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野田 努   Apr 03,2013 UP
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E王

 インダストリアルとゴシックは、時代の変節点に起きたきしみという意味で同じカードの裏表だ。19世紀末、ロンドンの街にデパートが誕生し、オスカー・ワイルドが扇風機の音に心酔した時代に、ネオゴシックの画家は丘の上の古城を、闇夜を走る稲妻を、荒れ狂う海原を描いた。ダークなタッチに表出した近代的合理に対する違和感は、他方では、田園を賞揚したロマン主義とも、これまた同じカードの裏表と言える。で、いったい何枚のカードを用意するればいい。ひとつ言えるのは、時代の変節的を迎えている今日にも、似たようなことが起きていること。デジタル革命があり、だからインダストリアルとゴシック(ないしはアンビエント)は顕在化している。それらが、激動に対して、ある種のマゾヒスティックな反応を見せていると言えるなら、変化に対してサディスティックに反応しているのが、そう、シカゴのフットワーク/ジュークだと言えよう。

 DJラシャドは、この界隈では、少なく見積もっても2年前から騒がれていた逸材である。昨年も、ディスタルとの「Stuck Up Money」や配信のみの『Teklife Volume 1』、アジソン・グルーヴのリミックスやトラックスマンのアルバムへの参加など、何気に彼への期待を煽るような動きをしている。抜け目のないロンドンの〈ハイパーダブ〉からリリースされた4曲入りの2枚組12インチ「ローリン」は、そして、期待を裏切らないどころか、今年のベスト・トラック候補だ。"ローリン"が素晴らし過ぎる。
 ジェフ・ミルズは、いかにもポストモダンな情熱で、いまさら歴史を知る必要はないと言い張るが、どうだろう。"ローリン"からも、あるいは昨年の『ダ・マインド・オブ・トラックスマン』からも、そしてトラックスマンのDJプレイからも、歴史(シカゴ・ハウスとエレクロ)がビシビシ伝わってくる。鼓膜に新鮮な、このキックドラムの乱れ打ちが、ここ数年で生まれたものではないことを、とくにトラックスマンの音楽は主張しているように思う。ずっと続いているものであり、これからも続くものとして。"ローリン"は、DJダイアモンドよりもトラックスマンの側に位置づけられる。つまり、こいつは、切り刻まれ、さらにまた切り刻まれながら、しかし、ずば抜けてソウルフルなのだ。
 そして、"レット・イット・ゴー"、これはジャングルだ。90年代半ばの4ヒーローを思わせる色気と凄みがある。魂と攻撃のバランスが絶妙過ぎる。DJメニーとの共作"ドラムス・プリーズ"、これは壮絶なジャズだ。暴れまくるドラミングの叙情詩である。カール・クレイグの"マイ・マシーン"を、骨董品に追いやるほどの勢いだ。DJスピンとの"ブロークン・ハーテッド"、これはもう、そのままスティーヴィー・ワンダーのフットワーク・ヴァージョンである。ソウル・ソングの切ない響きの背後では、バタバタとせっかちな、紛れもないシカゴの若いリズムがファンキーに鳴り響いている。
 この先、ブラック・ミュージックとしての洗練が待っているのだろうか。しかし大切なのは、いつだって現在だ。たったいま、この瞬間、"ローリン"の輝きは圧倒的である。

野田 努