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昨今のそれっぽい黒テクノをなぎ払う……なんじゃこりゃあ的レコード。先日、とある先輩から「YOUたちもこーゆーのやればいいじゃない」とコレをご教授いただいた。
フレンチ暗黒テクノ・レーベル、〈イン・パラディズム(in paradisum)〉から看板アーティスト、モンドコップ(Mondkopf)の別名義、エクストリーム・プリコーションズ(Extreme Precautions)のファーストLPがお披露目。針を落とした瞬間、聴者に襲いかかる超シンフォニックな展開と鬼ショボ・打ち込みブラストビートに爆笑必至だ。
〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉の台頭以降、メタルからの影響を公言するテクノ・アーティストは急増、ブルズム(Burzum)Tシャツを着用したヒップなテクノDJが昨今のクラブのトレンド! ……という状況は生粋の中2病ヘドバンガーを自認する僕としちゃファックなんですよ。そもそもヨーロッパでは90年代レイヴ・カルチャーに傾倒していたメタル・ヘッズは多く、本家のメタルバンド名義に隠れてこっそりとトランスやゴアのDJとして多くのメタル・ヘッズが活動していたとかいないとか……とくにその傾向が強かったのがフランスとノルウェイであり……そんなものに改めてフォーカスを当てることなんて今後あり得ないだろうと思っていた矢先にこのレコードである。ロウ・ジャックといい、彼といい、いまフレンチ・イナタイ電子音楽がキテる。あれ、そもそも最近再逮捕/釈放されたヴァルグもフランスにヤサを構えている影響もあるのかも。
カシオトーン的簡易アルペジエーター感全開のメタル旋律によるリード・シンセ、ショボ過ぎる質素なモジュレーション、打ち込みフル・ブラストビート、全編似たり寄ったりのショート・チューンで最後までぶっちぎる潔さ。ブルズムの『フィロソフェム(Filosofem)』以降確立された打ち込みワンマン・ブラックメタルという精神不衛生きわまりないジャンルを完全に形骸化、ブラックメタルへのテクノ的パロディとも捉えられる本作品はモンドコップが同レーベルより昨年リリースしたヘヴィ・ドローン色全開のアルバム『ハーデス(Hadès)』(こっちもかなりメタルなんだけれども。そもそも冥界の王、ハーデスって……)完成後にテクノEPを制作しようとしたところ、ブルータル・トゥルースやナパーム・デス、アサックやピッグ・デストロイヤーを聴き過ぎていたらこんなんを作ってしまったそうな。
ブラックメタルにおける劣化音質の美意識を電子音楽側で完全に体現しているという点はとても現代的だ。だってこれ、雑じゃなきゃ絶対かっこよくならないし。これこそテクノ・メガネ男子ヘドバン・ミュージック。