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interview with あるぱちかぶと

interview with あるぱちかぶと

政治性もないし、そういう“戦い”のようなものが僕にはないから平々凡々とした日常を描写するしかないんです。

――あるぱちかぶとなる新人へのインタヴュー

野田 努    photos by Yasuhiro Ohara   Feb 23,2010 UP

 ごく常識的に考えて、人生には何の目的もないから、せめて生きているかぎりの自我実現の目標を立て、それがどんなに儚いものであるにせよ、また可能であれ不可能であれ、歴史のなかにおのれの生の痕跡を残しておきたい、という考え方がある。またその一方、人生には何の目的もないから、自我なんかどうでもよく、何か一つの目的をそこに設定して、信じるにせよ信じないにせよ、それに向かってしゃにむに突っ走り、おのれを滅ぼすと同時に世界をほろぼしてしまいたい、という考え方がある。
澁澤龍彦「輪廻と転生のロマン」

 永遠を信じないならどっちみち同じだよ
あるぱちかぶと"或蜂"

 あるぱちかぶとの『◎≠(マルカイキ)』は突然変異体だ。ラッパーらしからぬラッパーによる、ヒップホップらしくないヒップホップのアルバムは、最初から孤立することを覚悟しているようにも思える。自称デラシネ(根無し草)が創造したこの作品は、新しい楽曲に関して言えば、韻を踏むことさえまるで気にしていない。彼が執着するのはラップの約束事よりも、まるで戯作や短編小説を書き上げるようにひとつのリリックを完成させることなのだ。

あるぱちかぶと
あるぱちかぶと
◎≠(マルカイキ)

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 そして『◎≠(マルカイキ)』は葛藤の物語だ。自己分裂をテーマに展開する"或蜂"。そして、「体はひとつ/感情はななつ/気分は無数(略)いくら数えても数えても数えても数えても数のほうが足りない」という"頭"、「お前はいまでもあそこに座ってぼくを待っている」――フィリップ・K・ディックの『ヴァリス』のように分裂症をトリックとする"日没サスペンデッド"。

 トピックは他にもある。"トーキョー難民"では聴き手がそれを理解するよりも早く地名が連射される。そして聴き手の脳裏に街の姿を想像させる。レトリカルな"コケシの笑み"や"葉脈は性懲りもなく"も面白い。こうした過剰な言葉遊びは彼の独壇場でもあろう。アルバムのベストのひとつであろう"完璧な一日"は、1日のなかで人が生まれ成長し、大人になり、そして死んでいく様が描かれる。なんとも奇妙な叙情詩である。
 あるいは、"元少年ライカ"を聴いていると僕はとても切ない気持ちになる。あるぱちかぶとは、宇宙の霊魂に過去の記憶を語らせながら、ひとりの無名の人生に慈しみを注いでいるようだ。そして聴き終わってからあらためて驚くのは、この詩人がまだ23歳であるという事実なのだ。

 よって僕は、このラッパーがいったいどんな青年なのか知りたくなって、2月某日の昼下がりに下北沢で待ち合わせることにした次第である。約束の時間よりも5分ほど遅れて着くと、彼はそこに立っていた。

■どんな青年だろう? ってずっと気になっていたんですよ(笑)。しかし......間違ってもラッパーだとは思われないだろうね。

はははは。

■何故ラップ表現をやることになったんですか? 

2005年にやりはじめたときはもっとヒップホップしてたと思うんですけどね。

■ヒップホップらしくないヒップホップのアルバムだよね。

最初はヒップホップであることを意識してました。ラップすることは昔からの憧れだったんです。中学のときに聴きはじめていて......。

■そんなに早くから! 中学生のときから好きだったんだ。

はい。やりはじめたのが高校生のときでした。友たちの誕生日を祝うお金がなくて曲をプレゼントしたのが最初でしたね。やっぱり、自分のなかに表現したいという欲求がたぶん他人よりはあると思うんです。

■それはヒシヒシと伝わるよ。

それがなんでラップなのか? ってことですよね。それがいちばん、自分が伝えたいことを表現するうえで有効に思えたからです。

■小説には向かわなかったんだ。

小説は好きですけど、自分の言葉を音楽にのっけて抑揚つけながら発話する、そのやり方が自分にはしっくりくるんだと思います。

文:野田 努(2010年2月23日)

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