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interview with Kode9

interview with Kode9

コード9来日特別インタヴュー

取材・文:小林拓音    通訳:原口美穂 photo by David Levene   Feb 01,2018 UP

Various Artists
Diggin In The Carts

Hyperdub / ビート

Amazon Tower HMV iTunes

 2004年に設立された〈ハイパーダブ〉はそれ以降、現代のエレクトロニック・ミュージックにおける最重要レーベルとしての地位を堅守し続けてきた。昨年に限定して振り返ってみても、アイコニカやローレル・ヘイローの意欲的なアルバム、クラインおよびリー・ギャンブルという尖鋭的な音楽家との契約、さらには日本のゲーム・ミュージックに特化したコンピレイション『Diggin In The Carts』のリリースと、興味深い動きが続いている。
 その〈ハイパーダブ〉の設立者がコード9ことスティーヴ・グッドマンである。去る11月、LIQUIDROOMにて催された『DITC』のイベントのために来日していた彼は、そのコンピレイションが持つコンセプトについて、昨年の〈ハイパーダブ〉の動きや最近注目している音楽について、そして自身が序文を執筆しているとある重要な本について、われわれの質問に対し真摯に応答してくれた。レーベル・オウナーであると同時にアーティストでもあり、さらには思索する者でもある彼の言葉を以下にお届けする。

僕がいいなと思った音楽のゲームは、じつはものすごくつまらなかったりもしたんだ(笑)。でも音自体は良かったので、それはぜんぶ選んだね。

今回日本のゲーム・ミュージックに特化したコンピレイションがリリースされましたが、〈ハイパーダブ〉はこれまでもクアルタ330のようなチップ・チューンのアーティストを送り出しています。以前から日本の音楽には関心が高かったのでしょうか?

スティーヴ・グッドマン(Steve Goodman、以下SG):〈ハイパーダブ〉はもともと、2005~06年くらいまではダブステップのレーベルだった。でもそういったサウンドにちょっと飽きを感じてしまって、もっと自分の音楽をカラフルなものにしたいと思っていたんだ。そんなときに友人がクアルタ330のリミックスを送ってくれて、それが気に入ったんだよね。それと、自分の音楽としてもう少しキラキラしたサウンドを作るために、ヴィデオ・ゲームの要素を取り入れるようになった。アイコニカゾンビージョーカーダークスターテラー・デンジャーたちもゲームの音楽から影響を受けているアーティストだった。テクスチャーを変えるためにゲーム音楽に興味を持ち始めたのが2005、06年で、その時代にレーベルに入ってきたものを今回また取り戻してリリースした、という感じだね。

日本のゲーム・ミュージックには幼い頃から触れてきたのですか?

SG:少しは遊んでいたね。でもそれが日本のものという意識はあまりなかった。自分がプレイしていたものが日本のゲームかどうかもわからなかった。ゲームはやっていたとはいえゲーマーではなかったし、今回のコンピレイションもけっして自分がゲームをしていた頃を懐かしむようなノスタルジックな作品ではないんだ。
〈ハイパーダブ〉というレーベルの目線で言うと、2010年に日本の80年代のエレクトロニック・ミュージックに注目するようになった。YMOや、YMOのメンバーそれぞれのソロ作品などから影響を受けていたから、(ゲーム音楽を)ゲームというよりもエレクトロニック・ミュージックとして見ているんだよね。伝統音楽とエレクトロニックのブレンドのようなところに魅力を感じている。5、6年前にスペンサーD(Spencer Doran)の『Fairlights, Mallets and Bamboo: Fourth-World Japan, Years 1980-1986』というDJミックスを聴いたんだけど、それでより興味を持つようになって、今回のコンピもそういう内容になっている。そのミックスにはマライア、坂本龍一や細野晴臣、高田みどり、ロジック・システム、清水靖晃、あとは越美晴なんかが入っていて、そこから日本の80年代の音楽をいろいろと学んだ。もちろんそういう音楽とゲーム・ミュージックは違うものではあるけれど、チップというものを使っている点は共通しているし、おもしろい時代の音楽だと思う。

先日監修者のニック・ドワイヤーさんに取材したのですが、『DITC』はゲーム・ミュージックのなかでもサウンドとしておもしろいものを選んでいると言っていました。つまり今回のコンピは、ゲーム音楽のファンよりもふだんから〈ハイパーダブ〉の音楽を聴いているような層に向けて、「ゲーム・ミュージックにもおもしろいものがあるんだよ」ということを伝える、というような意図で制作されたのでしょうか?

SG:その両方と言えるね。僕もゲームは好きだけれど、そこまでゲーマーではない。そういう両方の人たちが楽しめる作品になっていると思う。ニックがすごく深いリサーチをして、フィルターをかけた上で何百もの曲を送ってくれたんだけど、それまで自分が聴いたことのない音楽ばかりだった。それらのゲームに関して僕はいっさい思い入れがないんだ。ただたんに曲が良かったから選んだ。ゲームのプレイヤーがどうのというよりも、音としてベストだと思ったものを使った。やっぱり人気のあったゲームって、先にゲームがあってそれに合わせて音楽が作られているわけで、(音楽は)優先順位としては二番目のものだったと思うんだよ。それもあってか、人気のゲームのBGMにはあまりいいと思えるものがなかった。コマーシャルっぽいものもあるだろうし。だから、僕がいいなと思った音楽のゲームは、じつはものすごくつまらなかったりもしたんだ(笑)。でも音自体は良かったので、それはぜんぶ選んだね。

ヒップホップやクラシック音楽にはなりえない、ゲーム・ミュージックとしてだけ存在していたものを捉えるのが今回の目的だった。

先ほど「ノスタルジックな作品ではない」と仰っていましたが、送り手と受け手とのあいだである程度ギャップは生じると思うんですね。このコンピに先駆けて公開されたドキュメンタリーにはフライング・ロータスファティマ・アル・ケイディリらが出演していて、どちらかというといわゆる音楽ファンに向けて作られているように感じました。ですが、日本で今回のコンピを手にとってくれる人の多くは、懐かしさを求めているのではないかという気もします。そういう方たちがこのコンピをきっかけに、たとえば他の〈ハイパーダブ〉の作品を聴くようになってほしいと思いますか?

SG:それはすごく難しいところで、もちろんゲーム好きの人たちにも聴いてほしいとは思うし、他方でエレクトロニックな世界ともオーヴァーラップしているんだけれども、やっぱり同時に違う世界でもあるんだよね。ただ、いまはテクノロジーの進化でよりオーヴァーラップしているかもしれない。ニックが言っていたように、僕が捉えたかったのはメモリーやチップという制限のある時代のゲーム・ミュージックなんだ。質問への答えにはなっていないかもしれないけど、ゲームがそれ自身だけのゾーンのなかに存在していた時代のゲーム・ミュージックというものを捉えたかった。ヒップホップやクラシック音楽にはなりえない、ゲーム・ミュージックとしてだけ存在していたものを捉えるのが今回の目的だった。

今回のコンピには80年代後期から90年代中期までの音源が収められていますが、それはデトロイト・テクノやアシッド・ハウス、レイヴ・カルチャーやジャングルが出てきた時期と重なります。その時代に日本でこのような音楽が作られていたこと、その同時代性についてはどう思いますか?

SG:僕にとってデトロイト・テクノはデトロイトから来ているものだし、同時期に流行っていたアシッド・ハウスはシカゴから、ジャングルはロンドンから出てきたものだよね。日本ではそれがチップ・ミュージックだったということだね。そうやってそれぞれの場所から違うエレクトロニック・ミュージックが流行っていったんだと思う。それがお互いに影響し合っていた、いい時代だったと思う。

ゲーム・ミュージックには「音がメインではない、音が主張しすぎてはいけない」という側面があると思うのですが、それもある意味では8ビットや16ビットといったテクノロジーの問題と同じように制約と捉えることもできます。そういう側面についてはどう思いますか?

SG:音楽が第二に来るというのは映画音楽と同じだと思う。やっぱりまず映像があっての音楽だし、そのぶん予算も削られるし、音楽はいつも最後のギリギリのところで付けられるから、そこは共通していると思う。テクノロジーに限界があることと、音楽が第二に来ることは繋がっていると思うんだよね。音楽が第二だったからこそ、予算があるにもかかわらずそれが使われない、だから制限が生まれたんだと思う。お金をかければ音楽のためにすごくいい機材を使うことだってできたはずなんだ。でもヴィジュアルが最初にあるからこそ、音楽が第二のものになってしまった。だからこそ制作に使われるものに制限ができた。そのことによって逆にユニークなものが偶然生まれたという点がおもしろいと思うし、僕たちはそのユニークさに惹かれたんだ。

取材・文:小林拓音(2018年2月01日)

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