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YUKSTA-ILL

Hip Hop

YUKSTA-ILL

DEFY

Pヴァイン/RC SLUM

Wenod Tower HMV Amazon iTunes

大前至   Mar 26,2019 UP

 東海3県(三重、愛知、岐阜)を拠点とするヒップホップ・コレクティヴ、NEO TOKAI/TOKAI DOPENESSの一員であり、いまの東海シーンを代表するレーベル/クルーであるRC SLUM/SLUM RCの中心メンバーであるYUKSTA-ILL(ユークスタイル)の、約2年ぶり3枚目となるソロ・アルバム『DEFY』。これまでもさまざまなアーティストやプロデューサーとともに作品を作り上げてきた彼だが、本作ではフィーチャリングゲストはいっさい入れず、計12名のヒップホップ・プロデューサーと一対一の真剣勝負を繰り広げる。2013年にはKID FRESINOやPUNPEEなど東京のビートメイカー6名と組んだEP『tokyo ill method』をリリースしているが、今回は地元東海エリアや東京勢はもちろんのこと、北は北海道から南は九州まで、ベテランから若手まで年齢層も幅広く揃え、このバラエティに富んだ人選は直接、作品としての厚みにも繋がっている。

 JJJによるドラムとウワモノが深く絡みつくビートに乗って、本作に対する所信表明とも言える“DEFY INTRO”でアルバムの幕は開け、さらに畳み込むようにOMSBが手がけるド直球なファンク・トラックが最高な“SELFISH”、そして“RUMOR'S ROOM”では1982sの盟友であるMASS-HOLEのトラックの上で、嘘と噂が蔓延する世の中へ皮肉を込めたメッセージを放つ。この冒頭3曲だけでもトラックのスタイルは実に多種多様であるが、YUKSTA-ILLは変幻自在なフロウによってこれらのトラックを見事に操り、言葉ひとつひとつをしっかりと耳にはめ込んでくる。

 名古屋の重鎮、刃頭によるいぶし銀なトラックの“LONELY CLOWN”、2000年前後のアンダーグラウンド・ヒップホップにも通じるレイドバック感溢れるDJ Whitesmithの“OWN LANE”、曲のテーマ通りのインダストリアル・テイストなJUNPLANTによる変則チューン“ASTHMA 059”を経て、アルバム中盤の個人的なピークは田我流およびstillichimiya周辺の謎のトラックメイカーとして知られるFALCONが手がけた“COMPLEX”だ。YUKSTA-ILLの地元のシーンに対する愛憎交わる熱い思いが、ヴァースごとに小技がいろいろと効いたFALCONのトラックに乗ることによって、結果的に愛情豊かな1曲として見事に仕上がっている。後半では、オールド・エレクトロのテイストも感じられるDJ HIGHSCHOOLによる“IT'S ON ME”、北のベテラン、DJ SEIJIによるブーンバップ全開な“MY STANCE WIT' ATTITUDE”、クリーンかつ深く耳に突き刺さるDJ MOTORAの“PIECE OF MIND”、昨年リリースのアルバム『here』でも共演したKOJOEがトラックを手がける、まるで永遠に時が続いていくような感覚の“TILL THE END OF TIME”と続き、ラストは前述の『tokyo ill method』にも参加していたBUSHMINDによるドリーミーなメロディが印象的な“DEFY OUTRO”で、アルバムの幕は綺麗に閉じる。

 全てYUKSTA-ILL自身が選んだプロデューサーおよびトラックであり、当然、そこに一貫した流れはあるわけだが、ラッパーとしてこれほどの多彩なメンツをひとつにまとめる手腕は実に見事だ。そして、自らの内面やヒップホップ・シーン、あるいは社会に対する時にストレートで時に屈折した感情が込められたYUKSTA-ILLのライムの説得力と、スキルに裏打ちされたフロウの力が、本作の完成度を高めている最大の要因であることは言うまでもない。1曲ごとに「次に何が出てくるか?!」というワクワク感を楽しむためにも、ぜひアルバム単位で頭から最後までじっくりと堪能して欲しい作品だ。

大前至