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interview with YUKSTA-ILL

interview with YUKSTA-ILL

三重のラッパーがレーベルをはじめた理由

──YUKSTA-ILL(ユークスタイル)、インタヴュー

取材:二木信    Jul 27,2023 UP

DJをやるようになって、ライヴに行った先々の土地でレコードを買う楽しみができて、ヒップホップの新譜のLPをDJでかけたいから買うようになりました。

ところで、今回の作品は、自身の自主レーベル〈WAVELENGTH PLANT〉の第一弾リリースじゃないですか。このタイミングで自分のレーベルを作ろうと思ったのはなぜですか?

YUKSTA-ILL:自分の地元の三重の鈴鹿・四日市を色濃く形作るためにはやっぱりレーベルを立ち上げてやった方がいいと思ったんですよね。

ピッチダウンさせたソウル・ヴォーカルをループしているような “TBA” を作っているUCbeatsさんはユークくんの地元・鈴鹿のビートメイカーなんですよね。

YUKSTA-ILL:そうっすね。地元の鈴鹿・四日市の現場にも20代前半ぐらいの若いヤツらも増えましたけど、UCbeatsは、俺とその若いヤツらのあいだぐらいの世代ですね。UCbeatsは、鈴鹿にあるゑびすビルという複合ビルに〈MAGIC RUMB ROOM〉というスタジオを持っていて、自分もそこにいたりしますね。〈KICKBACK〉(三重県のハードコア・バンド、FACECARZのヴォーカルのTOMOKIが営む洋服屋)もあって、2階が〈ANSWER〉っていうライヴ・ハウスです。もともとヤマハ楽器のビルだから防音の扉もしっかりしているんです。

YUKSTA-ILL - TBA

〈WAVELENGTH PLANT〉というレーベル名はどこから?

YUKSTA-ILL:WAVELENGTHには「波長」とともに「個人の考え方」という意味があり、さらに、鈴鹿・四日市は工業地帯だからPLANTと付けました。ロゴは四日市コンビナートと、波形データをイメージしてデザインしてもらいました。

鈴鹿や四日市はどんな町なんですか。やはり労働者の町?

YUKSTA-ILL:そうですね。工場が多くて、トラックもめちゃめちゃ多い。物流が産業の中心だから、東北や九州から来た出稼ぎの労働者の人も多くて、そういう人がお店やクラブに迷い込んでくることもあるんですよ。だから、仕事を選ばなければ仕事はあって職には困らない地域とも言えます。で、鈴鹿の隣町の四日市が三重ではいちばん栄えている町で、そこに〈SUBWAY BAR〉というクラブがあるんです。

そこが、地元の活動の拠点なんですね。

YUKSTA-ILL:そうですね。今日バックDJとして(渋谷に)来てくれてるキヨシローっていうヤツが〈TRUST〉ってパーティをやっていて。俺がライヴをやるときもあれば、「レコード持って行っていい?」ってDJやりに行く回とかもあるんですよ。コロナ前に1982S(YUKSTA-ILL 、ISSUGI、仙人掌、Mr PUG、YAHIKO、MASS-HOLEの1982年の6人から成るヒップホップ・グループ)が中目黒の〈SOLFA〉でDJオンリーのパーティをやるときに、MASSくんから「DJできる?」って声かけられて、そこで初めてDJしました。

ああ、そうだったんですか。

YUKSTA-ILL:今回のアルバムのCDの特典に、DJ 2SHANの『BLUE COLOR STATE OF MIND』ってミックスCDを付けているんですけど、そのDJ 2SHANは四日市で〈RED HOUSE〉っていうレコ屋をやっている。レコードでDJする彼にDJを教えてもらって、本番に臨みましたね。MASSくんも悪い男だから、俺は初めてのDJなのにメインフロアの1時ぐらい、しかも16FLIPのDJの前に組まれて(笑)。この世のDJの皆さんには謝りたいぐらいですけど、つなぐだけで盛り上がってくれてほっとしました(笑)。DJをやるようになって、ライヴに行った先々の土地でレコードを買う楽しみができて、ヒップホップの新譜のLPをDJでかけたいから買うようになりました。和歌山にラッパーのSURRYくんがやっている〈Banguard〉っていうお店があるじゃないですか。

おお~、SURRYくん! わかります。

YUKSTA-ILL:嫁の地元が和歌山で、〈Banguard〉にも行く機会が増えて。あのお店はヒップホップのみならずレコードの品ぞろえがいいんですよ。それで行くとテンションが上がって、行くたびに何かを買って帰るようになりましたね。DJをやるようになってから新しい視点が加わりましたね。“JUST A THOUGHT” の「まるでレコードの溝 はみ出るニードル 対応には全神経集中する肉眼を駆使」とかは前の俺からは出てこないリリックスですし。DJをちゃんとやっている人にたいして、俺なんかが大それたことは言えないですけど、楽しみが増えたって感じです。ソウタ(ATOSONE/RC SLUM主宰/ブランド「Comma Violeta」のオーナー)もたまに「〈COMMON〉(ATOSONEが名古屋にオープンしたGallery&Bar)でDJしないか?」って誘ってくれますし。

三重のヤツらは才能があるのに発信しようとしないヤツらも多いんですよ。だから、〈WAVELENGTH PLANT〉では、若くてやる気はあるけど、右も左もわからないヤツをサポートしたい。

DJは楽しいですよね。音楽との関わり方のチャンネルがひとつ増えますよね。ユークくんの周りにはお手本になる良いDJがたくさんいるんじゃないですか。今回のアルバムでもビートを2曲手掛けているISAZもミックスCDをコンスタントに出していますし、ぼくは彼のミックスCDがすごく好きで。

YUKSTA-ILL:ISAZのビートは軽やかですよね。あと瞬発力がある。じつは今回のアルバムは作り溜めてきたものをいろいろ調整して作り上げたんです。KOJOEくんが大阪にいたときにいっしょに作品を作っていたんですけど、その途中で沖縄に行っちゃったんで(笑)。

KOJOEさんは、東京、大阪に〈J.STUDIO〉という音楽スタジオを作って、東京はMONJUに、大阪はTha Jointzに任せて、さらにスタジオを作るために沖縄の那覇に移住したんですよね。

YUKSTA-ILL:そうなんです。KOJOEくんもいろいろプロジェクトを抱えている人なので、俺の考えるペースではアルバムが出ないと判断してスウィッチを切り替えて。KOJOEくんとのプロジェクトはいずれなんらかの形で発表するとして、俺のフル・アルバムをまず出そうと。それで、KOJOEくんに了承を得て、KOJOEくんと作った曲からピックアップして、今回のアルバムに収録した。ただ、KOJOEくんのビートをそのまま使っているのは2曲だけで、ほとんどビートは差し替えました。すでにREC済みのアカペラをビートメイカーに送ってビートを作ってもらって、送り返してもらって、さらにラップを録り直してブラッシュアップしていった。だから、けっこう迷走した時期もあって。俺はフル・アルバムを出すときにはやい段階でタイトルやコンセプトを決めて作っていくんですけど、今回は溜まった曲を並べていった。そうしたら、ぜんぜんまとまりがなくて、ISAZの2曲は、アルバムがじょじょに肉付けされていくなかで、アルバムに足りない部分を加えた曲だった。いままでと違う作り方をして完成させることができたのは新しい経験でしたね。

そもそもユークくんとKOJOEさんとの出会いっていつですか?

YUKSTA-ILL:KOJOEくんが2009年にアメリカから帰国してからの付き合いなんで長いんですよ。KOJOEくんが帰国して最初のライヴは〈MURDER THEY FALL〉(1998年に第1回が開催された東海地方のハードコア、ヒップホップ、ストリート・カルチャーを象徴する重要イヴェント)で、自分はそこにTYRANTとして出演していたんです。それからじょじょに親しくなっていった。仲が良いからこそ、KOJOEくんからは厳しく言われますね(笑)。

“TIME-LAG” はKOJOEさんのビートですが、ベースラインがカッコいいですね。

YUKSTA-ILL:いいですよね。WELL-DONE(大阪を中心に活動するクルー、Tha Jointzのラッパー) との “GRIND IT OUT” は、俺がTha Jointzのみんなも出てる大阪のイヴェントに行ったときにやることになった曲です。まだKOJOEくんも大阪にいました。ただ、KOJOEくんのビートをOWLBEATSのものに差し替えていますね。

OWLBEATSさんも精力的に活動していますよね。〈OILWORKS〉から出した『ON-SHOCK』も今年出した『BAN-ZOK-HEADZ』も素晴らしかった。

YUKSTA-ILL:鹿児島出身のOWLBEATSとも古いです。OWLBEATSはファースト・アルバム『? LIFE』を〈RC SLUM〉からリリースしていますけど、その前から、鹿児島や沖縄にはよくライヴで行っていましたし、名古屋や地元以外で、いちばんライヴで行っている土地が鹿児島ですね。というのも、自分たちの周りは昔からハードコアとヒップホップのつながりは強くて、OWLBEATSはLIFESTYLEという鹿児島のハードコア・バンドと仲が良くて、名古屋にいっしょに来ていたんですよ。WELL-DONE も元々ハードコア・バンドをやっていましたしね。OWLBEATSが2015年にOTAI RECORDが主催して〈club JB'S〉で開催したビートメイカーのバトル・イヴェント〈BEAT GRAND PRIX 2015〉で優勝したときは、俺らは誇らしかったですよ。ブレずに自分のスタイルでやり続けていますよね。

“SPIT EASY” にはALCIとGIMENが参加していますけど、すこし前に東京で観たALCIのライヴがめちゃくちゃパワフルでした。

YUKSTA-ILL:ALCIと兄貴のBRUNOの日系兄弟のライヴもすごいですよ。ぜひ観てほしいですね。兄弟だから出せるグルーヴがあって、あれは他のヤツらには真似できないっすね。ALCIはいまは名古屋にいますけど、四日市に2年ぐらい住んでいた。ヤツは、〈SUBWAY BAR〉で「AMAZON JUNGLE PARADISE」ってずっとやっているオープンマイクのイヴェントに三重に住む前から来ていて、ラッパーとしてそこで培ったものは大きいと思います。ALCIのソロ・アルバム『TOKAI KENBUNROKU』でも1曲やっています。でも、三重のヤツらは才能があるのに発信しようとしないヤツらも多いんですよ。だから、〈WAVELENGTH PLANT〉では、若くてやる気はあるけど、右も左もわからないヤツをサポートしたい。今回は自分のアルバムだけど、俺だけのレーベルじゃなくて、地元の他のヤツらにもみんなのレーベルと思ってほしいんです。

取材:二木信(2023年7月27日)

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Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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