Home > Interviews > interview with Vampire Weekend - オーガニック、ユニーク、アンロック!
キック・ドラムで16ノーツ、これを繰り返すことでロックだけどアン・ロックなものにできたと思うよ。今回のアルバム全体が目指したのは、オーガニックな音、だけれどもユニークなもの、ってところかな。(ロスタム)
Vampire Weekend Modern Vampires of the City XL / ホステス |
■かつてデビュー作がリリースされた頃の『ガーディアン』なんかを読みますと、みなさんのことは「ローカル・ヒーロー」というふうに呼んでいるんですけど、一昨日のライヴ(ホステス・クラブ・ウィークエンダー)を拝見して思ったのは、大きいバンドになったんだなということなんです。ヒット・ナンバーを中心にステージ構成をしていくような、メジャーなバンドになったんだなと。この数年で、自分たちが引き受けるべき役割への意識に変化はありましたか?
エズラ:最初はかなり高いゴールを設定していたんだ。キャッチーでありながらも深さがあって、より複雑な構成で、というような曲をね。いま自分たちの音楽が世界やシーンのなかのどのあたりに当てはまるのかということを答えるのは難しいけど、自分たちが作った曲が人々に届いて、人々とたしかにつながっているということは感じているよ。自分たちの存在をあらためて確認できている、という感じかな。
■ヴァンパイア・ウィークエンドのサウンド・イメージにおいて、ロスタムさんのキーボードの音色が生んでいるユーフォリックなムードはとっても大きな役割を果たしていると思います。たとえば"Aパンク"とか、"オックスフォード・コマ"とか。あの音はもともとあなたのなかにあったものなのですか? それともバンドをやる上で試行錯誤して生まれてきたものなんでしょうか?
ロスタム:大学でクラシックを学んでいたんだけれど、自分の奏でるハーモニーが曲全体に与えるパワーっていうものに魅力を感じていて。弾き語りでもなんでも、そうしたパワーにはつねに意識を置いているよ。
■ここのところ80年代風のシンセ・ポップなんかがすごく流行しましたけど、そういう一種通俗的な、ギラギラとした音ではなくて、もっとあたたかくてクリーンで、どことなく新しい感じがする音だと思うんですね。もうちょっと音作りについて教えてもらえませんか?
ロスタム:空間をあけることを意識してるよ。スペース。最小限のもので曲を作るということを意識しているんだ。ただ、そのぶんどの楽器をどのように演奏するかということが重要になってくる。同じメロディ、同じ部分をいろんなパターンで作ってみて、みんなに聴いてもらうんだ。実験することが好きだし、自分がやっていなかったことに挑戦するのも好きだから、"Aパンク"だって、ああいう音はあの時点ではじめてだったんだよ。スペースの話に戻ると、キーボードが抜けてギターが入ってくるときに低音にスペースが生まれるんだ。そこにベースとドラムが入る。そんなふうに作っているんだよね。メロディがどうやってできるかというと、まずは即興、それを聴き直してどんどん形を整えていく、その繰り返しだよ。そのときも考えながらバランスをとっているんだ。
■何か別のインタヴューを読んでいて、エズラさんが次の作品は「darker & more organic」になるというようなことを話されていたと思うんですが、「darker」ってどのようなことを指しているんでしょう?
エズラ:今回のアルバムは全体的に同じだけの緊張感を保つようにしたんだ。メジャー・キーの曲が多いにもかかわらず、なんとなく霧が漂うように暗い感じ。それはハーモニーでもメロディでも歌詞でもいっしょなんだけど、僕がダークだと思っているのはそういう緊張感のことだよ。オーガニックということに関しては、部屋のなかでドラムを鳴らすことだね。ウッディな感じ。すべての曲、すべての楽器に、ウッディさを持たせたかった。呼吸をしているような感じというのかな。
■なるほど。"フィンガー・バック"なんかは、あなたがたのルーツにファンクもあるんだなってことがストレートに出ている曲かと思いますが、こういうようなアイディアや傾向には、プロデューサーのアリエルさんが関係してたりもするのでしょうか?
ロスタム:メロディや歌詞をエズラが考えて、それに対して僕がドラムを加えていったんだ。50'sロック、ファンク、アフリカン、そのあたりは意識したけど、アリエルとの作業をはじめたときにはリズムはできあがっていたんだ。そこからどのようなドラムのサウンドを曲に反映させていくか。その時点でアリエルの意見は反映させたんだけどね。リズムは僕らのなかにあったものだよ。
取材:橋元優歩(2013年5月08日)
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