「CE」と一致するもの

Frank Ocean × KOHH - ele-king

 フランク・オーシャンの周囲が騒がしい。

 8月18日、唐突に『Endless』と題されたヴィジュアル・アルバムが Apple Music で独占公開された。その後、新曲 "Nikes" のMVが公開され、20日にはこれまで何度も延期されていた4年ぶりとなるアルバム『Blonde』がリリースされた。それと同時に、LA、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンの4都市では「Boys Don't Cry」という名のポップアップ・ショップが展開され、そこでは『Boys Don't Cry』と題されたジン(冊子)が無料で配布された。そのジンには写真や詩が掲載されているほか、新アルバム『Blonde』のフィジカル・ヴァージョンとなるCDも同梱されている。オンライン版『Blonde』には17曲が収録されているのに対しCD版『Blonde』は全12曲で構成されているが、後者にはオンライン版には収録されていない "Mitsubishi Sony" および "Easy" の2曲が収録されていたり、曲順が大幅に異なっていたりと、両者の間には目立った違いがある。なかでも注目すべきは、CD版では "Nikes" がオンライン版とは異なるエクステンデッド・ヴァージョンで収録されていることだろう。そのCD版 "Nikes" には、なんと、あのKOHHが参加しているのである。彼は同曲の終盤で日本語のラップを披露している。

 『Blonde』にはビヨンセやケンドリック・ラマー、アンドレ3000やジェイムス・ブレイクなどが客演しており、それだけでも十分豪華な面子なのだけれど、アルバムのコントリビューター(貢献者)の欄には、タイラー・ザ・クリエイターやファレル・ウィリアムスやカニエ・ウエスト、アルカやジェイミー・XX、エリオット・スミスやジョニー・グリーンウッドやリック・ルービン、はたまたデヴィッド・ボウイやブライアン・イーノ、ビートルズやギャング・オヴ・フォーの名前まで記載されている。それらビッグネームの中に KOHH と Loota の名前が侵入していることは、日本の音楽シーンにとって大事件と言っていいだろう。特に KOHH の参加は『FADER』誌でも大々的に取り上げられ、海外でも大きな話題となっている。すでに世界的な注目を集めていた KOHH だが、今回のフランク・オーシャンのフックアップによって、海外での彼の活躍がその加速度を増すのは必至だろう。現状、CD版の『Blonde』を入手するのは困難であるが(ネット・オークションではすでに10万円もの値がついているそうだ)、もしかしたら今後別の形でオフィシャルにリリースされる可能性もあるかもしれない……と思いたい。

 フランク・オーシャンとKOHH──しばらくかれらから目が離せなさそうだ。

Ryugo Ishida - ele-king

 『サタデー・ナイト・フィーバー』は普遍的な青春の物語……だった。かつては。変わりばえしない毎日への鬱憤を毎週末のディスコでのばか騒ぎで発散するジョン・トラボルタ。ナイン・トゥ・ファイヴの退屈な仕事をこなすだけの決まりきった人生のレール。それにあきたらない若者の胸のうずきと、やがて訪れる青春の終わり。そういやアラン・シリトーの『土曜の夜と日曜の朝』ってのもあった。なんにせよそれは、戦後の経済発展を成し遂げた国々に共通の成熟のストーリーだった。
 けれど、世界的な規模でミドル・クラスが没落し、ワーキング・クラスがのきなみアンダークラスへと地盤沈下していく現代においては、ナイン・トゥ・ファイヴの安定なんてものはごくごくひと握りの人間にしか享受できない特権になりつつある。落ち着くべき人生のレールはもはや存在しない。朝も夜もなく、曜日の感覚もない。未来っていったってただの言葉にすぎなくて、5年先のことさえまるで現実感がない。……そんな感覚はこの平成日本でも着実に浸透中だ。ポストモダン? 後期近代? そんなめんどうな言葉は必要ない。これはいまこの社会のあちこちで経験されているリアリティだ。

 『EverydayIsFlyday』。エヴリデイ・イズ・フライデイ。それが自主流通のみ、いまのところ限定で1000枚しかプレスされていないRYUGO ISHIDAの初フィジカルCDのタイトルだ。手もとにあるCDのジャケットは大友克洋『AKIRA』のパロディで、廃墟の玉座に座るRYUGO ISHIDAがぺろりと舌を出している。現在23歳の彼は茨城県土浦を拠点とするアーティストだ。2014年からDUDE名義で『1993』と題したミックス・テープEP三部作をリリースし、このアルバムでのデビューを機に改名した。このタイトルはもともと、アトランタのトラップ・シーンの現場を追ったVICEのドキュメンタリー『noisey ATLANTA』に登場する「ここじゃ毎日が金曜日だぜ(Everyday is Friday)」というフレーズをサンプリングし、米スラング「FLY」のスペルを組みこんだものだ。全世界に伝播するアメリカ南部産のトラップの熱波が、東京の北方に広がる関東平野のなかほど、霞ヶ浦のほとりに飛び火した結果、この傑作が誕生したことになる。

 そう、このアルバムが素晴らしいのだ。まるっきり中学生のようなストレートなリリックと、知性をまったく拒否したジャンクなアティテュード、というラップのスタイル自体は、震災後のトラップの本格流入以降にUSのフロウを意欲的に取り入れたラッパーたちに共通する。しかし目を引くのは、絶妙なバランスで最先端のトラップに落とし込まれた北関東独特の土着の空気感だ。くわえてとくに秀逸なのが、アイラヴマコーネン以降とでも呼ぶべきか、LSDの影響で出現したとされるアトランタのメロディアスな潮流、最近ではリル・ヨッティの『リル・ボート』などに顕著な、サイケデリックな歌声フロウの大胆な導入。サウンドもトラップをベースとしつつも、ダンサブルな4つ打ちやラフなブレイク・ビートが随所に登場し、トベればなんでもありのジャンクな多幸感を盛り上げている。

 サタデー・ナイト・フィーバーというよりはエヴリデイ・イズ・フライデイ。それが現在のユースのリアリティ……なのかはわからない。けれどその感覚は、EDM以降の、派手な電子音と中毒性のあるビートで理屈ぬきにハイになりたい、という刹那的な欲望ともどこかで同期しているはずだ。あるいは、危険な脱法ハーブや異常にアルコール度数の高い安価な酒の急速な普及以降の感覚とも。ともかくこれは、ミドル・クラスやワーキング・クラスの墓場で楽しげに踊るゾンビたちのダンス・ミュージックだ。琥珀色のクエルボ・ゴールド、紫のリーン・ドリンク、深紅のピル、チョコレート色のマリファナが混じり合って描く、極彩色のアラビアン・ナイト。まるで悪夢のような世界……だがここには絶望も怒りもない。ぶっ壊れていく社会を嘆き悲しむ連中をよそに、彼らは瓦礫をドラムのように打ち鳴らして笑っている。

 始まりはフィルターをかけられながらフェードインしてくる“KIDS”。iPhoneのデフォルト着信音っぽいシンセがぐるぐると回り、サンプルされたソウル・シンガーのうめき声がエコーし、マシンのスネアの連打が鳴り響くと、間髪入れずに極太のベースがドロップされる。初っぱなからすでにベロベロのRYUGO ISHIDAはマリファナのブラントに着火しながらひとこと。「幻覚見えるまで吸うぜ、キッズ」。続く“夜が明けるまで”は盟友のLUNV LOYALを客演に迎え、卓越した歌声とスキルフルなラップのコンビネーションを披露する。陶酔を誘うベースライン、快感的なハイハット、ゲームからサンプルしたようなチャチな銃声。序盤はRYUGOのスキャット的な高音フロウとLUNV LOYALのスムースで安定した低音フロウのコントラストを聴かせ、しかし両者のラップはやがて自由自在に交錯しながら見事に溶けあっていく。

 リル・ヨッティ的なサイケデリック・フロウ解釈として秀逸なのは、なんといっても3曲目の“FLYDAY”。エヴリデイ・イズ・フライデイ、でも本当の金曜日の夜だけはやはり特別だ、という週末のなんでもない高揚感が、美しいファルセット・ヴォイスで珠玉のポップ・ソングに仕上げられる。トラップ以降のフロウの多様化の流れの中では、ラッパーの歌唱力とメロディ・センスがひとつの試金石となるけれど、その点でRYUGOのポテンシャルは抜きん出ている。その後も、テキーラ・ショットの連発によるオーヴァードーズを描く“ONE SHOT”、墓場でパーティするゾンビのトラップ・ホラー・コア“ZONBIE WALK”、弱冠19歳のフィメール・ラッパーELLE TERESAを迎えた“PARTYGANG2”など、手を替え品を替えのパーティ・チューンの連続だ。赤やピンク、ブルーに染めた髪の毛、顔や首まで刻んだタトゥー、ミラーボールが照らすシャンパンに濡れた肌。自称はPARTY PEOPLEじゃなくPARTY GANG。発音は短くパリギャン。記憶はゲロと一緒にトイレに流して、英語まじりの奇声をあげながら毎夜のパーティに明け暮れる。

 パーティ感一色だったアルバムのギアが切り替わるのは、ミーゴスの“YRN(Young Rich Nixxas)”のパロディ的なタイトルの“YRB(Young Rich Boy)”。ヘロヘロのシンセの音色にスカスカなトラップ・ビート。単調なフロウで繰り返されるフレーズは「いま貧乏でもヤング・リッチ・ボーイ/この曲で歌うこと実現する/あと何年後かにはヤング・リッチ・ボーイ」。思わず正気を疑うほどのジャンクさだ。しかしアルバムをここまで聴けば、このぶっ壊れたアティテュードが確信犯的にデザインされたものであることは明白だ。フォトショップで適当にカット・アンド・ペーストしたような素材が飛び交うミュージック・ヴィデオも、iPhoneのエミュレータでリヴァイヴァルされたファミコン感というか、サウス・パーク的なチープさ。グッチのベルトをはずすビッチ、それにバルマンの新作デニムとルブタンの靴。夢はドクター・ドレーと曲を作り、ダウンタウンみたいになること。ラスト近くに鳴らされる最高にラフなブレイク・ビートが疾走感のある4つ打ちに変化すると、チープな夢が壮大なスケールまでドライヴしていく。

 この確信犯のスタイルの由来を知るうえで興味深いのが、北関東特有のヤンキー・カルチャーの残滓が炸裂する“FIFTEEN”。これはかなり奇妙な曲だ。言ってしまえばバック・イン・ザ・デイものというか、過去の記憶を辿るストーリー・テリングものなのだけれど、ここにはそうしたナラティヴに必要なはずの「あの頃は……」というようなイントロダクションが存在しない。ほぼ10年前の記憶を語っているはずのリリックが突然「俺はRYUGO/生意気中坊/齢は15/聞かない忠告」と始まるせいで、普通に聴けばまるで15歳の中学生が歌っているように錯覚する。ラップもいわゆるトラップ以降の変声フロウではなく、堅実なライミングによるオーセンティックなスタイルだし、サウンドもトラップ的なハイハットの連打にくわえて、90sのウエスト・コーストを彷彿とさせるラフな感触のドラムが印象的だ。さらには改造学ランの中学生が登場するレトロなヴィデオが、わざとVHSの粗い解像度を再現しているにいたっては……。つまり、リリック、ラップ、サウンド、映像のすべてが渾然一体となって、「過ぎ去ろうとしない過去」というコンセプトを鮮やかに表現しているわけだ。15の夜に始まったRYUGOの悪夢はいまだ終わっていない。小学二年で手紙で知った実父の死の記憶、ママには内緒でのめり込むエリミンにコデイン。いくら泣いても闇夜は明けず、届かない夢を見ている放課後、狂った時計の針が回り出す……。

 クライマックスはラストの2曲。吐瀉物まみれのワン・ナイト・スタンドを不思議な爽やかさで歌いあげる“キスはゲロの味”、そしてミックス・テープから再録された“お金持ちになりてえ”。この身も蓋もない2曲のタイトルこそ、USの影響下で形成された日本のトラップのメンタリティを雄弁に物語る。吐瀉物というロマンティシズムとはほど遠いモティーフによって刹那的なラヴ・ストーリーを描くこと。金銭へのストレートな欲望を宗教的なストイシズムさえ漂わせながら口にすること。この点で現在の日本のトラップは、既存のラップのクリシェを破壊する、新たなリアリティ・ラップとして噴出している。くわえて『CONCREET GREEN』に収録された曲の別ヴァージョンである“やりたいことやる REMIX”の、いわゆる自己啓発的なスピリチュアリティ。日本のトラップの画期となったKOHHが、「引き寄せの法則」で有名なロンダ・バーンの『ザ・シークレット』という自己啓発本に強い影響をうけているのはよく知られたことだ。チャンス・ザ・ラッパーとケンドリック・ラマーがそのバックボーンにクリスチャニティを共有しているように、大手古本屋のワゴンセールで数百円でたたき売られているベストセラー由来の自己暗示は、家族の崩壊とコミュニティの空洞化にさらされた日本のユースにとっての、切実なサヴァイヴァルのツールなのかもしれない。まあ、その結果として描かれる希望が、大理石の豪邸で仲間と一緒にマリファナとコカインでハウス・パーティってところには、ああなんてことだ、って思うけれど、絶望感にひざまずいて生きるよりは、きっとずっとマシなんだ。

 東京の北方の地方都市での南部産トラップの力強い隆盛をうけて、ひとつ指摘しておきたいことがある。それは、ひと昔前まで日本語に翻訳されたアメリカ文学や映画に出てくる南部の黒人は東北地方の方言を喋っていた、ということだ。福島生まれのアメリカ文学者、青山南によれば、それは実在の東北弁ではなく、「THEY DID THESE THINGS」を「DEY DONE DEM THINGS」と喋る呪文的な南部英語のなまりを翻訳するための苦肉の策としての、デタラメな東北弁だったそうだ。しかし、そこには「先進的な東京」と「遅れた地方」というあからさまな文化的ヒエラルキーの構図が凝縮されているのはもちろんのこと、その抑圧的な図式はそのまま、当時のアメリカ南部における白人と黒人という人種的ヒエラルキーへと露骨にスライドされているわけだ。それは程度の差はあれ外国語のなまりの翻訳につきまとう本質的な難題ではあるものの、事実、最近の海外文学の翻訳ではこの架空の東北弁の乱用は改められる傾向にあるらしい。

 実は青山は言語学的にいえばアメリカの南部英語のなまりはむしろ九州地方のものに近似しているとの説まで紹介しているのだけれど、たとえ南部作家のウィリアム・フォークナーの小説に登場する黒人が博多弁や鹿児島弁を喋りだしたって、ともすればノーマルな基準から逸脱した存在を表象する記号として地方の方言が使われることに変わりはない。さかのぼれば南北戦争での敗北以降、「遅れた土地」との烙印を押されたダーティ・サウスの叛乱、その最新形が現在のトラップだとすれば、日本の地方都市の不良がサウスの音を鳴らすことには、明確な必然性がある。東京においても、トラップの起爆剤となったのは北区のKOHHや川崎南部のBADHOPなど、都市の周縁である郊外エリアの新勢力だった。それは抑圧された土着の肉体と感性の叛乱だ。

 創成期に渋谷や六本木の先鋭的な文化実験によって育まれた日本のヒップホップの主流が当初、暴走族などのヤンキー・カルチャーと意識的に距離をとることでそのアイデンティティを構築してきたことを踏まえるなら、現在急激に隆盛している日本のトラップの一翼は、周縁化されたヤンキー・カルチャーがラップ・ミュージックを飲み込んだ結果の産物だ。それはニューヨークという最先端の文化の坩堝で誕生したヒップホップが、南部アトランタやヒューストンで土着化して生まれたトラップの出自からいって、まったくもって頷けることだ。
 もちろんUSトラップの画期にはレックス・ルガーによるワカ・フロッカ・フレイム“ハード・イン・ダ・ペイント”が刻まれているし、爆発的流行後のヒューストンの熱はハーレムに逆流してエイサップ・ロッキーというヒップなアイコンさえ生み出した。崩壊したアメリカのサバービアを撮り続けてきたハーモニー・コリンの『スプリング・ブレイカーズ』において、顔面にアイスクリームのタトゥーを刻んだアトランタのトラップ・キング、グッチ・メインが不気味な存在感を放っていたのも記憶に新しい。サウスの潜勢力はとうの昔に、地理的な南部だけに独占されるものじゃなくなっている。東京でも郊外エリアのトラップ・アーティストの荒々しさに比べ、渋谷を拠点とするkiLLaクルーに漂う不穏でフェミニンなパンキッシュさには目を見張るものがある。思えば、かつてはレコードの不買運動さえ引き起こしたヒップホップは、いまや音楽産業の中で確固たる地位を築いたのだ。サンプリング主体のサウンドに対して「オーセンティック」という本来なら保守的な賛辞が違和感なく投げかけられるようになった現在、荒廃したサウス・ブロンクスで胎動していた型破りなエネルギーは、南部発の新たな潮流のかたちをとって貪欲にフロンティアを探し続けているのかもしれない。

 そういえばフォークナーはかつての来日時、「わたしには日本人のことが理解できる。なぜならわたしたちはともにヤンキーに負けたからだ」と発言したそうだ。ここでいう「ヤンキー」とはもちろん南北戦争に勝利した北部諸州のアメリカ人を指していて、その言葉は知っての通り高度成長後の日本で不良の少年少女たちを指す言葉に転用され、それが今ではほぼ地方にしか見られない土着のカルチャーとなっているわけだから、そこにはかなり摩訶不思議な文化的なズレがある。けれどきっと、そんなズレは世界中どこにでもあるのだ。ちょうどちまたで『トレインスポッティング』の続編の映画化が話題になっていたせいか、“キスはゲロの味”のヴィデオの金髪坊主のRYUGO ISHIDAは、あの映画のユアン・マクレガーにだぶって見えた。イギー・ポップとルー・リードをBGMにドラッグに耽るスコットランドの田舎の若者たちの群像。あれはイギリス映画である以上に、スコットランドの映画なんだ。同じように、このアルバムは日本のトラップである以上に、北関東の、土浦のトラップだ。首都の真上に永遠の郊外のように広がる関東平野、その横腹にぱっくりと口を開けた巨大な湖のほとり。どうやらそこでは、こんなにも幻惑的な音が夜ごと鳴り響いているらしい。

 ミックス・テープではUSのフロウをオリジナルにアレンジするべく試行錯誤していたRYUGO ISHIDAは、このデビュー盤一発で、その音楽的実験の成果を目覚ましいまでに見せつけた。実際、当初はフィジカル限定だったこのアルバムは反響を呼び、今後はiTunesでの配信も予定されている。ひとくせあるトラックを粒ぞろいに用意し、緻密なコンセプトで全曲のプロデュースをてがけたAUTOMATICの手腕も大きいだろう。同じく彼のプロデュースでSoundCloudにアップされた新曲は、チャンス・ザ・ラッパーの新作の“ノー・プロブレム”のビート・ジャックだったことからしても、サウンドのリソースはこのアルバムに現れている以上に豊富のようだ。けれど、やはりこのアルバムの魅力はトラップならではのものだと思う。TR-808のマシン・ビートを基調とするトラップは、かつてトリシア・ローズが「共同体の対抗的記憶装置」と呼んだ過去の音楽的遺産へのアクセス、つまりはサンプリングを、すくなくともビートとしては拒絶している。そのビートのうえで、保守的なマッチョ・カルチャーにはとてもそぐわないヤング・サグの服装倒錯(トランスヴェスティズム)や、リル・ヨッティの突然変異的なサイケデリア、それにキース・エイプやKOHHといったエイジアン・ラッパーの身体と声が力強く躍動しているのには、なにか理由がある気もするのだ。

 メジャー/アンダーグラウンド、グローバル/ガラパゴス、東京/地方、肉体/マシン、歌/ラップ、シスヘテロ/クィア……あらゆる二項対立を拒否し、克服するだけじゃ足りない。二項対立を嘲笑し、利用し、勢力図を塗り替えるんだ。口で言うほど簡単なことじゃないけれど、この『EverydayIsFlyday』はその文化的なアクロバットの見事な実践だ。あらゆる周縁に生まれ落ちた人間、既存の文化秩序に牙をむこうとする人間、人知れず野心をたぎらせるすべての人間たちへ。トラップ・イズ・ユアーズ。すこし勇み足ぎみにそう言っておこう。

interview with Gonjasufi - ele-king


Gonjasufi
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いまの日本でこの音楽を聴くと、“汚さ”に違和感を覚えるだろう。すっかりお馴染みのシティポップ・マナー、これをやっておけば誰からも嫌われないだろうというネット時代の倦怠、保守的で、品性が良いだけのkawaii国では、ドレッドヘアーの汚らしいラッパーの歪んだサウンドは、まず似合わない。
 逆に言えば、小綺麗な日本のシーンに居場所がない人にとっては、ゴンジャスフィの『カルス』から広がる荒野は心地良いだろう。汚さ……というものがなくなりつつある世界において、西海岸の(異端児)ラッパーは、4年ぶりの新作で、照りつける太陽と砂漠のような怒りをぶつけている。トム・ウェイツが幻覚剤を通して西海岸のビートを摂取したような、錆びたサンプルで歌うブルース歌手、悪夢と人生を賛歌するような、いろいろな感情が入り混じったなんとも魅惑的なアルバムである。ぜひ、聴いて欲しい。こんなサウンドもありなんだと、ひとりでも多くの人に知ってもらえたら幸いだ。

俺はオバマに投票するね(笑)。トランプになっても、ヒラリーになってもダメだ。いまのアメリカは、解決すべきものがたくさんあると思う。TVやインターネットがなければ、もっと良い世界になるはずなんだよ。

2010年にあなたに取材したとき、あなたは「政治は大嫌いだし、政治にはいっさい関わりたくないと思っている」と話してくれました。11月に大統領選を控えていますが、今回は支持したい候補者がいなくて困っている人が多いと聞きました。

ゴンジャスフィ:たしかに選択肢はないな。俺はオバマに投票するね(笑)。トランプになっても、ヒラリーになってもダメだ。いまのアメリカは、解決すべきものがたくさんあると思う。戦争もそうだし、人種間の緊張感もそうだし、メディアに大きく左右されている部分もあると思うね。TVやインターネットがなければ、もっと良い世界になるはずなんだよ。皆、自分の判断ができる。政治には、いまだに関わりたくないね。ファック・ノーだ(笑)。

この4年、いったい何をされていたのですか?

ゴンジャスフィ:体調をくずしていたから、そのリカバリーに1年くらいかかったんだ。その治療で強い薬を摂ったしていたから、死にそうにもなってさ。で、そこからまた回復しなければならなかったし、手術やいろいろ大変だったんだ。

ヨガのほうはいかがですか?

ゴンジャスフィ:ヨガはもう2年くらい教えていない。引っ越したのもあるけど、いまのヨガ業界にもウンザリしていたんだ。ヨガ講師がインスタグラムをやったり、そこで人気になるのも良いケツをしたヨガ・インストラクターだったり、ヨガは「人からどう思われるか」ではないのに、外見を気にしたり、ステータスでヨガをやっている奴が多いんだよ。ヨガとは何なのかを本当にわかっていない。ヨガを教えてはいなくても、ヨガを好きなことは変ってないけどね。

どこか、他の文化圏への旅行をされた経験などの影響はありますか?

ゴンジャスフィ:ギリシャに行っていくつかショーをやったけど、それ以外はアメリカを出ていない。あまりこれといった影響はないな。これからの予定は、12月にヨーロッパに行くんだ。そのあと、来年もツアーがある。もう1枚、春に出したいと思っているレコードがあるから、その準備もしないといけなくてね。〈ワープ〉からリリースされるんだけど、それもGonjasufiのレコードなんだ。

では、どのようなきっかけがあって本作は制作されていったのでしょうか?

ゴンジャスフィ:制作をはじめたのは2013年、いや、2011年だな。ヴェガスで制作をスタートしたんだ。曲のなかには、2004年にサンディエゴで作りはじめたものもある。ギター・パートが出来ていて、あとから1年くらいかけてセッションで発展させていったんだ。

通訳:音楽制作は2011年からずっと続けていたのですか?

ゴンジャスフィ:前作が出た後から、ずっとレコード制作はしていたんだ。でも、2012年に病気になって、そこから制作のスピードが遅くなっていった。で、2014年にまた作業を再開して、トラックを仕上げはじめて、2015年にアルバムを完成させた。あと、音楽活動は常にやっていたんだけど、音楽業界からは離れていたね。業界がイヤになってね。でも、音楽そのものへの愛が変わったことはない。あのジェイ・Zの一件があってから(2013年、ジェイ・Zがゴンジャスフィの曲をサンプリングした)、早くレコードを出せとまわりりがうるさかったんだ。でも俺自身はその準備が出来ていなかった。金のために音楽はリリースしたくなかったし、そんなことしたら、音の出来の悪さにがっかりするリスナーも出てくるだろうしね。

元キュアーのパール・トンプソンが参加していますが、1980年ぐらいのUKのポストパンク、しかもゴス的な感覚というか、ノイジーでダークな衝動を感じましたが、いかがでしょうか? 

ゴンジャスフィ:そういった音楽からも影響は受けているよ。最近もよく聴いているんだ。最初は、自分でギターとドラムを演奏して作っていたんだけど、ギターの部分が自分ではうまく表現できなくてフラストレーションがたまっていた。指が思うように動かなかったんだ。そこで、彼に依頼することにしたのさ。

通訳:あなたはこのアルバムの方向性をどのように考えていますか?

ゴンジャスフィ:ただただ、俺は正直なアルバムが作りたかった。俺の中身がそのまま表れている作品をね。あと、音的にはダークでディストーションの効いた作品を作りたかったというのはあったな。それと、痛みが表現された作品。俺は、フェイクな内容なものを作ることは避けたかったんだ。ララララ~なんて、エレヴェーターで流れているような音楽は作りたくなかった(笑)。まあ、作ろうと思えば作れるぜ(笑)。めちゃくちゃ良いR&Bレコードを作れる自信はある(笑)。絶対に金になるだろうな(笑)。

いま、痛みを表現したかったとおっしゃいましたが、強いて言うなら、今回は怒りのアルバム? 苦しみのアルバム? 

ゴンジャスフィ:選べないな。どっちもだよ。いまだに怒りはあるし、苦しんでるし(苦笑)。

通訳:どんな怒りや苦しみを未だに抱えているのですか?

ゴンジャスフィ:子供を育てる環境もそうだし、金銭問題もそうだし、自分のまわりのことすべてさ。俺はミリオネア(金持ち)じゃないからな。でも、レコードには愛もつまっている。ネガティヴなエナジーを音楽を作ることによってポジティヴに変えているんだ。

“Afrikan Spaceship”や“Shakin Parasites”のようなインダストリアルなビートからはマーク・スチュワートを思い出したんですが、お好きですか?

ゴンジャスフィ:誰? わからないから答えられない(笑)。ははは。

通訳:ポップ・グループの人ですよ。

ゴンジャスフィ:ホント知らないんだ。

たとえば“Carolyn Shadows”や“The Kill”など、今回のアルバムの重苦しさ、こうしたエモーションの背後に何があったのかを教えてくれますか?

ゴンジャスフィ:難しい質問だな。どの曲にも同じアプローチで望んだし、同じ感情が込められていると思う。俺のソウルが込められているんだ。それがブルースってもんだろ? そのソウルは、“ファック・ユー”でもあるし、“アイ・ラヴ・ユー”でもある。そのふたつは紙一重だからな。
 で、何があったんだっけ……"The Kill"の歌詞を振り返ってみるから、ちょっと待っててくれよ。あれは……正直わかんねえな。歌詞を書いているときって何も考えないんだ。俺って説明出来ないんだよ。そのとき感じている痛みだし、それを振り返ること自体も痛みなんだ。母親と話しているときも説明を求められて、俺、ぶちぎれるんだよ(笑)。ゴッホにだって、何でその絵を描いたのかなんて訊かないだろ(笑)? そこから何を自分が感じるかが大切なんだ。いちいち説明を求められると、気が滅入るんだよ。俺の母ちゃんは、俺の大ファンだけどな。両親とも仲は良いけど、母ちゃんの方が近い。「この曲が好き」とか、毎日メールしてくるしな(笑)。でも、はいはいって感じで流すんだ(笑)。
 母親はサンディエゴに住んでいるから、俺は年に2、3回くらい帰るようにしてる。子供が俺の子供しかないから、彼女を孫に会わせるのは大切だと思って。母親って好きなんだけど、ずっとはいれない。わかるだろ(笑)? 俺の人生初のコンサートは8歳で、衣装も全部母ちゃんががデザインしてくれたんだ。頑張れと楽屋の前で励ましてくれた。観客席からも応援してくれている姿が見えたし、彼女は俺のすべてだな。この話をしていたら、泣きそうになってきたよ(笑)。

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どの曲にも同じアプローチで望んだし、同じ感情が込められていると思う。俺のソウルが込められているんだ。それがブルースってもんだろ? そのソウルは、“ファック・ユー”でもあるし、“アイ・ラヴ・ユー”でもある。そのふたつは紙一重だからな。


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あなたは、スーフィーやトルコなど、中東文化を取り入れるのも早かったと思うのですが、今日の音楽の世界では、わりとそれはひとつのトレンドにもなっています。苛立ちはありますか?

ゴンジャスフィ:いいことだと思うぜ。知られることで音楽も広がるし、受け入れられるのはいいことだと思う。

通訳:トレンドを追うこともありますか?

ゴンジャスフィ:いや、きらいだな。君はどう?

通訳:私はたまにのってしまいますね。

ゴンジャスフィ:いまは何の流行にのってるんだい?

通訳:グリーンスムージーとか(笑)?

ゴンジャスフィ:ははは! 出た! 俺はパープルじゃないと飲まないね(笑)。ベリーが入ってるから美味しいんだ。グリーンは激マズ。ファック・ノーだな。マジで無理(笑)。芝生なんて入れやがってさ。とくに胃が空っぽの時は無理だな(笑)。

政治的に言えば、今日ではイスラムへの偏見はさらに増しています。そうした偏見への怒りは、今回の作品の主題にはありますか?

ゴンジャスフィ:そうだな……もちろんそれがテーマになっているものもあるし、すべての曲に入っている。“Maniac Depressant”は、宗教や人種に関しての怒りが歌っているし、“Krishna Punk”も、人びとの関係について歌っている。アメリカ全体の問題がこのアルバムではテーマになっているんだ。

“Krishna Punk”は曲調も一風変わっててユニークですが、歌詞には、たとえばなにが綴られているのでしょうか?

ゴンジャスフィ:この曲では、“組織”についてが歌われているんだ。歌詞を思い出してみるから待ってくれよ。「共同体を崩し……世界を救え。組織を消して、テレビをなくせ。そうすれば自由になれる」そんな感じだな。俺たちが組み立ててきてしまったものを崩せ、みたいな内容。フリースタイルさ。俺にとっては、フリースタイルで歌う方が簡単なんだ。昔からやってきたからな。サンディエゴやLAのアンダーグラウンドは皆そうなんだよ。

『カルス』というタイトルは、どこから来たのでしょうか? そこにはどんなメッセージが込められていますか?

ゴンジャスフィ:自分の心臓の周りにスペースを作っているんだ。世界からの攻撃から自分を守っているのさ。俺というより、世界が俺の心に“たこ”を作った。でもそれは美しいことでもある。純粋なものをを守ることが出来るからね。俺は、敵を近くに置いたりはしない。近くに置くのは家族だけ。同時に、俺は悪から逃げることもしないんだ。それよりも、向こうが目を背けるまでじっと見ていたい。あと、悪というのは男のエナジーだと最近気づいたんだ。神は女性のエナジー。男は命令して何かをさせようとするけど、女は全体を見てバランスをとろうとする。男にはマッチョなエゴがあるんだ。神は男という考え方は、捨てるべきだね。

“Your Maker”や“Prints Of Sin”のようにヒップホップ・トラックを発展させたような曲もありますが、今回の作品のなかにフライロー周辺からの影響はありますか?

ゴンジャスフィ:ないね。彼と俺の音楽に近いものは何もない。でも、彼自身のことは大好きだけどな。彼は俺の人生を変えたし、借りがたくさんあるんだ。まわりの奴らが俺にビビっていたときも、スティーヴ(フライロー)は温かく接してくれた。サウンドの影響はないけれど、やりたいことをやるという彼の姿勢には確実に影響を受けているね。彼も繊細だし、俺も繊細。人生短いんだから、大胆にいかないと。人間皆繊細だし、自信もない。でも、その氷を崩していかないといけないんだよ。

前回の取材で、「ジミは世界いち最高にクレイジーなマザー・ファッカー野郎さ」とあなたは話してくれましたが、とくに今回はその影響が強いと思いますか?

ゴンジャスフィ:ジミは前ほどは聴いていない。でも、俺は彼の演奏を見てから、演奏と歌をすぐにはじめたんだ。彼はいまだに大きく影響を受けているし、彼のあの特有のリズムとあのリズムと同時に歌うことが出来る才能は、本当に素晴らしいと思う。あれは、やろうと思うとすごく大変なんだ。あの時代にそれをやったのもすごいし、しかも左利きでもある。あれは神だな。彼とマイルズ・デイヴィスとプリンスの3人はそう。デイヴィッド・ボウイもそうだな。

あなたがジミ・ヘンドリックスのアルバムでいちばん好きなのは、『Axis: Bold As Love』ですか?

ゴンジャスフィ:そうだな……『Axis: Bold As Love』だと思う。

通訳:それは何故?

ゴンジャスフィ:わからないけど、俺が聴いてきた経験でそう思うんだ。この質問はいままで聴かれたことがなかったから、すぐにはわからない。ジミ・ソングだったら、“Voodoo Child”だな。

前作のときと違って、現在カリフォルニアでは大麻は合法です。こうした状況の変化は新作にどのように関係していますでしょうか?

ゴンジャスフィ:もちろん制作中は吸ってたさ。体調も崩していたから、薬としても使っていた。でも、いまは吸ってないんだ。半年は吸ってないね。1、2年やめようと思ってる。実は、『A Sufi and a Killer』のときはほぼ吸ってなかったんだ。今回は、スロー・ソングのときはだいたい吸ってた。でも、いまは酒も飲まないし、飲むとしてもビール6缶を3ヶ月で飲み終わる程度。酒を飲むとリカバリーに時間がかかるし、身体が拒否するんだ。サンディエゴに帰ったときに一杯飲んだりはするけど、それも5ヶ月に1回とかだしな。ワインも好きだけど、カミさんが妊娠してるし、いまは飲んでない。俺、長生きしたいんだよ(笑)。いまは子供がいるしな。子供が産まれるまでは、40歳くらいまで生きれればいいと思ってたけど、いまは80歳まで生きないと(笑)。60歳になって腹が出て、シワだらけになったとしても、俺はシャツを脱いで上半身を見せるぜ(笑)。女がどう思うかなんてどうでもいい。じゃなきゃ、いまだってヒゲをはやしてはいないしな。ないほうがハンサムって言われてるんだ(笑)。でも、カミさんはありのままの俺を愛してくれているからそれでいいのさ。

あなたはヨガのインストラクターですが、多くの人はヨガをやるべきだと思いますか?

ゴンジャスフィ:全員やるべきだ。それに、子供や身体障害者、病人たちにはタダで教えるべきだと思うね。学校のカリキュラムやリハビリ、刑務所のプログラムに取り入れるべきだと思う。俺の娘もやってるし、平和な気持ちを得るには必要なものだと思うから。週3~5回はやりたいね。このレコードの売上金で、ジョシュア・ツリーにヨガ・スタジオを作ろうと思って。ただし俺は、ヨガで金もうけしようとは思わない。ただ、ヨガを広げたいだけなんだ。

いま世界は転換期を迎えていますが、このような時代に、「ぼくたちに何ができる」と思いますか?

ゴンジャスフィ:ヨガさ(笑)。インターネットとテレビを消して、自然に注目すること。人に合わせるんじゃなくて、自分自身を持ち、自分が受けた恩恵をまた別の人に送り、親切の輪を広げていくことだね。世界や周りを変えるより、まず自分を変えればいい。皆がそれに集中すれば、世界なんてすぐに変わるさ。

通訳:ありがとうございました!

ゴンジャスフィ:ありがとう。またな。

マチカドフェス2016 - ele-king

 日本のインディ・シーンが好きなアナタ、こんな魅力的なフェスを見逃してませんか?
 群馬県は足利を拠点に活動するバンド、スエットの岡田圭史が主宰するマチカドフェス2016が、小平の里キャンプ場(群馬県)にて9月10日、11日の2日間にわたって開催される。
 出演予定のアーティストは、地元出身のCAR10、スエットをはじめ、ネバー・ヤング・ビーチ、DYGL、ジャッパーズ、ノット・ウォンク、ホームカミングス、テンパレイ、柴田聡子などなどインディ・シーンの名だたる若手たちが揃い踏みだ。こんなメンツを2日間に渡って、しかも野外で見れるイベントって意外とないんじゃなかろうか。
 マチカドフェスは、群馬県桐生の有志たちが作りあげるDIYなフェス。ロケーションも最高だし、東京からも案外気軽に行けちゃうし、リラックスした雰囲気のなか聴ける音楽も最高となれば、群馬まで繰り出すしかないでしょう!

日程:2016年9月10日、11日
会場:小平の里キャンプ場  群馬県みどり市大間々町小平甲445
OPEN/START:10:45/11:30
END:19:40

出演 :
・1日目
CAR10
Homecomings
Not Wonk
Special Favorite Music
Tempalay
TENDOUJI
フジロッ久(仮)
上州八木節保存会
DJ星原喜一郎
DJ遠藤孝行
DJ田中亮太

・2日目
DYGL
JAPPERS
never young beach
Suueat.
踊ってばかりの国
柴田聡子
すばらしか
上州八木節保存会
DJ星原喜一郎
DJ遠藤孝行
DJ田中亮太

 この超越的なイベントを見逃すわけにはいかない。2015年夏に渋谷WWWで産声を上げた『FLAT TOP』が、8月29日に代官山UNITにて開催される。
 2回目となる今回の出演者陣は1回目と同様、いい意味で世代もジャンルもゴッタ煮だ。
 前回から引き続きの出演となるOMSB & ハイスペック(シミラボ)は、三宅唱の映像をバックに、USOWA(シミラボ)、PAVRO、そしてあっこゴリラという意外な組み合わせで、スペシャルなライブ・セットを披露する。
 また、DJ矢部直とDJクワイエットストームによるユニット、ライチャスが、海外でも高い評価を得ているsauce81を始めとしたゲスト・アーティストを招き、世代を超えたセッションを披露するとのこと。
 その他にも、久下恵生、ラティール・シ―、内田直之からなるユニット、フライング・リズムスとロカペニスによるVJのコラボレーションや、小林うてなが盟友・櫻木大悟(D.A.N.)のVJをバックに、ゲスト・アーティストを招き行うソロ・ライブが予定されており、ここでしか観ることのできないスペシャリティなライブが目白押しだ。
 しかも、25歳以下のチケット代は1000円。この内容でこの値段は、破格すぎやしないだろうか。若者たちよ、この貴重な機会を逃さないように!

日時:2016年8月29日(月曜日)開場/開演 18:30/19:00
会場名:代官山UNIT
チケット:2,500円[税込・1ドリンク代(500円)別途]、25歳以下 1,000円
チケット取り扱い箇所:チケットぴあ[Pコード 306-633]、ローソンチケット[Lコード 73503]、イープラス、代官山UNIT店頭
※【メール予約方法(予約受付期間:~ 8/28 (日) 23:59)】
・件名「8/29 " FLATTOP " 予約希望」
・氏名 (フルネーム <カタカナで> )
・電話番号
・枚数
を明記の上、flattop.ticket@gmail.com までメールをお送りください。
※【25歳以下のチケットご希望の方】
メール予約 / 店頭 / 当日券 にてお求め出来ます。
・ メール予約の場合は必ず本文中に “25歳以下” とご記載ください。
・ ご入場の際に必ず “25歳以下を証明できる身分証明書” をご提示ください。
当日券 : 3,000円、25歳以下 1,500円
web:https://flattopflattop.tumblr.com/

出演:
《LIVE》
⬛ RIGHTEOUS (Yabe Tadashi & DJ Quietsrtorm) with sauce81 (N'gaho Ta'quia / 77 Karat Gold) & Special Guests 
⬛Flying Rhythms & rokapenis
⬛OMSB & Hi’ Spec (SIMILAB) Beat Live with 三宅唱 & B.D. & USOWA (SIMILAB) & PAVRO & あっこゴリラ
⬛Utena Kobayashi & Daigo Sakuragi (VJ)
《DJ》
BLACKMAMBA
《PA》
内田直之 (FLYING RHYTHMS / LITTLE TEMPO / OKI DUB AINU BAND)
《INSTALLATION ART》
TUA (Takuto Shimpo & motherfucko) / NAMPHOP

Prins Thomas - ele-king

 今年に入ってアルバム『プリンシペ・デル・ノルテ』を発表してファンを喜ばさせた北欧ノルウェーのコズミック・ディスコの代表格、プリンス・トーマスが来日する。というか、北欧ノルウェーのコズミック・ディスコって何ですか? というあなたはここに行けば良い。
 ある意味何でもアリだ。サン・アロウもアクトレスもウォーリー・バドロウ。そしてそこには、上品な、エレガントな、紛うことなきトリップがある! 
 また、9月にはくだんの『プリンシペ・デル・ノルテ』のリミックス盤もリリースされる。リカルド・ヴィラロボス、ジ・オーブ、サン・アロウなど、とんでもない豪華リミキサー陣。こちらもチェックしよう。

PRINS THOMAS
Principe Del Norte Remixed

calentito
CD2枚組
2016.9月発売

リミックス収録楽曲:
CD 1
1. H (The Orb Orbient Mix)
2. B (Sun Araw Saddle Soap Remix)
3. D (Dungen Version)
4. J (Original Version)*
5. C (I:Cube Remix)
6. D (Hieroglyphic Being Remix)
7. C (Young Marco Remix)

CD 2
1. I (Original Version)*
2. A1 (Gerd Janson Prinspersonation Mix)
3. C (Ricardo Villalobos King Crab Remix)
4. C (Ricardo Villalobos Knödel Prince Dub)
5. H (The Orb Heaven Or Hell Remix)
6. K (Original Version)*
7. C (Prins Thomas Diskomiks)
8. D (Hieroglyphic Being Beat Rework)

石野卓球 - ele-king

 そう、いよいよ90年代が始まる。1993年のYMO再生(実質上、テクノポップの終焉)から、そして『テクノボン』を経由して1995年までのおよそ2年間は、「90年代」というディケイドにおける重要なモード・チェンジの時期だったと思う。その象徴のひとつが、1995年の『Dove Loves Dub』だった。「電気グルーヴの石野卓球」ではなく「テクノ・プロデューサー、石野卓球」としての最初の作品である。
 大友克洋のアートワークがもたらす相乗効果も大きかった。これは、同年リリースのケンイシイ『Jelly Tones』(当然、森本晃司監督による「EXTRA」MVのCD-ROM付きの初回盤)とともに、アンダーグラウンドなテクノがいままさにポップ・カルチャーの最先端にまで勢いをのばしているのだという、あの頃の高揚感へと繫がった。ジャンルが現在のように細分化される以前の、混沌としているがゆえのテクノの魅力とでもいうべきものがあった。電気のボックスセットからバラ売りするというカタチ(そうでもしなければ、テクノのソロ作品をメジャーで出すことは不可能だった)で同時リリースされた『Dove Loves Dub』と砂原良徳『Crossover』は、ある種の時代精神(!)のなか、聴き狂ったものだった。私は、電気と同じくらい熱心に卓球とまりんのソロを聴いた。
 インダストリアルな魅力も兼ね備えたほど多彩な内容の『Dove Loves Dub』以降では、それとは対照的に渋いハード・ミニマル・テクノを打ち鳴らす1998年の『Berlin Trax』が好きだったけれど、それを言ったら2004年の「Title」シリーズ、2010年の『CRUISE』などゼロ年代の諸作品も忘れるわけにはいかなくなる。基本的にポップなイメージで見られる石野卓球だが、しかしソロで見せる音楽性はまったくのアンダーグラウンドで、ある意味ディープで、しかも素晴らしく洗練されているのだ。

 そして、『CRUISE』から約6年ぶりに新作『LUNATIQUE』は、たしかな経験とスキルに裏打ちされた、まさに大人のテクノ/ダンス・ミュージックと呼ぶに相応しい仕上がりだ。何回も聴けば聴くほど新たな発見がある。心地良く、ビートも音色もメロディもシーケンスもベースも、すべてのパートがそれぞれ自然と体内に染み入ってくるようだ。あるトーンが持続し、反復し、展開し、グルーヴの低熱のようなものが入ってくる。まさに身体に「効く」音楽!
 エロティシズムが主題だと言うが、全編にうごめく柔らかい音色は、たしかに官能的だ。ニュー・オーダーも影響を受けているイタロ・ディスコ的なセンスも伺える。たとえば“Fana-Tekk“や“Crescent Moon”など、かなり中毒性が高いトラックだが、しかし、それにしても、なぜこんなに気持ち良いのだろうか……。
 冒頭の“Rapt In Fantasy”からしてそうだが、シーケンス・フレーズとビート、パーカッションとベースなど、ジャスト一歩手前の微妙なズレを伴っている。そのズレが独特のグルーヴを生み、さらにアルバム全編を通して伸縮するような大きなグルーヴを生んでいる。電子音なのにウネウネとして生っぽいのである。
 “Fetish”も最高だ。水のような持続音、シルキーなシンセ、断続的に散らばるビートと、伸縮するベースなど、まさに官能と快楽だ。また、“Die Boten Vom Mond”や“Selene”などのアンビエントなシンセとミニマルなリズムとの重なりを聴いていると、ふと90年代のレーベル〈クリア〉の諸作品(モーガン・ガイストなど)を思い出してしまった。要するに、聴く場所を選ばない、ダンスとリスニングとのバランスがじつに良いのだ。

 もっとも本作は、マニアだけを相手にするアルバムではない。『LUNATIQUE』はポップでもある。YMOのファーストやセカンドにあったポップ・センスをも彷彿させる。何と言ってもメロディが残る。宇川直宏による官能テクノ雑誌のようなアートワークも、本作のポップ感を見事に象徴している。ぜひ特殊仕様の初回盤を手にとってほしい(完売してしまったかもしれないが……)。『Throbbing Disco Cat』(1999)に匹敵する名ジャケだ。
 そう、彼はいつどんなときだってユーモアを込める。つまり6年ぶりのこのアルバムは、粋なのだ。大人テクノの粋! 90年代の自分に教えてあげたいほどの力作である。

コザの表と裏側 with 宮島真一 - ele-king

 7月10日の参院選投票日を前に、私はイハ陣営からもアイコ陣営からもプチ逃亡を決め込んだ。都合よくコザでロックフェスがある。トリまで観たら夜9時だし、投票は無理だった、というテイで。が、常日頃もっと世の中を勉強しろと私にガミガミ言われているオタクのノンポリダンナが嬉々として、「高速入る手前で期日前投票が出来る」とほざいてきた。
 コザ弾丸ツアー。那覇の自宅を出発し、期日前投票所に寄り、“いない”の3文字を、書き殴った。

*  *  *

 コザは、かつて沖縄本島中部にあった日本で唯一のカタカナ表記の市で、今は統合され沖縄市となっている
 初めて沖縄を訪れた8年前、美しい海を堪能した後真っ先に訪れた街だ。10年間のロンドン滞在を切り上げようやく戻れた東京で日本のロックシーンを軽く嘆いていた私にとって、ORANGE RANGEやモンゴル800等異彩を放ちながら次々に出てきたバンドがコザの出身だったりコザで活躍していたからだ。
 そこは広大なシャッター商店街であって、なにかしないとならないという空気は漂っていたものの、平日の昼間は退廃感しかなかった。

 まだ1歳だった小さな娘は、沖縄の海に投げ入れられ、母親がゲラゲラ笑っているものだからそのまま魚のように泳ぐようになり、
 ガジュマルの木の下では延々と、大人には見えないなにかと語り合っていた。翌年また訪れ、次は半年後、3ヶ月後と、すっかり沖縄病。こんなところで暮らせたら夢のようだと思ったけど、夢は夢のままがいいはずと、沖縄戦やいまだ続いている基地問題を知れば知るほど、住む場所ではなく訪れる場所だと、沖縄とはそういうところだった。しかし、311によって、それは現実となる。簡単に言えば放射能避難移住だが、決行するまで1年半、その間は血を吐くような葛藤があり、子どもなんて生まなきゃ良かったとさえ思った。仕事への執着が強く東京を離れる気は一切なかったからだ。

 放射能汚染に関しては情報収集の努力はするものの、それらの正誤について判断出来ると思っていない。ただ我が家は、居住拠点の位置を変える条件が揃ったから、東京を離れただけのことだ。脚本家としての仕事は、311以降テレビドラマを観なくなったことに気付いてからは、多少吹っ切れた。と思い込むようにして。
 沖縄の海にしばし癒されようと、ロング・ヴァケーションが始まるのだと。

 ある程度は覚悟していたことだが、沖縄移住は易しいものではない。毎年多くが沖縄に引っ越し、8~9割が1年未満で引き上げるという。主な理由として賃金の安さが上げられるが、それだけではない。私たちはまず見た目、そして名字で、「ヤマト」もしくは「ナイチャー」として区別(差別)される。「いちゃりばちょーでー(会えば皆兄弟)」とうちなんちゅ(定義は人それぞれだが、ざっと、琉球民族の血筋ということだと思う)にもてなされ、その優しさに感激していた客人だったときとは変わって、気を使うことも求められる。70年前の沖縄戦終盤、日本兵によって自害を促された辛い過去は今も深く人々の心に刻まれている。
 沖縄問題のひとつに、基地云々の抗議活動にナイチャーが躍起に成り過ぎる、というのがある。先日辺野古でのもめ事の際に、海上保安官が抗議市民に「腐れナイチャーや」と言い放ち、問題になった。他所から来てガタガタウルサいのはナイチャーばっかりだと真剣に言ううちなんちゅも少なくない。まあ、移住者は大抵沖縄の自然が好きなわけで、離島に橋をかけるなとかコンビニ作るなとか思うんだけど、うちなんちゅからしたら開発の何が悪い? と。そんなこんなはあるが辺野古での新基地反対についてはうちなんちゅも多くが反対している。ここで沖縄県民として、ナイチャーも含めて仲良く抗議活動が出来るかとハチマキ締めなおすも、ことはそう単純ではない。
 ここのところの安倍政権のやり口によって、ヤマト全批判の論調が生まれた。時の施政者を糾弾するのであれば個々人が手が組めるのだが、全批判、である。
「あんたたちヤマトは、お上の言うこと聞くだけが能で、自分で考える頭がない」と親しくしていた年配の女性。
「でも多くの移住者が辺野古に対する抗議をがんばっていますよ」と返すと、
「迎合しないとここには住めないからね」
 最初の1年は辺野古も県民大会にも足を運んでいたが、もう行かなくなってしまった。
 全国紙と比べてなんと気概があることかと賞賛していた沖縄2紙については、やはり偏重が過ぎる。それは別に悪いことではない。ただ一般市民がその論調に引きずられることに気付かないのが問題なのだ。
 日本のソメイヨシノを、接ぎ木で増えるクローンであり軍国主義の象徴としたコラムが一面に掲載され、私は沖縄タイムスの購読を止めた。

 4月にうるま市で米軍属による暴行・殺人事件が起き、2紙とSNSでは一斉に米軍と日本叩きが始まる。シールズ琉球の女子大生は、「安倍首相と本土に住む日本国民は第二の加害者だ」と涙ながらに訴えた。
 そこで多くの心優しき移住者たちは沖縄に迎合するのだが、私はしなかった。することで問題が解決するとは思わないからだ。
 直後県議選があり、当選した革新系の新人議員が、「うるま市の事件で、風がこちらに吹きました」と、笑顔で取材に答えていた。
「私たちも悲しんでいます」というカードを持ち米軍勤務者が路上に立つムーヴメントが起きたが、「幸福実現党がやらせている」と、一蹴された。
 日本国民、米軍等、ひとまとめにする想像力の欠如とも取れる糾弾の仕方は、怒りや憎しみが高じたことによるものなのかと、沖縄紙とSNSを閉じて、溜息をついた。
「怒りは限界を越した」とする人々の代表、イハ氏と、安倍内閣の大臣であるアイコ氏、その一騎打ちの参院選だった。

* * *

 コザはたまに行くが、交通手段が車しかないので、夜までいることは滅多にない。この日は友人が運営するゲストハウス「羊屋」にチェックインした。素泊まり2000円。沖縄はこういう安宿が多くて県内旅行が気軽に出来るのが楽しい。

 誰をも踊らせてしまう沖縄民謡。
 アメリカ統治下時代の影響を色濃く持つ骨太なオキナワンロック。
 チャンプルーでユニークな琉球ポップス。
 安室奈美恵、SPEEDなど存在感ハンパなかった沖縄アイドル。

 沖縄に惚れた理由のひとつは間違いなく音楽だ。しかしここ数年、それが生まれて来る場所が空気が、気配はあるのだけど、見付けられてなかった。それにどっぷり浸かりたかった。

「最近言われることだけど、沖縄のロックを観光用にって予算がついてタダでライヴが観られるようになって、エンターテイメントにお金を出す人が少なくなってしまった。価値には対価を払わないと、育たない。そういう側面もあるかもしれない」

 コザのことはこの人に聞こうと、宮島真一に会った。メインMCを張る『コザの裏側』は、ディープなタウンガイドを緩い笑いで紡いで人気がある深夜番組だ。ラジオの帯からテレビ、全島エイサー祭りの司会から観光大使と、すっかりコザの顔として名前を知らない人の方が沖縄では少ない。



宮島真一

「別にコザにこだわっているわけじゃなくてどこにでも出てくぜって強く思ってるけど(笑)、色々やらせてもらっているのと、場所を作ったので」

 昨年シアタードーナツという映画館をコザの中心地に立ち上げた。  
 このミニシアター受難の時代に。
 映画制作者でもある彼は、『ハルサーエイカー』、『ハイサイゾンビ』など、全国展開可能な良い映画をコンスタントに制作している。が、現代沖縄もやはりシネコン中心。

シアタードーナツ https://theater-donut.okinawa

「上映をお願いするよりも、もう映画館作ってしまおうと(笑)、必然的に。まず僕がこのあたりに映画館欲しかったし。昔はあったから入り浸ってたんですよ、ラジオとか懸賞にまめに応募して。映画、しかも映画館が好きでね。だから今は楽しくてしょうがないですよ。いろんな人が来てくれるし。映画って全てを巻き込む力があるでしょ」

 彼が力強く語るのを聞いていると、好きなことを仕事にしては嫌いになるという悪い癖のある私はしばらく日本映画が嫌いだったのだけど、純粋に映画を映画館を好きだった気持ちが甦ってきて嬉しくなった。

「僕もその繰り返しですよ。嫌いにもなるし。でも好きっていうのが根本であって、いちいちそれを思い出す作業。ライヴハウス立ち上げたりラジオやったり、難儀しながらものを作るんだけど、行く先々に必ず映画がある。それに映画には音楽が必ず付いてくる」

 コザは音楽が生まれる土地だと思っていたのだけど一体どこに?との私の問いに対する答えが、冒頭の彼の台詞だった。

* * *

 シアタードーナツの周りを歩いてみる。コザ/現・沖縄市の中心街、その昔はさぞかし栄えていたであろう商店街が整然と広がっている。
 アメリカ統治下時代、軍人らが遊ぶ場所として栄えた。明日戦場に行って生きて戻る可能性はほぼないことを知る彼らは、湯水のように金を使った。民謡バーなど一晩で家が建つほどの、ドラム缶一杯のドル札を稼ぎ、殺気立った軍人らを満足させるライブで、毎晩賑わった。
 その後沖縄は日本に復帰し、基地の規律も厳しくなり基地外での飲食も規制されるようになってからは、街は一気に活力を失う。シャッター商店街となり、地元の青年会を中心にもう10年も前から空き店舗貸し出し等町おこし事業が精力的にされてはいるのだが。那覇市から高速に乗れば30分と言えども、タクシーや代行で那覇に帰るには遠い。

 先月名護市(辺野古を有する、かつての大都市)のあまりの荒廃ぶりにすっかり落ち込んでしまった私は、暗澹たる気持ちで街を眺めていたのだが、気をつけて歩いているとそこには明確に確実に、変化があった。何かを生み出す荒廃の匂いがあった。

 車を捨てよ、町を歩こう。

 雑貨屋やレコード店、派手な色柄が並ぶ洋品店などを冷やかし、ライヴハウスの点在するパークアヴェニューまで出ると、路上ライブにBBQブースが出ていた。
 一番街まで行き、今宵の宿泊先のゲストハウス『羊屋』おすすめの『りんりん』という飲食店を、手書きの地図を手に探すも見つからない。このあたりに人を呼び戻したと言われている人気焼き鳥店『鶏五郎』の前で途方に暮れていると、店員さんが『りんりん』まで連れていってくれる。なんという親切! 『鶏五郎』、飲み放題1時間770円。大にぎわいである。えっと、さっき、ミュージックタウン音市場あたりで60分飲み放題380円という看板も見ました。酒好きにはたまらない町、コザ。

 『りんりん』に着いたはいいが、看板が『パナマ原人』……。表を貸してるということらしく、中に入っていくと一応店らしきものが。暗いし生活感溢れたスナック的趣きと営業気なさげな空気感。が、ここ沖縄で私たちやまとんちゅが満足出来る魚介類を出す店は少ない。隠れた名店であった。

 話をそれとなく、先日起きた軍属の暴行殺人事件に持っていく。
「このあたりで飲んでいた米軍勤務の子たちは皆、礼儀正しくて優しい人ばかり。一部の犯罪者のせいで外出禁止まで出されるのはどうかと思うねぇ。金払いも良く本当にいいお客さんたちなのに」
 そうなのだ、メディアで報道されるような反基地感情を強く露に出す沖縄県民は、一体どのくらいの割合なのだろうと、沖縄で生活していると常に意識させられる。オール沖縄とは一体何なのだろう。オールに属していない沖縄県民は非難の対象になるのだろうか。避難をする側は果たしていつも正しいのだろうか。闘うことが目的になっていないだろうか。

 何軒かハシゴ酒をして、ゲート通りの『オーシャン』に入る。その昔Aサイン(本土復帰前の沖縄で米軍公認の飲食/風俗店に与えられた営業許可証)バーとして名を馳せた老舗だが、この夜は地元客らしき男性のみがマスターと参院選の話に終始していた。

 すっかり夜も更けてゲート通りに出ると、この通りだけは軍勤務者で盛り上がっているようだった。
 コザの空気が混沌としていることに、少し安心した。


*  *  *

「だからさー、みんなでETを観ればいいと思ったわけ。小学生の自分は。違う者たちの友情とか普遍的なものが全部織り込まれていて、絶対観た方がいいって言うに決まってる! だから学校にETのレコードとスピーカー付きのプレイヤー持って行ってみんなに聴いてもらった(笑)。こういう、吸収するという作業を子どもの時にした方がいい。楽して生きたいから公務員になります、って子ばっかりになっちゃう。
 戦争がすぐになくならないのであれば、子どもの教育をちゃんとやっていくこと。その点コザはいろんな人種がいて盛り上がることがあって、極端に何かを言うよりは、この空気に触れてもらうとこういう沖縄もあるんだと考えてもらえる。そういう街。若い子たちの価値観にもちゃんと寄り添える。地道にこういう活動もやってるので、もっと評価してもらいたいんだけど(笑)」



ピースフルラブロックフェスティバル https://peaceful-love-rock.com

 『コザの裏側』収録終わりの宮島真一と、プレイヤーズ・カフェで合流した。この週末は沖縄市野外ステージで、ピースフル・ロック・フェスティバルが開催されていた。1983年から続いているロックフェスの草分けで、沖縄ロックの登竜門。
 沖縄ロックの中心メンバーの一人であるかっちゃん(川満勝弘)はコンディション・グリーンのヴォーカル時代、ヘビを喰いちぎったりヒヨコをステージにバラまいて踏みつぶしていったり過激なパフォーマンスで知られる。米兵相手に育った沖縄ロックは、生半可なコピー・ロックであるわけがない。イギリスでようやく出会えたロックは、沖縄でも出会えるのだ。
 マンドリルを纏いステージで座っていた宮島は、客席から現れた
 かっちゃんから何かを受け取り、仮面を外し、バックステージへ消えた。確かに、何かを、託されていた。

 音楽が生まれてくる渦は確かにあった。ただ客が少なかった。「PRするのが得意でない」とは宮島の言葉だが、演る側としては外にアピールすることよりも、コザのこの空気の中で生かされるものに向き合っているだけなのかもしれない。沖縄の地の力は強く、それ故に癒されたり傷ついたり、魔性の魅力があるのだ。

Dego - ele-king

 フローティング・ポインツとUKグライムとの溝を埋めることができるのは、ディーゴだ。ジャングル/ドラムンベースの創世記におけるキーパーソンとして知られるディーゴは、まずUKハードコアをデトロイト・テクノと結びつけ、そして数年後にはUKハードコアをクラブ・ジャズとも結びつけた。ベース・ミュージックが成熟と洗練とに向かっている現在、この偉人が再評価されるのはなんら不思議ではない。
 今回は東京CONTACT、大阪CIRCUS、京都METROの3都市をツアー、各地Degoのニッポン・サポーターとの共演です!

Dego & The 2000Black Family - It Don't Get No Better

https://soundcloud.com/2000black

 Joy Orbison とWill Bankheadが運営するイギリスのレーベル"Hinge Finger"のショーケースが、シックなビジュアルで多くのファンを集めるブランドC.E.(Cav Empt) のサポートの元行われる。イギリスのアンダーグラウンドで、独自のテイストとビジュアルで人気を誇るThe Trillogy TapesのWill Bankheadが運営する兄弟レーベルとも言えるHinge Fingerは、"Peder Mannerfelt"を招聘。

 "Peder Mannerfelt"はスウェーデンのアーティスト、"Subliminal Kid"のメンバーとしてMassive Attackにリミックスを提供するなど、10年以上のキャリアを持つアーティスト。EPリリースに際してプレイを行う。

 アナログ機材から生まれるノイズとを印象的なボイスサンプルのカットアップで、新たなソニックウェーブ体験をさせてくれるだろう。さらに、幅広い選曲を見せるJoy Orbisonのプレイにも注目だ。CO/R名義でローなテクノ・トラックを収録した"Gudrun" EPリリースしたかと思えば、先日のNTS Radioではダンスホールからハウスまで縦横無尽のプレイを見せた。また、日本からのDJにはFuture Terror主宰のDJ NOBU登場。

 なにが起こるかわからないエクスペリメントを体感しにUNITに足を運んでみては。

C.E & HINGE FINGER

JOY ORBISON (Hinge Finger)

PEDER MANNERFELT (Peder Mannerfelt Produktion / Hinge Finger)

WILL BANKHEAD (The Trilogy Tapes / Hinge Finger)

DJ NOBU (Future Terror / Bitta)

日時 : 2016年9月10日(土) 23時30分〜

場所 : 代官山UNIT www.unit-tokyo.com

〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1−34−17 ZaHOUSE

価格 : 前売り 3,000円 / 当日 3,500円

前売りチケット (8月6日土曜日発売開始):

e+ / LAWSON (L Code: 71247)/ diskunion (Shibuya CMS / Shinjuku CMS / Shimokitazawa CMS / Kichijōji) /JET SET TOKYO / TECHNIQUE / DISC SHOP ZERO / Clubberia / Resident Advisor / BEAMS Records / min-nano / TOXGO / have a good time / UNIT / C.E

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います


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