ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  2. Aphex Twin ──エイフェックス・ツイン最新公演のライヴ・ストリーミングが決定 (news)
  3. interview with (Sandy) Alex G 塩と砂糖の誘惑 (interviews)
  4. Leo Svirsky - River Without Banks (review)
  5. Squarepusher, Oneohtrix Point Never & Bibio ──〈Warp〉30周年イベントが開催決定! スクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが一挙来日 (news)
  6. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  7. イギリスでは高校生に授業参観でレイヴの歴史を教えています (news)
  8. interview with For Tracy Hyde シティ・ポップ・リヴァイヴァルから「シティ」を奪還する (interviews)
  9. Lafawndah - Ancestor Boy (review)
  10. For Tracy Hyde - New Young City (review)
  11. BJ The Chicago Kid - 1123 (review)
  12. interview with Kindness 音楽である必要すらないんです (interviews)
  13. BLACK SMOKER × Goethe-Institut Tokyo ──ベルリンの壁崩壊30周年を機に、総合舞台芸術作品『BLACK OPERA』が開催 (news)
  14. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  15. interview with Yosuke Yamashita 誰にでも開かれた過激 (interviews)
  16. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第8回 電車の中で寝転がる人、ボルタンスキーの神話 ――2019年8月11日に見たものの全て (columns)
  17. Philip Bailey - Love Will Find A Way (review)
  18. Flying Lotus ──フライング・ロータスの単独来日公演が決定 (news)
  19. interview with The Comet Is Coming ボリス・ジョンソンの名を言うだけで口が腐る (interviews)
  20. Columns ララージ来日直前企画 ──ニューエイジの巨匠、その歩みを振り返る (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Kode9- DJ-Kicks

Kode9

Kode9

DJ-Kicks

Studio K7/Ultra Vibe

http://www.amazon.co.jp/dp/B003NF6XT6?tag=buyitonamazonfomdommune-22&linkCode=as1&creative=6339 Amazon

Kode9

Kode9

Memories of the Future

Hyperdub/Ultra Vibe

iTunes

E王

野田 努   Jun 07,2010 UP

このエントリーをはてなブックマークに追加

「このアルバムの秘密はリンスFMを聴かずにフーコーとドゥルーズを読んでいる人たちだけに明らかにされるのだろうか?」――コード9の『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』に関して、『ピッチフォーク』はなかば皮肉っぽくこう書いている。『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』は簡単に言えばリントン・クウェシ・ジョンソンのポエトリー・リーディングのダブステップ・ヴァージョンで、アルバムのなかでダブポエットを披露しているスペースエイプは、コード9のアカデミシャン仲間でもある。とうてい僕の英語力では聴き取れないので、「何を言ってるんですか」と以前コード9に取材したときに訊いたら、それなりに哲学的な内容を喋っているらしい。もっともそれは「フーコーとドゥルーズ」というよりも、コード9によればポール・ギルロイに触発されているとのことだったが......。

 しかしそれでも周知のように、2006年の10月にリリースされた『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』は素晴らしい評価を得た。何よりもブリアルのあの偉大なデビュー・アルバムに続いて同じレーベルからリリースされるという、決して有利な順番とは言えない状況のなかで、コード9はその逆境を跳ね返し、自分のヴィジョンをしっかりと見せつけたと言える。まあ、そもそもコード9はブリアルのデビュー・アルバムの次に自分のアルバムのリリースを決めたレーベルの主宰者であり、そしてコード9こそブリアルの師なのである(ブリアルはコード9の文章の読者だった)。

 そしてブリアルのデビュー・アルバムが都市の腐敗の"悲しみ"を表しいているのに対して、コード9のそれには都市の貧困や抑圧、もしくは監視への"怒り"がある。彼のリントン・クウェシ・ジョンソンのダブポエトリーの借用は、決して飾りではないのだ。彼は......「テロリズム・パラノイア、内部コミュニティの争い、インナーシティの抑圧、それら恐怖のテーマを文字通りのジャマイカ感覚において企てるのである」(『ピッチフォーク』)

 コード9と〈ハイパーダブ〉において重要なのは、「フーコーとドゥルーズ」ではない。その"ジャマイカ感覚"である。彼は『ガーディアン』の取材で、ジャマイカのサウンドシステム文化のUKにおけるミューテーション(突然変異)が〈ハイパーダブ〉のコンセプトであると話している。それは......「ダブからレゲエ、ジャングルを通じてグライムやダブステップあるいはファンキーまで、音楽の変化と進化がどのようにおこるのかという考え方でもある」

 この度、コード9にとって2枚目となるミックスCDが"DJ-Kicks"のシリーズとしてリリースされる。"ダブステップ・オールスターズ"の"vol.3"として発表された最初のミックスCDではスペースエイプのダブポエットをフィーチャーしたように、コード9は『メモリーズ・オブ・ザ・フューチャー』と同じように暗闇を凝視している、と言える。が、4年ぶりの"DJ-Kicks"では、彼はファンキー(スティッキーやムジャヴァ)を挟み込み、ブロークンビーツ(マッドスリンキー)を混ぜ、ポスト・ダブステップ(ラマダンマン)を取り入れ、グライム(テラー・デインジャー)をかぶせる。この1年ほどのダブステップの新しい展開を楽しんでいるようである。ヴァリエーション豊かになった〈ハイパーダブ〉のカタログ(アイコニカ、クーリー・G、あるいはゾンビー等々)を披露しながら、あるいはオリジナル・ダブステップ(デジタル・ミスティックズ)の古びない魅力を証明する。緊張感という点では4年前の"vol.3"だろうけれど、「ジャマイカのサウンドシステム文化のUKにおけるミューテーション」という点でいえばこちらは素直にその音を楽しめる内容でもある。ちなみに最後のトラックは、ローファーの〈スワンプ81〉から今年リリースされたザ・バグの"ラン"。

野田 努