「IO」と一致するもの

KOHH - ele-king

 梔子。くちなし。東アジアに分布する常緑低木。英名は「ケープ・ジャスミン(Cape Jasmine)」、花言葉は「幸せを運ぶ」、「私はとても幸せ」、「胸に秘めた愛」、「洗練」。花びらは白く、朱色の実をすりつぶして得られる染料は少しだけ赤味を帯びた柔らかな黄色で、抽出される香りは、ほのかに甘い。その実は熟しても決して割れ落ちることがなく、よって和名は「口無し」「朽ち無し」に由来する、とされる。──喉仏にマルセル・デュシャンのモナリザ、左手の甲にニコラ・テスラのタトゥーをでかでかと彫り込み、前歯に金や銀のグリルズを光らせる日本人ラッパーのアルバム・タイトルとしては、とても謎めいていて、同時に様々なイメージを喚起する、秀逸なネーミングだと思う。

 2015年1月1日、新年の喧噪のさなかに東京都北区王子のKOHHの「ファースト・アルバム」である『梔子』は届けられた。去年の夏、新人としては異例のセールスを上げた『MONOCHROME』のリリース時点ですでに明らかにされていたことだが、制作順で言えば、実はこの『梔子』こそが正真正銘のKOHHの「ファースト・アルバム」であり、その完成後、まずはよりKOHHの内面を掘り下げた楽曲をリリースすべきだとの判断のもと、急遽レコーディングされた「セカンド・アルバム」が、前作『MONOCHROME』だったことになる。
 そのタイトル通り、都市生活者の心象風景を精緻にスケッチしたモノクロのポートレートを思わせた『MONOCHROME』の濃いブルーの佇まいに比べて、制作時期もバラバラな楽曲で構成された本作は、より多彩で、初々しい雰囲気に満ちている。トラックのほとんどは、GUNSMITH PRODUCTION所属の俊英ビートメイカー、理貴によるもの。彼がこれまでも得意としてきた疾走感のある叙情的なビートに加え、サックスやストリングスを取り入れたメロウで奥行きのあるミドル・テンポ・チューンなど、KOHHとの新たなコンビネーションを披露している。

 聴き終えて残る印象は三つ。一つめは、旅立ちと別れのフィーリング。現時点で最も新しくレコーディングされたというリード・シングル“飛行機”も、「どこにいこう?」というフックが印象的に繰り返され、「いってきます、未来に」と締めくくられる“WHERE YOU AT?”も、どちらも放送禁止用語やきわどい表現は皆無のさわやかさで、新たなフィールドに足を踏み入れる瞬間の、特別な高揚感を漂わせている。最も古い曲は3年前に録られたものだというから、当然KOHHのライミングもフロウも荒削りだが、直感的でときに幼児的なボキャブラリーは、東京の片隅で育った一人の青年の幼い野心のうごめきと青春の終わりを、みずみずしいタッチで写し取っている。
 二つめは、愛。普遍的な愛ではなく、性愛。つまりラヴ・ソング。まずは、R. ケリーばりの艶っぽさで愛情のない剥き出しの性的欲望のやりとりを描き、そのままフェミニズムの教科書にセクシズムとミソジニーの典型的なサンプルとして載せられそうな“NO LOVE”、そして、成熟と呼ぶにはあまりにも初々しい手つきで「ボーイ・ミーツ・ガール」の定型的な物語をなぞってみせる“REAL LOVE”。
 それぞれ直球なタイトルがつけられた対照的な2曲を聴いて連想したのは、レオス・カラックスのSFノワール『汚れた血』の劇中のセリフ、「いま、きみとすれ違ったら、俺はこの世界すべてとすれ違ってしまうことになる。そんな人生って、あるか?」── 愛のないセックスによって感染する奇病が蔓延する近未来のパリで、運命的なヒロインに出会った主人公の男が吐く言葉。いくらありきたりでも、当事者にとってはひどく切実なボーイ・ミーツ・ガールのこんな決まり文句は、だが、必ず裏切られる。終盤にかけてセンチメンタルなトーンで描かれるのは、その拙い恋物語の終わりであるとともに、KOHHにとっての「青の時代」の内省の始まりでもある。
 三つめは、ミックステープ『YELLOW T△PE』シリーズからの再録曲に顕著な、徹底した空虚さ。現代の消費主義のアイコンである最新の携帯電話をモティーフに、SNSを通じたチープで発情的なコミュニケーションを露悪的に表現する”iPhone 5”、そして何より、A$AP ROCKYの”PUSSY, MONEY, WEED”を彷彿とさせる虚無的なパンチライン、「ただ生きてるだけ/女と洋服と金」が飛び出す"JUNJI TAKADA"。特に、有名コメディアンの名前と衝動的なフレーズを繰り返すだけの後者のリリックは、30分で書き上げ、推敲もあえて一切しなかったそうだ。このジャンクフードのような言葉とノリを、まるで甘さのない、圧倒的な強度のビートにのせてバウンスさせること。ひどく空っぽで、かつ強烈なこの自己肯定は、同時代の凡百のパンク・バンドに、ピストルズの「プリティ・ヴェイカント」の現代的なヴァージョンがどのようなものか、まざまざと教えてくれるだろう。

 決定的に重要なのは、これらの夢や欲望や愛をめぐる独白がどれも、USラップからのいくつかの引用と、まるでひと昔前に流行したケータイ小説のような、とてもシンプルな日本語だけで成立していることだ。巨大な壁のようにそびえ立つ団地、汚れたハイエース、渋谷の喧噪のなかで仰ぎ見る青空、切り裂かれた宇多田ヒカルの歌声、やりたいだけのブーティ・コール、汗ばんだ女の首もとで踊るダイヤモンド、iPhoneで撮る半裸のセルフィー、灼けた肌のタトゥーをなぞる唇、遊びの相手とお揃いのピンキーリング、宝石店に強盗に押し入る目出し帽の男たち、ルブタンのハイヒール、幼馴染たちの実名、死んだ友人の面影、JFKに向けて離陸する飛行機、女の頬を伝う涙…。
 そこでは、かつてソウル・ミュージックが慎みとともに「メイク・ラヴ」と呼んだ愛の営みは「ファック」と粗暴に呼び変えられ、その相手は「ビッチ」、ときには「プッシー」と、もはや「女性器そのもの」の俗称で呼ばれる。徹底的にモノ化した男女の身体のイメージと、電波のように飛び交う無防備な感情が、ひどくたどたどしく、それゆえ生々しい言葉ですくい取られることで、ぎりぎりのところで新鮮なポップ・ミュージックに昇華されている。これは、いままで一度も文化と呼ばれることのなかった文化であり、一度もアートと呼ばれることのなかったアートだ。図書館の棚に整然と陳列される「文化研究」のテキストや、アーティストの卵が「アート」の制作にはげむ美大のアトリエには決して存在しない、濃密な文化と芸術の先端が、ここに無造作につかみ取られている。

 強く直感するのは、これが犬の言葉だということ。目の前の快楽をただむさぼり、自分が選んだ絆だけを真っすぐに強く信じる、純粋で乱暴な、犬の言葉。かつてスヌープ・ドギー・ドッグがカートゥーン風の自画像で自らを「犬」と呼んだ自己演出さえも、いまや必要とされない。そんなメタファーなどなくても、KOHHが頻繁に発する「UGHH」という唸り声や、フロウの端々で裏返るファルセット、いきなり噴出する怒声を聴けば、誰にでもすぐに、これが犬の言語だとわかる。
 実はこれはKOHHに限ったことではなく、直近で言えばOG MACOやRAE SREMMURDなど、近年のUSの若手ラッパーたちも、もはや「鳴き声」としか形容しようのない、奇妙で動物的な発声を多用する。詩情のまるで感じられないスカスカでジャンクな言葉、そしてそこからもこぼれ落ちる、叫びとも呻きともつかない、衝動的な喉の震え。ラップ/ヒップホップ文化のなかで繰り返し表現されてきた「犬(Dawgs)のような俺たち」という比喩が、いつの間にかラッパーたちの生身の身体に浸透し、独自の言語を操る新種のミュータントを誕生させたかのようだ。
 だから、手のつけられない凶暴さと、こちらが気恥ずかしくなるほどのナイーヴさが同居しているのも、少しも不思議ではない。つぶらな黒い瞳と尖った牙。無邪気な仕草と獰猛なうなり声。涎を垂らしてひび割れたコンクリートを低くうろつき回り、突如驚異的な跳躍力でジャンプする。濡れた鼻先を鳴らして仲間たちとじゃれ合い、敵対者には鋭く牙を剥く。重苦しい現実のプレッシャーからも、ポリティカル・コレクトネスのくびきからも、彼らは自由だ。自分たちに名前をつけ、首輪をはめて飼い馴らそうとする新しもの好きの手をすり抜けて、犬たちの群れは次々と未開の場所を目指す。この『梔子』を聴いた後、続いて制作された『MONOCHROME』を聴き直せば、あのアンビヴァレントな叙情が爆発する“貧乏なんて気にしない”が、「Started from the bottom Now my whole team fuckin' here」(Drake)の高らかな宣言だったことが、はっきりとわかるだろう。

 だが、こうしたストーリーもすでに昔話に過ぎない。事実、KOHHはもうサード・アルバムに向けて動き出している。昨年末に1ヶ月ほどNYのハーレムに滞在していたKOHHは、次作はアメリカに渡ってレコーディングするそうだ。その直近の軌跡を知るうえで重要な客演曲がふたつ。ひとつは、KOHHがハーレム滞在時にともに行動していたラッパーJ $TASHが来日の際、ANDY MILONAKISを加えて地元王子でPVもろともたった1日でレコーディングされたという「HIROI SEKAI(WORLDWIDE)」。もうひとつは、韓国のアンダーグラウンド・レーベル〈HI-LITE RECORDSのKIETH APE〉の新曲に、 彼が所属するTHE COHORTのOKASIAN、JAY ALL DAY、日本からは SQUASH SQUAD の LOOTA とともに招かれた"It G Ma"。どちらも海を超えた共同制作であるという点で目新しいとともに、そこで聴けるKOHHのフロウは、彼が著しい進化の途上にあることを雄弁に物語っている。
 むろん海外勢とのジョイントはこの2曲に限ったことではない。サウス・ヒップホップの音楽的爆心地のひとつ、ヒューストンのSLIM Kが『YELLOW T△PE』シリーズの楽曲をドラッギーにリミックスしたチョップド&スクリュー盤『PURP TPE』の例に象徴されるように、KOHH、そして彼が所属するGUNSMITH PRODUCTIONは、近年インターネットを中心に急速に発達してきたミックステープ・シーンが生み出したグローバルなラップ/ヒップホップ文化のコミュニティ、ないしはネットワークを共有している。昨年、DJ ISSOとSEEDAがサウス・シカゴの新鋭CHIEF KEEF周辺の重要人物、DJ KENNとのコラボレーションのもとリリースした『CCG THE CHICAGO ALLIANCE』や、ANARCHYがメジャー・デビュー直前に同じく多くの海外アーティストを招いてフリーダウンロードで発表した『DGKA』といったミックステープが、こうした流れの一端であることは論をまたない。

 いま起ころうとしているのは、それぞれの社会の文脈によって多様にローカライズされつつも、国境を越えて確かに共振する、グローバルなアウトサイダー・カルチャーの混淆だ。まるで基礎教養のように様々なドラッグの隠語をそらんじ、幼い頃から熟知した犯罪の符牒を暗号じみた手つきとアイコンタクトでやり取りする、越境者たちのコミュニティ。服では隠せない場所に入れたタトゥーでお互いのアイデンティティを確認し、通常の人間には聴こえない周波数の音に耳を尖らせ、独自のスラングと遠吠えで交信する、異形の犬たちのネットワーク。グローバルなラップ/ヒップホップ文化は、これまで強く根ざしてきた場所と人種に基づく垂直的な軸に、インターネットをベースとした流動的なネットワークによる水平的な軸が加わることで、ゆるやかに再構成されつつあるようだ。
 東京北部郊外、隅田川沿いにそびえる巨大な団地のたもとで鳴らされるこのラップ・ミュージックは、官製の文化政策をバックに、国民的アイドルや現実から遊離したアニメーションによって推進される「クール・ジャパン」とはまったく別種の、日本から世界への応答となるだろう。本作『梔子』は、世界中にバラまかれたラップ/ヒップホップという危険な文化の種子が、極東の地で独自の交配を繰り返して誕生した突然変異種であり、マリファナの灰とコデインの原液を養分に育った、いびつで、美しい花だ。しかも、毒を秘めた。

 ここにあるのは、最新の、古いポートレート。紙飛行機のかたちをした置き手紙。タイムラグとともに届けられた初対面の挨拶は、そのまま別れの言葉だ。ハロー。グッバイ。アイ・ラヴ・ユー。リラックスして真っ白なカンバスに向き合えば、ピカソ風の自画像が歌い出し、隣で写楽が伴奏する。あっという間に月と太陽が入れ変わり、手もとのiPhoneが出かける時刻を告げる。赤い口紅の付いたTシャツを着替えて、真新しいキックスに足を突っ込む。甘い香水の匂いも、首筋のキスマークも、すぐに消える。はじめまして。さようなら。いってきます。だけど、いまはまだここにいる。喧噪の余韻を濡れた鼻先に感じながら、次に見る景色を思い浮かべている。さあ、どこにいこう?

映像をBaconが、音楽はRezzettが再編集! - ele-king

 スケートシング、トビー・フェルトウェルらによる東京発のアパレル・ブランド〈C.E〉より2015 Spring/Summerのルックムービーが公開された。

 これは、昨年末〈Tokyo Fashion Week VERSUS TOKYO〉にて披露されたプレゼンテーションの模様を俯瞰カメラでシュートし、このルックムービー用にBacon(足下から視界までコントロールする方々)が映像をエディット。

 そして、当日もライヴをこなしたRezzett(英国より現れた謎に満ちたニューカマー、しかし一聴してソレとわかる電子音を司る2人組)によって新たにマスタリングを施された内容は一見の価値あり。もちろん当日のライヴ音源を使用している。

 ムービー公開に合わせて、今回もニューヨークのSplay/がC.Eのウェブサイト・リニューアルを担当(www.cavempt.com)。
 New York / London / Tokyoと張り巡らされるC.Eネットワークが、オンライン上にて結実した世界は2015年も増殖膨張をつづける。

あらべぇ - ele-king

去年よく聴いてた10作品

去年よく聴いてた10作品です。順不同です。
ちなみに、去年のベストレーベル(?)は「psalmus diuersae」です。(僕も密かにゴニョゴニョ……)
https://soundcloud.com/wlowlodub

“告知です”
2/8に恵比寿のKATAにてD/P/I(Alex Gray)の来日公演があります。僕はDJさせていただきます。ぜひ!
https://www.kata-gallery.net/events/BONDAID4/

TV On The Radio - ele-king

 We can’t breathe――ニューヨークで黒人青年が課税対象外のタバコを販売した容疑で逮捕された際に警官に首を絞めて殺害された事件に抗議するデモで(殺害した白人警官は不起訴)、一斉に叫ばれた言葉がこれだったそうだ。それは、殺害されたエリック・ガーナー青年が「息ができない!」と繰り返したことから来ているそうだが、そこには何か、ニューヨークという磁場が生み出す雑多な民衆の声が含まれているように思える。バリバリの左翼活動家だったというビル・デブラシオ現市長もデモを支持しているそうだが、彼の治世で街の空気はどれくらい変わったのだろうか。それは外から見ているぶんにはわからないが、しかし「息ができない」という悲痛な叫びは、声を合わせて放たれることで、何かメッセージとして前向きな力を得ていることが伝わってくる。「He」can’t breatheではなく、「We」なのだから。

 もしそのデモにサウンドトラックをつけるのならば、TV・オン・ザ・レディオの3年ぶりのアルバム『シーズ』はどうだろうか。それぞれのソロ活動や客演を経て、前作につづきLA録音となったことが話題になっているが、しかしこれは彼らが相変わらずニューヨークという街から切り離せないことを示している作品だと思える。いや、彼らが生み出したニューヨーク……と言おうか、そのマルチ・カルチュラルな佇まいと音、飽くことのない実験主義とそれでいてソウルフルな熱は、TV・オン・ザ・レディオがバンドとバンドの頭脳であるデヴィッド・シーテックのプロデュース・ワークによってゼロ年代を通してかの街に振りまいてきたものだ。

 つまり逆に言えば、音としては特別新しい何かが植え付けられているわけではない。前作『ナイン・タイプス・オブ・ライト』のリリース直後に他界したジェラード・スミスの不在を悼みつつ、バンドのアイデンティティをゆっくりと確かめあうようなアルバムだ。変化といえば演奏はラフになり、リズムはシンプルになり(8ビートのトラックも目立つ)、メロディはキャッチーになり……要するに、ちょっと拍子抜けするぐらいに気軽に聴けるポップネスに満ちている。

 ではゆるいアルバムかと問われればけっしてそんなことはなく、むしろ前作でやや削がれたエネルギーが帰ってきているように聞こえる。“ケアフル・ユー”、“ラヴ・ステインド”のようにエレクトロニクスをまぶすことでカラフルな印象が増していることもあるし、パンキッシュなギターが聴ける“ハッピー・イディオット”や“ウィンター”、“レーザーレイ”によるところもある。近作において得意のブラス・アンサンブルによる勇壮な味付けも腹に響く。

 しかしこのアルバムにさらなるパワフルさを与えているのは、僕のような英語のリスニング能力に難のある人間の耳にもポンポンと迷いなく入ってくる言葉たちだ。たとえばアコースティック・ギターの穏やかな演奏とともに「ああ トラブルがやってきた」とはじまる“トラブル”はやがて、「Everything’s gonna be OK」というコーラスを導いてくる。「すべてうまくいくさ」……それはかつて、そうたとえば、公民権運動の時代にソウルの歌唱に何度となくこめられた言葉であったはずだ。TV・オン・ザ・レディオはそんなふうな力強い言葉と音を備えたバンドであったことをこのアルバムを聴いていると思い出す。バンドは激動のゼロ年代のニューヨークを駆け抜けてきたが、転換点であった2008年の『ディア・サイエンス』では「黄金時代がやってくる!」と時代の高揚感を代弁していた。その宣言が正しかったのかどうかはそのつづきを生きるわたしたちにはまだわからないが、しかしいままた彼らは「言うんだ、今すぐに! 楽しむんだ、今すぐに!」(“ライト・ナウ”)と繰り返す。もし「We can’t breathe」に匹敵する言葉がこのアルバムにあるとすればそれは、もっとも明るい輝きに満ちた“クッド・ユー”だろう。「誰かを愛してくれないか? その心を開いてくれないか?」……息ができない「わたしたち」はべつに、何か敵と闘って打ち負かしたいわけではなく、その心を開いてほしいだけなのだ。

 「雨はいつものように降ってくる/今回は地面に種を植えてみた(“シーズ”)」。ブルックリンの熱狂が去った現在においてTV・オン・ザ・レディオの旬もまた過ぎたのかもしれないが、しかしそれがどうしたというのだろう。ここには変わらず、ハイブリッドであることへのプライドと情熱があり、そして苦境を知りながら前を向くための力が躍動している。

こだま和文 - ele-king

 最近何が驚いたかって、ぜんぜんダブのイメージのないパンダ・ベアがキング・タビーからの影響を取り入れたらしい新作を発表するかと思えば、Back To Chillのレーベルを始動させたゴス・トラッドがいまだからこそダブのベースの凄みを強調しようとする。UKでは、エイドリアン・シャーウッドとピンチは世代を超えたダブ・アルバムを作って、リリースしたばかり。そして日本のダブの先駆者、こだま和文が還暦を迎える。1月29日には、その一大イベントが開かれる。ここしばらく「ダブ」というキーワードは表だってこなかったけど、これは、ダブの季節の到来、本当にあるかも。

  以下、リキッドルームからの熱いメッセージです。

還暦のエコーこだまする宴へ

 30年以上にわたるエコーの連なりをこの国の音楽シーンに響き渡らせ続けてきた男、こだま和文。還暦を迎える、現在もそれは継続した響きの連なりを 持っている。ミュート・ビート、世界初のライヴ・ダブ・バンドとして東京の音をひとつ、1980年代に前進させた。これを発端にして、そして“レゲエ” や“ダブ”という言葉を外しても、彼がいなければ、果たしてこの国のアンダーグラウンドからポップ・ミュージックにいたるまで、それらがいまと同じ形に なっていったかというのを考えるばかりである。ソロ・アーティストとしても数々の名作を残し、1990年代以降から現在にいたるまでの中心的プロジェク ト“DUB STATION”での、ある種、ヒップホップやベルリンのリズム&サウンドやミニマル・ダブへの回答のような、そのスタイルは唯一無二の存在感を放ってい る。そして、フィッシュマンズのファーストなど、プロデュース作においても、やはりその動きはこの国の音楽シーンに消せない刻印をくっきりと残している。 新作が待たれるばかりだが、ライヴや客演での活動は、いまだ活発だ。

 先ごろ、ミュート・ビート以前の、これまで謎の多かった、その若き半生を綴った近著『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』が刊行されたばかりだが、こだま和文がこのたび還暦を迎える。

 この日、これまで共演や客演などでそのリスペクトを示してきたEGO-WRAPPIN’、bonobos、ORESKABANDなど、その遺伝子を 持つアーティストたち、そして後期ミュート・ビートのメンバーでありこだま和文の朋友、故江戸アケミ率いるじゃがたらでもキーボードを務め、先ごろ円熟の ソロアルバム『遠近(おちこち)に』をリリースしたばかりのキーボーディスト、エマーソン北村も出演。

この宴、祝う。

▼EGO-WRAPPIN’
1996年 中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)によって大阪で結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェ リー」は、多様なジャンルを消化し、エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなる。以後、作品ごとに魅せる斬新な音楽性において、常 に日本の音楽シーンにて注目を集めている。2014年5月には、オダギリジョー主演テレビ東京系ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌・劇中歌、エンディングテーマの3曲を収録した、New Single「BRIGHT TIME」をリリース。
https://www.egowrappin.com

▼bonobos
2001年結成、2003年『もうじき冬が来る』でメジャー・デビュー。レゲェ/ダブ、ドラムンベース、エレクトロニカ、サンバにカリプソと、様々なリズ ムを呑み込みながらフォークへ向かう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団。ROCK IN JAPAN、FUJI ROCK FES、RISING SUN ROCK FESなど、毎年数多くの野外フェスに出演し、ライヴ・バンドとしても確固たる地位を築いている。他アーティストへの楽曲提供、演奏サポートなど、それぞれ のソロ活動も精力的に行われ、2010年にはvo.蔡、dr.辻ともにソロアルバムも制作/発表。2014年3月5日には6thアルバム『HYPER FOLK』をリリース。さらに8月20日には初のライヴ・アルバム『HYPER FOLK JAMBOREE TOKYO.1/2』をライヴ会場限定販売にてリリース。
https://www.bonobos.jp

▼ORESKABAND
2003年に大阪・堺にて結成し、ライブを中心に活動するガールズ・ブラスロックバンド。3Rhythms&3Hornsの楽器構成。The Specials から絶大な影響を受けており、結成当初からスカバンドとして活動してきたが、活動を続けていくにつれて、2トーンをより精神的なものとして捉え、音楽のス タイルやジャンルをさまざまな方向に広げ、より自分たちらしい音楽を追求するようになる。2008年に全米46都市ツアーを行ってから、精力的に海外と日 本での活動を続けている。
https://www.oreskaband.com

▼エマーソン北村
ミュージシャン。オルガン・シンセを中心とする鍵盤演奏及び作編曲を行なう。ニューウエーブのバンドで音楽活動を始め、「ワールドミュージック」全盛 の’80年代末、JAGATARAとMUTE BEATに参加。’90年代前半にはライブハウス「代々木チョコレートシティ」及びそのレーベル「NUTMEG」においてあらゆる個性的な音楽、特に初期 のHip Hopやレゲエの制作に関わる。その後忌野清志郎&2・3′sを皮切りにフリーのキーボードプレイヤーとして活動。ロック畑からオルタナティブな 分野まで、音数は少ないが的確な演奏と音楽を広く深く理解する力によって、インディー/メジャーを問わない数多くのアーティスト・バンドをサポートしてき た。また、レゲエの創成期からジャマイカで活躍したミュージシャン、ジャッキー・ミットゥーの音楽を出発点としてリズムボックスと古いキーボードによるイ ンストゥルメンタル音楽を作っており、「エマソロ」と呼ばれる一人ライヴを全国各地や海外で展開している。2014年7月、オリジナル曲を中心としたソロ アルバム『遠近(おちこち)に』を、自身のレーベルからリリース。
https://www.emersonkitamura.com

▼松竹谷 清
1957年、北海道・札幌市生まれ。80年代から90年代初頭 に掛けて”TOMATOS”のリーダーとして活躍。メンバー には、じゃがたらのNABE CHANG(Bass)、EBBY(Guitar)や ミュート・ ビートの松永孝義(Bass)、今井秀行(Drums)ら が在籍。TOMATOSは、80年代にじゃがたら、ミュート・ ビート、S-KENと共にTokyo Soy Souceというライブ・イ ベントを企画、 シリーズ化して、それまでの日本のロック とはまた違った新たな音楽シーンを作った。彼らの活動が ベースにあった上で、後にリトルテンポやフィッシュマン ズが生まれた といっても過言ではない。又88年には、ス カの創始者ローランド・アルフォンの初来日公演 “Roland Alphonso meets Mute Beat”でサポート・ギタリストとし て参加、 後世に語り継がれる感動のライブとなった。その 後、ローランド・アルフォンとは2枚のアルバム 『ROLAND ALPHON SO meets GOOD BAITES with ピアニ カ前田 at WACKIES NEW JERSEY』、『Summer Place』を 一緒に作り、リリースした。
近年は、”吾妻光良&The Swinging Boppers”、“西内徹バ ンド”、“松永孝義”のアルバム等に参加。その天真爛漫 な存在感、ブラック・ミュージックの粋なエッセンスを日 本語に 置き換えた唄は、キャリアと共により味わい深さを増している。

▼こだま和文
1981年、ライヴでダブを演奏する日本初のダブ・バンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム『QUIET REGGAE』から2003年発表の『A SILENT PRAYER』まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 『IN THE STUDIO』、2006年には『MORE』を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム『チャッピー・ドント・ クライ』等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のラ イブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても『スティル エコー』(1993)、『ノート・その日その日』(1996)、「空をあおいで」(2010)『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』(2014)がある。
https://echoinfo.exblog.jp

主催:上村勝彦
企画:上村勝彦
協力:LIQUIDROOM

2015.01.29
OPEN / START 18:00 / 19:00
ADV / DOOR ¥3,500(税込・ドリンクチャージ別)

LINE UP
EGO-WRAPPIN'、bonobos、ORESKABAND、エマーソン北村、松竹谷 清、こだま和文
*エマーソン北村の一人ライヴ「エマソロ」は開場時に行われます。

TICKET
チケットぴあ [250-653] ローソンチケット [74120] e+ LIQUIDROOM 12/13 ON SALE

INFO
LIQUIDROOM 03(5464)0800


Extreme Precautions - ele-king

 昨今のそれっぽい黒テクノをなぎ払う……なんじゃこりゃあ的レコード。先日、とある先輩から「YOUたちもこーゆーのやればいいじゃない」とコレをご教授いただいた。

 フレンチ暗黒テクノ・レーベル、〈イン・パラディズム(in paradisum)〉から看板アーティスト、モンドコップ(Mondkopf)の別名義、エクストリーム・プリコーションズ(Extreme Precautions)のファーストLPがお披露目。針を落とした瞬間、聴者に襲いかかる超シンフォニックな展開と鬼ショボ・打ち込みブラストビートに爆笑必至だ。
 〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉の台頭以降、メタルからの影響を公言するテクノ・アーティストは急増、ブルズム(Burzum)Tシャツを着用したヒップなテクノDJが昨今のクラブのトレンド! ……という状況は生粋の中2病ヘドバンガーを自認する僕としちゃファックなんですよ。そもそもヨーロッパでは90年代レイヴ・カルチャーに傾倒していたメタル・ヘッズは多く、本家のメタルバンド名義に隠れてこっそりとトランスやゴアのDJとして多くのメタル・ヘッズが活動していたとかいないとか……とくにその傾向が強かったのがフランスとノルウェイであり……そんなものに改めてフォーカスを当てることなんて今後あり得ないだろうと思っていた矢先にこのレコードである。ロウ・ジャックといい、彼といい、いまフレンチ・イナタイ電子音楽がキテる。あれ、そもそも最近再逮捕/釈放されたヴァルグもフランスにヤサを構えている影響もあるのかも。

 カシオトーン的簡易アルペジエーター感全開のメタル旋律によるリード・シンセ、ショボ過ぎる質素なモジュレーション、打ち込みフル・ブラストビート、全編似たり寄ったりのショート・チューンで最後までぶっちぎる潔さ。ブルズムの『フィロソフェム(Filosofem)』以降確立された打ち込みワンマン・ブラックメタルという精神不衛生きわまりないジャンルを完全に形骸化、ブラックメタルへのテクノ的パロディとも捉えられる本作品はモンドコップが同レーベルより昨年リリースしたヘヴィ・ドローン色全開のアルバム『ハーデス(Hadès)』(こっちもかなりメタルなんだけれども。そもそも冥界の王、ハーデスって……)完成後にテクノEPを制作しようとしたところ、ブルータル・トゥルースやナパーム・デス、アサックやピッグ・デストロイヤーを聴き過ぎていたらこんなんを作ってしまったそうな。

 ブラックメタルにおける劣化音質の美意識を電子音楽側で完全に体現しているという点はとても現代的だ。だってこれ、雑じゃなきゃ絶対かっこよくならないし。これこそテクノ・メガネ男子ヘドバン・ミュージック。

DEF MIX OFFICIAL Tribute FRANKIE KNUCKLES - ele-king

 今週末の17日土曜日、恵比寿のリキッドルームでは、大御所デヴィッド・モラレスを招いて、フランキー・ナックルズ生誕60周年祭が開催される! 
 とにかく、先日のジェイミーXXのDJも大盛り上がりだったそうですが、いま我々が支持するダンス・ミュージック、つまりハウスはここから来たと言える。
 以下、リキッドルームからの熱いメッセージです。

 DAVID MORALES and friends invite you to pay tribute and celebrate the 60th Birthday of FRANKIE KNUCKLES  A portion of the proceeds are going to The Frankie Knuckles Foundation

 “The Godfather of House”こと、我らがフランキー・ナックルズが2014年3月31日に他界した。世界中のDJやダンス・ミュージック・ラヴァーは深い悲しみに明け暮れ、第44代アメリカ合衆国大統領に就任する前から親交が深かった、バラク・オバマ氏も追悼の意を表明するほど、全米はおろか世界中の音楽シーンに衝撃が走った。

 かつて、ラリー・レヴァンがNYの『パラダイス・ガラージ』でプレイしていた曲を“ガラージ”と呼んでいたように、フランキーがシカゴの『ウエアハウス』でプレイしていた曲を、地元では最初“ハウス”と呼んでいた。諸説あるようだが名称はどうでもいい、ただ、はじまりはそこだった。そしてそこでは素晴らしいダンス・ミュージックが毎晩プレイされていたということだ。フランキーはその後NYに戻り、“ハウス・ミュージック”の歴史を数多く作っていくことになるのだが、もしフランキーがいなければ”ハウス・ミュージック”は生まれていなかった。

 日本でも80年代後半の初来日から、何度となく来日しては日本中を熱狂させ、ダンス・ミュージック・ラヴァーの人生に決定的な影響を与えてきた。そんなフランキーの生誕60周年のバースディ・バッシュに、長年の感謝と追悼の意を込めて、誰一人として乾杯せずにはいられないだろう。

 この夜のメインDJは、もちろん盟友デヴィッド・モラレス!  世界を飛び回るジェット・セッターでありながら、イタリアから1月18日にシカゴの『SmartBar』で行われるフランキーのバースディ・バッシュに駆けつける途中に、どうしても東京でのフランキーの60回目のバースディ・バッシュでプレイしたいという、デヴィッドの熱い思いで、LIQUIDROOMに一晩だけの来日が決定!
 なんと、時差のおかげで1月18日のフランキーの誕生日を、17日深夜の東京と18日シカゴのフランキー縁の2都市で同日に開催する事が実現する! この日のデヴィッドは、自身の出演料全てをフランキー・ナックルズ ファンデーション※ に寄付する意向を表明している。そう、今回のパーティーは亡きフランキーへの熱い思いが彼を動かしたのだ。

 また、この日は日本最後のプレイとなった2012年12月23日のLIQUIDROOMにおいて収録された音源を特別に公開する。国内最強のLIQUIDROOMサウンドシステムで、東京での最後のプレイを体感して欲しい!

 フランキーが存命ならこの1月18日で60歳を迎える。そう、還暦である。つまり、60年で干支が一回りして生まれ年の干支に戻る事から、魔除けと生まれた時に戻る事を意味する。

 全国のダンス・ミュージック・ラヴァーの同士達よ、この日は初心に帰って、”ハウス・ミュージック”の初期衝動を取り戻し、デヴィッド入魂のDJでフランキーの60回目のバースディに皆で祝杯を上げようではないか!!!

※フランキー・ナックルズ ファンデーション
Frankie Knuckles Foundationは、NFP(Not For Profit)財団である。彼が産みだしたハウスミュージックの歴史と創作を芸術的な努力、教育、メディア、および演奏を通じ後世の世代に彼の功績を伝え続ける為、又フランキーの名誉において設立した慈善事業団体である。

2015.1.17 saturday night
LIQUIDROOM
open/start 23:30
adv(now on sale!!!)* 3,500yen / door 4,000yen
*PIA[P- code 252-456]、LAWSON[L code 76181]、e+、DISK UNION(SHIBUYA CLUB MUSIC SHOP/SHINJUKU CLUB MUSIC SHOP/SHIMOKITAZAWA CLUB MUSIC SHOP/KICHIJOJI)、Lighthouse Records、TECHNIQUE、LIQUIDROOM

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。(You must be 20 and over with photo ID.)

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

Sherwood & Pinch MIX音源 - ele-king

 明日(1月14日)リリースされるシャーウッド&ピンチの待望のアルバム『レイト・ナイト・エンドレス』、聴き応えのある力作です。シャーウッドのダブ/レゲエ、そしてピンチのダブステップという、それぞれの長所がほどよく調和しているところが最高だと思います。前半は軽快にダンスしながら、後半は夜の闇にしっとり溶けるような、メロウな展開がまた素晴らしくて、とても完成度の高い作品になったのではないでしょうか。
 で……、そのアルバム発売を記念して、ただいまシャーウッド&ピンチのエクスクルーシヴ音源が聴けます! 
 これを聴いてワクワクして下さい。

1. Shackleton / King Midas Sound 'Deadman, Death Dub remix' (Honest Jons)
2. Ishan Sound 'Namkah (Kahn remix)' (Tectonic)
3. Sherwood & Pinch 'Music Killer' (On-U Sound vs Tectonic)
4. Scientist 'Burn Them' (Hawkeye)
5. Sherwood & Pinch 'Bucketman' (On-U Sound vs Tectonic)
6. Pinch 'Croydon House VIP' (Dubplate)
7. Mumdance & Logos 'Legion VIPinch mix) (Tectonic/Dubplate)
8. Pinch & Mumdance 'Double Barrelled Mitzi Turbo' (Tectonic/Dubplate)
9. Andy Fairley 'System Vertigo' (On-U Sound)
10. Pinch & Shackleton 'Greedy Life' (Honest Jons)

ARTHUR RUSSELL - ele-king

 長い時間を経て、ようやく真っ当な評価を与えられ、さらにまた年月のなかで光沢を増していく音楽があるけれど、アーサー・ラッセル(1952-1992)とはまさしくそんなアーティストだ。最近、複数の世代の複数の人との話のなかで「アーサー・ラッセル」の名前が出てきたり、いまになって「アーサー・ラッセルの本を読みましたよ」と言われたり、実感として、アーサー・ラッセルって、また来ているんだなと思う。
 倉本諒(彼のドリーム・プッシャーは今年の台風の目になるだろう……)は、よくよく100%シルク的なものをハウスになりきれてないなんちゃってハウスのような書き方でこバカにしているが、しかし、ハウスそれ自体が、そもそもディスコから「素人ディスコ」とバカにされた音楽であり、そして、ディスコとは当時のダンスの王道であるファンクの側から「ファンクのない音楽」とバカにされた音楽である。つまり、オーソリティーから低俗で軽薄だと揶揄されたものこそが、ディスコであり、ハウスなのだ。しかもそれらを特徴付けるのは、キラキラした気取り屋たちのどろどろの快楽主義。そんな世界に、まったく自由な発想で「実験」と「現代音楽」と「ポップ」を注入したのが、アーサー・ラッセルだった。

 この度、アーサー・ラッセルの以下の4枚のCDが〈Pヴァイン〉から再発された。ぜひこの機会に、ひとりでも多くの音楽ファンが彼の作品に触れてくれたらと思う。(編集部)

■『ファースト・ソート・ベスト・ソート』
 現代音楽時代の、入手困難な初期作品、『Tower Of Meaning』(1983年)+1977年/1978年のライヴ音源『Instrumentals, 1974 - Vol. 2 』(1984年)の未発表曲集 Instrumentals, Vol.1』とのカップリング。アーサー・ラッセルのモダン・クラシックな側面が輝いている。
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■『ワールド・オブ・エコー』(1986年)
 歌モノを愛したアーサー・ラッセルの名盤。歌とチェロとミキシングによる唯一無二の声のダブ・アルバム。必聴盤。
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■『コーリング・アウト・オブ・コンテクスト』
 彼は、現代音楽からディスコに接近したが、その後ポップスにも挑戦している。本作は、2004年に〈ラフ・トレード〉からリリースされた、80年代なかば以降のポップ・ソングを収録したアルバムで、トレイシー_ソーンもカヴァーした“ゲット・アラウンド・トゥ・イット”収録。『NME』の「あなたの知らない100枚の偉大なるアルバム」の1枚に選ばれている。
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■『ラヴ・イズ・オーヴァーテイキング・ミー』
 2008年にリリースされた未発表音源集だが、あまりのデキの良さに、その年の『ピッチフォーク』や『FACT』や『WIRE』などの年間ベストに選ばれている。70年代の作品から91年まで幅広く収録。意外に聞こえるかもしれないが、ラッセルのフォークソングが実はすごく良い。
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●タワーレコードにて「アーサー・ラッセル・キャンペーン」実施中!

【対象店舗】
タワーレコード渋谷店
タワーレコード新宿店
タワーレコード秋葉原
タワーレコード名古屋パルコ店
タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
タワーレコード梅田大阪マルビル店
タワーレコード難波店
タワーレコード梅田NU茶屋町店6F

【特典内容】(特典は先着購入者順にお渡し、無くなり次第終了。)
“TOWERオリ特 アーサー・ラッセル トートバック”
(※下記対象商品4タイトル中2タイトルの同時購入での先着特典)

【対象商品】(いずれもアーサー・ラッセルの作品です)
・『ワールド・オブ・エコー』(品番:PCD-24376)
・『コーリング・アウト・オブ・コンテクスト』(品番:PCD-24377)
・『ファースト・ソート・ベスト・ソート』(品番:PCD-18781-2)
・『ラヴ・イズ・オーヴァーテイキング・ミー』(品番:PCD-24378)

●ディスクユニオンでは特典付き!

【ディスクユニオン限定特典】

『アーサー・ラッセル/ 4タイトルまとめ買いセット』 をお買上のお客様に先着で、ディスクユニオン・オリジナル『コーリング・アウト・オブ・コンテクスト』のジャケット・デザインのマグカップを差し上げます。
先着となりますのでなくなり次第終了となります。ご了承ください。

https://diskunion.net/clubt/ct/detail/AWY141201-AR1


THOMAS DINGER - ele-king

 兄のクラウス・ディンガー(『クラウトロック大全』P48参照)とともに、『ノイ!75』のB面とラ・デュッセルドルフの諸作を録音後、ソロ活動、1-Aドュッセルドルフ名義での活動をしつつ、2002年に肝不全のため49歳で他界したトーマス・ディンガーの2000年の録音物が小柳カヲル氏の〈SUEZAN STUDIO〉からリリースされた。クラウトロックのファン、とくにノイ!のファンなら、2000年、47歳のときの彼がどんな音楽を作っていたのか知りたいところだろう。
 1曲、黒人霊歌の“漕げよマイケル”の素晴らしいカヴァーがあるが、それ以外の曲は、ひじょうに抽象的な、ダーク・アンビエントな、エレクトロニック・サウンドを展開している。誰に似ているのかと訊かれたら、ピート・ナムルックに似ているとしか言いようがないのだけれど、UKの(良い意味で)ファッショナブルなインダストリアルとは明らかに別の切り口というか、わずか500部の限定リリースなので、興味のある方はぜひ聴いてみましょう。当時、お蔵入りになったことが信じられないくらい、上質な音楽であることは間違いない。


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