「坂本龍一」と一致するもの

Jon Hassell - ele-king

 ブライアン・イーノとジョン・ハッセルの『ポッシブル・ミュージック』がリリースされて38年が経った。「アンビエント・ミュージック」のシリーズを立ち上げて、すぐにもセールス的に行き詰まったイーノが続けさまにローンチした「第4世界(Fourth World)」というラインの起点となった作品である。ジョン・ハッセルのトランペット・ドローンをメインに「エスニック・サウンドとエレクトロニクス・ミュージックをどう融合させるか」がテーマとなり、批評的には多くの媒体で年間ベストに選ばれるほど大成功を収めたものの、イーノが続いてデヴィッド・バーンとつくった『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ゴースト』をジョン・ハッセルが商業主義的だと批判したことでふたりはそのまま仲違いしてしまう。「フォース・ワールド」は「プリミティヴ・フューチャリズム」を標榜したジョン・ハッセル主導のコンセプトだったため、シリーズ2作目となるジョン・ハッセル名義『ドリーム・セオリー・イン・マラヤ』をもって終了となり、二度と再開されることはなかった。しかし、昨年、〈オプティモ・ミュージック〉は『ミラクル・ステップス(Miracle Steps)』と題された14曲入りのコンピレーション・アルバムをリリース。これには「ミュージック・フロム・ザ・フォース・ワールド 1983-2017(Music From The Fourth World 1983-2017)」という副題がつけられていた。「フォース・ワールド」が終了したのが1981年。その2年後から2017年まで、36年間にわたって「フォース・ワールド」は続いていたのだと主張する編集盤である。「なんとかディフィニティヴ」みたいな発想だけど、これが実に興味深かった。オープニングはメキシコのアンビエント作家、ホルヘ・レィエスによる“Plight”(96)で、彼が得意としてきた厳かなダウンテンポでしっとりとスタート。続いてロバート・A・A・ロウとエリアル・カルマが〈リヴェンジ・インターナショナル〉の新旧コラボ・シリーズに登場した“Mille Voix“(15)やグラスゴーの新人で〈オプティモ・ミュージック〉からデビューしたイオナ・フォーチューン、ポスト・インダストリアルのオ・ユキ・コンジュゲイト、あるいはデヴィッド・カニンガムやリチャード・ホロヴィッツといった〈クラムド・ディスク〉勢にラプーンと続き、全体にやや重怠くまとめられている。〈オプティモ・ミュージック〉らしい歴史の作り方である。

 『ミラクル・ステップス(Miracle Steps)』にはハッセル自身が86年リリースの『パワー・スポット』に収めていた「Miracle Steps」も再録され、これがコンピレーションのタイトルにもなっている。そして、このことがきっかけとなったのか、〈ECM〉からの『Last Night The Moon Came Dropping Its Clothes In The Street』以来、9年ぶりとなるハッセルの新作『Listening To Pictures』がこのほどリリースされた。どうやら純然たる新作のようで、81歳になって〈ワープ〉傘下に新たなレーベルを立ち上げたものだという。演奏スタイルも、これまでのバンド形式からスタジオでミックスを繰り返すなど『ポッシブル・ミュージック』と同じ方式に回帰し、もしかするとクレジットはされていないけれど、ブライアン・イーノが参加しているのではないかという憶測も飛び交っている(だいぶ前に和解はしたらしい)。一応、演奏はギターにリック・コックス、ドラムにジョン・フォン・セゲム、ヴァイオリンにヒュー・マーシュが柱となり、エレクトロニクスにはミシェル・レドルフィを起用。ミックスマスター・モリスにサンプリングされ尽くした水の音楽家で、最近になってデビュー作が〈エディション・メゴ〉から復刻されたミュジーク・コンクレートの重鎮的存在である。また、ドラム・プログラムにはダブステップのベース・クレフからラルフ・カンバーズの名も。これまでライ・クーダーと組んだり、アラブ音楽に接近したりと、それなりに多種多様なアプローチを重ねてきたものとは違い、やはり音響工作の面白さが前面に出ていて、海外のレヴューでOPNを引き合いに出していた人が何人かいたのもなるほど。言われてみるまでそうは聞こえなかったけれど。

 オープニングから意表をついている。コード進行がある(笑)。わかりやすいジャズみたいだし、それがだんだんとドローンに飲み込まれていく。“Dreaming”は見事な導入部をなし、続いてダブステップを意識したような“Picnic”へ。接触音の多用はアルヴァ・ノトを思わせ、ノイズとピアノのオブスキュアなアンサンブルへと連れ去られる。アフリカン・ドラムを駆使した“Slipstream”は『ポッシブル・ミュージック』を坂本龍一が『B2ユニット』風にリミックスしたようで、同じく“Al-Kongo Udu”もノイジーな音処理はダブステップ以降のレイヤー化された美意識を優先させたものだろう。ジュークを思わせる”Pastorale Vassant”は……たしかにOPNっぽいかもしれない。“Manga Scene(マンガ・シーン?)”ではテリー・ライリーのオルガン・ドローンが原型をとどめずに流れ出すなかをムード・ジャズ風のトランペット・ソロが響き……いや、これが本当にジョン・ハッセルなんだろうか。連続性はもちろんあるんだけれども、ここまで変貌できるとはやはり驚きである。プロデュースもジョン・ハッセル本人なんですよ。『絵を聴け』と題されたアート・ワークはマイルス・デイヴィスの『ビッチズ・ブリュー』や自身の初期作を飾ったマティ・クラーワインの手になるものだそうです。

interview with Moodoid - ele-king


Moodoid
シテ・シャンパーニュ

Because Music/ホステス

French Pop meets J-Pop

Amazon

 フランスはなんだかんだといかなる時代においても強力なポップスを生んでいる。とくにこの20年あまりは、エディット・ピアフやセルジュ・ゲンズブールの時代のような言葉への強いこだわりよりも、エレクトロニック・ミュージックとダンス・サウンドへの注力によって、国際舞台で活躍するアーティストを多数輩出していることはみなさんもよく知っての通りである。ダフト・パンク、エール、カシアス、ジャスティス、あるいはシャルロット・ゲンズブール……。それらは別次元からやって来た別次元のポップスのようにぼくたちの耳を楽しませる。ムードイドはひょっとしたらこの輝かしい流れに乗れるかもしれない。
 で、ムードイドという謎めいた名前の正体だが、パブロ・パドヴァーニなる青年が率いるプロジェクトのことである。ムードイドはすでに3年ほど前の2014年に最初のアルバムを出している。それはエールの美学を受け継ぐファンタジーで、しかめっ面をして聴くようなタイプの音楽ではない。そして新作『シテ・シャンパーニュ』においてムードイドは、まさに21世紀のフレンチ・ポップと呼びうる音楽を完成させている。その2枚目となるアルバムでパブロは、ゲンズブール流のポップスとエール流の音響をところどころつまみあげ、それぞれの良さを結合させると、アメリカや日本の音楽からの影響もうまい具合にミックスする。日本? 水曜日のカンパネラの新しいEP「ガラパゴス」には1曲ムードイドが共作というかたちで参加している。じっさいパブロ・パドヴァーニはかなりの量のJ-Popを聴いているようだし、『シテ・シャンパーニュ』はJ-Popに影響されたフレンチ・ポップというなんとも奇妙なハイドブリッド感を有している。
 取材がはじまる前に、ムードイドは日仏会館の中庭でたこ焼きを食していた。うん、とてもおいしかったという満足した顔で、彼は初夏の日差しが差し込む取材の部屋にやって来た。椅子に座って、そして以下のような興味深い話をしてくれた。

例えば、日本ってけっこうポルノっぽいものとか、ゲームだったりとかが日常のなかに溢れていて、そういう騒々しいもの、猥雑なものと、それから伝統的なものとか、禅の考えとか、風水的な考えとかが、本当に自然に共存していると思います。フランスでは考えられないです。

ムードイドのフランスっぽさは、ご自身、意識して出しているんですか?

パブロ・パドヴァーニ(Pablo Padovani以下、PP):じつはフランスでは、ムードイドの音楽はアングロサクソン、英語圏の音楽に近いと言われています。というのも、フランスの音楽、フレンチのシャンソンと言われるものに関しては、非常に歌詞が重要なんです。けれど僕にとって歌詞というか、声はインストゥルメンタルのひとつ、楽器のひとつとしか思っていないので、そういった意味では、もしかしたらフランス的というのが少ないかもしれないです。
でも、たしかに新しいアルバム『シテ・シャンパーニュ』ではもう少しヴォーカルを意識したりとか、ちょっとセルジュ・ゲンズブールぽく歌ってみるとか、ちょっと官能的な感じでウィスパーヴォイスを使ったりとか試みています。フランスにはジェーン・バーキンをはじめ、ウィスパーヴォイスを上手く使う歌手が多くいるので、そこはちょっと意識しました。

なるほど。あなたの初期の曲 “Je suis la Montagne(ジュ・セ・ラ・モンターネ)”がとても好きなんですが、これを聴いたときにはエールとゲンズブールを合体させてアップデートしたようなふうに感じました。

PP:たしかにエールはすごくインスピレーションのもとになっています。彼らが醸し出す雰囲気が大好きですね。その曲ではリヴァーブのなかにヴォーカルが埋もれているようなところがあると思いますが、これはケヴィン・パーカーの仕事です。彼はテーム・インパラとかMGMTとかの仕事をしていますが、そういったところが感じられるのではないかなと自分でも思っています。

さっきあなたがおっしゃったように、たしかにファースト・アルバムはUK、USのロックの影響を感じましたし、ムードイドをやる以前のメロディーズ・エコー・チャンバーの音楽なんかはすごいUKっぽいですよね。そういうあなたのこれまでのキャリアを考えると、今作『シテ・シャンパーニュ』はすごくフレンチ・ポップというものを感じました。

PP:いま「フレンチ・ポップ」と言ってくれたことは、すごく正しいと思います。というのも、ヴォーカルをもう少し意識したということもありますし、ポップというのは自分のなかですごく大きいからです。ただ、影響としてはフランスの音楽ではなく、じつは日本だったりアメリカだったりの80'sのものにすごく影響を受けて作ったアルバムなんです。
たとえば、アメリカのプリンスの影響を色濃く反映させた曲を作るのではなく……、そういう意味では、坂本龍一、YMO、『パシフィック』……松下誠、坂本慎太郎、コーネリアスとか、そういった日本の音楽が、今回のアルバムに関しては自分のインスピレーション音源でした。なので、そういった意味ではハイブリッドという言い方もできるのではないかと思います。

すごく高名なジャズのサックス奏者であるお父さんがいる音楽家庭で育ったと思いますが、ジャズではなくロックやポップスみたいな方へいったのは、お父さんに対する反発心みたいなものがあったからですか?

PP:反発と言えるかどうかはわからないです。とにかく、ポップ・カルチャーに自分は非常に影響を受けていると思います。もともとは映画の勉強をしていたので、ムードイドという名前が知られるようになったのは、自分が作ったMVからだと思っています。“ジュ・セ・ラ・モンターネ” もそうですし “De Folie Pure(ホーリー・ピュア)”という曲も自分でクリップを加工しています。そこが自分のもともとのルーツというか、音楽に関してもポップ・カルチャーの方から来たのではないかなと思っています。ただ、今回のアルバムに関しては、フランスの若いジャズ・アーティストを呼んで、「80年代的な感じで、ジャム・バンドみたいにして自由にやって下さい」と言って録音したので、ジャズの要素もこのアルバムには含まれているのではないかと思います。

国境を無くすということがこの時代のポップ・カルチャーのいちばん大きな部分だと思います。というのも新しいアーティストが受けている影響というのは、インターネットのおかげで、国境が非常に無くなってきている。例えば、J-POPがすごく好きなのですが、YouTubeが無ければ、こんなにたくさんのJ-POPを知ることができなかったと思います。

ポップ・カルチャーというものの可能性についてどう思いますか? 

PP:ポップ・カルチャーには非常に可能性を感じています。自分たちの世代はインターネットもありますし、新しいメディアの形も変わりつつある時代なのではないかと思います。そういったなかで、クリエイティヴィティというものにも新しいものが求められていて、新しいものが出てきている時代だと思うんです。音楽ひとつとっても、クリップも非常に大事ですし、ヴィジュアルも大事ですし。そういった意味で、音楽に対する新しいアプローチというものが求められる時代に生きていて、新しい音楽の歴史がはじまっているような気がします。ポップ・カルチャーはまだまだ新しい扉が開かれるのではないかと思っています。昨日、水曜日のカンパネラと一緒にクリップを録ったのですが、日本人の仕事を見ていると僕たちの20年は先を行っているように思いました。フランスではありえないような、新しいやり方、斬新なやり方がとられていて、まだまだこれから可能性があるんじゃないかなと思えたところでもあります。

ポップ・カルチャーが成しうる最良のことは何だと思いますか?

PP:国境を無くすということがこの時代のポップ・カルチャーのいちばん大きな部分だと思います。というのも新しいアーティストが受けている影響というのは、インターネットのおかげで、国境が非常に無くなってきている。例えば、J-POPがすごく好きなのですが、YouTubeが無ければ、こんなにたくさんのJ-POPを知ることができなかったと思います。そういう意味で、新しいものが生まれ、そしてそれがどんどん混ざっていき、ハイブリッドになっていくということが、ポップ・カルチャーが成しえるもっとも素晴らしいことのひとつだと思います。フランスのシーンをひとつとってもいろいろなスタイルを持ったアーティストそれぞれが自分のスタイルをすごく確立していて、それを前に出していくアーティストが増えているので、やはりポップ・カルチャーのハイブリッドさの成せる業だと思います。

ちなみに、あなたをポップ・カルチャーの世界に引き入れた張本人は誰ですか? 

PP:圧倒的にプリンスですね。

フェイヴァリット・アルバムは?

PP:フェイヴァリット・アルバムというよりも、まず『パープル・レイン』という映画を自分のなかのいちばんのお気に入りで挙げたいです。映画からサントラとしての『パープル・レイン』というのがあって、映画とサントラというひとつの世界観が作られたという意味で、自分がそんなものを作ることができたら良いなと思える憧れの見本みたいな存在です。

さっきからJ-POPの話が出ていて、実際に今回の “プラネット・トウキョウ”と7曲目の “チェンバー・ホテル” にすごくJ-POPを感じました。この2曲はJ-POPですよね(笑)?

PP:本当におっしゃる通りです(笑)。日本の80年代のポップ・ミュージックの作られ方というものにすごく憧れを抱いています。日本のアーティストはすごく技術が高いというのがいちばんに言えることです。日本の80年代の音楽は、スタジオ・ミュージシャン、スタジオでの作業というものが、非常に高みにあがった時代なのではないかと思います。例えば、シンセにしても、ローランドやヤマハ、コルグ、そのあたりが日本で非常に発展した時代だと思っていて、日本はラボそのものなのではないかと思えます。もっとも新しいマシンがあって、もっとも新しい音があって、それになおかつテクニックと音楽的要素がちゃんと重なっている。そういう意味で、このアルバムのコンセプトになっているのが、80年代の日本の音楽であると思います。

あなたは80年代のJ-POP、日本の音楽を聴いて何を想像しますか?

PP:80年代の日本の音楽から連想させるものは、大きな喜びとポジティヴさだと思っています。それは自分にとって音楽をやる上ですごく大切なエモーションでもあります。要するに、ナイーヴとも言えるような善良さというものが、音楽から滲み出てくるというのが非常に自分の心を打つんですね。あとはジャズの影響というものもベースやギターのプレイに感じられます。例えば、アメリカのスティーリー・ダンみたいな感じで、英語で歌を歌ってみたり。そういう日本のアーティストのアプローチがすごく自分にも通じるところがあると思っていて、同じようなことを自分もフランス語でやっていると思うんです。例えば、YMOはクラフトワークのオリエンタル版だと思っているのですが、クラフトワークと違ってそこにすごく温かいもの、何かもっと人間的なものを感じます。『増殖』はラジオ仕様になっていたりとか、ジョークをつねに言っていたりとか。あのアルバムでのアプローチというのはすごい大好きです。

『増殖』はのギャグは、日本語だからなかなか意味はわからないと思うのですけど?

PP:しかしあのアルバムのなかで、英語で会話をしているのに日本語で答えたりしている部分があると思うんですが、すごく自虐的でアイロニカルで面白いと思っています。足が短いとか、性器が小さいとか、そういう話をしていると思うんですけど、そういうところがじつはすごく好きで、自分のクリップでもアメリカ的なものをコピーしたというか、自分なりに解釈してやったというのがあるんですけど、そのなかでも、フランスパンを使ったり、チーズを使ったりして、他の文化に対するちょっとした勘違いというものってよくあると思うんですけど、そういった異文化へのファンタジー、ファンタジーというか、勘違いのなかで生まれてくる新しさみたいなものがすごく大好きです。

80年代の日本の音楽に関していうと、バブル経済真っ直なかの音楽だから日本人はものすごくそれに対するアンビヴァレンスというか、憧れを持っている世代もいるいっぽうで、ぼくなんかはモノによっては素直に向き合えないところがあるんですけどね。

PP:まずひとつ思うのが、国が悪いときにアーティストは良いものを生み出すのではないかと思うんですよね。クリエイティヴィティが刺激されているんじゃないかと思うんです。だからきっと日本の人にとってはYMOの見づらい部分というものが、僕たちの心を打つところでも実はあるんじゃないかなと思っています。これは自分の場合なのですが、東京に初めて来たときに、自分がまったく知らない本当に新しい世界に来たというふうに思いました。暮らし方からしてもそうですし、言語もそうですし、なにもかもが新しくて。そういった意味で、新世界を発見したみたいなところがすごく引き付けられる大きな部分だと思います。そのなかに少し入ってみて感じるのは、生活のなかにある相反する要素。例えば、日本ってけっこうポルノっぽいものとか、ゲームだったりとかが日常のなかに溢れていて、そういう騒々しいもの、猥雑なものと、それから伝統的なものとか、禅の考えとか、風水的な考えとかが、本当に自然に共存していると思います。フランスでは考えられないです。

たしかに。

PP:例えば、アルバムのなかで "レプティル(Reptil)” という曲があるんですけど、これはフランスで起きたテロを経て作った曲なんです。やっぱりフランスのアーティストでテロの影響が直接的でも間接的でもアルバムに現れているアーティストというのはすごく多くて、そういった意味で、国の状況というのが自分たちのクリエイティヴィティに与える影響はすごく大きいと思うし、テロに関して今後も自分たちの音楽のなかに何かしらの影響を及ぼすんじゃないかな。

なぜレプティル=爬虫類だったのですか?

PP:これはこのアルバムで最初に書いた曲で、テロがあったその夜に書きました。1時間くらいで書きあがったんですけど、そのときはすごく悲しい気持ちで書きました。爬虫類というのは、相手を食べてしまったり、自分の仲間すらも食べてしまうような種族なので自分にとってすごくアグレッシヴなものの象徴です。でも自分はそこからどうやって自由でいるかということを歌っています。
ただ、アルバムを作っていくにあたってムードイドの音楽というのは、もっと喜びに満ちていて、そして、いろいろなヴァラエティに富んだものであるべきだ、そして、希望が感じられるようなものであるべきだと思ってきたんです。結局そのあと、曲やアルバム自体が仕上がったときに、このアルバム全体を聴いてみると、もっとお祭り騒ぎ的なものとかも入っていると思っていて。そのお祭り騒ぎというのは結局あの夜テロリストによって、壊されたものだと思うんですけど、その壊されたもののなかから、どうやって生き延びて、自分たちの自由をキープしながら、どうやってお祭り騒ぎを続けていくのか、どうやって愛を重ねていくのか、というようなことを自分は最終的に歌っているんじゃないかなと思います。

ありがとうございました。

 取材の翌日、ぼくは代官山のクラブでの水曜日のカンパネラのライヴを見にいった。途中コムアイに呼ばれると、ギターを抱えたムードイドはステージに上がり、コラボレーション曲を披露した。それはなんとも微笑ましい一幕で、それはどう考えても、未来という方角に向かっているようだった。

ele-king vol.22 - ele-king

これは、「音楽が世界をどのように見ているか」という特集である。

特集1:加速するOPNとアヴァン・ポップの新局面

 昔の「良かった」時代への郷愁をぶっちぎり、ポップ・ミュージックは最先端に向かって疾駆する。坂本龍一のリミックス・アルバムへの参加、カンヌ映画祭でのサウンドトラック賞の受賞。着実にアップデイトしているOPNが満を持してポップ・アルバムを完成させた! 間違いなく2018年の話題作となるであろうこの新作を中心に、ポップ・ミュージックにおける先鋭性について特集します。いわゆるアヴァン・ポップと呼ばれる音楽──ポップとは保守的な音楽を意味するようになった現代だからこそ、ビートルズの「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」に端を発した、ポップとアヴァンギャルドの関係を特集します。
 巻頭のOPN ロング・インタヴューに加え、アヴァン・ポップの代名詞とも言えるステレオラブのレティシア・サディエール、知性派の代表としてドイツからはマウス・オン・マーズ、7月に驚異的な新作を控えるダーティ・プロジェクターズのインタヴューも掲載。さてと……OPNは21世紀のブライアン・イーノたりうるのか?

特集2:アフロフューチャリズム

 チーノ・アモービと彼のレーベル〈NON〉の登場は、長きブラック・ミュージック史における衝撃です。彼らの過激なテクノ・サウンドとその政治性は、知性で武装するアフロ・ディアスポラ・ミュージックの新たなはじまりと言えるでしょう。彼らは世界を変えようとしています。彼らの音楽の根底には、ポール・ギルロイの『ブラック・アトランティック』とデトロイトのドレクシアがあります。彼らのコンセプトにはアフロフューチャリズムが横たわっています。
 チーノ・アモービのインタヴュー、ドレクシア再考、ブラック・カルチャーにおける知性と抵抗の系譜、アヴァン・ポップとアフロフューチャリズムを繋ぐクラインのインタヴュー、そしてポール・ギルロイからコドウォ・エシュン、マーク・フィッシャーからニック・ランドまで、音楽に大きな影響を与えているイギリス現代思想の概観──希望なき時代を生きる希望の音楽の大特集です。

contents

巻頭写真:塩田正幸

特集1:加速するOPNとアヴァン・ポップの新局面

preface OPNに捧げる序文 (樋口恭介)
interview ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー (三田格/坂本麻里子)
column 私の好きなOPN(佐々木敦、坂本麻里子、河村祐介、八木皓平、松村正人、木津毅、デンシノオト、小林拓音、野田努)

アヴァン・ポップの新局面 [※ポップに実験が必要である理由]

interview レティシア・サディエール(ステレオラブ) (イアン・F・マーティン/五井健太郎)
interview ダーティ・プロジェクターズ (木津毅+小林拓音/坂本麻里子)
interview ヤン・セント・ヴァーナー(マウス・オン・マーズ) (三田格/坂本麻里子)
column ホルガー・シューカイ (松山晋也)
column ブライアン・イーノ (小林拓音)
column 坂本龍一 (細田成嗣)
column グレン・ブランカ (松村正人)
column アーサー・ラッセル (野田努)
column 「前衛」と「実験」の違いについて (松村正人)
avant-pop disc guide 40 (三田格、坂本麻里子、デンシノオト)

CUT UP informations & columns [※2018年の上半期の動向を総まとめ]

HOUSE(河村祐介)/TECHNO(行松陽介)/BASS MUSIC(飯島直樹)
/HIP HOP(三田格)/POPS(野田努)/FASHION(田口悟史)
/IT(森嶋良子)/FILM(木津毅)/FOOTBALL(野田努)

特集2:アフロフューチャリズム [※黒に閉じないことの意味]

column 周縁から到来する非直線系 (髙橋勇人)
interview チーノ・アモービ (髙橋勇人)
column ドレクシアの背後にあるモノ (野田努)
interview クライン (小林拓音/米澤慎太朗)
column 未来を求めて振り返る (山本昭宏)
interview 毛利嘉孝 (野田努+小林拓音)
afrofuturism disc guide 35 (野田努、小林拓音)

REGULARS [※連載!]

幸福の含有量 vol. 1 (五所純子)
乱暴詩集 第7回 (水越真紀)
東京のトップ・ボーイ 第1回 (米澤慎太朗)
音楽と政治 第10回 (磯部涼)

Vincent Moon - ele-king

 パリ出身の映像作家、ヴィンセント・ムーンの名前は、2006年にはじまったウェブ向けの音楽シリーズ「Take Away Show」によって広まった。「Take Away Show」ではミュージシャンを街の至る所へ連れ出し、彼らの素顔を捉えたリアルな映像を収めている。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLB11F2A75B21884EC&feature=plcp

 ちなみに現在彼は、2019年の実施を目指し、日本のシャーマニズムや伝統音楽を追いかける「響 HIBIKI」プロジェクトの準備をすすめている。
 牧野貴もまた、映画、音楽、インスタレーション、オーディオビジュアルパフォーマンスなど多分野で活動し、ジム・オルーク、大友良英、坂本龍一など著名な音楽家とのコラボレーションも活発に行っている映像作家。3台のプロジェクターから作られるイメージの重なり合いが幻想的だ。

(『ENDLESS CINEMA』音楽:ジム・オルーク2017)

 当日は、ヴィンセント・ムーンと写真家で作家のプリシラ・テルモンによるライブ・シネマと、牧野貴 によるライヴ・パフォーマンスが予定されている。
 映像詩人たちによる当日限りの特別プログラムに足を運んでみてはいかがだろうか。

■ FOUNDLAND feat. VINCENT MOON + 牧野貴

2018年6月11日(月)@ VACANT
18:30 open / 19:00 start
前売 3,500yen / 当日 4,000yen(+1D別途)

出演:
Vincent Moon & Priscilla Telmon
牧野貴
音響:福岡功訓(Fly sound)
予約:https://foundland.us/archives/1961
イベント詳細:https://foundland.us/archives/1961

Vincent Moon web site:VINCENTMOON.COM
響HIBIKI project web site:https://hibikiproject.com
牧野貴 web site:https://makinotakashi.net/
Priscilla Telmon web site:www.priscillatelmon.com

Alva Noto - ele-king

 本作『UNIEQAV』は、カールステン・ニコライの新レーベル〈ノートン〉におけるカールステン・ニコライ=アルヴァ・ノトによる初のソロ・アルバムであり、同時に08年の『UNITXT』、11年の『UNIVRS』から続いてきた「UNI」シリーズの完結編でもある。

 ここで「UNI」シリーズについて簡単に説明しておこう。まず、00年代中盤以降のアルヴァ・ノトが〈ラスター・ノートン〉で展開した連作シリーズはふたつあった。ひとつは「UNI」シリーズ。もうひとつは「ゼロックス」シリーズである。「ゼロックス」シリーズは07年に「Vol.1」、09年に「Vol.2」、15年に「Vol.3」が発表され、このシリーズも三作目で一区切りをつけたようだ。ゼロックスの名前のとおり「コピー」をテーマとしたアンビエント・ドローン連作である。
 対して「UNI」シリーズはリズミックなトラックを中心に収録するシリーズだ。発端は「アルヴァ・ノトが数十年前に東京のクラブ“UNIT”にブッキングされた際、その環境に応じたサウンドを作り出そうとしたのがきっかけ」という。つまり最初から「クラブユース」のトラックであることを目指していたようである。
 同時に『UNITXT』の後半部分で聴かれるように、音素からノイズ領域に還元された音響もサウンドの特徴を形成していたことも大きな特徴であった。いわばリズム/ノイズという音楽・音響の構成要素を素材の状態から再蘇生するように突き詰め、サウンド/トラックの生成・構成・構築を行っているのだ。
 その意味で「UNI」シリーズは00年代初期までの初期のサイン派のリズミックなコンポジションによるウルトラ・ミニマルな電子音響の流れにあるシリーズともいえる。コピー/生成という「ゼロックス」シリーズに近いテーマ性を読み込むことも可能だろう。

 新作『UNIEQAV』においては、そんなカールステン・ニコライのリズム/ノイズの生成・構築が洗練の極を迎えていた。かつての過激なまでのウルトラ・ミニマリズムは影を潜め、実にエレガントで端正なテクノ・トラックである。細やかなリズム、高密度な低音、ミニマムな電子ノイズなどが、ときにダイナミックに、ときにしなやかにコンポジションされ、聴き手を音響の渦の中に巻き込んでいく。グリッチ・サウンドを経由した10年代後半的な「モダン・テクノ」といっても過言ではない見事なトラックだ。

 この『UNIEQAV』では、そんなモダン・テクノ的なマシン・グルーヴに加えて、「ゼロックス」シリーズ(特に「Vol.3」)や、坂本龍一との共作である映画『レヴェナント』のサウンドトラックなどにあった音楽的な和声感覚もそこかしこに埋め込められてもいる。たとえば「ゼロックス」『レヴェナント』的な持続音で幕を開ける“Uni Mia”、その途中から鳴り始める「二つ目のコード」のように。
 加えて「声」の導入も「UNI」シリーズの重要な要素である。カールステン・ニコライが「声」をトラック内に本格的に用いたのは、おそらくは「UNI」シリーズからのはず。そして「UNI」シリーズの「声」といえば、フランスの音響詩人アン=ジェイムス・シャトンである。
 彼は〈ラスター・ノートン〉から11年に『Événements 09』、2012年にアルヴァ・ノトと、長年のコラボレーターであるアンディ・ムーアらとの共作で『Décade』をリリースしている。二作とも途轍もなくクールなヴォイス+電子音響だ。
 そのふたりの最初の共作トラックが収録されたアルバムが、08年にリリースされた『UNITXT』であった。カールステンの電子音響トラックに、アン=ジェイムス・シャトンの無機的な質感の声がこれほどの見事なマッチングを聴かせるとは思いもよらなかった。それは電子音響ヒップホップとでも形容したいほどの「クールさ」だが、何より世界の満ちている資本主義社会的な記号=言葉を反復するヴォイスは、「UNI」シリーズが内包していた世界認識論を体現していた。じじつ、11年の『UNIVRS』にもアン=ジェイムス・シャトンは参加し、三文字の企業・団体名/ロゴの英字を繰り返し発声し、アルバムのメッセージを強く体現していた。
 それは『UNIEQAV』の“Uni Dna”でも同様だが、前作までとは反対に、まずはトラックが先行制作され、そこにアン=ジェイムス・シャトンのヴォイスが重ねられたらしい(曲名どおりDNA情報に関するワードだ)。結果、アン=ジェイムス・シャトンによる「声」のリズムとアルヴァ・ノトのトラックのリズムの関係性が、ふたりのこれまでのコラボレーションから反転しているのだ。

 ではカールステン・ニコライは、この『UNIEQAV』ではトラック優先で、ビートの可能性を追及したかったのだろうか。しかしそれはビートというより、ある法則で区切られた音の線=リズムというべきかもしれない。「声」もまた法則で区切られた音の分割=リズムである。じじつ『UNIEQAV』におけるリズムは、“Uni Clip”などで聴かれるようにキーボードをタイプする音にも聴こえるし、“Uni Sub”のベースの3連などは、アン=ジェイムス・シャトンの声のようにも聴こえる。横溢する分断されるリズム=音の線。

 リズム。ノイズ。分断される音。これらが交錯する本作を聴いていると、不意にカールステン・ニコライが育った「東ドイツ」のことを考えてしまった。たとえば、彼が少年期などに耳にしていた東ドイツにおけるラジオ放送などを。
 私見だが、この最先端の電子音響の本質には、どこかカールステン・ニコライの記憶の層が織り込まれているように聴こえてならない。もしかすると「東」に住むカールステン少年・青年は、(おそらくは検閲によって)消えかけて(分断された)ラジオ放送を耳にしていたのではないか、と。思えば「ゼロックス・シリーズ」の「Vol.3」もまたどこか記憶の旅のようなアルバムあったが、本作『UNIEQAV』も音楽のフォームは違えども、やはり、同様のものを感じてしまった。
 サイン・ウェイヴ、グリッチ。ノイズ。マシン・リズム。90年代以降、ヒトから離れたマシン/エラーな音響作品を作り続けてきたカールステン・ニコライだが、00年代後期から10年代以降のシリーズ/アルバムには、彼の幼年期の記憶/人生も結晶しているようにも思えるのだ。20世紀後半、東ドイツの記憶。モダニズム建築。放送。ノイズ。音響。リズム。
 そう、知覚を圧倒するテクノロジーの交錯による最先端電子音響/モダン・テクノ『UNIEQAV』が放つマシニック・リズムのむこうには、ヒトの記憶が、まるで光のように交錯し、反射しているのだ。


Oneohtrix Point Never - ele-king

 先日ニュー・アルバム『Age Of』のリリースがアナウンスされたOPNだが、ついにその詳細が発表されることとなった。同時に新曲“Black Snow”もフルで公開されている。

 公開されたクレジットを確認してまず驚くのは、多くのゲストが参加している点だ。これはOPN名義のオリジナル・アルバムとしては初めてのことである。ダニエル・ロパティンはこれまでもじつにさまざまなアーティストとコラボを繰り返してきたけれど、どうやら『Age Of』にはその経験が直接的に反映されているようだ。

〔新作には〕僕がここ数年、他のアーティストたちのために働いて経験したことに対する直感的で忠実な反応が詰まっているんだ。『Garden of Delete』の後に注目されるようになって、“グロテスク・ポップ”を作った後に、実際にポップ・ミュージックを作るようにもなった。音楽的な労働、つまり、音楽を収獲するということ、つまりは、誰かの音楽的なゴールのために働くということについて考えるようになった。また僕自身についてや、僕の作曲家として、またプロデューサーとしてのアイデンティティについてもね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そのような経験はロパティンにシュルレアリスムを想起させるものだったらしい。オフィシャル・インタヴューにおいて彼は「自分が欲しい音と、他人が欲しいと思うような音との両方を混ぜ合わせたシュールレアリスム的な音の組み合わせは、まるで誰かに切り裂かれたクレイジーな彫刻のようなものになった」と語っている。そのように「労働」と「シュルレアリスム」というふたつの観点を発見した彼は、新作『Age Of』に関して次のように宣言している。

僕はこのアルバムを「ブルーカラー・シュルレアリズム(労働階級のシュルレアリズム)」と呼ぼうと思ってる。 (オフィシャル・インタヴューより)

 じっさいに招かれているゲストたちも興味深い。クレジットにはローレル・ヘイローラシャド・ベッカーの作品への参加で知られるパーカッショニストのイーライ・ケスラーや、昨年『Hopelessness』でハドソン・モホークとともにOPNにもプロダクションを担当させていたアノーニなどに加え、なんとジェイムス・ブレイクの名までもが記載されている。
 なかでも4曲で参加しているアノーニの存在は、このアルバムの成り立ちそのものに関わっているようだ。環境問題をめぐる会話でアノーニを怒らせてしまったロパティンは、それをきっかけに環境について考えるようになり、それこそが本作の始まりとなったのだという。

僕らは欲張りで地球から多くを取り過ぎることになる。自分たちのことしか考えないからね。アノーニの気持ちを傷つけてしまったことからはじまって、もうそうしたくないと思った。そしてなぜ自分が無感覚だったのかということについても考えた。もう少し気遣えるようになりたいし、コンピュータードリームの一端になりたくないんだ。このアルバムはちょっとした警告ようなものなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そして、もっとも驚きを与えるだろうゲストのジェイムス・ブレイクについてロパティンは、「彼とは気が合うんだ。付き合いは長くはないよ。お互いに存在は知っていたけどほとんど話したこともなかった」と振り返っている。OPNは一昨年、ハドソン・モホークとジェイムス・ブレイクとの論争を仲裁しているが、その前年あたりから交流が始まったのだろうか。ともあれ、ブレイクは3曲でプレイヤーとしてキイボードを担当するとともに、アルバム全体のミックスを手がけてもいる。ロパティンは、今回のアルバムのミキサーにはエンジニアではなく自身でも音楽を演奏する人がふさわしいと考え、ブレイク本人に依頼することになったのだそうだ。

彼〔ジェイムス・ブレイク〕は、自分が作ったジェイ・Zの曲をSpotifyで聞いた時、これは正しいミックスじゃないと言ってSpotifyから曲を落とさせて、彼が思った通りの、より良いものと入れ替えさせたって話があるんだ。とてもクールだよね。それに強い。インスパイアされたよ。それで彼にアプローチしてみたんだ。そしたら「いつスタートする?」ってすぐ返事が来て、とてもいいエネルギーを感じた。 (オフィシャル・インタヴューより)

 他方、ブレイクのキイボーディストとしての腕前についてロパティンは、「デレク・ベイリーのような即興演奏者やフリージャズピアニストのようだ」と語っている。「音楽とは何かということに気づかせてくれる。つまり音楽とはアイディアではなく、人から出てくる直感のようなものなんだ」。
 クレジットを眺めていてさらに驚くのは、本作にはなんとロパティン本人の歌までもがフィーチャーされているということだ。「ただ歌が好きなんだ。歌が声を必要とする」と彼は言う。「何を言っているかわかりづらくても、何かしらの意味を発しているというだけで奇跡的だと思うんだ」。前作『Garden Of Delete』では音声合成ソフトのChipspeechが導入されていたが、本作ではオートチューンが用いられている。

僕とアノーニの声を使ってオートチューンやエフェクトをかけてる。声が別のものになるってのがいいんだ。モンスターとか生物が好きだからね。SFとかへの愛情の現れでもあるね。声がリッチで興味深くなる。音の鳴り方自体が物事を説明できてしまうほどパワフルになる。その一方で何も伝わらなかったとしてもオブジェになるというようなパワーもある。声の持つ色々な側面が好きなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 サウンド面で言えば、チェンバロのサンプリングが使用されているのも新作の大きな特徴のひとつだろう。先月部分的に公開された新曲にはルネサンス音楽~バロック音楽の要素が表れ出ていたが、それもチェンバロの響きから誘導されたものと思われる。

チェンバロは面白い楽器だ。音楽的なマシーンってのがいい。僕にとってチェンバロは、色々な開発が進んでいた時代に、物事を発展させて世の中を変えようとしていた中で生まれたもので、工業的な強みを持った、バイオリンのような弦楽器の複雑なバージョンだ。開発された当時は、例えばシンセサイザーの音を最初に聴いた時のような衝撃があっただろうね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 コンセプト面もおもしろい。本作にはふたりの哲学者が影響を与えている。ひとりはミハイル・バフチン。彼がラブレーの『ガルガンチュワとパンタグリュエル』について論じた文章(おそらく『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』)を読んだことが、このアルバムを作るきっかけのひとつとなったらしい。

彼〔バフチン〕が本の中で言っていてとても好きな部分があって、それは「歴史は嘘だ」というようなことなんだ。つまり我々が認識している歴史は、混沌とした複雑な世界を注意深く整えて残したもので、真実は街の市場で起こっているということ。人々が笑いあったり、悪いジョークを言っていたりする中にね。それを読んだ時に、すぐにこのアルバムのことが思い浮かんで、その昔の16世紀の時代に同じことを思っていた友達がいたということに気づいて嬉しかったんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 もうひとりはニック・ランドだ。今回公開された新曲“Black Snow”のリリックは、ランドの主宰する研究機関Cybernetic Culture Research Unit(CCRU)が2015年に出版した本(おそらく『Ccru: Writings 1997-2003』)からインスパイアされているのだという(ランドについては、コード9のインタヴューを参照)。

 ……とまあ、このように、今回のOPNの新作は、さまざまな面でじつに興味深い作品に仕上がっているようである。リリースは5月25日。カンヌ映画祭でのサウンドトラック賞の受賞や坂本龍一のリミックス・アルバムへの参加を経て、ダニエル・ロパティンは次にどこへ向かおうとしているのか? 混沌とした現代を象徴することになりそうなこの新作を、しっかりと迎える準備を整えておこう。

最新にして圧倒的傑作『AGE OF』から
自ら監督した新曲“BLACK SNOW”のミュージック・ビデオを解禁!
ジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかに!

アルバム発表と同時に待望の来日公演も発表され、謎めいたトレーラー映像も話題となっているワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、最新アルバム『Age Of』から、初のフル公開曲となる新曲“Black Snow”を解禁! ミュージック・ビデオはOPNことダニエル・ロパティン自らが監督を務めている。さらにジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかとなった。

ONEOHTRIX POINT NEVER - BLACK SNOW
https://opn.lnk.to/BlackSnow-video

本楽曲の歌詞は、イギリス出身の哲学者・著述家であるニック・ランド、そして彼が設立に携わり、90年代に活動した「サイバネティック文化研究ユニット(Cybernetic Culture Research Unit)」にインスパイアされており、我々人間が、いかに混乱に向かうことを運命づけられているかということを突きつける。奇異さとポップネスを絶妙なバランスで同居させ、内臓を貫くようなハーモニーがもたらす心地良さも、異端なミニマリズムが生む緊張感も、すべてが美しいメロディーの海原へと溶け込んでいく。

また今回の発表に合わせて、アルバムの全クレジットが公開され、OPN名義の作品としては初めて、他のアーティストがゲスト参加していることが明かされた。ジェイムス・ブレイクがアルバム全体のミックスを担当している他、3曲でキーボードを演奏、さらにアノーニがヴォーカルで参加している(*OPNはアノーニの最新アルバム『Hopelessness』でハドソン・モホークと共にプロデューサーを務めている)。他にも、ローレル・ヘイローやラシャド・ベッカー、日野浩志郎らとのコラボレーションでも知られる気鋭パーカッショニスト、イーライ・ケスラー、ケレラやブラッド・オレンジ、ファーザー・ジョン・ミスティ作品への参加でも知られるシンガーにしてチェリストのケルシー・ルー、ノイズ・アーティストのプルリエントらが参加。ミックスを依頼したジェイムス・ブレイクについて、ダニエル・ロパティンは次のように語っている。

ジェイムスとうまく仕事ができたのは、ミキシングに必要なのは技術的なことじゃなくて、良いアレンジだという点で同意していたことにあると思う。正しいサウンドが並び合っていればミックスも簡単だ。でも間違った音が並んでクレイジーな場合は、技術に頼らざるを得なくなってくる。スタジオでの判断基準はすべてどうアレンジするべきか、だった。音楽的な視点でのミックス作業で、それこそ僕が必要としているものだった。とても彼が助けてくれたことに満足してるよ。ジェイムスはノッてくるとキーボードも演奏してた。

大型会場パークアベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)で二日間開催予定だったニューヨーク公演が即完したことを受け、ニューヨークでの追加公演、ロンドン公演、そしてデンマーク(ハートランド・フェスティバル)、スペイン(プリマヴェーラ・サウンド)でのフェスティバル出演を経て、9月に一夜限りの東京公演(Shibuya O-EAST)の開催も決定! 売り切れ必至のチケットは、各プレイガイドにて現在絶賛発売中。

公演日:2018年9月12日(WED)
会場:O-EAST

OPEN 19:00 / START 19:30
前売 ¥6,000(税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可

一般発売日:4月21日(SAT)
チケット取扱い:
イープラス [https://eplus.jp]
チケットぴあ 0570-02-9999 [https://t.pia.jp/]
ローソンチケット (Lコード:72937) 0570-084-003 [https://l-tike.com/opn/]
BEATINK [www.beatink.com]

企画・制作:BEATINK 03-5768-1277 [www.beatink.com]

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9577

OPN最新アルバム『Age Of』は、日本先行で5月25日(金)リリース! 気鋭デザイナー、デヴィッド・ラドニックがデザインを手がけたアートワークには、アメリカ現代美術シーンで最も影響力があるヴィジョナリー・アーティストと称されるジム・ショーの作品がフィーチャーされている。国内盤には、ボーナストラックとして、ボイジャー探査機の打ち上げ40年を記念して制作された映像作品「This is A Message From Earth」に提供した“Trance 1”のフル・ヴァージョンが初CD化音源として追加収録され、解説書と歌詞対訳を封入。SF小説家の樋口恭介が歌詞の翻訳監修を手がけている。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Age Of

release date:
2018/05/25 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-570 定価:¥2,200+税

国内盤CD+Tシャツ BRC-570T
定価:¥5,500+税

【ご予約はこちら】
beatink:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9576

amazon:
国内盤CD https://amzn.asia/6pMQsTW
国内盤CD+Tシャツ
S: https://amzn.asia/0DFUVLD
M: https://amzn.asia/4egJ96i
L: https://amzn.asia/g0YdP88
XL: https://amzn.asia/i0QP1Gc

tower records:
国内盤CD https://tower.jp/item/4714438

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music :https://apple.co/2KgvnCD

【Tracklisting】
01 Age Of
02 Babylon
03 Manifold
04 The Station
05 Toys 2
06 Black Snow
07 myriad.industries
08 Warning
09 We'll Take It
10 Same
11 RayCats
12 Still Stuff That Doesn't Happen
13 Last Known Image of a Song
14 Trance 1 (Bonus Track for Japan)


ALBUM CREDITS

Written, performed and produced by Oneohtrix Point Never
Additional production by James Blake

Mixed by James Blake
Assisted by Gabriel Schuman, Joshua Smith and Evan Sutton

Mix on Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen by Gabriel Schuman

Additional production and mix on Toys 2 by Evan Sutton

Engineered by Gabriel Schuman and Evan Sutton
Assisted by Brandon Peralta

Mastered by Greg Calbi at Sterling Sound

Oneohtrix Point Never - Lead voice on Babylon, The Station, Black Snow, Still Stuff That Doesn’t Happen
Prurient - Voice on Babylon, Warning and Same
Kelsey Lu - Keyboards on Manifold and Last Known Image Of A Song
Anohni - Voice on Black Snow, We’ll Take It, Same and Still Stuff That Doesn’t Happen
Eli Keszler - Drums on Black Snow, Warning, Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen
James Blake - Keyboards on We’ll Take It, Still Stuff That Doesn’t Happen and Same
Shaun Trujillo - Words on Black Snow, The Station and Still Stuff That Doesn’t Happen

Black Snow lyrics inspired by The Cybernetic Culture Research Unit, published by Time Spiral Press (2015)
Age Of contains a sample of Blow The Wind by Jocelyn Pook
myriad.industries contains a sample of Echospace by Gil Trythall
Manifold contains a spoken word sample from Overture (Aararat the Border Crossing) by Tayfun Erdem and a keyboard sample from Reharmonization by Julian Bradley

Album art and design by David Rudnick & Oneohtrix Point Never

Cover image
Jim Shaw
The Great Whatsit, 2017
acrylic on muslin
53 x 48 inches (134.6 x 121.9 cm)
Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Black Snow

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music : https://apple.co/2KgvnCD
Spotify : https://spoti.fi/2HZc1kL

Oneohtrix Point Never - ele-king

 時は満ちた。
 昨年の『Good Time』の劇伴や坂本龍一のリミックス、そして3月のデヴィッド・バーン新作への参加を経て、ついにOPNが自身のニュー・アルバム『Age Of』をリリースする。
 最近のコラボ相手を見てもわかるとおり、デビューから10年以上が経ったいまダニエル・ロパティンはその活躍の舞台を上げ、それまでの彼のリスナーとは異なる層にまで訴求する存在になっている。だからこそ、次の一手に関してはいかに紋切り型に陥らないか、いかに手癖に頼らないかというのが肝要になってくるわけだが……公開されているタイトル曲の一部を聴く限り、どうやら『R Plus Seven』とも『Garden Of Delete』とも違う新たな試みが為されているようだ。これは、時代の混沌の中で紡がれた21世紀の電子マニエリスム音楽?
 リリースは5月25日(日本先行発売)。9月には東京での公演も決定している。あなた自身の耳でその変化を確かめよう。

時代の混沌の中で紡がれた21世紀の電子バロック音楽
最新にして圧倒的傑作『AGE OF』完成
即完したニューヨーク2公演に続き、ロンドンと東京公演の開催が決定!

現代を代表する革新的音楽家、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、最新アルバム『Age Of』を5月25日(金)に日本先行でリリースすることを発表し、待望の来日公演も決定した。

『Replica』(2011)、『R Plus Seven』(2013)、『Garden of Delete』(2015)と立て続けにその年を代表する作品を世に送り出してきただけでなく、FKAツイッグスとのコラボレーション、アノーニやデヴィッド・バーンのプロデュースに加え、昨年公開の話題映画『グッド・タイム』の劇半でカンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞するなど、多岐に亘るフィールドで成功を収めているOPNことダニエル・ロパティン。そんな輝かしいキャリアの中でも「ポストモダン・バロック」とでも呼ばれるべき未曽有のポップ・ミュージックが収められた本作は、一つの到達点ともいえる圧倒的な傑作だ。先日公開された、5月にニューヨークで行われる最新コンサート「MYRIAD」のトレーラー映像では、アルバムの冒頭を飾るタイトルトラック“Age Of”の音源を聴くことができる。

Oneohtrix Point Never - MYRIAD
https://opn.lnk.to/MyriadNYC

Video by Daniel Swan and David Rudnick
Directed by Oneohtrix Point Never
Animation by Daniel Swan
Produced by Eliza Ryan
Videography by Jay Sansone
Additional Animation by Nate Boyce
Thrash Rat™ and KINGRAT™ characters by Nate Boyce and Oneohtrix Point Never
Engravings by Francois Desprez, from Les Songes Drolatiques de Pantagruel (1565)
Additional Typography by David Rudnick

大型会場パーク・アベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)で開催されるニューヨーク公演は、発売後72時間で2公演ともにソールドアウト。今回のアルバム発表に合わせ、ロンドン公演(The Barbican)と東京公演(Shibuya O-EAST)の開催が決定! 東京公演の主催者先行は4月5日(木)正午より、BEATINK.COMにてスタートする。
詳細はこちらから:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9577

OPN最新アルバム『Age Of』は、日本先行で5月25日(金)リリース! アートワークにはアメリカ現代美術シーンで最も影響力があるヴィジョナリー・アーティストと称されるジム・ショーの作品がフィーチャーされている。国内盤には、ボーナストラックとして、ボイジャー探査機の打ち上げ40年を記念して制作された映像作品「This is A Message From Earth」に提供した「Trance 1」のフルバージョンが初CD化音源として追加収録され、解説書と歌詞対訳を封入。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定。

Jim Shaw
The Great Whatsit, 2017
acrylic on muslin
53 x 48 inches (134.6 x 121.9 cm)
Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Age Of

release date: 2018/05/25 FRI ON SALE
国内盤CD BRC-570 定価: ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-570T 定価: ¥5,500+税

Kumo No Muko - ele-king

 君はAlixkun(アリックスクン)を覚えているかい? 歴史に埋もれた掘り出し物をを求め、ほとんどの休日を関東圏のあらゆる中古レコード店めぐりに時間とお金を費やしている、日本在住のフランス人DJであり、正真正銘のディガーだ。Alixkunの最初の探索は、日本のハウス・ミュージックの発掘からはじまった。そしてその成果は、まったく美しいコンピレーション・アルバムへと結実した
 Alixkunの次なる冒険は、80年代の日本で録音されたアンビエント&シンセポップだった。綿雲のうえを歩くようなサウンドに彼は取り憑かれ、そしてレコードの狩人となって来る日も来る日も探求を続けた。そして出会った小久保隆、井上敬三、渡辺香津美、坂本龍一、井野信義、宮下富実夫、小山茉美、鈴木良雄、Dip in the Pool……彼は舐め尽くすようにレコードの1曲1曲を聴き続け、吟味して、それがいよいよコンピレーション・アルバムとなって発売される……
 タイトルは『雲の向こう A Journey Into 80's Japan's Ambient Synth-Pop Sound』。発売は6月27日だが、HMVのホームページにて予約を開始した。アートワークも最高だし、内容も素晴らしい。ぜひチェックして欲しい。

■V.A.『雲の向こう A Journey Into 80's Japan's Ambient Synth-Pop Sound』
CAT NO.:HRLP108/9
FORMAT:2枚組LP
発売日:2018年6月27日(水)発売

[収録曲]
A1. Underwater Dreaming / Takashi Kokubo
(Music by Takashi Kokubo)

A2. Kitsu Tsuki / Keizo Inoue
(Music by Kazumi Watanabe)

A3. Window / Nobuyoshi Ino
(Music by Kazumi Watanabe)

B1. A Touch of Temptation / Masaaki Ohmura
(Music by Masaaki Ohmura)

B2. Kuroi dress no onna -Ritual- (English Version) / dip in the pool
(Music by Masahide Sakuma / Words by Miyako Koda)

B3. Silver Snow Shining / Shigeru Suzuki
(Music by Shigeru Suzuki)

C1. Obsession / Chika Asamoto
(Music by Kazuo Ohtani)

C2. Love Song / Mami Koyama
(Music by Masanori Sasaji / Words Yuho Iwasato)

C3. In The Beginning / Fumio Miyashita
(Music by Fumio Miyashita)

D1. The Mirage / Yoshio Suzuki
(Music by Yoshio Suzuki)

D2. Watashino Basu / Yumi Murata
(Music by Akiko Yano)

D3. Itohoni / Chakra
(Music by Bun Itakura / Words by Bun Itakura / Mishio Ogawa)

Oneohtrix Point Never - ele-king

 昨年は映画『Good Time』の劇伴坂本龍一のリミックスを手がけ、最近ではデヴィッド・バーンの新作に参加したことでも話題となったOPNが、5月にNYで開催されるライヴのトレイラー映像を公開しました。これ、新曲ですよね。しかもチェンバロ? 曲調もバロック風です。この急転回はいったい何を意味するのでしょう。そういう趣向のライヴなのか、それとも……。

ONEOHTRIX POINT NEVER
5月にニューヨークで行われる大規模コンサートの
トレーラー映像を新曲と共に公開!

昨年、映画『グッド・タイム』でカンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞したことも記憶に新しいワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが、【Red Bull Music Festival New York】の一環として5月22日と24日にニューヨークで行われる最新ライブ「MYRIAD」のトレーラー映像を公開した。ダニエル・ロパティン(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)自らディレクションを行い、その唯一無二の世界観が垣間見られる2分間の映像には、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー名義の新曲も使用されている。

Oneohtrix Point Never - MYRIAD
https://opn.lnk.to/MyriadNYC

Video by Daniel Swan and David Rudnick
Directed by Oneohtrix Point Never
Animation by Daniel Swan
Produced by Eliza Ryan
Videography by Jay Sansone
Additional Animation by Nate Boyce
Thrash Rat™ and KINGRAT™ characters by Nate Boyce and Oneohtrix Point Never
Engravings by Francois Desprez, from Les Songes Drolatiques de Pantagruel (1565)
Additional Typography by David Rudnick

本公演が開催されるパークアベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)は、以前は米軍の軍事施設だった場所で、ライブが行われるウェイド・トンプソン・ドリル・ホール(Wade Thompson Drill Hall)は航空機の格納庫のような巨大なスペースである。当日にはスペシャルゲストやコラボレーターも登場し、ここでしか体験することのできない特別なライブ・パフォーマンスが披露されるという。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー|Oneohtrix Point Never

前衛的な実験音楽から現代音楽、アート、映画の世界にもその名を轟かせ、2017年にはカンヌ映画祭にて最優秀サウンドトラック賞を受賞した現代を代表する革新的音楽家の一人。『Replica』(2011)、『R Plus Seven』(2013)、『Garden of Delete』(2015)と立て続けにその年を代表する作品を世に送り出してきただけでなく、ブライアン・イーノも参加したデヴィッド・バーン最新作『American Utopia』にプロデューサーの一人として名を連ね、FKAツイッグスやギー・ポップ、アノーニらともコラボレート。その他ナイン・インチ・ネイルズや坂本龍一のリミックスも手がけている。さらにソフィア・コッポラ監督映画『ブリングリング』やジョシュ&ベニー・サフディ監督映画『グッド・タイム』で音楽を手がけ、『グッド・タイム』ではカンヌ・サウンドトラック賞を受賞した。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD:ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価:¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatink: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=4002
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time... Raw

cat no.: BRC-561
release date: 2017/11/03 FRI ON SALE
国内限定盤CD:ジョシュ・サフディによるライナーノーツ
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとジョシュ・サフディによるスペシャル対談封入
定価:¥2,000+税

【ご購入はこちら】
beatink: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9186
amazon: https://amzn.asia/gxW5H63
tower records: https://tower.jp/item/4619899/Good-Time----Raw
hmv: https://www.hmv.co.jp/artist_Oneohtrix-Point-Never_000000000424647/item_Good-Time-Raw_8282459

Alva Noto & Ryuichi Sakamoto - ele-king

 アルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)と坂本龍一によるコラボレーションの最新作である。リリースはカールステン・ニコライが運営する〈noton〉から。
 二人が手掛けた『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品)の映画音楽から、彼らの音楽/音響は、どのような「響き」へと至ったのか。もしくは何が継続しているのか。それを知る上で非常に興味深いアルバムであった。
 彼らは音の美や透明性、その自律性にはこだわりがあるが、しかし「音楽」を固定的な形式性としても考えていない。それゆえ「サウンド・アート」的な作品を、驚きに満ちた「音楽」として、まずもって捉えているのだ。音楽は自由であり、その美意識は結晶である。

 本作『グラス』はアメリカのモダニズム建築を追求した建築家フィリップ・ジョンソン(1906年7月8日~2005年1月25日)による20世紀の名建築「グラスハウス」での二人の演奏を記録したアルバムである。演奏は、2016年にジョンソンの生誕110周年、およびグラスハウスの一般公開10期目を記念して公開された草間弥生のインスタレーション《Dots Obsession - Alive, Seeking For Eternal Hope》展示時のオープニング・パーティで披露されたものだ(ちなみに客席にはビョークがいたらしい!)。本アルバムは36分59秒に渡ってこの日の音響音楽を収録している。

 「グラスハウス」はコネチカット州にある1949年に建てられた四方をガラスで囲まれたミニマムなデザインの個人邸宅で、ジョンソンのパートナーであったアート・コレクターであるデイヴィッド・ホイットニーと自身のために設計・建築されたもののひとつだ。
 坂本龍一とカールステン・ニコライは、この「グラスハウス」の特質を存分に利用した方法論で本作のサウンドを産みだした。コンタクト・マイクを「グラスハウス」のガラスに付けて坂本龍一はゴムのマレットでガラスの表面を擦る。いわば「グラスハウス」全体を楽器のように音に鳴らしている。「グラスハウス」という環境・建築・空間それ自体が音響発声装置なのだ。
 むろん、彼らのまわりにはラップトップ、シンセサイザー、ミキサー、シンギング・グラス・ボウル、クロテイルなどの多くの楽器(音響生成のためのモノたち)が置かれている。坂本はキーボードを鳴らしつつ、シンギング・グラス・ボウルを擦り、微かな音を発生している。カールステンはラップトップに向かうと同時にクロテイルを弓で演奏する。それら「モノ」たちが音を発する様は、美しく、儚い。当日の演奏の模様はインターネット上で映像作品としても発表されているが、それを観ると「演奏者二人も含めたインスタレーション」のように思えるし、音響彫刻のようにも見えてくるから不思議だ(演奏は100%即興だという)。

 坂本は、2017年にリリースした新作『async』において「非同期」というコンセプトを聴き手に提示し、それに伴うインスタレーションを「設置音楽」と名付けた。「音響」ではなく、「音楽」なのだ。となれば2016年に披露された本アルバムの演奏もまた「非同期」であり、一種の「設置音楽」ではないかと想像してしまう。
 本作においても重要な点は、サウンド・アート的であると同時に「音楽」である点に思えてならない(ノイズ/ミュージック)。音響は、かすかなノイズや具体音が鳴り響きつつも、それらは「音楽」として緩やかに、大きな流れの線を描く。演奏の後半においては「旋律の前兆」のような響きも鳴り響く。ここにおいてノイズとミュージックが、それぞれの領域に清冽な空気のようにミックスされていく。

 それらすべてを包括するかたちで「グラスハウス」という場所が機能しているように思えた。音楽と場所。音響と空間。現代のようにインターネット空間において無数の音楽に解き放たれている時代だからこそ、ある限定された場所/空間における音楽の重要性や影響もまた大きな意味を持ち始めているのではないか。むろん、それはどこでも良いというわけではなく、コンセプトへの共振が重要に思える。
 その意味で「グラスハウス」=フィリップ・ジョンソンの「新しいものへの進化」、「モダニズムの追求」、「普遍性との共生」のコンセプト(概念)への共振は重要ではないか。個と社会、モダンとポストモダン、人工と自然。その両方を考えるということ。
 なぜなら坂本龍一やカールステン・ニコライもまたそのような20世紀以降のモダニズムの問題を音楽やテクノロジーの側面から追求してきたアーティストだからだ。となれば彼らが「グラスハウス」という「場所」にインスピレーションを受けて、素晴らしい音響を生成し、新しく普遍的な「音楽」の演奏を行ったことは必然だったのかもしれない。
 本作はこの二人の「音楽家」としての本質を知る上でとても重要な記録録音/音響音楽ではなかろうか。耽美的で「美しい」音響であっても、湿ったナルシシズムとはいっさい無縁だ。まさにガラスのように「透明な音楽」である。

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