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interview with Bicep

interview with Bicep

UKダンス・ミュージックの新たな大器、ここに登場

──バイセップ、インタヴュー

質問・文:Midori Aoyama+編集部    通訳:中村明子 photo: Dan Medhurst   Jan 22,2021 UP

ライヴ中にちょっとミスっても次の日誰も覚えてないけど、ストリーミングだとビデオカメラで録画されてて最悪(笑)。運転免許の試験みたい。ライヴってそもそもの趣旨がライヴであって、記録じゃないんだよね。(マット)


Bicep
Isles

Ninja Tune / ビート

HouseTechno

Amazon Tower HMV iTunes

今作も〈Ninja Tune〉からのリリースになりますが、レーベルから特別なオーダーはありましたか?

アンディ:いや、レーベルからは全然なくて、むしろ自分たちの目指すところがあって、ファースト・アルバムの成功があったから、その前作の感じを引き続き楽しんでもらいたいっていう思いと、新しいものを提示したいという思いの狭間でどうしようかという。でも〈Ninja〉はこっちから送るものに対してはものすごくオープンだった。

おふたりもレーベルを運営されていますが、自分たちのではない別のレーベルからリリースすることのメリット、デメリットはなんでしょうか?

マット:僕らのレーベルはいわば愛で成り立ってるもので、商業面はまったく考えてないんだ。かなりアンダーグラウンドな音楽を中心に扱ってて、ラジオでかかるような音楽を狙ってるわけではなく、DJ向けのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックだからさ。自分たちが出会った無名のアーティストを育てるのも素晴らしいことだしね。一方〈Ninja〉が組織としてやってることはまさに驚異的で、彼らがやってるような仕事を自分たちがやるなんて絶対に不可能だよ。

アンディ:だね。つねに新しいアイデアを提案してくれたり、僕らのアイデアを具現化してくれたりするんだよ。多くの場合、〈Ninja〉が音楽以外の、たとえばアルバム・カヴァーのデザインだったり諸々の負担を軽くしてくれて、自分たちは音楽に集中できるんだ。

Instagram を通してスタジオの風景やカスタムした機材を鳴らしたりしてますね。フローディング・ポインツリッチー・ホウティンがDJミキサーをプロデュースしたように、いつか自分たちオリジナルのミキサーやシンセサイザーを作ってみたいと思ったことはありますか?

アンディ:お気に入りの機材って結構1、2ヶ月で変わったりして、それが面白いというか、音楽を作る上で新たな機材から刺激を受ける部分はあるんだよ。僕らは古い機材も好きだしモジュラーシンセのような現代的なものも両方好きなんだけど、基本的にはモジュラーシンセがオリジナル機材のようなものだよね。自分で組み合わせて新しく追加できるから。それに音楽を作る際にシンセをそのままで使うことはほとんどなくて、たとえばギターペダルを3つかませたりしてつねに独自の音を作ろうとしてるんだ。

マット:そうだね、モジュラーがあればいいかもな。あと今作で結構やろうとしてたのが、たとえば実際の80年代のシンセサイザーを使ってそれをモジュラーにフィードしてある種のハイブリッドな音を生み出すとか。“Atlas” なんかはそういう40年もののテクノロジーと最新テクノロジーから生まれた交配種なんだ。

9月におこなわれた『BICEP LIVE GLOBAL STREAM』も素晴らしい反響があったようですね。過去のインタヴューで「クラウドが大きいほど緊張する」と言っていたのを拝見しました。観客が目に見えないライヴ・ストリーミングは緊張しましたか?

アンディ&マット:さらにひどかったかも(笑)。

アンディ:観客の数はストリーミングの方が多いかもしれないのに、その場にはマットと僕以外誰もいないっていう。普段はステージ上で雑談したりしてるんだけど……

マット:大体ステージ前は軽く飲んだりしてるけど、ストリーミングはめちゃくちゃ明るいところでシラフでさ。あと普段ならライヴ中にちょっとミスっても次の日誰も覚えてないけど、ストリーミングだとビデオカメラで録画されてて最悪(笑)。ライヴってそもそもの趣旨がライヴであって記録じゃないんだよね。

アンディ:大きいクラウドを前にしたときの緊張とは全然種類が違う。

マット:なんか運転免許の試験みたいな感じ。

2月に予定している2回目のライヴストリームではロンドンのサーチ・ギャラリー(Saatchi Gallery)を舞台にすることが決まっていますね。ふたりにとってこの場所への特別な想いはありますか?

マット:というか一般論としてロンドンには無数にアート・ギャラリーがあって、つねに展示が入れ替わってて目新しいものが見れるから、ふたりとも休みのときにギャラリーを巡るのが好きなんだよ。だからギャラリーが閉まってるこの時期にそこを使うっていうのは自分たちにとっては理にかなった選択だった。というか、空っぽのギャラリーを使える機会なんておそらく二度と訪れないだろうからね。特にサーチ・ギャラリーなんてさ。パンデミックによっていろいろ最悪なことが起こってるけど、サーチ・ギャラリーを使えることは唯一僕らにとって良かったことだな。

アンディ:空っぽのギャラリーを歩き回って録音してみると、いまの世の中の不気味で奇妙な感じが反映されてすごく興味深いんだよね。だからある意味でいまライヴストリームをやるには完璧な場所だと思う。

僕らの地元の北アイルランドもすごく美しいところで、ほとんどが田舎で丘や山や海だし緑が多いからその影響も受けてると思う。それは自分の一部であり、そういう風景のなかで育ったからさ。(マット)

コロナ禍で突如いままでと違った生活様式をしいられることになりましたが、2020年の1年を振り返って生活面で何か変わったことはありましたか?

マット:まずふたりとも以前よりも健康になったと思う。たくさん寝てるし。ツアー中は必然的に空港で食事したり、ほとんど寝れなかったりして、アドレナリンが出てる状態で生きてて。去年はそれがなくなって、ゆっくり食事したり、睡眠のサイクルもいい感じになって、規則正しい生活になってさ。それは非常にポジティヴな変化だね。

アンディ:あと一歩引いて自分たちが音楽でやりたいことや楽しいと思うことについてじっくり考えられた。もちろんツアーが恋しいっていうのはあるけど、もし元どおりになったら(元どおりになって欲しいけど)、そのときはそれを当たり前だと思わずに感謝の気持ちが芽生えるだろうと思う。それにツアーがあるときは見落としていた、他の大事なことにも目を向ける必要があるっていうことも改めて考えたしね。

Instagram で拝見しましたが、夏にアイルランドの自然の写真も掲載していましたね。自然や地元の風景、スタジオやクラブとかけ離れた空間が自分たちの音楽に与える影響はありますか?

マット:それは間違いなくある。

アンディ:うん。曲を書いているときはいろんな風景を想像するんだよ。クラブでかかってるところはあんまり浮かばないかもね。これはアイスランドで雪が降ってるなかを歩いてる感じとか、アイスランドに行ったことはないんだけど想像したり(笑)。

マット:機材持ってノルウェーやスウェーデンの北の方まで行って氷河を眺めながらEP作りたい、っていうのはずっと言ってるね。

アンディ:リアルじゃない、記憶と想像が生み出す氷河でもいいのかもしれない。

マット:まあ逃避だよね。でも僕らの地元の北アイルランドもすごく美しいところで、ほとんどが田舎で丘や山や海だし緑が多いからその影響も受けてると思う。それは自分の一部であり、そういう風景のなかで育ったからさ。ベルファスト出身だけど、実はベルファストも緑が多いんだよ。

アンディ:普段は気づかないけどね。でも世界を旅してみるとアイルランドの緑の多さに改めて気づくよ。

制作のスピードもさることながら、並行してブログの更新やレーベルのリリースも引き続き精力的ですね。「Feel My Bicep」としての2021年の予定を教えてください。

マット:今年はレーベルにも力を入れて行こうと思ってる。いくつかリリースが控えてるんだ。それ以外は基本的にスタジオに入っていろいろ実験しながらやってみようと思ってる。あとダンスフロア向けのものを書くつもり。最近あまりそっちにフォーカスしてなかったからね。

この3つの上腕二頭筋のロゴがここまで大きな存在になると、ふたりで音楽をはじめたときは想像していたでしょうか? 

アンディ:それちょうど今日話してたんだよ。あのロゴはマットが10年前に20分で描いたものなんだ(笑)。

マット:あとでもっといいロゴを考えるつもりだったんだけどね。すごいシンプルだし、シチリアとかマン島とかいろんな旗に似てて、3つの上腕二頭筋ってアイデアは別にオリジナルじゃないんだよ。でもまあロゴだからシンプルな方がいいんだよね。

アンディ:あと、完璧じゃないから不思議なバランスが生まれてるところもいい。

マット:手描きだから左右対称じゃないんだよ。若い頃って無邪気であんまり深く考えてないからさ。でも丸だからデザイン的に使いづらいこともあって、Tシャツにはいいんだけど、バランスをとるのが難しいんだ。

最後に、日本でも多くのファンがアルバムのリリースを楽しみにしています。オーディエンスに向けてメッセージをお願いします。

マット:日本の人たちに聴いてもらうのがめちゃくちゃ楽しみだし、このアルバムを楽しんでくれることを願ってる。それからまた日本に行ける日を待ち望んでる。日本は僕らが大好きな国のひとつで、行くたびに最高の時間を過ごしているんだ。あと、みんな安全に過ごしてほしい。

質問・文:Midori Aoyama+編集部(2021年1月22日)

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Profile

MIDORI AOYAMAMIDORI AOYAMA
東京生まれのDJ、プロデューサー。12年に自身がフロントマンを務めるパーティー「Eureka!」が始動。Detroit Swindle、Atjazz、Lay-Far、Mad Mats、Ge-Ology、Session Victimなど気鋭のアーティストの来日を手がけ東京のハウス・ミュージック・シーンにおいて確かな評価を得る。Fuji RockやElectric Daisy Carnival (EDC)などの大型フェスティヴァルでの出演経験もあり、活躍は日本だけに留まらず、ロンドン、ストックホルム、ソウルそしてパリなどの都市やアムステルダムのClaire、スペインはマジョルカのGarito Cafeなどのハウスシーンの名門クラブ、香港で開催されるShi Fu Miz Festivalでもプレイ。15年には〈Eureka!〉もレーベルとしてスタート。現在は新しいインターネット・ラジオ局TSUBAKI FMをローンチし、彼の携わる全ての音楽活動にさらなる発信と深みをもたらしている。
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