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Overmono

JungleTechnoUK Garage

Overmono

Good Lies

XL Recordings / ビート

K・W・N Jul 11,2023 UP

K まず1曲目にびっくりした。最近のポップスの模倣というかクリシェをやっているけれど、これはギャグなのか本気なのか。3曲目とか5曲目のヴォーカルもすごくいまっぽいから、本気かな。

W たしかに1、3、5曲とめっちゃポップスですね。でも言われるまで気づきませんでした(笑)。ぼくはこういう、UKのビートにいまっぽいポップスのヴォーカルが乗ることって、そこまでびっくりしないんですよね。

K 感じ方に世代の差が出たね(笑)。

W 世代差じゃないでしょ。

N なんでも世代差にしちゃいかんね。

W なぜなのか考えてみると……たとえば「planet rave」というスポティファイのプレイリストがあるんですが、これはいわゆるY2K的な視点から再定義したダンス・ミュージックを集めたプレイリストで……

K Y2K的な視点って? 2000年になるとコンピュータが1900年と勘違いして大変なことになるぞって騒がれたやつ?

W いや、00年ごろの音楽のリヴァイヴァルってことです。その代表とも言えるピンクパンサレスとかピリは、UK産のビートにめっちゃポップスのヴォーカルが乗っかってます。最近だと、エリカ・ド・カシエールが作曲に加わったニュー・ジーンズの新曲 “Super Shy” もビートが明らかにUKで、さすがにコレはびっくりしました。

K (ピンクパンサレス、ピリ、ニュー・ジーンズを聴いてみる)なるほど、00年ころっていわれてウーキーあたりを思い浮かべたけど、どちらかというとジャングルのリズムを崩した感じ、ジャングルのフィーリングが大きいね。万能初歩くんが好きなアイドルのニュー・ジーンズは検索するとやたらジャージー・クラブって出てくるけど、この曲はジャングルとUKガラージの部分のほうが強いように聞こえる。

W 自分はこういう曲もたくさん浴びている。なのでUKダンスの真打ちたるオーヴァーモノがいまのポップスのメロディをとりいれていることは、彼らがデビュー・アルバムを送り出すうえで、つまりより広いフィールドにかちこむうえでは自然なことだと映ったし、スッと入ってきましたね。

K インタヴューでオーヴァーモノの片方、トム・ラッセルが、最近聴いているのはアメリカのR&Bやポップスで、自覚的にUKのアンダーグラウンドからは距離をとったって言っていたけど、ぜんぜんUKらしい要素は入っているよね。現役のクラバーとしてはどう? 個人的には2曲目とか終盤の “Is U”、“So U Kno 2”、“Calling Out” とか、やっぱりUKガラージのリズムを聴かせてくれる曲がぐっとくるんだけど。

N 2000年代以降のUKは、インディ・ロックでもダンスでもUSのR&Bとヒップホップが大好き。ただ、その背後には依然としてジャングルがあって、これはいまでもほんと大きい。いまもっともイキの良いジャングルを聴きたければ Tim Reaper や彼のレーベル〈Future Retro〉をチェックするといいよ。オーヴァーモノはすでにポップ・フィールドにいるけど、活力あるアンダーグラウンドがその土台にはある。

W 偉そうな言い方になってしまいますが、まずハウスやテクノのDJがフルレングスでアルバム1枚分、カッコよく仕上げるのってすごく難しいことだと思ってます。でもそこを軽々と超えたオーヴァーモノはすげーなあと、いちリスナーとして素直に感じました。

N それはホントそうだね。

W インタヴューにもあるとおり、場所問わずまさに車で流せるような雰囲気もありますよね。ぼくは最後のスロウタイの使い方にしびれました。スロウタイをフィーチャーしたなら、そりゃもうディスクロージャー “My High” 的な、超ラジオ向けシングルをつくりたくなりそうなものですが、あくまでビートが主体でありつつ、きっちりヴォーカルも料理されてる(笑)。

K スロウタイ、5月にレイプ容疑で法廷に呼び出されていたけれど、その後どうなったんだろう。無罪を主張していて、裁判は来年に開始されるみたいだけど……事実だとしたらすごく残念だよね。

W そうですね……。他方で “So U Kno” は京都拠点の Stones Taro がリミックスしたり、まさにゴリゴリのバンガーですよね。

K この曲めちゃくちゃかっこいいよね。ダークさもありつつの、声のサンプルの反復に降参してしまう。

W だけど全体としてはクラブ・バンガーの12インチをただ寄せ集めただけという感じにはなってない。このシーソー感覚は不思議でした。このバランスにかんしてはジョイ・Oよりも好みかもしれない。あのミックステープは最高ですが、ちょっとだけアンセム感が物足りないと思っていたので。その点、オーヴァーモノはバッチリって感じでした。

K オーヴァーモノのもう片方、エド・ラッセルのテセラはチェックしていた? ぼくが最初に聴いたのは “Nancy's Pantry” (2013)で、といっても12インチで買ってたわけではなくて、〈ビート〉から出ていた〈R&S〉のコンピ『IOTDJPN』(2014)で聴いたんだけど、けっこうロウなブレイクビーツをやっている印象だった。オーヴァーモノも “BMW Track” (2021)とかはその延長線上に置ける曲だと思うけど、今回のアルバムはやっぱりだいぶポップさが増していると思う。ヴォーカル入りだからかな。UKらしく加工されてはいるけれど。

W テスラは正直、あまり積極的にはチェックしてなかったですね。「硬派」ってことばが出ましたけど、そこが自分的にあまりハマらなかった理由かもしれません。「ポップさ」「キャッチー」というのはすごく乱暴にまとめると、要はより開けた感じですよね。テセラの12インチから感じる硬派さは狭い空間で男たちが踊る汗臭さを感じます。だけど、今回のオーヴァーモノのサウンドは男も女もいる感じです。なぜかって考えたとき、やっぱりUKガラージ/2ステップはひとつのキーじゃないかと。サイモン・レイノルズが『WIRE』で、UKガラージでは「the girls love that tune(女の子たちがあの曲を気に入ってる)」が宣伝文句になるんだ、と指摘しています。その文句はテクノやドラムンベースだと基本的にディスになると(笑)。「たしかに」って思いました。男だけじゃなく、女性も含めて、いろんな人に開けてる音楽。

N それは偏見、テクノもジャングルも女性リスナー/クラバー多いって(笑)。

K ともあれ日本でもこういう素朴に良質なダンス・ミュージックがもっと市民権を得られるようになるといいな。

K・W・N