「!K7」と一致するもの

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 これは2014年のギャグ・アルバム、No.1でしょう。マティアス・アグアーヨやメリディアン・ブラザーズなど、ここ数年、南米に持っていかれっぱなしだった笑いをアメリカに取り戻した3人組。フィラデルフィアからプロフライゲイト(Profligate)ことノア・アンソニー(Noah Anthony)、コンテナー(Container)ことレン・ショーフィールド(Ren Schofield)、ディナー・ミュージック(Dinner Music)ことリック・ウィーヴァー(Rick Weaver)によるスラップスティックの玉手箱です。アナログ盤としては『ザ・トゥー・ベンジーズ(The Two Benji's)に続く2作めで、笑いの角度が少し内側に向くことで弾けるような攻撃性よりもじわじわと効いてくるタイプに発展途上しています。最近のコメディ映画でいえば『なんちゃって家族』よりも『俺たちニュースキャスター』か。感傷性の裏打ちではなく、フォックスTVの右傾化を揶揄しまくった毒のある感じを思わせる。

 〈ノット・ノット・ファン〉からデビューしたプロフライゲイトは基調がどこまでもインダストリアルだったし、〈スペクトラム・シュプール〉から2枚のアルバムをリリースしているコンテナーはインダストリアル・イタロ・ディスコとでもいいたくなるテクノ未満の強迫的なビートの反復がメイン。しかし、同じようにアンダーグラウンドに沈みきっていてもカセットばかり出しまくるディナー・ミュージックは奇怪な作風に振り切れまくり、何が中心にあるかもわからない存在なので、アンソニーもショーフィールドもこの人の磁場に引きずりこまれて、いつしか接点がお笑いになってしまったと考えるのが自然なのだろうか(リリー・フランキーやピエール瀧が集まると老人殺しの映画になる感じ?)。
 ある意味、ディナー・ミュージックの八方破りな音楽性はこれでもひとつの方向性を持つようになったといえ、少しは掴みどころというものができたというか。かつてゼロ年代にウルフ・アイズやバーニング・スター・コアといった混沌から最終的にはアンビエント・ドローンが導かれていったパターンとは異なる混沌からちがう種類のものが生まれつつあるのかもしれない。どこから来るのか、その余裕。ジャケットがどうして法廷なんだろうと思ったら、実際にニュー・ヨークの法廷でライヴ録音されたものだという。3人とも演奏しているのはテープのみ。

 オープニングはそれこそディナー・ミュージック。ジャズ・ピアノの響きと木槌を叩く音と傍聴席のざわめきにはじまり、ハーシュ・ノイズにグルーヴィーなベース・ライン、さらにはギター・ソロのループに各種のブリープ音と容易には把握しきれない音楽性の洪水がつづく。ただし、グジャグジャではない。リズムもシャッフルを効かせたものが何曲か。ジャド・フェアーとマウス・オン・マーズを足してミュージック・コンクレートで割った感じだったり、ピエール・アンリとディーヴォをアレックス・パタースンがマッシュ・アップしているようだったり、もしくはバットホール・サーファーズがノイエ・ドイッチェ・ヴェレと化したとも、ハーバートがフライング・リザーズをリミックスしたとも(あ、なんで、それないんだ?)。ポップ・ミュージックではよく「なんでもあり」という形容がされるけれど、実験音楽でそのような状態になったものと思えばいいのかもしれない。つーか、ポップ・ミュージックと実験音楽の境すらないに等しいかも。千変万化のおもしろさです。

 ベルギーのフィオーク(Fyoelk)やナスラックス、アメリカのナッティマルに日本の食品まつり……笑わせてくれる人はみんな好きだなー。

interview with Caribou - ele-king


Caribou - Our Love

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 あなたはカリブーをどこから聴いているだろう。『スイム』から? それともマニトバ名義のころから? だとすれば『スタート・ブレイキング・マイ・ハート』か、『アンドラ』か、それとも……? すべてリアル・タイムでという方も多いかもしれないが、どの作品から聴いたかということでこれほどジャンルのイメージが混乱してしまうアーティストもめずらしい。

 そもそもは〈リーフ〉からのデビューということもあり、ロンドンを拠点に活躍する彼ことダン・スナイスはエレクトロニカのアーティストだという認識が一般的だった。フォークトロニカという言葉があったが、そうしたニュアンスの中でボーズ・オブ・カナダに比較されたり、またフォー・テットが彼から影響を受けるというような系統図もそれに加担しただろう。しかし2007年の『アンドラ』はまるでソフト・サイケの発掘盤というようなたたずまいで現れ、2010年の『スイム』では、それが完全にフロア仕様のダンス・アルバムへと変貌していた。さらには名義も変更されたため、彼のディスコグラフィはまぶしく乱反射を招く。

 しかし、それでいてまったくカリブー=マニトバ=スナイスとしか思えない、あるつよい紐帯によってそれらが結ばれているのもたしかなのだ。
 あなたはカリブーのどこを聴いているだろう? という点においてはおそらくそんなにブレることはない──旋律、歌、エモーション、薄青く揺らぐビート。“オール・アイ・エヴァー・ニード”の柔らかいシンセ、あるいは“マーズ”のフルートに似たウワモノが踏むよるべないステップ、“ダイヴ”のラストを飾るアルペジオなどには、全時期を通したダン・スナイスの、彼でしかありえない刻印がある。

 本作は、ヒット作として彼のキャリアにひとつの折り返し点をつけた『スイム』から、過去のカタログを逆照射するような作品であるように思われる。はっきりとダンス・ミュージックでありながら、「歌う」ことを手放さない。それは、主に彼のダンス・サイドを切り出すプロジェクトであるダフニが、オーウェン・パレットを迎えてシングルをリリース(『Julia / Tiberius』、2014年)していることにも明らかであるし、むしろ、ダフニ名義や自身のダンス・レーベル〈ジャオロン〉での活動が本格化しているからこそ可能であることのようにも思われる。今作についてスナイスは、「感情に溺れるリスクをおかした」と述べているが、彼はこれまでもずっと、そのリスクの淵から音楽を放ってきたのだ──。

カナダ出身ロンドン在住、かつてはマニトバ名義で活躍していたプロデューサー、ダン・スナイスによるソロ・プロジェクト。エレクトロニカ/音響系レーベル〈リーフ〉からデビューし、2001年の『スタート・ブレイキング・マイ・ハート』はメディアからも高い評価とともに迎えられた。ボーズ・オブ・カナダなどドリーミーなエレクトロニカと比較されながらも、フォークトロニカやサイケ・ポップなどへと音楽性を広げ、4thアルバム『アンドラ』ではカナダの「マーキュリー・プライズ」にあたる国民的音楽賞「ポラリス・ミュージック・プライズ」を受賞、クラブ・ミュージックへと寄った2010年の『スイム』の反響も大きく、別名義ダフニの活動も活発化させながら、今年2014年、4年ぶりとなる新作『アワー・ラヴ』を完成させた。


2010年の『スイム(Swim)』から、すごく反応が大きくて。音楽がいままでとはちがう方法で人々と繋がりを持った感じがしたんだ。

このインタヴューに先立っていただいたコメントのなかの「感情に溺れるリスクをおかす、あるいは感情的になることをゆるす(At the risk of being maudlin - I made this album for all of you.)」、というあなたの言明がとても心に残りました。

スナイス:このレコードは僕にとって……むかしは、レコードはほぼすべて自分のために作っていた。音楽や音楽をプロデュースすることにただただ興奮していたからね。でもカリブーとしてリリースした2010年の前回のレコード(『スイム(Swim)』)から、すごく反応が大きくて。音楽がいままでとはちがう方法で人々と繋がりを持った感じがしたんだ。それが、俺の音楽の世界観を変えた。なぜ音楽を作るのか、誰のために音楽を作るのか、というところをね。だからこのレコードは、自分自身が楽しむだけじゃなくて他のみんなのことを意識して作ったんだ。自己中心的なレコードじゃなくて、もっと寛大なレコードを作りたかった。

ある種の音楽や表現行為において、あるいは人間のふるまいにおいて、感情に溺れるということが否定的にとらえられることがありますね。それを気にされてもいるのかなと思ったのですが。

スナイス:自分の感情をあまりにも音楽の中でさらけだしすぎると何か言われるときがあるけど、逆にリスナーことを意識しすぎてもそれは誠実さに反すると批評されたりもする。俺はもう長いこと音楽を作ってるけど、自分が作りたいものを作るのと、聴く人のことを考えて作るということの間に矛盾を感じたことはまったくないね。あとは、僕がもっとも好きな音楽はファラオ・サンダースやアリス・コルトレーン、ジョン・コルトレーン、スティーヴィー・ワンダーのような定番のソウル・レコードだけど、そういう音楽はすごくあたたかいし、感情が詰まってる。そしてオープンだね。俺が好む音楽はすべて、そのクオリティを持っているんだ。

抒情的でメロディアスな音楽に対しても抑圧的な評価が下されることがあります。あなたの音楽は2001年のデビュー作から高い評価を受けつづけてきましたが、もしかするとそうしたメロディへの抑圧的な評価と闘ってきたようなところもあるのではないですか?

スナイス:まあ、そういう評価を下す人も中にはいるね。でも音楽はバラエティに富んでいて、評価に関しても同じくらいさまざまな意見がある。インストの音楽の中だけの狭い考えで言うとそうかもしれないけど、世の中でリリースされている音楽のほとんどが抒情的でメロディアスだと思うし、俺はまったくそんなこと思わないけど。インストであっても、複雑であっても、人に何かを感じさせることができることが大事なわけで。俺が好きな音楽の多くはそういう音楽だからね。

あなたは〈Leaf〉からデビューし、当時のエレクトロニカやフォークトロニカといったブームの一端を象徴する存在でもあったと思います。さんざん比較されてきたかとは思いますが、ボーズ・オブ・カナダや、あるいはフォー・テットといった名前をどのように意識していましたか?

スナイス:俺は当時ボーズ・オブ・カナダの音楽の大ファンだった。まさに彼らの音楽はいま話に出ていたセンチメンタル・ミュージックだし。で、フォー・テットとは、仕事仲間以上に友だちとしての繋がりがあった。もちろん彼の音楽も大好きだし。彼は俺が最初に音楽をリリースするのを手伝ってくれた人物なんだ。彼に会ったとき、ビビビときてすぐ友だちになった。いまでは家族の一人みたいな存在だよ。俺たちは音楽に対する世界観も似ていて、いままでのすべてのレコードにおいて彼のフィードバックを大切にしてきた。俺は誰よりも彼の意見を信用しているし、何かのセカンド・オピニオンを求めるときにもいつも彼に訊くようにしてるんだ。

では、彼らと比較されることへの違和感はほとんどなかったんですね?

スナイス:なかったよ。すべての音楽において、何かに影響された部分っていうのは必ずあるものだからね。彼らは両方ともいい影響だし。彼らからは自分でも影響を受けていると思うから、比較されて当たり前だと思っていたよ。


いま思うと変な感じがするよ。60年代の俺のお気に入りのアーティストは、当時、みんなできるだけ未来的なサウンドを作ろうとしていたのに。

ソフト・サイケの埋もれた名盤というような雰囲気さえ感じられる『アンドラ』など、その後のあなたには狭い意味でのエレクトロニカや音響というものから自由なイメージがありました。実際のところどんなふうにキャリアを築いていこうと思っていたのですか?

スナイス:当時あのアルバムを作っていたときは、60年代のサイケ・ポップ・ミュージックのようなサウンドを参考にしていたんだ。あのアルバムは俺にとって……さっきも話していたように、すべてのレコードはいまよりもすごくパーソナルなものだったから、自分が当時何に興味を持っていたかを示すものだと思う。あのアルバムで意識していたのは、ハーモニックな構成とアレンジメント、そしてソングライティング。キャリアをどう築いていこうとか、そういうのを前もってプランしたことはいままで一度もないんだ。人が聴こうが聴くまいが、とにかく自分が興味のあることをやっていた。
 だからいま『アンドラ』を振り返ってひとつだけ思い出せるのは、自分が1960年代のサウンドを再現しようとしていたこと。いま思うと変な感じがするよ。60年代の俺のお気に入りのアーティストは、当時、みんなできるだけ未来的なサウンドを作ろうとしていたのに。でも俺は、その時代を振り返るのにエネルギーと時間を使っていた。それもあるのか、『アンドラ』以降の俺のレコードは、もっと先を見た、よりコンテンポラリーなものになってると思う。

UKで活動をしていると、ベース・ミュージックなどの盛り上がりに接近しないことのほうが難しいかもしれませんが、『スイム』であなたの音楽とダンス・フロアとの結びつきが強まるのは、やはりそうしたシーンの影響からでしょうか?
だとすれば、とくにどういったアーティストに触発されてきましたか?

スナイス:そのとおり。まさにあれを作っていた2008年~2009年頃はロンドンにいて、フローティング・ポインツ(Floating Points)や、ジョイ・オービソン(Joy Orbison)、ブリアル(Burial)、ピアソン・サウンド(Pearson Sound)のような若いアーティストが出てきている時期だった。そういったアーティストがファースト・レコードを出した後くらいの時期で、ロンドンにとってすごくエキサイティングな時期だったんだ。そういったアーティストがプレイするのをよく観に行ってたよ。当時はそういった音楽に囲まれていたんだ。
 いま振り返ってみると、『アンドラ』のあとはもっとコンテンポラリーな音楽を作りたがっている自分がいた。その理由のひとつは、こういったエキサイティングな音楽に自分が囲まれていたからだろうね。そのシーンのアーティストと仲良くもなったし。だから、ダンス・フロアとの結びつきが強まるっていうのは俺にとっては自然なことだったんだ。とくに影響を受けたのは、さっき言ったフローティング・ポインツやピアソン・サウンド、ジョイ・オービソンのようなアーティストだね。みんな近い友人でもあるし。

一方で、今作には『スタート・ブレイキング・マイ・ハート(Start Breaking My Heart)』などを思い出させる部分も強く、あなたのなかの変わらないものと変化したものとが濃く対照をなして表れているようにも思います。ご自身のなかで、ここは変わりたくない、守りたいというようなものはありますか?

スナイス:たしかに。このアルバムには僕の最初の頃のスタイルも入っている。メロディやあたたかさ、エレクトロニカのプロダクションのサウンドとか。そういったものは最初のレコードに入っていたからね。僕自身は最近あのレコードは聴いてないけど……自分の昔のレコードって聴かないんだよな(笑)。でも振り返ってみると、そういったアイディアと繋がる。まあ、あの時代からもう15年も経ってるから人生も変わったし、自分自身も、音楽も変わったとは思う。でも、やっぱり作っているのは僕という同じ人物だから、カリブー・サウンドっていうことに変わりはないんだよね。「僕のサウンド」っていう部分が、変わっていない部分だと思う。

カリブーらしさとは? という質問は、俺の人生とは? と訊かれているようなものなんだ。

 さまざまなアーティストがいて、みんなさまざまなものに影響を受けているけど、僕の場合は音楽が僕についてだから、歌詞がまずパーソナルだし、言葉では説明しにくいけど、サウンドも僕なんだよね。すべてのレコードにおいて、ある感覚が共通してるんだ。すべてのレコードをその感覚が繋ぎ合わせているというか。音楽を作れば作るほど、どの曲をプレイしてもみんなに「あ、これダンっぽいな」と思ってもらいたいんだ。そのユニークさっていうのはずっと守っていきたいと思う部分だね。自分自身のサウンドを作るっていうアイディアはこれからもずっと持っていきたい。

もうちょっと、そのカリブーらしさというところをお訊きしたいです。たとえば“マーズ(Mars)”“ユア・ラヴ・ウィル・セット・ユー・フリー(Your Love Will Set You Free)”などでは、あなた独特の旋律やシンセのタッチなどが、いっきにカリブー的な世界観を立ち上げていると感じますが。

スナイス:カリブーのレコードでは、できるだけ自分の人生を捉えようとしてるんだ。自分の人生で起こっていることのすべて。それをできるだけ音の中に取り込もうとしている。アルバムや日記のようにね。だから、カリブーらしさとは? という質問は、俺の人生とは? と訊かれているようなものなんだ。だから答えるのはちょっと難しい(笑)。人生においてひとつだけたしかなのは、僕が音楽に対して感じる興奮がどんどん大きくなっていっているということ。新しい音楽も昔の音楽も、すべてがいまだにエキサイティングなんだ。音楽に囲まれているというスリルを感じなくなってしまうアーティストも少なくはない。でも僕は、それが大きくなっていく一方なんだ。それはいいことだと思う。未来が楽しみになるし。


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まず最初に大事だったのは、親友とコラボするということ。ただスタジオに入ってきた歌えるアーティスト、とかじゃなくてね。

すごいですね。そういったモチヴェーションはどこから来るのでしょう?

スナイス:考える必要がないんだ。自由時間があったとしても、僕はスタジオに下りていって音楽を作るだろうね。それが俺がやりたいことだから。いまは娘もいるし、家族との人生もある。だからバランスも保たないといけないんだけど、でも自分自身のモチヴェーションを高めるためにあえて何かしないといけないとか、そういうのがないんだよ。アイディアにつまったりすることもない。何かがつねに起こってるからね。

では逆に、何か最初の頃とくらべて変わったなと思うことはありますか?

スナイス:明らかなちがいは、以前はインストだけの音楽を作っていて、いまは歌が入ってる。その歌という部分が、自分により大きな自信を与えてくれたっていうのは変化だね。自分にできることが、より心地よくできるようになってきた。曲の作り方に対しても、歌い方に対しても、より自信が持てているんだ。前はオーディエンスの前で歌うのがすごく怖かった。いまのような状態になるには何年もかかったんだ。俺はヴォーカルのトレーニングを受けてきたわけじゃないしね。他の若いミュージシャンにもよくあることだと思うけど、最初は不安だらけだと思う。次のレコードでみんなが自分の音楽に興味を失ったらどうしようとか、もう音楽を作れないんじゃないか、とか。僕もスタートしたてのときはそういうすべての不安があった。でもだんだんそういう心配が減ってきて、自信に変わっていったんだ。作業しつづけているうちにね。

あなたは、たとえ歌ものでなくとも、自分自身の旋律によって大いに「歌う」アーティストだったと思うのですが、“セカンド・チャンス”のようにシンガーを歌わせることはあなたの音に何をもたらしていると思いますか? この曲も素晴らしいですが、わたしはあなたの、どこかベッドルーム的に閉じたような音楽がとても好きなんです。

スナイス:ジェシー・ランザ(Jessy Lanza)の参加は、僕にとっては大きなちがいをもたらした。まず最初に大事だったのは、親友とコラボするということ。ただスタジオに入ってきた歌えるアーティスト、とかじゃなくてね。ジェシーもオーウェン・パレットも親友で、それは僕にとって大きなことだった。将来自分の音楽を振り返ったときにそういったパーソナルな繋がりを思い出したいし、自分の友だちと作業するっていうのは楽しいしね。ジェシーが参加しているトラックでは、彼女がメロディと歌詞を書いた。ほぼすべてのヴォーカル・パートを彼女が書いたんだ。
 よくあるんだよね、ある時点まで自分で書いて、そこからどうしようかと考えることが。あのトラックはとくに、インストにしようかとも迷ったし、ヴォーカルを入れてみようと思って入れてもうまくいかなかったりした。それで彼女に参加してもらったら、曲がぐんと変化したんだ。ポップとR&Bというか。ポップなメロディが前面にでて。レコードを作っていて、僕が好きなのはああいう瞬間。何かが、自分が予想していなかったまったくちがうものに進化する瞬間が好きなんだ。ジェシーがいなかったら、あの曲は完成していたかさえもわからない。本当にどうしたらいいかわからなかったから。


このアルバムを作りはじめたとき、僕はこのレコードがもっとR&Bに影響を受けたものになるだろうと思っていた。でもまわりの流れをみていると、R&Bはもう十分なんじゃないかって気がして。


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また、いまおっしゃったようにこの曲はR&B調の仕上がりになっていますが、最近はそうした曲や歌ものづくりにも意欲的なのでしょうか?

スナイス:あのトラックはちょっと変わったヴァージョンのR&Bなんだ。ビートがないから。ここ数年、R&Bではエキサイティングなことがたくさん起きているよね。コマーシャルなものも増えてきたし。このアルバムを作りはじめたとき、僕はこのレコードがもっとR&Bに影響を受けたものになるだろうと思っていた。でも結果的にそれよりももっと広い、より多くの要素が入ったレコードになったんだ。もちろんR&Bも入ってはいるけど。とくにあのトラックには。でも、そこまでそういった曲や歌ものづくりに意欲的なわけじゃない。このアルバムを制作しているうちに、R&Bはより多くの場所で聴くようになったから。メインストリームだけじゃなく、インディ・バンドもR&Bの要素を入れはじめたし、ヒップホップのプロデューサーたちもそう。そういう流れをみていると、R&Bはもう十分なんじゃないかって気がして。

ダフニ(Daphni)での活動が、むしろカリブーを原点に向かわせるということはないですか?

スナイス:ダフニではもっとダンス・フロアを意識して曲を作っている。トラックはすごくはやく作るし、一曲ごとに数個のサウンドしかない。君が言うように、ベーシックでシンプルなものにしてるよね。僕はいつも、たくさんのアイディアやサウンドを音楽に入れ込む傾向があるんだけど、このニュー・アルバムでは、もう少しシンプル化して、より扱いやすいものにするのもいいんじゃないかと思った。だからいくつかのトラックのアプローチに関しては、ダフニの活動に影響を受けているね。

アルバム全体のモチーフには、一組の男女の繊細な関係性も描かれているように思いますが、あなたはこの作品を一人称的な、私小説的な作品だというふうに説明しますか?

スナイス:このアルバムは、タイトルどおり「愛」についてのアルバム。もちろん一部は一組の男女についてでもある。僕と妻との関係とか、僕の友人とそのパートナーの関係とか。でも同時に、自分の人生やみんなの人生の中にあるあらゆる愛についてでもあるんだ。娘や家族、友人、音楽に対する僕の愛。このアルバムを聴くリスナーとそういう愛を共有したいんだよ。だから一人称や私小説的とは思わない。歌詞の一部は離婚を経験した僕の友人についてだったり、そういうパーソナルなこともある。でもそれ以上にみんなが繋がりを感じることができる内容になってると思うんだ。そういった出来事をみんなが自由に自分の人生の何かと繋ぎ合わせてもらえればいいと思う。


人生における何においても、俺にとってベストなのは、すべてのミックス。悲劇すぎる音楽も、喜劇すぎる音楽も作りたいとは思わない。

ご自身が楽曲に用いるコードには、なにかクセや傾向性があると思いますか?

スナイス:いい質問だね。みんな、楽器を長いこと演奏していると、あるパターンに戻ってくるんだ。それが癖なんだと思う。誰にも自分独自のアプローチがある。それがどういう癖なのか自分では説明できないけど……。僕っぽいサウンドっていうのはそういった癖からも生まれているんじゃないかな。言葉で説明するより、聴いたほうがわかると思う。長年演奏することで自然と確立されてくるものだと思うよ。

悲劇を好みますか、それとも喜劇を好みますか?

スナイス:人生における何においても、俺にとってベストなのは、すべてのミックス。悲劇すぎる音楽も、喜劇すぎる音楽も作りたいとは思わない。人生ってそういうものだろ? すべてが混ざってる。俺が好きなのは、悲劇も喜劇もすべてがミックスされたものなんだ。

今作に「love」という言葉を用いずにタイトルをつけるとすれば、どんなものになると思いますか?

スナイス:これもいい質問だね。このアルバムでは、本当にたくさんのタイトルを考えたんだ。「love」が入っていないもので候補に上がっていたのは、最終的にあまり好きじゃなかったから使わなかったけど、「With You」とか、そういった「いっしょにいる」という意味を持った言葉があった。娘といっしょ、リスナーといっしょ……いっしょにいる相手は誰でもいい。そういった誰かの存在を意味する言葉。すべてのアルバム・タイトルが、俺にとってパーソナルでエモーショナルなんだ。


■Caribouが来日!
2015年2月21日、22日に新木場スタジオコーストにて行われる〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉に、Caribouも出演することが決定している。
今回のラインナップは、BELLE AND SEBASTIANにST.VINCENT、TUNE-YARDS、REAL ESTATE、そしてHOW TO DRESS WELL……完全に当たり回だ(いつもすばらしいけれども)。
すべてのベッドルーマーとリアル・インディ・ロック・ファンへ!
詳細 https://goo.gl/tHm2UH


ソニック・ブームにThe Novembers - ele-king

 紙の『ele-king Vol.8』で紹介したのでもう一年以上前となる、2013年春夏なので正確には3シーズン前のコレクションであの裸のラリーズをモチーフにもちいた〈LAD MUSICIAN〉は音楽と洋服の融合を基本コンセプトに掲げる、弊媒体読者にもまことに親和性の高いブランドだが、その〈LAD MUSICIAN〉が20周年(祝!)となるコレクションを、来る10月20日(月)恵比寿ガーデンホールにて発表する。

 上述のとおりアニバーサリーコレクションにあたる今季は、ショー終了後のアフターパーティの開催が決定している。しかもその内容がいかにも彼ららしい。
 UKからジェイソン・ピアーズとのスペースメン3でサイケデリックおよびシューゲイザー・シーンに多大な影響をあたえ、現在はスペクトラムとE.A.R.(エクスペリメンタル・オーディオ・リサーチ)の二足のわらじでサイケリアの新しい領土をもくもくと踏破しつづけるソニック・ブームが来日、スペシャル・ライヴを披露してくれるというのだ。

 ele-kingではこのアフターパーティの招待枠をいただきました!

 下記〈LAD MUSICIAN〉都内4店舗にてINVITATION(招待状)をご用意しておりますので、ご来場をご希望の方はお近くの直営店までご来店ください。というか、招待数にかぎりがあり、規定数に達ししだい配布終了となりますので、〈LAD MUSICIAN〉直営店へ、読者諸兄よ、いまからダッシュしましょう。

■配布期間
10/15(WED)~10/19(SUN)12:00~20:00
*お一人様 2名様分までとさせていただきます

■日時/会場
LAD MUSICIAN 20TH ANNIVERSARY AFTER PARTY

10/20(MON)  OPEN 20:00 START 20:30
*当日は招待状をお持ちの方のみの入場となります

PLACE:THE GARDEN HALL / YEBISU GARDEN PLACE

LIVE: SONIC BOOM, THE NOVEMBERS

DJ:HIROSHI FUTAMI

VJ:DOMMUNE VIDEO SYNDICATE

■配布店舗住所/問い合わせ先
〈INVITATION〉配布店舗

LAD MUSICIAN FLAG SHOP

DAIKANNYAMA / 〒150-0034東京都渋谷区代官山町18-7-B1F / Tel 03-5457-1005
HARAJUKU / 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-26-35 / Tel 03-3470-6760
SHINJUKU / 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-31-6-1F / Tel 03-6457-7957
SHIBUYA / 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-5-7-1F / Tel. 03-6416-1813


ele-king vol.14 - ele-king

特集:エイフェックス・ツイン
第二特集:ナショナリズムとグローバリゼーション
特別寄稿:現地取材による、シカゴ・フットワーク/ジューク・レポート    他
電子書籍版へのアクセスキーがついています

Mr Twin Sister - ele-king

 「ツイン・シスター」から「ミスター・ツイン・シスター」への改名は、とくに音楽的な再出発を暗示したりするわけでなく、「ポリティカルな理由」からだというが、それでもトランスジェンダーなその名を気に入っているという旨の発言は複数のインタヴューからうかがわれる。彼女らは音においても越境的だったけれど、なるほどそれは同格のものを異種交配させるという手つきではなくて、ツイン・シスターに「ミスター」をつけることで名の意味を溶かすような、そういうあり方だったようにも思えてくる。今作においてミスター・ツイン・シスターは、たとえばハードでミニマルなテクノと溶け合い、ツイン・シスターという位相をずらす。

 はじまりは穏やかだ。ヴィブラフォンのような音がなぞるアルペジオに導かれて、わたしたちはあの緩くてドリーミーなツイン・シスターのサイケデリック・ポップへと踏み入っていく。嫌味なく洒脱なAOR調が心地よい。ジョナサン・ロウによるところだろうか、プロダクションはクリアさを増してアンドレア・エステラのポップ・シンガーとしての輪郭をさらに磨き出すように感じられる。あくまでエクスペリメンタルなサイケ・ポップであろうとするようなビーチ・ハウスよりも、上質なポップスへの志向性を強めたスティル・コーナーズに近くなった印象だ。

 ツイン・シスターは2010年の前後2年ずつくらいのインディ・シーンを彩った、ドリーミーなサイケデリック・ポップのトレンドのなかに現れ、その一角を象徴するように『イン・ヘヴン』(2011年)という傑作を生んだバンドである。一方の極にはディアハンターのようにシューゲイズと結びつけて語られる音があり、もう一方の極にはチルウェイヴなどがあり、そうしたいくつかの極を星形につないだゾーンに個性豊かなアーティストたちがひしめいていた。ツイン・シスターのシンセ・ポップにはフォーキーなテイストがあり、ブロードキャストに比較されるクラウトロック的な要素、あるいはマーク・マッガイアのギター・アンビエントへと接続するような広がりも感じられた。逃避的な音がことさらヒップに感じられる時期ではあったが、そのムードを飛びぬけて心地よくポップス側に転換した才能のひとつだともいえる。ケンドリック・ラマ―が彼女らのトラックをサンプリングしたという語られ尽くした話題も、この間のインディが何を発信していたのかということを物語るものだ。そして本作『ミスター・ツイン・シスター』は、その『イン・ヘヴン』ののち初となるフル・アルバムである。

 以前は「ポップス側に振れた」といっても、ラフでリヴァービーなプロダクションが気分であり、ツイン・シスターの音もその範疇だった。しかしまどろみの時期を抜けたいま、彼女らがテクノに、あるいはよりスマートなポップ・ソングに向かうのはとてもポジティヴなことだと思う。また、ミスター・ツイン・シスターはそれが得意だということがわかる。“トゥエルヴ・エンジェルズ”などはそうした新機軸を誇らかに象徴する曲で、アイデンティティを失わずに、むしろビートを飲み込むように成立しているダークなテクノ。ここでのエステラのパフォーマンスは、かつてのツイン・シスターからとても遠いところにあって驚いてしまう。ヴォーカルとしての運動神経が優れた人なのだろう。シルキーでアダルトなR&Bを基調とする前半の展開、とくにレトロなタッチのディスコ・ナンバー“イン・ザ・ハウス・オブ・イエス”などでは、こんなにフットワークの軽いバンドだったのかとため息さえ出るだろう。“メッドフォード”のアンビエントや、“クライム・シーン”などに残された以前の面影をたどりながらアルバムは閉じるが、ヴァリエーションがあるというような安直なまとめかたをゆるさない、奇妙で豪華な変貌を見せる新作だ。「ミスター」という装いのもとに、彼女たちは新しい夢を見はじめた。

DBS -MALA&COKI (Digital Mystikz) - ele-king

 みなさま、いよいよです。スーパー台風明けの今週末、マーラとコーキがデジタル・ミスティックズとして日本へやってきます! ダブステップをサウス・ロンドンで開発したオリジネーターが揃って来日するのは今回が初めて。日本での彼らのホームであるDBSでどのようなプレイを見せてくれるのでしょうか。前回のマーラとコーキのDBSでのDJプレイはこちらでチェックできます。

DBS presents "MALA IN JAPAN"

DBS 16th. Anniversary feat. COKI & SILKIE

 マーラとコーキがダブステップ最重要レーベル〈dmz〉からリリースを開始したのは2004年。リチャード・D・ジェームスも関わる〈リフレックス〉から、ふたりが参加したコンピレーション『グライム2』が発売されたのも実はこの年なんです。
 レーベル開始当初からロンドンのブリクストンで開かれる、〈dmz〉のパーティは現在も大変な人気を誇っています。キャッチ・コピーは「Come meditate on bass weight!」。ジェイムズ・ブレイクがデジタル・ミスティックズが出るイベントの常連だったことは有名なエピソードですね。先日来日した〈ナイト・スラッグス〉のボク・ボクも〈dmz〉から大きな影響を受けたプロデューサーのひとり。マーラとコーキがいない現在の音楽シーンを想像することは不可能です。
 日本を代表するプロデューサーであり、デジタル・ミスティックズのふたりと共にダブステップのシーンの形成に携わった〈バック・トゥ・チル〉のゴス・トラッドも当日は駆けつけます! 前回のピンチ来日時に素晴らしいDJを披露したシバライダーもプレイ!
 デジタル・ミスティックズの10年の節目にみんなで瞑想しようぜ!

DBS - A Red Bull Music Academy Special with MALA&COKI (Digital Mystikz)

日時:10月18日 (土) OPEN / START 23:30
会場:代官山UNIT
料金:前売3,000円 / 当日3,500円
出演:
MALA & COKI (Digital Mystikz)
GOTH-TRAD (deep-medi,BTC)
SIVARIDER
VJ:SO IN THE HOUSE

Saloon:
LAO
Ekali
DJ STITCH
TETSUJI TANAKA
KEN

MALA & COKI (DIGITAL MYSTIKZ)

ダブステップのパイオニア、DIGITAL MYSTIKZはサウス・ロンドン出身のMALAとCOKIの2人組。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。
'03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、'04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。また'05年からDMZのクラブナイトを開催、ブリクストン、リーズでのレギュラーで着実に支持者を増やし、ヨーロッパ各国やアメリカにも波及する。
'06年にはSoul Jazzからの2枚のシングル・リリースでダブステップとDIGITAL MYSTIKZ の知名度を一気に高め、DMZの作品もロングセラーを続ける。また同年にMALAは個人レーベル、Deep Medi Musikを設立、以来自作の他にもGOTH-TRAD、KROMESTAR、SKREAM、SILKIE、CALIBRE、PINCHらの作品を続々と送り出し、シーンの最前線に立つ。一方のCOKIは'07年にBENGAと共作した"Night"をTempaから発表、キャッチーな同曲は'08年に爆発的ヒットとなり、ダブステップの一般的普及に大きく貢献する。
そして'10年にはDIGITAL MYSTIKZ 名義によるMALAの1st.アルバム『RETURN II SPACE』がアナログ3枚組でリリース、壮大なスケールでMALAのスピリチュアルな音宇宙を明示する。そしてCOKIも同年末、やはりDIGITAL MYSTIKZ 名義でアルバム『URBAN ETHICS』を発表(P-VINEより日本盤発売)、血肉となるレゲエへの愛情と野性味溢れる独自のサウンドを披露する。その後もDMZから"Don't Get It Twistes"、Tempaから"Boomba"等、コンスタントに良質なリリースを重ねつつ、11年から謎のホワイト・レーベルのAWDで著名アーティストのリワークを発表、そして12年、遂に自己のレーベル、Don't Get It Twistedを立ち上げ、"Bob's Pillow/Spooky"を発表。
MALAはGILLESの発案で'11年、彼と一緒にキューバを訪れる。そしてMALAは現地の音楽家とセッションを重ね、持ち帰った膨大なサンプル音源を再構築し、'12年9月、GILLESのBrownswoodからアルバム『MALA IN CUBA』を発表(Beatinkから日本盤発売)、キューバのルーツ・ミュージックとMALAのエクスペリメンタルなサウンドが融合し、ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する。
"Come meditate on bass weight!"

前売り情報:
PIA (0570-02-9999/P-code: 241-304)、 LAWSON (L-code: 70720)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS(090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD.
1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
TEL:03-5459-8630
www.unit-tokyo.com


■JINTANA プレ・コメント

 そろそろ本格的に秋の空気になってきましたね。
 過ぎ行く夏の残り香を最後に楽しむチルアウト紀行をお届けします。
この連載を読みながらのBGMとして制作した楽曲もYoutubeにアップしましたので、ぜひ聴きながら、ゆったりと秋の美空を楽しんでくださいませ。

JINTANAプロフィール
Paisley ParksやBTBも所属するハマの音楽集団〈Pan Pacific Playa〉(PPP)のスティール・ギタリスト。同じく〈PPP〉のKashifや一十三十一、Crystal、カミカオル、あべまみとともにネオ・ドゥーワップバンドJINTANA&EMERALDSとして『Destiny』をP-VINEよりリリース。オールディーズとチルアウト・ミュージックが融合したスウィート&ドリーミーなサウンドがTiny Mix Tapeなど海外メディアも含め各地で高い評価を得る。LIVE予定は、jintana&emeraldsで12/29「和ラダイスガラージ特別篇」@六本木スーパーデラックス、ソロで11/1「FADER」@新世界。 「Destiny」アナログ盤、予約受付中⇒jintanaandemeralds.com
online shop/live schedule:::Jintanaandemeralds.com

■イビザのチルアウト/レイドバックサイド
~歴史と海とローカルフード~

 〈USHUAIA〉での鮮烈なイビザ・パーティ体験を経て、僕は放心していた。鳴り響くビートと青空から美しくグラデーションした星空、そして生命力を爆発させている若い男女。臨終のタイミングでも「アレはいいパーティだったな……ガクっ」と思い出せるような、一生の思い出に残るパーティだった。〈USHUAIA〉は、ひとつのクラブというより、常設のレイヴ会場といったほうが合っているのだろう。イビザにはそんなクラブがたくさんひしめいているのだから恐ろしい。

 さて、そんなアゴが外れた放心状態で、僕はイビザの街に出た。昨夜の経験から、僕の目には、この街のすべての人がパーティピーポーにしか見えなくなってしまっていたのだが、よくよく見ると街には穏やかな空気が流れていた。僕の滞在していたホテルもロビーで老夫婦が日向ぼっこしながらトランプをしている、というのがデフォルトの状態だ。この島の魅力はどうもパーティだけではないらしい。そこで翌日はイビザに根づくローカルな魅力を体験してみることにした。

 まずはビーチ。噂通りトップレスが多い。みんな大きなオッパイをポロリンチョして日向ぼっこを楽しんでいる。美しいビーチに並ぶ、健康的に小麦色に焼けた肌たち。うーむ。ただひとつイメージとちがったことは、その多くが60代の老夫婦であったことだ。とはいえ、みな、とても幸せそうで素敵だった。あんな老夫婦になりたいものだ。イビザはパーティ・アイランドという側面の他に、ヨーロッパの他の国々からやってきた50代、60代の方々がゆったり過ごすところ、という側面もあるようだ。

 つづいてビーチを通り過ぎ、ダルト・ビラと呼ばれる旧市街に向かった。
その一体には、岬のような形で海に面した城壁に囲まれた箇所がある。そこはローマ帝国やイスラム系の国家、そしてスペイン王国など多くの国による、さまざまに入り組んだ歴史とともにあったという。そして、そういった歴史的背景が培ってきた風土が大変貴重なものであることから、なんとイビザ島自体が世界遺産に登録されているとのことだ! なんということだ……。毎晩毎晩、僕らはアホみたいに踊りまくっているこの場所が、じつはすべて世界遺産の上での出来事だったということか。僕はブッダの手のひらで踊らされていた孫悟空のような気持ちになり、高台からイビザの蒼い海を眺めながら、感慨深く思った。これは少女漫画でよくあるパターンの、いつもめちゃくちゃ明るい男友だちが、「じつは昔は苦労して頑張っていたんだよね」っと爽やかに笑って語る横顔をみた瞬間に、ズキュン! と突然イケメンに見えはじめるというやつである。イビザ、やはりあなどれん。

 そんな感慨に耽りながら城壁の丘から降りて、僕はレストランComidas Bar San Juan(コミダ・バル・サン・ホアン)へ向かった。ここは地元の方にとても人気のある店らしく、一度行ったときはすごい行列で入れなかった店だ。イビザで行列ができるのは他では見たことなく、非常に人気店であると思われる。さて、お店の方にオススメを聞いたところ「ミートボール」と言う。咄嗟に「♪石井のお弁当くん、ミートボール~」という昔のCMソングが脳内をループしつつ、さほど期待せずに口に運んでみたら……ゥンマァ!!!!! トマトベースのスープの中におもむろに潜んでいるそいつは、一口ごとに肉汁が溢れ出し、食べ終わることが名残惜しすぎるほど愛おしい存在であった。ふぅ、イビザはローカル・フードも非常においしい街のようだ。

■カフェ・デル・マー
~音のシャワーを全身に浴びて~

 さて、僕は今回の旅の最大の目的地であるカフェ・デル・マーに向かった。アンビエント/チルアウト・サウンドの聖地として名高いこのカフェは、Sant Antoni(サン・アントニー)というビーチの波打ち際にある。僕はイビサ・タウンからバスにのり、サンアントニーへたどり着いた。(もちろんバスターミナルでかかっているBGMは派手なダンスミュージックであることは言うまでもない)。カフェ・デル・マーに向かって歩いていると、10代の白人カップルが話しかけてきた。彼らはすごくキラキラした瞳で、どのパーティに今晩行くんだい? という話題をしてきた。そしてとても重要な話のような口調で「やはりスティーブアオキは一度体験した方がいいよ! DJブースからでっかいケーキをぶん投げてくるんだ! 僕の友だちはね……ずっと口を開けて踊ってたよ!!!」などしょうもない話をしてくれた。僕らはそんな楽しいパーティ情報をひとしきり交換し、またどこかで会おうね! と言って別れた。こういう音楽愛という共通事項で繋がっているから誰とでも仲良くなれるという感覚は、すごく心地よい。

 サンアントニーの海岸はとても太陽でまぶしかった。海外沿いにはたくさんカフェ・バーが立ち並んでいて、どこからもダンス・ミュージックが流れてきている。そして一際白く輝き、帆のようにパラソルがはためく美しいカフェが目に入っていた。そう、ここが〈カフェ・デル・マー〉だった。
 太陽のきらめく水面に手の届くような距離で並べられた涼しげなテーブルとイス。そこに透明感のある心地よい音楽がスピーカーから流れ出ている。美しく流れるような書体でCAFÉ DEL MERと書いてあった。そこは、ブルーと透明と白でできた世界だ。
 僕はコロナビールを注文した。コロナなキャンペーン・ガールである身長180cmくらいの美女が白いサングラスをくれた。僕はしばしこの空間に酔いしれることにした。波の音、海に反射する太陽、透明で包み込むようなダンス・ミュージック……。

 ここは太陽と波と音が完璧に調和した空間だった。

 バーカウンター横のDJブースに目をやるとグリーンのTシャツを来たDJが楽しそうに回していた。太陽の位置がすこしずつ落ちる頃、DJはカフェの隣にあるステージに移った。そこは小さい屋外ライブハウスという感じの空間で、〈カフェデルマー〉に併設されているようだった。音に導かれるように太陽が沈んでいく。その瞬間を見届けようとたくさんの人が海岸に溢れ出した。昼から夜に変わる、毎日毎日あることなのに、その瞬間に浸り味わうだけで、なぜこんなにエクスタシーがあるのか。

 太陽が沈む瞬間、人々は歓声をあげた。まるでパーティのはじまりを祝うかのように。
〈カフェデルマー〉。何十年と培ってきた感覚の積み重ねによる強い説得力と、誰をもその世界に導く優しさをもっていた。

■旅を終えて
~永遠に四つ打ちが鳴り響く島~

 素晴らしい日々を終えて、僕はタクシーの車窓から街を眺めながら、シミジミした感慨に耽りながら空港に向かった。
 夕陽、波、二度と同じ瞬間はないという感覚。そしてそれと対話するかのようなダンス・ミュージック。それはその瞬間だけのインプロヴィゼーションを堪能させる体験だ。そして、それが一期一会の瞬間芸術であるからこそ、人生は有限であることを感じ、だからこそ「生きていることは素晴らしい!」というシンプルな気持ちにさせてくれる。

 そんな最高のチルアウトがなぜイビザで生まれたかというと、当たり前のことかもしれないが、最高のパーティーが一方にあることの対極のことがらだからだと思った。
 テンションが上がりきって絶頂へ連れていってくれるパーティがあり、その反対にクールダウンしきり、メロウで無我の境地へ連れていくチルアウトがあるのだと思った。陰と陽のように表裏一体で人生を味わわせてくれている。そしてその繰り返しがサウナ→水風呂→サウナ水風呂の永久運動のごとく、どこまでも気持ちよくさせてくれるのだ。

 そんなふうにシミジミとした気持ちも束の間、空港に着くとイミグレーションの列から、揃いのTシャツをきたバカそうな軍団が降りてきた。いちばん先頭の美女はビールジョッキ型のサングラスをかけている、薄暗い空港なのに。その愛すべきバカそうな軍団をみていると、僕はハイタッチして、「次はお前の番な! あとは任せた! グッ!」と言いたくなるような気持ちにさせられた。そういや行きに見かけた花嫁のヴェールをかぶった女子版バチェラーパーティー軍団はどうしているだろうか? そういや〈カフェ・デル・マー〉の前で見かけたとき「空港でいっしょだったね」と声かけたら「フゥ~!」と喜んでいた。
空港内には〈パチャ〉などのクラブ直営のファッション・ブティックがあり、巨大なビジョンにはさまざまなクラブのパーティ・シーンが映し出されている。そんな最後まで島を上げてのダンス・ミュージック全力投球な空気感の中で飛行機は飛びたった。

 眼下には美しい街明かりが広がる。この明かり、ひとつひとつのもとで、相変わらずダンスミュージックが鳴り響いているのだなあと思うと、旅の終わりなのに不思議と寂しくなかった。また、地球の反対側の日本に帰っても、ここでは永久に四つ打ちが繋ぎつづけられていると思うと、なんとなく安心もする。僕がどんなメンドくさい状況であろうとも、あそこではみんながずっと同じようにフゥ~! といいながら踊っているんだと。じゃあ大丈夫だと。何が大丈夫かわかりませんが。僕はそんな不思議な安心感とともに日本への帰路へとついたのでした。


終わりのご挨拶

拝啓 みなさま

 最後まで読んでいただきありがとうございました。
 その後、JINTANA&EMERALDSで夏の間はHOME SICK@京都メトロ、代官山UNIT、JIN ROCK FES、りんご音楽祭、またソロとしてOPPA-LAなど素晴らしすぎる箱やパーティでやらせていただきましたが、運営、箱のみなさま、見てくださった方々、本当にありがとうございました。
 月並みですが、海外から帰ってきて、日頃遊ばせてもらっている店やフェス、パーティにきている方々の、それぞれのセンスのよさや姿勢のカッコよさを改めて再認識し、ホントーにみんなカッコいいな! カッコよすぎる! と改めて感動しました。今後とも引きつづき、そこかしこでいっしょに遊んでくださいませっ!

PS JINTANAソロとしては、僕の尊敬する、あのヤバすぎるシンガーをフィーチャリングした楽曲を製作中です! そして、次のJINTANA&EMERALDSのライヴは12月29日「和ラダイスガラージ特別篇」@六本木スーパーデラックス(DJ: 永田一直 / 中村保夫 / CRYSTAL / CHERRYBOY VJ: 20TN! and more)です。ぜひ。

敬具


RHYDA (VITAL) - ele-king

秋 2014.10.03

都内を中心に活動するサウンドフリーク集団「VITAL」のMC。
B-BOY文学でありながらパンクとも形容されるLIVEは唯一無二!必見です。

秋、これからどんどん気温下がりそうですがチャートはケッコー夏を引きずった感じで。いい音楽聞いてまだまだHOTにぶっこきましょう!

10/25(sat)にホームである吉祥寺WARPにてPARTY開催!こちらもぜひ!

2014.10.25(sat)
Vital presents
YougonnaPUFF?
at Kichijoji WARP

Open-24:00
Entrance: 1500yen[1d]

◆LIVE
RAP BRAINS / VOLO
COCKROACHEEE'z / RHYDA

◆DJ
Endless aka Resort / Crash / OG from Militant B
g1 / m28 / NSR dubby X / Chara-bomb

◆CLOTHING BOOTH
DELTA CREATION STUDIO / RWCHE / mo' / MBJP

More INFO:
https://vitality-blog.blogspot.jp/

C.E AND THE TRILOGY TAPES AFTER PARTY - ele-king

 グローバル・コミュニケーションがマーク・プリッチャードとトム・ミドルトンによるユニットだと知らず、ただただジャケットに描かれた「耳」に惹きつけられて『76:14』を聴いた。何年もこのアルバムと付き合ってきて、あの聴覚体験を象徴する存在はやはりあの「耳」以外考えられない。僕がいくつか親しんできたウィル・バンクヘッドの作品のなかではシンプルなほうだが、もっとも印象に残るデザインだ。

 気づけばあなたもバンクヘッドをフィルターに音楽を聴いている。〈モ・ワックス〉や〈オネスト・ジョンズ〉からのリリース、ジェイムズ・ブレイクのファースト、〈ヘッスル・オーディオ〉のコンピレーション……、このあたりで数えるのをやめよう。よい音楽を追い求めていたら、彼の作品を無視することなど不可能なのだ。

 2008年にバンクヘッドがはじめたレーベル〈ザ・トリロジー・テープス(TTT)〉は、スリーヴはもちろんのこと、初期のカセットによる流通まで、すべてがデザインし尽くされていた。もちろん、その仕事が成り立つのも肝心の音があってこそ。呆れるほどラフで、ときに過剰なまでに写実性を追求するようなスリーヴ・デザインと呼応するかのように、さまざまなシーンで活躍するプロデューサーたちがこのレーベルからリリースを重ねてきた。

 デザインもサウンドも含めて〈TTT〉の動向が無視できないのと同様に、今週末のバンクヘッドの来日もチェックしていただきたい。先日フォルティDLとともに来日した、気鋭のライオン男のアンソニー・ネイプルズ。7月のリリースはまさかのジャングルだった、初来日となる百鬼夜行的な日本画が印象的なリゼット(なぜライオンと日本画なのかは作品をチェック)。いままさにチェックしたいこのふたりのアーティストとバンクヘッドがどんなステージを繰り広げるのか、連休明けから週末が気になってしようがない。

そしてこちらは先日公開されたC.EのA/W 2014-15のムービー。日本でのムービー制作は初となり、ディレクターには映像作家の伊藤高志を、音楽には当日出演するRezzettを迎えている。

www.cavempt.com

■C.E AND THE TRILOGY TAPES AFTER PARTY

日時:2014年10月18日(土)  24:30 - 28:00
会場:渋谷ヒカリエ ヒカリエホールB(入り口は11階)
料金:無料 フリー・ドリンク
備考:
20歳未満入場不可
要顔写真付ID
ファッションウィーク東京の最終日10月18日(土)にVERSUS TOKYOで発表される[C.E Spring/Summer 2015 presentation]のアフターパーティーとしての開催。

出演:
Will Bankhead

〈Mo’Wax〉でメイン・ヴィジュアル・ディレクターを務めたのち、〈PARK WALK、ANSWER〉といったアパレル・レーベルを経て、〈The Trilogy Tapes(TTT)〉を立ち上げる。〈TTT〉の運営と並行し、現在はミュージック・レーベルの〈Honest Jon's Records〉、スケートボード・カンパニーの〈Palace Skateboards〉などにデザインの提供もおこなう。
https://www.thetrilogytapes.com/

Anthony Naples

2012年、ニューヨークのレーベル〈Mister Staturday Night〉からリリースした「Mad Disrespect」でデビュー。その後すぐにFour Tetの楽曲をリミックス。今回一緒に来日するWill Bankheadのレーベル〈The Trilogy Tapes〉からもEPをリリースしている。
https://www.facebook.com/pages/Anthony-Naples/238739712996283

Rezeett

2013年デビュー。現在までにThe Trilogy Tapesから2枚のE.Pをリリース。
C.E A/W 2014-15のムービーに未発表音源を提供した。当日はライヴ・セットを披露。
https://www.facebook.com/itsrezzett
https://rezzett.bandcamp.com


OGRE YOU ASSHOLE - ele-king

静かな、しかしけっして止むことのない怒りの音楽竹内正太郎

 これは悪い夢なのだろうか、と思うことがある。数年前にはとても考えられなかったようなことが、いま、この国で実際に進行している。しかし、ある人にとってそれがどれほど悪夢のような世界に思えても、同時にそれは、他の誰かが夢にまで見た理想の世界でもあり得る、ということ。そして、その強烈なアイロニーを受け入れながら、同時に、徹底的な俯瞰でその全貌を描いてしまうこと。もし、そんなことをやってのけるロック・バンドがいまの日本にあるとすれば、それがオウガ・ユー・アスホールというバンドだろう。新作『ペーパークラフト』の一曲め“他人の夢”において、出戸学は「あー/ここは他人の夢の中」と歌っている。前作『100年後』で築いたあのムーディーなサイケデリアの照り返しの中で、ゆったりと、とても大らかに、まるでラヴ・ソングでも歌うような柔らかさで、彼は歌っている。

 さらに、この“他人の夢”という曲は、ここ数年のライヴや、セルフ・リメイク・アルバム『confidential』の中で極まりつつあったノイズ・エクスペリメンタルな傾向からはひとまず切り離された、『ペーパークラフト』が新たに提示するある意味ではニュートラルな、それでいてポップスの常道からは逸脱したような(それこそ、詞の中で「ここにあるすべてが少しづつ変だ」と表現されているような)世界を象徴する曲でもある。とくに、1分を超える間奏パートに敷き詰められたコズミック・ギターのカーテンは、技術のひけらかしではなく、むしろ無言のままに、その雄弁な沈黙でもって聴き手の耳を圧倒するだろう。「希望や夢が一人一人を狂わせているよう」という言葉すらものみ込んで。

 もし、オウガ・ユー・アスホールというバンドに不幸な点があったとすれば、転機となった意欲作『homely』のリリース・タイミングが、ゆらゆら帝国の退場とあまりにも綺麗に連動してしまったことだろう。正直に言えば、筆者もあのときに素直ではない反応を示してしまったリスナーの一人である。しかし、緩やかな韻律と、大さじの皮肉がなみなみと注がれる2曲めの“見えないルール”には、このバンドの覚悟を見い出さずにはいられない。もちろん、彼らの音楽を本当の意味で鍛え抜いたものが、仮に、3.11以降のこの国で起こったあれこれであったとすれば、僕はそれを喜んでいいのかわからない。ひとつ、確実に言えることがあるとすれば、『100年後』の一部楽曲を除いて、オウガ・ユー・アスホールの音楽でこのようなジレンマに陥ることはなかった、ということである。
 その意味で言えば、この『ペーパークラフト』というアルバムの卓越した練度と問題意識は、ゆらゆら帝国の『空洞です』の完成をもって一度は放棄されてしまった日本語ロックのその後の可能性と(2010年の解散声明に「結局、『空洞です』の先にあるものを見つけられなかったということに尽きると思います。ゆらゆら帝国は完全に出来上がってしまったと感じました」と記されたショックを僕はいまでも忘れられない)、ceroの『My Lost City』という作品、とくに“わたしのすがた”に刻印された震災後の日本への真摯な問題意識を堂々と引き受けるものと言えるだろう。どう聴いても流行りの音楽ではない。優しい言葉のひとつもない。が、孤独は慰め合うものではないということを、この音楽は教えてくれる。

 もちろん、『ペーパークラフト』は単なる生真面目さに縛られた作品というのでもない。“いつかの旅行”に見られるインディ・プログレ(?)とでも言うべき、まるでレトロなSF映画のSEをサンプリングしたようなプロダクションには豊かな遊び心が、また、いわゆるロックのイディオムからは遠く離れた、“ムダがないって素晴らしい”で乱舞するパーカッシヴなリズム・プロダクションには、忍耐強いリズムの探究がある。レコーディングのクレジット欄には、それを実現可能にしたアナログのヴィンテージ機材の数々が、記載しきれないほど列挙されている(“誰もいない”に吹き込まれるサックスの、あの叙情的な響きときたら!)。たとえば、とりあえず音圧上げて4つ打ち、というふうに、「敷居を下げることがポップである」と誤解されつづけているこの国で、彼らの試みがより多くの驚きを集めることを願う。
 言葉の面で言えば、タイトル・トラックである“ペーパークラフト”が決定的だろう。もちろん、前提として断っておけば、彼らのメタフォリカルな言葉はいまでも一定の抽象性を守っているし、本稿に記されているのはあくまでひとつの解釈に過ぎない。だが、それでも、本作での言葉がこれまでにない強度を備えているのは気のせいではないと思う。あの震災を受けて、「これで日本もよい方向に変わっていくかもしれない」という一時的な希望を持ってしまった私たちの、皮肉めいたその後を描いたのが“他人の夢”だとすれば、他方では、ハリボテの街での生活もそう簡単にはやめられない、その意味では誰しもがある意味では共犯者なんだ、というパラドキシカルな意識がこの曲、ひいては『ペーパークラフト』全体に通底しているようにも思える。しかも、そのような複雑さを伴う作業を、彼らは極限までシェイプされた言葉でやってのけるのだから!

 とはいえ、なにも僕は、「ロックとは何か/どうあるべきか」というウンザリするような定義戦争を仕掛けたいわけではない。が、この作品は、そんな徒労にもう一度だけ首を突っ込んでみたくなるような誘惑に満ちている。たしかに、僕たちは世界を変えることができないかもしれないし、世界も僕たちを変えることができないかもしれない。だが、あなたが好むと好まざるとに関わらず、世界を変えようとしてしまう人たちがどんなときにも存在する、ということは思い出すべきだろう。気づけば他人の夢の中で踊らされてる、なんてことになる前に。

 少し大きな話になってしまうが、イマココの現実を相対化するために、「あり得たはずのもう一つの現実」を生み出すフィクションの力を、この国においてもサイケデリック・ロックが担ってきたのだとすれば、人々が暮らす街をひとつの霊廟として、しかも紙作りの霊廟として見てしまう『ペーパークラフト』の超然とした想像力は、トリップしながらも覚めている。それも凶暴なまでに。それは単なる厭世ではないだろう。そう、これは静かな、しかしけっして止むことのない怒りの音楽である。ある種の文学と、ロックという表現の可能性をいまでも信じる人に、どうか届いてほしいと思う。

竹内正太郎

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積極的にどっちつかずでいること三田格

 物憂げでトゲトゲしい。しかもどこか青臭くて、迷ってもいる。トゲトゲしいといっても、それは歌詞=ヴォーカルだけで、サウンドは真綿のように優しく、いつしか……いや、いつのまにか息苦しさを増していく。上がりもせず下がりもしない。一定のテンションを保っているほうが残酷だということもある。「そういったもののなかにしばらくいたい」と思ってしまう自分はどういう神経をしているのだろうか。誰かとケンカでもした後で、その感情を反芻して泣いたりするのがおもしろいとか、そういうのともちがう。イギリス人がザ・スミスを聴くと、こういう気持ちになるのだろうか。でも、あれほどネガティヴに振り切れた歌詞ではないかもな。相変わらず積極的にどっちつかずで、あまりにも引き裂かれ、ロック的な皮肉からは少しかけ離れている。孤独を盾に取ったようなところがないからだろうか。

 耳が歌詞に行きすぎるので、言葉がわからないようにヴォリウムを下げてサウンドだけを聴いてみた(そうすると低音の太さがより一層際立った)。デヴィッド・ボウイ“レッツ・ダンス”風にはじまる“見えないルール”でコールド・ファンクかと思えば、ヤング・マーブル・ジャイアンツが(編成を変えずに)ボサ・ノヴァをやっているような“いつかの旅行”、そして、マガジンが昭和の歌謡曲をカヴァーしているようにも聴こえなくはない“ちょっとの後悔”などポスト・パンク期のサウンドが目白押しのように感じられた。一時期、彼らの特徴だと言われていたクラウトロックの陰は薄く、ペレス・プラドーの浮かないマンボをカンが演奏すればこうなるかなという“ムダがないって素晴らしい”に残像が焼きついているという感じだろうか。それでも、どの曲もOYAに聴こえるのだから、何をどうやったところで彼らは一定のトーンを編み出しているということなのだろう。「他者」というのは、よく知っていると思っていた人が別人のような顔を見せた時に立ち上がるものだという定義があるけれど、ここには少なからずの他者性があり、いわゆるツボには収まってくれない快楽性がある。控えめなパーカッションが効いている〈クレプスキュール〉調の“他人の夢”から ブライアン・イーノとローリー・アンダースンがコラボレイトしたようなタイトル曲まで、これだけの振り幅を1枚にまとめたのはけっこう大したもの。ガラっと変わるのはエンディングだけで、その“誰もいない”はオープニングの“他人の夢”と対をなしている曲なのだろう。「自分の夢」ではなく“誰もいない”である。ようやく孤独が見えてきた。

 ラテン・アレンジが目立つわりに全体にじとーッとしていて、最後だけカラッとさせるのはテクニックというものだろう。最後の最後にトゲを残さないのも一種のスタイルとはいえる。おそらく、それほどトゲは強くなく、対象のなかに食い込んではいなかったに違いない。悪く言えばOYAはこれまであまりにもヴィジョンのなかったバンドで、他人の描いた夢に乗っていたことを『ホームリー』で自覚しただけに過ぎず、初めて孤独を手に入れた瞬間を「誰もいない」と歌うことができたと考えられる。「他人の夢」を見ていた時期を右肩上がりの日本社会に喩えたり、社会の絶望を個人の希望に読み替える歌詞だと解釈したり、“いつかの旅行”を動物化に対する葛藤ととっても悪くはないかもしれないけれど、基本的にOYAは自分の位置しか歌にしてこなかったと思うと(紙『ele-king vol.4』)、過去を思い出して「バカらしい」と同時に「愛らしい」と感じたり、そのように言葉にできるということはシンプルに成長だと思うし(“ちょっとの後悔”)、忌野清志郎による主観性の強い歌詞が好まれた80年代に戻っているような印象を残しながらも、決めつけるような言葉は周到に退けつつどこか探るような言葉で歌詞を構築していくあたりは自我が周囲に散乱しているのが当たり前、いわゆるSNSや承認論が跋扈する現代のモードに忠実だともいえる。言葉を換えて言えば、ミー・ディケイド(トム・ウルフ)に対する反動から「ひとりよがりのポスト・モダン」(ザ・KLF)を取り除こうとした90年代を経て他人が介在する余地を残さざるを得なくなっているのが現在の「縛り」となってしまい、孤独になるのはかつてなく難しい課題になっているとも(忌野清志郎のために少し言葉を足しておくと「一番かわいいのは自分なのよ」と彼が歌った背景には全共闘による滅私の考えにノーを言おうとしたからだというのがある。松任谷由実の責任転嫁を肯定する歌詞はそれを異次元緩和したようなもので)。

 忌野清志郎がかつて持っていたような過剰なほどの被害者意識がここにはまったくといっていいほど存在していないので、返す刀のような考え方=トゲが他人に対してだけ向けられるものにはなりにくく、自分とは異なる価値観の上に成り立つものも「意外と丈夫にできている」(“ペーパークラフト”)と、妙な譲歩にも説得力がある。忌野が初心ともいえる“宝くじは買わない”(1970)と同じテーマを歌った“彼女の笑顔”(1992)で、「何でもかんでも金で買えると/思ってる馬鹿な奴らに」と切って捨てるような立場をOYAは確立し損なったわけである。OYAがこの先、それを再構築するために「自分の夢」を描く方向に行くのか、それとも「積極的にどっちつかず」でありつづけようとするのか。もちろん、後者のほうがおもしろいですよね……(忌野清志郎のために少し言葉を足しておくと、80年代には「金は腐るほどあるぜ 俺の贅沢は治らねえ」(“自由”)と、彼は物事の二面性を歌うのがホントに巧みだった)。

 言葉がわかるようにヴォリウムを上げて、もう一度、聴き直す。歌詞の意味よりも声だけに耳が行く。出戸学の歌詞はまだ出戸学の声に追いついてないと思った。

三田格

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