「W K」と一致するもの

R.Kelly - ele-king

 R.ケリーを聴くと、少なくともひとつは良いことがあるのを僕は知っている。R&B好きの女性と音楽の話題を通して、愛や恋やセックスにまつわるトークを開けっぴろげに、ディープにできる。それはとても素敵な時間だ。普段は口にするのも恥ずかしい言葉を平然と言えてしまう。「R.ケリーはあの歌の中でこんなことを言っているけど、オレはこう思うんだよね」という感じに。盛り上がれば、「じゃあ今度、一緒に聴こうよ」なんて誘い文句を繰り出すこともできる。はははは、楽しいぞ! 男も女も魅了する愛のドラマを描けるR.ケリーはまったく偉大な男だ。野田編集長に拠れば、あの女傑、アリ・アップでさえR.ケリーに一目置いているという。

 ディスコ/ヒップホップ以降、つまり"ポスト・ソウル時代"に登場した黒人男性R&Bシンガー/ソングライター/プロデューサーで、R.ケリーほど成功した人間はいないだろう。80年代後半、テディ・ライリーが発明したニュー・ジャック・スウィングはヒップホップ・ビートとR&Bのソングライティングを融合し、ヒップホップとR&Bの壁を取り払うことに成功する。それはブラック・ミュージックの歴史におけるひとつの革命だった。ニュー・ジャック・スウィング・ブームの余韻が残る90年代初頭にR.ケリーは本格的にキャリアをスタートさせる。
 セカンド『愛の12プレイ』(93年)、サード『R.ケリー』(95年)で独自の所謂性愛路線を確立し、両アルバムはそれぞれ500万枚近くも売れたと言われている。『愛の12プレイ』に収録された「セックス・ミー(パート1&2)」のあけすけなセックス描写とねっとりと絡みつく甘いヴォーカルに、10代の僕はそれまで聴いたどんな音楽からも駆り立てられることのなかった卑猥な妄想を刺激されたものだ。
 他方で、マイケル・ジャクソン「ユー・アー・ノット・アローン」をプロデュースし、映画『タイタニック』のテーマ曲で一躍時の人となったセリーヌ・デュオンとの「アイム・ユア・エンジェル」というデュエット曲を作っている。両者ともメロディ・メイカーとしてのR.ケリーの才能が光る、美しいスロー・バラードで、2曲ともクロスオーヴァー・ヒットを成し遂げた。

 1967年、R.ケリーはシカゴのサウス・サイドのプロジェクト(低所得者向け公営住宅)で生まれる。彼は、ただただ甘ったるいバラードやセックス賛歌("セックス・ウィード"、"セックス・プラネット")や女たらしの歌(T.I.とT・ペインをフィーチャリングした「アイム・ア・フラート・リミックス」のスムースなグルーヴには溶けてしまいそうだ)だけを歌ってきたわけではない。ゲットーから抜け出すことを誓い合った彼女との思い出を回想する"ゲットー・クイーン"、シングル・マザーへの愛情を歌った"愛しのセイディ"、壮大なゴスペル調の"トレイド・イン・マイ・ライフ"といった曲があるように、宗教的な精神から貧しい黒人ゲットーの人々へ向けた同胞愛まで、様々なドラマを歌い分けてきた故に幅広い層からリスペクトされてきたのだろうし、常に(ダンスホール、レゲトンを含む)最新のアーバン・サウンドを取り入れるという意味でも、ストリートの感覚を反映させるという意味でも、ヒップホップ的感性はR.ケリーの音楽の重要な要素と言える。そしてなにより、どこか憂いのある艶かしく悩ましいあの声が聴く者のハートの深いところを締めつけてくる。それは、マーヴィン・ゲイにもプリンスにも通底するブラック・ミュージックにおけるもっとも濃密なソウル――性と快楽と剥き出しの魂が渾然一体となった黒い媚薬とでも言えるような――のひとつの象徴だろう。

 それにしても、R.ケリーにうっとりした後にテレビから流れてくるアイドル歌手が歌うラヴ・ソングを耳にすると、どうにも幼稚でつらい。成熟よりも幼児性に傾きがちな日本のポップ産業においては仕方のないことかもしれない。が、恋愛やセックスが必ずしもピュアで、汚れなくキラキラしているとは限らないのに......まったく深みがなさ過ぎて本当にげんなりするものが多い。「大人を舐めるなよ~」という気持ちだ。恋愛をしていれば、彼女に飛び蹴りされて、コンクリートの路面にしたたかに体を打ちつけることだってあるし、金のことで言い争うこともある。また、ときたま事故のように訪れる......(以下、自主規制)。皆さんもよくご存知のように、愛や恋やセックスには壮絶な、嵐のような出来事が付き物なのだ。まさにR.ケリーが地で行くように。

 児童ポルノや性的虐待に関する容疑による逮捕・起訴(無罪を勝ち取ってもいる)、離婚問題、2枚のタッグ・アルバムを制作したジェイ・Zとの仲違い。R・ケリーの周囲にはセックスや女性関係にまつわるスキャンダルをはじめ、裁判沙汰が後を絶たない。いまやR.ケリーをゴシップ・ネタとしか扱わない向きもあるのだろうが、ビヨンセ、リアーナ、アリシア・キーズなどの例を出すまでもなく、"女の時代"だった00年代のR&BシーンにおいてR.ケリーは第一線に立ち続けた。

 そこで、前作『ダブル・アップ』から2年ぶりに届けられた、オリジナル・アルバムとして通算10作目となる『アンタイトルド』を聴く。特筆すべき"新しさ"があるわけではないが、安易に4つ打ちを取り入れた2曲と取って付けたようなサウス系の1曲を除けば、まったく期待を裏切らない出来と言っていい。欲を言えば、R.ケリーらしいストーリー・テリングをもっと聴きたかったというのはある。まあ、それでも十分に満足できる。ケリ・ヒルソンと猛々しくセックスを求め合う男女を演じるエネルギッシュなデュエット曲「ナンバー・ワン」(「Sex that we`re having here girl ohh(セックス、僕らは抱き合う、ガール、ohh)」)、売れっ子シンガー/プロデューサー、ザ・ドリームらをゲストに迎えたアーバン・ソウル"プレグナント"( 「Give you make me wanna get you pregnant(ガール、キミを妊娠させたくなっちゃうよ)」)、90年代中盤のメロウR&Bを彷彿とさせるセルフ・プロデュース曲"ゴー・ロウ"と"ホール・ロッタ・キスイズ"。いまR.ケリーを聴こうと思うならば、過去作ではなく、間違いなくこの集大成的な新作(リリースは昨年末)を手に取るべきだろう。これぞブラック・ミュージックにおけるエロスの真骨頂。堪らない。

CHART by JET SET 2010.01 - ele-king

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1

MENDO & DANNY SERRANO

MENDO & DANNY SERRANO YANARA / »COMMENT GET MUSIC
Savedらしくハード・エッジさもミックスしたアフロ・トライバルなモダン・ミニマルハウス作品!!Luciano率いるCadenzaでも活躍するMendoがスペインの新鋭、D.Serranoをパートナーに迎え、ややハード・エッジな作風のミニマル作品をリリース!!

2

MADLIB

MADLIB MEDICINE SHOW VOL.1 - BEFORE THE VERDICT / »COMMENT GET MUSIC
特殊ジャケ付2LPが緊急入荷! 初回限定プレス2000枚のみですのでお早めに!下地デザインとスタンプの組み合わせで、一枚として同じジャケがない(!!)という驚異的な拘り!さらに、裏には手書きナンバリング入りという念の入れ様...もはや執念に近いものさえ感じますね、こりゃ。

3

TRUS'ME

TRUS'ME IN THE RED / »COMMENT GET MUSIC
クレジット見たら仰天モノの超豪華メンツ参加!!Trus'meニュー・アルバムです!!Dam Funk、Linkwood、Amp Fiddler等、とりあえずスルーせず聴いてしまう大御所が揃いに揃ってます!!もちろん自身主宰"Prime Numbers"から!!

4

DRUID PERFUME

DRUID PERFUME OTHER WORLDS / »COMMENT GET MUSIC
コレはヤバい。Beefheart超えのフリーキー・ノイジー・ブルース・コア!!ミシガンのグレイト・レーベル、M'Lady'Sから、ミシガンの超危険バンド、Druid Perfumeが登場!!サックスとオカルト・コーラス吹き荒れる電子ノイズ・ブルース。グレイト!!

5

ZORT

ZORT MAMBO POA MARTINO EP / »COMMENT GET MUSIC
ウルトラ・キュート☆☆アルゼンチン産ダーティ・ポップ・ビーツ最高リミキシーズ!! Compostのエレクトロ鬼才Ben Monoによるエキゾ・エレクトロ・ハウス・リミックスA1も搭載。アルゼンチンの新星トリオによる傑作1st.12"です!!

6

V.A.(SELECTED BY DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI)

V.A.(SELECTED BY DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI) 20YEARS OF STRICTLY RHYTHM EP / »COMMENT GET MUSIC
Strictly Rhythmの20周年を記念した限定EP!DJとしてのキャリアは30年以上、世界に誇るパーティー「GODFATHER」の主催者の一人であるTohru Takahashiと、2009年にキャリア30周年を迎え今なお「Gallery」など現場の最前線で活躍するDJ Noriが膨大なカタログの中からVinylカットの為に厳選したナンバーを収めた1枚。

7

TERMINAL TWILIGHT

TERMINAL TWILIGHT BLACK AND BLUE / »COMMENT GET MUSIC
激オススメ★Italians Do It Better直系センスの新レーベル、Infinite Soundtracks第1弾!!グレイトです。Glass CandyがKraftwerkをカヴァーしたようなフィメール・コールド・ウェイヴ・ディスコ!!西海岸の男女デュオによる激傑作デビューEP。

8

ALEXKID & RODRIGUEZ JR

ALEXKID & RODRIGUEZ JR JERI CALL / LE DOIGT AFRICAN / »COMMENT GET MUSIC
エスニックなフォーンを使ったエキゾチックなモダン・ミニマルハウス作品!!Joris Voornを筆頭にMichel Cleis (Cadenza)、dopそしてBrendon Moellerらがプレイ、サポート中。

9

LOOPS HAUNT

LOOPS HAUNT RUBBER SUN GRENADE EP / »COMMENT GET MUSIC
炎上するウォンキー聖地スコットランドから新たな天才が登場しました!!ダブステップもウォンキーもこなす超新星Loops Haunt。新興レーベルからの第1弾となる今作には、Joker以降のパープル・ステップ傑作B1が収録されてます!!

10

LOVELOCK

LOVELOCK PINO GRIGIO / »COMMENT GET MUSIC
ZombiメンバーによるMindless Boogie歴代屈指の傑作!! Mexican Summer発10"EPも大好評、Zombiの片割れSteve MooreがLovelock名義で遂にリエディットを発表、これが素晴らしい内容でした!!

 雑誌がなくなっていくー......とかいいながら自分もまるで買わない。フリーペイパーもそのまま捨てる。相変わらず『日経サイエンス』と『ニューズウィーク』を特集によって買うだけで、黙っていても定期的に送られてくる雑誌は『アエラ』のみ。学生時代に雑誌の配達というアルバイトをやっていて、世の中にこんな雑誌があるのかと思うと、なんでも1冊ずつ買ってみた頃がウソのよう~(レストラン経営とか東洋経済まで買いそうになった)。そのような時期にはなくて、いま、豊富にあるのが、しかし、友人関係で、美術雑誌はまったく手に取らなくても工藤キキがE!という展示やギャラリーにはほとんど足を運んでいる(チム↑ポムも最初に教えてくれたのは彼女だしー。♪オレのまわりはピエロばかり~......違うか)。

  年末から年始にかけて神奈川県民ホールでやっていた「日常/場違い」展も工藤探偵事務所の下調べによってすでに優良だと判断が下されていた。報告書によると実演をやっている日に行った方がいいというので、その通りにすると、いきなり会場の外で串刺しにされた自動車が空中で大回転。そのスピードがまた速い。スカジャンを着込んだ若者=作者の久保田弘成が思いつめたような表情でアクセルを吹かし、巨大な洗車機を駆動させている。J・G・バラードや映画『クラッシュ』のファンが見たら射精どころでは済まないのではないだろうか(女性の場合は......省略)。しかもBGMは大音量で「津軽じょんがら」。作品のタイトルは「ベルリン・ヒトリタビ」。何がなんだかわからないままに実演が終了し、そのまま展示会場に入ると、今度は洗車機の外枠部分に30メートル近いコンクリートの棒が突っ込まれている。それには「性神式」という題がつけられていて、あー、やっぱり性のメタファーなんだなと微弱な着地点が見えてはきたものの、それにしてもダイナミックなことこの上ない。何かが思いっきり剥き出しになっている。村上隆がおたくの性を題材にしていた作品にもダイナミズムを感じさせる仕掛けはあったけれど、観念が肥大していく方向がまったくの逆なのだろう。

  総勢6人による展示の全容は工藤キキに任せるとして、その日、僕が気になったのは展示の誘導にあたっていたのが、なぜかみな、中年の女性たちで、説明がとにかく丁寧。全体にホスピタリティが異様に高く、それだけでアート・スペースにいる気がしなかった。我が子の作品を見て下さい......というわけでもなく、神奈川県民ホールという聞きなれない場所を使っていることもあって、その場所がどのようにして成り立っているのか最後まで疑問に残ってしまった(入場料は700円)。それはてれてれと中華街まで歩き着いた頃にも頭の裏の方ではもやもやとしたままで、大谷能生に教えてもらった福満園本店の黒チャーハンを食べている時にも肥大し続けた。あれかなー、これって、やっぱり県民ホールが主催だし、事業仕分けの対象になりかねない予算でやってたりするのかなー。「日常/場違い」なんていう無骨なタイトルもそれだったら妙に納得が行くし、開催時期も年度末に近いし、チラシをよく見ると「古典落語×現代アート」とか関連イヴェントにも奇態なものが多いし......

  国家予算の配分というと、30年ぐらい前に父親が半官半民の大学を立ち上げるというタイミングで研究施設の予算をどのように申請するかでそれなりにテクニックを使って(自然科学のことしかわかっていない同業連中を相手に自分だけ建築法を勉強して)自分のつくりたいように施設を建立したというようなことがあって、その時に、一回でも要求額を下げたら、次年度からはそれ以上の請求ができなくなるから予算は少しでも高めに申請しておかないと後がマズいというようなことをいっていて、ということは誰も彼もがそうせざるを得ない仕組みになっているということだろうから、「国家の歳出というものが減るわきゃーねえな」と思ったことを覚えている。つーことはですよ、「一度減ったら二度と増えない」ではなくて「減らしたら増える」という仕組みに作り直せばいいんじゃないかと。1年間予算を低く抑えたら、ある程度まとまった額の交渉権を保留にできるようにして、それが仮に5年続いたらかなりの額の事業計画を検討してもらえる交渉権にヴァージョン・アップするとかすれば、たとえば地方だったら毎年、毎年、中央に陳情に出かけてくる交通費だって浮くだろうし、年度末調整とかでバカスカ使っているお金が累積でいくらになるのかわからないけれど、それが仮に同じ金額だったとしても5年分とか10年分とかまとまって入ってきた方が自治体だって思い切った使い方ができたりするんじゃないのかなーとか。

  こんなところで書いてしまっていいのかわからないけれど、RCサクセションやフィッシュマンズをマネージメントしていた音楽事務所の入社テストは「500円で何か買ってきなさい」というものだった。細かいものを沢山買ってくるか、大きなものをひとつ買ってくるか、それだけでその人が将来、事務所でどんなことをやってくれるか、けっこうなことがわかるというのである(どうすると採用されるかは秘密です)。旧ソヴィエト連邦(レンホーじゃないよ)で有名な「五カ年計画」は元々はモンゴル帝国の習慣が13世紀に西方にも伝わったもので、社会主義だからできたことというわけではないらしい。CDや映画でもいい加減、低予算で品数だけは多いというやり方にはウンザリだし、それこそ国家予算なんだから、どうだろう、仕分けではなく、この際、予算の組み上げ方自体を変えてみては!

ジョセフ・ナッシング

  ......というところで何年か前、ワープ・ナイトにジャクスンを観に来ていたジョセフ・ナッシングとばったり会ったことを思い出す(つーか、初めから考えてあった)。『ダミー・ヴァリエイションズ』や『デッドランド・アフター・ドリームランド』など快作を次から次へと繰り出していった彼は、しかし、その時、実は2~3年つぶれたままで、ほとんどアル中のようなものになっていたと話してくれた。ようやく物事が手につきはじめたという彼がそれから『シャンバラ・ナンバー・ワン』を出すまでにはさらに2年を要すことになるけれど、時間をかけた結果というものはやはり素晴らしいものだった。昨年末、サード・イヤーのクリスマス・ナイトに行くと、そのジョセフ・ナッシングがオーケストラ名義でライヴをやっていた。例によって友人たちとバカ話に高じていたら、あ、なんだろ、これはいいなと思ってフロアに飛び出すと彼がラップ・トップに顔を埋めていたのである。ひとつのことにこだわり続けたリズムと、その発展的な展開と呼ばれるものがそこにはあった。その後で聴かせてもらったニュー・アルバムとは印象は少し違っていて、その時、その空間に広がっていた音楽は長いこと時間をかけたものにしか出せない何かに満ち溢れていた。僕は次の日に体が痛くなるようなヘンな踊り方をしばらく続けた。音楽に体を合わせるということはそういうことだから。

■近刊
1月24日 『ゼロ年代の音楽 壊れた十年』(河出書房新社)*共著
2月10日 『ゲゲゲの娘 レレレの娘 らららの娘』(文藝春秋)*編集
2月25日 『手塚治虫 エロス1000ページ(上・下)』(INFAS)*編集

CHART by STRADA RECORDS 2010.01 - ele-king

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1

RADIOHEAD

RADIOHEAD I LOVE TO KEEP(10inch) SENSEI PLATES(US) / 2010/1/8 »COMMENT GET MUSIC
Master KevとTony LoretoがRADIOHEADをリミックス!SHELTER系の作品を彷彿とさせる黒いパーカッション・ビートがカッコいいディープなヴォーカル・チューンに仕上がっています!ビート・トラックも収録!

2

JOE CLAUSSELL

JOE CLAUSSELL WITH MORE LOVE SACRED RHYTHM (US) / 2009/11/20 »COMMENT GET MUSIC
A面には13分超の「With More Love Dance Version」を収録!Joeらしい骨太で疾走感のあるビートと軽快なリムに、哀愁漂うエモーショナルなギターソロが秀逸!多くのミュージシャンが参加していることで「生」ならではの力強さが前面に押し出された抜群のインスト!Body&SOULではこの1枚に収録されているDance Versionと限定Box Setに収録されるエクスクルーシヴVersionを立て続けにプレイ、終盤に差し掛かった時間帯にクラウドを音に酔いしれさせたことの記憶に新しい作品!B面にはMenrtal Remedy名義でリリースした傑作「The Sun The Moon Our Souls」の限定CDに収録されていたEntreaty」と「Kotu Rete (atmospheric reprise)」の2曲をカップリング!

3

HOMEWRECKERS

HOMEWRECKERS NOT MY BUSINESS CIRCUS COMPANY(GER) / 2010/1/21 »COMMENT GET MUSIC
DAVID MANCUSOがヘビープレイした「HOME WRECKERS REWORK」も記憶に新しいドイツの三人組HOMEWRECKERSの新作がCIRCUS COMPANYから登場!ざっくり言うと「気だるく妖しい男性ボーカルの乗ったミニマル・テック・ハウス」なのですが、じわじわ加速していくような展開の巧さ、フロア栄え抜群の硬質&極太ファンキーなシンセ・ベース、幻想的&シリアスな上ものなど、絶好調時のCARL CRAIGを思わせる圧倒的とも言えるサウンド・クオリティーの高さは必聴ものです。B面2曲目では同レーベルよりDAVE AJUがリミキサーとして参加

4

MICHEL CLEIS

MICHEL CLEIS LA MEZCLA-REMIX EP feat.TOTO LA MOMPOSINA MOSTIKO(EU) / 2010/1/26 »COMMENT GET MUSIC
Luciano率いるCadenzaよりリリースされ2009年度を代表する空前の大ヒット作となったMichel Cleis「La Mezcla」のリミックス12インチがベルギーのMostiko傘下のBelgian House Mafiaから登場!ディープ・ハウス・ファンならベテランCharles Websterのミックスは必聴!DefectedからCopyright、BPitch ControlからPaul Kalkbrenner、Roog & Greg Electronics主催のDJ Roog、とハウス&テクノの実力派がリミキサーとして集結した充実の一枚!

5

GUILLAUME&THE COUTU DUMONTS

GUILLAUME&THE COUTU DUMONTS THE PUSSY SHEPHERD MUSIQUE RISQUEE(GER) / 2010/1/21 »COMMENT GET MUSIC
OSLOやCIRCUSCOMPANY等からのリリースでもお馴染みGUILLAUME & THE COUTU DUMONTSがAKUFEN主宰のレーベルMUSIQUE RISQUEEから12インチをリリース!パーカッション系トラックが得意な彼らですが、今作では黒くグルーヴィーなディープ・トラック「Raw」がオススメ!ソウル~ファンク系のヴォーカル、コーラスのサンプリングもカッコイイ!

6

V.A

V.A PRIME NUMBERS EP E11 PRIME NUMBERS(UK) / 2010/1/21 »COMMENT GET MUSIC
Trus'meが主宰するこのレーベルからの新作12インチはMr.Scruff & Kaidi Tatham、Motor City Drum Ensembl、Andresら3組のアーティストを収録したEP!中でも人気絶頂のMotor City Drum EnsembleによるB1が最高!突進する黒いグルーヴ感がたまりません!

7

I:CUBE

I:CUBE FALLING EP VERSATILE (FR) / 2010/1/20 »COMMENT GET MUSIC
フランスの人気レーベルVERSATILEからI:CUBEが12インチをリリース!オススメはB面に収録されている「Un Dimanche Sans Fin」!グルーヴィーなダンス・クラシック調の洗練されたインスト・チューンです!

8

NICO PURMAN

NICO PURMAN RHAPSODIES VAKANT (GER) / 2010/1/21 »COMMENT GET MUSIC
CurleやMule ElectronicからもリリースしているアルゼンチンのクリエイターNico Purmanの12インチ!図太いベースにアフロ的なパーカッションが入ったB面「Funk Forest」がグッド!テック・ハウスと呼ぶには黒すぎるサウンドがカッコイイ!

9

V.A

V.A REMAKE MUSIQUE VOL.4 REMAKE MUSIQUE(FR) / 2010/1/20 »COMMENT GET MUSIC
フランスの注目レーベルREMAKE MUSIQUEからの第4弾EP!パーカッシヴ&トライバルな使えるハウス・トラックを中心に人気クラシックGrace Jones「La Vie En Rose」のエディット的作品なんかも収録!

10

TRUS'ME

TRUS'ME IN THE RED(W-PACK) FAT CITY(UK) / 2010/1/21 »COMMENT GET MUSIC
2ndアルバム!ソウルやジャズ、ハウス、ブギー等が渾然一体となった黒いサウンドが圧巻!AMP FIDDLERやPAUL RANDOLPH、LINKWOOD、PIRAHANAHEADらも参加した大充実盤です!

Talk Normal - ele-king

 最近はふたり組のバンドが目に付く。スーサイドを最新ヴァージョンにアップデートしたようなウェット・ヘアーもそうだし、トーク・ノーマルもそうだ(昨年末に観た巨人ゆえにデカイもそうだった)。昨年末に発表したデビュー・アルバム『シュガーランド』はiPodに入れてよく聴いている。彼女たちの音楽は、カンが残した名曲のひとつ"ピンチ"をアップデートしたような、トライバルな反復性と重厚なノイズ、そしてニヒルなヴォーカリゼーションに特徴を持っている。ドラマーのアンドリヤ・エンブロによるトライバルなビートにはボアダムス・フォロワーたちのブルックリンを感じることもできる。で、調べてみたら実際に彼女は77ボア・ドラムに参加していた(もうひとりのメンバー、ギターのサラ・レジスターはマスタリング・エンジニアとしてそれなりのキャリアを持っている)。とにかく僕は、この音楽の"エネルギー"に打ちのめされたのである。街を歩いているとき、電車に乗っているとき、この音楽を体内に注入するとまるでカンフル剤のように機能する。ノイズでありながら、ダンサブルなところも良い。

 『シュガーランド』が好評だったこともあり、2008年にCDRのみで発売されていた5曲入りがヴァイナルで登場した(それとダウンロード、いまのところCDはなし)。A面の3曲――目が覚めるようなノイズではじまる1曲目の"グリニン・イン・ユア・フェイス"における歌とトライバル・ビートの掛け合い、"ユリーカ"におけるも不協和音とマシナリーなビート、ESGを彷彿させる"レモネード"も素晴らしいが、このバンドの可能性を感じるのはB面に収録された2曲だ。"33"でクラウトロックの反復を寒々しく凍らせたような、あるいはホラー映画のサウンドトラックめいた音を展開すると、続く"レスト・ウィズ・ミー"は実な巧妙にミニマリズムとドローンを取り入れて、いわば"IDMスタイルを通過したヴェルヴェッツ"のような音を創出している。

 これはニューヨークのアンダーグラウンドにおける伝統的ノイズ・ロック、その最新版。

Chart by Lighthouse Records 森広 2010.01.28 - ele-king

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1

PIXELTAN

PIXELTAN YAMERARENA-I DFA / UK / 2009/12/23 »COMMENT GET MUSIC
NYのディスコ・ロック系レーベルとしておなじみの[DFA]から、なんと脱力系な日本語女性ボーカルをフィーチャーしたニューウェーヴ・ディスコ・ナンバーが登場。インパクト大でユーモラス、それでいてトラック自体もカッコいいナイスな一枚!

2

JOAQUIN JOE CLAUSSELL

JOAQUIN JOE CLAUSSELL UN.CHAINED RHYTHUMS EXITS SACRED RHYTHM MUSIC / US / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
ダントツのクオリティーの生音系ディープハウスをして昨今ますます存在感が増している感のあるJOE CLAUSSELLが、以前から話題だったボックスセットをついにリリース!流行と関係なく何年後でもずっと聴けるような珠玉の内容に!

3

NEBRASKA

NEBRASKA A WEEKEND ON MY OWN EP RUSH HOUR / NED / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
再発2枚も大人気だったNEBRASKAが、またしても[RUSH HOUR]からシングルをリリース!
この極上エレピ・ワークが効いたアーバンでウォーミーでグルーヴィーなジャズファンク・ディープハウス、今回も相当イイです!

4

JOAKIM

JOAKIM SIDERS VERSATILE / FRA / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
[TIGERSUSHI]主宰JOAKIMが甘くてエモーショナルに沁みるボーカルをフィーチャーしたエレクトリック・ブギーをリリース。
しかもEWAN PEARSONによるドープでサイケでグルーヴ感抜群のリミックスが最高にカッコよく、これは早くフロアで聴きたいです!

5

NOMI & RAMPA

NOMI & RAMPA INSIDE REBIRTH / ITA / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
昨今リミキサーの人選もイイ感じな[REBIRTH]から、今度はRUB N TUG/STILL GOINGのERIC D.をリミキサーに起用した新作がお目見え。
HOUSE OF HOUSEみたく90'sハウス感をセンス良く活かしたディープで幻想的な女性ボーカル・ナンバーで広い層から支持を得そう。

6

TRUS'ME

TRUS'ME IN THE RED FAT CITY / UK / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
NUMBERS]を主宰するマンチェスターの新世代ビートダウン・ハウサーの話題の2ndアルバムがついにアナログ化。ジャズ、ソウル、ディスコ、ファンク等のブラック・ミュージックの要素を色濃く含んだ、現場でも自宅でも活躍してくれそうな充実の内容となりました。

7

LUCIO AQUILINA

LUCIO AQUILINA BLACK ELF EP HIDEOUT / 2010/12/15 »COMMENT GET MUSIC
イタリアのテック・ハウサーが地味に放ってきた何気にカッコいい一枚。オーガニックでメロディックなチャイムの音色を用いながらグルーヴィーに展開していくディープハウシーなモダン・ハウス・トラックです。

8

JAKOB CORN

JAKOB CORN SUPAKRANK DOLLY RECORDS / GER / 2010/1/19 »COMMENT GET MUSIC
PANORAMA BARのレジデントとしても知られる女性DJ、STEFFIが立ち上げた新レーベルの第1弾は[RUNNING BACK]から昨年デビューしたJACOB KORNによる別名義。センスのいいモダン・ディープハウスやスモーキーなビートダウン系トラックを聴かせてくれます!

9

WAREIKA

WAREIKA MOUNTAIN RIDE TARTELET / DEN / 2009/12/8 »COMMENT GET MUSIC
'09年ブレイクした人気ユニットWAREIKAが年末前に放った一枚。ホーンやパーカッション、ボーカルなどを用いながらグルーヴィーでノリのいいバルカン系ミニマル・トラックを展開していてフロアをバッチリ盛り上げてくれます!

10

ANTONELLI

ANTONELLI DISCONNECTED DRECK / UK / 2009/12/22 »COMMENT GET MUSIC
[ITALIC]で活躍してきたドイツのミニマル・ハウサーがロンドンの[DRECK]からナイスな一枚をリリース。JUSTUS KOHNCKEやPARTIAL ARTSあたりに通じるような、アナログ機材のレトロな質感を活かしながらビルドアップしていくシンセ・ディスコです。

Vampire Weekend - ele-king

 30年前に大好きだったペイル・ファウンテインズのシングル集のようなCDを買った。ほとんど全部、持っているのになぜか衝動買いだった。そして、久しぶりにまとめて聴いたら......こんなにヘタだったのか......ガーン......

 忌野清志郎のソロ・アルバム『レザー・シャープ』でエンジニアを務めたチャールズ・ハロウェルはペイル・ファウンテインズのサード・アルバムをプロデュースし、そして、失敗に終わったと話してくれたことがある。クラッシュからドロップ・アウトしたトッパー・ヒードンと失業状態のスティーヴ・ヒレッヂがその時、目の前にはいた。清志郎は「♪曲がり角のところで~」と歌い出す。RCサクセションとして次のアルバムをつくるはずだったのに、ひとりでロンドンにいる清志郎も含め、誰ひとりうまくいっている人はいなかった。ペイル・ファウンテインズの話をする時、ハロウェルは少しうな垂れていた。「スタジオ内は完全に煮詰まって、どうにもならなくなってしまった。半分までできたところで終わりだということがなんとなくわかったよ」

 ハロウェルは夢を見ない若者だった。階級社会のイギリスが彼には一生、労働者だという自覚を与えていたのである。80年代といえばパワー・ステーションのドラムがすぐに引き合いに出される。あれはハロウェルがつくった音だ。自分のドラムの音をあれと同じにされたといってトッパー・ヒードンはカンカンに怒っていた。トッパー・ヒードンを黙らせたのは清志郎だった。清志郎は80年代を受け入れようとしていた。チャールズに向かって清志郎が「素晴らしい!」と英語でいった。「マーヴェラス!」。清志郎はハロウェルを日本に迎えてもう1枚のアルバムをつくった。「マーヴェラス」を縮めた『マーヴィー』だ。典型的なメンフィス・サウンドといえる「シェルター・オブ・ラヴ」をいかにもニューウェイヴ風のアレンヂで聴かせているのは清志郎とハロウェルの接点がそこにあったからである。仮ミックスが終わると、「チャールズ! マーヴィー!」と、清志郎は何度もマイクに向かって小さく叫んでいた。

 ペイル・ファウンテインズの透き通るようなサウンドを、あの瑞々しい音楽を、「夢を見ない」ハロウェルはどのように受け止めていたのか。諦めの裏返しとして有効な響きがそこにはあったのだろうか。そして、あの瑞々しさが重々しく変化していった時に、彼の心には何か感じることはあったのだろうか。さらには重い音さえ出せなくなってしまった時には......。


 ヴァンパイア・ウィークエンドは怖ろしいほど清々しい。これは何かの裏返しなのかと勘繰る気持ちさえ起こさせない。「どんな音楽?」と聞かれればファーストはトーケンズがカヴァーしたモノクローム・セットの「アポカリプソ」だったけど、セカンドはそれほどふざけてはいなくて「ファン・ボーイ・スリー+ハワード・ジョーンズ」と答える。ロスタム・バットマングリー(......って、コウモリだらけなんですけど)による別働隊、ディスカヴァリーからのフィードバックだったのか、セカンド・アルバムではエレクトロニクスが随所で取り入れられ、そのせいで、もはやアメリカのバンドが頭に思い浮かぶことはない。このセンスは完全にイギリスのものだし、とはいえ、ペイル・ファウンテインズの隣に彼らの音楽を置くのも抵抗がある。これがいまのアメリカだとしかいいようがない。アン・ライス以来、アメリカではゲイの比喩だとされてきた吸血鬼を名乗り、ソカやスカのリズムにのせて爽やかなメロディを歌う彼らが全米で1位をマークするという流れ。アメリカは何かに疲れてしまったのだろう。これが10年前には(イギリスから強引に取り寄せた)レイディオヘッドをアンセムとして称え、20年前にはニルヴァーナをトップに置いてきた国のその後の姿だとしかいいようがない。一方にアニマル・コレクティヴTV・オン・ザ・レイディオがいることを思えば、サイケデリック・ムーヴメントに対するサイモン&ガーファンクルのようなものになろうとしているのかなとか(まだ、そこまでの強度はないけれど)。

 ヴァンパイア・ウィークエンドはペイル・ファウンテインズのように煮詰まることはないだろう。彼らの清々しさは何かと引き換えにして出てきたものでは、たぶん、ないからである。変化することを楽しんでいるバンドのようだから、次で一気にエレクトロニカということもありうるのかもしれないけれど、あまりおおっぴらに記号化しない方がきっと長い支持は得られることでしょう。小手先の面白さでは、もしかすると、いま、一番なんだから。

Astor Piazzolla - ele-king

 去年の暮れに店頭にならんだ『ザ・ラフ・ダンサー・アンド・ザ・シクリカル・ナイト[タンゴ・アパシオナード]』は、86年から88年の間、晩年期のピアソラが〈アメリカン・クラーヴェ〉にのこした3作の2作目にあたり、ボルヘスの短編に着想を得たグラシエラ・ダニエレが制作したミュージカル「タンゴ・アパシオナード」の伴奏音楽が契機になった(じっさいは音楽劇で使用した楽曲を再構成した)ヴァラエティに富んだ作品だったが、「クラーヴェのピアソラ」の残り2作に比べると小品の感がしなくもないと書くと異論がありそうだが、当時の五重奏団と若干異同のある布陣で吹き込んだ『ザ・ラフ・ダンサー~』は、内側に圧縮する志向をもつピアソラの楽曲をどこか外へ開くようでもあり、私は今回リマスタリングでSACD仕様になったこのアルバムを、10年とはいわないまでもそれくらい久しぶりに聴いて、当時抱いていたクールでモダンな響きを、アンディ・ゴンサーレスやパキート・デリヴェーラといったジャズ/フュージョン奏者たちが異化していたことに気づいたのだった。スタッカートとスウィングのちがいというか、『ザ・ラフ・ダンサー~』ではジャズの身体性がタンゴのリズムを揺らし、楽曲の厳格さへの緩衝材になっていて、"ピアソラのタンゴ"へ迂回する(せざるを得なかった)回路がこのアルバムに小品といわないまでも実験作の風情を与えている。ブロンクス生まれながらラテン音楽に親しんだハンラハンの二重のアイデンティティが、4歳から16歳までをおなじくニューヨークで過ごしたピアソラの履歴と重なり、当人たちも意識しなかったモザイク状の暗喩をふたたび浮かび上がらせた『ザ・ラフ・ダンサー~』は『タンゴ:ゼロ・アワー』と『ラ・カモーラ』のほかの2作とともに、都市と形式の間を往復しながら聴き直されるべきだとおもう。

 ブロンクスで誕生したヒップホップと同じく、元はダンスと音楽とローカリティの複合物だったタンゴはピアソラの登場を俟つまでにすでに数十年の歴史(ヒストリー)と流儀(スタイル)を蓄えてきたが、多感な時期をニューヨークですごしたピアソラにはタンゴはエキゾチシズム抜きには接せられない音楽で、彼はタンゴ好きの父にバンドネオンを贈られてもさしてうれしくなかった。1921年生まれのピアソラは作曲家になるため留学したパリで師事したナディア・ブーランジェにタンゴをつづけるよう進言され帰国した60年代まで何度か挫折を味わったが、ピアソラにとってタンゴは、いまではほとんどのひとがヒップホップをブレイクダンスやグラフィティと切り離した音楽と認識するように、流儀でなく音楽の形式だった。「タンゴはどこまでタンゴなのか?」という自問自答。ピアソラのディスコグラフィにはそれが繰り返しあらわれてくる。『タンゴ:ゼロ・アワー』ではそれが先鋭化し、彼は藤沢周のやたらとハードボイルドな小説のタイトルにも引用された「ブエノスアイレス零時」のゼロのコンセプトを拡張し、タンゴの境界線を形式の力で探りあてようとする。私には「ブエノスアイレス零時」は昨日と今日を分かつ都市を徘徊するさまを描写した傑作なのだけど、それから20年以上経ってピアソラの音楽は完全に音楽に純化されたように聴こえる。『~ゼロ・アワー』の曲はかつてあったものの再演ではあるが、ピアソラの神経が隅々まで行き渡った後期五重奏団の再現性は、タンゴだけでなくクラシックやジャズの要素をアナロジーとしての多声部に変換し、1曲にアルバム1枚分の濃度をもたらし、私は多楽章形式の"コントラバヒシモ"なんか聴き終えるとどこかに旅行してきたような気持ちになるのだけど、このトリップ感(?)はあくまでもフォーマットの運動がベースにある。その意味でピアソラはタンゴの革新者だったが自身の音楽言語を手放さなかった古典的な作曲家でもあった。

 形式はやがて複雑化する。それはあらゆるジャンル音楽のあたりまえの展開なのだけど、「さらに複雑で美しい曲を」というハンラハンの求めに応え、87年と88年の夏に避暑地、プンタ・デル・エステ(ギリアムの『12モンキーズ』で使われた"プンタ・デル・エステ組曲"はここに由来する)で書き上げた組曲がメーンの『ラ・カモーラ』はトリップというよりショート・ステイほどの大作志向になり、和声は緊張感を高め、リズムは入り組み、場面はめくるめく、演奏は奔放になり、彼の音楽に叙情性を託すリスナーを煙にまきさえする。ここがたぶん境界線の手前だった。タンゴの体系の内側に充満したピアソラの体系。それは保守と革新という単純な二項対立ではなくて、"複数の形式"の相克だとおもう。ワーグナーでもストラヴィンスキーでもシェーベルグでもいい、形式の境界線ぎりぎりまでいくと音楽は形式の反作用を内側に抱えることになる。これは西洋音楽の話だけど、ピアソラは「タンゴはどこまでタンゴなのか?」との問いに答えると同時に「このフォーマットにはどれくらいの容量があるのか?」計ろうとした。クラーヴェのピアソラは私たちが現時点で聴けるその二重方程式の解であり、私は3作をあらためて聴き通して、森敦の文章をおもいだした。かなりな飛躍ですけどね。森敦は数学的にただしくないかもしれないと前置きしながら、トポロジーを文学的に読み解いてみせる。

近傍は境界にそれが属せざる領域なるが故に密蔽されているという。且つ、近傍は境界がそれに属せざる領域なるが故に開かれているという。つまりは、密蔽され且つ開かれてさえいれば近傍といえるのだから、近傍にあっては、任意の点を原点とすることができる。境界も円である必要もないばかりか、場合によっては域外における任意の点をも原点とすることができる。」(『意味の変容』筑摩書房)

 繰り返すが、ピアソラは破壊者でも越境者でもなかった。タンゴの近傍でタンゴの意味を反転させようと企図したモダニストだった。そう考えるとハンラハンとの出会いは当然のことに思えてくる。ふたりはともに都市にいて伝統に向き合った。ピアソラは3枚のアルバムを出したあと体調を崩し、五重奏団は解散した。彼はのちに六重奏団を再編したが、残された時間はわずかだった。そうやって、ピアソラ以後に枝分かれしたタンゴの新しい系は彼の死によって閉じられたとよくいわれる。しかし本当だろうか? 私はもう何年も前に、ファン・ホセ・モサリーニの東京公演を観たとき、彼のコンテンポラリーな感覚と、ついに観ることが叶わなかったピアソラの血の濃さのようなものを重ねて、プリンス・ジャミーとキング・タビーみたいなものかなーとおもったと書くと乱暴だが、外部の任意の点にたやすく接続できるなら、数多の継承者だけでなく菊地成孔のぺぺ・トルメント・アスカラールまでピアソラの血は逆流してくる。

 ピアソラこそゼロだった


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Beach House - ele-king

 河出書房新社から刊行される『ゼロ年代の音楽』における150枚のディスク・レヴューで、最初入れておいて、あとから「やっぱいいか」と削除してしまったのがボルチモアの男女デュオによるビーチ・ハウスのデビュー・アルバムだった(男はアメリカ人、女はフランス人)。そしてこの3枚目のアルバムを聴いて、「あー、入れておけば良かったな~」と後悔した。結論から言えば『ティーン・ドリーム』はここ数年のエレクトロニカ系ポップスにおいてはダントツに洗練されている。10年代に入って最初に心底気に入ったのがこのアルバムだ。この魅力にはとても逆らえない......そんな感じだ。

 正直言って、ビーチ・ハウスのような「無垢」で「潔癖性」の高いエレクトロニカ・サウンドに関しては(彼らは前作までは、日本ではお馴染みの時代遅れのエレクトロニカ・レーベル〈カーパーク〉から作品を出している)、二木信ではないが抵抗感のあるほうである。猥雑さを排除することで輝きを引き出そうとするそのやり方が、どうにも嘘くさく思ってしまう。早い話、お上品なだけじゃないかと思ってしまうのだ。だいたい若い頃はダッフルコートを着たガキがボサノバを聴いているだけで腹が立ったものだった......というのは嘘だが、とにかくこれは自分の育ちの悪さが関わっているのだろう。リアリズムの観点から言えば、僕にはなかなか遠くに感じられる音楽が多々あるのだ(さすがに年齢を重ねながら、そうした偏見はだいぶなくなったけれどね~)。

 そんな偏屈な人間が聴いても、ビーチ・ハウスには魅力があった。それは彼らの音楽が、物憂げさ、陰鬱さ、および失意......のような「負性」を心地よく響かせるという力を持っているからである。ダウナーだがラヴリーなのだ。彼らが表現するのは晴れ渡った青空ではなく霧のかかった曇り空であり、輝く太陽でも深夜でもなく黄昏の美しさなのだ。カラフルな田園ではなく、憂鬱な田園なのだ。

 ビーチ・ハウスは、90年代のテクノ~エレクトロニカの持つユーフォリアを我がモノにしたゼロ年代USインディのひとつであるという説明もできる。デビュー・アルバムも前作の『デヴォーション』も、そうしたモダン・ポップの文脈においては秀逸な作品に違いないが、しかし何か決定的なものが欠けている。僕のような門外漢が居ても立ってもいられなくなって、そこに強引に立ち入ってしまうのほどの魔力はまだない。そこへいくと『ティーン・ドリーム』は1年でここまで成長するものなのかと驚くほど、すべてにおいて研磨され、非の打ち所のないアルバムとなっている。極端に喩えるなら、グリズリー・ベアが"サンデー・モーニング"をカヴァーしたようなアルバムだ。僕はすっかり虜になっている。

 ギターの簡潔なアルペジオからキックの音に導かれて蜃気楼の世界に突入する1曲目の"ジブラ"、メロウなダウンテンポの傑作"シルヴァー・ソウル"、そしてまるでビートルズがハウスを取り入れたような"ウォーク・イン・ザ・パーク"(アルバムのベスト・トラックのひとつ)......簡素なピアノとヴェルヴェッツ流ポップスの"ユースト・トゥ・ビー"も良いし、キャッチーな"ラヴァー・オブ・マイン"や"ベター・タイムス"のような曲にさえも黄昏の感覚が横溢している。

 すでに何十回とこのアルバムを聴いているけれど、聴く度に夢の世界に飛ぶ。現実をすっかり忘れ、ひとりで夢に浸る。90年代で言えばエールのようなものか。とにかく、これはモダン・ドリーム・ポップの傑作である。

[Drum & Bass / Dubstep] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1 Sub Focus / Could This Be Real[Drum&Bass RMX]/Triple X | Ram

 昨年のハイライトとも言うべきファースト・アルバム『Sub Focus』によってエクストリーム・レイヴ・ドラムンベースの確固たる地位を確立、それを不動のものにしたのがサブ・フォーカスである。そのもっとも待望されていたリリースによってドラムンベース界に新たな核が生まれたというわけだ。もっとも、プロデューサー・デビューから6年もの年月を費やして発表となったファースト・アルバムは、彼の類まれなる才能から考えると少々遅かった感は否めないのだが。
 彼の起源は2003年〈Ram〉のサブ・レーベル〈Frequency〉から発表された「Down The Drain/Hotline」である。当時のトラック・メイキングはまだ未成熟かつ方向性が定まっていない、ごく平凡なサイバー・ドラムンベースだった。もちろんその当時は、現在のようなスター・プロデューサーとしての確約はないに等しい存在として扱われている。彼に転機が訪れたのは、そう、2005年。その年のアンセム・ザ・イヤーとなったばかりではなく、2000年代を代表するトラック"X-Ray"の発表である。
 ドラムンベース界のみならず、その恍惚感溢れるトランシーレイブな作風で世界中のダンスフロアを掌握、稀に見るビッグ・アンセムとなった。その後、水を得た魚の如く立て続けに"Airplane"、"Frozen Solid"などの"ロック"チューンを発表。そして彼の地位を不動のものにした決定的なリリースがプロディジー"Smack My Bitch Up"のSub Focus RMXだった。そのリミックスはまるで新旧レイブ・サウンド伝道師の世代交代のようで、ドラムンベースをより多方面に押し上げてもいる。そしてその後の活躍は言わずと知れている。いまや名実ともにドラムンベース界のトップ・プロデューサーに君臨するのだ。
 さて、彼のファースト・アルバムからシングル・カットが待望されていた2曲がついにリリースされた。アルバムに収録された"Could This Be Real"のオリジナルは、現在のクラブ・シーンを席巻しているトレンド、エレクトロ・タッチから触発されたフロア直系のアーバン・ブレイクスだったが、シングル・カットのためにドラムンベース・リミックスへと自身でリワーク。ハーフ・ステップさながらのビート・プロダクションに流麗なレイヴ感漂うエレピを注入し、ハイブリッドでソフィスティケートされたシンフォニック・レイヴ・サウンドへと昇華させている。
 "Triple X"に話を移そう。これはまさに"X-Ray"の続編、誰もが待ち望んだ真のレイヴ・ミュージック、即ちこれがエクストリーム・レイヴをもっとも体現したトランシー・フロア・サイバーの最高傑作と呼ぶに相応しい。今後この作品はダンスフロアで皆を待ち続けることとなるであろう。

2.  Disaszt, Camo & krooked / Together[DC Breaks RMX]/Synthetic | Mainflame

 オーストリア、ウィーン発の新鋭レーべル〈Mainflame〉からレーベルのフロントマン、ディザスト(Disaszt)と若手ナンバ-1の呼び声が高いケーモ&クルックト(Damo & krooked)のサイバー・スプリット! "Together"では〈Viper〉、〈Frequency〉などシーンのトップ・レーベルのリリースからMINISTORY OF SOUND主宰DATAなどメジャーのリミックス・ワークなども手掛けるDJサムライ & DJクリプティックのエレクトロ・サイバー・ユニット、DC・ブレイクス(DC Breaks)が担当。レーベル・カラーであるカッティング・エッジでエレクトリックなサイバー感を継承しつつ、よりシンプルに交感し合う各々のサンプル群と、そして女性ヴォーカルが絶え間なくフォローするエレクトロ・ニューロ・ファンクとなっている。昨年からドラムンベースの新しいトレンドとして定着しつつあるエレクトロ・ドラムンベースだが、今作はまさにそれを体現している。まったく"いまこの瞬間の"ダンスフロア・シンフォニーで、レーベルのシンボル的トラックである。
 ケーモ&クルックト"Synthetic"は、〈Mainflame〉からもうすぐ発売されるファースト・アルバム、『Above The Beyond』の前編的トラックとなった。エレクトロ・ドラムンベースの若手急先鋒ケーモ&クルックトだが、今年はさらなる飛躍を期待されるだろう。彼らはすでにDJフレッシュ(DJ Fresh))、アダムF(Adam F)の〈Breakbeat Kaos〉から「Can't Get Enough/Without You」、ロンドン・エレクトリシティ率いる〈Hospital〉から「Climax/Reincarnation」、フューチャー・バウンドの〈Viper〉から「Cliffhanger/Feel Your Pulse」など、多数リリースが控えており、今後最注目のアーティストである。筆者が現在提唱しているエレクトロ・ドラムンベースが、ケーモ&クルックトやショックワン、フェスタなどによって閃光の如く輝き続けるムーヴメントになることを望んでいる。

 

3. Danny Byrd Feat Liquid / Sweet Harmony/Jungle Mix | Hospital

 ザリーフ&ダニーバード(Zarif & Danny Byrd)、"California"で昨年、最高のプロデュース・センスをまた見せつけたダニーバード! ハイコントラストとともに〈Hospital〉の制作理念をもっとも体現しているひとりであり、彼の高揚感溢れるキャッチーな作風はいまや誰にも真似できない、まさにダニーバード・サウンドとして定着している、キャリア10年以上の〈Hospital〉所属のベテラン・プロデューサーだ。
 筆者もDJのとき、必ずと言っていいほどお世話になっている。とくに昨年のザリーフとの共作やファースト・アルバムでのFT.ブルックスブラザーズ"Gold Rush"など......彼の作品をプレイするとき、いつも決まって、自身が中盤の窮地に陥っているケースが大半だ。なぜかと言えば......それだけ個の作品のみであらゆる場面を乗り切る力を持っている唯一のトラック、それがダニーバードの音楽だからである。彼には作品を出すたび毎回脱帽し、尊敬の念を抱き続けている。レコードを置き、針を落とすだけの偉大なキラー・トラックを量産し続けているのだから!
 そして今作"Sweet Harmony"は、初期のレイヴ感溢れるエレピ、FT.リキッドのソウルフルなヴォーカルを効果的に配した遊び心満載のキャッチーなフロアトラックとなった。原点回帰したかのような初期作風感漂うサンプル使いにダニーバードの懐の深さを再認識させられた。もちろんこれもフロアで爆発的人気を得るだろう。
 B面"Jungle Mix"は、ここ最近のダニーバードお気に入り(?)"Shock Out"でも垣間みれたおなじみのオルタナティヴ・プロダクションである。彼特有の変則アーメン・ビートにキャッチーなギミック・サンプルで否応無しにフロアをロックする、正真正銘のパーティ・チューンだ。90年代中期頃、一世を風靡した"Smokers Inc"や"Joker"のエッセンスが多分に感じられ、古き良きジャングル文化が彼によって現代に甦ったと言えよう。
 さらに本年度はダニーバード・フォースカミング・リリースで、みんなが待ち望んでいるあの曲"Paperphase"が〈Breakbeat Kaos〉からついにリリース。あのエレクトロ・ドラムンベース最強兄弟、FT.ブルックス・ブラザーズがまたタックを組み、懐かしのフレンチ・ディスコを思い起こさせるフィルター・ハウス・ドラムンベースに仕上がっている。
 まだリリース前だが、2010年のアンセム・ザ・イヤーをこれで決まりだ。

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