「K Á R Y Y N」と一致するもの

CHART by DISC SHOP ZERO 2010.02 - ele-king

Shop Chart


1

HYETAL & SHORTSTUFF

HYETAL & SHORTSTUFF DON'T SLEEP / ICE CREAM PUNCH DRUNK / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

2

HANUMAN / ATKI2 & DUB BOY

HANUMAN / ATKI2 & DUB BOY BOLA / TIGERFLOWER IDLE HANDS / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

3

D1

D1 JUS BUSINESS / PITCHER DUB POLICE / UK / 2010.2.2 »COMMENT GET MUSIC

4

BAOBINGA

BAOBINGA RIDE IT BUILD / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

5

unknown

unknown HARMONIMIX 001 unknown / UK / 2010.2.2 »COMMENT GET MUSIC

6

SMITH & MIGHTY / ROB SMITH

SMITH & MIGHTY / ROB SMITH B-LINE FI BLOW / LIVING IN UNITY PUNCH DRUNK UNEARTHED / ポーランド / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

7

AITON

AITON LOVERS DUB / LOVE FOR THE HANDS ABUCS / UK / 2010.2.2 »COMMENT GET MUSIC

8

J-TREOLE / SULLY

J-TREOLE / SULLY THE LOOT (SULLY RMX) / IN SOME PATTERN KEYSOUND / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

9

unknown

unknown DING THE ALARM unknown / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

10

QUANTIC and his COMBO BARBARO

QUANTIC and his COMBO BARBARO UN CANTO A MI TIERRA TRU THOUGHTS / UK / 2010.1.26 »COMMENT GET MUSIC

銀杏BOYZ - ele-king

"ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPVが話題になっている......いや、すでに数週間前の話だが。とにかく、それなりに話題になっていた。ご覧くださればその理由もおわかりになるはず。あの『SNOOZER』もまったくスルーした"ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPV、その合評をどうぞー。

観て一驚を喫したのは、そこに映し出されていたのが、
このとき振り落とされた男性たちであったことです。文:橋元優歩

 GOING STEADY時代のファンが多いというだけのことかもしれませんが、驚いたのは、あの女性ジャケのシングルを実際に被写体のような女性が買いにくることです。いまはなき御茶ノ水の某店舗、パンクとインディ・ロックだけを置いた薄暗いフロアにて、ファースト・アルバム2枚同時リリースから2年半を経て、銀杏BOYZのシングル「あいどんわなだい」が店頭に並んだとき、鋲打ちジャケットの男性や若いサラリーマン等々の後ろから、正月でもないのに着物を着た可愛らしい女性がちょこちょこと入ってきて「みねたくんのシーディーください」(!)と言ったことは、非常に印象深かったです。その週は女性客がいつになく多く、もちろんたいていは「みねたくんのシーディー」のお客さん。そしてたいていが可愛らしい。ちょっと待ってください、あなたがたは、スカートをめくられ("日本人")、体操服を盗まれ("Skool Kill")、1000回妄想("トラッシュ")されているのですよ!? しかし「みねたくん」ならよいのです。

 曲中では、女性=「あの子」はいつも手が届かないひとつの究極の存在として表象されるし、そのために結局は転校してしまう("あの娘に1ミリでもちょっかいかけたら殺す")けれど、実際にはモテてしまう「みねたくん」。彼が同世代の男性に課したハードルはとても高い。

 PEACEとPISSを心に放て スカートをめくれ/凶暴的な僕の純情 キュートな焦操/
(中略)/球場を埋め尽くす十万人の怒号と野次/グラウンドに投げ込まれるゴミの嵐にも負けず/九回の裏50点差の逆転を狙う/素っ裸の九番打者に僕はなりたい――"日本人"

 デビュー・アルバム『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』収録曲ですが、2005年に、この主題はあまりにハードです。地下鉄サリン事件から数えても10年も経っている。九回裏での50点差......九回裏ってものが、10年前に終わってしまっている。これを言えるならヒーローだ。それなら女性もついてくる。また、ついてくるからこそそう言える。しかし、この主題を真に受けるなら、ほとんどの者がそこからこぼれ落ちるだろう......。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
UK.PROJECT

 久しぶりのリリースとなる本シングルのPV「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を観て一驚を喫したのは、そこに映し出されていたのが、このとき振り落とされた男性たちであったことです。一種のドキュメンタリー・ムーヴィーの形をとっていて、「将来の夢」とおぼしき事柄を書いたフリップを持った男性が次々と現れ、簡単なインタヴューを受ける。それが延々と続く。セーラー服や、彼らの3枚のシングルのジャケットを飾る、あのあどけない表情をした女性の登場を予期していると、完全に肩すかしを食らいます。それどころか女性はひとりも出てこない。戦争オタクを皮切りに、アイドル、ガンダムなど各種オタク、「脱ニート」や「リア充」を掲げるライトな生活者、正社員志望のロスジェネ既婚者から5000万円を女性に貢いでしまった中年男性、親の介護で消耗しきっている青年等々矢継ぎ早に映し出され、そのいっぽうで「世界一周」や「ストパーかけたい」というささやかな願望も語られる。ごく普通の若い人もいるけれど、頭の薄い人や話し方が宿命的にイタい人など、ある一定の線は充分に意識されている印象を受ける。ひどく滑舌の悪い中年男性の夢は「21世紀のリーダー」だ。

 素っ裸の九番打者どころの話ではないです。過剰な流動性を生み出す成熟社会にあって、また、生きていくのに必要なだけのストーリーを調達するのに以前ほどには素朴でいられないポスト・モダン状況にあって、多くの人が舵を切り損ねている。あるいはオタク化するなど急ハンドルを切っている。

 「みねたくん」の言葉は今度は彼らに届くのでしょうか。もういちど彼らを挑発することができるのでしょうか。率い、目指され、より説得力のある男性モデルを立ち上げることができるのでしょうか。映像は画面転換の速度を増し、曲はバーストし、とくに結論は導き出されない。ただ、最後に写った男性の言葉は、とても印象的に使われていました。「まあ、なるまで......闘います。闘ってもダメだったら、まあ勝つまで、諦めない、まあ死ぬまで、まあ天国に行っても、諦めません。」

 彼は何になるのか? なりたいのか? 正社員に、です。「ほぼ見込みがないかも」という自信のなさをありありと表情に伺わせながら、「まあ」を多用して諦めないことの照れを隠しながら、ただ「諦めない」というキャラだけは自分に設定しておこう、と。もう切なくて観れたものではないです。天国に行ってから正社員になってもまったく意味がないのですから。

 前シングルからさらに2年のインターバルを置き、自らのテーマの洗い直しをおこなったかに見える本作は、だから以前までは曲の対象からはずされていた種類の女性に対しても届き得るものになっているのではないでしょうか。おひとりさま、腐女子、カツマー、さらには森ガール等々の類型は、上に出てくる男性たちと対称形を成している。それは流動的な社会を生きる上で、ひとつの拠り所として切実に選択された態度です。

 サア タマシイヲ ツカマエルンダ――"若者たち"

 つかまえあぐねている人びとに、もう以前のようには煽らない。そこにはそれ相応の背景や事情があるから。でもやっぱり、さあ、魂を、つかまえるんだ。複雑な社会であることはわかっているけど、やっぱりやらなければいけない、「もう一丁」!――"ボーイズ・オン・ザ・ラン"

 "ボーイズ・オン・ザ・ラン"は、それを以前のように直接言わないことで、より普遍的な表現を勝ち得た力作であり、PVとしては破格の喚起力を持った問題作である。もちろん、社会問題が絡む以上は若干の既視感は否定できない、が、実際にいまを生きている男性の顔を正面から撮りまくるというのは、方法的にも非常に有効であると思う。人が素でカメラに向かうと、いろいろなものが写り込むから。

文:橋元優歩

»Next 二木 信

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何がそんなに腹立たしかったのか。それは、制作側の銀杏BOYZの、「イケてる/イケてない」という判断基準のベタさ加減だ。「勝ち/負け」にたいする想像力の貧困さと言い換えてもいい。文:二木 信

銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
UK.PROJECT

 "ボーイズ・オン・ザ・ラン"のPVが巷で話題になっていると聞いて、youtubeで見てみた。いまさらこの映像に鼓舞され、熱狂する若者がいると思うと悲しくなった。愕然とし、無力感に襲われ、そして、「もういい加減にしてくれよ」とひとりごちた。銀杏BOYZが関わっているとだけ教えられた僕はその時点で映画も観ていないし、原作の漫画も読んでいなかった。銀杏BOYZを聴いたこともなかった。それでも、けっこう期待していたのだ。好き嫌いはあるとしても、若者から熱烈な支持を得ているロック・バンドが関わっているのだ。何かこうヴィヴィッドなものを見せてくるのだろうと。それなのに......僕は映像を見た後、しばらくして腹が立ってきて、悪態をつく衝動を抑えることができなかった。

 "ボーイズ~"は、たしかに現代の日本社会のある側面を捉えている。映像は、街頭に立つ男たちと彼らが画用紙に書いた「夢」を次々に映し出す。場所はおそらく、渋谷、原宿、秋葉原だろう。「世界征服」「平和」「21世紀のリーダー」「脱ニート」「童貞を捨てる」「北川景子とベロチュー」「アイドル万才」「公務員」。男たちはカメラに向かって、意気揚々と夢を語り、現実の厳しさを訴え、ふざけた調子で踊り、怒りを吐き出す。衰弱した様子の中年の男は、精神科に入院する母親の介護から解放されたいといまにも泣き出しそうな表情で訴える。また、排外主義者の若い男は、外国人地方参政権に反対だという主張を捲くし立てる。登場するのは、だいたいが冴えない日本人の男たちだ。彼らの多くは、切実であり、切迫している。感情を揺さぶられる場面がないわけではない。

 では、何がそんなに腹立たしかったのか。それは、制作側の銀杏BOYZの、「イケてる/イケてない」という判断基準のベタさ加減だ。「勝ち/負け」にたいする想像力の貧困さと言い換えてもいい。制作側は、意図的に「イケてない」男たちを選んでいる。そして、顔や風貌が冴えない男たちの振る舞いをどこか滑稽に撮影している。その偽悪的な撮影手法の裏には彼らなりの倒錯した愛があるのだろう。ただ、"ボーイズ~"が人を腹立たせ、不快にさせるのは、この場合転倒を図るべき新自由主義政策以降の社会における既存の「勝ち/負け」の基準を結果的に補強してしまっているからだ。世のなかには、経済的に恵まれていて、それなりに社会的地位があって、容姿が良くても不幸な男はいるし、その逆もまた然りである。顔や風貌が冴えなくて、貧乏で、ちょっと狂気じみている男たちだけが「負け組」で、「モテない」とは限らない。「勝ち/負け」というのはそんな単純なものではない。結局、多様性を打ち出しているようで、映像で提示されている「負け」はステレオタイプなものばかりなのだ。それは、単純に表現として退屈だ。

 自分だけが被害者だと思う人間は最大の加害者になる、というようなことを書いた橋本治の言葉を思い出す。不幸なのは自分たちだけではない。中二病的な自己憐憫で心を慰撫し、小さい自意識に固執して、「モテる/モテない」などという他人の尺度ばかりが気になるというのは本当に恥ずかしいし、イタい。時に醜悪でさえある。翻弄されるぐらいならば、そういうゲームからさっさと退場するべきだし、その方法を考えるべきだ。

 そもそも映像は、ゼロ年代を通じて可視化した社会的弱者のあり方をなぞっているに過ぎない。別の言い方をすれば、雨宮処凛や湯浅誠らが組織した、プレカリアート運動や反貧困系の運動以降の青春パンクと言うことができる。「フリーター」「ニート」「派遣」「格差社会」「ワーキング・プア」「ファシズム」「モテ/非モテ」「オタク」。新聞、週刊誌、テレビからネットまで、ありとあらゆるメディアが散々取り上げてきたキーワードだ。さすがにそれらを前提にして、男たちの自分語りの映像を見せられても白けてしまう。早い話が、"ボーイズ~"は、手垢のついた記号を引っ張り出して、捻りもなしに「イケてない」男たちに当て嵌めているのだ。12分近くにもおよぶPVの中盤以降、連帯を促すようにかき鳴らされるメロディアスなギター・サウンドの演出の陳腐なこと! 男たちのカタルシスだけで社会が変革できるのであれば苦労はない。銀杏BOYZというのは、いまだ社会化/可視化されることのない、こんがらがった言葉や感情を表現して時代の先を行くバンドだと思っていたが、"ボーイズ~"のPVは、完璧に時代から一歩も二歩も立ち遅れてしまっている。

 そう、花沢健吾の原作漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』のクライマックスがあんなにも素晴らしいのに。いわゆる非モテの主人公、田西敏行が鼻水を垂らし性に翻弄されながら駆けずり回る前半から、複数の物語が絡み合いながら、「家族=共同体」再編というメッセージが練り上げられていく後半へのドラスティックな展開は感動的だ。荒れた父子家庭で父親に無視され、学校では凄惨ないじめにあい、ボクシング・ジムに入り浸る小学生の男の子「シューマイ先輩」、荒くれ者の元ボクサーの夫を持つ、耳の聞こえないボクシング・トレーナーの女「ハナ」、そして田西が、時に傷つけ合い、時に助け合いながら絆を深めていく。ある時、ハナの夫にボコボコにされた田西は、「結局......非力な人間は負け続けなければならないのか?」というシューマイ先輩の問いに、「自分ざえ認めぎゃ、まだ負けじゃないっずっ!!」とぐしゃぐしゃな顔で答える。最終的に3人は、それぞれの「負け」を噛み締め、お互いを認め、前を向き、家族=共同体として生きようとする。社会の片隅で生きる女と子供と男が寄り添いながら、ともに堂々と胸を張って歩きはじめるのだ。とても美しいし、夢があるし、素敵な物語だ。そして、いまの時代に、説得力を持ち得る物語だ。

 PVには、その、原作の重要なメッセージがまったく反映されていない。PVの最後は、「一日も早く正社員になりたい」という夢を持つ男が、「まあ、(正社員に)なるまで闘います。闘ってもダメだったら、勝つまで諦めない。死ぬまで、天国に行っても諦めません」と、自身の労働問題をなかばテンパり気味に語るシーンで締めくくられる。それは、前述した田西の発言に対応している。労働問題、重要である。競争も熾烈だ。現実は厳しい。ただし、少なくとも僕は、被害者意識に呪縛された男たちだけの共同性より、女と子供と男が入り乱れた予測不能な共同性の方に圧倒的に可能性を感じる。

文:二木 信

»Next 磯部 凉

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酷く複雑な気持ちになるのは、その映像の露悪性と、音楽の露善性の強烈なギャップだ。銀杏は彼らを思いっきり突き放すと同時に、同じ強さで抱きしめる。文:磯部 凉

「セックスのことを24時間考えている」。所謂"童貞"ブームの代表格だったマンガ家・古泉智浩が、童貞を失った後の世界を描いた単行本『ピンクニップル』(08年)の、自身による後書きには、そんなタイトルが付けられている。何故、考え続けなければならないのだろうか? それは、決して満たされることがないからだ。ひたすら虚しいセックスを繰り返す同作の主人公同様、私達は言わば餓鬼道に堕ちた罪人である。

 00年代前半は、サブ・カルチャーにおいて、性愛の問題が重要な位置を占めた時代だった。もちろん、性愛の問題は常にあるものなのだけれど、キーワードを並べていくと、90年代後半に特徴的だったのが、援助交際が物議を醸した"コギャル"や、青山正明が先導した"鬼畜系"等、アンチ・モラリズム的な傾向だとしたら、00年代前半に特徴的だったのは"ケータイ小説"や"セカイ系"、"童貞"など、反動としてのよりモラリズム的な傾向である。また、ふたつのタームのあいだにあるのは断絶ではなく、あくまで変化であって、最初に挙げた"コギャル"が、その後の"ケータイ小説"へと形を変えたのだと考えられる。例えば、社会学者の宮台真司は、当初、援助交際を性愛のセルフ・コントロールとして高く評価していたのを、その後、当事者である女子高生の多くが精神のバランスを崩して行ったのを受け、彼女たちを守るシステムを構築するために保守主義へと転向していったが、速水健朗『ケータイ小説的ーー"再ヤンキー化"時代の少女たち』(08年)で指摘されていたように、純愛モノの仮面を被った"ケータイ小説"の裏に隠れているのはデートDVという醜い現実であり、その物語世界は、現実世界の性愛関係で受けた傷を治すための、ある種のヒーリングとして機能しているのだ。ありもしないふたりだけのセカイを夢想するのも、過ぎ去った童貞時代を美化するのも、また然り。00年代も中頃になると、なかには、最初から傷付かないために現実の性愛関係自体を回避するという極端な思考まで登場した。ライト・ノベル作家の本田透が発表したエッセイ『電波男』(05年)がそうで、リアルな女性に見切りを付け、ヴァーチャルな女性との恋愛を楽しもうという提案がなかば本気で試され、支持を得ていたのは記憶に新しい。

 さらに言えば、性愛の問題とは、イコール、コミュニケーションの問題である。どんな人間もひとりで生きていくことはできない。いや、肉体的には生きていくことはできるだろう。ただ、人間は家族や友人、恋人といった他人とコミュニケーションを取り、彼らから承認を得ることによって、初めて生きていく意味を得るのだ。本来、セックスは、その承認を得る行為のひとつであるはずだ。セックスの機会自体は、ポスト・モダン化が進むなかで、多種多様な性的コンプレックスが解放され、増えたかもしれない。しかし、日本では、コミュニケーションの総体としての社会が80年代のバブル景気以降、一気に形骸化してしまった。つまり、セックスとコミュニケーションが切り離され、セックスだけがデフレ化してしまったのだ。90年代後半のアンチ・モラリズムとは、若者たちがそんな社会に対して発した、ある種の警戒だった。それでも、当時はまだそのストレスを消費によって発散させてくれる経済的な余裕があったため、露悪的な表現で済んだのが、00年を越えて不況が現実化し、しかも、政府が対策として新自由主義を打ち出し、格差が拡大するーーさらにコミュニケーションが枯渇するという焦りが拡大すると、若者のあいだで防御としての露善的な表現が浮上しはじめる。警戒から防御へ、反応のレヴェルが上がったのだ。

 ポップ・ミュージックで言えば、強くモラルを訴えていた、当時の青春パンクや日本語ラップがそうで、その際、シーンや国家といった架空の共同体を通して、社会性の復権を計るという点ではネット右翼も同じである。そして、露悪的な表現よりも、露善的な表現のほうが、善というあってないような価値観に無条件で寄り掛かっているために、質が悪いし、深刻なのだ。00年代後半、露善的な表現はさらにその純粋さを過剰化していった。まぁ、桜ソングや応援歌ラップみたいなものがTVや街頭のスピーカーから垂れ流されている分には、チャンネルを変えたり、ヘッドフォンをして他の曲を聴けば済むだけの話なのだけれど、それまで、あくまでヴァーチャルな世界のなかに留まっていたネット右翼が"在特会"のように、リアルな世界に溢れ出て来た時は、ナチスが台頭して来た頃のドイツを連想し、ゾッとしたものだ。ナチスこそはまさに、愛国と経済再建をモットーに掲げ、その意に沿わないノイズを徹底的に排除していった、露善的な団体ではなかったか。

 ところで、銀杏BOYZ(=峯田和伸と、イコールで結んでしまってもいいだろう)の『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』と『DOOR』という2枚のアルバム(共に05年)を特徴付けているのは、言わば露悪的な表現と露善的な表現のミックスである。例えば、『君と僕~』のちょうど折り返し地点である6曲目"なんて悪意に満ちた平和なんだろう"は、当時の日本のサブ・カルチャーにはっきりとあった、戦争反対というメッセージを通して皆がひとつになろうとするようなムードに冷や水を浴びせる、つまり、戦争反対もまた、戦争と同じ全体主義ではないのかという"戦争反対・反対"ソングだが、続く7曲目"もしも君が泣くならば"は一転、「もしも君が死ぬならば僕も死ぬ」と熱唱する、何処となく軍歌的な響きのあるシング・アロング・ナンバーで、そこでアルバムは露悪的な前半から、露善的な後半へと突入していく。そして、その二律背反的な二部構成は、どっち付かずや分裂症的というよりは、『DOOR』もほぼ同様の構造を持っていることからも、かなり意図的に制作されていることを思わせる。一方、前身のGOING STEADYが残した2枚のアルバムはストレートに露善的であり、要するに、バンドが銀杏に発展し、新たな要素として付け加えられたものこそ、露悪的な表現だったのである("なんて~"は新曲だが、"もしも~"はゴイステ時代から歌われている曲だ)。考えるに、銀杏がここでやりたかったのは、当初の青春パンクが持っていたヒーリング的な側面を機能させつつも、その表現が陥りがちな純粋性の強調の果ての、ノイズの排除に向かわないために、露悪性を導入することだったのではないだろうか。その試みは、最近で言うと神聖かまってちゃんのようなバンドにも引き継がれているし、興味深い事に、SEEDAの『花と雨』(06年)のリリースがきっかけで日本語ラップ内に起こったハスラー・ラップ・ブームともリンクしている。ドラッグやセックス、ヴァイオレンスについて歌った露悪的な楽曲と、家族や友人、恋人への愛を歌った露善的な楽曲という、一見、チグハグな組み合わせこそがハスラー・ラップ・アルバムの肝だからだ。

 ただし、もっと細かく言えば、峯田の変化は、『君と僕~』と『DOOR』ではなく、GOING STEADYが2枚のアルバムを経てリリースしたシングル『童貞ソー・ヤング』(02年)からはじまっている。古泉智浩がジャケットのイラストを手掛けた、その名もズバリ、"童貞"ブームを象徴するような、前述したロジックで言うならモラリズム/露善的なタイトルのこの楽曲で、峯田は「一発やるまで死ねるか!!!」と叫んだ後、「一発やったら死ねるか!!? 一発やったら終わりか!!?」と続けている。つまり、ここで歌われているのは、童貞的な純粋さに逃げ込むのではなく、むしろ、童貞を捨てた後にはじまる現実こそを生きていけ、というメッセージなのだ。中学生時代に担任教師から性的虐待を受けたことが原因で、異性と話しただけで嘔吐してしまう程の性的コンプレックスを抱いていた峯田にとって、性愛はもっとも重要なオブセッションであり続けているが、同曲は極めて重要なターニング・ポイントとなった。自身の性的コンプレックスに初めて向き合うことで、他人とのコミュニケーション、延いては社会を相対化することに成功したのだ。セカイ系から世界系へ。この成長は、この時期においては、かなり真っ当だったと言えるのではないか。

 やがて、00年代も後半に差し掛かると、所謂"童貞"モノのなかにも、『童貞ソー・ヤング』の後に続くように、ポスト"童貞"をテーマにした作品が現れはじめる。松江哲明の映画『童貞をプロデュース。』(07年)は童貞を拗らせた教え子(=かつての自分)に業を煮やした監督が彼らを現実に立ち向かわせるドキュメンタリーだったし、花沢健吾のマンガ『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(05年~08年)は、前作『ルサンチマン』(04年~05年)におけるヴァーチャル世界=童貞のディストピア(『電波男』の表紙にも引用されている)が崩壊するラストから地続きに、リアルな恋愛の地獄をしっかりと描いた作品だった。それでも、マンガ版『ボーイズ~』の読後感は悪くない。銀杏の『僕と君~』『DOOR』が、"アンチ・モラリズム/露悪→モラリズム/露善"という流れを持っているため、あくまでポジティヴな印象が残るのと同じ物語構造を採用しているからだ。そこを甘いと感じる人もいるだろうが、これはこれで悪くない。何故なら、もともと現実の性愛関係に疲れて、妄想の性愛関係に逃げ込むような人間に、いきなり、徹頭徹尾厳しい現実を突きつけたからといって、拒否反応を起こしてしまうだけだからだ。リハビリとしてはこれぐらいで調度良い塩梅なのだ。

 しかし、さらに社会の状況が悪化していくにあたって、いつまでもそのようなロマンチシズムに留まっていられないのもたしかで、例えば、この1月に公開された映画版『ボーイズ~』は見事、そんな時代に対応した傑作である。00年代演劇において、チェルフィッチュの岡田利規と並んで露悪的なアプローチでもって性愛の問題に取り組み、だからこそ露善的なアプローチが幅を利かせるエンターテイメントの世界ではいまいちポピュラリティを得ることができなかったポツドールの三浦大輔は、この初の大舞台となる映画第3作で、ここぞとばかりに、原作では掴みに過ぎない露悪的な面を強調し、後味の悪さを残すことにひたすら賭けている。全10巻に及ぶマンガの第一部まででストーリーを終えるのは、映画の尺の関係で仕方がないとして、原作では主人公を承認してくれる役割のヒロインをバッサリとカットしてしまったのは見事だった。その選択によって、映画版は、原作版のロマンチシズムと引き換えに、新たなリアリズムを得ることに成功しているのではないだろうか。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 銀杏BOYZ
ボーイズ・オン・ザ・ラン


初恋妄℃学園/
UK.PROJECT

 そして、映画版『ボーイズ~』で主演を務め、銀杏として同名の主題歌を手掛けた峯田は、自身が監督した12分にも及ぶPVにおいて、映画版にタメを張る才能を発揮している。それは、まるで『君と僕~』と『DOOR』の全29曲を混ぜ合わせてひとつにしたような作品であり、この世界そのものように混沌としている。映像は、松本人志の『働くおっさん人形』(03年)を思わせる露悪的なインタヴュー形式で、ネット右翼からヤンキー、童貞からホストまで、極端なタイプの若者達に夢ーーそれはさまざまな形の承認欲求であるーーを語らせ、現代日本若者像のステレオタイプを浮かび上がらせていく。そして、そのバックには銀杏のシングルとしては初めてと言っていいくらい、ストレートに露善的な、如何にも青春パンクといった歌詞と曲調の楽曲版『ボーイズ~』が鳴り響く。画面に映る"ボーイズ"たちこそは、まさに、銀杏のファン像であり、そして、銀杏が承認してあげたいと考えている若者たちなのだろう。しかし、本PVを観ていて酷く複雑な気持ちになるのは、その映像の露悪性と、音楽の露善性の強烈なギャップだ。銀杏は彼らを思いっきり突き放すと同時に、同じ強さで抱きしめる。これは、J-POPでも日本語ラップでも、ファンを囲い込み、ノイズを排除し、現実を切り離してしまうような、日本のポップ・ミュージックにありがちな態度とは真逆のやり方である。私はつい先日、twitterでこのPVを紹介し、さまざまな人のあいだで賛否両論の議論が巻き起こり、広がっていくのを目の当たりにした。また、同じ問題を巡って、アンチ銀杏を表明している田中宗一郎の「何故、自分がこのバンドを嫌いなのか明確になった」というコメントをネットを通して読み、同じくアンチ銀杏だったはずの野田努の「峯田和伸には江戸アケミ的なところがあると思った」という発言を直に聞いた。その過程で私は、彼らが00年代の日本においてもっとも重要なロック・バンドであることを再認識したのだった。いま、こんなにも議論を呼ぶバンドが、日本に他にいるだろうか。

 そして、この猥雑とした映像に辛うじて整合性を与えているのが、ラストにほんの一瞬だけ映るライヴ・シーンである。血と汗と涎まみれになって演奏を終えたメンバーたちは、それでも満足できないのか、まず、ギターのチン中村が天井に上がっていく垂れ幕に飛びついてぶら下がり、あわやというところで手を離し、落ちて来る。それをきっかけにベースの我孫子真哉が、続いて峯田が、次々とフロアに飛び込んでいく。と、突然、映像は真っ暗になる。そこに、Youtubeをぼんやり覗き込んでいた自分の顔が写り、人は我に変えるだろう。いま、画面のなかで喋っていた醜い奴らと自分は同じなのだと。それは、現代日本の優れた演劇やコンテンポラリー・ダンスが、かつてのように肉体の可能性を模索するのではなく、むしろ、肉体の限界性を表現することで、現代を描写するのと同じヴェクトルを持っている。当たり前の話、人間は飛ぶことはできないし、ロックは世界を変えることはできないのだ。銀杏には『僕たちは世界を変えることができない』というDVDがある。そのタイトルは決してシニシズムではなく、むしろリアリズムである。願わくば、この批評性を楽曲だけでも表現して欲しいと思うが、モダンなロックンロール・バンドとしては、自身の肉体や人生までも含めたありとあらゆるメディアを通じて、メッセージを発信していくのは、私はありだと思う。最近のPVでは、南アフリカはケープタウンのホワイト・トラッシュたちによるクワイト・ユニット、ダイ・アントワードの「ゼフ・サイド」と並ぶ衝撃だった。これら、地理的に遠く離れているだけでなく、音楽性もかけ離れた2本の作品に、唯一の共通性が見出せるとしたら、それは、自分たちを取り囲む状況に対する批評性ではないだろうか。そう、批評こそは、地獄に丸腰のまま落とされた私たちにとっての、唯一の武器なのである。

文:磯部 凉

Yossy Little Noise Weaver - ele-king

 ヴァンパイア・ウィークエンドと音で渡り合えるバンドが日本にいることをご存じか。そう、ヨッシー・リトル・ノイズ・ウィーヴァー(YLNW)である。彼らの3枚目のアルバム『Volcano』は、カリブ海の音楽とミュータント・ディスコのブレンドで、エゴ・ラッピンとザ・ゴシップ・オブ・ジャックスによるあの素晴らしい『EGO-WRAPPIN'AND THE GOSSIP OF JAXX』に続くかのようにポスト・パンクのダンス・サウンドを演奏する。

 実際のところ、YLNWは大雑把に言って日本のレゲエ・シーンから生まれている。中心にいるのは元デタミネーションズ/元ブッシュ・オブ・ゴーストという経歴を持つキーボーディストYossyとトロンボーン奏者のicchieで、またメンバーには菅沼雄太(エゴ・ラッピン他)やThe K(元ドライ&ヘヴィー)もいる。2005年のデビュー・アルバム『Precious Feel』はキングストンの海辺で録音されたエレクトロニカであり、隙を見てはカンの『フロー・モーション』に接近する。2007年の『Woven』はジャッキー・ミットゥーがフォー・テットと一緒にスタジオで作ったミュータント・レゲエである。そうした過去の美しい2枚の抒情主義と打って変わって、3年ぶりの『Volcano』は、リスナーの身体をより大きく、波のように動かせる。

 "スーパー・ラビット"はトーキング・ヘッズがジャマイカ旅行したような曲だ。あかぬけたリズムとディレイの効いたスカのトロンボーン、そして滑らかなエレピのコンビネーションが甘い夢を紡いでいく。"ピース"はプラスティックスのカヴァーで、今回のアルバムにおけるベスト・トラックのひとつ。4/4ビートとジャジーな鍵盤とスカの香気が心地よいミニマル・ポップである。タイトなヒップホップ・ビートを取り入れた"ウォッシング・マシン・ブルース"やドリーミーな"ドラム・ソング"は過去2枚と連なるバンドの抒情性がよく出ている曲で、"ヴォルケーノ"は日差しを浴びたミュータント・ディスコ、"ペイル・オレンジ"はラテンの陶酔に包まれた温かいスロー・ダンスだ。

 こうした彼らの音楽は、とにかくキュートだし、耳障りの良さゆえにその背後にある挑戦が見過ごされがちだが、彼らの目的はジャマイカとディスコを並列させることでもはなく、ワールド・ミュージックのレトリックでもない。それは絶えず変化しながら新しいミュータント・サウンドを創造することに違いない。

 ここ数年続いている欧米のポスト・パンク・リヴァイヴァルとはまるで共振することのない日本の音楽シーンだが、興味深いことにレゲエ系のシーンではそれが起きている、起きていくかもしれない――そう思わせるYLNWの新作で、バンドはこの路線を継続しながら、初期のエレクトロニカ・スタイルをあらためて加味すべきである。何故なら、YLNWの輝きはこの1枚に限ったことではないのだ。

Zinc - ele-king

 DJジンクは彼がハウスに回帰した理由について語る。「初期のジャングルというのは、ハウスと同じエネルギーを持っていた。同じテンポで、同じエレメンツだった」――昨年の7月28日、奇しくも筆者の誕生日に『ガーディアン』はDJジンクの提唱するクラック・ハウスについての記事を掲載している。アシッド・ハウス、アンビエント・ハウス、メタル・ハウス、ラガ・ハウス、プログレッシヴ・ハウス、ディープ・ハウス、ファンキー・ハウス、テック・ハウス、ミニマル・ハウス、マイクロ・ハウス、エレクトロ・ハウス、フィジット・ハウス......、そしてクラック・ハウス。まあ、なにはともあれ、ドラムンベース界のパイオニアのひとりがハウスに向かったとは興味深い話だ。

 DJジンクといえば、ジャンプ・アップ・ジャングルのアンセム"スーパー・シャープ・シュート"によって傑出した経歴を築いた人物である。が、彼は2007年にそのジャンルに背を向けている。そしてDJジンクは2008年を息子と一緒に過ごしながら自身が前進するための術を思案したという。そこで生まれたのがクラック・ハウスである。DJジンクは初期のジャングルにしばしば見られたような4/4ドラム・パターンをブレイクビートにブレンドする。そのドライヴするベース音、くらくらするシンセ音、歌と陶酔、それは90年代初頭のレイヴのヴァイブを想起させる。そしてそれはプロデューサーのルーツをより鮮明にする。女性MCのノー・レイを起用した彼の"サブマリンズ"や"キラサウンド"にはジャンプ・アップ・ジャングルと同じようなエネルギーがあるのだ。彼は彼がかつて恋したハウスというルーツに立ち返ってジャングルを再発見したのである――と同紙は記している。

 で、まあ本当にその通りなのだよ、これが。昨年末にリリースされた10トラック入りの『クラック・ハウスe.p.』は90年~91年あたりのレイヴ・サウンドの現代版だと言える。これはノスタルジーから来たというわけではない。同紙の取材で、ジンクはこの再発見の契機となったのがスウィッチとシンデンだったことを明かしている。フィジット・ハウスのベースラインがジンクを20年前の倉庫の熱狂へと導いたというのだ。また、同紙でジンクはダブステップへの複雑な気持ちも告白している(UKガラージがドラムンベースを食ってしまうかと心配されたが、むしろ現在はダブステップに有能な新人が持っていかれている――そうだ)。いずれにしてもUKダンス・カルチャーの競争意識、しのぎ合いが新しいスタイルと新しい呼称を生み出しているわけだ。クラック・ハウスはたしかに面白い。シンプルな4つ打ちとベースラインの絡みにしても、ヴォイス・サンプリングにしても、レイドバックしているというよりもダンス・サウンドとしての説得力の強さを感じる。もちろんでっかい倉庫で浴びるように聴きたいけれど、家で流しているだけでも気分は良い。

 さて、2010年はUKファンキーの年だと言われているけれど本当にそうなるのだろうか。だが、その前にまだまだダブステップの快進撃も続きそうだ。スキューバのセカンド・アルバムも良かったし......。

CHART by JET SET 2010.03.08 - ele-king

Shop Chart


1

V.A.

V.A. 20 YEARS OF STRICTLY RHYTHM MIXED BY DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI »COMMENT GET MUSIC
Strictly Rhythmから豪華すぎるアニヴァーサリー・アイテムが到着!DJ NoriとTohru TakahashiによるミックスCDに加えて、国内の気鋭なクリエイター陣が本作のためにRe-edit、Remixを施した未発表曲を収めた3枚組。

2

SOMBRERO GALAXY

SOMBRERO GALAXY JOURNEY TO THE CENTRE OF THE SUN »COMMENT GET MUSIC
Lovefingers新レーベル"ESP Institute"第1弾!!Discossessionのキーボード奏者Jonny NashとオランダCBS一派のTakoによる新ユニット、Sombrero Galaxyによる待望の1st.シングルが、噂のLovefingers主宰ESP Institute第1弾として登場!!

3

JOY ORBISON

JOY ORBISON SHREW WOULD HAVE CUSHIONED THE BLOW »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆ダブステップ・シーンから登場した超新星による美麗特大名曲!!デビュー曲"Hyph Mngo"が特大アンセム化、Four Tetの特大ヒット"Love Cry"でもリミキサーとぢして大抜擢された超新星が、待望過ぎる3rd.12"をリリース!

4

MENDO

MENDO ENCANTOS EP »COMMENT GET MUSIC
絶好調Cadenzaからの新作!!Michel Cleis"La Mezcla"の大ヒットと共に、近年のトレンドとなったアフロ・チャント系トライバルなモダン・ミニマルハウス作品!!

5

LINDSTROM & CHRISTABELLE

LINDSTROM & CHRISTABELLE BABY CAN'T STOP PT.2 »COMMENT GET MUSIC
Prins Thomas & Idjut Boysという鬼に金棒なリミックス!!アルバム国内版CDに先行収録されていてシングルカットを待ち望んでいた方も多かったはずのPrins Thomas、idjut Boysリミクシーズが遂に登場!!

6

QATJA S

QATJA S KROM EP »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆これが当ジャンル'10年の一推しサウンド=フレンチ・テックだ!!当店お馴染みのベルジャン・ジャンパーDr. Rudeとのコラボ12"もリリースしているフレンチ・テック・マスターQatja Sによる特大傑作がこちら!!

7

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT

ANDREW CEDERMARK / FAMILY PORTRAIT SPRIT »COMMENT GET MUSIC
Real Estate好きは絶対泣きます。Underwater Peoplesからの素晴らしすぎスプリット!!特大スイセン盤★Real EstateをリリースしたUnderwater Peoplesからの4枚目。Real Estate~Ducktails~Julian Lynchなロウファイ・ビーチ・ポップ・スプリット。完璧です!!

8

DOMINIK EULBERG

DOMINIK EULBERG DATEN UBERTRAGUNGS KUSSCHEN (REMIXES) »COMMENT GET MUSIC
美麗テックからディープなダビー・ミニマル・アレンジまでの好リミックスEP!!先ごろMassive Attackの過去名作"Taerdrop"のリミックスを手掛け話題となったMinilogueがリミックスを担当!!

9

DJ SPINNA

DJ SPINNA THIRST / SUMMER MADNESS »COMMENT GET MUSIC
これは間違い無し!その通りSide-B"Summer Madness"使いです!定番クラシック・ネタKool& the Gang"Summer Madnnes"をうまくバラしたSpinna印なトラックに4th・アルバムにも参加していたNYのラッパー、Fresh Daily、Daniel Josephをフューチャー。

10

GAPE ATTACK!

GAPE ATTACK! BURN THIS CITY »COMMENT GET MUSIC
どんどん出てくるBlank Dogsフォロワー・バンド。この人たちも超最高です!!シアトルのシンセ・パンク・トリオ、Gape Attack!のデビュー・7インチ!!ノイジーなダンス・ビートがCold Caveにも通じるキラー・チューン。絶対注目です!!

Nice Nice - ele-king

 ナイス・ナイスの音楽は非常にヴァーチャルな想像力を刺激する。そこで体験すること、見ることや聞くことは、この目この耳この手で感じることではない。それはなにかもっと間接的なもの、まるで自分自身の......アバターが体験しているもの、そんな気がしてくる。よく設計された音世界。隙間なくめぐらされた打ち込みの音ひとつひとつがこの世界のねじ釘だ。トライバルで多層的なビート、和太鼓を思わせるタムの乱れ打ちはその動力源、モーターだ。たとえば映画『サマー・ウォーズ』の舞台、あの可愛らしくクリーンにデコレートされた二次元の惑星を思い浮かべるとしっくりくるかもしれない。国境や国籍が一旦キャンセルされ、距離という概念が存在しない仮想世界に、あらゆる人種が思い思いの姿かたちで入り交じって生活している。鳥が飛び、車が走り、人が繋がり、金が動く。現実世界さながらの圧倒的な重層性と複雑な構造を抱えて稼働する、擬似世界。

 ギタリストとパーカッショニストによるポートランドのエクスペリメンタル・デュオ、ナイス・ナイス。活動自体は90年代半ばから続いているようだ。ファースト・アルバム『クローム』が〈テンポラリー・レジデンス〉からリリースされているが、それでさえ2003年に遡る。そしてふたりは2006年〈ワープ・レコーズ〉とサイン。バトルスの発掘以来さらに新たなフェイズに突入し、IDMという言葉の限界を拡張しつづける〈ワープ〉が2010年に提示するものは何か? 本作は、そうした期待と注目をもって迎えられたセカンド・フルということになる。

 擬似世界と言ったが、カオティックでありながらも緻密な重層性を抱え込んだナイス・ナイスの音には、だからメロディ、主題というものがない。そもそも主体がない。とにかくあらゆる効果音やらミニマルな反復を続けるギターやら打楽器やらが洪水のように渦巻いて、とことんハイパーに運動しつづける。音のインフレーションが止まらない。ある特定の主体の眼差しから捉えられた世界の描写(それがメロディ、主題というものだ)ではなく、誰かの意図や恣意では決定されない、世界の設計図=曼荼羅の完成を志向しているというふうだ。もちろん本作からはヴォーカル入りの曲もあるし、メロディらしきものもあるが、それは定点を持たず、どこからか立ちのぼった祝詞、礼拝の掛け声ででもあるかのよう。

 「身体性」という言葉で指摘されることの多い彼らのサウンドだが、実際に運動するのは身体ではなく脳だ。身体はむしろ固く緊張する。そして脳の奥が広がる。そう、踊り、動きまわっているのはアバターたちなのだ。世界はじつにノイジー。私はそこでかわいいカモメのような姿で日がな過ごすだろう。ようこそ擬似世界「エクストラ・ワウ」へ。入場にあたってはアカウントを取得し、ログインすることが必要です。パスワードを入力してゲートが開く、"One Hit"。大きな象に乗ってパレードが進む、"A Way We Glow"。ストリートでハリネズミと巨人のケンカがある、"On And On"。おや、雨だ、"See Waves"......。

 リアルの底が抜けた現在という時間を祝祭的に描き出す、彼らもまた新しいリアリティに生きる人びとのひとりだ。アーティスト写真がどれもノー・エイジのような、丸腰のインディ・ロッキン・テロリストといった雰囲気をたたえているのもいい。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

 プラスティック・オノ・バンドが、去る2月16日(木)に〈BAM〉で再結成しプレイした。「●●がゲストに来る」......など、私のまわりでもさまざまなうわさが回っていて、ショーはあっという間にソールドアウト! あまりにも早くて、この1日前にはリハーサルをパブリックに公開するショーも追加で催された(こちらもかなり競争率が激しかったらしい)。

プラスティック・オノ・バンド
プラスティック・オノ・バンド!
(photo: Kevin Mazur/ Wire Image )

このショーは、現在のオノ・バンド・メンバー(コーネリアス、ショーンレノン、本田ゆか)に加え、曲ごとに豪華なゲストが登場した。エリック・クラプトン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとキム・ゴードン、ポール・サイモン、ベティ・ミドラー、マーク・ロンソン、シザー・シスターズ、細野晴臣......この上ない豪華なショーである。年齢(77歳!)をまったく感じさせないパワフルなパフォーマ ンスはもちろん、彼らをこの場所に一同に集めることができるYoko Onoの存在はさすがというしかない。このショーを見た人は一同に「彼女はすごい!」と言うし、このゲストたちが、最後に一列に並んであいさつした時は、ニューヨークにおけるYoko Onoと言う存在を重要さを再確認した。

mi-gu
mi-gu
Ghost Of A Saber Toothed Tigers
Ghost Of A Saber Toothed Tigers

 ところで、私が今回ピックしたいのは、数日後に行われたmi-guのショー。mi-guはコーネリアスのドラマー、あらきゆうこさんのバンドで、昨年は〈HEARTFAST〉のCMJショーケースにも出演して頂いた。ショーン・レノンとガールフレンドのバンド、Ghost Of A Saber Toothed Tigers(Sean Lennon & Charlotte Muhl)の前座として出演。ギターのシミーとドラム&ボーカルのゆうこさんの息もぴったりなショーは、数日前のプラスティック・バンドと比べるとこじんまりして、タイプは違うが、雰囲気がとてもよく、観客もアットホームな感じで、声援を送ったりして盛り上げる。観客には、坂本龍一の姿もあり、私の友だち(アメリカ人男)は大興奮して、一緒に写真を撮ってもらったりしていた。最後の2曲にはゲストとしてショーン・レノン、本田ゆか、そしてコーネリアス本人が出演。そして次のバンド(Ghost~)が登場すると、先ほどと、メンバーがシャーロット以外全て同じ! ただ、そのシャーロットが、この世のものとは思えない程かわいい。ショーン・レノンが自慢したくなる気持ちもわかるが、かわいいだけでなく歌も歌えるしベースも弾ける。基本ショーンとシャ―ロットふたりのバンドなのだが、今回はメンバーがいたのでバンド編成になっている。フォーキーなロックで、サウンド的にはショーンのソロに女の子ヴォーカルが入った感じだ。

 2月、NYはファッションウイークでもある。うちの近所のウィリアムスバーグにもファッション・ショーが存在する。NYファッション・ウイークエンドに対抗したウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)だ。ローカルの若いデザイナーたちが斬新なアイディアや手法で洋服を作り、個性あるファッション・ショーを作っていく。 洋服はもちろんのこと、とくに面白いのはデザイナーのプレゼンの仕方。NYファッション・ウイークのように、洋服がメインで、モデルがキャット・ウオークをするだけではなく、こちらは、どちらかというとパフォーマンスがメイン。

フラウク
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドにおけるフラウク
トータル・クラップ
トータル・クラップ
ロボット・デス・カルト
ロボット・デス・カルト

 今回の2010年春夏のショー は、WFWでは初のサンフランシスコのデザイナーで、テクノロジーv.s.自然をテーマにしたライン、フラウク、グラムとパンク、アヴァンギャルドをミックスしたライン、トータル・クラップ、Lace & Voidをテーマにし、普段も着れるドリーミーさが売りのデシラ・ペスタ、主催者のラインであるKing Gurvy等々......。

 個人的にいちばん好きだった、ルフェオ・ハーツ・リル・スノッティはリーズ・ア・パワーズのミュージック・ヴィデオ"イージー・アンサーズ"のデザインも担当していて、メンバーはモデルで登場したり、アフター・パーティではDJをしたり大活躍。2010年の冬をイメージした野生の冒険のキャラクター、ガチョウ、イルカ、カエルをモチーフとし、カラフルな色を切り貼りしてリサイクルした洋服を着たモデルたちがラッパーに合わせてダンス・パフォーマンスを展開。ホットドッグやアイスクリームを、ウエブサイトの入ったフライヤーと一緒にオーディエンスに投げたり......。

 アートギャラリーでもある、シークレット・プロジェクト・ロボットのライン、ロボット・デス・カルトは、モンスター(ドラキュラ、フランケンシュタインなど)メイクのモデルたちが、ロボット・デス・カルト印の旗を持って、ステージに突如現れ大騒ぎ、そしてすぐに去る。5分ぐらいのショーだったが、存在感とインパクトは圧倒的。

 どのデザイナーもいまあるものを使い、いろんなアイディアを組み込んで、新しいものに変えていく。レイヤーだったり、コラージュだったり、リサイクルだったり。NYファッションウイークと規模はまったく違うけれど、DIY精神の面白いファッションショーだと毎回感心する。

 最後に、このファッション・ショーの主催者のアーサー・アービットに話を訊いてみた。彼は、元ツイステッド・ワンズという名前で、ライトニング・ボルト、ブラック・ダイス、ヤーヤーヤーズ、ライアーズなどを初めてウィリアムスバーグでブッキングした人で、最近では、DJ、イラストレーターとしても活躍している。また、普段もスーツでびしっと決めている人だ。


RNY:ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンド(WFW)はいつ、どのようにはじめたのですか。

アーサー・アービット:3年前、これから出てくる若手デザイナーにプラットフォームを作ってあげたいと思った。

RNY:NYのファッション・ウィークとは、どの辺が異なりますか?

アーサー・アービット:デザイナーたちはデザインをプッシュすること、それを創造する工程にとくに興味を持っていて、ビジネスは透明になっている。

アーサー・アービット
ウィリアムスバーグ・ファッション・ウイークエンドの主催者のアーサー・アービット

RNY:当日いろんなメディアのインタヴューを受けていましたが、WFWはどのようにプロモートしているのですか。

アーサー・アービット:いつも同じだけど、主要なメディアやブログサイト、ファッション業界の人たちだね。

RNY:WFWで何が大変で、何が楽しみですか。

アーサー・アービット:いまは楽しいことしか思いつかない。これが自分のやりたいことだからね。

RNY:あなたは主催者でもあり、デザイナーでもありますが、あなたの洋服ライン「King Gurvy」を紹介して下さい。

アーサー・アービット:エクスペリメンタル!

RNY:2010年おすすめのデザイナーは。

アーサー・アービット:フラウク(Flawk)だね!

CHART by TRASMUNDO 2010.02 - ele-king

Shop Chart


1

STRUGGLE FOR PRIDE『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD

STRUGGLE FOR PRIDE 『FELEM 15TH,AUG,2009.』LIVE DVD »COMMENT

2

SKUNK HEADS

ECD 『ライブ30分』CD-R »COMMENT

3

HAIR STYLISTICS

CE$ 『Steal da city』 »COMMENT

4

Dj Killwheel a.k.a.16flip

STRUGGLE FOR PRIDE BRAND NEW T-SHIRTS »COMMENT

5

SFP

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA) 『DUB CITY OF CURSE』 »COMMENT

6

UG KAWANAMI

UG KAWANAMI 『DROP SCENE』 »COMMENT

7

LVDS CAP

CARRE 『SONIC BOOM』 »COMMENT

8

ELEVEN(SEMINISHUKEI)VS BLACKASS(M.N.M/MEDULLA)

MEDULLA CAP »COMMENT

9

PAYBACKBOYS SWEAT

K-BOMB 『TRIPLE SIXXX!-OLIVE OIL REMIX-』 »COMMENT

10

Eternal B

Eternal B 7inch »COMMENT

[Techno] #3 by Metal - ele-king

1 Clouds / Timekeeper --Dave Aju Remix--- | Ramp Recording(UK)

 いやー、本当に、ぶっ飛びすぎ!......てか、笑えてくる。壮大な"エイリアン・ミュージック"に出会ってしまったのかもしれないな。黒光りするシンセが痛いくらいにまぶしいぜ。

 ハウスを借り物にブラック・ジャズの更新をはかるサンフランシスコの奇才――それがデイブ・アジュだ。ベルリンのマイマイやモントリオールのギヨーム・アンド・ザ・クーチュ・デュモンツのリリースで知られる〈サーカス・カンパニー〉を拠点にしているため、いわゆるモダン・ミニマル/ディープ・ハウスの文脈から語られることが多いプロデューサーだが、彼のポテンシャルはそんなものではない。あのマシュー・ハーバートが期待をよせるヴォイス・パフォーマーのひとりでもある。

 少し振り返ろう。2007年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされた「Love Allways」はアリス・コルトレーンに捧げられたものだった。ルチアーノのリミックスが収録された、2008年に〈サーカス・カンパニー〉からリリースされたシングル「Crazy Place」はフロアヒットした。同年にリリースされた自身のスキャットとヴォイス・サンプルのみで作られたアルバム『Open Wide』はビート・ポートの年間ベストのうちの1枚にも選ばれた。サン・ラー、セロ二アス・モンク、バニー・ウォーレル、カール・クレイグ、グリーン・ヴェルヴェット......これらは彼がリスペクトするアーティストのほんの一部だが、彼の曲には必ずと言っていいほどブラック・ジャズの意匠が散りばめられている。

 そんな才人が、〈ディープ・メディ〉などからサイケデリックなエレクトロニカ/ダブステップをリリースするヘルシンキのユニット、クラウズが2008年にイギリスの〈ランプ・レコーディング〉に残したトラックをハウスに再構築する。オリジナルはメランコリックなヴィブラホンに優しいトーンのアコーディオンが絡むヒップホップ調のトラックで、ラス・ジーによるリミックスは当時コード9やフライング・ロータスのプレイリストにもあがり、ダブスッテップの側からの支持も得ていた。

 原曲のアコーディオンとジャジーなフィーリングは生かされているものの、もはやオリジナルといってもよいほどの出来だ。冒頭から入るローファイでぎらついたシンセサイザーの音色はまるでシカゴのジャマール・モスか、あるいは初期のラリー・ハードを髣髴とさせる。単純で無機質なアジッド・ハウスかと思えばブレイクで突如モーダルなジャズに変化して、原曲で使われているアコーディオンの調べがゆったりと流れだす。構成、展開もドラマチックで面白い。加工されているためわかりづらいが、シンセのリフを良く聴いてみるとファラオ・サンダースとレオン・トーマスがモダン/フリー・ジャズの最重要レーベル〈インパルス〉に残した名曲"The Creator Has A Master Plan"のピアノが元ネタになっていることがわかる。この曲もまさにモダン・ミニマルのふりをしたブラック・ジャズというわけだ。彼はあらかじめクラブを体験してしまったがためにハウスをやっているアーティストであって、前の世代とは逆のプロセスを辿ってジャズに行き着いている。

2 Mirko Loko / Seventynine --Carl Craig&Ricard Villalobos Remix-- | Cadenza(Ger)

 DJワダの〈イグナイト〉でのアンビエント・セットを終え、天狗食堂で開かれていたDJサチホがオーガナイズする〈リリース・シット〉に駆けつけると、週末の朝に特有のとても良い空気が流れていた。DJはサチホ~スポーツ・コイデ~イナホ~リョウ・オブ・ザ・デックス・トラックスの面子でのローテーションだった。グルーヴがキープされたまま新旧のディープ・ハウスがたんたんと続く。朝の9時をしばらく過ぎると天狗食堂のイナホがロングミックスを聞かせる。足の運びが軽やかだ。スネアに引っかかりがあるが、スマートなミ二マル・ハウスがじょじょに子供の声と水の音、透明感のあるシンセとともに広がっていく。誰も声を上げず首を振りながらその音楽をきいていた。そのトラックここに挙げた。ミルコ・ロコのリカルド・ヴィラロヴォスによるリミックスである。

 レイジー・ファット・ピープルのメンバーとして〈プラネット・E〉からヒットを飛ばし、ソロでは現在のプログレッシヴ・ハウスのリーディング・レーベルであるロコ・ダイスの〈デソラ〉からも傑作を放った期待の新星ミルコ・ロコ。その彼のリミックスがルチアーノの〈カデンツァ〉からリリースされた。リミキサーは言わずとも知れたデトロイトのテクノ・ゴッド、カール・クレイグとベルリンのテクノ・ゴッド、リカルド・ヴィラロヴォスである。

 カール・クレイグのリミックスはプリミティヴな質感の力強いダンス・トラックで躍動感のあるパーカッションにローランドの名器JUNOの音色と思えるシンセが絡んで、全体がじょじょにビルドアップしていく。まるで音のなかに吸い込まれるようだ。美しく、しかも引きが強いトラックだ。彼が何枚かに1枚だけ見せる本気のトラックなのだろう。デリック・メイの名曲"To Be Or Not To Be"(ゴースト・イン・ザ・シェルのサントラに収録)にも近い感覚とでも言えよう。

 いっぽうリカルド・ヴィラロヴォスのリミックスはメランコリックで美しいアンビエント・ハウスだ。スティーヴ・ライヒのミニマリズムを彷彿とさせるような自然音と子供の声が螺旋を描いていく。リカルドらしい抜き差しとダブ処理も効果的だ。ジェームス・ホールデンによって解体されたプログレッシヴ・ハウスのドラマ性とスピリチュアリティはこの曲をきっかけに見事に復活を遂げるのではなかろうか。両面とも大事に使いわけることができる盤だ。

3 Badawi / El Topo | The Index(USA)

 エルサレム出身でニューヨーク在住のパレスチナ人パーカッショニスト、ラズ・メシナイが率いるバダウイのニュー・シングルを紹介しよう。ラズ・メシナイとは......その名前とバダウイ、サブ・ダブ、ベドウィンといった4つの名義を使い分け、DJスプーキーのホームである〈アスフォデル〉、ビル・ラズウェルのリリースでも知られる〈リオール〉、DJワリーが率いる〈アグリカルチャー〉等から数々の傑作を放ってきた男だ。ニューヨークのアンダーグラウンドを象徴するアーティストであり、ユダヤの政治と宗教をテーマにしたサウンドと彼の芸術、そしてその超絶的なパーカッションのテクニックは多方面で高い評価を得ている。最近ではクロノス・カルッテットやジョン・ゾーンとの競演も話題になった。

 今回は自身が立ち上げた〈ザ・インデックス〉からの第1弾である。昨年リリースされたコード9とのスプリットで見せたダブステップへのアプローチはさらなる進化を遂げ、"ElTopo"では抜けの良いタブラとばっつり出た低音が絶妙にマッチしたダブステップを展開している。そして"Dstryprfts"のリミックスではシャックルトンがブライアン・イーノのリミックスとはまた違うところで興味深いトラックを響かせる。〈パーロン〉からのリリースでみせたミニマルへのアプローチはさらに研ぎ澄まされ、キックとハット、メロディではなく飛び音として使われるシンセとノイズがかったアシッド・ベースがトランシーにうごめき、時折入るディレイがかかったシンバルがリスナーの意識を遠くに飛ばす。原曲からのサンプルとトースティンによるポエトリーが最小限にキープされたグルーヴのあいだでゆらめいている。僕もよく経験することだが、暗闇のなかで右も左もわからなくなったユーザーに襲い掛かる強烈なバッド・トリップである。

 リッチー・ホーティンが2003年にリリースした"Closer"をダブステップに変換したようでもある。アシッド・ハウスのオリジンであるフューチャーの"Acid Tracks"そしてその裏面に収録されている"Your Only Friend"にも共通するような独特のムードを持った曲でもある。まー、手短に言うとこの曲こそが最先端のミニマル・テクノであると僕は思う。

intervew with Breakage - ele-king

「ダブステップ聴いた?」って訊かれて、「いや、そこまでちゃんと聴いてないけど」って答えたけど彼女が「マーラがそのダブステップの重要人物のひとりなんだよ」って教えてくれたんだ「へぇー」って答えたら「へぇー、じゃなくてマーラって彼よ、マリブ、あなたたち学校一緒だったでしょ!」って言ってきたんだ。

 俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている
 音楽がすべてだ
 俺も君たちも音楽が大好きなんだ
 だから君たちがここにいて、
 俺もかけるのが大好きだからここにいる
 君たちが来なかったら俺はプレイができない
 もっとも重要なのは音楽それ自体
 だからスピーチはここら辺までにする
 いま聴いてもらったのは、
 ジャマイカから来たいちばん熱いハードコアなダブプレート
 ここからテンポとスタイルを変えていこう
 ひと晩通して、一緒に曲を変えて、聴いて、
 楽しもう David Rodigan"Hardcore Music"

 『ファウンデーション』は爆弾だ。この爆弾を東京のあらゆる場所にこっそり仕掛けてやりたい。そしていっせいに爆発させてやろう。情け容赦なく、ロンドンの貧民街でシェイクされ、爆発し続けるハードコアのあらゆる要素が含まれているこの爆弾を。激しい地響きが街をひっくりかえし、火傷しそうなほど熱いコンクリートが最高のダンスフロアとなるだろう。

 ブレイキッジのセカンド・アルバム『ファウンデーション』を聴いていると、この時代のUKのダンス・カルチャーの活気というものが伝わってくる。スピーカーから聴こえる音は体内に注入され、そして身体を熱くする。キングストン経由のベース・サウンド、ダブ、ジャングル、グライム、ダンスホール、あるいはハーフ・ステップや2ステップやダブステップ......まるでビートの見本市のようなこのアルバムには、素晴らしいゲストたちも参加している。大御所ルーツ・マヌーヴァをはじめ、ダブステップのスター、スクリームとキャスパ、グライムのMCのニューアム・ジェネラルズ、昨年メジャー・デビューした女性シンガーのザリフ、そしてブリアル(!)。

 リリース元は、グライムに多大な影響を与えたイノヴェイター、シャイ・エフェックスのレーベル〈デジタル・サウンドボーイ〉。アルバムの冒頭ではUKでレゲエをかけ続けている伝説的なラジオDJ、デヴィッド・ロディガンがスピーチをしている。「俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている......」

『Foundation』はこれまでのあなたの10年のキャリアの集大成的なアルバムなのでしょうか?  

 完全にそうだよ。いままで伝えようとしてたこともすべてこのアルバムに凝縮してるね。過去、現在、未来全部含めて。曲によってははじめた当時の音のものもあれば、いま向かってる方向の音のものもあるから、そうだね、集大成だよ。

ジャングルもダブステップもグライムも混ざっているし、ダブやガラージもある。MCも出てくるし、ダブステップのプロデューサーとの共作もある。でも、最終的にはジャングル色が強いアルバムですよね。シャイ・エフェックス(Shy FX)の〈Digital Soundboy Recording〉からのリリースだからそうなったんでしょうか? それともやはりジャングルがあなたの帰る家だという認識なんでしょうか?

 両方だね。俺もシャイも、テンポとかbpmとかそういうくくりは関係なく、基本的にはジャングルを聴くんだよ。ジャングルのテンポの曲じゃなくてもその曲のバイブズの本質にジャングルがあると思ったら聴く。暴力的な要素とか感情、ディープなだけじゃなくて人を動かす力がないと駄目なんだ。基本的にはジャングルしか作れないんだよ。自分のキャリアのなかでもジャングルしか作ろうとしてないよ。俺のドラムンベースの曲やアルバムのなかでジャングルを感じてくれたのは嬉しいよ!

"Hard"では、ジャマイカ起源のベース音楽の変遷について喋っていますよね。スタイルは違っても同じだと。これはあなたの主張でもあるんですか? つまり、ブレイキッジの音楽もジャマイカ起源のベース音楽の現在形であるという。

 そうだね、俺はダブにはスゴく影響されてるからね。そして"Hard"における(デヴィッド・)ロディガンのあのスピーチを聴いたとき、プロデューサーとしてもそうだけど、DJとしても俺の姿勢を反映してると思った。デカい派手なステージ・ショーをやるわけでもないし、つねに腕を振り回して踊りまくるわけでもなく、良い曲をかけるだけなんだ。自分が良い音楽だと思うものをかけるためにその場に居るんだ。俺が見せたり語るより音楽に語らせたほうが良いんだよ。「俺たちはハードコア・ミュージックの最新版を聴いている。すべてが音楽だからだ。君たちは音楽が大好きで俺も大好きなんだ。君たちは音楽を聴きに来て、俺はかけるのが大好きだからここに来た。君たちがいなければ俺はかけられない......」、あのスピーチ全部が本当その通りだと思うんだ。俺もロディガンを聴いて育ったからね。そして彼の声を使うんだったら意味あること言ってるフレーズを使いたかったんだ。

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あなたの歴史を振り返ってもらいたいんですけど、生まれは?

 バークシャー州のスラウっていう町で生まれたんだ。5~6歳ぐらいのときにバッキンガム州のバッキンガムに引っ越した。そこで乳兄弟が来て、彼がダンス・ミュージックについて教えてくれたよ。遠い昔さ、プロディジーの『エクスペリエンス』が出るちょっと前とか。91年、92年で10歳ぐらいのときかな。その当時にジャングルがはじまり出してて、その頃にジャングル聴き出したんだ。それが俺の育ちかな。

そこからどうやってジャングルのシーンと結びついたのですか?

 多くの人も一緒だと思うけど、不思議にもいちばん最初に聴いたジャングルの曲がシャイの"Original Nuttah"だったんだ。当時学校に月曜日に行って、誰と話してもあの曲が話題だったよ。引っ越したりしてたからそのときは俺知らなくて、新しい家に入れる前にしばらくお姉ちゃんの家に泊まってたんだけど、彼女の家でMTVか何かで流れてて......。学校でみんなが歌ってたからすぐわかって「これがみんなが話してた曲なんだ」と思って、で、聴いたら衝撃受けたね。ハードコアを聴いたりして似た曲は聴いたことはあったけど、あれはまったく新しく聴こえたんだ。ハードコアと同じ基礎だったけどレゲエ色が強くて、やられたね。あの後どういう音楽が好きかはっきりわかったね。
 実は昔ギターを弾いてて、その数年後、14歳ぐらいのときかな、ギターをさらに勉強するために音楽芸術学校にいったんだ。そこではいろいろ違う音楽をやらされたり、楽譜を読めるようになる勉強とか、他の楽器の基礎を学んだりしてたんだけど、そのなかでパソコンの使い方の授業もあったんだ。ある日その授業でジャングルの作り方がわかったんだ。"Original Nuttah"とか"Terrorist"がどうやって作られたのか理解できたよ。ああいう曲を作りたかったら、このパソコンの使い方を勉強しないといけない、と思ったんだ。家には4トラック、キーボード、ドラムマシンを持っていて、それで作ろうとしてたんだけどなかなかうまくいかなくて、彼らが使ってるドラムが本物のドラムを使ってるのかすらわからなくて、全部ドラムマシンで叩いてるんだと思ってたんだ。すごいドラムマシンだな!って思ってたんだ(笑)。それでCubaseとそこにあったサウンド・モジュールを完璧に覚えて、その学校の先生がびっくりするぐらい使えるようになったよ。その学校にはスタジオもあったんだけど、年齢制限があって入れなかった。それでもその先生がサンプラーをパクって来てくれて、別室に学校が使ってないパソコンとサンプラーを設置してくれて他の生徒が使えないようにしてくれたんだ。だから毎日1時間ぐらい早く行って曲作って、授業行って、昼飯のときもそこで曲作って、授業終わった後も先生が帰るまでずっと曲作ってたよ。月曜日から金曜日まで毎日ね。そして土日はほぼ毎週のように従兄弟の家に行って、彼が持ってたトラッカーのソフト、FastTracker 2、をいじってたんだ。そのうち自分のパソコンも買ってひたすら作るようになった。まだ全部がどうやって形になるか学んでる最中だったけど、最初のリリースは17歳ぐらいのときだった。結局その学校退学になったけどね(笑)。で、その次の専門学校のコースも落ちたんだけど(笑)。だからいま音楽で食えてることがおかしく思うんだよね。もっと面白いのが、来月その専門学校に講演者として招かれてるんだ(笑)! 最初呼ばれた時に「元学生としてぜひ話をしに来て欲しい」って言われて「元学生って、自分らの学校は俺を落としたんだぞ!」って言ったらびっくりしててさ(笑)。

なははは。憧れのDJやプロデューサーはいましたか?

 14歳のときはみんなに憧れてたよ。買ったテープ全部最初から最後まで聴いて、全曲がヤバく聴こえて......。この曲はまあまあだけどリスペクトできる曲だな、とかそういうもんでもなかったんだ。そこまでぱっとしない曲でもこのDJがかけてる、ということは何かヤバい要素があるに違いない、みたいな感じだったんだ。そういう要素を見つけるのも楽しかったしね。ひとつあの学校で学んだのは、曲や音楽のすべての要素を聴く方法だね。聴いてどうそれが形になったのか、どういう流れでそうなったのか考える力とそれに必要な耳だよね。
 でも......強いて言えばランドール、ハイプ、アンディ・C......、当時買ってたテープパックで必ず参加してたDJたちだね。誰が曲を作ってたかはそこまで重要じゃなくて、どのDJがかけてるかが大事だったんだ。BAILEYも影響受けたね。ウチの近所出身だったのもあって、ホームタウン・キング、っていうか俺の育ったエリアのヒーローだったよ。近い存在だったからBAILEYがそこまで出来るんだったら俺でも出来る、と思わせる希望をくれたね。

UKガラージやジャングルの文化は、90年代末やゼロ年代初頭に、ロンドンの労働者階級の文化としてどんどん大きくなっていったんでしょうね。あなたの音楽のなかにはやはり労働者階級のガッツのようなものを強く感じます。

 そういうエネルギーの役割は大きいと思うよ。2~3年前まで全然気付かなかったけどね。階級によって音楽に求める物が違うように感じたんだ。最初に音楽を作り出すときの気持ちだったり姿勢が階級によって違うと思うんだよね。俺みたいな労働者階級は、経済状況や育ちが決して良かったわけではなかったけど、音楽を作ってるときがいちばん楽しかった。幸いなことにいま現在音楽で食えてるけど、音楽を作り続けるためにどこかで普通に就職するのも全然苦じゃないよ。最初から音楽で儲かるなんて考えたこともなかったよ。多少無知な部分もあるかもしれないけど、自分のスタイルを変える気はいっさいないんだ。金だけじゃないんだ。だから、こうしたほうが良い、ああしたほうが良い、って言われても聞いてらんないよ。
 でも中流/上流階級の人だと、第一に服装が全然違うよな。もっとビジネスライクっていうか。音楽が好きだからビジネスにしてるから別に悪いってわけじゃないけど、中流/上流階級の人はもっとビジネスがメインだよね。それは音楽自体にも反映されると思うんだ。売れるように作ることがあるんじゃないかな。別にこの人がそう、っていうわけじゃないけど、全体的にそういうもんだと思う。欲や原動力が違うだけだと思うけどね。もちろん多くの人の原動力は女だったりもするけどね(笑)。音楽が好き、女が好き、じゃあ何の仕事しようかな、ってなるとやっぱり音楽になるからね(笑)!

なははは。2001年に〈Reinforced Records〉からデビューしますが、どういう経緯だったのか当時の話を教えてください。

 専門学校に通ってるときに同級生でエイドリアンていう奴がいてさ、ミグエルっていう友だちもいて、彼は〈Reinforced〉からBug Nyne名義で出してて、俺とエイドリアンの曲や俺ソロの曲も聴いて気に入ってくれて、で、「じゃあ、〈Reinforced〉に話しようか」ってなった。最初は別そういうつもりで作ったわけじゃなかったから断ったんだけど、彼の家にちゃんと曲を聴くために呼ばれて、で、行ったら彼に「あと2駅行ったらドリス・ヒル駅で〈Reinforced〉はそこにあるから行こうよ」って言われたんだ。一瞬「マジか!」って思ったけど、とりあえずそこに行ってなか入ったらいちばん最初に会った人がアルファ・オメガだったんだ。「うぉー!」って思ったね。で、奥のスタジオに行ったら4ヒーローのマーク・マックがいて、正直固まっちゃったよ(笑)! 彼は全然普通の人だったけど俺のなかではダンス・ミュージックのプロデューサーのドンだったからさ、もう緊張しちゃって全然話せなかったんだよね。
 そこで彼にMDから再生した曲を聴かせたんだけど、聴いた後にすぐ「いいね、欲しい」って言ったんだ。エイドリアンは「よっしゃ!」って感じだったけど、俺はなんて言ったら良いかわからなかったんだ(笑)。外に出たときにフライトに電話して、「いまスゴいことが起きたよ!」って伝えて、そこで〈Reinforced〉から曲が出る、って実感したね。最初はSolar Motion名義で曲を出して、そのあいだ自分で作った曲も聴かせてたら俺のソロのEPも出してくれて......契約するのを目的に曲を人に聴かせることはなかったんだけど、本当に運良く出してもらえることになったんだ。ガツガツ営業してリリースができたわけではなく、たまたまそういう展開になったから、本当にラッキーだったよ。
 でも、すべてがラッキーだったわけでもないんだ。〈Reinforced〉から出てた『Enforcers』っていうコンピのシリーズがあって、それにはいろんなプロデューサーがリミックスで参加してたんだけど、何もリミックスのルールとかわかってなくて勝手にドック・スコットのリミックスを作ったんだ。それをマークに聴かせたらすごく反応よかったから、勝手にBaileyとか他のDJに渡しまくったんだ。クラブでかかり出したら、みんな「こいつは誰だ! 勝手にリミックスしてブートで出すなんてけしからん!」っていう反応がスゴくて、その曲を誰がやったかみんなが探してる時期があったんだ。俺はそういうリミックスやった後の作業とか、許可とか、まるで知らなかったから追われる立場になっちゃったんだ(笑)。結局解決して大丈夫だったけど。まだ新人で誰も俺の顔がわからなかったのも良かったけどね(笑)!

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ブレイキッジというネーミングについて教えてください。

 EPを完成させた後だったんだけど、同じ〈Reinforced〉から出してるEspionageっていう友だちと〈Reinforced〉に行く途中に彼に名前の相談をしたんだ。いま当時のDJの名前は言わないけど(笑)、まあ、とにかく気に入ってなくて、そのEPを出すときの名前をどうしよう、って相談したんだ。アートワークとかクレジットとか決めてるときで、けっこう急ぎで名前を決めなきゃいけなかったんだ。そうしたら彼が「いまいちばん番好きな曲は何だ?」って訊いて来て、「Noise Factoryの"Breakage 4(I'll Bring You The Future)"だ」って答えたんだ。そうしたら彼が「それ使ったら良いじゃん、Breakage」と言って、もっと良い名前を考えるまで「ま、いいか」と思ってそれにしたんだ。10年経ってまだもっと良い名前が思いつかないけどね(笑)。もう遅いよね(笑)。2分で決まったよ。

2006年には〈プラネット・ミュー〉から12インチを出します。ダブステップと深く関わるようになるのはこの頃からですか?

 あの当時ダブステップの話を良く聞いてたのは覚えてるよ。まだちょっとしか聴いたことなかったけど。当時アメリカに住んでいたんだ。俺の顔を忘れられないように、数ヶ月に1回はロンドンに帰ってたんだけど、ロンドンに帰っているときに友だちに「ダブステップ聴いた?」って訊かれて、「いや、そこまでちゃんと聴いてないけど」って答えたけど彼女が「マーラがそのダブステップの重要人物のひとりなんだよ」って教えてくれたんだ「へぇー」って答えたら「へぇー、じゃなくてマーラって彼よ、マリブ、あなたたち学校一緒だったでしょ!」って言ってきたんだ。住んでた場所がクロイドンのすぐ近くだったから学校も一緒で、ハチャ(Hatcha)も近くのレコード屋で働いてる頃から知ってて。とにかく彼らがみんないまダブステップをやってるって聞いてちょっとリサーチをしたんだ。そうしたら速攻ハマったね。テンポだけじゃなくて、曲の構成のなかの空間、ダブからの影響......とかが好きで、ちょうど当時作ってたドラムンベースもそういうハーフタイムのモノもあったりしたんだ。俺が音楽的に向かってる方向と一緒だ、って思ったんだ。当時ダブステップを作る、じゃなくてこんな偶然もあるんだ、って思ったぐらいだったよ。
 クロイドンがすごく誇りに思えたのも覚えてるよ。面白かったのが、ダブステップをやってる奴らはほとんど昔から知ってる奴らだった、っていう部分もあったね。ローファーは同じ近所のパブに行ってたし、そのパブでも働いてたし、MCのポークス(Pokes)は近くでやってたドラムンベースのイヴェントでMCやってたし、ベンガとスクリームはレコード屋のビッグアップルにしょっちゅういて、俺も良く弟を連れてったりしてたし......そういう小さい頃の知り合いがたくさんいて、イヴェントに行くと「あれ? 知ってるよね?」みたいな人がほとんどなんだよ。そこからイヴェントに顔出すようになったり、LAでもダブステップのイヴェントがあったらチェックしに行って、新しい曲を買ったり、ネットでダブステップのフォーラム行ってチェックしたりしてて......そのうち「自分も作ろう」っていう気持ちになっていちばん最初に作った曲をマーラに渡したら、「これアナログ切らして」って言われたんだ。初めて作ってみた曲でそうなるとは思ってなかったからびっくりしたよ。結局残念ながら出なかったんだけど、それで俺のなかではダブステップの存在がスゴく大きくなって、そればっか作り出したんだ。すごく楽に作れたのもあったんだ。頭のなかのアイディアが楽にダブステップのテンポだと実現できたんだ。2006年に出したファースト・アルバムの曲も頭のなかはそういうアイディアがあるときに作ったから、いま聴くとダブステップからそんなかけ離れてないんだ。

実際『Foundation』には、ブリアル、スクリーム、キャスパといったダブステップのスターたちが参加していますが、彼らとはいま言ってたように昔からの友だちなんですね?

 いや、昔はみんなと仲良い友だちっていうわけではなかったけどお互い同じエリアで活動しててお互いの顔を知ってる程度だった。いまとなればみんな仲良いよ、長いあいだ知ってる仲だしね。

とくにブリアルみたいな人が参加しているのに驚きました。

 ブリアルに関しては一緒に曲を作った後まで会わなかったけどね。会ったら実は住んでるのが結構近くて、ウチのすぐ近くにレコード屋があって実は彼は昔そこで働いてたんだ。「だからお互い顔がわかるんだ」って感じだったよ。同じエリア出身だから世間は狭いよ。不思議な感じでもあるよ(笑)。

ルーツ・マヌーヴァがラップするグライミーな"Run Em Out"も素晴らしい1曲で、これは昨年〈Digital Soundboy Recording〉からリリースされた曲ですが、UKを代表するラッパーとのコラボレーションについて話してください!

 怖かったよ(笑)。曲のアイディアを作った時に、狂ったトラックになったな、って思って、誰を乗せたら面白いかな、って考え出したんだ。そこで「ルーツ・マヌーヴァの曲っぽいな」って思って、ルーツに乗せてもらうことは可能なのかな、って思ったんだ。とりあえずフィーチャリングで参加して欲しいアーティスト達のリストに載せよう、と思ったんだ。そして最初の段階のループをシャイに持って行って、「ルーツのMCが聞こえてこないかな?」って訊いたら「そうだね、このループのアイディアをもっと広げて完成させないと駄目だけどバイブズはぴったりだね」って答えたんだ。だからルーツのMCが乗ることを想像して曲を作り込んだんだ。グルーブとかノリを変えたわけじゃなく、プロデューサー的な視点からのトラックの作り方を意識したんだ。そして彼に送ったんだけど、数回送らなきゃいけなくて、メールで送ってもリンクの期限切れたり、CD何枚か送ったりしたんだけど、やっと返事くれて、「デモ送るよ」って言ってきたんだ。ルーツが俺にデモを送ってくれるのも嬉しかったけど、ルーツ・マヌーヴァなんだからデモなんか送る必要ないじゃん、とも思ったね(笑)。デモが届いたら予想通り完璧だったよ。


UKが生んだ最高のラッパー、ルーツ・マヌーヴァと一緒に。

  理想ではルーツがサウンドシステム文化に関して何か歌ってくれたら良いと思ってたけど、ルーツだったら何歌ってくれてもありがたいとも思ってたんだ。そしてデモが届いて1バース目、2バース目を聴いたらサウンドシステムのテーマだったから完全に求めてたものそのまんまだったんだ。そこでレコーディングに進めよう、って話になったときにすごくエキサイトして「ルーツ・マヌーヴァとできるんだ!」って言う気分でいたのが当日になったら「本当にやるんだ」っていう緊張感みたいなものを感じて、実際スタジオで一緒に作業してて「いま書いてる歌詞を書き終わったら彼はヴォーカルブースに立って、俺はルーツ・マヌーヴァに指示しなきゃいけないんだ」っていう緊張感を感じたよ(笑)。それ以前にスタジオでちゃんとヴォーカルを録ったことなかったけど運良くシャイもいて、勉強しつつ初めてのレコーディングだったから余計緊張したんだよね。やり出したら慣れていったけど、何より彼が俺のトラックで歌ってくれたことが嬉しかったよ。

何故こうもUKではダンス・カルチャーが途絶えることなく、エキサイティングな状態を保ち続けているのでしょう?

 若い子にも浸透してるのもひとつの要素だと思うよ。例えば先週の月曜日に初めて18歳以下のパーティでプレイしたんだけどすごかったよ。〈Ministry of Sound〉が16~18歳で満員だったんだ。そういうイヴェントや動きもこの文化が生き続けるためにはすごく大事だと思うよ。その逆で、多少歳取ってても毎週土日遊んで、水曜日のイヴェントにも遊びに行ったりしてる人も大勢いるからね。ジャンルも関係ないと思う。ハウス、トランス、ダブステップ、ドラムンベース、いろいろあるけど、例えばヨーロッパではまだそこまで浸透してないけど、UKファンキーはすごく盛り上がってるからね! ここからはつねに新しいものが生まれてるんだよ。新しいジャンルだったり、新しい解釈だったり、そういう姿勢がクラブ・カルチャーの健康を維持してると思う。あとは単純にイギリス人は遊びにいくのが好き、っていうことだと思うよ(笑)。みんな出かけて遊ぶのが好きなんだよ。平日働いて、土日が来たらみんな出掛けて遊ぶんだよ、土日通して。

ジンクがやっているクラック・ハウスについてはどんな印象ですか?

 大好きだよ。俺はけっこう長いあいだハウスが好きだし、彼がやってるハウスもすごく興味深いと思う。ほとんどジャンルの名前とか違いとかはわからないけどね。ハウス内のスタイルの違いとかもそんなにわからないけどね。ジンクのDJは実は数ヶ月前に初めて聴いたんだけど、最高だったよ。Big up Zinc!  彼は伝説だよ。自分のセットでも彼のそのハウスの曲かけてるよ。好きだったらかけないのもおかしいしね。

いまあなたがもっとも共感しているDJは? 

 やっぱりシャイ・エフェックスだね。一緒にDJすることも多いし、音的にもお互い共感できる要素がたくさんあるんだ。例えばダブステップもかけるし、ドラムンベースもかけるし、ハウスもかけるし。気分によってはレゲエもかけるし、彼も同じスタイルなんだ。彼と一緒にプレイすることによってイヴェントとかその日のテーマとは関係なく幅広くプレイできることが分かったのもあるし。俺もシャイも、どういうスタイルをかけるか関係なく、自分たちが良い音楽だと思ってる物をかけるし、それ自体が俺たちのプレイ・スタイルだっていうのをわかってDJしてるんだ。その延長でプロダクション面もジャンルやスタイルは関係なくて、自分が良いと思ってる音を詰め込んだのがアルバムなんだ。

〈Naked Lunch〉から出したシングルでは、より実験的なアプローチをしていましたが、ああいうことは今後もやっていくんですか? あるいは、もっとよりダブステップよりのアルバムを作る予定はありますか?

 あれはとくに深く考えずに作った曲だよ。夜遅く作った曲だったから単純に"Late Night"っていうタイトルにしたんだ。一晩のセッションでできた曲なんだ。夜通してワイン一本飲んで出来た曲なんだ(笑)。次のアルバムに関しては現段階では全然わからないよ。前もって計画し過ぎるのも良くないと思うしね。「2012年に次のアルバムが出ます。その内容はダブステップ×カントリー×ハッピー・ハードコアになります」って言ってもおかしいからね(笑)。そういうアルバムを作れる保証もできないしね。でもいまこう言って笑ってるけど、2年後に実際やってる可能性もあるからね! 全然予想はできないよ。いつになるかもわからないよ。1枚目のアルバムは1年かかって、今回の2枚目は2年かかったから、次は4年かかるかもね(笑)! 自分の感性が思うままに進むだけだと思ってるよ。

 昨年末スクリームが発表した「Burning Up」を聴くと、あるいはゾンビーの『Where Were U In '92?』を聴くと、ロンドンのダブステッパーたちにとっての帰る家はジャングルなんだとあらためて認識する。ゾンビーにいたっては自らをジャングリストと名乗り、ダブステッパーと呼ばれることを否定する始末だ。実際の話、その境界線もいまでは曖昧なものになりつつもある。日本の〈ドラムンベース・セッション〉がまったくそうであるように、ジャングルとダブステップは活発に交流を続けているからだ(それこそ大物ではチェイス&ステイタス、あるいはネロなんかもそうだ)。

 いずれにしても、街を突き抜けるような激しいビートを身体に注入したい――そんな衝動に駆られたときは、ロンドンのハードコアにチューニングすればいい。そう、ハードコア、イギリス人に通じるように言うなら「ハーコー」......ジャングルという呼称で知られるダンス・ミュージックのことを、彼らはそう呼んでいる。20年も前からずっと、変わっちゃいない。

   なお、ブレイキッジはマッシヴ・アタック『ヘリゴランド』のリミックス・アルバムに参加したとのこと。きっと『ヘリゴランド』に生気を与えたのは、ここ数年のUKのジャングル/ダブステップのシーンなのだろう。

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