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interview with Okada Takuro

interview with Okada Takuro

眠れぬ夜のために

──岡田拓郎、インタヴュー(ゲスト:増村和彦)

取材:野田努    写真:小原泰広   Nov 20,2017 UP

細野さんが「日本語ロックの情念を消したかった」ということを言っているんですね。僕がはっぴいえんどフォロワーや喫茶ロックと呼ばれている音楽にそんなに入れ込めなかったのは情念的なものが情報として多すぎて、自分のなかではトゥー・マッチに聴こえた。

岡田くんは最近はどういうふうに音楽を楽しんでいるんですか?

岡田:すごくピンポイントで言うと、グリズリー・ベアーの新譜が久々にすごいと思った。なにがおもしろかったかと言うと、10年代のアフロ・ポップ文脈とは違うアフロ・ビートの感覚に。最近トニー・アレンのすごさを自分の中で発見して、フェラ・クティの何十枚ボックスとか聴いても、どれも同じ曲に聴こえるかもしれないけど、ビートのループの中でのスネアやキックの位置やパターンがどの録音も違う。ドラムという楽器の自由さを最も体現したのがトニー・アレンのビートだと思う。そういった自由度の高いドラム・パターンを再び抜き出してきて、それを完全にスクエアにグリッドさせる事で土臭さを現代的にして、ポップ・ミュージックに落とし込んでいるというところに感動しました。ドラム・パターンが自由というよりかは、ある程度ループになっていないと現代的に聴こえないと思うんですけど、2、4小節のループを繰り返しているところで、何箇所かに土臭いドラムのロールをパターンとして入れ込んで訛りっ気を出したり、けど全体はスクエアでやっているというのが聴いたことのないと思ったんですね。そういうものが過去にあったのかということを、案外ミーターズは近いと思いましたね。

つーか、めちゃくちゃマニアックな聴きかたですね(笑)!

岡田:でもそれは遊びとしてですよ(笑)。

普通はそんな細かく聴かないですよ。

増村:でもそれはポイントがあって、ここまで来た感があるんですよ。日本が気づかれはじめたって話があったじゃないですか。そういうのと同じで、アフロがアメリカに気づかれはじめた感があるんですよね。だからグリズリーがそれをやってというのはもちろんマニアックではあるんですけど、けっこう大事なことだと思うんですよね。みんなシンプルなビートのところに戻ってきているような感覚は正直あると思うんですよね。

岡田:ビート・ミュージックどうこうと言われたときに、グリズリーがやったのはわかりやすく訛る/訛らないの話じゃないですよ。もっとプリミティヴに、ビートを大きく捉えるかという所が気に入りました。そもそも歴史でみたらサンバもハイライフもルンバも日本人の感覚からしたらすでに訛ってる。たぶん訛りたくて訛ったのではなくて、踊れる気持ちよいポケットにたまたま入っちゃった、くらいなところかもしれない。ポストロックやフリー・フォークのときに、久しぶりにスネアの位置が変だったり、特殊なドラム・パターンみたいなのがロックの更新のひとつのやり方として取り上げられたように思えるけど、そうしたら行き着く先は特殊なパターンでありながら、そもそも気持ちよいビートみたいなハイブリットな所で、その手本にアフロやブラジルをひとつのファクターとして新しい引き金にしようとしているミュージシャンがいるのかなとは感じますね。そういう意味では、ブラジル的だったジョン・マッケンタイアのビート感と音響をアップデートさせるような感覚なのかなあ。

増村:うん、すごくあると思うね。

なるほどね。質問の意図するところとはちょっと違ったんだけどね(笑)。いまどきの子みたいに君たちみたいな時代錯誤的な若い人もやはりスマホで聴くのかってところだったんだけど(笑)。

(一同笑)

増村:超マニアックな話になっちゃった(笑)。

岡田:そうしたら案外僕はDJ的な聴きかたをしているのかもしれないですね。サンプリングできるポイントを探るというのは、もしかしたら近いのかもしれない。そういうものとアルバム1枚をソフト・ロックみたいに楽しむという、そこは両方あるポイントかなあ。

増村:アップル・ミュージックはけっこうデカいよね。

岡田:アップル・ミュージックはすごくデカい。スマホのアップル・ミュージックでいいと思ったものを、わざわざアナログの新品で買って、なおかつ音楽解析とかをするときはレコードだと面倒くさいのでアップル・ミュージックで再生するから、ぼくはすごくミュージシャンにお金を払っているんですよね。配信でも買っているし、物でも買っているし、さらに研究するために毎日100回くらいストリーミングで聴いているので(笑)。

すごいなあ(笑)。

増村:正直アップル・ミュージックに入ったあと、楽器がうまくなりましたもんね(笑)。

岡田:思った、思った(笑)。

ああ、そう(笑)。

増村:いままでだったら「今月はCD1枚しか買えない」というときにもどんどん聴けきちゃうから、やっぱり勉強になりますよ。

岡田:60点くらいの音楽は買わなくなりましたね。それはみんな言っているけど。

増村:結局アナログしか買わないしね。

岡田:「63点だ」と思ったアルバムをわざわざ2500円出して買わないですよね。

増村:そもそもお金がないからね。

では最後の質問。もし今回のアルバムのタイトルが『ノスタルジア』じゃなかったら、その言葉が使えないとしたら、なんてタイトルにしたと思う?

増村:意地悪だなあ(笑)。

岡田:意地悪ですねえ(笑)。

(一同笑)

岡田:僕がひとつやってみたかったのは、足穂の「六月の夜の都会の空」ってあるじゃん? 『グッド・ナイト』では見つからなかったから、そういうものを探してみようと思ったんですけど、足穂ってネーミングのセンスがめちゃくちゃうまいですよね。

増村:キラーフレーズ感はすごいね。

岡田:僕にはああいう語彙を生み出すような感覚がなかったから、使えなかったとしたらたぶん増村に一旦投げていましたね(笑)。

(一同笑)

増村:タイトル決めろと(笑)。重いなあ(笑)。でもタイトルって人に決めてほしいところはあるよね。

岡田:自分じゃ決められない。

でもぼくは『ノスタルジア』というタイトルはすごくいいと思ったよ。

(一同笑)

増村:ええーー!!

だってこれだけの博識をインタヴューで言う人のアルバムのタイトルにしたら、じつにあっけらかんとシンプルにまとまっているよ(笑)。

岡田:そうですね(笑)。これが一番的確な言葉だったと思います。

増村:そうだと思う(笑)。

(了)

取材:野田努(2017年11月20日)

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