「PAN」と一致するもの

第2回 FULXUS - ele-king

終わりなき日常のフルクサス〈二〉
1984ヨーゼフ・ボイス〈一〉

 私は気づけば更新が大幅に遅れてしまったが、前回書いた通り、明日には終わってしまうヨーゼフ・ボイスの展覧会の会場に会期ぎりぎりに飛びこみ、妻と子ども(と、このときは妻の両親もいた)を引きまわすように慌ただしくまわったものだから、展示の細かな内容はもちろん、会場の水戸芸術館の一角でうずくまるようにして考えこんだことはすでに薄れつつあるが、ここに記そうと思う。

 ボイスは、これも前回書いたが、フルクサスと結びつけるのはむずかしい作家であるのは、彼は60年代初頭にフルクサスに接近しながら、活動をともにするうちに、おもに思想の齟齬から離れはじめたと思われるからだ。1978年5月9日に死去したマチューナスを追悼し、ボイスはナム・ジュン・パイクとともにデュッセルドルフの州立美術館の一角で、「In Memoriam George Maciunas」と題した〈アクション〉(フルクサスにならえば〈ハプニング〉)をおこなったが、これはボイスとフルクサスを出会わせた触媒であり友人でもあったパイクを、フルクサスの中心人物であったマチューナスとの関係にとりこんだボイス流の社会関係を基底にした追悼の様式であり、同時にフルクサスという流動体の、別の意味ではきわめて「音楽的」な運動への彼なりの批評でもあった。パイクは元は19世紀末のウィーン楽派の研究にはじまり、50年代末から60年代にかけてシュットクハウゼンの門下生でもあった音楽家であり、彼のドイツや日本への親和性がボイスのフルクサスへのコミットをうながしたのはまず間違いないだろう。

 今回『ボイスがいた8日間』と題した水戸芸術館の順路通りにたどればほとんど最後にあたる第9室で上映された、1984年6月2日の夜の草月会館でのアクション「2台のピアノのためのパフォーマンス」(のちに「コヨーテ・」に改題)でもパイクはアクションに参加し、リーディングとコヨーテの咆哮を模したボイスの(文字通りの)ヴォイス・パフォーマンスに、即興的で訥々としたピアノをかぶせていた。私はヴィデオ上映で、けっして音響が完璧とはいえない環境でこの演奏を初めて見たが、端的にはこのアクションは「音楽」ではなかった。フルクサスの運動の精神的な支柱だったジョン・ケージ(彼のことも私はこの連載でいつか書きたいと思っているが)の「実験」音楽が音楽を内から外へ領域を拡大させるように進んだのにたいして、ボイスは音楽を外からさわろうとする。パイクは音楽の不可能性こそをめざし音楽自体を止めてしまったが、ボイスにとっての音楽は彼が平行して手がけたドローイングやオブジェクトやインスタレーションやマルチプルや、もっといえば思想や哲学や教育といった諸要素のなかでも下部に位置するものだったのだろう。私はいいとか悪いとかでなくて、音楽は不意にやってくる。音楽は様式をつねに待望しているのだけど、演奏の再現性は身体性と環境にたやすく左右され、様式は決定稿をつねに先送りされることになる。この遅延を使ってクラシック音楽はロマン派から今日まで命脈を保ってきたが、ポピュラー音楽にしてみれば、決定稿は発表当初からパッケージの形で存在していて、私たちは街頭からコンビニの店内にいたるまで不意打ちのように決定稿を聴かされるはめになった。 先月あたりか、朝日新聞のコラムで天野祐吉が「正月に福袋売れないのは、私たちは本当は買いたいものがないから買うのだ」と書いていて(うろおぼえの引用なので正確ではないです)思うところがあったが、これは音楽にも起きている。消費から音楽を考えれば、たぶん聴きたいものはそうはない。私たちは音楽という不意の受動的な体験に、能動的に向かうことでかろうじて、音楽を成立させなければならないということは、数年前ににわかにとりざたされた「聴取」という言葉にもあわれている。『ゼロ年代の音楽』のレヴューの一部でも書いたのでよろしければご覧いただきたいですが、「聴取」をめぐるここ数年の問題意識は音楽の「聴く方」だけでなく「やる方」の自意識に重きが置かれたもので、ミュージシャンは音楽を演奏するとともに聴かなければならないのである。このまえ、山本達久と千住宗臣という若手を代表するドラマーふたりにインタヴューしたときに気づいたが、ある曲の楽想を尋ねた質問に彼らは「ドラムセットに座って叩いているときに聞こえる音を再現しようと思った」と答えた。もうリスニング・ポイントはオーディオ・マニアックな愉悦を超えて、音楽を演奏する主体の耳に届く音をさえ再生する方向へ(無意識に)動いていて、音楽の需要/受容がライヴの現場へ回帰した現象とそれは同期するといえなくもない、との前提がある現在からボイスとパイクのパフォーマンスをふりかえると、やはり音楽未然なのだった。私は繰り返すが、これをいいとも悪いとも思わない。フルクサスは音楽的だったと前回書いた私の意図は、彼らは音楽的受動性をもっていて、ある局面において表現が音楽のダダイスティックなパロディとして現れるときもそこには音楽の反語として音楽に抜けるバイパスがあるのだけど、ボイスの音(声)は意味――自然、環境といったものから受けたインスピレーションのようなもの――は伝えるが、その音には意味以上のものは感じられなかった。むしろこれが無意味なノイズならボイスの声は聴く人たちのなかにある様式との軋轢をもたらしたのだと思うが、ノイズではなくそれは彼のいうように「アクション」であり、反復された「行為」よりも「意味」が前にでてくる(彼がパフォーマンスに黒板をもちいたいたのもそれに拍車をかけた)からそれは「ミニマル」でもない。私はリハーサル風景や公演後の質疑応答をふくめた2時間のヴィデオをすべてみたわけではないので、ボイスの意図はべつのところにあったかもしれないが、本番の演奏でいちばん面白かったのは、それまでピアノで断片的なモチーフを淡々と弾いていたパイクが脇に設置されたマイクをピアノの鍵盤に叩きつけたとき、その集音部がポロッとはずれた瞬間だった。背中越しにパイクを写していたヴィデオ・カメラはパイクが狼狽した姿をのがさず、水戸芸術館の巨大の立方体にちかい上映空間のスクリーンの前にいた私は笑いだした。私以外の誰も笑っていなかった。しかし私はそのときアクションにハプニングが裂け目をつくった気がして、血が沸き立ったようにうれしくなり、うろたえたパイクの肩を叩きたくさえなった。

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終わりなき日常のフルクサス〈二〉
1984ヨーゼフ・ボイス〈一〉

 水戸の妻の実家に帰ったあとに、私はその場面を何度もかみしめながら、数年前に表参道のライヴハウスでみたチャールズ・ヘイワードの単独公演を思い出した。「ディス・ヒートの伝説的ドラマー」の煽り文句で身動きとれないほど盛況だった初来日時とはちがい、このとき表参道でおこなった単独ライヴはほどよい集客だった。演奏はドラムとヴォイスをメインに小物(サンプラーやラジカセ)を絡めたパンキッシュかつポップなヘイワードらしい即興でたのしかったが既視感はいなめず、私はどこか確認するような気持ちにもなっていた。終盤にさしかかりヘイワードはドラムセットから舞台の中央にでてきて、小物のひとつのラジカセの取っ手をつかみゆっくりと回しはじめた。ラジカセが旋回するごとにそこから流れる音がヘイワードを中心にした円周の上で奇妙なドップラー効果を生み、速度があがると音程も変わっていく。見た目にも音響的にもこのパフォーマンスは私たちを惹きつけ、場はしだいに盛り上がり、ヘイワードもラジカセをまわしにまわし、最高速度になったとき......ラジカセの取っ手が外れ、本体は横に舞台横にすっ飛び、壊れた。私と私の隣に座っていたカメラマンの塩田正幸は叫び声をあげた。ヘイワードは運動の慣性でなおも数回腕をまわしたが、顔には唖然とした表情が張りついていて、それは1984年6月2日の草月会館でみせたパイクと重なるものがあった。このようなことがあると場の空気は一変する。あのあと、ヘイワードは猛然とドラムを叩きだし、パイクの演奏の色彩は変わった。だが、ボイスはそれに触発されない。ボイスの位置からはパイクが死角になっているのか? 彼は鼻孔から吸いこみ喉の奥をとおし絞り出した空気をマイクで増幅し、黒板にその場で書き記したスコア--それは音価を示したリズム譜のようなものと思われる--をチョークでなぞりながら咆哮をコントロールしている。

BEUYS IN JAPAN
ヨーゼフ・ボイス
よみがえる革命

フィルムアート社

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今回の展覧会の副読本『ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命』(フィルムアート社)で高橋瑞木氏は「例えば、美術家の赤瀬川源平は、東野芳明と写真家の安齊重男との鼎談で「見てはいけなかったものを見てしまった」と語り、草月ホールのパフォーマンスを中座したと告白している」(文中の脚注指示は省略した)と書いたが、赤瀬川源平とおなじ気持ちになった観客はすくなからずいたはずで、仮に中座してもアクションの「価値」(とはつまり「意味」だが)は損なわれなかったに違いない。パイクはときに童謡のメロディを弾き出し、パフォーマンスに起伏をつくろうと試みるが、舞台上手のボイスは巌のような意味の塊に見え、アクションは千代に八千代につづくかのようにさえ思われたが、あるとき唐突な終わり方をした。私は切断にも似たその休止がアクションの意味を増幅させて驚いた。「コヨーテ・」は制止し、ボイスが執拗に指し示した意味の塊が舞台から消え去ったあとにかえってその重みをました気がしたのだった。アクションがイナクション(INACTION)になったとき初めて私はその上に悠久の時間が流れだしたとでもいえばいいのか、時間を超えた普遍さえほのめかされた気分になった。彼はあの1984年6月2日の草月会館にいた観客だけが相手だったのではなく、草月会館の外の木々のざわめきと通じ、ポストモダンが喧しくいわれだした1984年から歴史を遡り、無人の時間に達しようと吠えつづけたようでもあった。もう彼の行為は音楽の様式との相克が問われるようなものでなく、「音楽ではなく」、だが「音楽になり得る」なにかだったのではないか。

 それはまたボイスとフルクサスとの差異をに思わせるものでもあった。彼の重要なモチーフのひとつである脂肪が温度によって液体にも固体にもなるように、つねに流動体を意図したフルクサスとボイスは共有できる領域をもちながら、他方で溶け合わないものがあり、それはボイスの創作上の哲学からきていると思われるが、詳しくは次回書きます。

Mayfair Set - ele-king

 明け方に雪そっくりな虫が降り誰にも区別がつかないのです 
穂村 弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

 ゴミを見てゴミを美しいと思う、それがシットゲイズ(shitgaze)という感性だ。さらに言うなら、そこには逆説的なニュアンスがあってはならず、ふつうに美しいと思うのでなければならない。なぜゴミがふつうに美しいのか。それは、ゴミが世界に対する自らのアナロジーとして感じられるからだ。自らばかりではない。我々の、人びとの、みんなの生がゴミのよう。ゴミのように輝いている。そういう認識である。

 シットゲイズという言葉は、レイト・ゼロ年代を、あるいは10年代のグレーな幕明けを思うとき、影送りのように眼裏をかすめる。見ての通り「シューゲイズ(shoegaze)」に「シット(shit)」を掛けた言葉で、一群のバンドや音を指す。なるほど深いリヴァーブやフィードバック・ノイズといったシューゲイズ・サウンドの輪郭を持ってはいるが、本家シューゲイザーに色濃くうかがわれるセカイ系的な甘美さはない。あるのはミクロな日常性を加工なしに垂れ流す不敵さ。オハイオのローファイ・デュオ、サイケデリック・ホースシットのマット・ホワイトハーストの発言がこの言葉の起源となるようだが(2009年に『シットゲイズ・アンセムズ』というミニ・アルバムも出している)、我々が思い浮かべる具体名としては、タイムズ・ニュー・ヴァイキングやイート・スカル、シック・アルプス。またノー・エイジやウェイヴス、ヴィヴィアン・ガールズまで含めてもよいだろうし、ウッズ率いる〈ウッドシスト〉、ブランク・ドッグス率いる〈キャプチャード・トラックス〉、〈イン・ザ・レッド〉といったレーベル名をぼんやりと思い浮かべれば間違いはない。ローファイでガレージー、リヴァービーでダウナーな音は映画『ガンモ』の描き出したような郊外的な閉塞や絶望をはらみながらも、それをとくに苦にしない一種の知性でもってゼロ年代的な風景を照らし出す。ヴォーカル・スタイルにも共通性があって、なんだかみんなそのもやもやした音の向こうでいっせいに、わーっと、つぶやいている。遠方でペイヴメントが結像するようなローファイ2.0、そうした一群だ。

 さて、そんなローファイ2.0の中心地、USシーン最大のサイケ/シューゲイズ・コロニー〈ウッドシスト〉より、人気2バンドのメンバーによるコラボ・ユニットのデビューEPがようやくCDでリリースされた。ブランク・ドッグスことマイク・スナイパーと、ダム・ダム・ガールズのディー・ディーという小憎い男女デュオだ。ブランク・ドッグスが自身の〈キャプチャード・トラックス〉よりリリースしたダム・ダム・ガールズのデビューEP『ダム・ダム・ガールズ』は昨年大いに話題になり、自らも〈イン・ザ・レッド〉からのセカンド・アルバム『アンダー・アンド・アンダー』で日本でもいっきに存在感を増した。メイフェア・セットとしてのデビュー・シングル『オーレディー・ウォーム』は〈キャプチャード・トラックス〉からリリースしている。じつにUSらしい、バンド同士の有機的な横のつながりがシーンを生み出す好例と言える。

 トラック3の"ジャンクト!"(12インチの方ではトラック1)。何遍聴いてもそのたびに「こんなに速い曲だっただろうか?」と感じるシットゲイズの名曲だ。この逸るようなリズム感は上記のローファイ勢のなかにぜひとも聴き取ってもらいたい要素である。ノリはスカしたようにゆるいのだが、リズムは意外に切迫しているのが彼らだ。そしてゆらゆらした温泉のようなリヴァーブを取り去っても、かなりしっかりメロディが残る。達観しているようで青い。そうした切ない要素が特にストレートに出ているのがメイフェア・セットである。それゆえに例えば『ピッチフォーク』等では辛めの点数を付けられるのだろうが、おそらくはディー・ディーによるところのこのやや甘口なドリーム・ポップ・テイスト、c86的なメロディ志向は、間違いなく2009年を牽引したエレメントのひとつである。彼女の少年のような声もいい。そしてブランク・ドッグスのローファイ/シューゲなプロダクションは彼一人のときよりも彼女の声が添うときに雄弁だ。ローファイな録音の、粗い粒子の一粒一粒がこの世界を取り巻くゴミのよう、自らもそのひとつだ......。それはなんとなく雪のようでもあり、美しい。誰にも区別はつかない。虫か、ゴミか、雪か。

 冒頭の歌にはわずかに世界への呪いを感じるが、シットゲイザーはその後の世界を生きている。この世はクソかも知れないが、それは生まれてきたときからそうだったし、自分もクソみたいなものなのだろう。それはまあそれでいい。それはべつに、世界が美しくないことを意味しないのだから。シットゲイズな感性にはどちらかといえば肯定的な知性がある。そしてメイフェア・セットのサウンドは、少なくともゴミのように美しい。

interview with あるぱちかぶと - ele-king

 ごく常識的に考えて、人生には何の目的もないから、せめて生きているかぎりの自我実現の目標を立て、それがどんなに儚いものであるにせよ、また可能であれ不可能であれ、歴史のなかにおのれの生の痕跡を残しておきたい、という考え方がある。またその一方、人生には何の目的もないから、自我なんかどうでもよく、何か一つの目的をそこに設定して、信じるにせよ信じないにせよ、それに向かってしゃにむに突っ走り、おのれを滅ぼすと同時に世界をほろぼしてしまいたい、という考え方がある。
澁澤龍彦「輪廻と転生のロマン」

 永遠を信じないならどっちみち同じだよ
あるぱちかぶと"或蜂"

 あるぱちかぶとの『◎≠(マルカイキ)』は突然変異体だ。ラッパーらしからぬラッパーによる、ヒップホップらしくないヒップホップのアルバムは、最初から孤立することを覚悟しているようにも思える。自称デラシネ(根無し草)が創造したこの作品は、新しい楽曲に関して言えば、韻を踏むことさえまるで気にしていない。彼が執着するのはラップの約束事よりも、まるで戯作や短編小説を書き上げるようにひとつのリリックを完成させることなのだ。

あるぱちかぶと
あるぱちかぶと
◎≠(マルカイキ)

Slye

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 そして『◎≠(マルカイキ)』は葛藤の物語だ。自己分裂をテーマに展開する"或蜂"。そして、「体はひとつ/感情はななつ/気分は無数(略)いくら数えても数えても数えても数えても数のほうが足りない」という"頭"、「お前はいまでもあそこに座ってぼくを待っている」――フィリップ・K・ディックの『ヴァリス』のように分裂症をトリックとする"日没サスペンデッド"。

 トピックは他にもある。"トーキョー難民"では聴き手がそれを理解するよりも早く地名が連射される。そして聴き手の脳裏に街の姿を想像させる。レトリカルな"コケシの笑み"や"葉脈は性懲りもなく"も面白い。こうした過剰な言葉遊びは彼の独壇場でもあろう。アルバムのベストのひとつであろう"完璧な一日"は、1日のなかで人が生まれ成長し、大人になり、そして死んでいく様が描かれる。なんとも奇妙な叙情詩である。
 あるいは、"元少年ライカ"を聴いていると僕はとても切ない気持ちになる。あるぱちかぶとは、宇宙の霊魂に過去の記憶を語らせながら、ひとりの無名の人生に慈しみを注いでいるようだ。そして聴き終わってからあらためて驚くのは、この詩人がまだ23歳であるという事実なのだ。

 よって僕は、このラッパーがいったいどんな青年なのか知りたくなって、2月某日の昼下がりに下北沢で待ち合わせることにした次第である。約束の時間よりも5分ほど遅れて着くと、彼はそこに立っていた。

どんな青年だろう? ってずっと気になっていたんですよ(笑)。しかし......間違ってもラッパーだとは思われないだろうね。

はははは。

何故ラップ表現をやることになったんですか? 

2005年にやりはじめたときはもっとヒップホップしてたと思うんですけどね。

ヒップホップらしくないヒップホップのアルバムだよね。

最初はヒップホップであることを意識してました。ラップすることは昔からの憧れだったんです。中学のときに聴きはじめていて......。

そんなに早くから! 中学生のときから好きだったんだ。

はい。やりはじめたのが高校生のときでした。友たちの誕生日を祝うお金がなくて曲をプレゼントしたのが最初でしたね。やっぱり、自分のなかに表現したいという欲求がたぶん他人よりはあると思うんです。

それはヒシヒシと伝わるよ。

それがなんでラップなのか? ってことですよね。それがいちばん、自分が伝えたいことを表現するうえで有効に思えたからです。

小説には向かわなかったんだ。

小説は好きですけど、自分の言葉を音楽にのっけて抑揚つけながら発話する、そのやり方が自分にはしっくりくるんだと思います。

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あるぱちかぶと
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◎≠(マルカイキ)

Slye

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ちなみに中学のときに好きだったラッパーは?

中学のときはアメリカに住んでいたんです。そこでラジオでいつも流れていたんです。

当時は?

エミネムのセカンドが出たぐらいですね。

マーシャル・マザース』だよね。

ジェイ・Zも聴きました。

ブルー・プリント』?

その前後です。あとアウトキャストですね。

スタンコニア』だね。

そうです。

長く住んでいたんですか?

中学の3年間です。

インターナショナル・スクールみたいなところ?

普通の現地の中学でした。

英語には馴染んでいたんだ。

ただラップは、耳障りの良さで聴いていましたね。

なるほど。先日、アルバムの発売記念のライヴを観たんですけど、とてもラッパーとは思えないというか、不思議な違和感を発していたんだけど(笑)。

そうですね。

自分のなかではヒップホップ文化に対して親密な感情を抱いているんですか?

ないですね......いまとなってはない。ヒップホップ愛はなくなったけど、表現するというところで残っている感じです。

方法論としてだけ残っている?

中学のときに好きになって、それでラップをはじめたくらいだからヒップホップへの愛情は強いほうだと思っていたんです。けど、いざ活動をはじめてみて、まわりを見渡してみたら自分のそれはそこまで強いものではないと、そう思うところが大きかったんですね。それに、好きでいればいるほど飽きてくるというのもあって、だったらもう固執しなくてもいいかと、そうなっていきましたね。

アルバムを聴くとそこはすごくよくわかる。聴いているだけでどの曲が古いか新しいかがわかる。ヒップホップのクリシェがある曲と、それをまったく度外視している曲とがあるよね。"元少年ライカ"のような曲になると韻を踏むことにもう囚われていないでしょ。

そうですね。

"大震災"みたいなヒップホップらしい曲も僕は格好いいと思うんだけど。

"大震災"は、自分のなかではもう3年ぐらい時間が空いているんですよね。声の出し方がもう違ってきているし。

ヒップホップ以外の音楽は好きになったことはない?

とくに他に深くのめり込んだってことはないですね。高校時代はヒップホップ一辺倒でしたから。高校のときに日本に帰ってきて、日本語のヒップホップも聴きはじめました。シンゴ02、餓鬼レンジャー......、あとは降神も聴きました。

知り合いから「あるぱちは降神と似てる」という話を聞いたことがあって、でも違うよね(笑)。

影響は受けていると思うんですけどね。

でも、降神にはカウンター・カルチャーってものがあるじゃないですか。『マルカイキ』にはそれがないでしょ。

そうですね。政治性もないし、プライヴェートなことを言ってるだけとも言える。

"元少年ライカ"は不思議な曲で、人の一生を綴っているんだけど、そこには批評性というのがない。シンゴ02や降神には、多かれ少なかれ、"戦い"というものがあるでしょ。

そういう"戦い"のようなものが僕にはないから、平々凡々とした日常を描写するしかないんです。

ただ、"元少年ライカ"や"完璧な一日"で描かれる凡庸さがとてもユニークに思えたんですよ。その凡庸さを茶化すのでもなく嘆くのでもなく、バカにするんでもなく、どこか優しい眼差しを注いでいるでしょう。というか、あの曲には音楽表現にありがちな感情の起伏のようなものがない。しかし、それでも大量の言葉がある。で、いったいどこからこの大量な言葉が出てくるんだろうというのが謎で......。

 

 そして、あるぱちかぶとが『マルカイキ』のコンセプトを明かしてくれた。以下、彼の説明をまとめてみた。
 アルバムにはふたつの自分がいる。ひとりは、この先社会で生きていくにはパッションや感受性がないほうが楽であると考えている。彼は自らを去勢し、そして生きていくことを望む。もうひとりはまったくその逆で、パッションや情念に生きる人=それが或蜂(あるぱち)という人格になって表象される。アルバムの最後の曲"日没サスペンデッド"では、結局、すべてを葬り去った(去勢した)自分がそれでどうなったのか? ということを空想して描いている――という。



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あるぱちかぶと
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◎≠(マルカイキ)

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パッションが重荷になるとはどういうことなんだろう?

ヒップホップに入れば入るほど、それに突き返される感覚があって。

それはなにかトラウマめいたものが......。

いや、僕はごくごく普通の大学生だと思いますよ。

人前に出てラップしたり、作品を出したりすることはものすごいエネルギーを使うことだし、"トーキョー難民"や"完璧な一日"のファスト・ラップにしてもパッションなしではあり得ない表現だよね。だからものすごい自己矛盾を抱えたままやっているということなんだね。まさか死の誘惑みたいなのが......?

それはないです。ただ、社会でうまくやっていくにはフラットになるしかないというのがあって。そこではパッションは余計である、という考えですね。

時計仕掛けのオレンジ』は権力によってフラットにさせられてしまうけど、あるぱち君は自らあの手術台に載ったほうがいいんじゃないかと。

そうです。

それは世代感覚と言える?

ある意味では世代とも言えると思うんですけど、ただこの発想自体が僕のなかで生まれたものです。僕はそれをどんどん膨らませていった。

リリックのなかに村上春樹や芥川龍之介が出てくるけど、文学からの影響が強いんでしょうね。

ものすごく強いです。

"元少年ライカ"は『スプートニックの恋人』でしょ?

いや、あれは実は、カウリスマキの『過去のない男』なんです。

そうだったんだ。"元少年ライカ"のなかの「けれどもきっと私は、愛しておりました」という繰り返しがあるけど、あの言葉は何で出てきたの?

なんでしょうね。たとえどんなに辛い記憶であっても、まったく記憶がないよりはいいというような意味でしょうね。

あるぱちかぶと

 大学でポーランド語を専攻する彼は、彼の文学趣味について話しくれた。村上春樹、島田雅彦、夏目漱石、太宰治......。彼は彼の村上作品の解釈(とくに『羊をめぐる冒険』『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』『ダンス・ダンス・ダンス』について)、村上春樹と三島由起夫の共通点、あるいは近代文学への関心、あるいは『豊饒の海』について話してくれた(それはなかなか面白い話だったけれど、話が脱線しすぎるので省略します)。


確固たるメッセージがあるときは、無理してまでも韻を踏もうとは思わない。落語は韻を踏まずに最後まで聞かせる。そこにはラップとの共通点があると思うんです。


英語ができるんだから、英語でラップしようとは思わなかった?

それまったくなかった。ただ、エクシーと知り合った当初、彼は「英語でラップしてくれ」と言ってきましたけど(笑)。

はははは(笑)。

最初はだから英語でやろうとしたけど、それも止めました。自分から「日本語だけでやる」って言ったんです。英語ができるといってもネイティヴ・レヴェルなわけじゃないし、たんに格好良さだけだから。

韻にはついては?

韻を踏むことで、思いも寄らない言葉が出てくることもあるんです。それは楽しいんですけど、確固たるメッセージがあるときは、無理してまでも韻を踏もうとは思わないです。僕にとって韻を踏むことはある種の照れ隠しなんです。

韻を踏まずにラップするのって、挑戦だよね。

落語が好きで。落語は韻を踏まずに最後まで聞かせる。そこにはラップとの共通点があると思うんです。

ちなみに誰が好きですか?

立川流が好きですね。とくに立川談志が好きです。他は古今亭志ん朝も好きですね。で、一時期、自分のまわりの友だちのラップのライヴを観ていて、すごくマンネリを感じたことがあったんです。同じ繰り返しに思えて。だけど、落語の場合は、同じリフレインでも言葉の(意味が)どんどん膨らんでいくようなところがあって。その落語の面白さをラップに導入することがいま僕の考えていることです。



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あるぱちかぶと
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◎≠(マルカイキ)

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なるほど。それはまさに勝負どころですね。ところでバックトラックについてどう考えているの?

自分から声をかけました。まず僕のなかに曲のイメージがあって、それを(トラックメイカーに)説明して、トラックができたら言葉を詰めていくって感じです。

けっこういろんな人たちが作っているよね。結局、何人のトラックメイカーが参加しているんですか?

7人ですね。実際に会ったことがない人がひとりいます。my space上でやりとりしたっていう人が。でも、アルバム全体はそれなりにまとまりのある音になったと思います。

たしかにそうだね。エクシーとはどういう出会いだったんですか?

大学に入ったときにラップしたいと思っても、まわりにラップがわかる友だちがいなかったんです。そうしたら僕の従兄弟が同じ年に大学に入って、彼が友だちにひとりいるよと。それがエクシーだったんです。当時彼は成城大学だったんですけど、そこの学際で初めてのライヴをやりました。曲ができたのが本番の前日で(笑)。いま考えるととんでもない。

彼とは気があったんだね。

そうですね。彼が学生の......例えば早稲田のギャラクシーというサークルを紹介してくれたり、そこで知り合った人たちと一緒にイヴェントをやったりしてたのもエクシーで、そこに出してもらったり......、だから最初の頃は、彼におんぶにだっこでついていった感じでしたね。

たとえばゼロ年代のラップ......MSCやシーダは聴かなかった?

聴きませんでした。

まわりの友だちは聴いていたでしょう?

聴いていました。

みんな「すげー」って言ってたでしょ? 興味は持たなかったの?

僕は持たなかったんですよ。

自分の表現の目指すモノとは違うって感じだったんですか?

そうなんです。違うと思ってました。

では、共感できる人はいた?

うーん......。

レディオヘッドは?

好きですけど......、あれもまた僕とは違うし。

あれは社会派でもあるからね。

そうなんです。ラップでポエトリー・リーディングみたいなことをしている人たちもいると思うんですけど、そういうのも熱心に聴かなかったし......、うーん、なかなか名前が出てこないですね。

海外にもいない?

中学のときはナズが好きで自分で訳したりしてたけど、彼のパンチラインに惹かれたり......、でも、うーん......、日本語ラップって、僕は独自の文化になっていると思うんです。音楽というよりも、もっと幅が広いものになっていると思うんです。

ちなみにアルバムに対するまわりの反応はどうだったんですか?

やっぱ「ラップが早いね」とか、「言葉が多いね」って言われますね。ただ、それは僕にとって意外なんです。ラップはそもそも言葉が詰まっているものだと思っているから。こないだiTunesで"完璧な一日"を無料配信したんですけど、「息苦しい」という感想が多くて、「ラップってそもそも息苦しいでしょう」と思ったんですよね(笑)。

そんなことはないよ(笑)。でも、「息苦しい」という気持ちもわかる。ていうか、考えるスキを与えない早さでラップするじゃない? なんでそんな早口なの?

それは落語の影響ですね。ブレイクなしでたたみかけるような感じを出したいと思ったんです。隙間がもどかしいと思って。

 最後に、不思議な響きのアルバム・タイトルについて。「回」がまるくなって「まるかい(◎)」、もうひとつが「キ」、それで「マルカイキ」となる。ふたつの記号が自己矛盾や対立を表しているとのこと。

 最後の最後にもうひとつ、"トーキョー難民"には松尾芭蕉の頃の「偲ぶ都」の感覚をいまの時代に照射したとのことで、曲において早口で連射される地名は「移動」を表しているとのこと、「移動」が自分の「ホーム」であると、あの曲はそういう、本人の言葉で言えば「前向きな」コンセプトであると――。

ハックルベリー・フィンの冒険 ジムはまじめくさった声で言った。
「おやじさんはもう帰ってこねえよ、ハック」
おらは言った。
「なぜだい、ジム?」
「なぜだっていいんだよ、ハック――とにかくもう帰ってこねえんだ」

マーク・トウェイン 『ハックルベリー・フィンの冒険』 西田実 訳

 1885年に発表されたマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』は、近代における若者の"自由と冒険"を描いた小説としてよく知られている。母親を持たず、一文無しでアル中の父親と暮らすハックは逃亡した黒人奴隷のジムと出会い意気投合して、そしてふたりは自由を求めて旅に出る。社会の最下層で生きる少年たちが繰り広げる冒険譚は、ある程度の知恵が付いた子供なら誰もが憧れる放浪(家出への避けがたい願望)であり、そしてそれは彼らのさまざまな経験(出会いや別れ、悪人とのやりとり、父親との無情な決裂も含む)を通して語られる当時のアメリカ社会に対する厳しい風刺でもある。と同時に、それはずる賢くしかし魂の汚れた白人と、無知だが頭が良く魂の美しい黒人という、おそらく物語においていまだ有効であろう図式を生み出している。

 小学生のとき『トム・ソーヤの冒険』を読んで、そして続く『ハックルベリー・フィンの冒険』を読みかけて挫折した。そういう人は多いだろう。なにも静岡市立図書館のせいではない、だいたい原書では「ニガー」とか「ニグロ」という言葉が氾濫するような、ある意味「ペアレンタル・アドバイザリー」が貼られたような本だ。逃亡奴隷を友とし、父からの逃走の物語でもあるこれを児童文学だと薦めるのは無理がある。

 それよりもJ.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』のほうがよほどわかりやすかったと思う。文学史の観点で言えば、『ハックルベリー・フィンの冒険』で描かれた"自由"の第二次大戦後のヴァージョンが、そう、お馴染みホールデン・コールフィールドの"反抗"とされている。1951年に発表されたそれは、しかし冒険譚という形体ではない。よく知られるように、『ライ麦畑でつかまえて』は疎外者(アウトサイダー)としての少年の告白だ。そして......2010年の1月27日に91歳で亡くなったこの小説家の追悼において『ガーディアン』が言うように「J.D.サリンジャーがロックンローラーのキャラクターを創造」して、「ホールデンのキャラクターがロックンロールの反抗者の思想にインスピレーションを与えた」のである。だから、日本で暮らす若者にとってはミシシッピーを下るハックとジムの冒険よりもホールデンの彷徨のほうがはるかに理解しやすいのである。

 僕がまだ駆け出しの編集者だった頃、ある高名な英文学者に仕事を依頼したことがあった。公立大学の英文科の教壇に立つ彼との雑談のなかで、「毎年入ってくる新入生に好きな作家は誰かと訊くと、ほとんどがサリンジャーと言うんだよ」と、いかにも「やれやれ」といった風に彼が話してくれたことをよく憶えている。20代半ばの僕は、「そうか、サリンジャーというのはルイス・キャロルや、あるいは『白鯨』なんかと比較してずいぶんとレヴェルが低いのだな」、そう思ったものだった。昨年のJ.G.バラードの死のときもそうだったけれど――いや、あれはまあ、母国だし当たり前か――、とにかくそれでも『ガーディアン』は例によって数日間に渡り、社会、文化、音楽、書籍、あらゆるコーナーを使って、1965年に最後の作品を発表してから沈黙を守り通したこの作家の追悼記事を掲載し続けている。作家や評論家スジだけではなく、コメディアンやジャーヴィス・コッカーのような音楽家のコメントも掲載されていた。コッカーは「彼の一節や言い回しは永遠に僕のなかにある」と記し、ポストモダンを代表する小説家のジュリアン・バーンズは「重要なのは、我々の文明からアドレッセンスとして知られる歪められた境遇が消えるまで持ちこたえるであろう完璧なマスターピースをサリンジャーが書いたこということだ」、とコメントしている。

 僕がそのなかで(といっても、すべてを読んだわけではないのだけれど)興味深かったのは、「サリンジャーの秘密の歴史(The secret history of JD Salinger)」という記事だった。サリンジャーが第二次大戦中に兵士を志願して、ナチスと戦っていた話は有名である。「彼は1942年に徴兵され、歩兵部隊としてD-DAYのときユタ・ビーチに関わっている。フランスで戦い、バルジ大作戦にも立ち会い、ナチの強制収容所を解放する最初のひとりでもあった」、とその記事に書かれている。「彼は現実問題として、リアルに戦争体験をしている」のだ。

 記事が告げているのは、そうしたリアルな戦争体験を通してサリンジャーがもっとも苛立ったのは、ナチスでもなければ戦争でもなかった、アメリカ軍そのものだった、という話だ。「彼は戦争よりも軍のことをひどく憎んでいました」、記事のなかで彼の兄が生前話したこのような言葉が引用されている。そしてサリンジャーは兄にこう打ち明けたことがあるという。「軍はナチスと同じように、バカ野郎どもで溢れていた」と。つまり、『ライ麦畑でつかまえて』を覆っている大人社会への"軽蔑"は、サリンジャーの母国の軍隊に対する憎しみに由来するというのである。カート・ヴォネガット・ジュニアの『スローターハウス5』だって、彼の戦争経験を題材にしながら人生の不条理を描いているというのに......。

 世間はこうしたサリンジャーを精神的にタフではなかったと評する。むしろその手のタフをさを求める社会的通念に彼は抵抗したとも言えるし、あるいはタフではないがゆえに見えることを彼は書いたとも言える。だから、仮に『ガーディアン』のその記事にそって考えれば、ロックンロールの初期衝動に含有される反抗とは、例えば反戦などではない。そうした大義名分ではなく、それを支えるコミュニティの"質"に対する"苛立ち"ということになる。それは大人からは見えない"苛立ち"で、大人社会のもっともらしさへの懐疑心である。それは大人社会、もしくは「大人になれ」という強制に対する拒絶の表れであり、同時に子供の側が大人を批評するということでもある。

 そしてそれはたしかにロックンロールの青写真のように思える。小説が発表されたのは1951年だが、その続編はロックンロールのなかにある、とさえ言える。というか、およそ60年後の現在にいたるまでそれは続いているってわけだ――。アニマル・コレクティヴはいつまで子供でいるつもりなのだろう。


そしてあたりには誰もない――誰もって大人はだよ――僕のほかにはね。
J.D.サリンジャー 『ライ麦畑でつかまえて』 野崎孝 訳

Riva Starr / If Life Gives You Lemons, Make Lemonade - ele-king

 数年前から目につくようになった、MySpaceとかで注目されてヒットに結びついたみたいな新人のエピソードにはいいかげん食傷気味だ。だいたいからしてこれだけネットでいろんなチャンネルができて毎日誰もがネットにつながって何かしらの発信をしたり相当量の情報を得てるんだから、レコード会社がそこから情報を得てないわけもないし、要するにそういう売り文句自体ただちょっと新世代のアーティストっていう箔付をしたいから宣伝に使われてるにすぎないだろ、と突っ込みたくもなる。リヴァ・スターことナポリ出身のステファーノ・ミエーレも、ドアーズの"ジ・エンド"のリミックスだのを勝手に作ってネットで配布し、それがきっかけでノーマン・クック、ジェシー・ローズ、クロード・ヴァンストロークなど売れっ子DJ/レーベル・オーナーたちに注目されて一気にブレークしたと喧伝されている。まぁたしかに、テキトーにブートのリミックスをサイトに置いてそれでおいしい契約が転がり込んできたなんてシンデレラ・ストーリーがホントにあるなら、みんなそうやればいいじゃんという気もするが、彼自身別の名義(本名やMadoxなど)で10年以上の多数のリリース歴があって、まぁいきなりブレイクした新人とは言い難い。世の中そんなに甘くないって!

 ジェシー・ローズのレーベル〈Made To Play〉初のアーティスト・アルバムとしてリリースされた本作は、クラブ・ミュージックの最前線を渡り歩いてきた巧者っぽい仕掛けや音のキレもさることながら、全編に渡って途切れることなく注入され続けるあれやこれやのアイデアが素晴らしい。バルカン音楽に傾注してるというだけあって、シングル曲"I Was Drunk"(ヴォーカルにユニークなデュオ、Nozeを起用)やユーゴスラビア映画『黒猫・白猫』(エミール・クストリッツァ監督/98年)を題材にした"Black Cat, White Cat"あたりはそういったジプシー的陽気さをもった伝統音楽の断片を再構築して、えもいわれぬ雰囲気の曲に仕上げている。一発インパクトのあるネタをもってきて切り刻んでファンキーなリズムに乗せて料理するって言う手法は、もう何年も前から「次はコレ」みたいに言われつづけてるフィジット・ハウスだよということなのかもしれないけど、それで「あぁ~、アホっぽいちゃらいやつね。まだあるんだ?」みたいな受け取られ方で敬遠されるくらいなら、いまいちばん笑えて踊れるハウスとでも言ってしまってもいい。自身、MySpaceのジャンル欄には「コメディー」「ハウス」と書いてるくらいだからな。

 〈Cadenza〉あたりのフォルクローレ的流れと呼応する部分もあるのだろうか、ブルガリアの女性ヴォイスとラッパ、クラップの絡む"Bulgarian Chicks"はいかにも土着的なダンスの悦びを感じさせる曲だし、"Maria"も元ネタはどこの楽曲かわからないがRebootあたりがやった曲と言われても納得しそうだ(こちらは昨年〈Get Physical〉のサブレーベルからでたシングル"War Dance"に収録されていた)。しかし一方で、"China Gum"はブリーピーでブーミーなベースが炸裂するブレイクビーツ曲だし、呪術的ラップがキモチワルカッコイイ"Dance Me"はストレートなアシッド・ハウス、"Riva's Boogaloo"は全盛時のジェフ・ミルズ~パーパス・メーカーを思わせるピアノのループのグルーヴだけで引っぱる曲、そして"Tribute"はその名の通りMr. Fingersの名曲"Can You Feel It"を彼なりに再構築というかカヴァーした曲だ。ヒヨッコにはかもせない風格というか加齢臭というかも、微妙に漂ってくるではないか。リヴァ・スター自身が編集した"Dance Me"のヴィデオ(たぶん無許可)を見ると、ヴァニラ・アイスやMCハマーからリック・アストリー、Mr. T、そしてニュー・オーダーといったまったく節操のないチョイスのダンスの映像がカットアップされていて、間をつなぐのはとにかくぶっといジョイント。年齢もオリジンも音楽背景も「???」となりそうなセンスなのだが、たぶんこの無意味さ無法さこそが彼の本質なのだ。そのくせ、誰でもメロを口ずさめるロシアの軍歌"ポーリュシカ・ポーレ"の切ない主題をなぜかレゲエ調のトラックにのせてしみじみ聞かせる「Once Upon A Time」が、アルバムの山場にポンと置かれる。たぶん、日本のテクノ好きでこういう趣味をガッツリ否定できるひとは少ないはず。ん~すんばらすぃ~。

 ちなみに、日本盤ではジェシー・ローズとオリヴァー$のリミックス2曲が追加収録され、3月3日に発売になるそうだ。楽しみ!

CHART by JAPONICA 2010.02 - ele-king

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1

HOLGER CZUKAY

HOLGER CZUKAY A GOOD MORNING STORY CLAREMONT 56/UK / 2月15日 »COMMENT GET MUSIC
先日リリースされた限定10インチが瞬く間にソールドアウトとなったクラウト・ロックの伝説的グループCANのオリジナル・メンバー、ホルガー・シューカイが99年にリリースした大傑作アルバムが10年の時を経て2LPで登場!当時もCDオンリーでのリリースだったため今回が初のアナログ化!未発表音源を 3曲収録、見開きジャケット仕様、ナンバリング入りの世界限定500枚プレス!

2

ANDRES

ANDRES II PART 2 MAHOGANI / US / 2010/2/9 »COMMENT GET MUSIC
先行リリースCDアルバムに続き「・」アナログ盤第二弾が遂にリリース!JAZZ、SOUL、LATINなどのブラック・ルーツ・ミュージックから抽出されたエッセンスをANDRESのフィルターを通しMOODYMANN、J DILLA同様のデトロイト漆黒グルーヴを継承した最新のHOUSE、HIPHOPへと昇華された極上ビート全10トラック収録!

3

COFFEE & CIGARETTES BAND

COFFEE & CIGARETTES BAND LOVE THING EP FACE THE MUSIC RECORD / JPN / 2010/1/29 »COMMENT GET MUSIC
キャリア集大成的な大傑作1stアルバム「LOVE THING」からの限定12inchシングルは、2009/10/10、京都クラブ METROにて開催された京都が誇る名物パーティー「OUTPUT 10th ANNIVERSARY」でのSOFTによる"LOVE THING"の一夜限りのカヴァーをそのままライブ・ヴァージョンで収録!さらにそのSOFTのメンバーでもあるKNDによるエディットも収録したスペシャルな一枚!

4

BISON

BISON WAY TO LA CLAREMONT 56/UK / 2月15日 »COMMENT GET MUSIC
好調なリリースを重ねるPAUL MURPHYことMUDD主宰のCLAREMONT 56より、CANのHOLGER CZUKAYシンガーのURSA MAJOR、そしてレーベル主宰PAUL "MUDD" MURPHYとSMITH & MUDDのBENJAMIN SMITHによる新ユニットBISONによるデビュー・シングルが限定10インチで到着!メンバーの個性をイイとこ取りしたオブスキュア・ロック・ディスコ傑作です!

5

THE SOUL JAZZ ORCHESTRA

THE SOUL JAZZ ORCHESTRA RISING SUN STRUT / UK / 2010/2/14 »COMMENT GET MUSIC
ジャイルス・ピーターソンはじめ数多くのトップDJたちも絶賛するカナダはオタワ発、現行アフロ・ファンク・バンTHE SOUL JAZZ ORCHESTRA、待望の4thアルバムが鉄板レーベル<STRUT>よりリリース!アフリカンなパーカッション、ホーンが吹き荒れるアフロ・ファンク "AGBARA"やPHAROAH SANDERSのカヴァーとなる"REJOICE PT.1&PT.2"など70'sサウンドを踏襲し洗練された最新のアフロ・ファンク・グルーヴを披露した大傑作アルバム!

6

HENRIK SCHWARZ / AME / DIXON

HENRIK SCHWARZ / AME / DIXON A CRITICAL MASS LIVE EP INNERVISIONS / GER / 2010/2/15 »COMMENT GET MUSIC
INNERVISIONSの看板アーティスト達による強力な一枚!09年に行われたツアー音源をベースにした本作は、ROY AYERSをネタにしたHENRIK SCHWARZの名曲"CHICAGO"のニュー・ヴァージョンに加え、HENRIK SCHWARZ、AME、DIXONによる共作"BERLIN-KARLSRUHE EXPRESS"を収録!シーンの最先端をいくエレクトリック・トラックに脱帽です!

7

THE WHITEFIELD BROTHERS

THE WHITEFIELD BROTHERS EARTHOLOGY NOW AGAIN / US / 2010/2/12 »COMMENT GET MUSIC
USディープ・ファンク・バンドWHITFIELD BROTHERS、待望の2ndアルバム!先行カットされたEDAN & MR. LIFのラップをフィーチャーして贈る"THE GIFT"はもちろん、おなじくラップにPERCEE PとMEDの<STONES THROW>ファミリーを迎えたファンク・ヒップホップ"REVERSE"、QUANTICをフィーチャーしラテン/アフロな味付けが施された "LULLABY FOR LAGOS"等、豪華な客演陣参加でワールド・ワイドな音の広がりを見せ付ける濃密ディープ・ファンク・アルバム!

8

GEORGIA ANNE MULDROW

GEORGIA ANNE MULDROW KINGS BALLAD UBIQUITY / US / 2010/1/30 »COMMENT GET MUSIC
GEORGIA ANNE MULDROW待望の新作フル・アルバム!!GEORGIA自身が全曲全てオリジナルで書き下ろし、夫でありまた良きパートナーでもあるDUDDLEY PERKINSも全面的にバックアップした今作は彼女の秀でたプロダクション・スキルも堪能できるヒップホップ・トラックからエレクトリックなロービート・トラックまでバリエーション豊かに展開され、そこにGEORGIA独特のヴォーカルが冴え渡るネオ・ニュー・ソウル・ナンバーをずらりと収録!

9

RON HARDY

RON HARDY SENSATION RUSH HOUR / NL / 2010/2/15 »COMMENT GET MUSIC
説明不要のRON HARDYによる激レア・シカゴ・クラシック!中古市場では1万円オーバーで取引される事も多かった幻のレア盤が、リマスタリングされて待望のリイッシュー!

10

SIDE HUSTLE / NEMOY

SIDE HUSTLE / NEMOY SECOND INTRO / FLYWHEEL BONZZAJ / A FEW AMONG OTHERS / CHE / 2010/2/6 »COMMENT GET MUSIC
FORCE OF NATUREのDJ KENT率いるユニット「ENTERPLAY」のメンバーでもあり、HOUSE/TECHNOファンにはおなじみスイスのIANEQによるラップに THADDEUS CLARKを迎えたヒップホップ・プロジェクト=SIDE HUSTLEは激スペイシーな90'sライク・アングラ・シット!一方<BONZZAJ>からのリリースがあるビートメイカーNEMOYによる "FLYWHEEL"はパーカッシヴな生音感とエレクトリック感を見事に融合させた高揚感抜群ナイス・ブレイクビーツ・トラック!

CHART by JET SET 2010.02-2 - ele-king

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1

ポチョムキン

ポチョムキン BRAND NEW LOVE »COMMENT GET MUSIC
ポチョムキンが代弁する脱力東京ラヴ・ストーリー!?Zazen Boys向井氏制作のアノ曲が12"に!刺激的な都会暮らしの中にあっても、決して満たされることのない性的衝動。男の悲しい性(さが)を、東京上空から夜の街へと降下するエレクトロ・ファンクに浮かべた逸品"Brand New Love"加えて、B面にはPUNPEE(P.S.G.)、Mountain Mocha Kilimanjaro、Olive Oilという超豪華メンバーが集結!

2

RONI NACHUM

RONI NACHUM GUEST SERVICE SHALOM (MARK E REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Mark Eリミックス収録のグレイト・リリース!!Limited300!!何かと話題作をドロップしてくるUK発"Fine Art Recordings"からマスト・アイテム到着。エルサレムからの新鋭"Roni Nachum"×ご存知"Mark E"。バッチリっす!!

3

ITAMAR SAGI

ITAMAR SAGI COMMON SENSE »COMMENT GET MUSIC
Be As Oneのトップ・イスラエリー・クリエイター、Itamar SagiがDrumcodeから!!これまでにもJosh Wink率いるOvemやKlap KlapそしてSomaなど世界各国の優良レーベルより作品をリリースをしてきた実力派、I.Sagiが奥行きのある覚醒的なドープ・ミニマルをリリース!!

4

SLUGABED

SLUGABED ULTRA HEAT TREATED EP »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆スクウィー x ウォンキーなカラフル特大傑作トラックス!!北欧産エレクトロ・ファンク最前線サウンド=スクウィーへの憧憬を公言するUK鬼才がPlanet Muから放つ特大傑作EPがこちら!!

5

RED RACK'EM

RED RACK'EM THE NIGHTSHIFT »COMMENT GET MUSIC
デトロイト注目レーベルからの見逃せない一枚!!Hot Coins名義でも御馴染み、ニュー・ディスコ~ディープ・ハウスを横断するDaniel BermanによるRed Rack'em名義でのグッド・リリース。

6

COSMETICS

COSMETICS SOFT SKIN »COMMENT GET MUSIC
Glass Candy~Nite Jewel直系のダーク・ウェイヴ・ディスコ・ポップ!!メチャ最高です。こんなのも出しますCaptured Tracks。カナダの男女デュオ、Cosmetics!!レトロ・シンセに気だるい女子ヴォーカル、ロウファイ感も加わった完璧シンセ・ウェイヴ・ディスコ。グレイテスト!!

7

D1

D1 JUS BUSINESS »COMMENT GET MUSIC
☆大推薦☆天才ダブステッパーD1がデス・テクノをネタ使いした超話題盤です!!ダブステップ史上初のディープ・ハウス・ネタ名作"I'm Loving"を手掛けた鬼才が、今度はデス・テクノと鍵盤ハウスを下敷きにしたA1をお届け~!!

8

U.S. GIRLS

U.S. GIRLS GO GREY »COMMENT GET MUSIC
US最狂女子、Siltbreezeからの強烈セカンド・アルバム!!かなりスゴイことになってます。ポートランド在住のMegan Remyによるソロ・ユニット、U.S. Girls。この人は本当にヤバい。ロウファイ~ジャンク~ドローン~トライバル全てメチャクチャにかき回す23世紀ポップ!!最高。

9

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY

DJ HELL FEATURING BRYAN FERRY U CAN DANCE 1/3 (CARL CRAIG REMIX V.2) »COMMENT GET MUSIC
Carl CraigによるリミックスVersion 2を収録。アルバム『Teufelswerk』から一挙に3枚同時リリースされたリミックス・シングル3部作のうちの第1弾がこちら!!

10

ARTO MWAMBE

ARTO MWAMBE LOVE LIFT »COMMENT GET MUSIC
ブリージー・エレクトロニックなオールドスクール更新型ハウス大傑作!!エレクトロニカ方面の方にも是非聴いて頂きたい4つ打ちサウンド推薦盤。細身な男性ヴォーカルが際立つ爽やかなアッパー・トラックが憎らしい!!

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1

DERRICK MAY

DERRICK MAY Heart Beat Presents Mixed By Derrick May X Air HEART BEAT / JPN / 2010/01/25 »COMMENT GET MUSIC
彼、帰還せり。DETROIT第一世代として、数多くのアーティストに影響を与え、未だ世界レベルの人気を誇るTOP DJの一人。13年ぶりのMIX CDは、前回のMIX-UP VOL.5と比べると、とても荒々しく。彼のインタビューは同様、本作もエネルギッシュでサービス精神に溢れている。ラストはTRANSMATの新曲を連続でMIX。イ○ポじゃないなら、このCDを聴けば間違いない。期待通り、である。

2

V.A

V.A Post Newnow CRUE-L / JPN / 2010/1/22 »COMMENT GET MUSIC
クロスオーバー/バレアリック・コンピレーション!! ここ数年のCRUE-L音源から選りすぐりのREMIX作品をセレクト。SOFT ROCKS、MARK E、QUIET VILLAGE等の重量級アーティストと真っ向勝負のDJ NOBU、FORCE OF NATURE、SUNAHARA等。TAKIMI氏の狂わない選球眼はホントすごいです。そのTAKIMI氏によるMIX CDも特典で付いてお得!

3

V.A

V.A W.A.R.M.T.H. Presents Preservation -Past, Present & Future- WALLSHAKER MUSIC / US / 2010/1/18 »COMMENT GET MUSIC
DETROITマニア必見!!! ベテランAARON CARLのレーベル「WALLSHAKER MUSIC」の初CDリリース。しかもエクスクルーシブ・トラックを多数収録!!! LOS HERMANOS、SANTIAGO SALAZARなどの人気アーティストから、いぶし銀ALTON MILLER、DJ巧者TERRENCE PARKER、初期URのDJ、SCAN 7などバラエティに富んだ14曲。

4

SCUBA

SCUBA Sub:Stance OSTGUT TONTRAGER / GER / 2010/1/14 »COMMENT GET MUSIC
OSTGUT VS DUBSTEP!!! ベルリン・アンダーグラウンドの頂点として君臨するBERGHAINで開催中の「SUB:STANCE」、初のMIX CD。MARCEL DETTMANN、SURGEON等をリミキサーに起用し、混血具合を露にしたSCUBA。DAKRでHEAVYなトラックの中を、時折垣間見せる恍惚の瞬間が素晴らしい。参加アーティストもツボを抑えていて、サンプラー的にも使えます。

5

JACKMASTER HATER

JACKMASTER HATER Hiccup Track/Sensation WAREHOUSE BOX TRACKS / US / 2010/1/29 »COMMENT GET MUSIC
RON HARDY'S SENSATIONの未発表VERSION、初のアナログ化!! チープ過ぎるほどに肉体的ビート!!! これぞCHICAGO "JACKIN'" STYLE!!! 逆面にはCHIP E "It's House"と同じというか、こちらがオリジナルらしい、声ネタループのリズム・ボックスもの。CHICAGO BAD ACIDを追求する、このシリーズは毎回やばすぎます。

6

HORIZONTAL GROUND

HORIZONTAL GROUND Horizontal Ground 03 HORIZONTAL GROUND / UK / 2010/1/27 »COMMENT GET MUSIC
SHED、MARCEL DETTMANN等のHITでおなじみの限定ペーパー・スリーヴもの。ドイツ産、シリーズ三作目。A面はモロにDAN BELL、というかACCELERATEのスタイルです。メタリックはハイハットと、ブリーピーなフレーズ。声ネタもそれっぽい。B面TRAXMEN~ROBERT ARMANI辺りのDANCEMANIA辺り?・・・。これはへのオマージュですね。

7

DON WILLIAMS

DON WILLIAMS Detroit Blue EP A.R.T.LESS / GER / 2010/2/2 »COMMENT GET MUSIC
MOJUBA傘下A.R.T.LESS新作は、レーベルのドン、DON WILLIAMS!!! 今回も、オリジナル・デトロイトテクノへの愛がふんだんに感じられる片面プレス。生めかしいシンセ使いとオールドスクールっぽいリズムの打ち込みは、どこか温かみすら感じられるA-1。A-2ではKICK LESSの夢見心地なアンビエント作品を収録。勿論、限定のハンドメイド・ペーパースリーヴ。

8

LAVERNE RADIX

LAVERNE RADIX Train RAUM MUSIK / GER / 2010/2/2 »COMMENT GET MUSIC
MISS FITZ変名!!! OSLO、CONTEXTERRIOR、PERLONからリリースする美人アーティスト。とりあえず、A面!!! カットされたディスコホーンで切り貼りされた独特の上モノ。リズム・パターンにも細かい工夫が見られて、気合を感じます!!! B面の2曲は声ネタのループと図太いベースラインのうねりで展開する、GROOVE MAKER TRACK。

9

EQD

EQD Equalized #003 EQUALIZED / GER / 2010/2/2 »COMMENT GET MUSIC
SHEDによるEQUALIZEDシリーズ3番!!! 彼らしい鋭角なカミソリのようなシンセのリフと90年代のHARD MINIMALシーンを彷彿とさせるGROOVEのA面。B面もソリッドなリフと、ズンドコした低音が90'S LIKE。中古市場でも90'S HARD TECHNOの発掘は始まっています。リヴァイバルはスグソコ!!!

10

MR.SCRUFF & KAIDI TATHAM/MOTOR CITY DRUM ENSEMBLE/ANDRES

MR.SCRUFF & KAIDI TATHAM/MOTOR CITY DRUM ENSEMBLE/ANDRES E11 PRIME NUMBERS / UK / 2010/1/20 »COMMENT GET MUSIC
昨年末、当店でインストアDJを披露してくれた、マンチェスターのタフ・ガイTRUS'MEのレーベル「PRIME NUMBERS」。フルートとフェンダーローズで極上のメロウ・ファンクを聴かせるA1。目下注目が集まる、MOTOR CITY DRUM~のディスコ・ループ・ハウス。そしてANDRESが、MJ「P.Y.T」をネタ使いしたエレクトロ・ファンクB-2。極上のアーバン・ソウルをお届けします。

CHART by JET SET 2010.02 - ele-king

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1

ANDRES

ANDRES ANDRES II PART 2 MAHOGANI MUSIC / »COMMENT GET MUSIC
マスト・アイテム到着!!年間チャート・ランクインも確実かと思われます。 ご存知KDJ一派、DJ Dezこと"Andres"のニュー・リリースは、昨年初夏の奇跡・第2章。音楽情報誌各誌で取り上げられ(09年総評特集も含めて)、店頭から瞬く間に姿を消した"Andres Ⅱは記憶に焼き付いているはず。

2

DAM FUNK

DAM FUNK TOEACHIZOWN VOL.1-5 STONES THROW / »COMMENT GET MUSIC
CDから遅れること半年...遂に5枚組アナログ・ボックス・セットの登場ですっ! 発売延期の不満を見事に消し去ってくれるこの豪華仕様を見よ!Stones Throwのアナログへのこだわりと、[ファンク親善大使]の魅力が見事に凝縮されています!

3

DJ SPRINKLES

DJ SPRINKLES MASTURJAKOR MULE MUSIQ / »COMMENT GET MUSIC
ご存知テーリ・テムリッツさんによる"ハウス"新曲です!! ハードコアな傑作アルバム『Midtown 120 Blues』とMCDEリミックスを収録の"Sisters, I Don't Know..."に続く待望の12インチ!!

4

FOUR TET

FOUR TET THERE IS LOVE IN YOU DOMINO / »COMMENT GET MUSIC
■'10年ベスト・アルバム候補■言わずと知れたレフトフィールド・ミニマル天才クリエイターFour Tet。当店爆裂"Love cry"も収録された5th.アルバムの登場です!!

5

DYE

DYE CRISTAL D'ACIER TIGERSUSHI / »COMMENT GET MUSIC
絶対注目のフレンチ・エレクトロ・ニュー・スター、激待望セカンド・シングル到着です!!一切外さない絶好調のTigersushiから。約1年前に出たデビューEPが衝撃を呼んだ謎の新人Dyeが、遂に2枚目をリリース!!今回も鬼ほどヤバいヴォ WHITE DAYS NEW AGE OF EARTH コーダー・シンセ・ディスコで激オススメ!!

6

BEN KLOCK

BEN KLOCK TRACKS FROM 07 DEEPLY ROOTED HOUSE / »COMMENT GET MUSIC
ベルリン・ミニマルシーンを牽引するBen Klockによる限定カラー盤!!Kerri Chandlerの"Pong"でもリミキサーを努めたベルリン・ミニマルシーンの雄、Ben Klockがソロ作品をDeeply Rooted Houseからリリース!!

7

BUSHWACKA!

BUSHWACKA! BATTERED OLMETO / »COMMENT GET MUSIC
2010に入っての第1弾シングルはアーシーで激ヤバなトライバル・モダンハウス!! これはかなり格好良いです。土着的なアフリカン・パーカッションに妖しげなフルートやアフロチャントがじわりじわりと絡みディープかつドープな世界観を打ち出したA"Batterd"はヤバイ!!

8

CLAUDE VONSTROKE

CLAUDE VONSTROKE GREASY BEAT FEAT BOOTSY COLLINS (REMIXES) DIRTYBIRD / »COMMENT GET MUSIC
■300枚限定プレス■RobagやDOPによる至極のリミックスを搭載。即完売必至です!! ☆特大推薦☆ツイステッド・ミニマル総本山Dirtybirdの看板Claude Vonstrokeがファンク巨人Bootsyを迎えた衝撃作のリミックス12"が登場!!

9

DOSHY

DOSHY SPACE ATTACK DESTPUB / »COMMENT GET MUSIC
可愛くなったZombyか!?Drop the Limeも絶賛の新星が遂にヴァイナル・デビュー!! 16BITやVon Dのリリースでお馴染み、フランスのキュート・ダブステップ大本命レーベルDestpubから、またしても凄まじい才能が登場しました!!

10

WHITE DAYS

WHITE DAYS NEW AGE OF EARTH WHITE DAYS / »COMMENT GET MUSIC
Argy手掛ける"White Days"噂の3番、入荷致しました!! 何といっても話題はAshra"Sunrain"に太いイーヴン・キックを走らせたA-1。どうやらManuel Gottsching本人に許可を得てのリリースとのことです!!

[Drum & Bass / Dubstep] by Tetsuji Tanaka - ele-king

1. Zinc / Killa Sound [Skream RMX] [Heavy Feet RMX] | Bingo Bass

1. Zinc / Killa Sound [Skream RMX] [Heavy Feet RMX] | Bingo Bassジンクvsスクリームの強力タッグが復活した! 2006年にダブステップ浮上のきっかけになった大ヒット・トラック"Midnight Request Line"のリミックス以来、久々のコラボレーションが実現。まさにキャッチー・フロア・アンセムの登場だ。いまやすっかりダブステップ界のトップに上り詰めたスター・プロデューサーのスクリーム、そしてDJジンクのほうも前作のときとは状況が違う。ジンクと言えば、今はエレクトロ・ハウス/UKファンキー/クラック・ハウスを牽引するベース・レジェンドである。そして、今回のコラボレーションによって生まれたこの作品は、前作の流れを汲みつつ、しかししっかりと現在のトレンドも注入したもので、シンプルだがまったく新しいパーティ・トラックである。これによって、"クラック・ダブステップ"が生まれたと言えよう。
  ジンクがドラムンベースの創作を中断して1年以上の歳月が過ぎたわけだが......現在ベース・シーンでは恐ろしいぐらいのスピードで刻々と進化を遂げている。忘れもしない。衝撃的かつエポック・メイキングな出来事だった。2008年の11月22日、筆者もレジデント出演している〈DBS〉にて、12周年を祝う、「Mega-Beat Sessions」によるDJジンク再来日だった。
  巷では、「ジンクが最後のドラムンベース・セットをやる」、「UK最先端の4つ打ちジャンルも回す」、「クラック・ハウス? なんだ??」等々......大きな話題を集めたものだった。刺激的な用語と新しいジャンルによる新しいムーヴメントを予感させ、もちろん大観衆を集めた大盛況なアニバーサリー・パーティとなった。実のところ、筆者はジンクのプレイ時間と〈SALOON〉でもろに被ってしまい......残念ながら目の当たりできなかったのだが、いろんな人に取材してみたところ、賛否両論を巻き起こす興味深いものとなった。で、受け入れられたのかって? 答えは当然イエスである! 時代の最先端を走る"クラック・ハウス"。ベースラインから派生したUKファンキーよりの"4つ打ちジャンル"が日本のジャングリストにも受け入れられた瞬間だった。
  その挑戦的な試み、興味深いこの出来事は、当時かなり興奮したことをよく憶えてる。〈Bingo Beats〉が初期のレーベル・コンセプトである2ステップやガラージなどのハーフステップ主体だった90年代末に、いまにして思えば現在のスタイルの青写真がある。ジンクの変名ジャミン〈Jammin'〉の「Kinda Funky」、「Go DJ」やジンク名義の「138 Trek」などハーフステップ・ガラージ・アンセムなどはその代表だ。
  現在、ジンクのクラック・ハウス布教活動は大きな形で実を結んでいる。現在のトレンドであるエレクトロやフィジェット・ハウスのシーンにまで波及する大きな波を起こしている。彼の先見性にはまったく脱帽である。
  そして今年の4月17日、〈DBS〉にて待望の再来日を果たすことが決定した。今度はドラムンベース界のレジェンドではなく、ベースマスター・レジェンド、DJジンクとして最高のクラック・ハウス・セットのみならず、日本仕様の〈DBS〉限定セットを披露してくれるはずだ。各地の大型フェスや大箱をロックしているそのセットをいまから楽しみに準備しておこう。だてそれは、正真正銘のUKパーティ・チューンを体感できる貴重な日になるのだから!

  さて、もうひとりの大物プロデューサー、スクリームだが、今年に入って立て続けにリミックス・ワークをリリースしている。アーバン・ダブステッパー、シルキーの「Cyber Dub」のウォブリー・リミックスや〈Non Plus〉からインストラ:メンタルのディープ・アトモスフェリック・ドラムンベース「No Future」を[Skreamix]としてウォブリー・ダブステップに昇華したカッティング・エッジ・アンセムなど......これは昨年2月にベンガと再来日した際、ダブプレートとしてバック2バック・プレイしたのを記憶している。しかも彼らのような言わば"若手"DJ/プロデューサーが全編レコードによるアナログ・プレイであったのは予想外のことで、衝撃的な嬉しい出来事であった! UKではいまだ古き良きダブプレート文化がちゃんと若手にも受け継がれている。アナログの素晴らしさ、貴重さが再認識されたセットでもあった。もちろん筆者も、それを継承するアナログ・オンリー3台セットであるのは言うまでもない!
  そして来る2月13日〈DBS〉にてドラムンベース界の皇帝、ゴールディーが再来日する。とともに、スクリームの実兄、ハイジャック〈HIJAK〉が初来日! ダブステップの最高峰〈FWD〉、〈DMZ〉でレジデントを務めるシーンのパイオニアのひとりである彼のダブステップ・イズムを体感できる貴重な日になるだろう。

2. Seba & Kirsty Hawkshaw / Joy (Face To Face) | Secret Operations

2. Seba & Kirsty Hawkshaw / Joy (Face To Face) | Secret Operations  こ、これは! 聴いた瞬間そう思った......背筋を走り抜けた衝撃の余韻がいまでも感覚として残っている。いったい何だろう......この感覚は......鳥肌が止まらない。いま、執筆しているときでも残っている。頭から離れないコードのメロディ。もしかしたら巡り会ったのかもしれない。自身が思い描く最高の曲の地点に限りなく近い作品に......ひとつ言えるのは、明日から向こう1年いや2年、自身のDJバックに"必ず" 入ることが決定したことだ。
  "セバ"〈Seba〉ことSebastian Ahrenberg。スウェーデン出身である彼のプロデューサー起源は、〈Good Looking〉のサブ・レーベル〈Looking Good〉から1998年にリリースされた「Connected/Catch The Moment」だった。当時はアートコア全盛、オリジナリティ溢れるコズミック・アートステッパーとしてLTJブケムが見出したひとりである。この後、〈Good Looking〉の契約アーティストとしてアートコアの傑作アンセム「Planetary Funk Alert/Camouflage」を1998年、「Soul 2000/Waveform」を1999年に発表する。
  とくにこの時期の筆者のお気に入りは「Soul 2000」だった。流麗なエレピの旋律から始まる序章......そこから呼応するシンセの冷たくも気高い響きに美しくはまる高速ビーツ。すべてのサンプルが絶妙に当てはめられた、これぞまさにパーフェクト。1995年から聴きはじめたドラムンベースで初めてそう思った曲が「Soul 2000」だった。そして、それを超える衝撃、完成度を誇る作品が今回リリースした「Joy (Face To Face) 」だ。セバの、北欧ならではの寒くも美しく共鳴する深層深い作曲センスは、ひと言で表せば"天才技"だ。
  ヴォーカルとして共演しているカースティ・ホークショウ(Kirsty Hawkshaw)は、ロンドン出身のシンガーソングライター。90年代にテクノよりのポップ・バンド、オーパス・スリーのメンバーとして活躍していた。バンド解散後、ソロとして主にクラブ・シーンのヴォーカルとして、さまざまなアーティストと共演している。コラボレーションでとくにヒットとなったDJティエスト〈DJ Tiesto〉とのトランス・アンセム""Just Be"やプログレッシブ・ブレイクス・ユニット、ハイブリッド"〈Hybrid〉の「All I Want」、「Blackout」などが有名だ。ドラムンベースのシーンにおいては、主にセバのセルフ・レーベル〈Secret Operations〉からのリリース、彼のプロデュース・パートナー、パラドックス(Paradox)との共作、はたまたエレクトロ・ステップ/トランス・ドラムンベースのパイオニア、ジョンビー(John B)との「Connected」など幅広く活躍している。その艶やかかつ幻想的な起伏を生む高揚感溢れるヴォーカルは、クラブ・シーンに欠かせない存在として現在も各方面からオファーが絶えない。とにかく彼女は人気ヴォーカリストである。
  さて、「Joy (Face To Face) 」の解説だが、オープニングの寂しげなバック・トラックからオートメーションによりじょじょに入ってくる高速ブレイクビーツ、トランスのエッセンス溢れるサンプルを叙情的に組み込み、妖しげなレイブ・ベースラインを絶妙に注入する。その後、スライトリー・トランス的サンプルの音数を増やしながらファースト・ブレイクへの到達でカースティのヴォーカルの感情とベースラインが最高潮に達するエピック・リエディット。これが、少しづつ進むごとに深みを増して、深海の奥地で繰り広げられているレイヴと言ったところで、曲が終わった後にも入り込んだ残響感が心の芯まで残り、決して離れない。
  自身はこれを待っていた。何度も聴きながら、そういう結論に行き着いた。この境地に辿り着く作品と出会えてこの上なく幸せであり、このふたりの偉大なクリエーターが今後もこの境地を何度も更新し続けてくれることを期待する。

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