「Nothing」と一致するもの

El Michels Affair - ele-king

 NYを拠点とするエル・ミッチェルズ・アフェアといえば、かつてはレトロ・ファンクの復興主義運動の一角を担って、ウータンのメンバーたちとの交流でも知られたベテラン・チーム。ソウル&ファンクに愛情を注ぐオールドスクール主義者として知られる彼らの新作『24 Hr Sports』に、なんと、坂本慎太郎がフィーチャーされているとのこと!
 日本でのアルバム発売はチカーノ・ソウル系のリリースで知られる〈MUSIC CAMP〉から。また、すでに配信された坂本慎太郎フィーチャーの「Indifference」は、国内限定7インチ・シングルとして7/30に〈zelone records〉より発売される。

El Michels Affair
24 Hr Sports

Big Crown Records/MUSIC CAMP, Inc
日本語解説:松永良平
国内仕様輸入盤/配信にて9月5日リリース予定


El Michels Affair feat. Shintaro Sakamoto
Indifference

zelone records
7月30日発売

Milena Casado - ele-king

 これが初リーダー作とは俄かには信じ難い。スペイン出身でバークリー音楽大学で学んだトランペット/フリューゲルホーン奏者=ミレーナ・カサドの『リフレクション・オブ・アナザー・セルフ』は、そらおそろしいほどの完成度を誇る野心に満ちた傑作である。まず注目したいのは豪華な参加メンバー。ベーシスト/ヴォーカリストのミシェル・ンデゲオチェロ、ハープ奏者のブランディー・ヤンガー、フルート奏者のニコール・ミッチェル、ドラマーのテリ・リン・キャリントンらが多方面で多大なる貢献を果たしている。

 これだけの傑物が揃えばいいものができるのは当たり前じゃないか、なんて声が聞こえてきそうだが、誰にどの曲でどんなプレイをするかという采配をふるったのは彼女だろう。なんせ一騎当千のプレイヤーばかりである。下手をすればミレーナの影が薄くなってしまう可能性だってあったはずだ。だが、むしろ彼女が堂々と主役を張っているのだ。参りましたという他ない。

 スペイン人の母とドミニカ共和国出身の父の間に生まれ、現在はNYを拠点にする彼女の音楽は、有体に言えばコスモポリタンなものと言えるだろう。だが、地理的にはもちろん、本作は時代も超越しているように思う。筆者が彼女の演奏から連想したのは、夭逝したサックス/フルート奏者エリック・ドルフィーのサイドを張ったブッカー・リトルやフレディ・ハバード、ファンキー・ジャズの立役者であるリー・モーガン、ネオ・ソウルとコンテンポラリー・ジャズを架橋したロイ・ハーグローヴなどである。
 また、全体のサウンドもビバップからフリー、アシッド・ジャズ、ネオ・ソウル、ブラジル音楽、ラテン、ヒップホップまで、新旧や国籍を問わず様々な要素がモザイク状に織り込まれている。いや、正確には、ビバップ以降のジャズやその隣接ジャンルを巧みに分析/統合し、自家薬籠中のものとしているのだ。学究肌とまでは言わないが、研究熱心な人なのだろう。その分析力は的確であり、多ジャンルを統合する手さばきは実に慣れたもの。DJがジャズからヒップホップまでを繫ぐように、多種多様なタイプの曲が継ぎ目なく奏される。   

 “O.C.T(Oda to the crazy times)”はラッパーのKokayiをフィーチャーしたヒップホップ・ソウル。“Uncondional Love”はイージー・リスニング色の濃いスムース・ジャズ、“IntrospectionⅡ-Preguntas”はウッドベースとトランペットのみの演奏で、マイルス・デイヴィスを想わせるミュートの効いたソロが耳を惹く。当然のようにスクラッチも挿入されるし、メロウなうたものも複数ある。しかも、1曲だけ収められているカヴァーが、新時代の変拍子ファンクを標榜したM-BASE派出身のジェリ・アレンの曲だというのが、その音楽的な射程の長さを物語っているではないか。

 現代のジャズ界はカリスマ的巨匠不在の時代と言われる。むろん、複数のシンガーをフィーチャーしたアルバム『ブラック・レディオ』でブレイクしたロバート・グラスパーや、スピリチュアル・ジャズを今様にアップグレードしたカマシ・ワシントン、エレクトロニック・ミュージックとジャズを混合したフライング・ロータスなどが登場してからは、一概にそうとも言いきれなくはなっている。だが、彼らも過去の豊穣な音楽遺産を分析/統合する能力に長けていたからこそ、シーンの最前線に躍り出た側面があるのは否めない。そして、そうした潮流の筆頭にいるのが、ミレーナなのは間違いないと思う。

HARU NEMURI - ele-king

 まるで8年前のUKIPが台頭したときの英国を見ているような現在、あのとき真っ先に噛みついたのはスリーフォード・モッズだったが、ここ日本ではラッパー/シンガー・ソングライターの春ねむりが立ち上がった。
 去る参院選の東京選挙区で初当選を果たし注目を集めた参政党のさや。選挙期間中にそのヘイトスピーチに怒りを感じていた春ねむりは、彼女の当選を受け「爆速」で今回の新曲 “IGMF” を書きあげたという。SoundCloudで公開された同曲は、「私を皆さんの、皆さんのお母さんにしてください」というさやのスピーチのサンプルからはじまる。

https://soundcloud.com/mcharunonemuri/igmf

 ちなみに、春ねむりは、いま話題のニーキャップのファンでもあるそうです。

少年ナイフ - ele-king

 去る7月12日(ナイフの日)、新代田FEVERで毎年恒例の少年ナイフの夏公演が行われた。ここ2年くらいでライヴの動員も増えたようで、今回はソールドアウトだった。
 バンドは、毎年春と秋におよそ2ヶ月ずつアメリカとUK~ヨーロッパを回るツアー生活を長年にわたって送ってきている。重いキックやフロアタムが心地よいドラマーのりささんは、2015年の加入時には20歳だった。オリジナル・メンバーながら結婚を機に脱退し、以後は時折ゲスト参加する程度だったあつこさんも2015年より本格的に復帰した。数々のメンバーチェンジのあったバンドだが、現在のメンバーで10年。いまだにズッコケる場面もちらほらありつつ、初々しさと安定感が奇跡的なバランスで両立した、いまの少年ナイフならではのライヴだった。

 今回のセットリストの注目ポイントといえば、なんといってもめったに聴くことのできない最初期の曲がいくつも演奏されたことだ。元メンバーのリツコも大阪公演を観に行って、「私も生で聴くのは初めて」と言っていたが、そんなレアな曲の数々が披露された。
 それというのも、1982年にリリースされたものの、数十本しか流通しなかった幻のカセット・アルバム『みんなたのしく少年ナイフ』がこのたびCDとヴァイナルでリイシューされたためだ。
 筆者は30年以上少年ナイフを聴いているが、それでも主観的には新参という感覚が拭えないでいる。その理由のひとつがこのテープを持っていなかったことだった。それがこうして聴くことができるのだから、こんな嬉しいことはない。

 公式サイトの年表によれば少年ナイフは1981年12月に結成(ちなみにラフィン・ノーズも同年同月に同じ大阪で結成されている)。翌年3月には初ライヴが行われ、8月に本作がリリースされたという。短期間にこれだけのオリジナル曲をほぼ完成形として作り上げているあたり、初期衝動の迸りだけではないクリエイティヴィティを早くも感じさせる。

 本作は自主制作で、ディ・オーヴァンというニューウェイヴ・バンドのレーベル〈XAレコーズ〉との共同リリースのような形だったようだ。
 ディ・オーヴァンというのは大阪で80年代前半に活動していたテクノポップ/ポストパンクバンドで、当時は高校生。関西パンク史などでも言及されることの少ないバンドだったが、昨年アメリカの〈General Speech〉レーベルよりアルバム『Öwanism』(110曲入り)『美川憲一』(200曲入り)がリイシューされ、いよいよ再評価されようとしている。
 〈XA〉はそのオーヴァンが自身の作品を中心に発表していたレーベルで、80年代前半の短い期間にカセット作品を大量にリリースしていた。これまたいまでは顧みられることが少ないレーベルだが(というか、『みんなたのしく少年ナイフ』をリリースしたことで一番知られているかもしれない)、局地的な影響力はあったようだ。アシッド・マザーズ・テンプルの河端一も、〈XA〉の作品をレコード店で発見したことで刺激され、自分も大量の作品作りを始めたと言っている
 収録曲は全14トラック。ただし2曲はSE的なものなので、実質的な楽曲は12曲と考えていい。本作にしか収録されていないのは「サボテン」「わたしは現実主義者よ!」「惑星(プラネット)X」の3曲のみ。残りは後に〈ゼロ・レコーズ〉からの『BURNING FARM』『山のアッちゃん。』『PRETTY LITTLE BAKA GUY』『712』などでも採録されているので、本作はデモバージョンに近いものと思えばいいかもしれない。

 そんな本作を一聴してまず気づくのは、いわゆるラモーンズ・スタイルのパンク・ナンバーがないということ、そして食べ物と猫の歌がないことだ。いずれも、いまでは少年ナイフの定番スタイルなのだが、最初期には必ずしもそういうわけではなかったのだ。
 1曲目の“バナナリーフ”から“オウムのポリネシア”“人食いパパイヤ”など、その後の録音盤と比べると、フランジャーなどを使ったギターはより80年代ニューウェイヴ的なサウンド。そして南国的なエキゾチックな歌詞が多いのもこの時期の特徴だ。
 5曲目“Burning Farm”はイントロにアフリカ音楽らしきものが入っており、そこにナイフの演奏がフェイドインしていく。ディレイをかけた効果音が、後年レコードに収録された録音よりも深くエフェクトのかかった形で入っている。この曲に限らず、その後の作品と比べてエコーやディレイなどのダブ処理が派手にかけられているのがおもしろい。
 “オウムのポリネシア”“パラレルウーマン”“サマータイムブギ”など、メロディアスなベースラインにリードされる形でスカなどで聞かれるような裏打ちのカッティングギターが乗った曲も多い。こういった要素はUKニューウェイヴ由来のものだろう。
 “パラレルウーマン”“惑星(プラネット)X”“ミラクルズ”といったSF的な歌詞も目立つ。なかでも“パラレルウーマン”はスーパーヒロインに憧れるような歌詞かと思いきや蛭子能収のマンガのような不条理な展開を見せる(「オフィス・オートメーション地獄だよ」と、当時まだOLだったなおこさんの鬱憤が爆発しているような面もある)。

 「でもこんな強い日差しのなかで、いったい何ができるのでしょう Sleeping in my bed Sleeping in my bed」と歌われる(いまの季節にぴったりの)“サマータイムブギ”のような、肩をいからせたパンクを脱臼させるような力の抜けた曲などは少年ナイフならではのもの。
 そしていまの作風につながる歌詞といえば“亀の子束子のテーマ”だろう。その後も、なぜそれを歌にしようと思った? と思わせる身近なアイテムをモチーフにした曲は数多く登場することになる(輪ゴムとかペーパークリップとか)。
 そもそも「少年ナイフ」というバンド名は、直子の手元にあったカッターのブランド名から取られている。もし手元にあったのが違うものだったら「肥後守」とかになっていたのかもしれない。

 本作の翌年にリリースされた8インチEP「Burning Farm」がカルヴィン・ジョンソンの目に止まり85年には〈Kレーベル〉より米国リリース。おそらくそれを手にしたのがカート・コバーンやサーストン・ムーアだったということだろう。以後、海外での活動はどんどん増えていく。
 最新のライヴと比べると本作はなんとも素朴であり、思えば遠くへ来たものだ。その一方で、自由な発想は現在まで通底してもいる。少年ナイフ結成当時、なおこさんはレインコーツやスリッツを好んで聴いていたという。楽器が上手くなくてもバンドはできる。パンク/ニューウェイヴの蒔いた種がこうして大阪に届き、40年以上経ってもなお力強く花開き続けていることをとても心強く思う。

Music for Black Pigeons - ele-king

 この春公開され一部の音楽ファンたちから注目を集めた映画『ミュージック・フォー・ブラック・ピジョン』。〈ECM〉のジャズ・ギタリスト、ヤコブ・ブロを追ったこのドキュメンタリー(9月には共作が発売される高田みどりも出演)がDVD化されることになった。10月1日に〈du CINEMA〉より発売。
 近年はジャズ的なムードをもったアンビエントや、あるいはアンビエント的にも聴けるジャズなど、ジャズとアンビエントのあわいで興味深い音楽が多く出てきている。そうした流れとリンクする側面もある作品なので、ぜひチェックを。

『ジャズな映画 名作100ガイド』にも掲載された話題のジャズ・ドキュメンタリー映画『ミュージック・フォー・ブラック・ピジョン ――ジャズが生まれる瞬間――』が、待望のDVDで登場!

2025.10.1 DVD発売

デンマークの実験的ドキュメンタリー映画監督、ヨルゲン・レスとアンドレアス・コーフォードが、ジャズ・ギタリストのヤコブ・ブロを追って、彼と共演してきた世代や国籍を超えた音楽家たちの生き様と交流を描いた作品。“ただひたすらテープを回す”という伝統的なジャズの手法で撮影されたレコーディング風景や、ジャズ・プレーヤーたちの日常に加え、彼ら自身が演奏することの感覚や音楽の意味について語ったポートレートが記録されている。14 年間にも及ぶ長い音楽探求の旅のなかで、まさしくジャズが生まれている現場を映し出している。

この映画は、デンマーク出身のジャズ・ギタリスト、ヤコブ・ブロの、14年間に渡る音楽と旅のドキュメントであり、「ジャズとは、音楽とは何だろう?」という問いに答えるミュージシャンたちに寄り添り、その音と言葉を丁寧に美しく捉えていく。正解はなく、正しい道筋は自分で見出さないとならないが、それはとても魅力的で、一人ひとりを輝かせる。ミュージシャンであれ、リスナーであれ、この映画から鼓舞されるものは必ずあるはずだ。 (原 雅明ringsプロデューサー)

予告編
https://youtu.be/WL1P7Sv6AJM

【作品概要】
ミュージック・フォー・ブラック・ピジョン ――ジャズが生まれる瞬間――(原題:Music for Black Pigeons)
監督:ヨルゲン・レス、アンドレアス・コーフォード/字幕:バルーチャ・ハシム/2022年/デンマーク制作/92分/出演:ヤコブ・ブロ、リー・コニッツ、ポール・モチアン、ビル・フリゼール、高田みどり、マーク・ターナー、ジョー・ロヴァーノ、ジョーイ・バロン、トーマス・モーガン、マンフレート・アイヒャー、他
Format: DVD
Release Date: 2025.10.1
Label: du CINEMA

https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1009077319
https://www.musicforblackpigeons.com/
https://www.oto-tsu.jp/features/archives/18333

【関連作品情報】
Jakob Bro & Midori Takada / あなたに出会うまで – Until I Met You
デンマーク出身、新たなECMの看板ギタリストとして活躍するヤコブ・ブロが、世界的に活躍する打楽器奏者で、日本のアンビエント/ミニマルミュージックの代表作『Through The Looking Glass』(’83)などで知られる高田みどりとコラボした初の作品が、国内盤CDでリリース!映画『Music for Black Pigeons』での共演シーンでも話題になった2人の、無限に広がる音世界。

10/4, 5 EACH STORY 来日予定

DJ Marfox - ele-king

 早いもので、リスボンのレーベル〈Príncipe(プリンシペ)〉が15周年を迎える。それを記念したコンピもリリースされているが、このたびなんとレーベル主宰者、DJマルフォックスの来日ツアーが決定した。8月15日は京都West HarlemでDJ ntankによるパーティ《MAVE》に、8月16日は渋谷WWW&WWWβでE.O.Uとmelting botによるパーティ《南でloopな》に出演。これは熱い夏がやってきますぜ……
 なお、DJマルフォックスの2019年のインタヴューはこちらを。

DJ Marfox Japan Tour 2025 -15 years of Príncipe-

8/15 FRI 22:00 at West Harlem Kyoto
8/16 SAT 23:00 at WWW &WWWβ Tokyo

artwork: Márcio Matos
tour promoted by WWW / melting bot

灼熱のアフロ・ダンス!リスボン・ゲットーで育まれたアフロディアスポラによる100%リアル・コンテンポラリーな先鋭電子レーベルPríncipe、シーンのゴットファーザーDJ Marfoxが本年レーベル15周年を祝した初のロングセットで来日ツアー公演を京都と東京で開催。京都はntank主宰のMAVEでWest Harlemにて、東京はE.O.U & melting bot主宰loopなの昨年に続く南バイブス第2弾でWWWにて開催。追加ラインナップは後日発表。

DJ Marfox Interview @eleking
“声なき人びと、見向きもされない人びと、その顔が俺だ” https://www.ele-king.net/interviews/006925/
Príncipe 特集@RA “リスボンのゲットー・サウンド” https://ra.co/features/2070

MAVE feat.DJ Marfox -15 years of Príncipe-
2025/08/15 FRI 22:00 at West Harlem Kyoto
ADV/U23 ¥2,000 / DOOR ¥2,500 (+1D)
TICKET https://t.livepocket.jp/e/ao_c

DJ Marfox -15 years of Príncipe- [PT/Lisbon]
ntank
+TBA

MAVE
2020年West Harlemにて京都拠点のDJ ntankにより、一貫した身体的グルーヴをオルタナティブな文脈でジャンルレスに紡ぐエネルギッシュパーティーとして始動。これまで国内外問わずバラエティ豊かなゲストを招聘。近年ではCassius Select, DJ Nigga Fox, Livity Sound, TSVIやPeladaといったDJ・Producerを迎えている。
https://www.instagram.com/_ntank
https://www.instagram.com/mave.jp


南でloopな w/ DJ Marfox -15 years of Príncipe-
2025/08/16 SAT 23:00 at WWW & WWWβ Tokyo
Early Bird/U25 ¥2,500 / ADV ¥3,000 / DOOR ¥3,500 (+1D)
TICKET https://t.livepocket.jp/e/20250816www

WWW:
DJ Marfox -15 years of Príncipe- [PT/Lisbon]
E.O.U
Foodman

VJ: eijin

WWWβ:
+TBA

20歳未満入場不可・要顔写真付きID
Over 20 only Photo ID required to enter

PLAYLIST:
https://open.spotify.com/playlist/4M4sLXzKcGj6ulR0bE0cqm?si=2f226360aabd4ecc&pt=97eb8b7c99ec7d96b9fec62bc15cbe4a
https://soundcloud.com/meltingbot/sets/loop-w-dj-marfox-15-years-of-principe

loopな
2024年よりE.O.Uとmelting botによりWWWβにて始動、あらゆるジャンルの超越後の現代における”ミニマル”を方向性としたレギュラーのキュレーション・パーティ兼E.O.U主宰レーベルhaloのリリース・プロジェクト。 VJ・アートワークはeijinが担当。昨年夏に開催されたサウス・バイブスの南でloopなに続き、今回はリスボンからDJ Mafoxを招聘、東京公演ではリスボン・ゲットーのコンテンポラリーな先鋭電子レーベルPríncipeの15年周年記念としてその歴史を紐解く3時間のロングセットを予定。
https://haloooo.bandcamp.com/music
https://www.instagram.com/eoumuse
https://www.instagram.com/meltingbot

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●DJ Marfox [Príncipe/PT]

プロデューサー兼DJのMarfoxは、リスボンにおいて都市部、郊外、そしてゲットーの伝説的存在であり、電子音楽の新たな方向性を追求する世界的なネットワークにおいて著名な人物となる。ダンスミュージックにおける文化の様々な分野から、先駆的な作品と音楽に対する称賛を受けており、過去10年間にわたりLit City Trax、Boomkat Records、Warp Records、Príncipeなどのレーベルから作品をリリースしてきました。特にPríncipeに関しては、その創設者の一人として確固たる地位を築く。

また、Fever Ray、Elza Soares、tUnE-yArDs、BADSISTA、Panda Bearなどのアーティストのためのリミックスを手がけ、最近では新たなプロジェクトに挑戦。2019年ヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ館でアーティストNatascha Sadr Haghighianのインスタレーションのためのオリジナル音楽を提供等、過去数年間、ヨーロッパとイギリスでDJセットを精力的に行い、ブラジル、ウガンダ、アンゴラ、ロシアを訪問し、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、東アジアでのツアーも実施している。

2023年には、自身のオリジナルクルーDJs Di Guettoのコンピレーションのダブル・ヴァイナルLPエディションをPríncipeからリリース。Resident Advisorは「17年経ってもこんなに新鮮に聞こえることは、この音楽がどれだけ重要かを証明している」と言及、外部の者が触れることのできない音楽の系譜とスタイルを持つ、強固なコミュニティであり伝統であると記録した。

https://www.instagram.com/djmarfox

●Príncipe [PT/Lisbon]

プリンシペはポルトガルのリスボンを拠点とするレコード・レーベル。この街、その郊外、プロジェクト、スラムから生まれる100%リアルなコンテンポラリー・ダンス・ミュージックをリリースすることに専念している。独自の詩学と文化的アイデンティティを持った新しいサウンド、形態、構造であり、ハウス、テクノ、クドゥーロ、バティーダ、キゾンバ、フナナー、タラチーニャ、あるいはその他の新しい美学的発展など、この街で生み出される素晴らしい作品が、クラブ、携帯電話、家の外で聴けないままであることがないようにしたい。すべてのアートワークはマーシオ・マトスが考案し、実行した。全てのレコードは、一枚一枚手作業でステンシルされ、手描きされている。すべてのサウンド・マスタリングは、ポルトガルのベテラン天才サウンド・エンジニア、トー・ピニェイロ・ダ・シルヴァの自宅スタジオで、哲学に基づき行われている。

https://principediscos.wordpress.com
https://www.instagram.com/principediscos_verdadeiro

●V/A - Não Estragou Nada [Príncipe 2025]

https://principediscos.bandcamp.com/album/n-o-estragou-nada

1. Farucox - Para de Espirrar 02:54
2. Bubas Produções - Samba no Pé (Dedicação ao Lilocox) 04:15
3. Lilocox - Camones 04:32
4. DJ Bboy - Latona 03:20
5. DJ Nervoso - Veronica 04:11
6. Niagara - Madstell 05:02
7. LawBeatz - Sem Ti 03:47
8. DJ Danifox - Rua do Abismo 04:07
9. E8 Prod - Daylight 02:28
10. Mixbwé - Beat 2 02:36
11. Puto Anderson - Khamba 03:13
12. Mano Jio - Party na Jungle 03:12
13. DJ Nigga Fox - Na Casa da Mana 04:02
14. DJ Bebedera - Fodência The Scratch 01:51
15. DJ Firmeza - Beats das Piriguetes 02:49
16. DJ Cirofox - My Pain 03:10
17. Dadifox - Sambaa 02:49
18. A.k.Adrix - Glitch [IIIII] 01:57
19. DJ N.K. - Bo Ta Rebola (feat. Dama Kriola & Dama Pink) 03:22
20. DJ Marfox - Batimento 04:40
21. DJ Maboku - Capeta Lisboeta 03:02
22. PML Beatz - Reflexos Desiguais 03:41
23. Diiony G - Carrega 03:33
24. DJ Lycox - Anubis 03:46
25. XEXA - Ondas 03:03
26. Nídia - Toma Bailarina 04:55
27. DJ Narciso - Lixo 03:01
28. DJ Doraemon - G.A.Z. 03:15
29. Lokowat - Up Up 03:12
30. Puto Márcio - Orgia Mental 02:51
31. PT Musik - Tears 02:08
32. K30 - Vento no Tarraxo 03:39
33. DJ Helviofox - Melodic Vibration (feat. E8 Prod) 04:11
34. Nuno Beats - Micasibi 02:48
35. Deejay Poco - Última Hora 02:24
36. DJ NinOo - Som di Paz (feat. Vanyfox) 02:52
37. Deejay Veiga - Jarda 03:31

最も新しい学校: Príncipeは1つの屋根の下にいくつかの活動の合流点であるハウスをオープンする。このイベントを記録するために、私たちは過去と現在の未発表曲を、時には10年以上もハードディスクの中に隠しておくことにした。文脈の欠如、感性の変化、あるアーティストの良質な音源の過多など、このトラックリストが未発表のままになっている理由はいくつかある。「Não Estragou Nada "は、ファミリーの拡張されたヴィジョンを提供し、この音楽の包括的なステートメントを、ほとんど最も生々しい表現で、フィルターにかけず、喜びを表現している。私たちは、アーカイブの豊かさを考えると、特定の新曲を制作する必要はないと感じた。アーカイブがゼロから進化し始めた2010年以降、DJ Marfoxまでの数年間を網羅した、管理されたタイムマシン。このコンピレーションに参加していない著名なアーティストの中には、現在音楽以外の道を歩んでおり、自らの意志で不在にしている者もいる。祝福と感謝を。若手からベテランまで、ハウスの他のすべての人たち。それをハウス・ミュージックと呼びたいのなら、そうすればいい。春になると、すべてのものが花開くようだ。

FEBB - ele-king

 昨年リリース10周年を迎えたFEBB AS YOUNG MASONの『THE SEASON』。同作のアートワークを用いたスケートデッキ・セットが完全受注生産で販売されることになった。Fla$hBackSのMVも手がけていたDiaspora skateboardsとのコラボ企画です。
 また、同デッキの展示も実施される。7月19日(土)から7月27日(日)まで、Diaspora skateboardsの旗艦店「PURRBS」にて。詳しくは下記をチェック!

FEBB 『THE SEASON』とDiaspora skateboardsのコラボによるスケートデッキ3本セット(シリアルナンバー入り)が完全受注生産で発売決定!また7/19(土)より駒沢「PURRBS」にて『THE SEASON』のポップアップも開催!

 2014年1月29日にリリースされ、2024年1月29日にリリース10周年を迎えたFEBB AS YOUNG MASONの1stアルバム『THE SEASON』の10周年記念企画の最後を飾るのは『THE SEASON』のジャケット・アートワークを使用したスケートデッキ・セット。
 FEBBと関係が深く、Fla$hBackSのMV制作も行ったスケートレーベル / ビデオプロダクションのDiaspora skateboardsとのコラボレーションでの制作となり、NYのレジェンドGUESSデザインの『THE SEASON』の印象的なジャケットを3本のデッキに落とし込んだシリアルナンバー入りのスペシャルセット。完全受注生産での販売となります。3本セット売りのみでの販売になり1本ずつの購入は出来ません。

 また7月19日(土)から7月27日(日)までの期間、Diaspora skateboardsの旗艦店「PURRBS」にてデッキの展示を行ないます。是非実物を手に取ってご覧になってください。展示期間中はFEBB 『THE SEASON』のLP/カセットテープ/CDの販売なども「PURRBS」にて行ないます。

アイテム:Diaspora skateboards | FEBB "THE SEASON" Deck(3pcs Set / シリアルナンバー入り)
販売価格:50,000円(税抜)
受注締切:2025年7月31日(木)正午
発送予定:2025年10月下旬頃予定
*ご予約ページ
https://anywherestore.p-vine.jp/products/febb-skateboard

※オーダー後のキャンセル・変更は不可となります。
※商品発送は10月下旬頃を予定しております。
※配送の日付指定・時間指定は出来ません。
※配送は日本国内のみとなります。
※おひとり様2セットまでの購入とさせていただきます。
※お支払いはクレジットのみとなります。
※デッキは北米産カナディアンメープル使用。 数多くの有名ブランドと同様の高品質な工場でのプレス。
キック:ミディアム / コンケーブ:ミディアム
※サイズ(Width x Length x WB)
8.0” x 31.5” x 14 (Left)
8.125” x 31.5” x 14 (Center)
8.25” x 31.5” x 14 (Right)

<PURRBS>
〒154-0012
東京都世田谷区駒沢2-16-1 染小ビル 101
TEL: 03-6413-8729
STORE HOURS: 12:00-19:00
REGULAR HOLIDAY: Wednesday
https://www.instagram.com/purrbs.store/

Homie Homicide - ele-king

 東京を拠点に活動するバンド、Homie HomicideがついにデビューEPを送り出すことになった。Rio(ヴォーカル)、北山ノエル(ギター)、伊郷寛(ベース)、そして小山田米呂(ドラム&ギター)の4人から成る彼らは、ライヴを重ねつつ、これまでSoundCloudにデモ音源を発表してはいたものの、正式なリリース作品としては今回が初となる。
 7インチは表題曲 “Long Goodbye” に “Pixels” と “Slumber” を加えた計3曲を収録、発売は8月15日とのことだが、フィジカルに先がけ本日より各種ストリーミング・サーヴィスで配信がスタート。アートワークはメンバーのRioが手がけている。まあまずは聴いてみてください。夢のようなヴォーカル、美しきギターの肌理、宅録のよさがぎゅっと詰まってます。
 そして喜ばしいことに、リリース・パーティも開催されるとのこと。9月15日(月)は幡ヶ谷FORESTLIMITに集合です。

◆Debut Release
Homie Homicide
Long Goodbye

・フィジカル
https://form.jotform.com/251900975945467
・バンドキャンプ
https://homiehomicide.bandcamp.com/album/long-goodbye
・ストリーミング
https://linkco.re/db1dByTH

◆Long Goodbye Release Party
会場:幡ヶ谷 FORESTLIMIT
日時:9/15(月)18:30 open / 19:00 start
出演:Homie Homicide, Cali Dewit, ROTTENLAVAII, 根本敬
入場料:¥2,000+1 drink

イベント予約リンク
https://app.jotform.com/homie-homicide/homie-homicide

Greil Marcus - ele-king

 映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を、去る5月某日水曜日の午後、下高井戸の映画館で観た。都心での興行を終えてからの上映だ。平日の昼過ぎ、さぞかし空いていることだろうと思ったが、上映時間の10分前に到着したら長い列が待っていた。整理券をもらうと69番目、ぼくのうしろにも人は並んだ。客席の7割はぼくよりも年配の方々だった。彼ら・彼女らは、このスタア誕生物語をどのように思われたのだろうか、と観終わってからぼくは思った。
 何人かの知人からは「これで若い子たちが興味を持ってくれればいい」という前向きの感想を聞いた。映画の内容はともかくディランに注目する機会をもたらしたんだからそれでいいんじゃないのか、と。じっさいに年齢が若い子や若くはないがこれまでディランに関心のなかったひとたちがこれでディランを聴くことになればいいじゃないかという意味だ。
 なるほど、だとしたら、この映画で興味を持った人たちたちが、ニューポート・フォーク・フェスティヴァルではハウリン・ウルフも出演して、5万人の聴衆のなかの黒人たちは立ち上がって踊っていたこと、“風に吹かれて”を聴いてサム・クックが“チャインジ・ゴナ・カム”を作ったこと、ディランが市民運動史における最初のクライマックス、ワシントン行進でジョーン・バエズらと歌っていること、もっと言えばスーズ・ロトロが公民権運動にコミットしていたこと等々の基本的なこともいずれは知ることになるのだろう。“ライク・ア・ローリング・ストーン”が6人編成のバンドといっしょに2日間にわたって24テイク録音し、4ヴァースで構成された6分ほどの曲を通して演奏できたのはわずか2回だけだったことであるとか、そして、バエズをして「最高のプロテスト・ソング」と言わしめた、あのすばらしい“ハッティ・キャロルの寂しい死”、あるいは“はげしい雨が降る”を聴いて、ぼくのようにあとから聴いた人間のなかにも忘れがたい深い余韻を残すことになるのだろう。
 だとしたら、あの映画では、古い価値観に縛られた迷惑な化石として描かれているアラン・ロマックスのような人たちの、「フォーク・ミュージック」を探し、集め、その魅力を伝えるために費やした労のことも知ることになるのだろう。というか、本来「フォーク・ミュージック」というものが、アコースティック・ギターの弾き語りのことではないという歴史的な事実を知ることになるのなら、ぼくも「これで若い子たちが興味を持ってくれればいい」と言おう。音楽には二種類あって、権威に守られてきた音楽、庶民のあいだで(記譜されることなく)歌いつがれてきた音楽、「フォーク・ミュージック」は後者の音楽のことである。
 映画が間違っていると言いたいわけではない。あれはあれでたしかにディランなのだ。夜でもサングラスをかけるファッション・スタイルを確立し、ストーンズと同様に「生意気な振る舞い」を定着させたのはディランだ。既存の価値観をせせら笑うアウトサイダー、そんなロックスターの原型を作った男……。
 もっとも、ディランのなかにはいろんな人格(キャラ)があって、そのすべてがディランであるという、ややこしさがある。もうひとつのディラン公認のディラン映画『アイム・ノット・ゼア』では、6人の役者が六つのディランを演じているわけだが、我らがボブ・スタンレーはディランについてこんな風に書いている。「ディラン以前には、すべてのポップスターは外の世界にペルソナを投影していた。(…)ビートルズやストーンズでさえ自分たちが何者であるかをはっきり伝えていた。ボブ・ディランは違った。(…)彼はまるで自分だけの惑星のようで、人びとは必死にその惑星への行き方を知りたくなった」。ガーランドにしろホリデーにしろシナトラにしろプレスリーにしろ、彼女・彼らにははっきりとしたひとつの個性(自己イメージ)があった。しかしディランというのは、自分をひとつの個性で売り出すことを拒んだ最初のポップスターだった、とスタンレーは言っている。
 ディラン研究のベテラン、グリール・マーカスも大枠はそうだ。ディランの多面性を「他者のなかに自分を見る」能力に由来すると見ている。ディランの共感力、他者の人生との同一化、ディランの本質はそこにあると。

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 マーカスが2022年に上梓した『フォーク・ミュージック——ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』の日本版を7月末に刊行できることになった。この本では映画の “スタア誕生物語” 的な性質は削除され、話の単純化によって犠牲になったものたちが幽霊のように浮かび上がっている。とくにアメリカの抑圧と暴力のなかで存在する黒人文化(ブルース、そして公民権運動)、それらと共鳴していたアメリカのフォーク・ミュージックに焦点が当てられている。それはもう、マーカスのおはこである。
 ぼくもグリール・マーカスの『ミステリー・トレイン』に衝撃を受けたひとりだ。ロックについて書くことが、その人気にへつらった付属物でも、偉そうな審査員でも、安っぽい自分語りでも、情報オタクでもなく、ひとつの独立したエッセイたり得るか、それを最初に、しかも極めて大胆に、かつ学究的でありながら情熱的に具現化した最初の本だ。音楽作品と映画、文学を横断しながら歴史を往復し、「衝動と欲望の権化、自由と復讐、スタイルと死を体現する存在、限界のない生を生き、ときには帽子ひとつのために人を殺すような悪漢」——スタッガー・リー神話をもってスライ&ザ・ファミリー・ストーンについて書いた文章は、ぼくのなかで音楽について書くことの意味をすっかり変えてしまった。もし音楽ジャーナリズムと学問の架け橋というものが存在するなら、それはこの人の功績である。
 『フォーク・ミュージック——ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』はいまから3年前にグリール・マーカスが上梓した本で、これまでさんざんディランについて書いてきた作家による最新版だ。ディランの七つの曲を取り上げ、マーカスはディランについて語るわけだが、それはアメリカを語ることへと拡張される。マーカスの文章に親しんでいる方にはお馴染みのマーカス節だが、扱うべき領域が広大で、直線的な時間軸から逸脱し、その学識がしばしば突飛な推論へと転じることから、初めて読む人は面食らうかもしれないが、これが60年代のアメリカが生んだもっとも尊敬されているロックの文章だ(マーカスに匹敵するライターは、ほかにレスター・バングスしかいない)。最初の一曲は、もっとも有名な“風に吹かれて”だが、ディランが21歳のときに書いたこの曲が南北戦争の記憶へと結ばれ、そして『フリーホイーリン』のジャケットではほとんどフェチ化(映画でもなかばその扱いだったが、要するにかわい子ちゃん扱い)されているように見えるスーズ・ロトロが、この章ではどれだけ同曲において重要であったか主体化される。また、“時代は変わる”の章では、1964年の同曲が2021年1月6日のアメリカ連邦議会襲撃事件に照射される。マーカスが60年近く聴き続けていると書いている、あの怒りと悲しみの“ハッティ・キャロルの寂しい死”に関しては、かなりアクロバティックではあるが、ローリー・アンダーソンの“オー! スーパーマン”との対話をもってその予言的な曲を再考する。悲運の天才シンガー、カレン・ダルトンについて書きながら、囚人たちの嘆きを綴ったバラッド曲“ジム・ジョーンズ”におけるディランの翻訳力を説いた章も読み応えがある。本書の掉尾を飾るのは、2020年発表の“最も卑劣な殺人”——最初に聴いてから、何回も聴かずにはいられなかった曲——だが、どうかこの最後の一文までたどり着いてほしい(読書の快楽だ)。

 誰もが問う問題。では、ディランとは何者か? そのつかみどころのない存在をマーカスが表現したのが本書『フォーク・ミュージック』であるのだが、この翻訳権を得るために交渉した際、日本版を出すにあたってマーカス本人からひとつだけリクエストがあった。それは最初のページに入っている写真(ジェイムズ・ボールドウィンとの2ショット)は必ず入れること。つまり、黒人文化とディラン、そして「フォーク・ミュージック」(庶民の歌)、これらは大きなキーワードになっている(計らずとも、映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』がまったく言及しなかった領域は語られている)。また、もうひとつ、1960年代(*)という歴史の大いなる分水嶺、話は飛ぶが、いまエレキング編集部はまさに「アメリカとは何か?」(誰もが知っているつもりでいながら、じつはしっかり理解されていない)という特集号を作っているのです。こうご期待。

 最後に、ディランに興味はあるけど、いきなりマーカスは難しい、という人のためにディラン入門として最良の一冊を紹介します。2年前に刊行された北中正和の『ボブ・ディラン』(新潮新書)。中古盤で揃えている人には、60年代から70年代前半までの重要作の日本盤には、たいていは中村とうようと北中正和による質の高いライナーノートが付いているのもありがたいし、北中さんの『ボブ・ディラン』と一緒に『フォーク・ミュージック』もよろしくお願いします。

(*)1960年代、グリール・マーカスは、アメリカにおけるカウンター・カルチャーの一大拠点となったカリフォルニア大学バークレー校で文学を専攻した。彼はそこで、抗議と議論の熱狂のなかで『リヴォルヴァー』や『ブロンド・オン・ブロンド』、『ザ・ドアーズ』などをリアルタイムで聴き、あるいはロバート・ジョンソンをはじめとするブルーズを温ねている。西海岸の抵抗勢力を鎮圧すべく反動保守を味方に、レーガンが州知事となった瞬間を知っているマーカスは、レーガンが大統領になった年には鬱病になり、そして、彼にとって初めてアメリカの外側にある音楽=パンクについての論考を9年かけて書き上げる。それがかの有名な『リップスティック・トレイシーズ』である。

グリール・マーカス/坂本麻里子 訳
『フォーク・ミュージック——ボブ・ディラン、七つの歌でたどるバイオグラフィー』

P-Vine/ele-king books
7月29日発売
3500円+税

■グリール・マーカス(Greil Marcus)
 1945年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。1963年にカリフォルニア大学に入学、『ローリング・ストーン』を創刊するヤン・ウェナーと知り合い、ロック評論家の第一世代の最前線として活動。1975年には、いまもなお読み継がれている『ミステリー・トレイン』の初版が上梓する。
 未訳だが1989年に出版された『Lipstick Traces』は、セックス・ピストルズの源流としてシチュアシオニズムやダダ、はては中世の千年王国論宗派にまで遡り、パンクを民衆の抗議詩の文脈のなかで論じた重要作として知られる。また、これも未訳ながらディランとザ・バンドが趣味で録音した「The Basement Tapes」からアメリカを論じた『Invisible Republic: Bob Dylan 's Basement Tapes』も影響力ある一冊。
 ほかにも多数に著作があるが、日本では以下の翻訳書がある。『ロックの「新しい波」 パンクからネオ・ダダまで』(三井徹 訳、1984年、晶文社)、『ミステリー・トレイン ロック音楽にみるアメリカ像』(三井徹訳、1989年、第三文明社)、『デッド・エルヴィス』(三井徹 訳、1996年、キネマ旬報社)、『ライク・ア・ローリング・ストーン─Bob Dylan at the Crossroad』(菅野ヘッケル 訳、2006年、白夜書房)

■坂本麻里子
 1970年東京生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。ライター/通訳/翻訳者として活動。ロンドン在住。訳書にコージー・ファニ・トゥッティ『アート セックス ミュージック──コージー・ファニ・トゥッティ自伝』、ジョン・サヴェージ『この灼けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも──ジョイ・ディヴィジョン ジ・オーラル・ヒストリー』、マシュー・コリン『レイヴ・カルチャー——エクスタシー文化とアシッド・ハウスの物語 』、ジェン・ペリー『ザ・レインコーツ——普通の女たちの静かなポスト・パンク革命』、ハンナ・ロス『自転車と女たちの世紀』、マーク・フィッシャー『K-PUNK 夢想のメソッド——本・映画・ドラマ』『K-PUNK 自分の武器を選べ——音楽・政治』、ネイト・チネン『変わりゆくものを奏でる——21世紀のジャズ』ほか多数。

 マーク・スチュワートの遺作は素晴らしかったが、蝉さえ鳴かない高不快指数の街=東京で暮らしていると、どうしてもゆるくて、暑くない音楽に流れてしまうのが人のサガ。涼しくなる音楽で良いのがあったら教えてください〜。


Various Artists
Edna Martinez Presents Picó: Sound System Culture From The Colombian Caribbean
Strut Records

 ピコ、日本語にしたらこのカワイイ言葉は、コロンビアではサウンドシステム文化を指す。サウンドシステム文化とは、何もジャマイカの専売特許ではない。それは、音楽を聴きたいけれど家に再生装置やラジオなど高価で買えない人たちをターゲットにはじめた音楽がかかる酒場のことで、コロンビアのカリブ海沿い地帯では、それは「ピコ」という呼称で生まれ、栄え、いまも栄えている。ピコは見た目も面白いので、ぜひネットでその画像を探してほしい。二台のターンテーブルに2台のCDJとミキサーが一体となったそれぞれのピコは、それぞれの個性を表すためにカラフルな模様や絵が描かれている。 ピコの歴史は古く、庶民の祝祭の場として発展した。政府から10代の妊娠を促していると弾圧されても祝祭は止まらず、当然そこからは良い感じの音楽がたくさん生まれた。これは、ピコを探求したベルリンのDJ、エドナ・マルティネスがコンパイルしたアルバムで、その魅力を満載した素晴らしい編集盤だ。マルティネスによる詳細なライナーも素晴らしく(フィジカルで買った方がいい。ブックレットがある)、その歴史と展開──どんな音楽で踊り、どんな曲をもってサウンドクラッシュにおけるバトルを繰り広げてきたかを知ることができるし、チャンペータ、ハイライフ、ルンバ、ズークといったカリビアン音楽のパワーをもらって、ラテンを見習おうという気持ちになれる。全16曲、基本的にダンスのための音楽で、これを聴いていると猛暑も悪くないなと思えてくるのだ。大推薦。


KiF Productions - Still Out

 ザ・KLFの『Chill Out』のカヴァー・アルバムといえば、DJヨーグルトのがあった。デボン海岸の孤立した小屋で録音された『Still Out』はミュージシャン兼プロデューサーで幼なじみのウィル・クックソンとトム・ハヴェリーによるオマージュ・アルバム、英国の田園地帯を意識して作られたというだけあって、牧歌的な心地よさと瞑想的な音響が相まっている。聞き流しもできるけれど、『Chill Out』のファンはついつい注意深く聴いてしまうという悪いクセがあっていけない。ますます暑くなるじゃないか。でも、総じて良い感じだ。少なくとも清涼飲料水のChill Out(この言葉の出自/意味を知っているのだろうか)よりは落ち着く。


Pan American & Kramer - Interior of an Edifice Under the Sea
Shimmy-Disc

 シカゴのパン・アメリカ(マーク・K・ネルソン)のギター・サウンドは、基本的にどれを聴いても、少なくとも暑くはならない。元1/2ジャパニーズで〈シミー・ディスク〉のクラマーとの2度目のコラボレーション作品は、絵画的で、まったく素晴らしいアンビエント・ミュージックになっている。秋でも冬でも聴いていられる、至高のミニマル・ミュージック。大推薦。


Madalitso Band - Ma Gitala
Bongo Joe

 アフリカ南東部に位置し、国土の5分の1を湖が占める美しく、細くてもっとも貧しい国、マラウイから素晴らしい音楽が届いた。ギターをもって、ほこりっぽい路上で演奏された音楽は数年かけて磨かれ、いまでは世界中にファンを増やしている。これはスイスのレーベルからの3枚目のアルバムで、まったく飾り気のないシンプルな演奏が聴ける。最高に楽しい演奏が、この猛暑をぶっ飛ばすだろう。


Lophae - Perfect Strangers
Gregory J E Sanders

 ロ・ファイとはUKジャズ・バンドで、グレッグ・サンダース(ギター)、ベン・ブラウン(ドラム:ムラトゥ・アスタテケとの共演でも知られる)、トム・ハーバート(ベース:ポーラー・ベア他)、サム・レイプリー(サックス)から成り、本デビュー・アルバムのエンジニアはベネディクト・ラムディン(ノスタルジア77)。総じてメロディアスで、ゆったりとした演奏が魅力的。UKらしくボサノヴァかラテンなんかも入ってくる。とくに目新しさはないが、しかし確実に役に立ち、何度も聴いていられる。


Biosphere - The Way of Time
AD93

 ノルウェイーはオスロ在住、アンビエントのベテラン、バイオアフィアがロンドンの〈AD93〉からアルバムをリリース。透明感のある心地よい寒さが部屋のなかに広がれば、気分すっかりスカンジナビア半島……というわけではないが、没入観は抜群にある。曲中には1951年のラジオ・ドラマ『The Way of Time』の台詞がカットアップされている。


Jonny Nash - Once Was Ours Forever
Melody As Truth/Plancha

 毎週末、オレンジのシャツを着て、オレンジの自転車に乗って、オレンジのタオルで汗を拭きながらオレンジのチームを応援している世田谷在住のじじいにしたら、数年前に参政党が出てきたとき、まずその政党カラーにむかついた。オレンジとは、清水であり(新潟、大宮、愛媛であり)、バレンシアであり、そして栄えあるオランダ代表チームの色だ。というわけで最後はオランダから、日本で人気のジョニー・ナッシュの新作。池田抄英(マヤ・オンガク)、トモ・カツラダ(ex幾何学模様)、サトミマガエが参加。フォーク、アンビエント・ジャズ、ドリーム・ポップの境界をまたぐアルバムだと解説に書いてある通りで、やたら気持ちいいこのサウンドに包まれながら、オレンジ色の夕陽を見てチルするしかない。

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