「F」と一致するもの

David Byrne - ele-king

 昨日の沢井陽子さんの投稿にあった、ディヴィッド・バーンの彼が主宰するサイトに掲載したエッセー。とても思慮ぶかく、考えさえられることが書かれているので、沢井さんが試訳してくれました。この週末じっくり読んで下さい。彼の言葉を噛み砕いて共有することは、いまとても重要なことのように思います。


世界は変わっている──だから私たちも

パンデミックは、私たちの生活が交わる、多くの方法を明らかにしています。
これは私たちに何ができるのかを再考する機会でしょうか?

ディヴィッド・バーン
3/28/2020

 今日、長い時間自転車で走った。家から出て、頭を冷やしたかったからだ。太陽は照っていて、水仙の花が川岸の自転車道に沿って出てきてた。ハナミズキの木は花が咲いていて、そのとき自分自身に問いかけた「イエス、人生は続いている」

 たくさんの人がこの状況を乗り越えようとしている、と思うのは、陳腐で自分勝手かもしれない。でも、生活の基本的なリズムを維持することは人に回復力の感覚を与えることことができる。

 自分に問いかけた、ここから何か学ぶことはあるのか、次の危機をよりよく乗り切る準備をする何か? 自分たちを強くするかもしれない違う生き方? これは私たちの考えや振る舞いを変える機会なのか? どうすればそれができるか、それを行うことができるか?

 皮肉なもので、パンデミックが私たちを別々の隅に追いやったことで、私たち全員がどれほど複雑に接続されているかを示している。私たちの生活がほとんど気づかずに交差しているという多くの方法を明らかにしている。そのつながりや互いの距離を放棄しようとすると、私たちの存在がいかに希薄になるかを示している。ヘルスケア、住まい、人種、不平等、気候──我々はみんな同じ沈みかけている船に乗っている。

 ウイルスに国境など関係ない。彼らはいくらスクリーニングをしても旅行制限をしても入ってくる。少ないかもしれないが、少しは入り込む。ワクチンができるまで誰も免疫がない。つまり、我々が持つ疑惑や他人への敵意などはわきに置いておいて、被害をどの程度制限、停止できるかを見極める必要がある。

 賢い分析と取り組みがその方法を発見する事を願っているが、すでに問題を解決するのに成功した例を見てみよう。韓国、台湾、シンガポールなどの国では、良い仕事をしている。子供は学校に行き、人びとは仕事に行き、カフェやレストランは人でいっぱいである。多くのヨーロッパ諸国では政府は人びとにまだ収入があることを確認している最中だが、幸いにも、これらの人びとの世界と経済は通常に戻っている。やや新しい通常に。

 彼らの成功から学べることは? ひとつはこれらの国はすぐに行動した。彼らはウイルスが現れたときから、できるだけ多くの人びとに、症状が出なかった人にまでテストをはじめた。誰かが陽性を示した場合、彼らは隔離され、GPSと電話のデータを使用して、最近物理的に接触した人びとを見つけ、隔離された。他の人びとは、公共の場に入る前に必須の体温チェックなどのスクリーニングを提出しながら生活を送っていた。

 これらの場所ではときとして封鎖(ロックダウン)や町全体の検疫が行われたが、それほど長くなかった。最初のコロナヴァイラスの死者が出たイタリアの都市ヴォーでは、驚くべきことをした。『ガーディアン』紙によると、都市にいる全員がテストされ、89人が陽性で、その後9日間、街全体が封鎖され、何度もテストが繰り返された。そして6人が陽性を示し、彼らは引き続き孤立したままだったが、他の人は普通の生活に戻った。仕事場は再オープンし、子供は学校に戻った。生活は戻り、人びとはお金を払えるようになった。

 ヴォーの政策はうまくいったが、そこには代償があった。ウイルスが含まれていると思われるすべての場所で自由が制限されていた。当局は、監視カメラと連絡先追跡チームを使用して、感染した最近の連絡先を特定している。台湾、韓国、シンガポール、ヴォーのような場所では、人びとは政府と情報を共有し、個人的な犠牲を払い、より大きな利益のために、必要なことをする意欲を示している。

 感染の拡大を阻止するためにとられた措置が、侵入的であると思う人もいるだろう。しかし彼らが導き出した結果──それが自由で、健康で安全な仕事で、自分の人生に戻ることができること──それが国家安全保障である。彼らができるなら、なぜ私たちはできないのか、私たちの考え方にどのような変化をもたらすのか?

もはや何も正常(ノーマル)ではない。

 自由にはさまざまな種類がある。私のようにあなたが家のなかで立ち往生しているときは、自由ではない、それはたしかだ。解雇された場合も完全に自由ではない。自分自身を含むすべての人の健康、安全、経済的安全と幸福を向上させるために、個人としての権利と自由をどれだけ放棄するか? 我々はバケツに入ったカニなのか、それともコミュニティなのか。

 私たちは以前にも行動を変えたことがある。19世紀なかばのことである。イグナズ・ゼンメルワイスが患者に関わる前に手を洗う医師は命を救うことができると言ったとき笑われた。彼の死後、ルイ・パスツールやジョセフ・リスターのような他の細菌理論家は、彼がどれほど正確であるかを証明し、その手順が採用された。医師と私たち全員が強制することなく、喜んでこの変更を行い社会的規範となった。

 いま起こっていることは、私たちの行動を変えることを学ぶ機会だ。私たちにとって集団財の価値に対する信念はここ数十年で侵食されてきたが、緊急事態は、急速に変化する可能性がある。大恐慌の間、国民を保護するための新しい政策が導入され、社会を安定させ、人生を軌道に戻すために必要であることが認められた。

 緊急時には市民は突然協力することができ、変化が起こる可能性がある。気候変動の影響が大きくなるにつれて私たちは協力し、取り組む必要がある。資本主義が何らかの形で生き残るためには、私たちがもう少し社会主義者でなければならない。これは、私たちが物事を違って見るいい機会でもある。私たち全員が本当につながっていることを確認し、それに応じて行動を調整するために。

 これを実行してもいいですか? この瞬間は、私たち全員がどれほど真に相互依存しているかを見る機会でしょうか? 私たちがいま住んでいる世界とは異なる、より良い世界に住むために。 症状が出ないすべての人をテストするにはまだ遠すぎるかもしれないが、考え方を、隣人の見方を変えることで、他の地球規模の危機に対処するために必要な集団行動の基礎を築くことができる。私たち全員が、どのようにつながっているかを見るときが来たのだろう。

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 ※ちなみに、コロナ時代における庶民コミュニティの自発的でポジティヴな事例に関しては、『ガーディアン』のこの記事が参考になります


 ※(追記)金曜日の上げたディヴィッド・バーンの考察に対して、イタリアのローマに住むパオロ・パリージ氏から編集部に投書がありました。以下、彼のメールを要約して掲載します。

>基本的にぼくはバーンに同意できます。が、イタリアの街ヴォーに関する記述は事実ではありません。バーンはヴォーでは「仕事場が再開し、子供は学校に戻り、人びとは(請求書に対して)お金を払えるようになった」と書いています。これは事実ではありません。いまもヴォーそしてイタリアのほかの街のすべての学校も大学も仕事場も閉鎖しています。子どもは家で勉強し、多くの人は(請求書に対して)支払いができないでいます。いまだ労働市場は困難な状況にあるからです。政府はいま労働者階級の援助のため、毎月の緊急給付金を計画しています。これが真実です。
>たしかにイタリアの医療体制はヴォーの人びとすべてをテストしました。ウイルスの広がりを知る点においては効果的な実験でした。(バーンが参考にした)『ガーディアン』の記事は、ヴォーにおける実験方法そしてそれによる回復およびこのテストが世界に提供するパンデミックへの対策についてレポートしています。しかし、現実は、いまだ市民は監禁状態にあるということです。

以上です。
また、編集部としては、パオロ氏の指摘とは別に、政府にまかせっきりにした場合の悪いケースも例に出しておかなければなりません。それはハンガリーの現状です
いみじくもリチャード・D・ジェイムスが警鐘を鳴らした、コロナを機とするいわば独裁型政権の強化と言えるでしょう。

Thundercat - ele-king

 やりました。延期になっていたサンダーキャットの来日ツアーですが、無事振替の日程が決定しました。少し先になりますが、来年2021年の1月27日・28日・29日に、東京・大阪・名古屋を巡回します。チケットの販売や、日程変更にともなう払い戻しなどの詳細については、下記をご確認ください。
 そして本日4月3日は、待望の新作『It Is What It Is』の発売日。これを祝し、過去作3タイトルの廉価盤も登場します。持っていないアルバムがある方はぜひこの機会に。

待望の最新アルバム『IT IS WHAT IT IS』本日発売!
延期となっていた来日ツアーの新日程が決定!

サンダーキャットの最新アルバム『It Is What It Is』が本日ついに発売! 2017年の傑作『Drunk』で、超絶技巧のベーシストから正真正銘の世界的アーティストとしてブレイクを果たした以降も、フライング・ロータスやトラヴィス・スコット、故マック・ミラーらの作品に参加し、ここ日本でもフジロック、サマーソニックへの出演や、渡辺信一郎が監督を務めたアニメ『キャロル&チューズデイ』への楽曲提供を通し人気を獲得、またアニメやゲームなど日本のカルチャーにも精通するなど、その人柄も愛されているサンダーキャット。最近では YouTube チャンネル「ニートtokyo」に登場した際、ケンドリック・ラマーの次回作に参加していることを明かし、それが海外メディアにまで取り上げられた一方、NHK・Eテレの人気子供番組「シャキーン!」に出演したことも大きな話題となっている。

4月に予定され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受けて延期となっていた来日ツアーの振替日程が決定! 東京、大阪、名古屋にて来年一月に開催される。前売チケットの販売再開は5月9日(金)から。

*日程変更による払戻し等の詳細は、BEATINK 公式サイトにてご確認ください。
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10824

THUNDERCAT JAPAN TOUR
2021/ 1/27 (水) 東京 GARDEN HALL
2021/ 1/28 (木) 大阪 BIGCAT
2021/ 1/29 (金) 名古屋 CLUB QUATTRO

TICKETS : ADV. ¥6,800+1D
OPEN 18:00 / START 19:00
※未就学児童入場不可

東京公演:
2021/1/27 (水) THE GARDEN HALL

主催: シブヤテレビジョン INFO: BEATINK 03 5768 1277 [www.beatink.com]
TICKET発売:
5月9日(土)より:イープラス、チケットぴあ(177-137)、ローソンチケット(73722)、BEATINK 他

大阪公演:
2021/1/28 (木) BIGCAT

INFO: SMASH WEST 06-6536-5569 / [https://smash-jpn.com] [https://smash-mobile.com]
TICKET発売:
5月9日(土)より:イープラス、チケットぴあ(183-835) *English available、ローソンチケット(55574)、BEATINK 他

名古屋公演:
2021/1/29 (金) 名古屋 CLUB QUATTRO

TICKET発売:
5月9日(土)より:イープラス、チケットぴあ、ローソンチケット、LINE TICKET、クアトロ店頭、BEATINK 他
INFO:名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [https://www.club-quattro.com/]

盟友フライング・ロータスとサンダーキャット自身による共同プロデュースで完成した最新作『It Is What It Is』には、スティーヴ・レイシー、スティーヴ・アーリントン(Slave)、チャイルディッシュ・ガンビーノ、カマシ・ワシントン、リル・B、タイ・ダラー・サイン、バッドバッドノットグッド、ルイス・コール、ザック・フォックスら、超豪華アーティストが勢揃い! 国内盤CDには、前作の大ヒット・シングル “Show You The Way” でも共演したマイケル・マクドナルド参加のボーナストラック “Bye For Now” も追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。また数量限定でTシャツ付きセットも発売。アナログ盤は、レッド・ヴァイナル仕様、クリーム・ヴァイナル仕様、特殊パッケージ入りクリア・ヴァイナル仕様、特殊パッケージ入りピクチャーディスク仕様の4種類が発売される。
さらに、本日より『Drunk』、『Apocalypse』、『The Golden Age of Apocalypse』3タイトルの国内盤CDと iTunes のアルバム・ダウンロードがディスカウント・プライスにて発売開始!

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: It Is What It Is
release date: 2020/04/03 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-631 ¥2,200+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-631T ¥5,500+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説書・歌詞対訳封入

TRACKLISTING
01. Lost In Space / Great Scott / 22-26
02. Innerstellar Love
03. I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)
04. Black Qualls (feat. Steve Lacy, Steve Arrington, & Childish Gambino)
05. Miguel’s Happy Dance
06. How Sway
07. Funny Thing
08. Overseas (feat. Zack Fox)
09. Dragonball Durag
10. How I Feel
11. King Of The Hill
12. Unrequited Love
13. Fair Chance (feat. Ty Dolla $ign & Lil B)
14. Existential Dread
It Is What It Is (feat. Pedro Martins)
16. Bye For Now (feat. Michael McDonald) *Japanese Bonus Track

期間限定スペシャルプライス盤!

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: Drunk
release date: 2020/04/03 FRI ON SALE

国内盤スペシャルプライスCD BRC-542Z
¥1,500+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=2757

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: Apocalypse
release date: 2020/04/03 FRI ON SALE

国内盤スペシャルプライスCD BRC-383Z
¥1,500+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=1599

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: The Golden Age Of Apocalypse
release date: 2020/04/03 FRI ON SALE

国内盤スペシャルプライスCD BRC-443Z
¥1,500+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=3745

PANICSMILE - ele-king

 私はパニックスマイルの中心人物というよりバンドそのものというべき吉田肇が拠点を地元福岡に移すと耳にはさんだとき、東京のオルタナティヴ・ミュージック界の損失の大きさに嘆息を禁じえなかったが、よく考えると(考えんでも)、んなもんは東京偏重の感傷主義にすぎないのであって、現に吉田が地元に戻ってからもパニックスマイルは活動を継続し、こうして7年ぶり9作目のアルバムをとどけてくれた、そのタイトルを『Real Life』という、11曲入りのコンパクトディスクは1990年代後半以降の日本のアンダーグラウンド・シーンがいかなる変遷を経て2020年代初頭にかくあるかの証言である。なんとなれば私にはパニックスマイルの音はつねに現在を意味する、いまこの場を指さしている。
 昨年刊行した『ele-king』24号の特集「オルタナティヴ日本!」のランキングには選出されたものの、ウェブ媒体には初登場だろうから簡単に来歴をご紹介すると、パニックスマイルは90年代初頭に福岡で活動を開始し、向井秀徳、ミスカズアキと共同で運営にあたったレーベル〈HeadacheSounds〉などでの自主活動を経て、98年同レーベルよりファースト『E.F.Y.L』を世に問うとともにメンバー全員で上京。翌年の2作目『We Cannot Tell You Truth, Again.』はホッピー神山の個人レーベル〈God Mountain〉がリリース元だった。余談になるが、〈ゴッド・マウンテン〉はホッピー神山と大友良英、フリクションのレックとデッドエンドの湊雅史によるオプティカル8を筆頭に、今堀恒雄と外山明、菊地成孔らのティポグラフィカ、内橋和久とナスノミツルと芳垣安洋のアルタード・ステイツや竹久圏と早川俊介のキリヒトなど、ジャンル無用で強度重視な展開をみせ、管見によれば、勝井祐二と鬼怒無月のまぼろしの世界とともに90年代オルタナティヴを代表する名個人レーベルであり、そのラインナップに念願叶って名を連ねた当のパニックスマイルは、しかしリズム隊のふたりがあいついで脱退するという憂き目をみていた。メンバー4人のうちふたりがあいついでバンドを去ったのである。のこった吉田はギターの保田憲一をベースにコンバートし、所属していたバンドを辞めた直後の石橋英子をドラムに誘い、ほどなくジェイソン・シャルトンがギターで加入し、それにより現時点でパニックスマイル史上最長となる陣容が整った。2001年の3作目『10songs, 10cities』こそ過渡期の記録の面持ちだったが、次作『Grasshoppers Sun』(2002年)で格段の飛躍を遂げた彼らはパニックスマイルのスタイルというべきものを確立する。その内実を簡便に要約するのは至難の業だが、ポストパンクのサウンドテクスチャとオルタナのリズムコンストラクションの複合的曲解からくる不協和音や変拍子が材料なのにそれでつくった建物は存外しっかりしているというか、とくに4作目は保田と石橋のリズム陣がたがいちがいの方向にすすもうとする2本のギターを接着し、さらに石橋英子のヴォーカルが全体を衣のように包みこむ新たな語法への確信がサウンドに宿っていた。
 やがてパニックスマイルは水を得た魚になった。5作目の『Miniatures』は前作で彼らの表現を知悉したBOAT~NATSUMENのAxSxEの音づくりも奏功し、前作よりハードな質感で凝縮した音の塊が飛び交う快作となった。私が彼らのライヴに接するようになったのもこのあたりだったか。当時は『Miniatures』1曲目の “101 Be Twisted” がしばしば幕開けを飾っており、イントロのカッティングから一気呵成に雪崩れこむパニックスマイルの合奏風景はいまも瞼の裏に焼きついて離れない。おりしも2000年代なかごろ、インターネット前後の聴取環境の変化で音楽状況も地殻変動をきたしており、バンドという活動形態はむろんのこと、ロックなる形式もその中身もひとしく問い直しに迫られていた。オルタナティヴとは「もう一方」を意味する対向概念だが、それが形容する文言を完全に否定するのでなく、形式の潜在性を炙り出し次の道筋を提案する。すなわちオルタナティヴのあとにロックとつづけば、ここでいうロックとはロックのかたちをした新しいなにかであり、なにが飛び出すかわからなくてわくわくするシロモノを意味していた、すくなくとも1990年代なかばくらいまではそうだった(はずだ)が、いかに堅牢な概念やコミュニティといえども季節とともに移ろうのは世の理(ことわり)であるとみなすのは、しかし時代の趨勢になびかなかったものの存在をみえにくくする。
 シーンの牽引車にして孤塁の守り手──などといわれてもありがた迷惑にちがいないが、2000年代後半のパニックスマイルにはそのことばがあたらずとも遠からずのたたずまいがあった。アンサンブルは成熟し曲の書き方もこなれていった。石橋英子の歌と多彩さは新しい武器だったが、それが生み出した可能性の余白が吉田肇のソングライティングセンスをひきだしてもいた。保田とジェイソンは異能の両輪であり、それらのパートが噛み合ったのが6作目の『Best Education』である。本作を『ele-king』24号が選出したことはすでに述べたが、執筆者のイアン・マーティンは選評で本作の魅力をバランス感覚にもとめている。つづめると「聴きやすいポストパンク版のキャプテン・ビーフハート」となる評言はおそらくこのアルバムの吉田とジェイソンのギターのからみに1969年のマジック・バンドの面影をみるからだろうが、本作の魅力は細部の記号性のみならず、聴きやすさ、親しみやすさ、ぶっきらぼうなポップさとでもいいたくなるものを総体で全力であらわす点にもあった。4曲目の “Pop Song (We Can Write)” はそのような姿勢への韜晦とも諧謔ともつかない内容だが、作中でくりかえす「ポップソング」の「ング」の歌いまわしに吉田肇の歌い手としてのクセになる魅力を再発見したのも本作だった。その点で『Best Education』の名は体をもあらわしており、ライヴもひきつづき充実していたが、3年後の『A Girl Supernova』でこのラインナップは幕引きを迎えることになるのである。メンバーの個人的な事情もからんだ決断だったと記憶しているが、コンセプトを練り編曲に凝った『A Girl Supernova』(2009年)を聴き直すと4人でできることはやり尽くしたのが実情だったのではないか。
 おりしも2000年代も終わりにさしかかったあたり。同時多発テロ、イラク戦争、リーマンショックとつづいたあの10年のあいだ世界は翻弄されっぱなしだった。では音楽はどうだったのか。ことにオルタナティヴな音楽は。インターネットで聴き方は変わったが、アーカイヴへのショートカットは懐古趣味を亢進させはしても、オルタナティヴな音楽を志向するものにはヒントの糸口になるどころか、還流する無限とも有限ともつかない情報をもてあますばかり。バンドという形態の機動性よりロックなるフォーマットの受動性に焦点があたったのもこの時期だったか。つまるところオルタナティヴ・ロックもオルタナという型に嵌まった、と。
 吉田肇にそのような反問や煩悶ともつかないものがあったかは知らない。とまれ2010年が転機だったのはまちがいない。彼らはその年の早春、渋谷 O-Nest、秋葉原グッドマンにつづく3月28日の下北沢シェルターの自主企画をもって2000年代をしめくくった。さらに3年後、パニックスマイルは吉田とともにバンドにのこったベースの保田がギターにまわり、松石ゲルとDJミステイクをリズム隊に加えた新ラインナップで8作目『Informed Consent』を世に問うた。お家芸といえる変拍子と複合リズムはプリミティヴさを増し、とらえようではバンド史上もっともビーフハート度の高いこのアルバムで心機一転、反転攻勢に出るかと思われたパニックスマイルだったが、ここから彼らは短くない期間口を噤んでしまう。初期には1~2年のスパンだったアルバムのリリースはこの時点で3~4年と間遠になっていたものの、『Informed Consent』から本作までは7年かかっている。むろん手をこまねいていたのではない。吉田とドラムの松石がのこり、新たにギターで中西伸暢が、ベースには元イースタンユースの二宮友和が加わりラインナップは一新、それにより体質も刷新した。具体的には幾多のリフレインでモザイク模様を組み上げる従来の手法から個々メンバーの資質を活かす方向性に舵をきったというか。特筆すべきはベースの存在感で、奏法や音色の多彩さは音楽性の幅を生み、作品の厚みにつながっている。他方、吉田の手になる楽曲のオブセッシヴな歌詞や緊張感の高さは据え置きで、彼ら一流のぶっきらぼうなポップセンスはいくぶんかまろやかに仕上がっている。収録曲に目を転じると、トシちゃんのヒット曲をもじった “Hattoshite Bad” にはじまり、ポエトリーリーディング風の “Hands Free”、ギターのフレーズも印象的な “Best Hit Kiyokawa” ときて、全員が明後日の方向に走り出すかのごとき “I Wanna Be Strong” などは自家薬籠中のものの趣だが、幕引きの “Living In Wonderland” では4管を客演に迎え新領域に踏みこんでいる。パニックスマイルはかつて石橋英子の在籍時に彼女の演奏するフルートをとりいれたこともあったが、今回の管の間欠的なフレーズに耳を傾けると、その執拗な反復は装飾的効果よりむしろ構造を志向しているのがわかる。基本形をふまえながら新機軸を打ち出すこのやり方は結成当初からほとんどゆらがないが、表層的な飛躍より歩幅を確認できる前進を好む彼らのスタンスは煽情的なジャーナリズムの見出しよりむしろ、ことばの真の意味でのオルタナティヴに奉仕しつづける。すなわち音楽のありうべき場所(オルタナティヴ)をさししめすのである。

vol.124 NYシャットダウン#2 - ele-king

 4月に入った。3/11からコロナヴァイラス・パンデミック=非常事態に陥り、NYはあっという間に、世界中で一番のコロナヴァイラス(COVID 19)感染地帯となった。
 4/1現在、NY州の感染者7万人を超え、死者は2千人、NY市内では5万人の感染者、千人の死者、どれだけNY市内に感染者が多いかわかるだろう。アメリカの感染者は20万人で、すでに中国やイタリアを抜いている

 そんな中で問題は仕事がなくなり、レントが払えない人が続出。レントを一時停止する法案に投票を促されたり、ナイトワーカーやフリーランスの人にアンケートを取ってどれくらいの被害が出ているかモニターしたりウィリアムスバーグの家主は、4月のレントを免除するなど、色んな動きが出ている。
 みんなに会えないので電話したり、ビデオチャットで会話する時間が長くなった。うちらバンドも3日に一度ほど、ビデオチャットで現状報告をしている。夜も家にいることがほとんどなので、インスタライヴやライヴストリームでエンターテインしたり、プレイリストを作るミュージシャンがたくさん出てきた。

 アメリカン・ユートピアの再公演も決まった(9月より)、ディヴィッド・バーンは、彼のウエブサイトに、nothing is normal anymore (普通なものはなにもない)と、エッセイを寄稿している。「世界が変わるなら我々も変わろう」、ということである。

 どちらにしても、この状況はまだまだ続くと言われている(5月末?、夏まで?)、またNYの40~80%の人が感染すると言われている。つまりNYに居たらほとんどが感染するということだ。事態は深刻だが、昨日セントラルパークに行ったら意外にもたくさんの人がジョギングしていたり、歩いたり、日光浴をしていた。ずっと家に居て食べてばかりだと身体が鈍るのもわかる。が、今日4/1にNYの遊び場は閉鎖されることになった。公園は開いてるとのことだが、閉鎖されるのも時間の問題か。
 グローサリーショッピングに行っても入れる人数が決まってるので、30分~1時間ほど待ってようやく入れる。ソーシャル・ディスタンスを取らなければいけないので(6フィート=2m弱)、列がとても長くなる。流通は動いているので、一時無くなったストックもいまは再ストックされている。

 この状況になって半月が経ったが、私はほとんどNYに居ず、違う州にいた。自然と戯れているとこの状況を忘れることもできたが、話題はこれからどうしようか。これを書いているいま現在はNYに一時帰って来ているが、数日前から他州がNYの人を受け入れなくなった。NYナンバーの車はチェックされ、ホテルなどに2週間監禁されるらしい。NYでこれから過ごさなくてはならないのだが、この状況で後何ヶ月持つだろうか。収入は途絶え、やることもなく、不安で一杯なのだがいちおう失業保険があり、(先日の連邦議会上院によれば)タックスを払っている人に$1200支給され、さらに1099(フリーランサー)の人は週に$600が加算されるとか。となると、私が普通に働いているより収入が多くなるのだが(笑)。

 4月にピークが来ると言われている。いまより悪くなるのかと心細いが、私は大阪で阪神大震災、NYで9.11と大停電を経験している。家を追い出されそうにもなっているし(5回裁判所に行った)、貴重品をすべて持って行かれたこともあり、ちょっとやそっとでは驚かなくなっている。とは言っても、この状況は初めて。NYにこんなに人が居なくて、人が手袋、マスクをしている風景などは見たことがない。歴史的な状況にニューヨーカーがどのように立ち向かうのか、そしてNYなら何か奇跡が起こるのではと、思っている。


ラウンドでエクササイズする人

フードカートは閉鎖され、ほったらかしメッツミュージアム前も誰も居ない

Aphex Twin - ele-king

 最近父を亡くしたというエイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスが、どうやら昨今の状況に危機感を覚えたようで、めずらしく警告を発している。RA の報じるところによれば、当初 SoundCloud の user18081971 のプロフィール欄にメッセージがポストされ、一度削除された後、現在は Reddit に再掲載されている。とても良いことを言っているので、以下に試訳を掲げておきます。

現在悲しみに暮れている方々には心からお悔やみ申し上げます。ぼくは最近父を亡くしました。本当につらかったけど、COVID-19 とは無関係でした。

もし COVID-19 の統計を目にすることがあったら、その数値が COVID-19 “が原因で” 亡くなった人たちを反映しているのかどうか、ちゃんと確認しなきゃいけないよ。どうか忘れないでほしい。

もし警察が、きちんとした法もないような状態で政府の要望を遂行しているなら、ぼくたちは警察国家に生きていることになる。もはや民主主義なんてない。
あるいは、もしぼくたちが罪など犯していないにもかかわらず、自宅監禁状態に置かれているなら、やっぱりぼくらは警察国家に生きているんだ。民主主義なんてないんだよ。
こんなことが起こるなんて思わなかったよね。次にぼくらはどんな権利を失うか、わかってる? 想像できる?

注意してね。

Huge heartfelt condolences to anyone grieving right now, I lost my father recently and it’s been really tough, it was not related to C19.

When you are presented with C19 statistics, you must demand whether the figures reflect people who have died WITH C19 or FROM C19
Please do not forget this.

When police carry out wishes from government, without any law being in place, you are living in a police state and it is no longer a democracy.
When you are held under house arrest, when no crime has been committed, you are living in a police state and it is no longer a democracy.
You didn’t think this could happen did you? Do you know what rights you could lose next, can you guess?

You have been warned.

COM.A - ele-king

 絶妙なタイミングというべきか、あるいはこれこそが素晴らしき未来への道筋なのかもしれない。1999年にジョセフ・ナッシングとの ROM=PARI の1人として登場、00年代を通じて〈Fat Cat〉や〈ROMZ〉などから精力的にソロ名義でのリリースを重ね、キッド606 の〈Tigerbeat6〉ともリンク、エイフェックス・ツイン不在の時代に強烈なブレイクビーツで世界を震撼させたIDMの異端児、パンクの精神でこよなくメタルを愛する COM.A が、じつに13年ぶりの新作を発表する。
 夢なんかくそくらえ、希望を殺せ──もちろん2001年の『Dream and Hope』を踏まえているわけだが、昨今の世の状況を考えるとなんともタイムリーな(??)タイトルだ。あの痙攣したビートがさらなる進化を遂げているだろうことは想像にかたくない。とあるシュルレアリストによれば、美とは痙攣である。すなわち COM.A こそ美である。発売は6月3日。打ち震えよ。

パンク・ミーツ・IDM! 日本におけるオウテカやエイフェックス・ツインへの反応として一世を風靡した “COM.A (コーマ)” 13年振りの最新作リリース決定!

2000年、UKの名門〈FAT CAT〉からデビューしてブレイクコア・ブームを先導、その後のデ・デ・マウスらの登場をうながした奇才、“COM.A (コーマ)”。前作『Coming of Age』から13年、1st アルバム『Dream and Hope』から早20年、長らく昏睡状態に陥っていたコーマが導き出したのが、アンビエントやジャジーなセンスも注入しながらも、しかし、あの痙攣したビートと遊び心はさらに進化、そして混迷する現代への痛烈なメッセージも含んだ怪作『Fuck Dream and Kill Hope』だ!

気がつけば、自分の脳内も把握できず、コントロールすることすら怪しいこの時代、相も変わらず出口の見えない状態が続いている。コーマも多分に漏れず、自分を制御できずに混乱と迷走を繰り返している、そうした日々の集大成が今回のアルバムとなった。あなたはこの楽曲をどう受け取るか、判断するか。2020年、新しいディケイドのはじまりに、夢と希望を壊された頭で、是非ご確認いただきたい。

COM.A『Fuck Dream and Kill Hope』Teaser
https://youtu.be/UXCLqG1Iv28

COM.Aが復活した!
なんとも言い難い復活タイミングですね。
普段は人がゴミのような街でもゴミないと寂しいもんだから、
イヤホンでこれ爆音で歩くとかつて見た未来のようで楽しくなる。
夢の国も休業中。だったら頭に中に夢の国作っちゃおう。

あの頃からお互い変わらない部分と進化した部分、歳食った部分あるよね。
と50年後も同じこと言ってロボットスーツでハグし合い酒を酌み交わし、
酔っ払ってステージから飛び、また骨折りたいね。
まあ、お互い生き残ってたらね。 ──world’s end girlfriend (Virgin Babylon Records)

新型コロナウィルスに東京オリンピック延期、日々更新され加速してゆくディストピアな状況。COM.A くんからもらったニューアルバムを聴きながら夜の首都高を走る。街はいつも通り動いている。2000年代に『dream and hope』を初めて聴いた時に感じたチープな終末感とそれを笑い飛ばすジョークのようなクライマックスな気分。そしてこんな混沌とした2020年にこのアルバムが聴けるなんてね、めちゃくちゃ最高。 ──Have a Nice Day! 浅見北斗

沈んだ日本。暗い世界。先のない地球。こんな時に COM.A が昏睡状態から覚めるとは。玉手箱を開けると次から次へとパワフルな音楽が。ぜんぜん空気、読めてません草。 ──三田格

みごとなパラドックス。夢と希望の電子音楽のオンパレード。 ──野田努(ele-king)

十年どころか三年前がひと昔前のさっこん、干支がひとまわりしておつりがくる十三年ぶりの新作とは、開いた口も耳もふさがらないが、そこに流れこむ音響はかつての異形の美から美の異形へ、軽やかに翻っている。タイトルからは想像もつかない楽想のポップさと印象深いメロディ、それらが重なる縦の線の動かし方がとても秀逸。二〇二〇年のサウンドトラックとでももうしましょうか。 ──松村正人(『前衛音楽入門』の著者)

[アルバム情報]
タイトル: Fuck Dream and Kill Hope / ファック・ドリーム・アンド・キル・ホープ
アーティスト: COM.A / コーマ
レーベル: P-VINE
品番: PCD-24941
定価: ¥2,400+税
発売日: 2020年6月3日(水)

[収録曲]
01. Unintelligent Life Forms
02. Another D
03. Signs
04. Fortuitous Blood
05. Rife
06. Liar’s hand
07. Let us be thankful and be happy
08. You know who you are
09. False Repentance
10. Vanished Sprout
11. Centillionaire

COM.A (コーマ)
イギリス生まれ、香港、アメリカ、日本育ち。メタル、テクノ、エレクトロニカ、ブレイクコア等の要素をタイトで強烈なダンス・トラックに仕立て上げるスキルとセンスは、国内外問わず大きな評価を獲得し、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、ベルギー、中国などからアルバム、シングル、リミックスをリリース。00年に〈fatcat〉からのスプリットシリーズを皮切りに、Shiro The Goodman とともに主催の〈ROMZ〉から4枚のアルバムをリリース。同アルバムは kid606 主催の〈tigerbeat6〉、ブレイクコアレーベルの〈zod〉、中国の〈Shanshui〉からライセンスされた。00~10年まで国内外のライブ、フェスに参加後、10年間ライブ活動を休止し、CM音楽や映画、アニメ音楽等、作家業をメインに活動。2020年、新しいディケイドの始まりに 5th album 『Fuck Dream and Kill Hope』をリリース。

-Official Website-
https://geeky2200.wixsite.com/com-a

Moment Joon - ele-king

大前至

他人事として聞き流すのか、共鳴することはできるのか?

 韓国出身で現在、大阪を拠点に活動しているラッパー、Moment Joon。これまで日本人の親を持ちながら海外で生まれ育った、いわゆる帰国子女のラッパーや、あるいは国籍としては日本人ではないものの、幼少から日本で育ってネイティヴな日本語でラップするラッパーというのは少なからず存在している。しかし、大学への進学を機に韓国から日本へ移住したという Moment Joon の場合はそのどちらにも属しておらず、(本人曰く)「移民者」ラッパーという非常に稀な立ち位置で、日本のヒップホップ・シーンにてその存在感を強烈に示している。日本では留学生という立場ではあるものの、ビザ取得の面など自由に平穏に滞在すること自体も容易なことではなく、また、日本での日常生活の中で直接的な人種差別も受け、その一方で韓国の成人男性にとっては国民の義務である兵役中には自殺を考えるほどの苦しい思いをするなど、彼がこれまでの人生で経験してきた様々な苦労は、大半の日本人にとっては想像することすら難しいことかもしれない。しかし、そんな彼だからこそ表現できるトピックを、日本語ラップという手法の中で見事なエンターテイメントとして昇華させているのが、彼の 1st アルバムである『Passport & Garcon』だ。

 アルバムの幕開けとなる “KIX” ではタイトルが示す通り、関西国際空港(=KIX)での Moment Joon 自身の実体験が再現されており、彼にとっては入国審査ひとつ取っても、通常の日本人とは全く異なることがよく判る。この曲に限らず、本作で重要なのは、彼の体験やメッセージを他人事として聞き流してしまうのか、あるいは何らかの共鳴をすることができるのか? それは彼の存在や言葉を「外」からものとして捉えるか、あるいは「内」として捉えるかと言い換えてもよいかもしれない。もし前者であるならば、本作を聴く資格はないとまでは言わないが、しかし、作品が持つ意味が全く違うものになってしまうだろう。

 また、Moment Joon は韓国語、日本語、英語のトライリンガルであるが、本作のリリックはそのほとんどが日本語であり、韓国語と英語はごく少量のみ(そして実に効果的に)使われているのみだ。彼の日本語はほぼネイティヴスピーカー並みであるが、僅かな発音のクセが彼の放つ言葉に個性という輝きを与え、一つの魅力にもなっている。その上で、彼が移民者としての立場から、日本という国や社会、日本人に対して発するストレートなメッセージは、痛いくらいに辛辣であったり、時には挑発するような過激な表現が含まれていたりもする。それこそ、ここまでコンシャスなアルバムは昨今の日本語ラップでは珍しいくらいだ。そして、その先にあるのは、彼が現在住んでいる日本への愛と希望であり、さらに彼自身が属する日本のヒップホップ・シーンへの強い思いも感じとることができる。ラストに収録されている先行シングル曲 “TENO HIRA” はその集大成とも言える一曲であり、ぜひ、リリックを一つ一つ噛み締めながら聞いて欲しいが、個人的にも、日本語ラップでこんなに心が揺さぶられた経験は久しぶりだ。

 最後に、作品としてこのアルバムをより豊かなものにしているのが、一つは Hunger (Gagle)と Justhis という日韓二人のゲスト・ラッパーであり、もう一つは全てのトラックを手がけているプロデューサー、NOAH の存在だ。美しく透明感もあり、そして様々な感情を引き出す NOAH が作り出すトラックによって、アルバムとしての統一したカラーが見事に作り上げられ、Moment Joon の伝えたいメッセージに一つの明確な道筋を与えているようにも感じる。澁谷忠臣氏がデザインを手がけたカバーも含めて、必要最小限のミニマルな構成で作り上げたからこその、見事なアート作品と言えよう。

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高島鈴

この曲を聴いて手のひらを掲げたなら、それはもう約束だ。

 その島は沈黙している。よく耳を澄ませば、何事かをごにょごにょと話している風ではあるのだが、「何かありますか?」と聞くとみなお互いに顔を見合わせて口を閉じるのだ。いじめが常態化した教室のように、誰も責任を負おうとしない。ただあいまいな内輪の空気が満ちている。列島社会は長らくそのようなムードを擁してきた。
 この糾弾すべき沈黙のなかで、Moment Joon は手を上げている。賞賛の両手ではない。異議申し立ての片手である。

 ソウル出身大阪在住の「移民者ラッパー」 Moment Joon。前作「Immigration EP」のレヴューでも書いたように、社会変革のために戦うファイターであり、同時に「生存以上生活未満」の営みを必死に回す弱い生活者である。
 3月13日にリリースされた Moment Joon の新譜『Passport & Garcon』は、間違いなく2020年の年間チャートを席巻するだろう。しかしこの作品が本当に評価されたと感じるためには、年間チャート1位では到底足りない。この公共を持たないゴミカス列島社会が変わって初めて、Moment Joon は自作の評価を確信できるに違いない。社会に変化を望むなら、いや望んでいない人こそ、Moment Joon の声を聞くべきだ。

 本作は痛みと苦悩、恐怖と怯えに満ちている。
 入管職員から韓国への出国を「帰国」と言い換えられる(“KIX/Limo”)。税金を払っているかどうか執拗に尋ねられ、曲を「日本の悪口」と切り捨てられる(“Home/CHON”)。自分に浴びせられた無数の差別言説を自分の口から取り出して見せる(“KIMUCHI DE BINTA”)。リスナーに人生を見世物扱いされ、自分の愛が敗れる気配を悟る(“losing My Love”)。自分が口にした変革の意思を、当の自分が信じられなくなっていることを明かす(“Hunting Season”)。被差別の経験を持つファンの子どもたちを見て、苦しみながら守られる側から守る側へ立ち上がることを決意する(“Garcon in the Mirror”)。

 Moment Joon は、他人の痛みを俯瞰することに慣れきった列島社会(a.k.a. いじめの蔓延した教室)の中で傷を晒し、どうにかこの場に対面性を持ち込もうと試みている。考えてもみてほしい、これらの曲を歌って、痛みがないわけがない。作って終わり、ではなくて、ステージの上でこの曲を歌うたびに、Moment Joon の身体は繰り返し削り取られるはずだ。受けた傷を何度も自分の身体の上で反復して見せるような楽曲を、Moment Joon は他ならぬその傷を見せるために発表し、歌っている。
 この痛みを耳にして、Moment Joon の傷の反復を終わらせなければならないと思わないなら、そのリスナーはいじめ教室の住人のまま一生を終えることだろう。Moment Joon に「もう傷を負わなくていい」と言える状況を作りだすにはどうしたらいいか考え、全員が動かねばならない。マジョリティとお金と男根的権力を主人とする政治家ではなく、弱い人の生存を一番に考える政治家を探し出して投票したのかどうか、身近な場所で行われている差別に「それダメですよ」と声を上げたかどうか、そういう選択の瞬間にこそ、Moment Joon の声を聞いたことへの責任がある。一瞬でも人の痛みに対面したなら、その責任は絶対に重い。

 本作の最後は、「feat. Japan」と付け加えられた楽曲 “TENOHIRA” で締められる。この曲だけが、明確に連帯への希望を見出している。

この島のどこかで君が手を上げるまで
寂しくて怖いけどずっと歌うよ
見せて手のひら(ひら、ひら)
見せて手のひら(ひら、ひら)
Moment Joon “TENOHIRA”

 この曲を聴いて手のひらを掲げたなら、それはもう約束だ。あなたと協働する、あなたの痛みを受け止める、という Moment Joon との約束である。そして「約束を守る」というごくささやかな公共を繋いだ先に、列島社会を覆う空気は晴れるのではないか。楽観ではなく戦略として、私は希望を信じたいと思う。

ele-king臨時増刊号 山本太郎から見える日本 - ele-king

今こそ政治が問われるとき

彼の掲げた問題は
現在さらに深刻になっていないだろうか?

2020年、知っておきたい日本の政治・経済・社会・文化

インタヴュー:
山本太郎
内田樹
宇都宮健児
松尾匡
宮台真司
望月衣塑子
渡辺照子

目次

◆INTERVIEW

山本太郎
 政治家・山本太郎はどこから来て、どこへと向かうのか

内田樹
 みんなが正しいことを言うけれど、そこには笑顔がない。もっとふざけた人がいていい。
宇都宮健児
 「人にやさしい政治」を実現するには?
宮台真司
 社会がつまらないんじゃない、お前がつまらないんだ!
望月衣塑子
 一人ひとりの記者が声を上げていけば、いつかその声は連鎖を生み「社会変革」につながる
松尾匡
 「生きているだけで価値がある」に行き着くための経済学
渡辺照子
 諦めて生きるには人生は長い。でも諦めないでなんとかしなきゃと思うと、人生の時間は限られている。

◆COLUMN / TALK

斎藤幸平
 山本太郎はポピュリストなのか?
高島鈴
 TikTok的、あまりにTikTok的な──「若者の政治的無関心」をひらく
白石嘉治
 山本太郎と「知性」の再開のために
松本哉
 昔ながらの民衆の生き方をすることが、カネばかりの資本主義社会へのいちばんの抵抗になる。
Mars89
 ぼくらはバンクシーが描いたネズミかもしれない。社会にいるのに無視された存在かもしれない。それを可視化すること。
沖野修也
 311以降の日本は現実を直視できないでいる。山本太郎が嫌がられるのはその現実を言うからでしょう。
マシュー・チョジック
 どうか日本はアメリカを真似しないでほしい。アメリカ式で進めていったら、日本も大変なことになります。 

表紙写真:岩沢蘭


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Tokyo Black Star - ele-king

 90年代から00年代前半にかけて、東京のハウス/テクノのシーンで活躍し、その後NY~ベルリンと移住しているDJ/プロデューサーのAlex from Tokyoとサウンドエンジニア熊野功によるTokyo Black Starの久しぶりの音源リリースです。タイトルは「Blade Dancer EP」。
 今回は、2015年よりメンバーに加わったアナログ機器オタクの高木健一との3人体制による新作で、彼らのヒット曲“Blade Dancer”の未発表のオリジナル。ヴァージョンと新ヴァージョンを収録。また〈Innervisions〉の2008年のアンビエント・コンピレーション『Muting The Noise 01』に収録された“Kagura”も再録。どれもアナログの音響が気持ちいいdeepなハウス&アンビエントです。
 アートワークはいつものようにNY在住の画家、松山智和の絵画をフィーチャーしながら、ベルリンのTa-Trungがデザイン。リリースはAlexの自主レーベル〈world famous〉から。日本の流通はDisk Unionなので、ハウスを扱っているレコ店のオンラインでチェックしてね。

吉田アミ - ele-king

 長らく廃盤となっていたヴォイス・パフォーマーの吉田アミによる代表作のひとつ『虎鶫(とらつぐみ)』が、2003年のリリースから17年の時を経て、このたび FTARRI のソロ専門レーベル〈Hitorri〉からリイシュー盤として再発されることとなった。自身の名義による作品であるものの実質的にはベーシストの tamaru とのデュオ作であった『Spiritual Voice』(1997)を除くと、本盤は吉田の最初のソロ・アルバムであり、また、ヴォイスを用いたフリー・ミュージックの歴史に革新をもたらした画期的作品でもある。

 あらためて振り返るなら、吉田アミによるハウリング・ヴォイスと呼ばれるそのサウンドは、ほとんど即物的に響く物音と化すことによって、声から意味や記号、人間的な内面性などを徹底的に剥ぎ取ることを成し遂げた。肉声という言葉に見られるように、人間によるあらゆる発音行為のなかでも声はもっとも深く身体に根差した表現である。ある声が発されるとき、その声はまずもって「誰かの声」という属人性とともに認識される。こうした属人性は声から身体を手繰り寄せ、音響以外のさまざまな意味/記号を聴き手に想起させることとなる。そしてこのことは、通常の音楽における歌声に限らず、声を器楽的に使用するパフォーマンスの歴史においても逃れ難く纏わりついてきた。たとえばキャシー・バーベリアンやファティマ・ミランダ、シェリー・ハーシュ、デヴィッド・モス、巻上公一らに見られるように、声による表現手法を開発/拡張し、それらの素材を自在に使いこなすことによって、いわゆる超絶技巧的なスペクタクルを聴かせるヴォイスからは、圧倒的な個性とともに声の持ち主の具体的な姿を思い浮かべることができる。しかし吉田の声はこうした意味性から離れ、あたかも電子音響のように、あるいは環境から聴こえるノイズのように即物的に響く。そこにはもはや「誰かの声」という属人的な個性はなく、ただ耳に聴こえるものとしての音響があるのみである──ただし、むろんこうしたハウリング・ヴォイスを使用するという点では、他の誰とも異なる吉田アミという作家性が刻印されているものの。

 『虎鶫』はそうした吉田のヴォイス・パターンを99トラックに収めた、本人の言を借りるならば「いま自分が出せる音を素材別に整理した図鑑のようなもの」とでも言うべき作品となっている。喉を振り絞り、あるいは口腔と口唇を駆使することによって生み出されるサウンドは、一聴しただけではとても人間の声とは思えないような驚きに満ち溢れている。多くの楽曲は10秒前後または1分以内に終わる短い作品であり、音楽的な構成よりも音色パターンの提示に主眼が置かれていると言えるものの、なかには録音後に編集を施すことで同一の声が左右のステレオ・スピーカーからパンニングする楽曲や、短いフレーズを何度も繰り返し反復することでサウンドの即物性をより増していくもの、あるいはハーシュなノイズののちにほとんど何も聴こえない時間が非周期的に反復されるものなどもあり、楽曲ごとにユニークな趣向が凝らされている。さらにこれまでの説明に反するかもしれないものの、明らかに人間の声だとわかるサウンドや、不意に声帯がそのまま震えてしまったことで聴こえる身体的/官能的なサウンドも収録されている。いずれにしても本盤の「図鑑」的性格は、単にヴォイス・パターンだけではなく、その音響を録音作品として提示する際のプロダクションとしての側面も含まれていると言ってよいだろう。そのことを裏付けるように最終トラックとなる99曲めでは、あたかもフィールド・レコーディングのように、秒針が淡々と時を刻む響きと学校のチャイムのような鐘の音、そして子供の遊び声のようなざわめきが聞こえてくる。ここに至ってわたしたちは、声がもたらす記号的な意味にありありと遭遇することとなるのである。

 本盤のリイシューは、作品にあらためてアクセスできるようになったということに加えて、音響系/音響的即興がすでに復刻の対象となる歴史に組み入れられているという事実を示してもいる。20年近い時間が経過するなかで、吉田アミ自身も、朗読をテーマに据えた「吉田アミ、か、大谷能生」や、立川貴一とともに舞台空間の演出を手がけるユニット「ミニスキュル・シングス」など、時を追うごとにあらたな試みへと踏み出してきた。それは単に活動が変遷したということではなく、音響系/音響的即興の成果をどのように継承し、あるいは発展させることができるのかということの実験の軌跡でもあるように思う──たとえば現在の彼女はハウリング・ヴォイスを即物的な音響の提示ではなく、舞台上のパフォーマンスにおけるひとつの手段として使用している側面がある。それは意味/記号を剥ぎ取った声になおもつきまとう作家性を、特定の舞台空間との関係性からあらためて更新しようとする試みであるようにも見える。いずれにしてもこのことは彼女のみならず、音響系/音響的即興以降の地平に立つあらゆる作り手と受け手に関わる問題であり、その意味でも本盤は、これからも繰り返し参照されるべきヴォイスの特異点としてアクチュアルな価値を帯びていると言えるだろう。

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