「PIL」と一致するもの

Coldcut × On-U Sound - ele-king

 これは事件です。サンプリング・ミュージックのパイオニアにして〈Ninja Tune〉の設立者であるコールドカットと、UKダブの巨匠にして〈On-U Sound〉の創始者であるエイドリアン・シャーウッドがコラボしました。これは昂奮します。夢の共演とはまさにこのこと。もはや説明不要のこの二組は、Coldcut x ON-U Sound という名義で5月19日にアルバム『Outside The Echo Chamber』をリリース。現在、リー・ペリーやジュニア・リードをフィーチャーしたトラック“Divide And Rule”が先行公開されています。これは昂奮します。


Coldcut x On-U Sound

ヒップホップとレゲエのスピリットをUKに持ち込み
その後の音楽シーンを一変させた先駆者がまさかのコラボ!
歴史的アルバム『Outside The Echo Chamber』から
リー・スクラッチ・ペリー参加曲“Divide and Rule”を公開!

コールドカットのマッシュアップは〈ON-U〉からヒントを得たんだ。
〈ON-U〉がなければ〈Ninja Tune〉も存在していなかったよ。
- Matt Black (Coldcut)

サンプリング・カルチャーのパイオニアにして〈Ninja Tune〉を主宰するコールドカットと、UKにおけるダブ/ポストパンク勃興の象徴にして、〈ON-U Sound〉を主宰するエイドリアン・シャーウッドが、驚きのコラボ・アルバム『Outside The Echo Chamber』を発表し、リー・スクラッチ・ペリー、ジュニア・リード、エラン・アティアスが参加した新曲“Divide and Rule”を公開した。

Coldcut x On-U Sound - 'Divide and Rule feat. Lee ‘Scratch’ Perry, Junior Reid and Elan'
https://www.youtube.com/watch?v=t1HtUqJ4zSk

10曲のオリジナル楽曲に加え(国内盤にはさらに1曲を追加収録)、6曲のダブ・ヴァージョンを収録した今作には、リー・スクラッチ・ペリー、ジュニア・リードのほか、ルーツ・マヌーヴァやチェジデック、セシル、メジャー・レイザーのメンバーとしても活躍したスウィッチの新たなプロデューサー・コレクティヴであるウィズ・ユー、トドラT、など、グローバルなミュージシャンやヴォーカリストが集結し、ロンドン、ラムズゲート、ジャマイカ、ロサンゼルスでレコーディングされている。

ジャマイカ移民が持ち込んだサウンドシステム・カルチャーによって、1960年代から徐々にUKに根付き始めたレゲエ・ミュージックは、ザ・クラッシュのジョー・ストラマーやセックス・ピストルズのジョン・ライドンらパンクスたちの心を掴んだことによって、70年代後半以降の音楽シーンに大きな影響を及ぼしたことはよく知られている。当時の社会情勢に対する反抗的な姿勢ともリンクした大きなうねりの中で、その象徴的存在だったのが、エイドリアン・シャーウッドが1981年に立ち上げた〈ON-U Sound〉だった。エイドリアンは、その輝かしいキャリアの中で、ザ・スリッツのアリ・アップやポップ・グループを率いるマーク・スチュワート、PiLのキース・レヴィンらが集結したニュー・エイジ・ステッパーズをプロデュースするなど、当時のパンク/ポストパンク・バンドとジャマイカの伝説的アーティストを繋ぐ重要なキーマンとしての役割を果たしている。このムーヴメントはいっときのトレンドでその役目を終えることなく、マッシヴ・アタックの登場をはじめ、その後の音楽シーンに様々な痕跡を残している。

この重要な時代の節目を肌で感じながら、エイドリアン・シャーウッドとはまた違う歩みを辿り、UKシーンのその後の発展に多大な影響を及ぼしたのが、コールドカットである。ターンテーブルのみで制作した87年リリースのデビュー曲“Say Kids, What Time Is It?”はその画期的なサンプリング手法が世界に衝撃を与え、同年リリースされたエリックB&ラキムのリミックス“Paid in Full (Seven Minutes Of Madsnes - Coldcut Remix)”によって、一気にその名を轟かせる。彼らはラップをレイヴァーたちに紹介し、またヒップホップとアシッド・ハウスを融合し、エレクトロニカやブレイクビーツといったより多様性のある分野で先駆的存在となった。90年代には〈Ninja Tune〉を設立し、〈Mo’ Wax〉主宰のジェームス・ラヴェルや、DJシャドウらとともにトリップ・ホップやアブストラクト・ヒップホップと名付けられたムーヴメントの礎を築いていく。

ダブ、ロック、レゲエ、ダンス・ミュージックを独自のアプローチで融合させ、革新的なサウンドを追求していたエイドリアン・シャーウッドは、80年代中盤に入ると〈Tommy Boy Records〉と親交を深める中で、メリー・メルやKRS-1が活躍し、絶頂期にあった当時のNYブロンクスのヒップホップ・シーンを目の当たりにする。その時期に出会ったタックヘッドのスキップ・マクドナルドとダグ・ウィンビッシュは、ヒップホップ・レーベル〈Sugar Hill〉のハウスバンドのメンバーであり、グランドマスター・フラッシュの“The Message”や“White Lines”といったヒップホップの金字塔のリズム・セクションを担当しており、〈ON-U Sound〉の長年のコラボレーターとなった。

レゲエとヒップホップのスピリットをUKに持ち込み、それぞれが独自のキャリアを重ねるなか、型破りな姿勢で繋がっているこの両者のコラボレートは、その気になればいつでも実現する可能性があった。しかしコールドカットが今年デビュー30周年を、〈ON-U Sound〉が昨年35周年を迎え、混乱の政治情勢が続くこの2017年は、彼らがコラボレートし、音楽史にまた新たな歴史を刻むにはこれ以上ないタイミングとも言えるだろう。

コールドカットが〈Ninja Tune〉設立以前に立ち上げたレーベル〈Ahead Of Our Time〉からリリースされるコールドカットと〈ON-U Sound〉のスペシャル・コラボ・アルバム『Outside The Echo Chamber』は、5月19日(金)世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Beat Your Chest feat. Roots Manuva”を追加収録し、国内盤限定のスリーヴケースとコールドカットのジョン・モア、マット・ブラック、そしてエイドリアン・シャーウッドの3人が、彼らの出会いや、パンク、ポストパンク、レゲエ、ヒップホップなどそれぞれの音楽的背景を語ったスペシャル・インタヴューを掲載したスペシャル・ブックレットが封入される。iTunesでアルバムを予約すると公開された“Divide and Rule feat. Lee ‘Scratch’ Perry, Junior Reid and Elan”がいちはやくダウンロードできる。

label: Ahead Of Our Time / Beat Records
artist: Coldcut x ON-U Sound
title: Outside The Echo Chamber

cat no.: BRC-548
release date: 2017/05/19 FRI ON SALE
国内盤CD: スリーヴケース+スペシャル・ブックレット付き
ボーナス・トラック追加収録 / 解説書封入
定価: ¥2,400+税

【ご購入はこちら】
amazon: https://amzn.asia/4nWz8zX
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002154
iTunes Store: https://apple.co/2mHpzbZ

[TRACKLISTING]
01. Vitals feat. Roots Manuva
02. Metro
03. Everyday Another Sanction feat. Chezidek
04. Make Up Your Mind feat. Ce’Cile
05. Aztec Riddim
06. Kajra Mohobbat Wala feat. Hamsika Iyer
07. Divide and Rule feat. Lee ‘Scratch’ Perry, Junior Reid and Elan
08. Make Up Your Mind feat. Elan
09. Robbery feat. Rholin X
10. Livid Hip Hop
11. Beat Your Chest feat. Roots Manuva *Bonus Track for Japan
12. Vitals feat. Roots Manuva (Dub)
13. Everyday Another Sanction feat. Chezidek (Dub)
14. Make Up Your Mind feat. Ce’Cile (Dub)
15. Kajra Mohobbat Wala feat. Hamsika Iyer (Dub)
16. Divide and Rule feat. Lee ‘Scratch’ Perry, Junior Reid and Elan (Dub)
17. Robbery feat. Rholin X (Dub)

Clark - ele-king

 オウテカが『Confield』を出し、エイフェックスが『Drukqs』を出したまさにその年に、『Clarence Park』で鮮烈なデビューを飾ったクリス・クラーク。IDMの礎を築いた世代が路線を変更したり長い沈黙に入ったりした時期に、まるでその空白を埋めるかのような形で綺羅星のごとく現れたのがクラークである。当時日本では彼のことをRom=Pariが高く評価していたけれど、以降クラークはコンスタントに……うん、少しは休んでもいいのよと心配になるくらいコンスタントに作品を発表し続け、その成果もあってか、この国における彼の影響力はいまでも衰えていない。たとえば、先日戸川純とともにアルバムを制作したVampilliaも、リミックスという形でクラークとコラボレイトしている。
 そのクラークの新作が4月7日にリリースされる。『Death Peak』というタイトルや、「危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡す」という本人のコメントから類推するに、来るべき彼のニュー・アルバムは、2016年という暗い世相を反映したものになっているのではないだろうか(昨年彼が国民投票の結果を嘆いていたことを思い出すべし)。
 ともあれ、いまは公開された新曲“Peak Magnetic”を聴きながら、「破壊を超えた先の絶景」とやらがいったい何なのか、ああだこうだと想像しておこう。

破壊を超えた先の絶景……
3年振り待望のスタジオ・アルバム『DEATH PEAK』完成!!!
新曲“PEAK MAGNETIC”を公開!

自身の名を冠した前作『Clark』から3年、サウンドトラック制作や舞台音楽、オーケストラへの楽曲提供など、〈Warp〉きっての多作家として活躍の場を広げ、さらなる進化を遂げたクラークが、自身の独創性を爆発させた待望の最新作『Death Peak』を携えシーンに帰ってくる。アルバム完成の発表と合わせて新曲“Peak Magnetic”を公開!

Clark - Peak Magnetic
https://soundcloud.com/throttleclark/peak-magnetic

“Peak Magnetic”では、ここ数年で最も明るく、アップビートなクラークを聴くことができる。そのほとばしるエネルギーこそ、彼の新たなサウンドを象徴している。
- Pitchfork

デス・ピーク(死の山頂)というタイトルは2016年の8月からずっと考えていた。完璧だと思ったよ。まるで呪文のように『デス・ピーク、デス・ピーク、デス・ピーク』と繰り返していた。この山の出発地点は、穏やかに蝶の舞う牧草地が広がっている。でも最後には危険でおそろしい頂にたどり着き、あらゆるものが壊れた光景を眼下に見渡すことになるんだ
- Clark

10代で〈Warp〉と契約を果たし、いまやレーベルの象徴的存在にまで成長したクラーク。前作『Clark』リリース後も、BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)にノミネートされた海外ドラマ・シリーズ『The Last Panthers』の劇伴や、革新的な作品の上演で知られるヤング・ヴィク・シアターで上演された作品『マクベス』の舞台音楽、さらにLAを拠点とするオーケストラ、エコー・ソサエティーへの楽曲提供など、そのサウンドはさらに進化を続けている。また「不健全で強迫神経症じみた人格を潜在的に備えていればいるほど、作品がより優れたものになる」と語るクラークの内なる狂気とのアンバランスさが、いまだ体験したことのないようなコントラストを生み出し、聴く者の聴覚を完全に支配する。また今作での新たな試みとして、自身が「最も完璧なシンセサイザー」と評する人間の声を、収録曲のほとんどに取り入れ、柔らかで美しいテクスチャーをもたらしている。

クラークのキャリア8枚目となる最新スタジオ・アルバム『Death Peak』は、4月7日(金)世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“Licht (Pink Strobe Version)”が追加収録され、解説書が封入される。初回限定生産盤はデジパック仕様となる。iTunesでアルバムを予約すると公開された“Peak Magnetic”がいちはやくダウンロードできる。


label: WARP RECORDS / BEAT RECORDS
artist: CLARK
title: DEATH PEAK
release date: 2017/04/07 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-543 定価 ¥2,200 (+税)
初回限定生産盤デジパック仕様
ボーナストラック追加収録 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
amazon: https://amzn.asia/2dFmhIQ
bartkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002147
iTunes Store: https://apple.co/2kVM3F6

TRACKLISTING
01. Spring But Dark
02. Butterfly Prowler
03. Peak Magnetic
04. Hoova
05. Slap Drones
06. Aftermath
07. Catastrophe Anthem
08. Living Fantasy
09. Un U.K.
10. Licht (Pink Strobe Version) *Bonus Track for Japan

2017 DOMMUNE<02/14火>
■19:00-24:00 ele-king books Presents
戸川純歌手生活35周年バレンタイン5時間スペシャル
「戸川純全歌詞解説集」重版記念番組!「疾風怒濤きょうは晴れ」
LIVE:戸川純 with Vampillia 
DJ:テンテンコ(戸川純 PLAY ONLY) / BROADJ# BROADJ#2148
TALK:戸川純、宮沢章夫、三田格、野田努、Vampillia、おおくぼけい(アーヴァンギャルド)
テンテンコ、石塚BERA伯広(戸川純 / プノンペンモデル / VIDEO rODEO / 電車)

■約20年振りのメディアへの登場となる戸川純!歌手生活35周年記念番組!
ele-king books Presents DOMMUNE『疾風怒濤きょうは晴れ』
2016年に入って新たに3つのプロジェクトをスタートさせた戸川純。これまでのソロ活動に加えて、戸川階段、戸川純 avec おおくぼけい、戸川純 with Vampilliaと、それは多面的な方向性を示し、またしても多重人格的な動きになっている。さらには活動を再開させたTACOのライヴや年末に亡くなったピエール・バルーとも最後のデュエットを共にし、対バンの数も限りない。音楽だけでなく、蜷川幸雄に捧げた追悼文も大きな話題を呼び、初めて認めた短歌が年末の「歌壇100選」に選ばれるなど、文才も絶好調。年末には過去に書いた歌詞の解説集「疾風怒濤時々晴れ」もよく売れている。この度、DOMMUNEでは、そんな戸川純の歌手生活35周年を記念したバレンタイン5時間スペシャルを企画!!なんと、この番組は、戸川純自らの意思では十数年振りのメディアへの登場となる!!現在の活動について、音楽仲間や宮沢章夫らと語り尽くし、そして、なんと、歌手活動35周年記念盤「わたしが鳴こうホトトギス」を共に製作したVampilliaとライヴも実現!!!!史上空前のDOMMUNE5時間ブチヌキ戸川純スペシャル!!!超絶必見です!!!

「戸川純全歌詞解説集―疾風怒濤ときどき晴れ」 (ele-king books)
戸川純 with Vampillia「わたしが鳴こうホトトギス」

■2017 02/14 19:00-
● ENTERANCE : 2,500YEN
● OPEN : 18:50頃(第1部~第2部入れ替え無し! 番組途中入場OK! 再入場不可! BARあり!)
● 〒150-0011 東京都渋谷区東4-6-5 ヴァビルB1F / TEL : 03-6427-4533

戸川純 with Vampillia - ele-king

 『20th Jun Togawa』が出た頃だから、もう16年も前のことになる。2人目を妊娠中の妻が緊急入院したため1才ちょっとの長男の乳母車を押してインタヴューに行かねばならぬ事態に何度か見舞われた。そのうちの1回が戸川純だった。息子が突然泣き出すためにインタヴューは何度も中断したのだが、戸川はまったく動じることなく、終始穏やかな表情のまま取材は終了した。時に意地悪な質問に対する受け答えもまことに冷静で思慮深い。不思議ちゃんとかメンヘラとか呼ばれてきたパブリック・イメージからはほど遠いそのまっとうすぎる姿を前に、僕はいささか忸怩たる思いを抱きつつ、戸川純という人の本質とポップ・スターとしての難儀さに気づかされたのだった。
 今、改めて思う。戸川純は、常にまっすぐで、ひたむきで、時にサーヴィス(思いやり)過剰な表現者である、と。難解で古めかしい言葉遣いやネジが外れた感じの身振り、面妖な衣装などは彼女をキュートな劇物として際立たせ、80年代日本サブカルチャー・シーン(もしくはパルコ/YMO環境)の変種イコンへと祭り上げたわけだが、しかしけっして、彼女は奇をてらっていたわけではない。ひたすらに自身の心情に忠実に寄り添い、噴き上げる情熱(情念ではなく)のまま愚直に表現していたにすぎない。そして、そこに常につきまとう不器用さとサーヴィス精神が結果としてエクストリームな情景を描き出し、リスナーの間に膨大な量の誤解や曲解や妄想が生まれていったのだと思う。もっとも、この誤解や曲解や妄想が戸川自身に戸惑いや落胆だけでなく喜びや新たな闘志を与えていたのも事実だとは思うが。

 セルフ・カヴァ集であるこのニュー・アルバムから一貫して伝わってくるのは、まっすぐでひたむきで不器用で情熱的な戸川純という人の“生への執念”である。オープニング曲として“赤い戦車”が選ばれていることが、それを如実に物語っていよう。ヤプーズの3作目『ダイヤルYを回せ』(91年)のラストに収められていたこれこそは、戸川の人生のところどころで首をもたげてきた“死への誘惑”に抗わんとする生への獰猛な意志が、曲名から歌詞、サウンドに至るまで最もダイレクトに表出した名曲である。元々が重厚な音作りだったが、ここでは更にツイン・ドラムとストリングスを活かした Vampillia の爆発的演奏を従えて戸川は覚悟の強さのほどを改めて宣言している。最初にこのオープニング曲を聴いた瞬間、
本作に込められた戸川の思いが一直線に届き、握りしめた手に汗がにじんできた。
 以下、“好き好き大好き”や“バーバラ・セクサロイド”、ホラーすれすれの極端なラヴ・ソング“肉屋のように”などこれまた自身の生存本能の獰猛さを噛みしめるように歌い上げる一方、DNAレヴェルで戸川の体内に埋め込まれたキーワード“諦念”に向き合った“蛹化の女”“諦念プシガンガ”など初期人気曲が並ぶ。あと“12階の一番奥”なんて意外な曲もあったり。選曲に関しては戸川と Vampillia のどちらがイニシアティヴをとったのかは知らないが、結果的に彼女の新たなベスト盤と言ってもいい内容になっている。全10曲中、雅な和風メロディに乗ったアルバム・タイトル曲だけは、本作のために新たに書き下ろされた新曲だが、これまた「何年経つても鳴ひてゐやふ」というフレーズなどからは彼女の“生への執念”がストレートに伝わってこよう。

 80~90年代に比べて歌唱力が衰えているのはまぎれもない事実、である。怪我に伴う数年間のブランクもあったりして、かつては3オクターヴ半を誇った声域はかなり狭くなっているし、何よりも歌声そのものには艶がない。セルフ・カヴァであるだけに、その衰えぶりは一見残酷だ。が、その衰えを誰よりもわかっているのは間違いなく戸川自身のはず。彼女はしかし、ここで音源の修正などはおこなわず、生のままで晒した。衰えたのなら衰えたままの姿にきちんと対峙し、齢を重ねた今の自分にしか表現できないものがあるということを確認したかったのだと思う。
 たとえば“好き好き大好き”。ここにあるのは、ドラマティックな7つの声色が無邪気さと不気味さと華麗さを暴力的に錯綜させたオリジナル版とは違う、音程をふらつかせながら必死で絞り出された歌声である。20代の戸川が出刃包丁をかざしながら放った「愛してるって言わなきゃ殺す」という決め台詞は、“もののあはれ”をわきまえた複雑な表情へと変わっているのだ。“バーバラ・セクサロイド”の妖しい女もダニエラ・ビアンキやハル・ベリーではなく、靴先に毒針を仕込んだロッテ・レーニャに変貌しているが、増えた皺の数を戸川はけっして恥じたりはしない。20代では描けなかった新しい情景や物語が、ここには確かにあるのだ。そして、このような表現も、Vampillia が戸川純という歌手の本質と魅力を慎重かつ的確に見極め、楽曲ごとに起伏に富むアレンジと演奏でバックアップしたからこそ可能だったのだと思う。えてしてバースト感だけが注目されがちのVampillia にとっても、今回のコラボレイションからは得るものが多かったはずだ。

 歌手デビューから35年。諦念という名の重荷を背負いながら、他者の道とけっして交差することのない一本道を歩き続けてきた戸川純。鳴くのはホトトギスではなく自分なのだという彼女の覚悟を、「生きる!」という声を、今しっかりと受け取った。

戸川純 avec おおくぼけい - ele-king

 10代の頃から歩き慣れた青山通り。デートとか、デートとか、デートとか、したなー。日曜の夜はしかし、人通りがほとんどなくて、ちょっとばかり風情が違う。都心だというのに意外と暗くて、ヨーロッパの夜を思い出す。気分はまさにエクステリアー・ナイト。夜の空気はどこまでも優しい。2日後にはタクシーが歩道に突っ込み、6人も意識不明になったというのに。
 2016年は92歳のシャルル・アズナヴールと82歳のピエール・バルーが相次いで来日し、チャランポランタンの活躍もあってか、なんともシャンソンが気になる年だった。そんな年の夏に戸川純もアーヴァンギャルドのおおくぼけいと新たにシャンソンのユニットをスタートさせた。デビューはサラヴァ東京。ピエール・バルーのお店で、リンディホップのパーティなどがよく開かれている。“蛹化の女”や“諦念プシガンガ”はもちろんだけれども、ここで戸川純とおおくぼけいは(“追悼・戸川京子”でも歌っていた)ジェーン・バーキンのカヴァー“イエスタデイ・イエス・ア・デイ”を演ってくれた。あの切なさと愛らしさはしばらく尾を引いた(戸川純ソロ・ヴァージョン→https://www.youtube.com/watch?v=tO5aK_dkXSs

 外苑西通りをだらだらと下り、久しぶりに青山マンダラへ。カウンターにもたれて2人の登場を待つ。舞台中央にはグランド・ピアノ。距離が近いのでかなり大きく感じる。まずはおおくぼけいが姿を現し、荘厳な始まり。ロココ調の衣装で戸川純もこれに続き、オープニングは“ハスラーズ・タンゴ”。いきなりルイス・フューレイときましたね(その昔、テレフォン・ショッキングに出てきた戸川純が自分の衣装をさして司会のタモリに「フェリーニみたいでしょ!」と、一般大衆を大きく引き離したことを思い出す)。続いてピンクのサングラスを外して“アイドルを探せ”。オリジナルのシルヴィ・バルタンよりも甘えた感じにを強調して歌う(同じく戸川ソロ→https://www.youtube.com/watch?v=MCm5ae3cdow)。シャンソンというより“セシル・カット”や“ジョー・ル・タクシー”などフレンチ・ポップスをよく取り上げることが多いせいか、次は“夢見るシャンソン人形”かなどと勝手に考えていると、なんと“恋のコリーダ”。これが見事にシャンソンと化していて、再びフレンチ・ポップスの代表曲……を独自に解釈した“さよならをおしえて”。いつものバンド編成とは異なるせいか、ヴォーカルが実に強く感じられる。いわゆる声が出ているというやつ。

 選曲とアレンジはすべておおくぼけいによるものだそうだけれど、彼がチャレンジャーだな~と思ったのが“フリートーキング”。戸川は手の振りをつけて歌い、随所で挿し挟まれるピアノの不協和音がいい。腰を痛めているはずの戸川は全身を大きく揺すり、ボクサーのようにスウェイバックを繰り返す。けっこう腹筋があるのかもしれない。ここまでバッグを膝にのせたまま歌っていて、タオルで汗を拭こうと思ったところ、忘れたことに気がつく(じゃあ、あとは何が入ってるんだ?)。MCを挟んで“また恋をしたのよ”(マレーネ・ディートリッヒ)から“プリシラ(I’ve Never Been To Me)”(シャリーン)へ。後者は決めごとの多い戸川ワールドでも、東口トルエンズやゴルゴダといったデュオでしかやらない曲だと決めているらしく、「これが歌えるのが嬉しかった」と新しいユニットを始めた喜びをひと言(昔からですが、首をすくめる動作がまた可愛い)。ちなみにこの曲の一節、「夢のように劇的な私の日々」は『戸川純全歌詞解説集』の副題候補に挙がっていたことも。以後はデビュー・コンサートと同じだったろうか、“王様の牢屋”“クレオパトラの涙”と重々しい曲が続き、ここでまたMC。“戸川純 avec おおくぼけい”が独自につくったコンサート・グッズはモバイル・バッテリーで、「これは本当に便利」と大久保が言えば、いろんな商品について話しているうちに「私は一体、何屋さんなんだろう?」とボケる戸川。ヘンなところが前回よりも息が合っている。

 エンディングに向かって“蛹化の女”“諦念プシガンガ”、そして、僕が前回、最も驚いたアレンジを聴かせる“肉屋のように”。ピコ太郎を思わせるジャーマン・ニューウェイヴ風のシンセ-ベースにブラック・サバスばりの分厚いアンサンブルが襲いじかかる“肉屋のように”は、近年のライヴでは白眉ともいえる完成度を示していたけれど、波打つようなグランド・アピノが印象的なおおくぼけいヴァージョンも一聴の価値アリです。次のライヴはまだ決まってないそうだけど、“肉屋”で“身もだえ”するのが好きな方々は絶対に一度は聴いた方がいいでしょう(つーか、レコーディングしないのか?)。そして、最後は“本能の少女”。本人いわく“蛹化の女”の蝶ヴァージョン。『戸川純全歌詞解説集』をつくってからというもの、同じ曲が以前と同じようには聴こえなくなってしまいましたけれど、この曲もかなりヤバい。「生きてる意味なら自分でつくるわ」と歌詞が変わっているところも上がるし、スタッカート気味のピアノが本当に高揚させてくれる。エディット・ピアフがどれだけのビッチだったかは知らないけれど、こういうのをシャンソンというのではないでしょうか。ちなみにステージから去っていくおおくぼけいの衣装が肩にピンクのヒラヒラをつけていて、これがまた戸川純とはいいコンビネイションでした。アンコールは“バージン・ブルース”(野坂昭如)をジャズで。戸川純、今年最後のライヴがこうして終わり、終焉後もサイン本を求めて会場の外に長蛇の列ができていた。

戸川純ライヴ情報

★1/13 恵比寿リキッドルーム(with Vampillia)

出演:戸川純 with Vampillia / Vampillia / 他
18:00 OPEN 18:30 START
adv.¥4000 (drink別)
問:LIQUIDROOM 03-5464-0800

★1/20 梅田クアトロ(with Vampillia)

出演:戸川純 with Vampillia / Vampillia / 他
18:00 OPEN 19:00 START
adv.¥4000 door ¥4500(共にdrink別)
問:梅田クラブクアトロ 06-6311-8111

★2/1 新宿ロフト 戸川純 / dip ツーマン・ライヴ

出演:戸川純(Vo.)、中原信雄(Ba.)、ライオン・メリィ(Key.)、矢壁アツノブ(Dr.)、石塚 “BERA” 伯広(Gt.) ゲスト:ことぶき光(Key)、山口慎一(Key:YAPOOS,Coherence)

dip ヤマジカズヒデ(Gt. Vo.) ナガタヤスシ(Ba.) ナカニシノリユキ(Dr.)

18:00 OPEN 19:00 START
adv.¥4000  door ¥4500(共にdrink別)
チケット発売 ぴあ(P:317-530)、ローソン(L:71365)、e+、ロフト店頭、通販

戸川純ちゃん祭り - ele-king

 おかげさまで『戸川純全歌詞解説集』が大好評の戸川純(リスペクトを親しみを込めて、純ちゃん)ですが、まだまだ続きますよ。
 まずは12月14日、Vampilliaとの共作(セルフカヴァー・アルバム)戸川純 with Vampillia『わたしが鳴こうホトトギス』がVirgin Babylon Recordsよりリリース! 名曲たちが、Vampilliaの演奏でみごとに甦ります。アルバムには、12年振りの新曲となる「わたしが鳴こうホトトギス」も収録。しかもゲストとして同レーベル主宰者のworld's end girlfriendも参加。

戸川純 with Vampillia 「赤い戦車」

 また、急遽、戸川純の秘蔵写真を多数収録した戸川純ミニ写真集も刊行します。 これは、『わたしが鳴こうホトトギス』のTOWER RECORDS特典とレーベル特典として購入者に配布されるもの。これ欲しい!

 そして、12月21日にはソニーから 1982~87年にかけてリリースされた戸川純関連アルバム6タイトル(原盤:アルファミュージック)が最新リマスターで再発。(すべての盤には三田格のライナーノーツが入る!)。ちなみにゲルニカの『ゲルニカ/改造への躍動』(名盤です)は、アルファ発売音源を全て収録した特別拡大版になります。また、全曲ハイレゾ配信音源も同時発売予定。詳しくはこちらも→www.110107.com/jun_togawa35

 そしてまた、来年には戸川純35周年記念LIVEが1/13@東京LIQUIDROOM、1/20@大阪クラブクアトロで開催決定!


 年末〜年始の純ちゃん祭り、乗り遅れないように!

戸川純全歌詞解説集 - ele-king

 30年前。朝日ジャーナルの別冊で初めて戸川純に取材することができた。2時間遅れでやってきた彼女は質問の答えがすぐに浮かばないとテープ・レコーダーのスウィッチを勝手に切った。「考えている間はテープがもったいないからね」と彼女は言った。そして、質問の答えが頭に浮かぶと、自分でスウィッチを入れるのだ。こんな人は後にも先にもいなかった。僕の第一印象は、だから、「合理的な人」にならざるを得なかった。驚いたのはテープから起こした文章が……そのまま理路整然とした文章になっていたことだ。書き言葉のように話す人なのだ。どこかとんでもない方向に逸れたと思っていた話がきちんと元の脈絡に戻ってくる時の驚き。感覚的な人なんだろうという思い込みはあっさりと打ち砕かれてしまった。
 それからときどき仕事をする機会があった。戸川純はいつも戸川純で、インパクトが衰えることはなかった。ライヴはもちろん、蜷川幸雄の稽古場に侵入したり、『釣りバカ日誌』の撮影にも紛れ込んだ。そして、いつしか戸川純の本をつくりたいと僕は思い始めていた。ところが何も企画が思い浮かばない。5年前には「自伝を書きませんか?」と、誰でも思いつくような提案をしてしまった。戸川純の答えはノー。理由が最高である。「私のピークはこれからだと思ってるから」。いや、参った。テープ・レコーダーのスウィッチを止められたように僕は黙ってしまった。
 デビュー35周年を記念してヴァンピリア(Vampillia)とセルフ・カヴァー・アルバムのレコーディングに入ったと聞いたのは今年の春だった。すぐに閃いた。セルフ・カヴァーということは、自分のキャリアを振り返るということだ。だったら、そのプロセスを本にすればいい。戸川純が日頃から自分のことを「説明ちゃん」と呼んでいることも、これと結びついた。これまでつくった曲を順に説明してもらえませんか? 返事は三日後。今度はイエスだった。やたッ! 80年代の流行語で僕は喜んでしまった。
 そう、軽い気持ちで始めたことだった。どうして歌詞にこの言葉を選んだのか。そういったことが訊ければいいと最初は思っていた。しかし、結果は読んでいただければわかることだけれど、話は少しずつ深みを増していった。「このことをわかってもらうためには、これについても話さなければいけない」と、戸川純の話は思わぬ展開を見せ始めた。初期の曲と後につくられた曲が何度も結びつき、ひとつのテーマがゆっくりと円を描くように関係を深め合っていくのである。創作というものの凄さがそこにはあった。話を聞いているだけで体が凍りついてしまった瞬間もある。戸川純がすべてを話し終えた時、その場には3人しかいなかったにもかかわらず、僕にはそこかしこから拍手が聞こえてくるような気さえした。その直後、戸川純がなんと言ったかは秘密にしておこう。順番に読めば、ゆっくりと読んでくれれば、話し終えた時の彼女の気持ちが少しは理解できるはずだから。いや、理解して下さい。彼女はいつも説明していたのだから。「説明ちゃん」はいつも声を大にして叫んでいたのだから。(三田格)

戸川純 著
戸川純全歌詞解説集──疾風怒濤ときどき晴れ
ele-king books
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Goldie × Lee Bannon - ele-king

 10月にコンゴ・ナッティとマーラを迎えて開催された「Drum & Bass Sessions」こと「DBS」の20周年記念パーティ。なんと、その続報が届けられました。2016年を締めくくる「DBS20TH」第2弾は、ドラムンベース/ジャングルの帝王ゴールディと、〈ニンジャ・チューン〉などからのリリースで知られるリー・バノンの夢の共演です(リー・バノンは今月Dedekind Cut名義で新作『$uccessor』をリリースしたばかり)。相変わらず豪華な面子でございます。12月17日(土)は代官山UNITにて、一夜限りの「THE DARK KNIGHT BEFORE CHRISTMAS!!!」を体験しましょう。

★GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)

"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローの〈Reinforced〉からRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル〈Metalheadz〉を始動。95年に1stアルバム『TIMELESS』〈FFRR〉を発表、ドラムンベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』を発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』をデジタル・リリース。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』を発表、またアートの分野でも個展を開催するなど、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続ける。12年、〈Metalheadz〉の通算100リリースにシングル「Freedom」を発表。13年には新曲を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』をCD3枚組でリリース。14年、〈Ministry of Sound〉からのヴィンテージMIXシリーズ『MASTERPIECE』を発表、ヘリテージ・オーケストラとのTIMELESS LIVEが好評を博す。16年、音楽とアートの功績を称えられ大英帝国勲章MBEを授与される。15年の「Broken Man」以降リリースはないが、フライング・ロータス、ブリアル、フォーテックらが参加した新作のリリースが待たれる!

★LEE BANNON aka DEDEKIND CUT (Ninja Tune, NON WORLDWIDE, USA)

カリフォルニア州サクラメント出身、現在はNY在住のビートメイカー/プロデューサー。映画からインスピレーションを得ることも多く、フィールド・レコーディングを多用した自由なプロダクションが賞賛を浴びた1stアルバム『FANTASTIC PLASTIC』を2012年にFLYING LOTUSの作品で名高い〈Plug Research〉からリリース。またブルックリンの若手ヒップホップ・クルー、PRO ERAとの交流を経て、代表格のJOEY BADA$$のプロダクションや彼らのツアーDJとして注目を集める。13年にはダーク&エクスペリメンタルな『CALIGULA THEME MUSIC 2.7.5』、『NEVER/MIND/THE/DARKNESS/OF/IT...』の2作のデジタル・アルバムのリリースを経て〈Ninja Tune〉と契約、ダウンテンポの「Place/Crusher」を発表。14年、〈Ninja Tune〉からアルバム『ALTERNATE/ENDINGS』を発表、90'sジャングル/ドラム&ベースのヴァイブを独自のサイファイ音響&漆黒ビーツで表現し、『Rolling Stone』誌のBest Electronic and Dance Albumの15位となる。15年には前作とは趣を異にするドープなドローン/アンビエント色の濃厚な怪作『PATTERN OF EXCEL』をリリース。その後、突然改名を宣言し、新たにDEDEKIND CUTの名前でEP「Thot eNhançer」をセルフ・リリース。LEE BANNONと決別したDEDEKIND CUTはエクスペリメンタルなノイズ、ニューエイジ、アンビエントの現代的なアプローチを標榜し、16年に「LAST」、「American Zen」を発表、11月には注目のアルバム『$UCCESSOR』がリリースされる。

Theater 1 (D.J.Fulltono & CRZKNY) - ele-king

 D.J.FulltonoとCRZKNYは日本のジューク/フットワーク・シーンを牽引するプロデューサーである。このふたりはTheater 1という名義で、昨年夏より月一のペースでコンセプチュアルなリリースを展開してきたが、このたびそれらのスプリット・シングルが2枚組CDとしてまとめられることになった(デジタル盤は12枚のシングル形式)。
 気になるタイトルは『fin』で、10月16日(日)に〈melting bot〉よりワールドワイドにリリースされる。なお本作は、D.J.Fulltonoにとっては初めてのCD作品でもある。
 これまでのジューク/フットワークの概念をテクノやミニマル・ミュージックとして大幅に拡張した本作は、ジューク/フットワーク第2世代のJlinや食品まつり a.k.a foodmanなどと同様、発祥の地であるシカゴ以外の場所でもジューク/フットワークがどんどん成熟していっていることの証左であり、日本の音楽シーンから世界へと向けられた挑戦状でもある。となれば、これはチェックしておかないとマズいでしょう!

 なお、D.J.Fulltonoは下記日程にてヨーロッパ・ツアーをおこなうことも決定している。こちらもあわせてチェック!

D.J.Fulltono EU Tour 2016
20th Oct Krakow - Unsound w/ Traxman, 食品まつり a.k.a foodman
21st Oct Paris - Booty Call Presents Global Footwork
22nd Oct Berlin - TBA

"フットワーク以降アンビエント未満、観賞する白銀のミニマル・テクノ"

世界へと切り込むD.J.FulltonoとCRZKNYによるコンセプチュアルなシリーズ・プロジェクト“Theater 1”がアルバムとなってワールドワイドでCDリリース! フットワークをフレームワークとした無機質で催眠的な新感覚のミニマリズム、〈Kompakt〉を共同主宰する独電子界の巨匠Wolfgang Voigt(aka Mike Ink, Gas)のミニマル革新作『Studio 1』(1997)のオマージュでありながら、テクノとしてのフットワークを拡張する逸脱の実験音響作。

『Pitchfork』、『Fact』、『Fader』、『RA』にも取り上げられ、『VICE』での特集や『Rolling Stone』の年間ベストのランクイン、そしてUnsound出演を含めるEUやUSツアーなど、先鋭アクトとして世界的な注目を集める日本フットワークの両雄が前人未到へ踏む込むテクノ最先端!

2015年の夏から1年間に渡って毎月2曲のスプリット・シングルをリリース、後のクリック/ミニマルの源流となった90年代テクノの革新的レーベル〈Basic Channel〉と並ぶ、〈Kompakt〉の共同オーナーでもある鬼才Wolfgang Voigt(aka Mike Ink, Gas)のコンセプチュアルなシリーズ作『Studio 1』を参照とした、日本からジューク/フットワークを牽引するD.J.FulltonoとCRZKNYのシリーズ・プロジェクト“Theater 1”の全リリースをまとめた全24曲のコンピレーション・アルバム。フットワークをフレームワークとしながら、160BPMの中で繰り広げられるループから変拍子、4つ打ち、ポリリズムを抽出し、デトロイト、クリック、ミニマル、ベース、ジャングル、ガムラン、ドローン、アンビエントなどのレイヤーを織り交ぜ、多種多様なグルーヴを展開。ミニマリズムにおけるテクノとしてのフットワークを前面に打ち出した、未だかつてない逸脱の実験音響作品集。

CAT No : MBIP-5569
Artist : Theater 1 (D.J.Fulltono & CRZKNY)
Title : fin
Label : melting bot
Format : 2CD (Album) / Digital (12 Singles)
Price : ¥2,400 + tax / ¥300 per Single at ITMS
Release date : 2016/10/16
Genre : Techno / Minimal / Footwork
Territory : Worldwide
Barcode : 4532813635699

【CD限定特典】CD exclusive bonus track *Download Code

Theater 1 CD exclusive DJ mix by D.J.Fulltono

- CD (Album) Tracklist -

DISC I (CRZKNY album edit)

01. Remi
02. Nanami
03. Annie
04. Jerusha
05. Peter
06. Jo
07. Katri
08. Annette
09. Thomas
10. Anne
11. Marco
12. Heidi

DISC II (D.J.Fulltono album edit)

01. John
02. Romeo
03. Jackie
04. Maria
05. Cedric
06. Pollyanna
07. Sara
08. Lucy
09. Flone
10. Perrine
11. Sterling
12. Nero

CD Artwork & Design by hakke https://twitter.com/mt_hakke

- Digital (12 Singles) Tracklist -

01. Remi
02. John

01. Romeo
02. Nanami

01. Annie
02. Jackie

01. Maria
02. Jerusha

01. Peter
02. Cedric

01. Jo
02. Pollyanna

01. Sara
02. Katri

01. Annette
02. Lucy

01. Flone
02. Thomas

01. Anne
02. Perrine

01. Sterling
02. Marco

01. Nero
02. Heidi

Digital Artwork & Design by Theater 1
https://meltingbot.net/release/theater-1-fin
https://soundcloud.com/meltingbot/sets/theater-1-fin

▼ シアター・ワン・バイオグラフィー


D.J.Fulltono [Booty Tune] https://soundcloud.com/dj-fulltono

DJ/トラック・メイカー。レーベル〈Booty Tune〉を運営。大阪にてパーティー「SOMETHINN」を主催。ジューク/フットワークを軸に ゲットーテック/エレクトロ/シカゴ・ハウスなどをスピン。〈Planet Mu〉、〈Hyperdub〉のジューク関連作品の日本盤特典ミックスCDを担当。スペインのConcept Radioにて発表したDJ MIXでは、ジュークの中にテック・スタイルを取り入れながら新たな可能性を模索する。2015年に6作目のEP「My Mind Beats Vol.02」をリリース。また、「Vol.01」はUSの音楽メディア『Rolling Stone』の“20 Best EDM and Electronic Albums of 2015”に選出され、世界の音楽ファンからも評価を得た。タワーレコード音楽レヴュー・サイト『Mikiki』にて「D.J.FulltonoのCrazy Tunes」連載中。



CRZKNY [HIROSHIMA SHITLIFE] https://soundcloud.com/crzkny

日本ジューク/フットワーク・シーンの代表的トラック・メイカーの一人。ハイペースな楽曲制作、そして過剰低音かつアグレッシヴなLIVEでファンを魅了し続けている。2012年から現時点までのリリース総数は、142タイトル、430曲以上を発表。国内盤CDアルバム『ABSOLUTE SHITLIFE』(2013)、『DIRTYING』(2014)を〈DUBLIMINAL BOUNCE〉よりリリース。またアメリカ、メキシコ、ポーランド、アルゼンチンなどの海外レーベルからも多数リリース。日本のトラック・メイカーとして初のシカゴ・フットワーカーMVも制作された。日本初のジューク/フットワーク・コンピレーション『Japanese Juke & Footworks』シリーズを食品まつりと共同で企画。近日、自身3枚目のCDアルバムを発表予定。並行してE.L.E.C.T.R.Oの制作も行っており、初期Electro作品「RESIST」はアナログ盤にて海外レーベルよりリリース、表題曲リミキサーとしてドレクシアのメンバーDJ Stingrayも参加している。国内においては〈Tokyo Electro Beat Park〉から2枚のフルアルバム『NUCLEAR / ATOMIC』、『ANGER』を発表。Keith Tenniswoodなど海外トップアーティスト達に絶賛される。また2012年より原爆・核・戦争・歴史についてのコンピレーション『Atomic Bomb Compilation』シリーズをGnyonpixと企画、多くの国内外アーティストが参加。今までに『The Japan Times』、『Red Bull Music Academy』、『Pitchfork』などで特集、インタヴューなどが掲載されている。国内グライム・シーンにおいても、2013年に開催されたWarDub.JPにおいて100名超の中から見事トップ10入りを果たし、翌2014年に開催された140BPM WARでも決勝進出を果たした。現在ノイズ・エクスペリメンタルDJとしてYung Hamster名義でも活動中。
https://meltingbot.net
https://twitter.com/meltingbot
https://www.facebook.com/meltingbot

interview with Jun Togawa - ele-king


戸川階段

New WaveNoisePunk

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 戸川純、非常階段、ともにいま、外国の人からよく名前を聴くミュージシャンである。この組み合わせは意外なのか。意外ではないのか。80年代の日本で彼らの活動に気を留めた人でも意見は分かれるところだろう。アルバムに付けられたライナーでは非常階段のリーダー、JOJO広重がいかに当時から戸川純にシンパシーを抱いていたかということが切々と書かれている。昭和歌謡の趣味が同じだということから実際にコラボレイションをはじめた経緯など。では、一方の戸川純にとって非常階段というのはどういう存在だったのか。毎年恒例となっている3月31日のバースデイ・ライヴ@新宿ロフトを前に戸川純に話を聞いた。

戸川純 / Jun Togawa
1961年、東京生まれ。82年、ゲルニカ『改造への躍動』でデビュー。個性的なキャラクターでテレビ、映画、CMなどで活躍。84年にソロ・アルバム『玉姫様』、戸川 純&ヤプーズとして『裏玉姫』をリリース。85年には戸川純ユニットとして『極東慰安唱歌』発表。ヤプーズ・ゲルニカで活動後、1989年、再びソロで芸能生活10周年記念盤『昭和享年』(テイチク)を発表。ノイズ・バンド「非常階段」とのコラボレートがスタジオ録音のアルバムにまとめられ、2016年、『戸川階段』としてリリースされた。

非常階段
1979年、京都でJOJO広重を中心として結成。『蔵六の奇病』等の作品や、過激と評されるライヴ・パフォーマンス、自身らが立ち上げた〈アルケミーレコード〉の存在によって、日本のインディーズ史にカリスマ的な存在感を残している。近年はTHE原爆オナニーズ、ザ・スターリンとの合体ユニット「原爆スター階段」としてのイヴェント出演や、『初音階段』(初音ミク×非常階段)『BiS階段』(BiS×非常階段)『私をノイズに連れてって!』(ゆるめるモ!×非常階段)『Nois Join Inn』(大友良英×非常階段)などコラボ作品に意欲的であり、2016年にその最新作として戸川純とのアルバム『戸川階段』を発売した。

JOJOさんが言ってくださっているとおり、わたしの声も非常階段さんとのコラボにおいてはノイズなのだな、と思いました。


戸川さん、こんにちは。久しぶりのインタヴューですが、今日はよろしくお願いします。戸川さんが初めて聴いたノイズ・ミュージックは何でしたか?

戸川純(以下戸川):わたしが初めて歌をやることになった、ゲルニカというユニットが昔ありまして、そのゲルニカの前に付いていたユニット名が「イントナルモーリ」 という、昔の未来派の騒音楽器でした。そのイントナルモーリの音楽(音?)も、カセットで、もちろん古いレコーディングだったけども聴くことができまして、それがノイズを聴いた初めてだと思います。人も飲み込むような、野外にしか置けないすごいデカさなのに、ボー……!! しか鳴らなかったのを憶えています。ちなみに、わたしがなかなかイントナルモーリという単語を憶えられなくて、バンド名も変わりました。その後、歌詞に入っていたので、やっと憶えられました。

普段、ノイズ・ミュージックを聴くことはありますか?

戸川:ないですね。でも関わることはけっこうあったんですよ。羅生門というお芝居のとき、それはドイツで初演されて、ドイツでは、ノイバウテンが音楽 (音?)を担当していて、1幕では演じる役者がその音を出させられてたり、ね。

では、非常階段のことはいつ頃、どのようにして知りましたか?

戸川:80年代半ばか、初期だったと思います。申し訳ないのだけど、音楽もお聴かせいただいたことはなく、あの頃特有の、いわゆる過激なパフォーマンスのバンド、と人からきいてたくらいでした。ごめんなさい。

戸川さんにはメジャーとマイナーで線引きをするという感覚があまりないと思いますけど、そういった線引きを超えて非常階段に惹かれる部分があるとしたら、それはどの部分になりますか?

戸川:やっぱり、BiS階段さんのときのアルバムを聴かせていただいて、非常階段さんが、一歩も譲ってないと感じたところとかですね。とにかくノイズでグチャグチャにしてもらう、というのをレコード会社の人は望んでたのかもしれないけど、それだけでなく、すごく音楽的に仕上げてもいらっしゃるなあ、とほんとに思ったんです。あと、お人柄とのギャップも大切ですね。ノイズとかパンクをやってらっしゃるから、普段もそういう方々、というのでは、ミーティングできませんし。とくに大人同士だから、昔とは違うしね。

なるほど。非常階段とは四谷〈アウトブレイク〉でも穏やかに対談もやってましたものね。ちなみに非常階段にちがう名前をつけるとしたら何がいいですか?

戸川:他にまったく浮かばないですね! 非常階段ってネーミング、危機感はあるし、キャッチーだし! 私事ながら、ゲルニカがイントナルモーリじゃなくてよかった、みたいな、ね!


同じ80年代という時期を生きていまなお活動しつづけているという点で、このコラボの音にもそのことが如実に表れているのでは、と思います。


(笑)BiS階段から“好き好き大好き”をカヴァーしたいというオファーがあったとき、最初はどう思いましたか? ふだん、自分のライヴでは取り上げていなかった曲ですよね。

戸川:若い女の子たちが、とか、非常階段さんが、とか。お話をいただいたとき、とにかくびっくりしました。でもグチャグチャになるんだろうなとは思っていました。だけど、それにアイドルさんがどうやって歌うのかが、ぜんぜんわかりませんでした。それでも、可愛いいんだろうなと思ってうれしかったです。音源をいただいたとき、非常階段さんとBiSさんとの対比がおもしろくて、「アンバランスがとれてる」という印象でした。あの曲は、それまでもよく歌詞についてファンの人の支持があったものなのですが、曲がテクノ歌謡っぽいから(ピコピコな編曲)。そして、ファルセット部分以外の歌唱法……。あのときは、「戸川純アイドル路線」なアルバムを1枚作りたかったのです。でもどうしても、切った貼ったが出てきちゃったものでした。で、自分のところでは、その中では歌詞だけアイドル路線じゃなくてなんだかイタイ、とか思って、ずーっとやらなかったのですが、BiS階段さんみたいにノイズなものでなくても、 もっと生のバンド感を生かしたロックなアレンジや歌い方にすれば、できるなあ、と、思いました。それで、たまにうちでもロックっぽくやってます。だけど、どうしてもサビからのファルセットな歌い方だけは浮くから、サビ少し前から、パンキッシュな歌い方になってしまうけど、編曲との兼ね合いを考えてます。

実際に、非常階段と四谷〈アウトブレイク〉を皮切りに共演してみて、「思っていた通りだったこと」と、「思っていたことと違ったこと」はありましたか?

戸川:思っていたこととちがうのは、やはり非常階段さんとわたしの相性の良さです。こんなに相性良いって意外でした。わたしはずっと歌ものをやってきましたから。もちろん、非常階段さんはかなり合わせてくださってるのだと思うのですが、それにしても、JUNKOさんの声とはまたちがう意味で、JOJOさんが言ってくださっているとおり、わたしの声も非常階段さんとのコラボにおいてはノイズなのだな、と思いましたし。
 思っていたこととわりと近いかな、と思うのは、やはり同じ80年代という時期を生きていまなお活動しつづけているという点で、このコラボの音にもそのことが如実に表れているのでは、というところです。

『戸川階段』の選曲の基準は何でしょう?

戸川:選曲は非常階段さん側です。たぶんJOJOさんだと思います。先日また、戸川階段でライヴをやったのですが、2曲増えてまして、それも JOJOさんのセレクトだと思います。わたしからは、選曲の基準は考えたこともなくて、非常階段さんにとって、やりやすいとか、面白いことができそう、とか、そういうことかなぐらいにしか思ってなくて、お恥ずかしいかぎりです。でも、JOJOさんが“ヒステリヤ”を泣ける曲と言ってくださっていたり、“肉屋のように”の出来をなかなかエグいですよと言ってたりしたから、激しい曲と静かめな曲を選んだんじゃないかな。でも、 どっちも、わたしの中では感情がすごく渦巻いてる曲たちなので、そういうところをわかってくださって、選んでくださった感じがしちゃいます。 意外と非常階段にもある、接点と思ってくださったというか。


“ヒステリヤ”も“肉屋のように”も、わたしの中では感情がすごく渦巻いてる曲たちなので、そういうところをわかってくださって、選んでくださった感じがしちゃいます。


Vampilliaのような若い世代とコラボレーションするのと、非常階段のような同世代とコラボレイトするのでは何が違いますか?

戸川:若い世代でも、Vampilliaはちょっと特別で、すでに風格があるんです。でもライヴは「はいー! どーもー! バンピリアですー、今夜も頑張っていきたいと思いますー!」みたいな軽ーいMCではじまって、お笑い劇場?! みたいなんです。それでも曲とのギャップがおもしろくて、爆音にデスヴォイスに派手なファルセット、と地獄のようでもあり、ときおり天使のようでもあり、で、お笑い劇場と真逆の、どシリアスぶりで、たぶん本拠地が大阪だから、照れ屋でバランスとってるんじゃないかな。それに、ツインドラムにわたしの大好きな吉田達也さんもいるし、同学年の方もいらっしゃったりもするんですよ。それでも、わたしと同世代だけで作られていまも活動してるバンドさんとちがうところははっきりしてますよ。そんな明るく楽しいMCでありながら、デスヴォイスでありながら、生バンドという点でありながら、とにかく元気があるバンドさんでらっしゃるんです。体力がとにかくすごい。音楽性はもちろんのこと、体力が、ね。それが、若さじゃないかな。
 一方、非常階段はというと、これも同世代では変わっていて(まず、同世代のバンドはほとんどが解散しちゃってて、もう活動してなかったりね。あるいは最近なぜか再結成するバンドもけっこういるみたいに見えるけど)、長いキャリアを感じますし。やっぱり落ち着いてるんですよ。ノイズとはいえ。長年やってきた安定感というか。若いバンドさんにも、同世代のバンドさんにもピンキリあると思うけど、わたしは贅沢に、これは、と思うふたつのバンドさんとコラボさせていただいてます。対照的だけど、両バンドさん共に、音の洪水の中、わたしの歌を立ててくださってますし。それに、両バンドさん共に、いまロフトで定期的にやってるわたしのソロ名義のバンドとも、ヤプーズとも、ちがいますからね。

“肉屋のように”や“ヒステリヤ”などライヴで頻繁に取り上げている曲を、あらためてレコーディングし直したことで、なにか感じたことはありますか?

戸川:感じたことというより、レコーディングにあたり、本当に考えこみましたね。全体的には、非常階段さんとのコラボだからオリジナルとはちがうようになるとは思っていましたが、個人的に“ヒステリヤ”も“肉屋のように”も、他に歌い方が見つからなくて、同じ歌い方になってしまいそうで。 結局どの曲も、普段と同じような歌い方になってしまうから、歌はエフェクト頼りにしかなれませんでした。そういう意味では、まずヴォーカルは チャンネルを部分的に2本いただいたり、あと、肉屋は声を割ってもらったり、なんといってもヴォーカル全体を、非常階段さんの演奏に埋もれた感じにしていただきました。わたしの声のヴォリュームを小さくしていただいてね。選曲はお任せしたけど、ミックスには立ち合わせていただきました。
 そんな、歌入れやミックスのことばかり客観的に考えていたから、もともとの曲自体を客観視、ということは、あまりできなかったので、あらためて感じることができなかった、というのが正直なところです。

後編に続く

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 今年の初めにリリースされた、非常階段と戸川純とのコラボレーション・スタジオ・アルバム『戸川階段』。本作をめぐる戸川純へのインタヴュー後編を公開! 7月20日には、その『戸川階段』発売記念ライヴ(2016年2月21日)の実況録音盤もリリースされる。詳細は記事の最後にて。前半部分は「1」よりどうぞ。

コラボしたら、もれなく「ナントカ階段」というネーミングになる、と思いこんでいたんです。

レコーディングは具体的にどのように進められたんでしょうか?


戸川階段

New WaveNoisePunk

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戸川純(以下、戸川)::まだ、レコーディングすると決まってなくて、非常階段さんのライヴにゲストで出て数曲歌ったときの、その感じをベースに、非常階段さんがノイズが全部入る前のオケを作って、それを聴いてからわたしが歌入れして、そのあとギターその他のノイズをさらに足した、と記憶しています。もしかしたら、ギターその他のノイズは全部入ってたのかな? ミックス前だったから、オケを若干下げてくださってて、ノイズが本チャンより少なかったという印象だったのかもしれません。あとはミックスに立ちあって、大まかなところや細かいところ(ヴォーカルをけっこう埋もれさせてもらったり、エフェクトかけたり)を調整した、という感じですね。

ちなみに「戸川階段」というネーミングはどうやって決まったんでしょう?

戸川:わたしは友だちから数年前に、the原爆オナニーズとスターリンと非常階段で「原爆スター階段」というのがあると聞いたことがあって、その後初音ミクとの「初音階段」というネーミングも知って、「BiS階段」はもちろん知らされまして、コラボしたら、もれなく「ナントカ階段」というネーミングになる、と思いこんでいたんです。そうでないのもある、と後から知ったのですが。そういう訳で、ゲストに呼んでいただいたわたしが非常階段さんのライヴで数曲歌ったときMCで、冗談のように、JOJOさんに「今度やる? 戸川階段(笑)」と言って、それが本当に実現してしまったのでした。戸川階段て語呂もいいし、ほんとに冗談のつもりで言ったのですが、あのとき、ポロッとそう言ってよかっなあ、といまはしみじみ思います。本気ととられてたら、わたしってすごく生意気! って感じがしたと思います。だけど時として、他愛ない冗談が、幸せな現実を呼ぶこともあるのだなあ、という感じがして、JOJOさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

一か所だけやり直すとしたらどこを変えますか?

戸川:歌ものですが、ライヴ感というか、インプロヴィゼーション感が強いので、直すところはあまり浮かびませんね。もちろんパーフェクトでは、ぜんぜんないのですが、直したいところはとくにないですね。戸川階段は、全体を引きで見るというか聴く感じなので、そうなるのかもしれません。それに、非常階段さんの演奏の、インプロヴィゼーションの要素を多分に含んだ感じに合わせると、ヴォーカルも、スタジオ録音であってもライヴ感があったほうがマッチングがいいとも思うし、多少荒削りでも流れを大事にしたいから、ヴォーカルで直したいところはとくにはないです。

わたしは、ヤプーズの演奏をクールだと思ったこと、ないんですよ。曲によりますが。基本、わたしとともに感情が渦巻いてる、と思ってて、だからいっしょにやっててほんとに相性良い、って続けてられてきたし。

ヤプーズは演奏がクールで歌がエモーショナルという対比があったと思いますけど、戸川階段は演奏も歌もエモーショナルで、歌いにくくはなかったですか? 戦いながら歌ってしまうとか?

戸川:わたしは、ヤプーズの演奏をクールだと思ったこと、ないんですよ。曲によりますが。基本、わたしとともに感情が渦巻いてる、と思ってて、だからいっしょにやっててほんとに相性良い、って続けてられてきたし。とくに90年代のヤプーズは、インダストリアル系のガシガシの音デカい系で、それでわたしも、イヤモニして、デカい声で、ほとんど全編叫んでました。おのずとパンク色が強いヴォーカルになって、お客もわいてくれてたので、喜んでいてくれてると勘違いしてて──やっぱりヤプーズのヴォーカルはこれがいちばん合ってる、と思っていて、きれいな声がもう出なくてもいいや、みたいにも思ってたんですが、ネットで「もはやデスヴォイスしか出なくなった戸川に、未来はない」って、けっこう書かれて、あれっ? なんて思いました。ネットのカキコミなんかで芸風を変えるなんて愚かなことはしませんが、あれから数年、ブランクもあって、声のリハビリをしてるので、わたしの歌手生命の基本に戻ろう! と思い、いまは、デス・ヴォイス(パンキッシュながなり声)はライヴの終盤に持ってって、なるべくきれいな声で歌うようにしてます。
ヤプーズの曲は“肉屋のように”にしても“ヴィールス”にしても“赤い戦車”にしても、曲先で、この曲につりあう歌詞なんて、わたしに書けるだろうか? そして、そんな曲をわたしが歌えるだろうか? と不安になったくらい、ヤプーズの曲や演奏も、エモーショナルなものもたくさんあるんですよ。わたしがどうしても派手に見えるから、ヤプーズがクール、って思われちゃうんじゃないかな。まあ、演奏は、たしかにカッチリしてるかもしれませんね。クールというのとは ちょっと違うとは思いますが。
非常階段さんは、ノイズなのでかなりグチャグチャにするから、パンク色が強いので、闘うどころか、わたしの声はかき消される感じなので、JOJOさんの言うように、非常階段さんといっしょだと、声もノイズなんだなあ、とやっぱり、ここでも思いますね。戦いといえば、火花を散らしながら演ってて、結果成功! というのは、かつてのゲルニカが、むしろそうだったんじゃないかな。

わたしは、流行りを追うとそのあと絶対古くなる、と思ってたから、追わないできたので、いまの若い方々にも聴いてもらえるのかな、と思います。

“好き好き大好き”がカヴァーされたこともそうなのかもしれないですけれど、新しいファンも増えていると思います。以前とは歌詞の受け止められ方が変わってきたと感じますか?

戸川:ぜんぜん変わりましたよ、お客さんもファンの方全体も。若いお客が、ほんとに増えましたね。ありがたいことです。わたしは、流行りを追うとそのあと絶対古くなる、と思ってたから、追わないできたので、いまの若い方々にも聴いてもらえるのかな、と思います。
わたしと同じくらいの歳の方々ばかりだと、青春のメロディとか青春の懐メロみたいなライヴになっちゃうから、若いお客が聴いてくださるのは、ほんとにありがたいことです。もちろんわたしと同じくらいの歳のお客も大事にしなきゃ、とは思ってはいるんですよ。ここまでわたしを育ててくださったのだから。
でもね、昔は酷かったですよ。ファンクラブで、日本戸川党というのがあったのですが、当時わたしは曲に合わせた衣装を一生懸命考えて、巫女さんやランドセルの小学生やトンボのかっこをしてたんですが、戸川党に寄せられるファンレターの多くが、とにかく奇抜な衣装を、と、純ちゃん次は大魔神の扮装やってーとか、もうめちゃくちゃでしたね。曲なんて聴いてくれてないんだなーという感じが、ライヴでもしてましたし。スタッフからしてそうでしたしね。広いキャパでやってたとき、アンコールの“レーダーマン”で、まったくきいてなかったのですが、色とりどりの風船がほんとにたくさん落ちてきて、その広いステージの床を埋めつくしまして、社会派な曲なのに、こんなファンシーな演出して!! と、悔しくて悔しくて、風船を一生懸命割りながら踏んづけて歌いました。それはそれで絵になっちゃったみたいで、でも踏んづけないと、可愛い感じになっちゃうし、手の施しようがなかったんです。まだバック・バンド的扱いになってたヤプーズが、本番前に、舞台監督たちがたくさんの風船を膨らませてるのを見て、純ちゃんには内緒だよ! と楽しそうに口止めしてたそうで、風船が降ってきてステージを埋め尽くすことを、間違いなくわたしが喜ぶ、とニコニコしてたという様子だったそうです。お客はその演出を喜んだにしても、ばっかじゃねーの! と思ったにしても、どっちに転んでも哀しくなりました。他にもたくさんたくさん、いまと違うところはありますよ!
あとは、わたしはいまヤンデレとかマジ基地とか言われることが多いのですが、昔より、ライヴ・パフォーマンス的にまともになったと思うのですけどねえ。歌うことを主体に精進していて、新しい曲はまだ少ないから、昔は興味深いと言われた曲が、いまは病んでると言われてしまったり。でも、大魔神のかっこしてーとかばっかり言われてたときより、いまのお客さんは、ちゃんと曲を聴いてくださってるみたいで、暖かみを感じますね。

不思議少女、というのは皮肉にもわたしの造語なんですよ。80年代前半に書いた本の中に出てきます。苦手な女の子のタイプとして。まさか自分が不思議少女とか不思議ちゃんとか言われるとは、思ってもみませんでした。

戸川さんが自分のことを「不思議ちゃん」ではなく「説明ちゃん」だというのは、自分や自分が考えていることをわかってもらいたいという気持ちから出ていると考えていいでしょうか。

戸川:わかってほしいと思うというより、わたしやわたしの歌の内容は本当にわかりやすいものだ、と思ってるんです。「不思議ちゃんではなく、むしろ説明ちゃんと言われたほうが、人はなるほどーと思う」というか。不思議なところは、ひとつもないんじゃないかな、という自覚から、わたしは自分のことを不思議ちゃんとはどうしても思えないもので。それでもわたしを不思議ちゃん、と呼ぶ人は、わたしとは「不思議ちゃん」の定義が違うのかもしれませんね。そういう人が言う不思議ちゃんて、どういう意味の類いなんだろう。わかりませんねえ。ただ、わたしにも定義するところがあって、自我が肥大してて、でも逆にそれを表に出さず、意味不明な言動で神秘的に見せてる女の子、って感じかなあ。とにかく関わりたくないタイプです。ちなみに、不思議少女、というのは皮肉にもわたしの造語なんですよ。80年代前半に書いた本の中に出てきます。苦手な女の子のタイプとして。まさか自分が不思議少女とか不思議ちゃんとか言われるとは、思ってもみませんでした。

(笑)今回、再レコーディングされた“ヴィールス”の歌詞は、「説明ちゃん」というよりまるで小説のようですが、これは自分を客体視した表現と考えていいでしょうか(「拒否感や嫌悪感を/ひとが私にいだいたとき/驚異的な感度で察知しそれをエネルギーに/吸収して増殖する/人忌み嫌うべき私に巣食うヴィールス」)。

戸川:書いた当時は客体視とは思ってなかったのですが、そういうフシはあるなあ、という感じだったし、わたしの歌詞は、自分にその要素がまるっきりないとどれも書けないので、少なくとも当時は、嫌だけど自分の中にもあった要素で書いたのだと思います。“ヴィールス”は、発表した当時、病んでいて苦しんでいた方々から、励まされた、というお手紙をずいぶんいろいろいただいて、わたしのほうがそれで励ましていただいたという思い出があります。そのお手紙の中のけっこうな数の方々が、“ヴィールス”のように境界例で苦しんでいる、と書いてて、病名があるのかあ、と思いました。

本当に必然性を持って、それがいちばん届く、と思って書いているんですよ。逆に、シュールに感性だけで書くことは、これまで、そしてこれからも、絶対ないです。

戸川さんの歌詞にはそれまで誰も使わなかったような単語がよく出てきますが、これは意識的にやったんでしょうか?

戸川:それでしか表現できない、という必然性を持って書いてると、そういう印象にとられる言葉になるのです。本当に、言葉を選んで、いちばん合う言葉を使っているのです。ペダンチックととられても、もういい、という覚悟でして。たとえば、“諦念プシガンガ”という曲の歌詞に「我一介の肉塊なり」というフレーズがありますが、これが「わたしはただの肉の塊よ」という言葉では、重い覚悟とか、そのいさぎよさとか、いろいろなことが表現できないのです。この歌詞はずっと、難しい言葉の歌詞、と言われてきて、でもいちばん難解なのはタイトルではないであろうか、と書かれたことがあります(笑)。
これも、諦めの念、じゃ長いから諦念、にしたにすぎませんし、プシガンガはアンデスの言葉で、お酒を飲んで歌い踊る、という意味で、わたしの中では、ほんとにただ、まっすぐに必然性を持って、というだけなのです。ちなみに、古語でも、自分でわかっていながら間違いのままの歌詞もあります。“蛹化の女”の、「木の根掘れば蝉の蛹の、いくつも出てきし」の最後は「いくつも出てきぬ」にしたかったのですがそれだと、たぶんいくつも出てこない、と、とるリスナーがいるのでは、と思い、あえて間違った言葉を使いました。“夏は来ぬ”(なつはきぬ)という唱歌をそんなにご存知な世代ではない方々が聴いてくださるのではと思いまして。あとは、字数の問題の場合も、たまにあります。ね? 本当に必然性を持って、それがいちばん届く、と思って書いているんですよ。逆に、シュールに感性だけで書くことは、これまで、そしてこれからも、絶対ないです。でも、そういう歌が歌いたいときは、人様に歌詞を書いてもらうよう、お願いすると思います。

最近だと“ライラック”は人が書いた歌詞でしたよね?

戸川:“ライラック”については、ほんとにラッキーでした! 人様に、書いてとお願いしたわけでなく、先方から歌うオファーが来て、デモもできていて、曲も歌詞も編曲も大好きになり、お引き受けしたのです。そこから、Vampilliaさんとのつながりができました。MVも大好きです。東京や大阪で、ゲストに何度か呼んでいただきました。“ライラック”は、元相対性理論の真部(脩一)さんが作詞作曲で、たぶん編曲もやられてたと思います。違ったらごめんなさい。というのも、ライヴでは スタジオ・レコーディングの「ライラック」や、他のわたしの持ち歌の編曲が、ぜんぜん違うものになり、10人くらいの人数のメンバーで、すごい爆音での生音の編曲にもなるもので。地獄のようだったり、天使のようだったり、というのは、わたしの歌うコーナーに限らず、楽屋のモニターやステージの袖で聴いているわたしの、いちリスナーとしての印象でもあるんですよ。わたしの歌うコーナーは、それに比べむしろメチャ、ポップに聴こえるんじゃないかな? それでも、Vampilliaさん色に塗り替えられてる感じです。すごくうれしいですね。全体的に若いのに、アレンジの力がすごくあるから、今後とも、お付き合いしたいバンドさんです。

“蛹化の女”の「ああ」と、“パンク蛹の女”の「あ~!!」かなあ。

最近、歌っているときに、発音するといちばん気持ちいい歌詞、もしくは単語はなんでしょう?

戸川:最近歌ってていちばん気持ちがいい、というより、感情がいちばん乗っかってるんじゃないかな、と思うのは、“蛹化の女”の「ああ」と、“パンク蛹の女”の「あ~!!」かなあ。前者は、言葉では伝えきれないので むしろ 「ああ」のほうがいさぎよいのかな? 後者は、もうほんとに、自分の中の、感情の渦巻いてるいちばんのところだからかな。両方とも、歌詞ではないのがお恥ずかしいですが(笑)。
あとは、蜷川さんのこともあって、“諦念プシガンガ”が、自分の中で新鮮ですね、こんなに歌ってきてるのに。まあ、曲は生き物ですからね。

最後にタイトルの文字はどうして戸川さんが書くことになったのですか?

戸川:タイトルの文字は、普通に、書いてください、みたいに言われて、非常階段さんとコラボした人はけっこう書く人がいると聞かされてたので、疑問も持たずスンナリ書きました。戸川が草書で、階段が楷書みたいで、邪道ですが!(笑)

リリース情報

非常階段×戸川純『戸川階段ライヴ!』
7月20日発売(テイチク)

*1月にリリースされたスタジオ・アルバム『戸川階段』がフランスでカラー・ヴァイナルでもリリースされることに!

Tower HMV Amazon

ライヴ情報
10/5 札幌KRAPS HALL(ワンマン)
10/14 新宿ロフト(ワンマン)
10/21 福岡BeatStation(ワンマン)
10/27 渋谷 TSUTAYA O-EAST(イベントのゲスト)
11/16 大阪AKASO(ワンマン)

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