Home > Interviews > interview with Hotel Mexico - ロマンティックはいつ起こる?
何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。(石神)
■自分たちのリスナーってある程度見えていますか?
石神:いや、正直まったく見えてないです。
■たとえばライヴに来ている客層とか。
石神:ライヴの客層はかなり不特定のほうに入ると思いますね。たぶんやけど。
■もらったリアクションで面白いものはありますか?
石神:たとえば、ミスチルが好きっていうギャルが、ホテル・メキシコが好きとか(笑)。
■ほう!
菊池:そんなのいた?(笑)
石神:いるいる。よくいるよ。
菊池:あとライヴ終わったときに、50歳ぐらいのおっさんから「苦労してんな」って言われました(笑)。
(一同笑)
菊池:「そんな音出ーへんぞ、ふつう」みたいな(笑)。
■じゃあ、自分たちみたいに洋楽を聴いている層に向けているっていう意識もない?
石神:まあもちろん、海外にも向けていきたいっていうのはありますけど――。
菊池:まず自分たちが作りたいものっていうものが先にありますね。
石神:とくに誰に聴いてほしいっていうのは考えてないですね。
■では、リスナーにどういうときに聴いてほしいアルバムですか? もちろん自由っていうのが前提だとして。
石神:高速で車がパンクしたときに聴いてほしいですね。
■それはなぜ?(笑)
石神:なんかこう、イメージとして広い景色を見ながら聴いてほしいかなと。狭いところで壁向いたまま聴くんじゃなくて。
菊池:それはなんかわかる。
石神:開放的な感じで聴いたら、すごく気持ちいいんじゃないかなと思って。でも何でもそうか。
伊藤:ははははは! けっこう共感してたのに(笑)。
菊池:僕もでもけっこう広い景色っていうのはあって。作ってるときに水辺の映像を作ったりもしていたので、そういうイメージが強いですね。そういう部分を聴いてほしい。
伊藤:僕は空いてる電車のなかで聴いてほしい。僕は電車に乗ってるときに音楽を聴くのが好きなので。空いてるほうがいいんじゃないかなと。
■そのココロは?
伊藤:単純にイメージしたときに混んでる画が出てこなかったですね。けっこうガラガラぐらいの電車のほうが思い浮かびましたね。
石神:このアルバムを、みんなで聴いてるイメージってなくないですか?
伊藤:それはあるね。一人称だね。
石神:やんなあ。
■パーソナルなイメージ?
石神:できれば、かわいい女の子が聴いている感じ。
■かわいい女の子が恋をしているとき?
伊藤:いや、恋してるときは――(笑)。
石神:恋しているときは、聴いちゃダメ(笑)。恋が終わったあとですね。
■それはなぜ終わった恋なんですか?
伊藤:いや、してるときじゃないと思うんですよね。終わったときか、してないときなんじゃないかなあ。
■たとえばロックンロールは基本的には恋のはじまりの歌ですよね。それとは違うものだと?
石神:そうですね。どっちかと言うと、僕ははじまる前ですね。デートする前の家で化粧してるときとか(笑)。そういうときでいい。会ったら聴くなと(笑)。
■でも家で化粧してるときだったらすごくワクワク感があるじゃないですか。
石神:まあそうですね。でも――。
伊藤:だから家で戦略を立ててるときじゃなくて?
石神:いやだからね、僕の想像している女の子はね、ギャルとかじゃないよね。娼婦かな。
■じゃあ化粧は武装としての化粧なんですか?
石神:いや、武装っていうかね、本人もたぶんわかってない。
(一同笑)
■することになってるから(笑)。
石神:することになってるから、やってるだけであって。そういう戦略なんかも考えない、女の子に聴いてほしいなと。
■それは面白いですね(笑)。恋愛の最中でないフィーリングをロマンティックと呼ぶのは。複雑な回路が出来てるなと思って。
伊藤:ロマンティックって言っても、恋愛に対して盛り上がってるっていうのではなく。恋にがっつこうとか、盛り上がってるっていうものではないですね。だから僕のイメージだと酸いも甘いも経てしまっているひとのイメージなので、どちらにしても、最中じゃない感じはしますね。
■なるほど。じゃあ恋愛の最中のひとが聴くと言うよりは――。
石神:いや、最中でも大丈夫(笑)。でも、このCDを買うひとはたぶん恋愛できない。
(一同笑)
菊池:失礼やな(笑)!
石神:たしかに何がロマンティックかっていうことを意味づけするのは難しいと思うんですけどね。ただ、目に見える現実だけがすべてじゃないと思ってるんで。その化粧をしているときに、たとえば鏡が喋ったりするとロマンティックになるわけじゃないですか。そういうことがいつ起こるかわからないよっていうか。そういう、どこにでもあるものだと思うので。心の美しさみたいなものは。
■ファンタジーみたいなもの?
伊藤:それはあると思います。
石神:そういう方向に持っていければいいかなと(笑)。
■(笑)なるほど、わかりました。では最後に、バンドとしての野望があれば聞かせてください。
伊藤:そうですね、7インチは去年の春に海外レーベルから出せたんですけど、LPはまだ出せてないので、次は海外からLPを出せるように頑張っていきたいです。
■ライヴ情報 *2013年3月8日(金) 「HOTEL MEXICO "shows in California"」取材:木津毅(2013年2月22日)