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interview with Okada Takuro

interview with Okada Takuro

眠れぬ夜のために

──岡田拓郎、インタヴュー(ゲスト:増村和彦)

取材:野田努    写真:小原泰広   Nov 20,2017 UP

最後のツアーのときには、バンドかソロかでは迷ってはいたんですけど、次の録音でやりたいメンバーとやりとりをしていました(笑)。薄情だとは思うんですけど、ツアー最後の広島に向かう車のなかで「来週のリハどうしよう?」みたいな電話を平気でできちゃうタイプではあったんですけどね。


岡田拓郎
ノスタルジア

Hostess Entertainment

Folk RockpsychedelicIndie Rock

Amazon Tower HMV

日本の音楽を進めたいっていう話で言うと、欧米でものすごい日本の音楽ブームじゃないですか。90年代はコーネリアスやボアダムスみたいなバンドが海外で評価されたわけだけど、ここ1~2年は海外の人たちがいよいよ山下達郎さんやはっぴえんどに気が付いてきて、細野さんの作品でも『Pacific』あたりやアンビエント作品が人気だったり、それこそ大瀧さんであったり……。DJカルチャー的なとらえ方ではなくて、欧米のインディ・ロックの価値観で動いている人間が辿り着くには、あのあたりはジャケットのアートワークはなかなか難しいものがあるじゃない?

岡田:難しいですね。『A LONG VACATION』はともかく、『EACH TIME』とかはすごく難しい(笑)ああいうジャケは例外なくバレアリック・アメリカン・ポップス(笑)。

だからバレアリックにしちゃえば簡単なんだけど。

増村:でも気づきはじめたという感じはいいですね。

そう、だからこれからの時代、ドメスティックな評価/聴かれ方というが旧来通りあるなかで、海外からの評価/聴かれ方ももっと顕在化してくると思うんですよ。そこもひっくるめて面白がれるかどうかで、日本の音楽のあり方も違ってくるんじゃないかって。
 話は戻るけど、増村くんは今回岡田くんが書いた歌詞をどう読んだの?

増村:話が戻るというか、繰り返しになっちゃうんですよね(笑)。

最初にシングルで「硝子瓶のアイロニー」が公開されたときに、増村くんに「この歌詞、岡田くんなんだね」ってメール送ったら「岡田らしいっすね」って返してきたじゃない。その「らしい」って部分がどういうことなのかと。

増村:そんなこと言ってました?!(笑) でも本当にその通りで全部「らしい」んですよ。さっき情念を消そうとか、いろいろな方法論でやろうとか、音楽はすごくいいかたちでやろうとかって格闘し続けるんですけど、やっぱり完全に情念は消えていなくて。Jポップ的な情念は消えていますよ。だけど「どうにかしたい」というか、わかりやすく言えば「時代を打破したい」というか。それと、もうひとつ言えば、目には見えないような感覚を大事にしたいというのを、それをそのまま気持ちいいと感じるんじゃなくて、「これはなんなんだ! 自分の言葉で見つけたい!」という感じがするんです。そこに情念じゃないけど、ちょっと熱さが入るんですよね。そういうところが“らしい”なと思いますね。「すましたふりは終わりさ」(“硝子瓶のアイロニー”)とかね。
 塩梅としてすごくいいと思うんですよね。もしかしたら僕が書くものとは、諦めているか諦めていないかの差だと思いますよ。僕の自分の歌詞だと「もういいや」とか言っちゃっていますしね(笑)。僕はわりと見えないものは見えないままでいいって感じなんですよ。あとは違うもので物象化したりして見つけたりあらわしていきたいなというところ。同じところを見ていたとしても、(岡田は)希求している感じが歌詞にあると思います。ぼくの「ノスタルジア」と彼の「ノスタルジア」の差はそこなんじゃないかな。

岡田:『グッド・ナイト』のときに(増村が)「もう俺は諦めているから」ってずっと言っていて、「俺は諦めていない」って話をずっとしていたんですよね。

増村:ぼくの場合は諦めて、同じところをグルグル回るようなところからなにか見えてくるんじゃないかということなんですよ。(稲垣)足穂じゃないですけどね。そういう意識があるんで、その差はあると思うんですよ。だから全体的に岡田くんの歌詞はそういう感じがある。

なんだかんだ言いながら、熱いものが根本にあると(笑)。

増村:熱いと言ったらまた情念っぽくて嫌ですけどね。

冷めてはいないと?

増村:冷めていないですねえ。でもぼくだって冷めてはいないんですよ(笑)。

ただ捻くれている(笑)。

増村:捻くれているんですかね(笑)。はははは。

まあそうだよね、これだけ強い思い持っているんだからね。1曲目の“アルコポン”ってどういう意味なんですか?

増村:それは亀之助だよね?

岡田:尾形亀之助の「アルコポン」って麻酔薬の言い違いみたいな詩から取りました。現代詩を読むのは好きですが、歌詞の影響となると僕は日本の誰よりも増村フォロワーかなあ(笑)

増村:はははは。友だちだからね(笑)。

ホント? 増村くんの影響を受けて?

岡田:影響はすごく受けていますけど、明確に違うのはさっき増村が言ったようなことですね。僕は足穂じゃなくで三島由紀夫が好きだし(笑)。そういう感覚はあるかな。

増村:けっこう音とハマっているんですよね。“アルコポン”の「ただの霧さ」とか、音楽に乗るとけっこういいんですよね。

岡田:意味はないもんね。あるけど(笑)

増村:とくにフワッとする感じがけっこうよくて。「こぼれ落ちていく」ことと「求める」ことがけっこう多い(笑)。「求めてはこぼれ落ちて」みたいな(笑)。過程が歌詞に反映されているところもあるじゃないですか。一緒に作業したとかじゃなくて、いちリスナーとしての感想はそういうところにあります。そもそも歌詞は一緒にやっていないですし。

岡田:だいたい全曲一緒だもんな(笑)。

増村:でもこの表題曲の“ノスタルジア”の「ガラスを透かして見るものは/いつかの夏の/ささやき」ってスパークする瞬間なんですよ。ちょっと見えちゃっている感じ。そういうところがグッとくるんですよね。

岡田:その視点で見ていう人はいないね(笑)。

増村:こいつ、一瞬掴んだなって。基本的にこぼれているのにこのときは一瞬掴んだなって、そこが「ノスタルジア」かもしれないじゃないですか。

岡田:意図していないけど(笑)。

(一同笑)

増村:例えばですけどね(笑)。僕の印象ですけど。

質問を変えますね。今作には「Side A」と「Side B」があるじゃないですか。これは『ノスタルジア』というタイトルとリンクして、わざとこういう古いことをやっているんですか?

岡田:いや、これはただ1枚のアルバムとして聴けるような作品にしたかったのが理由ですね。アナログ・レコードのいいところって曲が飛ばせないというところもあると思うんですけど、AとBに分けることで時間の区切りがつくじゃないですか。
 B面の1曲目はいい曲が多いし、やっぱり1枚のトータル・アルバムとして聴くというカルチャーが僕の世代から少なくなっていると思うし、そういうもののちょっとした遊びって感じで入れましたね。ソフト・ロックはA面の1曲目だけいいけど、あとは全部下がり調子になっていくという。

増村:A面1曲目とB面6曲目の最後だけ(がいい)ってときがある。

岡田:ソフト・ロックって曲が短いから、B面が6曲まで入るんですよね。

増村:それでも30分くらいです。12曲ってなるとだいたいが聴けないよね。

岡田:聴かないね。サンドパイパース12曲とか聴きたくないし(笑)。

増村:(A面B面に)分けることによってかたちになるよね。

森は生きているにしても岡田くんのソロにしても、ソフト・ロック的なものをうまく取り入れるじゃない? ソフト・ロックというのは、いわゆる名盤的なものから外されがちなジャンルでしょう?

岡田:まあソフト・ロックの名盤はミレニウム『ビギン』しかないですね(笑)。

デレク・ベイリーを好きな人がソフト・ロックのどういうところがおもしろいと思っているんですか(笑)?

増村:ソフト・ロックは……、反省の音楽かな(笑)。

反省?

岡田:だってあれはプロダクションとして高性能なブレーンたちがこぞって意図的に作った商品音楽じゃないですか。あれはカウンターというよりは、たぶんサイケ・カルチャーの流れに乗っとって職業作詞・作曲家、プロデューサーたちがとりあえず金を稼ぎたかったみたいな部分はあるというか。ワーナーのあの時代とか、ソフト・ロックはすごく単純な動機で始まった音楽の文脈だと思うんですけど。カート・ベッチャーとか、レオン・ラッセルも入っていたりするし、ヴァン・ダイクもそうですけど、ああいうソロでやったときにすごいアルバムを作るというのがその後に実証されてよかったなと思うんですね。そういう人たちが、やらされたのかも知れないですけど、ある種一攫千金を狙って作った音楽にも粗があるというか、そういうところを見つけるユーモアみたいなのがソフト・ロックを聴く楽しさのひとつでもあって。だから簡単に言うと、こうなるまい、みたいな(笑)。

そうなんだ(笑)!

増村:そうそう(笑)。

岡田:そうだし、でもA面の1曲目だけはどのアルバムもすごいというのがソフト・ロックのすごさだと思うし、おもしろいところだと思いますね。とりあえず頭出し3秒だけで、いかに人の心を掴むかとか21世紀的(笑)。

増村:そういうところは活かせるし、こうなっちゃいけないってところももしかしたら活かせるかもしれないんですよ。逆の発想であのダサいところを使ってみるとか、落とし込みかたを変えれば気持ちよく聴こえるんじゃないかとか、もしくは彼らは本当はこうしたかったんじゃないかっていう勝手な解釈とか(笑)。

岡田:それが音楽を聴くときの楽しいところというか、音楽を聴くときの遊びみたいなところというか、ぼくらが好きだったのは。ソフト・ロックからの影響みたいなものは、やっぱりリスニングする楽しさという根源的なところで、ソフト・ロックは遊びの多い音楽だと思いますね。

増村:ソフト・ロックを四六時中聴いているヤツは逆にちょっと厳しいっすね(笑)

(一同笑)

岡田:ソフト・ロックしか聴かないやつとかヤバいね(笑)。ハーパーズとか1枚通して聴いたことないもんな。

増村:俺はハーパーズはイケるよ。

岡田:ある意味ではミレニウムしか好きじゃないかもしれない(笑)。

増村:そりゃそうだね(笑)。

取材:野田努(2017年11月20日)

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