO
DAY51・12月14日(日) 東京・LIQUIDROOM *SOLD OUT
DAY52・1月20日(火)  東京・LIVE HOUSE FEVER new!!
DAY53・1月21日(水)  東京・LIVE HOUSE FEVER new!!
DAY54・2月23日(月祝) 神奈川・CLUB CITTA' new!!

47+TOUR FINAL
2026年3月14日(土)日本武道館 単独公演 『独炎』
――

▼GEZAN
2009年、大阪にて結成。
独自の視点とスタイルで表現を続ける一方、自主レーベル「十三月」を主宰。

2021年2月、Million Wish Collectiveと共に制作したフルアルバム『あのち』をリリース。
2023年にはFUJI ROCK FESTIVALのGREEN STAGEに出演し、11月にはコロナ禍を経て4年ぶりとなる主催企画「全感覚祭」を、“Road Trip To 全感覚祭”と題して川崎・ちどり公園にて開催。
2024年には初の中国5都市ツアーおよび台湾公演を実施。8月には結成15周年を記念し、日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブを開催。11月には、唯一無二のブッキングで世界中から注目を集めるウガンダのNyege Nyege Festivalに出演。
2025年6月にはドイツ北東部の旧ソ連軍秘密基地跡地にて開催された音楽フェス・Fusion Festivalに出演。

現在、全国47都道府県に中国・上海公演を加えた全54公演におよぶ「47+TOUR『集炎』」を開催中。
ツアーファイナルは、2026年3月14日(土)・日本武道館での単独公演『独炎』となる。

Member : マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo/gt) / イーグル・タカ(Gt) / 石原ロスカル(Dr) / ヤクモア(Ba)

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Shintaro Sakamoto - ele-king

 2026年1月23日に発売される坂本慎太郎の新アルバム『ヤッホー』からの、“おじいさんへ”に続くニュー・シングル曲、“あなたの場所はありますか?”(坂本バンドはこの深い意味を含んだこの曲を去るアメリカ/メキシコ・ツアーで演奏している)のライヴ演奏MVが公開された。見よう! 自分たちの居場所を確保しよう。
 
 zeloneからのメールによると「今回のMVは、アルバム『ヤッホー』のレコーディングが行われたスタジオ、ピースミュージックにて撮影され、演奏もライヴ録音された、このMVでしか聴けないエクスクルーシヴなライヴ音源となっています。監督は山口保幸。演奏は坂本慎太郎バンドー 坂本慎太郎 (Vocal & Guitar)、AYA (Bass)、菅沼雄太 (Drums)、西内徹 (Flute) ——そして録音は中村宗一郎」

 なお、別冊エレキングは、来年1月末に『坂本慎太郎の世界』を刊行します。こちらもこうご期待です。

ヤッホー / 坂本慎太郎 
(Yoo-hoo / Shintaro Sakamoto)

2026年1月23日(金) Digital/CD/LP/リリース
国内デジタルPre-save / Pre-add: https://virginmusic.lnk.to/Yoo-hoo_pre

1. おじいさんへ (Dear Grandpa)
2. あなたの場所はありますか? (Is There A Place For You There?)
3. 正義 (Justice)
4. 脳をまもろう (Protect Your Brain)
5. 時の向こうで (On The Other Side Of Time)
6. 時計が動きだした (The Clock Began To Move)
7. 麻痺 (Numb)
8. なぜわざわざ (Why Do This?)
9. ゴーストタウン (Ghost Town)
10. ヤッホー (Yoo-hoo)

Written & Produced by Shintaro Sakamoto
Recorded, Mixed & Mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo, Japan 2025

Vocals, Bass (10), Keyboard, Acoustic, Electric & Lap Steel Guitar: Shintaro Sakamoto
Bass & Chorus: AYA
Drums & Percussion: Yuta Suganuma
Flute & Saxophone: Tetsu Nishiuchi
Marimba: Manami Kakudo (8, 9)

CD (zel-029): 価格: ¥2,600+税 (2枚組/インストBONUS CD付)

LP (zel-030): 価格: ¥3,200+税
Distribution: Bridge Inc. https://bridge-inc.net/

FRIEND IN THE DARK - A David Lynch Night - ele-king

 映画監督であるとともに音楽家/音響作家としての一面も持つ故デイヴィッド・リンチの一周忌を偲び、彼の「80歳」の誕生日を祝うパーティ〈FRIEND IN THE DARK - A David Lynch Night〉が開催されることになった。2026年1月24日(土)、桜台の地下室〈POOL〉にて。リンチが築いてきた「音の世界」を「耳」から再訪/再発見することを志向しているそう。
 出演陣には、ライヴにnakayaan(ex. mitsume)とcheeverによるコラボレーション、本年7月にデビューEP『Long Goodbye』を発表した4人組インディ・バンドHomie Homicide、アンビエントを軸としつつインディ・ロックへの造詣も深いUltrafogを迎える。DJはyusuke tatewakiが「REZNOR set」としてトレント・レズナーに捧げるインダストリアル・メタル的なセットを、chill blankheadがリンチ関連楽曲や彼がかつて愛したオールディーズを織り交ぜる「LYNCH set」をそれぞれ披露するとのこと。
 瞬く間にすぎていった2025年を超えて、早くも折り返しを迎える2020年代。今後も予期せぬ事態が次々と起きるかもしれませんが、ひとまず稀代の映画監督の功績、そして彼が愛した音楽を振り返ってみては。

2026.01.24 (sat) 5PM-10PM

FRIEND IN THE DARK - A David Lynch Night

DOOR 3000yen
at POOL, Sakuradai, Tokyo

LIVE
nakayaan & cheever
Homie Homicide
Ultrafog

DJ
yusuke tatewaki (REZNOR set)
chill blankhead (LYNCH set)

FLYER DRAWING & DESIGN
Haruna Katsuwata (6cm)


“MAX OUT - TAKE A FRIEND.” - D.K.L.

Reservation
https://forms.gle/8mHobZyqAXssJf43A

Contact
chillblankhead@gmail.com

POOL
https://mdel.co.jp/pool/

「私は、明かりの中を独りで歩くより、暗闇の中を友と共に歩く方がいい」
ヘレン・ケラー、1920年代

「イレイザーヘッドーーー暗い厄介事にまつわる夢。この世界には二種類の人々がいる。何事もなく眠る人。そうした夢を見てしまう人。ぶっ飛ぼう(MAX OUT)、友を連れて」
デイヴィッド・リンチ、1993年

映像作家のデイヴィッド・リンチがロサンゼルスの大規模火災からの避難の最中に逝去してから、間もなく一年が経とうとしています。英BBCをして「21世紀最高の映画」と言わしめた『マルホランド・ドライヴ』や、テレビドラマの変革とも謳われた『ツイン ・ピークス』に代表されるドリーミーでユーモラスな視覚表現やストーリーテリングは高く評価されており、美術/グラフィック/ファッションなどの垣根を超えて、今日まで我々の「目」に大きな影響を及ぼしています。

さらに、1970年代の早くから積極的にノイズや通奏低音を取り入れたインダストリアルな音響や 、映像との融合/分裂を同時に起こすショッキングな劇中歌の選曲、アンジェロ・バダラメンティやトレント・レズナーらとのタッグによるダークかつポップなサウンドトラック、ソロの音楽作品やリミックス楽曲等を通して、我々の「耳」にも大きな影響を与えてきた事実は、今後は更に評価されてしかるべきでしょう。

風の音が聞こえて絵画が動いたように感じたという出来事から映像作家のキャリアをスタートさせ、その作品内でも「音楽が人を震わせ、人を動かす」場面をキャリアを通して描き続けてきたことから分かるように、デイヴィッドは「耳で聴く」行為を重んじていました。晩年に彼が毎日のように更新して注目を集めた天気予報の動画においても、彼の語る話題は音楽がその多くを占めていたことも記憶に新しいところです。

そんな音楽家/音響作家としてのデイヴィッド・リンチが築いてきた「音の世界」を「耳」から再訪/再発見するため、彼の一周忌、そして彼の80歳の誕生日を祝うパーティーを2026年1月24日(土)に開きます。デイヴィッドを敬愛するバンドやミュージシャンによるライヴに加え、トレント・レズナーに捧げるインダストリアル・メタルのDJ、そして勿論、デイヴィッドが手掛けた楽曲や彼が愛したオールディーズやブルースをプレイするDJたちが、音響作家としてのデイヴィッド・リンチの死を悼み、夜を彩ります。

会場は、東京・桜台の地下室。デイヴィッドがキャリアを通してこよなく愛したモチーフである「工場」がイベントスペースになっている、文字通りダークでインダストリアルな空間です。当日は、デイヴィッドの映画作品のヴィンテージのポスターのコレクションを展示する等、「目」でも楽しめる空間になります。
冬の夜。都会から少し離れた町。『ツイン・ピークス』の住民たちがロードハウスに集っていたように、地下の暗闇の中、デイヴィッド・リンチという名の友の功績を、大音量(MAX OUT)で称えましょう。

BLACK SMOKER - ele-king

 20世紀初頭のドイツ映画といえば1920年代の表現主義の時代、すなわちドイツ映画の最初の黄金時代なわけですが、1910年代にもいろんな実験作品がありました。それらの映画(もちろんサイレント映画)に、〈BLACK SMOKER〉が生演奏でサウンドを加えます。出演は、千葉広樹、テンテンコ、FUJI|||||||||||TA、山川冬樹 × 伊東篤宏。
 このすばらしい企画が実施されるのは2025年12月20日 (土)、会場は赤坂のドイツ文化会館内ゲーテ・インスティトゥート東京です。

■BLACK SMOKER RECORDS PRESENTS: BLACK THEATER -Sounding Films-
生演奏付き無声映画上映 |映像×音楽。BLACK SMOKERが新たに仕掛けるのは、ドイツの実験的映像と4組のアーティストによる未知なる共生。

ゲーテ・インスティトゥート東京 ホワイエ, 東京
107-0052 東京都港区赤坂7-5-56
ドイツ文化会館内

2025年12月20日 (土)
17:30〜
料金
一般:4500円, 学生:3500円
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/ver.cfm?event_id=27172727


ACT
千葉広樹
テンテンコ
FUJI|||||||||||TA
山川冬樹 × 伊東篤宏

今回の企画では、ゲーテインスティトゥート東京が所有している (主に)ドイツ産の短編映画や実験映画、アニメーション等に、BLACK SMOKER RECORDS 選出の実験的且つエンターテイメントとしても楽しめるオリジナリティー溢れるアーチスト達が音~音楽でコラボレーションし、「映像と音楽の幸せな共生」を探ります。 この試みは、映像と音の新たな出会いと関係を如何に創造し更にはいかに鑑賞者とそれらを共有出来るか、そして願わくば、其々の創作者(映像作家と音楽家)や鑑賞者の意図や思惑を超えた新たな化学反応を体験、体感することを目指します。

-Time schedule-

16:00- Open
17:30- 千葉広樹
18:40- テンテンコ
19:30- FUJI|||||||||||TA
20:30- 山川冬樹 × 伊東篤宏

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■ 千葉広樹
ー Lotte Reiniger の影絵アニメーション ー
(Lotte Reiniger 作品集より4作品)
1. Papageno (1935) 〈11min〉
2. Cinderella (1922) 〈13min〉
3. The Star of Bethlehem (1956) 〈18min〉
4. Galathea (1935) 〈11min〉
〈total 52-53min〉

世界的に有名な、ドイツの影絵/切絵アニメーションの先駆者であるロッテ・ライニガーの短編4作品に、千葉広樹が新たなサウンドを手掛けます。 一見、インドネシアの影絵芝居にも似ていますが、その切絵技法と動きは、ロッテ・ライニガー独自の繊細さと大胆さを兼ね備えた、観るものを魅了する作品揃いです。

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■ テンテンコ
ー MAN AND MASK[Oskar Schlemmer]
(BAUHAUS作品集「STAGE AND DANCE 」より)
MAN AND MASK OSKAR SCHLEMMER AND THE BAUHAUS STAGE (1922〜29)(1969 Reconstruction) (Reconstruction / director: Margarete Hasting)〈total 27min〉

1919年にドイツのワイマールに設立された造形学校であるBAUHAUS のシアターワークショップの造形主任だったオスカーシュレンマーによる、人の身体に変容を加えるコスチュームでダンサー達が踊る、BAUHAUSを代表する作品のひとつに、テンテンコが新たなサウンドを加えます。今回の映像は1969年の再演時の映像となります。

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■ FUJI|||||||||||TA
ー Hans Richter & Kurt Kranz による実験アニメーション ー (BAUHAUS 作品集「MEDIA ART」より4作品)
1.Hans Richter - "Rhythmus 21" (1921/23) 〈 3min〉             
2.Hans Richter - "Rhythmus 23"(1923/25) 〈 3min 〉
3.Kurt Kranz - THE HEROIC ARROW(1930) 〈 8min〉
4.Kurt Kranz - Variations on a Geometric theme(1944/1972) 〈 21min〉
5.Hans Richter - "Rhythmus 21"(1921/23) 〈 3min 〉
〈total 38-39min〉

1919年にドイツのワイマールに設立された造形学校であるBAUHAUS で作られた実験的な映像〜メディアアートの先駆的作品群の中から 今回、Hans Richter(ハンス リヒター)、 Kurt Kranz (クルト クランツ) 2名の作品をとりあげます。上映の順番は今回サウンドを担当する FujiIIIIIIIIIIIta が自ら決めた順番で上映します。

--

● 山川冬樹 × 伊東篤宏
ーDer Student von Prag / プラーグの大学生 (1913)Screenplay: Hanns Heinz Ewers director: Stellan Rye
〈total 46min〉

本作は今回の上映企画中 最も古い1913年(第一次世界大戦直前)に制作された怪奇幻想サイレント映画で、ドイツ最初の芸術映画と言われいます。映画を低級な見世物から芸術へと格上げするのに大きく貢献したと高く評価される作品です。山川冬樹と伊東篤宏によるサウンドと元祖・幻想ホラー映画の合体となります。

本邦初のイギリス現代思想案内

インタヴュー
國分功一郎毛利嘉孝田崎英明宮﨑裕助

資本主義リアリズム、思弁的実在論、加速主義、ゼノフェミニズム
そしてカルチュラル・スタディーズの功績とは
押さえておきたいキーワードを解説

●マーク・フィッシャー入門――その音楽批評から加速主義との関係、うつ病、最終講義のポイント、現代アートへの影響まで
●初めて触れる読者のための、マーク・フィッシャー著作案内――『資本主義リアリズム』『わが人生の幽霊たち』『奇妙なものとぞっとするもの』『K-PUNK』『ポスト資本主義の欲望』それぞれの解題から未邦訳テキストの紹介、そして彼が手がけた出版事業まで
●ポール・ギルロイの功績、現代のキーパーソンたち=レイ・ブラシエ、オーウェン・ハサリー、アルベルト・トスカーノらの思想、サイバーフェミニズム、イギリスにおけるマルクス主義の系譜、ほか

執筆
イアン・F・マーティン/野田努/河野真太郎/鈴木慎一郎/有元健/仲山ひふみ/幸村燕/清水知子/水嶋一憲/平山悠/大岩雄典/宮田勇生/安藤歴/杉田俊介/大橋完太郎/原塁/飯田麻結/山本浩貴/星野真志/長原豊/小林拓音

装幀:SLOGAN
菊判220×148/並製/256ページ

目次

【インタヴュー】
國分功一郎 今こそ階級闘争を仕掛けるとき──イギリス滞在時に感じたこと
 ▶イギリスと日本の違い│社会の幼年期に注目する必要がある│こちらから階級闘争を仕掛けなければならない│自然と満足できるように│新しい病としての「うつ病」│今こそフィヒテを読みなおすとき
毛利嘉孝 自分たちの知をつくること──大衆文化にラディカルな思想が流れこむ
 ▶イギリスだからこそカルチュラル・スタディーズは生まれた│知をアカデミズムに閉じこめない風土│スチュアート・ホールの功績│ストリート出身のポール・ギルロイが変えたこと│ヨーロッパの理論はイギリスでどう受けいれられたのか│マーク・フィッシャーが残したもの
田崎英明 ジェンダーも人種も、階級とセットで考えよう──アイデンティティ・ポリティクスが批判される背景
 ▶加速主義を切り捨ててはいけない│なぜ労働はなくならないのか│イギリスとフランスは交流が盛ん│イギリスにはアルチュセール派の影響が大きい│マルクス主義とフェミニズム/クィア理論は共闘できるか│シニシズムに陥らないために
宮﨑裕助 私たちの世界には根本的に幽霊がいる──デリダ研究者から見たマーク・フィッシャー
 ▶デリダ研究を牽引していたのは英語圏だった│ロンドンは世界各地から知が集まる場所│亡命知識人たちがつなぐ世界│ポップ・カルチャーに思想が侵入する│もともとの憑在論の意味について│イギリス現代思想の未来

【マーク・フィッシャー著作案内】
『資本主義リアリズム』(仲山ひふみ)/『わが人生の幽霊たち』(平山悠)/『奇妙なものとぞっとするもの』(大岩雄典)/『K-PUNK』(宮田勇生)/『ポスト資本主義の欲望』(安藤歴)/その他のテクスト(仲山ひふみ)/ゼロ・ブックスとリピーター・ブックス(仲山ひふみ)

【ポール・ギルロイの功績】
黒い大西洋(鈴木慎一郎)/ポストコロニアル・メランコリア(有元健)

【コラム】
道は一本ではない、とマーク・フィッシャーの音楽批評は示している(イアン・F・マーティン/青木絵美訳)
ポピュラー文化との共鳴にこそ興奮するイギリスの論客たち──レイモンド・ウィリアムズからバーミンガム学派へ、そしてフィッシャーへ(野田努)
成人教育はポストフォーディズムの侍従か──マーク・フィッシャーのカルチュラル・スタディーズ的出自(河野真太郎)
レイ・ブラシエと哲学の未来(仲山ひふみ)
加速主義以後の加速主義と加速主義的なもの(幸村燕)
憑在論的メランコリアを超えて──マーク・フィッシャーとサイバーフェミニズムの行方(清水知子)
月曜の朝のかすかな光──マーク・フィッシャーと加速主義(水嶋一憲)
鬱病リアリズムという提案──生き延びることの肯定に向けて(杉田俊介)
『ポスト資本主義の欲望』講義の続き──欲望の向きをいかに定めようか(大橋完太郎)
旅をして夢をみる──《消滅していく土地について》とふたつの「イーリーなもの」(原塁)
亡霊の足跡(あるいはDo It With Style)(飯田麻結)
イギリス現代アートにおけるマーク・フィッシャーの影響──オトリス・グループとスペキュラティブ・テートを中心に(山本浩貴)
オーウェン・ハサリー──闘争するモダニスト(星野真志)
馬鈴薯と袋と資本とその主義(ファシズム)(長原豊)
ぎょっとするホブゴブリンがブリテンのあちこちではびこっている──イギリスにおけるマルクス主義の大雑把な見取図(小林拓音)

[共同監修者プロフィール]
仲山ひふみ(なかやま・ひふみ)
批評家。主な寄稿に「加速主義」(『現代思想』2019年5月臨時増刊号)、「ポストモダンの非常出口、ポストトゥルースの建築――フレドリック・ジェイムソンからレザ・ネガレスタニへ」(『10+1 website』2019年10月号)など。レイ・ブラシエ『解き放たれた無──啓蒙と絶滅』(河出書房新社、2026年)を共訳。

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・仲山ひふみによる記事
Aaron Dilloway Japan Tour 2023@落合Soup (2023/2/11) ライヴ(デッド)レポート
不気味なものの批評を超えて──マーク・フィッシャー『奇妙なものとぞっとするもの』紹介

2025年のFINALBY( ) - ele-king

 この過去の夏、大阪の歴史的建造物であるミソノビルの閉鎖/解体の発表に対する悲しみは、その歴史と長寿を祝うための一連のパフォーマンスによって明るいものとなった。7月5日に予定されていたそのパフォーマンスのひとつは、∈Y∋(BOREDOMS)による新プロジェクトFINALBY( )(発音 ― Final B Empty/ファイナルビーエンプティ)であり、大阪を拠点とするCOSMIC LABとのコラボレーションであった。大阪音楽シーンの伝説である∈Y∋は、間違いなく、このビルの長寿を祝う最適な人物だった。興奮した私は、すぐにチケットを購入し、関西への旅を計画した。不運なことに、いまはもう11月の終わりであり、スケジュールの都合でその旅をキャンセルせざるを得なかったことに、いまだに軽い痛みを覚える。ああ、なんという惨めさ! 叶わなかった夏の記憶。家に居なければならなかった悲しみは、ほとんど耐えがたいものだった。

 しかし運命とは不思議なもので、東京では∈Y∋関連のイベントが次々と行われている。逃した夏の機会を補って余りあるほどに。∈Y∋は渋谷の中心ど真ん中、ミヤシタパーク3階のgallery SAIで開催された新しい展覧会Mapocy(まぽチー)のために東京に戻って、さらに、歌舞伎町のZERO TOKYOにおけるFINALBY( )の東京初演があった。それから、歌舞伎町の王城ビルでのBENTEN2のための∈Y∋の2024年のARV100パフォーマンスのマルチスクリーン・インスタレーションもあって、Art Tokyo Week でのC.O.L.O.(COSMICLAB)による小さなサプライズ・コンサート、さらに締めくくりとしてMUTEK Japanの巨大ステージでのC.O.L.O.とのユニークなオーディオ・ヴィジュアル・パフォーマンスがあった。
 日本のオルタナティヴ・シーンにおける最大級の革新者としての∈Y∋の多く多くの年月にもかかわらず、BOREDOMSの非活動とより散発的なソロ活動が相まって、∈Y∋は数年間“混沌の中心”にいなかった。だからこそ、半年の間にこれだけ多くのイベントがあることは、一種の“再紹介”のように感じられる。新たな歴史をつくるための完璧なタイミングだ。私が最後にBOREDOMSのライヴを見たときのひとつは、∈Y∋がステージ上で足を骨折し、痛みにもかかわらず演奏を続けたときだった。だから、まだ気づいていないなら言っておくが、∈Y∋関連の出来事はしばしば歴史的なのだ。私はこの秋のこれらすべての素晴らしい体験をレポートにまとめた。

MAPOCY

 5つの部屋に分かれ、とくに4つ目はほとんど“隠し部屋”のようなサプライズになっている。本展「MAPOCY」は、∈Y∋のジャンク・アート的な作風を巨大インスタレーションとして展開したもので、現在も活動をともにするPUZZLE PUNKSのパートナー、マルチメディア・アーティストの大竹伸朗の気配と、彼がしばしば扱うドラムのシンバルというモチーフが混ざり合っている。
 まず圧倒されるのは、とにかく“緑”。これでもかというほど緑。壁に取り付けられたキャンバス、シンバル、ビニールシート、ガラクタの数々——あらゆるものに緑のペンキがぶちまけられている。床にまで飛び散っていて、空間全体が緑色の施工現場のようでもあり、同時に、初期∈Y∋作品でも見られた木片の寄せ集めによるギザギザの形状がそこかしこに出現している。
 ひとつ目の部屋は床と壁にオブジェが置かれた比較的ゆとりのある空間だったが、ふたつ目に入ると一転、大小さまざまな物体が山のように積み上がり、すべてが同じ緑に染められている。天井からはビニールシートが垂れ下がり、換気用のファンが絶えず唸っている。最初はまとまった形など見えず、ただ“ノイズ”だけがある。正直なところ非常に混乱を招く展示だが、もし音楽におけるノイズに惹かれる人なら、聴覚的ノイズと物質としてのノイズに大差はないとすぐ理解できるだろう。
 混沌は3つ目の部屋でも続く。奥の隅にほとんど真っ暗な空間へと続く黒い入口が見え、その向こうに“4つ目の部屋”がある。ここはFINALBY( )のメンバーたちと制作した映像作品が、三面の細長いクリーンに巻物のように投影されるダイナミックな空間だ。黒いビニールシートで覆われた小さな穴をくぐって入ると、モノクロームの点滅するプログラム図形と、轟音のノイズ・ミュージックが部屋全体を震わせている。精密にピクセル化された映像は、伝統的なアジアの雲や花の意匠を再構成し、左右から現れては中央でぶつかり、新たな幾何学へと変容していく。その視覚的なカオスは池田亮司のもっとも衝撃的な作品を思わせつつ、より柔らかく親しみのある感触を残す。ここを先に観たことで続くFINALBY( )のライブがどのようなものになるのか、無自覚のままヒントを得ることになった。
 最後の5つ目の部屋は、これまでの強烈な表現から一度“息をつかせる”空間だ。出口前の壁一面に、古い手描き作品と実際のアナログ盤が組み合わされて展示されており、紙のドローイングという∈Y∋の原点的な表現へと立ち返る、一種の後味として配置されている。

FINALBY( )

 FINALBY( )が初めて姿を現したのは、観客の多くがその存在を知らぬまま迎えた2021年のフジロックだった。以来、その公演歴は香港、大阪、そして今回の東京のみと極めて限定的だ。∈Y∋が音楽家であると同時に卓越したヴィジュアル・アーティストであることはよく知られているが、これほどまでにステージ上で視覚と音響が正面衝突した例は稀だ。私の目には、テクノロジーを全面的にアップデートして蘇った現代版ハナタラシのようにも映る。∈Y∋は、身体性を伴う新しいパフォーマンスを構築しており、それはパフォーマンス・アートと、ノイズマシンや照明、センサーと接続されたオブジェ群とが密接に絡み合ったものだ。この技術面を支えるFINALBY( )の共同制作者は、COSMIC LAB(C.O.L.O.主宰)、アートエンジニアの堀尾寛太、そしてプログラマーの新美太基である。デジタライズされた∈Y∋——まさにテクノロジー時代が生んだ独自の結晶だと言える。
 私自身、この新しい方向性の萌芽を、パンデミック前の原宿で偶然目撃する幸運に恵まれた。2019年、TOKYO CULTuART by BEAMS Harajuku で開催されたBOREDOMSのTシャツ展でのことだ。∈Y∋はフェイスマイクを付け、両手に装着したモーション・センサー内蔵のサウンドマシンからノイズを放ちながら、黒いジャケットの下に隠れた装置を動かし、通常のマイクに縛られない歌唱を試みていた。ここにはすでにFINALBY( )の原型があった。また、このとき∈Y∋は巨大な円錐形オブジェへの偏愛を初めて披露している。黒いコーンの底部にセンサーが仕込まれており、それを持ち上げて振るたび、音は揺らぎ、形状の奇妙さも相まって視覚的にも滑稽で魅力的だった。背後には技術面を支えるエンジニアが控えており、30名ほどのファンしかいない小部屋での濃密な光景は、後に東京で結実するまでに6年かかった構想の出発点を示していた。

 FINALBY( )を観に行く前、気分を高めようと私はBOREDOMSの入手困難な問題作『Super Roots 5』を久々に取り出した。重厚なドラムとシンバルへ傾斜していく初期段階にあたる一枚で、1曲=1時間という構成、ほぼ一本調子の宇宙的トーンに泡立つノイズとシンバルが折り重なる——「曲」というより「体験」だ。これを聴くと、1982年のある出来事を思い出す。
 1982年、前衛ギタリスト/作曲家グレン・ブランカは『Symphony No.2 – The Peak of the Sacred』をライヴで披露した。副題「聖性の頂」は本来その作品固有のものだが、彼のエモーショナルな創作全般を言い当てる表現でもある。複雑な転調をほぼ廃したこの交響曲は、天上のエネルギーが雷鳴のように連続して吹き荒れる、彼の作品中もっとも強烈な体験のひとつだった。
「聖性の頂」とは、人間が自己を超越するための、絶えず恍惚と狂喜を更新し続ける音楽を指す。∈Y∋がBOADRUMシリーズやその他の公演で追求してきた方向性は、明言されていなくとも、まさにその頂点に向かう試みだったと私は感じている。「曲」よりも「経験」を重視する姿勢——それは彼の精神性と音楽性が複雑に深化してきた証でもある。FINALBY( )の公演中、∈Y∋はまさにその「聖性の頂」に到達しようとしていた。

2025年10月25日 FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED
presented by COSMIC LAB & TST ENTERTAINMENT CO.,LTD.

FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda

 当日の「FINALBY( )Live in 歌舞伎町Expanded」というフルタイトルの公演は、実に2時間ノンストップのパフォーマンス作品だった。事前告知からは想像もできない構成である。チケットを買った時点で「2時間」とあったため、DJか何かが挟まるのだろうと勝手に思っていたが、違った。2時間まるごとが、巨大なノイズの奔流と悦楽的ヴィジュアルの対話で満ちていた。
 ステージ中央には、光に照らされ巨大なカップケーキのように見える“何か”が鎮座している。後にそれが、∈Y∋ がジェンベのように叩くノイズ・ジェネレーターであると知った。ステージ上には複数のコーンが配置され、最大のものは宙吊りになっていて、∈Y∋の身長を完全に覆うほど巨大だった(実際、後半で∈Y∋がその内部に隠れる場面があった)。さらに、フロア中央、観客のほとんどが囲むようにして別の巨大コーンが置かれ、公演後半ではそのコーンが発光し、∈Y∋の手で回転させられる仕掛けになっていた。
 ZEROTOKYOという会場は、巨大なメインスクリーンに加え、左右と背後にも細長いスクリーンが連なる独特の構造で、360度的な没入感を生み出す。MAPOCYで見たモノクロームのデジタル雲はここでも再登場し、背面や側面から湧き上がるため、観客は携帯で“映え”を狙う余裕を失い、その瞬間に没入せざるを得なくなる。近年まれに見る、記録では再現不可能な体験だった。
 奇妙なパンク・バンドから出発し、90分超の儀式的公演を構築できる存在へと変貌したBOREDOMS。その中心人物である∈Y∋は、観客の細胞レベルに作用する「悟性の構造」を知り尽くしている。聖性の頂。

 公演の最後、∈Y∋は稀にみる“口頭での解説”を行い、コーンの群れを「家族」だと呼んだ。FINALBY( )の本当のメンバーはコーンであり、人間はその媒体にすぎないのだと。※詳しくは∈Y∋本人が10月26日付でInstagramに投稿した説明を参照してほしい。
 この一連の経験は、初期舞踏、ローリー・アンダーソン、フィリップ・グラスらの系譜に連なる、ダイナミックなパフォーマンスアートの華麗な再誕に等しかった。


FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda

∈Y∋ × C.O.L.O(COSMICLAB)@ MUTEK JAPAN

 渋谷で開催されたMUTEK JAPAN 2025で、∈Y∋はC.O.L.O.とともに初めてこのフェスのステージに立った。ART WEEK TOKYO(11月5日)のサプライズ公演をさらに拡張し、より長く、より“怪物的”な形で提示したものだ。FINALBY( )とは異なり、形式上は伝統的なオーディオビジュアル公演に近いが、幸いにも遥かに奔放だった。多くのMUTEK出演者が“引き算の美学”で勝負するなか、これは「足し算の極北」とも呼べる公演だった。
 FINALBY( )が2時間のノイズの海へ沈めるような体験だったのに対し、今回の2人は長いテーブルに並んで立ち、背後の巨大スクリーンとともに、∈Y∋のDJ PICA PICA PICA的な狂騒を現代化したような世界を作り上げた。FINALBY( )のノイズ成分と、モノクロームのフリッカー映像、そして近年∈Y∋が執着するハイパー・サイケデリックなシンゲリ(singeli)が高密度に衝突し合う。言語化困難なコラージュも大量に挟まれる。
 ∈Y∋の音楽とヴィジュアルは、まるでドラッグまみれのポップアートだ。C.O.L.O.は∈Y∋の衝動を鏡のように反射し、狂気じみたフリッカー花、精神を攪拌する幾何学模様、スクリーンいっぱいの“眼”、ハートやブタの絵文字が奇妙な規則性で踊り、そのあとにはスローモーションのデコトラ事故寸前3D映像が続く。強度は綿密に計算され、現実味がないほど完璧だった。息つく暇もない全頭脳的ラッシュ。

 ここ数ヶ月の間に、∈Y∋の唯一無二の表現が多角的に更新される様子を目撃してきた者として、2026年にさらに何が生まれるのか、ただ祈るばかりである。


FINALBY( ) LIVE in 歌舞伎町EXPANDED Photo : Masayuki Shioda


Sadness at the announcement of the closing / demolition of the historic Misono building in Osaka this past summer was brightened with a string of performances to celebrate the history and longevity of the famous landmark. One of those performances, scheduled on July 5th, was EYE`s (Boredoms) new project FinalBy ( ) **(pronounced - Final B Empty) (ファイナルビーエンプティ), a

collaboration with Osaka based COSMICLAB. EYE, a legend in the the Osaka music scene, was definitely the best choice to celebrate the building`s longetivity. Excited, I immediately purchased and planned my trip to Kansai. Unfortunately, it`s now the end of November and I still feel a light sting of having had to cancel said trip due to schedule conflicts. Oh the misery! A summer memory unrealized. My sadness at having to stay home was almost unbearable.

Fate though works wonders and Tokyo is enjoying a string of of EYE related events. More than enough to make up for the missed summer opportunity. EYE has returned to Tokyo for a new exhibition, Mapocy (まぽチー), smack dab in the center of Shibuya

on the third floor of Miyashita Park at gallery SAI, the Tokyo premiere of FINALBY ( ) at ZERO TOKYO in Kabukicho, a multi- screen installation of EYE`s ARV100 performance in 2024 for BENTEN2 at 王城ビル (also in Kabukicho), a small surprise concert

with C.O.L.O. (COSMICLAB) at Art Tokyo Week, and a unique audiovisual performance with C.O.L.O. on a huge stage for MUTEK Japan to round it out. Despite EYE`s many many years as one of the greatest innovators in the alternative scenes of Japan, the inactivity of the Boredoms coupled with more sporadic solo

activities means that EYE hasn`t been at the center of the chaos for some years. So with this many events within just half a year, it feels like a reintroduction of sorts. Perfect for creating new history. One of the last times I saw the Boredoms live was when EYE broke his leg on stage and kept performing despite the pain. So if you haven`t guessed so far, anything EYE related is often historic. I have compiled all of these great experiences this fall in a report.

MAPOCY

Separated into 5 rooms with the 4th almost a secret surprise, MAPOCY reflects EYE`s junk art style as a large installation closely in line with his ongoing PUZZLE PUNKS partner, multi-media artist Ohtake Shinro, mixed with his other common collaborator, the drum cymbal.

The installation is very, very, very, very, very green. Green paint splattered on canvases installed on the walls, on cymbals, on plastic sheets, on junk items. There is green paint literally everywhere including the floor. Almost like an artistic, construction site mixed with wooden assemblages, created into jagged shapes you can see in older EYE works. While the first room was spacious with objects on the floor and wall, the second room was chaotically littered and piled up with numerous objects of different types completely splattered with the same green paint, plastic sheets hanging down and a fan constantly going to keep possible fumes from making anyone sick. There were no coherent shapes at first, just noise. The site is honestly incredibly confusing and confounding but if you have any taste for noise in your music, I would say there is no difference between aural noise or physical noise.


The chaos continues in the 3rd room where in the far corner you might see a dark entrance way into a near pitch black room. The 4th room is a dynamic 3 wall screen scroll-like video of his work with the other members of FINALBY ( ). Only viewable by entering through a small hole created with black plastic sheets, the room literally reverberates with the intensity of the monochrome flashing programmed shapes and the noise music blasting. The images carefully pixelated reimagine traditional Asian cloud flower designs colliding into each other becoming new geometry. Often starting from the far left and far right side, they eventually meet in the center and evolve into new forms. The visual cacophony reminded me of Ikeda Ryoji`s most impactful works but with a fresh and friendly take. Visiting this exhibition first gave me a good unknowing hint of what the following FINALBY ( ) would be like.

The last room is a calm down from the bold expressions of the previous ones. Only one wall of older very familiar hand drawn art combined with physical lps before the exit, it was an interesting last taste offering a comparison to EYE`s initial choice of expression - paper drawings.

FINALBY ( )

FINALBY ( ) first debuted at Fuji Rock in 2021 in front of an unknowing crowd. Since then, FINALBY ( ) has performed only in Hong Kong, Osaka, and now Tokyo. We all know that EYE is a visual artist on top of being a musician but rarely has his visual side collided justly with the music on stage. Like an updated and rebirthed technological Hanatarash (by my eye), EYE has developed a new strong, physical performance more like


performance art coupled with objects connected to noise machines, lights, and sensors. His technical collaborators = other members of FINALBY ( ) are COSMICLAB (directed by C.O.L.O.), art engineer Horio Kanta, and programmer Niimi Taiki. This is very much a digitized EYE. Without a doubt a unique combination of our technical age.

I was lucky enough to witness the beginning of this new venture toward multi media in a small room in Harajuku before the pandemic. At TOKYO CULTuART by BEAMS Harajuku in 2019 for a BOREDOMS t-shirt exhibition, EYE wore a face mic and a black jacket somewhat covering two motion detecting sound machines attached to both his hands that emitted noises. Activating the sensors with motion and singing unbound by a regular mic, EYE was experimenting with the beginning of what would become FINALBY ( ). Here EYE also introduced his obsession with large cones as sound devices. To match his clothing, EYE had a black cone with sensors on the bottom. Picking it up and waving it around affected the sounds emitted and provided funny eye candy as cones are naturally bottom heavy and odd shaped. Behind EYE was an engineer to support the technical side of the performance. Having witnessed this very intimate performance in a room full of 30 or so fans, I can now see the initial development and vision that took 6 years to materialize in Tokyo.

To prepare and hype myself up for going to see FINALBY
( ), I dusted off a copy of the Boredoms` Super Roots 5, one of their most difficult to attain recordings and also their most abstract. At the beginning of their heavy drum and cymbal phase, the one track album is one hour long and basically one long cosmic tone

maintained straight with bubbling noise and cymbals. There is no song per se. Only a holy experience. This reminds me of 1982.

In 1982, the avant garde guitar composer, Glenn Branca performed live his work Symphony 2 with the added title “The Peak of the Sacred.” Only meant for that work in particular, that title though often describes much of his most emotional work. Symphony 2, one of the least complex of his works in terms of multiple chord changes, was one of his best for the sheer intensity and almost god-like continuous blasts of angelic amorphous energy that felt like thunder in the air.

The idea of the peak of the sacred evokes music that is continuously euphoric and orgasmic for humans to rise beyond themselves. EYE`s direction of the Boredoms with the BOADRUM series and other performances I feel were meant to reach “ the peak of the sacred” whether explicitly expressed or not. EYE`s focus on the “experience” over the “song” illustrates his evolving and complex mental state and music focus since then. Throughout FINALBY
( ), I keenly felt EYE reach “ the peak of the sacred” as only he could.

FINALBY ( ) Live in Kabukicho Expanded (the full title of the night) was a 2 hour uninterrupted performance art piece which didn't advertise itself to be that. Genius. When purchasing the ticket, I noticed that the performance was supposed to be 2 hours but I assumed that there would be a dj or something. No, it was 2 full hours of huge blasts of noise with EYE and matching euphoric visuals designed to create a dialogue that worked very perfectly.

On stage at the center was a “thing” that I could only describe as a light illuminated huge cupcake. That “thing” I learned later was a noise generator that EYE could tap at like a djembe. Across the

stage were several more cones with the largest suspended in air at the front of stage so massive it could cover EYE from head to toe (which it later did). In the center of the floor surrounded by the majority of the audience right before the sound and visual mixing booth of another huge - I do mean huge - cone on a platform that later would light and spin in a circle pushed by EYE. During the performance EYE moved back and forth from the stage to the floor centered cone. ZEROTOKYO, for the many who have never been inside it, is a venue unique in having not only a huge stage screen but long thin screens on the left, right, and back wall making a 360 degree surround experience.

The monochrome digital clouds from Mapocy re-introduced themselves here, they emerged from the back and the sides making everyone have to be present in the moment instead of looking for the next instagram moment with their phones. Unlike any performance I have been to in years, this was first time in ages where no documentation could do justice to each person`s experience that night. Whether with the noise assault or the constantly shifting orientation of the images.

EYE, having changed the Boredoms from an unusual, quirky punk group to a band capable of performing hour and a half concerts has attained the psychological knowledge few have of how to construct enlightening performances of such depth that change the molecules of the crowd. The peak of the sacred.

EYE named the group of cones a family and stated so at the end of the performance in a rare commentary of his ideas to the audience. The cones were a family and the real members of FINALBY ( ) making the human members only conduits. *** Please refer to his exact explanation of the cones posted on

October 26th on EYE`s own Instagram account. The total experience felt like a great rebirth of dynamic performance art in the tradition of early Butoh, Laurie Anderson, Philip Glass, and others.

EYE with C.O.L.O of COSMICLAB at MUTEK JAPAN

Held in Shibuya, EYE for the first time ever graced the stage of the 2025 edition of MUTEK JAPAN with C.O.L.O. (COSMICLAB) presenting a more fantastic and longer version of the surprise performance they did for ART WEEK TOKYO on Nov. 5. Unlike FINALBY ( ), this performance was closer to a traditional audiovisual performance but luckily more unhinged. Most performers of MUTEK try to impress with a less-is-more aesthetic but this was a case of more-is-so-much-more one. The FINALBY (
) concert was a submersion in 2 hours of near constant noise. The MUTEK performance of C.O.L.O. and EYE, standing together at a long table shadowed by a huge screen behind, was closer to EYE`s manic DJ PICA PICA PICA mix style. An incredible soup of noise portions of FINALBY ( ) with the same monochrome flicker visuals side by side with hyper psychedelic hardcore singeli music reflecting his ongoing fascination with the manic genre. And tons of near indescribable collages in between.

EYE`s music and visual style is like pop art on acid. C.O.L.O. convinced me he was the best collaborator for EYE, brilliantly reflecting EYE`s impulses assaulting the audience with demented flicker flowers, mind-altering geometry, a sea of eyes (totally tongue in cheek), heart and pig emojis dancing across the screen in similar patterns followed by near collision slow motion disaster 3D video game scenes of Dekotora trucks loosing their wheels. The intensity


was beautifully calculated and unreal. A full head rush with barely a moment to breath.

With so many perspectives of EYE`s singular always evolving expression in only a few months time, I can only pray that 2026 brings us more.

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