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interview with Overmono

interview with Overmono

UKダンス・カルチャーの申し子たち

——オーヴァーモノ、インタヴュー

序文・質問:野田努/協力:mw    通訳:青木絵美   May 11,2023 UP

ダンス・ミュージックがどのようなものかまだわかっていなかったから、「レイヴってきっとこういう感じなんだろうな」というイメージだけがあった。おそらく自分のイメージと実際のものとは、まったく違っていたんだろうけどね。

Instagramのポストでは、今作について「これまでの旅へのラヴ・レター」とあります。「これまでの旅」とはこれまでの「人生」ということでしょうか?

エド:俺たちがふたりで一緒に音楽を作ってきた、ここ5年間と言う意味だよ。俺たちがいままでやってきた活動のロジカルな結論というか。アルバムが完成したとき、ひとつの章が終わるのだと思っていた。でも、それは新たな何かのはじまりだったということがわかったんだ。だから俺たちはもうすでに新曲を書きはじめている。アルバム制作が終わった時点から、さらにアイデアが生まれているというのは良い流れだと思う。

というわけで、あなたたちの「これまでの旅」、つまりあなたがたの簡単なプロファイルを教えて欲しいと思います。エド(テスラ)とトム(トラス)、あなた方は兄弟で、レコード店がないほどの田舎町で育ったと。そもそもダンス・ミュージックにハマった契機を教えてください。

トム:俺はエドより少し年上だから、ダンス・ミュージックに先にハマったのは俺だった。友だちのお兄さんからテープをもらったんだけど、元のテープがダビングされた、さらにそのダビングみたいなものでひどい音質だった。80年代の初期のハードコアなレイヴの音楽が入っていた。そこからは(不思議の国のアリスの)ウサギの穴に落ちて行くように、その音楽についてもっと詳しく知りたくて深く掘っていった。いままでそんな音楽は聴いたことがなかったからすごく異質なものに聴こえたよ。これほどまでに反復が続く音楽は聴いたことがなかった……初めて聴いたテクノが、結構ハードなテクノだったんだけど、すごく不快で気に障る(obnoxious)感じが最高だと思った。「ダン!ダン!ダン!ダン!」っていうのがね。それからエドも俺が聴いているものに気づいて……

エド:昔、住んでいた家の部屋の壁越しに聴こえてきたからね。「ドン、ドン、ドン、ドン」という音が聴こえてきて「トムはいったい何を聴いてるんだ?」と思ったね。ちょうどその頃にライムワイヤーやカザー(ファイル共有サービス)が登場して、それを漁って、あらゆる音楽をダウンロードしまくっていたんだ。トムの部屋からレコードを盗んだりもした。だから、ダンス・ミュージックのほぼすべてのことはトムから学んだんだよ。

どんな子供だったんですか?

トム:どうだろう、けっこう普通の子供だったと思うよ(笑)。ダンス・ミュージックにハマる前からふたりとも音楽が大好きだった。物事の仕組みを理解するのが好きだったから、父親のレコード・プレイヤーにレコードをかけて、面白がっていた。母が、プラスチックの盤面に息を吹いてホコリを取り、それをプレイヤーに置いて、針を乗せるとそれが回って音が出る。それに魅了された。テープレコーダーも家にあったから、いろいろな音楽をテープに録音していて、BBCのEssential Mixもそうやってテープに録音していた。ラジオから流れる曲で気に入ったものをテープに録音していだんだ。すると、自分のお気に入りばかりが入ったアルバムのようなミックステープができあがる。
 当時は、ラジオの曲をどうやって手に入れたらいいのかがわからなかった。どの店に行けばいいのかもわからなかったし、そもそも俺たちの住んでいる街にはそんな店もなかった。近くの大きな街にはそういう店があったけれど、どういうふうに店員さんに曲を説明して、自分が欲しい曲を買うのかなどもよくわかっていなかった。ダンス・ミュージックを知ったばかりで、それについて学んでいたというとても素敵な時期だった。摩訶不思議な感じがしたな。ダンス・ミュージックがどのようなものかまだわかっていなかったから、「レイヴってきっとこういう感じなんだろうな」というイメージだけがあった。おそらく自分のイメージと実際のものとは、まったく違っていたんだろうけどね。でも自分の頭のなかには独自の世界観ができていた。だから摩訶不思議な感じだったよ。

なぜ自分たちはダンス・ミュージックにのめり込んだんだと思いますか?

エド:俺たちが若い頃は、まわりのみんながダンス・ミュージックにハマっていたよ。だからなぜかはわからない。俺は若い頃からいろいろな音楽にハマっていたんだ。ダンス・ミュージックはそのひとつだけど、他にもニルヴァーナなどのグランジ・ロックにもハマっていたし、奇妙な実験音楽にもハマっていた。若いときは、いろいろな音楽に一度にハマるってことが可能だった。サウスウェールズの小さな街ではダンス・ミュージックの影響は大きかったんじゃないかな。トムは当時、近隣のひらけた場所でレイヴをやっていたんだけど、それまでこの辺りではそういうイベントはやっていなかった。でも野外でそういうイベントをやりたいという気持ちはあった。その欲求とダンス・ミュージックは相性が良かったんだと思う。だから自然とダンス・ミュージックにハマっていった。つねに俺たちのまわりにあったからね。

レイヴをやるときも、ジャングルからトランスからハード・ハウスまで、なんでもかけていて、それが受け入れられていた。ロンドンに移ってから初めて、シーンによってはトライブ的要素が非常に強いということを知ったよ。

エドは学校でお手製のミックステープを売り、かたやトムは仲間と地元でフリーパーティ、レイヴをしていたと。ある種制限された状態で音楽と出会いつつも、こうして自分たちなりに音楽を追求しはじめたことは、あなたたちのいまのサウンドに何か特別な影響を及ぼしていると思いますか?

トム:もちろんあると思う。最近、別のインタヴューで同じような質問をされて、あらためて、自分たちの育った環境に感謝したいと思ったよ。俺たちが当時、ダンス・ミュージックにハマりはじめていたころ、ある特定のシーンという概念が俺たちのなかになかったんだ。つまり「このジャンルが好きな人は、別のジャンルを好きになってはいけない」みたいなスノッブな精神——そういうのがいっさいなかった。俺たちはなんでも好きだった。もちろん人によって多少の好みはあったけれど、他人の好みに対して批判的な考えはなかった。だから音楽に対して、ものすごく自由奔放でいられた。レイヴをやるときも、ジャングルからトランスからハード・ハウスまで、なんでもかけていて、それが受け入れられていた。ロンドンに移ってから初めて、シーンによってはトライブ的要素が非常に強いということを知ったよ。人によってはある特定のジャンルやサブジャンル、そしてそれらの関連要素にしかハマっていなかったりして、シーンが分断されているという印象を受けた。俺たちが育ってきた環境とはまったく違ったんだ。だから自分たちが作る音楽では、当時感じていた自由な精神を捉えたいという思いがある。

90年代に活躍したDJやプロデューサーで、とくに好きな人がいたら教えてください。

トム:エイフェックス・ツインはすごく尊敬しているね。サージョン、リージス……

エド:ジェフ・ミルズ

トム:ジェフ・ミルズ。あとは……

エド:ビッグネームの人たちすべて(笑)!

トム:そうだな(笑)。あとは誰がいたかな……DJとしてのカール・コックス! 彼の初期の、というか93年、94年くらいのミックスにはすごく引き込まれた。だからカール・コックス(*80年代末から第一線で活躍する超ベテランDJ)は超リスペクトしてる!

overmonoというユニット名はどこから来たんですか?

トム:俺たちが育った地域の名前なんだ。

通訳:そうでしたか!

トム:オーヴァーモノ小学校に通っていたんだよ。

エド:「オーヴァーモノ」って書いてある学校のジャンパーがあったから、あれを見つけたいんだよな(笑)。

トム:実際の綴りは少し違うんだけどね(笑)。綴りは少し違うけど発音は全く同じ。

今回のアルバム・リリースにあたって、フロアとの距離感、バランスなどは意識されましたか?

エド:俺たちが作っているのは、実は「車のための音楽(music for the car)」なんだ。

通訳:車ですか?

エド:そう、車のなかで聴いたときに良い音楽かどうかってこと(笑)。

トム:俺たちにとって、それが究極の審査法なんだよ。

通訳:それは面白いですね!

エド:車のための音楽を書く方がずっと自由度があるんだ(笑)。深夜、車を運転しながら、自分たちが作った音楽を車のなかで聴いてみて良い感じだったら、それは良い音楽だと納得がいって満足する。オーヴァーモノのダンスフロア寄りのトラックもやはり車で聴くことを想定して作られているんだよ。自分たちの領域を狭めたくないし、毎回ダンスフロア受けするクラブ・チューンを書かないといけないと思いたくないからね。俺たちは、この車でこのスピードで進んでいる限り、どんな音楽を発表してもいいような感じがするから、その感覚を大切にしていきたいんだ。

トム:俺も同感だ。エドも俺も、クラブにフォーカスされたダンス・ミュージック・アルバムというものがあまり好きではないんだ。ガンガンのクラブ・チューンを12曲も聴きたくはないと思ってしまう。

エド:(いやだいやだ、と頭を振っている)それは嫌だね。近年はアルバムというフォーマットを宣伝目的に使っている人たちもいて、アルバムというひとつの作品になっていないものも多い。なかには良いものもあるけれど。でも、俺たちのアルバムに関しては、そういうものにはしないように意識した。

プロダクションについても少しだけ。あなたのアイコニックな、あの繰り返すヴォーカル・カットはどう培われましたか? UKダンス・ミュージックのメソッドに倣うならば、R&Bのヴォーカルをサンプリングしたくなるところ、「Is U」ではティルザの声を使ってみたり、そんなところもちょっと奇妙で面白いと思います。このセンスはどこからきているのでしょうか。

エド:昔のUKハードコアから元々は来ているんだと思う。ヴォーカルが切り刻まれて、リピートされているからね。UKハードコアの方がリピートの仕方がより激しくて不快かもしれない。UKハードコアの多くがそうであるようにね。ヴォーカルを、もっとリズミカルにしたいというのか、何と説明すれば良いのかな……もちろんUKガラージからの影響もあるけれど、それ以前のスタイルの影響もあると思う。それがUKガラージと融合して、どう発展していまのスタイルになったのかはよくわからないけど、俺たちはとにかく永遠とヴォーカルを切り刻んでいるんだよ(笑)。

トム:ハハハハ。

エド:「ヴォーカルの刻み方を教えてくれませんか?」と人に訊かれることがあるんだけど、俺たちはただ、ずっとその場で、ヴォーカルを切り刻んでいって、自分が求めるサウンドや、良いと思うサウンドができるまで、とにかく切り刻んでるだけなんだよ。特殊なデヴァイスに素材を録音して……みたいな特別なトリックがあればいいんたけど、そうではなくて、とにかく、いいサウンドになるまで切り刻み続けるんだよ。

アートワークやヴィデオに多用されるドーベルマンとBMWについて。これらのモチーフはなにかを現しているのでしょうか? それともただ好きなだけ?

エド:どちらもかな。

トム:ただ好きなだけ(笑)。俺たちは犬が大好きでBMWが大好きだから! ドーベルマンに関しては一応昔のネタがあるんだけど、まあ要するにドーベルマンが大好きってこと。

通訳:あなたたちが飼っているんですか?

トム:いや、友人のだよ。

あなたたちはこれからどういう道を歩むつもりですか。今後の展開について言えることがあればお願いします!

エド:今後はどうなるんだろう? ここ1〜2年は本当に目まぐるしかったから、この先の1〜2年がどうなるのかわからない。でも俺たちはいままで以上に刺激を受けているし、今年もたくさんツアーをする予定があって楽しみにしている。ライヴではアルバムからの新曲を披露する機会もあって、ライヴをやるたびにどんどん新曲を取り入れている感じがあってとても良い感じだよ。今後はもっと音楽をリリースしていきたい。いまも、企画中のものがいくつかあるんだ。だから、今後もオーヴァーモノとして続けていくよ。

通訳:フジ・ロックが待ち遠しいです。今回はDJセット? それともライヴ・セットですか?

トム:ライヴだ。

エド:そう、待ち遠しい。すごいことになるよ!

トム:そうだな。

序文・質問:野田努/協力:mw(2023年5月11日)

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