「IO」と一致するもの

ONEOHTRIX POINT NEVER×C.E - ele-king

 OPNってファッションのイメージはないよなー。という偏見は見事に覆されました(笑)。今年の初来日ライヴでもソールドアウト、いまや時代の寵児か、とにかくエレクトロニック・ミュージック・シーンの人気者のとなったOPNが、スケートシング率いるファッション・ブランド、C.Eとのコラボレーション・アイテム(Tシャツ2型、スウェット1型)を発売するという。
 スケシンのデザインは、アルバム『R Plus Seven』のアートワークを元にしたもので、6月23日よりC.Eのオンラインストアにて発売。
 以前、スケシン・デザインのキャバレ・ヴォルーテルのTシャツがele-king storeでもあっという間に売り切れたので、ファンは逃さないようにね!


価格:
Tシャツ各6,800円(税抜)
クルーネックスウェット14,000円(税抜)

問い合わせ先:
Potlatch Limited(ポトラッチ)
www.cavempt.com


・ONEOHTRIX POINT NEVER https://www.pointnever.com
・SHOWstudio https://showstudio.com
・C.E https://www.cavempt.com

HOLY (NO MORE DREAM) - ele-king

孤高のヘヴィメタルパーティ“NO MORE DREAM”@青山蜂、次回は6.15(日)に開催。我々の生き様を目撃して下さい。

NO MORE DREAM
~THE WORLD’S HEAVIEST HEAVY METAL PARTY~

@青山蜂

2014.6.15(SUN)
17時~
入場料 ¥1000

GUEST DJ
増田勇一

DJS
HOLY
クボタタケシ
JAM DIABRO
山名昇
BLACK BELT JONES DC FROM METALCLUB
Dx
BLOODY PAUL
Dr.Doctor Wcchei
ロベルト吉野(お休み)

METAL DIRECTION&ARTWORK
ヴィッソン

TEQUILA GIRL
yucco

ハジけたてポップコーン屋
POOPTHEHOPE

HM-T&PINS
Rhododendron

MY HEAVY METAL CLASSICS 10


1
Metallica - Master Of Puppets - Mercury
ファミリーです。生活の中心。

2
Slayer - Angel Of Death - Def Jam
KING OF 残虐王 IN 宇宙。

3
Megadeth - In My Darkest Hour - Capitol
かなり助けられてます。デイブこそ英雄。THIS IS MY LIFE。

4
Judas Priest - The Heroion~ErectlicEye - Columbia
ヘヴィメタル国家。そして聖典。

5
Motley Crue - Home Sweet Home - Motley
現在休業中のあの漢に捧げます。

6
Pantera - Cowboys From Hell - Atlantic
ダレルこそ、完全無欠メタルギタリスト。ザックが受け継いでます。

7
Ozzy Osbone - No More Tears - Epic
究極すぎるベースライン&咽ぶザック。我々のパーティのテーマ曲。

8
Aerosmith - Living On The Edge - Geffen
疲労困憊の果てに開ける曲。長い付き合いです。

9
Iron Maiden - Aces High - Capitol
最重要オープニングナンバー。決死の離陸です。

10
Accept - Metal Heart - Epic
ヘヴィメタル軍歌。合唱せねば制裁。

Your Favorite Music About Rain - ele-king

 梅雨入りどころか、先週は記録的な大雨。靴下まで濡れるし、傘は面倒だし、電車やバスに乗っても、街を歩いていても、良い気持ちになれません。
 しかし音楽は、これまで、数多くの雨にまつわる曲を生んできました。下手したら、晴天の曲よりも多いかもしれません。“雨に唄えば”、“セプテンバー・イン・ザ・レイン”、“悲しき街角”、スコット・ウォーカーの“イッツ・レイニー・トゥデイ”、ボブ・ディランの“激しい雨”、忌野清志郎の“激しい雨”、ザ・ビートルズの“レイン”、レッド・ツェッペリンの“ザ・レイン・ソング”……、エコー&ザ・ビバインーメンの“オーシャン・レイン”、プリンスの“パープル・レイン”、アデルの“セット・ファイヤー・トゥ・ザ・レイン”……ザ・サルソウル・オーケストラにもトム・モウルトンのミックスした“サン・アフター・ザ・レイン”があります。アンダーグラウンド・レジスタンスにもアシッド・レイン・シリーズの“ザ・レイン”というハード・テクノがあります。ブリアルの“アーチェンジェル”には、真夜中の雨の気配が横溢しています。宇宙を創造するサン・ラーには、“ザ・レイン・メーカー”があります。
 とにかく雨の音楽は、あまりにも多くあります。ニーナ・シモンの“アイ・シンク・イッツ・ゴナ・トウ・レイン・トゥデイ”、マディー・ウォーターズの『アフター・ザ・レイン』やザ・テンプテーションズの『ウィッシュ・イット・ウッド・レイン』、さもなければザ・レインコーツを聴きたくもなるでしょう。
 雨は、ザ・ビートルズの“ロング・アンド・ワイディング・ロード”に歌われているように、往々にして、敗北、試練、冷たさ、孤独、人生の悲しみなどの暗喩として使われます。自分に相応しすぎるので、ここはひとつ「雨ニモマケズ」で……、いや音楽ファンらしく、雨のまつわる音楽を聴きながら過ごしましょう。エヴリシング・バット・ザ・ガールが『雨のない砂漠のように』と言ったように、雨が降らなければ乾いてしまうのです。ムーディーマンの盟友、ノーマ・ジーン・ベルには“ラヴ・ミー・イン・ザ・レイン”という曲があります。
 それでは、ぜひ、読者のみなさまからの「私の好きな雨の音楽」もメールして下さい。

My Favorite Music About Rain

野田努

1. RCサクセション – 雨上がりの夜空に
2. Horace Andy - Ain't No Sunshine
3. The Beatles - Fixing A Hole
4. Mute Beat - After The Rain
5. Ashra - Sunrain
6. Velvet Underground - Who Loves The Sun
7. Carpenters - Rainy Days And Mondays
8. The Jimi Hendrix Experience - Still Raining Still Dreaming
9. Herbie Hancock Rain Dance
10. Faust ‎– It's A Rainy Day Sunshine Girl

伊達トモヨシ(Illuha, Opitope)

Steve Reich - It's Gonna Rain

ライヒの初期作品は理論的にはラップトップで簡単に再現出来るんだろうけど、その音楽の持つ力はきっと再現出来ない。ライヒの作品を聴くと初期から現在に至るまで、理論的な音楽では再現出来ないものが音楽の中にしっかりと存在しているといつも思う。「音楽とは何なのか?」という根源的な命題を提起するから、僕は今でもたまに思い出しては彼の音楽を聴く。
「雨の音楽」ということで真っ先に思い浮かんだのは、この歌の曲名というよりも「rain,rain,rain」という音の響きだった。ライヒは何故、数ある音の中から"It's gonna rain"を選んだのか。雨の音楽というテーマをもらうまで、そのことを考えて聴くことはなかったけど、少なくともライヒ自身はあえてこの言葉と音を選んだに違いない。おそらく雨の音のミニマリズムに端を発しているであろうこの曲は、雨という現象を表す単語が「レイン」という響きを含む単語でなかったら、この音楽は生まれなかったんじゃないかと思う。
 三部作になっているこの音楽において最初の「rain,rain,rain」というレゾナンス、つまり「ウィーンウィーンウィーン」という音楽的な反響の存在によって、音楽的な成功を納めていて、この曲の存在があってこその作品で、正直なところ後の2曲は技巧的ではあっても音楽として1曲目ほどの力はない。雨というミニマリズムと「レイン」という音楽的な単語の偶然の一致に対する驚きが、この音楽を作品にまで至らしめたように感じられてならない。音楽の言語起源説を想起させるこの作品は、論理や言語では表現しえない、音楽でなければならない理由が存在しているライヒならではの音楽だ。
 今日はたまたま雨だったので、雨音のなかでこの歴史的な音楽を聴いてみた。雨音という自然現象のなかに内包されたミニマリズムの美しさを抽出して作品化するという芸術のあるべき姿を僕はこの曲に見る。梅雨時の低気圧によって低下する免疫能がもたらす憂鬱も、雨音のミニマリズムへの歓喜で乗り越えられる。

ヨーグルト

Malcom Mcdowell - Singin' in the rain

 すぐ頭に浮かんだのは、マルコム・マクダウェルが映画『時計じかけのオレンジ』のなかでアドリブ全開で奇妙なダンスを繰り広げながら、マルコムの仲間達が縛り上げた無抵抗の老人を何度も蹴り飛ばす場面。
 「雨に唄えば」を朗らかに歌いながら、強盗と強姦を犯すマルコムマクダウェル。まったく褒められた行為ではなく、むしろ最悪な状況を映し出しているのに、映像の美しさと「雨に唄えば」のノー天気なメロディーと、マルコムのすっとぼけた歌声が凄惨な場面を中和しているような不思議な後味が残り、時計じかけのオレンジを見たあとは、雨が降ると脳裏をマルコムマクダウェルがよぎるようになったのは自分だけではないはず。
絶対にこんな奴に自宅に強盗に来て欲しくはないんだけど…… 


山田光(hikaru yamada and the librarians)

 パッと思いついたのがブリリアント・グリーンとThis Heatの曲しか無く、これではマズいということで、”rain”と打ち込んだ自分のiTunes検索窓から雨空を見上げて思い出した曲を挙げさせて頂きます。

Rhodri Davies Ko Ishikawa - Three Drops Of Rain / East Wind /Ocean
ヴァンデルヴァイザー楽派のアントワーヌ・ボイガーによる笙とハープのためのコンポジション。空白も多いが今聴くとちゃんと標題音楽に聴こえる。つまり梅雨にボーっと聴いても最高!

Gil Evans & Lee Konitz - Drizzling Rain
邦題が驟雨とつけられた菊地雅章の曲。リー・コニッツと晩年のギル・エヴァンスのデュオですがこれはほんとにオススメです。素朴で手探りなピアノは貴重。梅雨そのものに浸れそうな曲想。気分転換にはならない。

Cory Daye - Rainy Day Boy
雨の音と雷がちゃんとサンプリングされている都市音楽。外goしましょう!

小畑ミキ - 雨はいじわる
一人GSというジャンルが昔あったそうで、グループサウンズ風の楽曲を歌う60年代のアイドルの人。最近では自殺したと思われてたフレンチポップのアイドルがFacebookに現れてファンを驚かせた事件などありましたが、この人もシングル6枚出して引退後は消息不明、その後自身の犬猫写真をアップしているサイトにアイドル時代のことを書いて再発見されていました。(現在は削除)。

Dominique Barouh et David McNeil - Sur Un Barc, Sous La Pluie
ピエール・バルーの元妻の歌唱による可愛い曲。邦題が“ベンチで、雨の中”。可愛くて雨のなかで聴いても空気変わります。ドミニク・バルーさんが歌っている曲はこの世に4曲しかないのですが、そのうち1曲をまだ聴けていません。持ってる人いたら連絡ください。

木津毅

1. Tom Waits - Downtown Train
2. Bonnie “Prince” Billy - Raining in Darling
3. The National - England
4. R.E.M. - I’ll Take The Rain
5. Bruce Springsteen - Wreck on The Highway
6. Rihanna - Umbrella feat. JAY-Z
7. Bob Dylan - Buckets of Rain
8. Buddy Holly - Raining in My Heart
9. 尾崎紀世彦 - 雨のバラード
10. BJ Thomas - Raindrops Keep Fallin’ on My Head

 必ずしも雨は降っていなくてもいい。でも雨の歌では歌い手の心は濡れていてほしい……と思って選んだら、(リアーナも含めて)どこぞのおっさんのような並びになってしまいました。けれども雨の歌は、中年がむせび泣くようなウェットな感覚をかばってくれるのでこれでいいのです。おそらく。「ダウンタウン・トレインに乗れば 今夜、きみに会えるだろうか/すべての俺の夢が まるで雨のように ダウンタウン・トレインに降り注ぐ」……。

竹内正太郎

金延幸子 - 空はふきげん

ブレイディみかこ

1.The Beatles - Rain
2.The Pogues - A Rainy Night In Soho”
3.Eva Cassidy - Over The Rainbow

 天候に恵まれない国に住んでいると、いつの間にか自分も人と会った時にまず天気の話から入る。という悪癖を身に着けていることに気づきますが、いつも天気について文句を言っているUKの人間にジョン・レノンが喝を入れたのが “Rain”。「雨だろうが晴れようが心の持ちよう一つだ」という歌詞はブリット・グリットの真骨頂。サウンド的にも、ビートルズはオアシスがやってたCHAVアンセム路線をオアシスよりうまくやることができたバンドだったとわかります。
 “A Rainy Night In Soho”は、”Fairytale of New York”の雨の日版。これを聴くと、詩人としてのニック・ケイヴは秀才で、シェーン・マクゴワンは天才なんだと思います。
 エヴァ・キャシディが歌った“Over The Rainbow”は、ただもう声のトーンが好きで。雨の多い英国では虹を見る機会も多く、従って願いをかけるチャンスも多いですが、一度も叶ったことはありません。

与田太郎

The Kinks - Rainy Day In June(1966 Pye Records)
The Pogues - A Rainy Night In Soho(1986 Stiff Records)
The Men They Couldn’t Hang - Rain, Steam & Speed (1989 Silvertone)

 今年の梅雨はW杯に釘付けで過ごします。どうでもいいことですが、The Men They Couldn’t Hangのこのアルバムはローゼズの1stと同じ年に同じレーベルから出ました。

GONNO

Frankie Knuckles - Rain Falls
Jon Hopkins - Colour Eye
山下達郎 - スプリンクラー
Torn Hawk - Money Becomes Only Itself
Suzanne Kraft - VI
Jon Hassel - Rain
Central Line - Waling Into The Sunshine

ダエン(duenn label)

John Hassell_Brian Eno - Delta Rain Dream
Steve Reich - It's Gonna Rain
Ellen Allien - Sun The Rain(Tim Hecker Remix)
Bebu Silvetti - Spring Rain
The Beatles - Rain
西田佐知子-アカシアの雨がやむとき

 雨の中では霧雨が好きです。そんな雨好きアンビエントっ子な私がセレクトしてみました。よろしくどーぞ!

大久保潤

The Beatles - Rain
Burt Bach - Raindrops Keep Fallin' On My Head

 いずれも少年ナイフのカヴァーが好きです。

橋元優歩

1. Julianna Barwick & Ikue Mori - Rain and Shine at the Lotus Pond
(‎FRKWYS, Vol. 6) - Rvng Intl.
2. Baths - Rain Fall (Cerulean) - Anticon
3. Serengeti & Polyphonic - My Patriotism (Terradactyl) - Anticon
4. 多田武彦 - 雨
5. Pavement - Carrot Rope - Domino
6. Anna Ternheim - Summer Rain (alternate take feat. Nina Kinert, Ane Brun, First Aid Kit and Ellekari Larsson of The Tiny)

松村正人

Rain Tree Crow - Rain Tree Crow - Virgin / 1991
Stanley Cowell - Musa - Ancestral Streams - Strata East / 1974

 レインツリーは別名モンキーポッドといい、雨を予知し雨が来る前に葉をたたむのでこの名前になったらしいが、ほんとうは陽の光に反応し明るいと葉を開き暗くなると閉じる。アメリカネムノキともいい、大江健三郎の連作短編の題名にも同じことばがあるけれどもそちらは想像上の「雨の木」だろう。それより日立製作所の「この木なんの木」の木といったほうが通りがいいだろうか。
 レイン・トゥリー・クロウは1991年に結成した、デヴィッド・シルヴィアン、ジャンセン、バルビエリ、カーンからなる、つまりジャパンのリユニンであり、アルバム1枚で終わってしまったが、一昨日のような梅雨寒の日にこの冷たく湿った彼らの音楽はしっくりくる。小糠雨にふさがれた昨日のような日は雨の曲ではないけれどもスタンリー・カウエルの絹でできた驟雨のようなソロ・ピアノをいつまで聴いていたいが、私は梅雨のはっきりしない天気は好きではない。極寒か酷暑かどっちかにしてほしい。

三田格

1. フィッシュマンズ - Weather Report - Polydor(97)
2. Missy Elliott - The Rain(Supa Dupa Fly) - Elektra(97)
3 . Gazebo - I Like Chopin(小林麻美/雨音はショパンの調べ) - Baby Records(83)
4. Madness - The Sun And The Rain / Stiff Records(83)
5. Rihanna - Umbrella - Def Jam Recordings(07)
6. The Rolling Stones - She's A Rainbow - London Records(67)
7. Cornelia - Stormy Weather - Exceptional Blue(12)
8. Jon Hassell + Brian Eno - Delta Rain Dream - Editions EG(80)
9. Howard Devoto - Rainy Season - Virgin(83)
10. Ashra - Sunrain - Virgin(76)
11. ヤプーズ - 大天使のように - テイチクエンタテインメント(88)
12. Roxy Music - Rain Rain Rain - Polydor(80)
13. J.D. Emmanuel - Rain Forest Music - North Star Productions(81)
14. 大沢誉志幸 - そして僕は途方に暮れる - Epic/Sony(84)
15. Madonna - Rain - Maverick(93)
16. Normil Hawaiians - Yellow Rain - Illuminated Records(82)
17. 川本真琴 - 雨に唄えば - Antinos(01)
18. John Martyn - The Sky Is Crying(ElmoreJames) / Independiente(96)
19. 山下達郎 - クリスマス・イブ - ワーナーミュージック・ジャパン(83)
20. Felix Laband - Rain Can - African Dope Records(02)
次 RCサクセション - 雨の降る日 - ユニバーサルミュージック(13)
or Felt - Rain Of Crystal Spires - Creation Records(86)

 年間で300から400近くの映画を観るけれど、そのうち50本は邦画に当てている(週に1本ということですね)。洋画は10本観て5本が外れ だと感じ、邦画は10本観て9本が外れだと感じる。この時に覚える深い脱力感を乗り越えてなお前進できるネトウヨが果たしていまの日本にどれだけ いるだろうかと思いつつ、それでも僕が邦画を観ているのはもはや怖いもの見たさとしか思えず、なかば平衡感覚を失いながら「『女子ーズ』観た?」 などと木津くんにメールしてしまう(返信は「そんなコワいもの観ませんよー」という常識ライン)。そのようにして右翼も遠巻きにさせる邦画界では ありますが、ひとつだけ名作の法則があります。洋画だと食事のシーンがよく撮れている作品はたいてい名作だと言われるように(粉川哲夫しか言ってない?)、邦画は「雨」がよく撮れている作品は名作の可能性が高く、最近だと、あまり好きな監督ではなかったのに(つーか、『ユリイカ』を観て3日も偏頭痛で寝込んだというのに)青山真治監督『共食い』が非常によかった。ATGのような憂鬱を表現する「雨」ではなく、激動を伝える「雨」が よく撮れていて、その意味が最後にわかるところも驚きだった。……しかし、それにしても、ほかにサンド、デムダイク・ステア、レインコーツ、カン、 ユーリズミックス、クインシー・ジョーンズ、チャンス・ザ・ラッパー…と、レイン・ソングはあり過ぎでしょ〜。マニック・ストリート・プリー チャーズによる『雨にぬれても』のカヴァーは途中までペイル・ファウンテインズにしか聴こえないのはご愛嬌。

シノザキ サトシ(禁断の多数決)

The Cascades - 悲しき雨音
武満徹 - Rain Spell
Ashra - Sun Rain
Ellen Allien - Sun the Rain
Gene Kelly - 雨に唄えば
Madonna - Rain
谷山浩子 - 催眠レインコート
Jon Hassel and Brian Eno - Delta Rain Dream
B・J・Thomas - 雨にぬれても

高橋勇人

1. LIBRO - 雨降りの月曜
2. Don Cherry - Until The Rain Comes
3. Pharaoh Sanders - After the Rain
4. MarkOne - Rain Dance
5. Little Dragon - Stormy Weather
6. Jephe Guillaum and Joe Clausell - The Player Acoustic Mix-
7. Pinch - Angels in the Rain
8. Nick Cave & The Bad Seeds - Ain’t Gonna Rain Anymore
9. Leonard Cohen - Famous Blue Raincoat
10. Prince - Purple Rain

the lost club

the lost club - ”rain”

照沼健太

Beck - Mutations

しんしんと降る雨が、あきらめ、寂しさ、悲しみ、心地よさといったさまざまな色に染まりながら、やがて止んでいく。そんなアルバムだと自分では思っています(妄想)

白井 哲

荒井由実 - ベルベット・イースター

二木信

井上陽水 - 夕立

天野龍太郎

Burial - Dog Shelter
cero - 21世紀の日照りの都に雨が降る
Chance The Rapper - Acid Rain
Faust - It's A Rainy Day, Sunshine Girl
Randy Newman - I Think It's Going To Rain Today
Ray Charles - Come Rain Or Come Shine
Tom Waits - Rain Dogs
遠藤賢司 - 外は雨だよ
大瀧詠一 - 五月雨
テニスコーツ - 雨パラ

25年間生きてきて、雨というものの楽しみかたを僕はまだ持ちえていない。雨は大っ嫌いだ、不快だ。本もレコードも洗濯物もダメにしてしまうし。有史以前より雨という気象現象とつきあってきた人類が、雨への対策法としていまだ傘と雨合羽という原始的な道具を用いている、というのはなんて馬鹿げたことだろう! ……とりあえず僕は心底雨を憎んでいる(全身がすっぽり入るカプセルみたいなものがほしいなあ)。
昔のロックンロールやリズム・アンド・ブルースには雨についての歌って多いように思う。日本のフォークにも。ブリアルのトラックに聞かれるレコードのスクラッチ・ノイズはまるで雨の音みたいだ。ところで、ビートルズには「雨なんて気にしないよ」という“レイン”があるけれど、ローリング・ストーンズには雨についての歌ってなにかあったっけ……?

畠山地平

大滝詠一 - 雨のウェンズデイ

 1982年発売の大滝詠一のシングル『雨のウェンズデイ』。雨はウェンズデイ? 何故か腑に落ちるものがある。これが詩の持つ力なのかと納得していたのだけど、水曜日という名称からして、水という言葉が入っているではないか! まさか大滝詠一のオヤジギャクなのか。
 雨が降る海岸での男女の別れを歌った曲という事で、ここで描かれているシーンは有りがちなのだけど、どこか遠い昔に起きたことのようなそんな気がしてくる。大滝詠一の音楽はアメリカン・ポップスのものなのだけど、この歌詞の感性は万葉集の東人のような、そんな古来からの、そして貴族ではなく、土民たちの感性を感じてしまう。80年代に描かれる大滝詠一の愛はウクライナ問題、放射能、中国の海洋進出、集団的自衛権など世界や日本がシビアな状況になりつつあるいま、ある意味虚無感すら漂わせる距離を感じてしまうがゆえに、逆に心に響くのかもしれないと思った。

Nousless (GOODWEATHER CREW / NOUS FM) - ele-king

東海のダブステップDJ。ピュア、ディープ、レゲエ等のサウンドをヴァイナルでサポート。専門ラジオ「NOUS FM」を各週配信する。

■DJスケジュール

6/6: GOODWEAHTER#36 - P Money & Royal Japan Tour (at CLUB JB'S)
Acts: P Money / Royal-T / Part2style Sound / Skyfish / チャックモリス
MINT a.k.a. minchanbaby / HyperJuice / CE$ / SAV / Nousless / ind_fris

6/17: 平日GOODWEATHER (at CLUB JB'S)
Acts: DJ Ykk / Kim morrison / DJ noonkoon / DJ UJI / SAV / Nousless

近年のヴァイナルオンリー・ダブステップ10選


1
Killwatt - Killa Dinna / Killa Inna Jungle-Ruffcut

2
V.I.V.E.K - Mantra EP -SYSTEM MUSIC

3
J:Kenzo - Magneto (Feel It) (VIP) / Ricochet (VIP) -Tempa

4
DJ Madd -High Grade / Judgement Time (Remixes) -1DROP

5
Coki - Demonator / Indian Girl -AWD

6
Starkey - DPMO feat. Trim / Poison feat. Leah Smith -Slit Jockey Records

7
Mavado - Dem A Talk (TMSV Dubstep Refix) -Not On Label

8
Commodo - F_ck Mountain / Good Grief -Hotline

9
D-Operation Drop - Rockin Da Nation feat. Idren Natural / Addis Abeba-Lion Charge Records

10
Hi5 Ghost - Kung Fu Kick / (Kahn & Neek's Happy Slap Remix) -Bandulu

 ワールドカップ開催まであと1週間となった今、私の住むメキシコシティでも、人びとは浮き足だっているように見える。
 メキシコでサッカーは国民的スポーツだ。2012年のロンドン・オリンピックで、メキシコのサッカーチームは金メダルを獲得したが、まさにその瞬間、私は外科手術入院の日であり、国立病院のテレビの前で、患者も見舞客も医者も看護婦も警備員も飛び上がって大騒ぎしている姿を目の当たりにしたのだった。そんな状況で手術が成功したのは言うまでもない。執刀医の士気を高めてくれた、メキシコのサッカーチームに感謝せねばならない。
 もちろん、一般のオフィスでも、サッカーの重大な決勝戦の日には、社内に大型テレビが持ち込まれ、業務中の観戦タイムが設けられる。もしもサッカー中継を見ることができない会社があったら、ブラック企業にされかねない。

 サッカーを含む、多くのスポーツがビジネスの材料となり、ワールドカップやオリンピックのような祭典の影には、大きな利権が絡む。国際的スポーツの祭典で生まれるナショナリズムは、民衆の意識をうまくコントロールのために利用される。
 そういった理由から、私はサッカーを含むスポーツ全般をどうしても素直に受け入れられず、暇があればテレビのサッカー中継にチャンネルを合わせる夫を冷ややかに見てしまう。ワールドカップ中には、その冷戦は激化するだろう。いや、彼もサッカーの裏のビジネスや問題に気づいている。それでも、その熱狂を断ち切ることはできないのだ。

 さて、ワールドカップが開催されるブラジルで、現地の一般のひとびとは、どのように捉えているのだろう。そんなことを知る足がかりとなるのが、今年日本公開された映画『聖者の午後』(フランシスコ・ガルシア監督)だ。
 サンパウロを舞台にし、フリーターの男女カップルと、祖母の家に居候して客がほとんど来ないタトゥースタジオを経営する男という、うだつのあがらない三十路の3人を軸に展開する。この3人は友人なのだが、いつも飲んだくれて、ウジウジとした話ばかりする。テレビやラジオでは、ワールドカップやオリンピックの経済効果や発展を鼓舞するニュースばかりが流れる。しかし、自分たちには何も反映されていないような虚しさ。働き、学校を出たところで豊かな生活が待っているわけではないと、絶望的なことを言いながらも、そんなウジウジを言い合える仲間がいることや、いつもテレビを見たまま居眠りしているけど、ただそこに変わらずにいる祖母の存在で、微笑ましい気持ちになるのが、この映画の救いだ。なんだか、日本や世界のいたるところで共通していそうな虚無感でもある。


映画『聖者の午後』予告編(配給:Action,Inc.)

 いっぽうで、ブラジルの生々しい現実を伝える映画もある。
ここ数日、メキシコを含む、世界のネットメディアやSNSで話題になっている、デンマークのミケル・ケルドルフ監督のドキュメンタリー『The Price of the World Cup』だ。

 ストリートチルドレンの更正支援団体の代表や、その団体が作った元ストリートチルドレンたちによるサッカーチームのメンバー、現在も路上で暮らす子どもたち、ファベーラ(低所得者層居住区)の住人たち、ブラジル人権委員会、活動家たちへのインタヴューが収録され、丁寧に作られている。

 ブラジルでは、ワールドカップ関連の建設物のために20万人近くが立ち退きになったなか、ファベーラでも、最新鋭ロープウェイの路線建設のために、多くの家が立ち退きにあった。その住人のひとりは、「ロープウェイは地元の人びとが利用するためではなく、発展の象徴として、外国人たちに見せつけたいのよ」と語る。
 ブラジルのストリートチルドレンの数は24000人以上とされるが、映画では2013年だけでも道に暮らす210人の子どもたちが殺されている事実を露にする。
 ブラジル人権委員会代表は、その件に関し、「ワールドカップ開催場所付近のストリートチルドレンたちを、政府や警察、軍が、民間人を雇って殺害している」と語る。
 また、ワールドカップ開催にむけての費用をかける企業が多くなったため、資金援助を得られなくなったストリートチルドレンの更正支援施設が、閉鎖に追い込まれていると、支援団体の代表は語る。
 「そのなかには、児童売春をしていた子どもたちの更生施設も含まれている。施設が閉鎖されたら、子どもたちはまた路上に出て、売春をすることになるだろう」
 映画は、スタジアム1件の建設費用で、ブラジルの公立小学校がどれだけ建設できるかという疑問を投げかける。
 かつては路上で暮らし、更正施設を経てから、現在は仕事もし、アパートで暮らす青年は、「恋人と一緒に暮らしているんだ。路上にいる頃は、こんな生活が訪れるなんて思ってもみなかったよ」と言う。そして、彼は社会支援団体が作った元ストリートチルドレンたちによるサッカーチームの選手となり、サッカーを心から楽しんでいる。

 映画は、誰もがあたりまえに持つ権利を、あたりまえに持てない状況があることを捉え、ブラジルでの大規模なワールドカップ反対運動が起こることになった問題の根幹について触れているのだ。

 ワールドカップ開催目前にして、日を追うごとに激しさを増すブラジルの反対運動の様子を窺っていて、まっさきに頭に浮かんだこと。それは、1968年10月2日、メキシコシティオリンピックの開催反対のため、メキシコシティのトラテロルコ地区の広場に集まった、学生を中心とした400人近くが、メキシコ政府によって虐殺された事件だ。
 学生たちは、国がめちゃくちゃな状態なのに、オリンピック開催とはとんでもないと反対運動を起こしたが、政府は軍を使い、広場に集まった人びとをヘリコプターを使って射撃した。広場を埋め尽くした血は、一日のうちにきれいに洗い流され、虐殺事件は、なかったことにされた。それから10日後、メキシコシティオリンピックは、全世界から注目されるなか、華々しく開催された。
 後にこの事件は、メキシコの歴史上の汚点と呼ばれ、毎年10月2日にはこの日を決して忘れないために、メモリアル・デモが開催される。

 このトラテロルコの事件から46年経ったいまも、メキシコの問題は山盛りであり、人びとは毎週のようにデモを決行する。教育法や税法改革、石油の民営化に反対する市民たち、土地を剥奪された農民たちや、権利を訴える先住民たち、暴力に反対する女性たち、政治犯解放を訴える家族や恋人たち、仲間たち、殺されたジャーナリストたちの遺族たち.....まるでデモの週替わりメニュー状態である。
 デモは交通機関が麻痺するし、道が閉鎖されて、迷惑だと多くの人びとが口にする。でも、不満や怒りすら、外に向かって言えなくなったときこそが恐ろしいのだ。
 先にも述べたように、サッカーにあまり興味がない私だが、デモで大通りが閉鎖になったのを利用して、露天商の人びとがサッカーを始める瞬間が好きだ。
 都会の真ん中に突然空いたスペースで、空き箱をゴールに見立てて、人びとが生き生きとサッカーする姿は、いつまでも眺めていたい。
 きっとそこには、純粋にサッカーを楽しむひとたちがいるという安心感があるからだろう。

 最後に、ラテンアメリカを代表するメキシコのミクスチャーロック/スカのグループ、マルディータ・ベシンダーの曲「Pura diversión(純粋な娯楽)」のヴィデオを紹介したい。このヴィデオは、メキシコシティのゲットーのなかのサッカーコートで撮影された。

 テレビを眺めているのは退屈すぎるから
 俺はサッカーコートへ行くよ
 地元の仲間たちと遊ぶんだ
 俺のワールドカップをやるんだ
 ストリート・サッカーには金はない
 純粋な楽しみなんだ
 本当のサッカー
 自覚のサッカー
 ここには暴力はなく楽しみだけだ

pAradice (Life Force / Library Records / △) - ele-king

三軒茶屋のDJbarカルチャーで育って、現在Life ForceにてDJ、装飾担当、東高円寺Library Records水曜の人。
今年は定期的にmixもつくっているのでよろしくお願いします。
https://soundcloud.com/dj-paradice

DJ Schedule
6/7.8 ”天狗祭” @おおばキャンプ村
6/13 "MARK E 『Product Of Industry』Release Party @air
6/14 "Psychedelic Session" @天狗食堂
6/21 "Casaverde" @Grassroots
6/27 "Moringa" @横浜Galaxy

6/28 "LifeF Force" @Unice にmixerとして参加します!
  DJ:Asusu,Mana,Inna https://lifeforce.jp


カフェで聴く一枚、モーニングからミッドナイトまで(時間経過とともに)

interview with MC Kan - ele-king

一生かけても言葉でこの街改造/野望はでかいぞ ――漢
拡声器空間~MIC SPACE(FROM MS CRU)
“新宿アンダーグラウンド・エリア”(2002年)

 ここに掲載するMC漢のインタヴュー記事は、昨年9月25日にDOMMUNEで放送された番組「鎖GROUP presents MC漢SPECIAL!!」における「MC漢、激白インタヴュー!」を構成/編集したものである。

 漢はその日、自身のヒップホップ・フィロソフィー(ヒップホップ哲学)を生々しい体験談を交え、ユーモラスに語った。きわどいブラック・ジョークやギャグを巧みに駆使しながら。その卓越した話術に多くの視聴者が舌を巻き、彼のラッパーとしての神髄を見たにちがいない。


MC漢 & DJ琥珀
Murdaration

鎖GROUP

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 『ヒップ――アメリカにおけるかっこよさの系譜学』(篠儀直子+松井領明訳)の著者であるジョン・リーランド風に言えば、漢が2000年代に切り拓いた地平はひとまずこのように説明できるだろう。つまり、「漢は善悪の古臭い対立をなくし、救世主と悪漢というお決まりの枠から日本のラップを解放した。そのかわりに彼がラップのなかで描く人びとは自分自身と衝突することになった――性的、道徳的、および職業的に」と。そして、このインタヴューで漢が語ったヒップホップ哲学は、「では、その後、どう生きるのか?」という、一筋縄ではいかない、普遍的な問題提起をはらんでいる。

 漢は2012年の夏にヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げ、実質上のセカンド・アルバム『MURDARATION』を発表している。それから2年、ついに〈鎖グループ〉が本格始動する。6月4日には、前述した番組の続編がDOMMUNEで放送される。僕はいま、漢と〈鎖グループ〉の挑戦と彼らのヒップホップ・ドリームについてより多くの人びとと議論したいと考えているが、なによりもまずは、漢の痛快なトークを思う存分堪能してほしい。

いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

今日の主役のMC漢さんが到着しました。どうぞよろしくお願いします。

漢:よろしくお願いします。

DOMMUNEへの到着、番組開始のぎりぎりでしたね。

漢:どうも、みなさんにご迷惑をおかけして、たいへん吸いました。

(会場爆笑)

ハハハハハ。漢さんはこれまでもDOMMUNEに何度か出演されていますよね。

漢:これまでというか、近年、宇川さんとDOMMUNEにはすごいお世話になっていますね。(出演は)今回で確実に3回めですね。

ただ、こういう形でインターネットの生放送番組で単独インタヴューを受けるのははじめてですよね。かなり貴重な機会だと思います。

漢:なんだろうね? これまでこういう機会がなかったんですよね。はじめて宇川さんとここで会ったときから、良い意味でいろいろ近くなれるのかなっていう感触ですかね、それがありました。はじめて会ったときに、まだ俺の達していないレヴェルの人だなっていうのはわかりましたから。

漢さんが主宰を務めるヒップホップ・レーベル〈鎖グループ〉を立ち上げたのは去年でしたか? それとも一昨年でしたか?

漢:一昨年ですね。立ち上げたというか、登記したのは。だから、いまは、また再びスタート地点に立っただけですね。

これから本格始動していこうと。

漢:うん。〈鎖グループ〉を立ち上げるまでは、制作は〈ライブラ〉に任せていたけど、〈鎖グループ〉っていうのは、〈ライブラ〉のなかの〈鎖グループ〉ではなくて、完璧に独立した会社なんですね。

〈ライブラ〉を辞めて、〈鎖グループ〉を立ち上げて新たなスタートを切ったと。

漢:そうですね。ただ、進み方にはまだちょっと不満がありますね。その不満を解消して、確実にいい感じで広げていけるパワーが集まってきてはいますけどね、いま。元気玉みたいな感じなんでね。今日はその第一歩になるようなインタヴューにしたいなと。

そうですね。

漢:うん、最初は少し時系列的にいこうか。もともとMSCっていうのは、俺とGO、PRIMAL、O2、TABOO1ってヤツらとDJ陣がいたりしてはじまったわけですよ。SATELLITE(少佐、DOGMA、SAWから成るMSCの別動隊)と呼ばれるヤツらも当時からいて、それが原形だった。で、〈ライブラ〉っていうのは、俺やTABOO1が住んでいる、明治通りをはさんで反対側の神楽坂や牛込あたりの人たちで、二十歳以降に知り合ったっていうかね。お互い名前も知っていて、〈ライブラ〉の社長も俺のことは、まあ、噂で聞いていたんですね。カッコよく言うと、ストリート的な感じのビジネスで知り合って、そこから、いろいろつながって、MSCと〈ライブラ〉が合体したんですね。

それが、2003年ころですね。

漢:うん。いちばん最初にリリースしたEPの『帝都崩壊』(2001年)は〈Pヴァイン〉から出していましたからね。で、2003年のEP『宿(ジュク)ノ斜塔』から〈ライブラ〉の制作で、ファースト・アルバムの『MATADOR』もそう。だからいきなり鬼のようなスピードで加速して行った。MSCにはDJしかいなくて、トラックメーカーがいなかったから、I-DeAのスタジオでデモテープを録らせてもらって、そのときにはじめて「トラックを作るにはMPCが必要らしいぞ」って知ったぐらいだからね(笑)。作り方もよくわからない状態で作っていたんですよ。『MATADOR』のマスタリング作業には、メンバーのなかで俺だけ参加していたんだけど、マスタリングが終わったときに、当時MSCを担当してくれていた元〈Pヴァイン〉のA&Rの佐藤(将)さんに俺が言った一言は、「これ、ほんとに出しますか?」だったからね。

それはどうしてですか?

漢:自分たちがイメージしていたヒップホップではなかったから。

それはサウンドが?

漢:全部が! 自分でもよくわからなくなって、当時持っていた自信が揺らいだというかね。「あれ、大丈夫か?」みたいな感じになった。だけど、『MATADOR』はじょじょに効いてくるんですよ。「この音楽はヤベエくせぇな」と。最後は、「この音楽はオリジナルだ」って解釈したね。ただ、当時の自分の理想のイメージに近かったのは『宿(ジュク)ノ斜塔』で、あっちのほうが良いマインドで作れていると思う。


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社会や政府のせいにするところから、だんだん近寄って問い詰めて行って、やっぱり原因はストリートにあるのかと考えるようになっていくわけですよ。

『MATADOR』から10年経って、あの作品をどう解釈、評価していますか?

漢:当時の俺らはいい年こいて、バカみたいにアメリカン・ヒップホップを自由に解釈して、日本人文化なりに変形させるところは変形させてやっていたんだよね。それと、我々のスタート地点には、仲間のせいとか身の回りのヤツのせいにはしたくないというのがあったんですよ。「まずは社会や政府のせいにしようぜ」って。それが『MATADOR』という形で表れた。社会や政府のせいにするところから、だんだん近寄って問い詰めて行って、やっぱり原因はストリートにあるのかと考えるようになっていくわけですよ。

それはかなり興味深い話ですね。

漢:だって、いろんな経験をしてさんざん食らったりした連中が、「つまんねぇな、こいつら」とか「つまんねぇな、ここ」とかっていう不満からはじめているのがヒップホップでもあるでしょ。俺らは、そういう感じでヒップホップをやっていたから、いきなり仲間のせいにはしたくないよね。だから、おのずと社会や政府のせいだって話になるよ。当時の俺とPRIMALは、そういう話ばっかりしていたよね。だから、俺らは逆ヴァージョンなんだよね。他の日本のヒップホップのみんなはだいたいストリートから国とか政府に行くんだろうけど、俺らはいきなり社会や国や政府のせいにして、そこから身の回りというか、ストリートというか、人というか、そんな感じじゃないですか。

2000年初頭にMSCが北新宿に構えていたアジトではテレビを見るのが禁止だったそうですね。そう考えると、MSCはパブリック・イメージからするとちょっと意外なのが、ストイックで、規律のある集団だったわけですよね。

漢:ある時期からはゲームも禁止だったね。ま、ゲーム禁止令は俺が出したんですけどね。それはさ、いい年こいてんのにヒップホップやってるんだから、危なくなるでしょ、ある程度。俺らはそこに関しては、バカみたいに本気でやっていたと思うね、ピュアに。だから、俺は、趣味じゃなくて、まあ趣味だとしてもいいけど、本気でやろうぜって考えていたね。言い方は悪いけど、MSCのリーダーが俺だとして、俺をピュアに信じているメンバーがいるときは、ちょっと無茶なレヴェルに達しても、俺が言葉で「大丈夫だからさ、行けるよ」みたいな感じの説明をして成功するんですよ。みんなが100%信じ切ってくれれば。でも、ひとりでも疑いを持ちはじめたり、本気を出さないヤツが出てくると、失敗し出す元になるんだよね。当時の俺らは100%ピュアな感じで、一丸となって固まっていましたよ、気持ち悪いぐらい。そういう時代ですよ。

ある種、カルト的な雰囲気がありましたよね。

漢:当時は、なんで俺らみたいな若者が生まれちゃったんだって話をよくしていたよ。俺らの親の世代の時代や戦争の時代とか、どんな金持ちがいたとしても、日本は貧しいのが基本だったわけじゃないですか。そういう時代を経験した世代が、やっぱり自分の子どもたちには自分みたいな貧しい思いをさせたくねぇっていう甘やかしが蔓延ったのかなとかさ。だから、いまの俺らみたいのがいるんだろ、みたいな裏づけを勝手に考えたりしていたよね。でも、その時点で俺らは誰かのせいにしちゃってたんだよね、すでに。


で、意外とちびちび指を切り出すんですよ。「切れる? そのやり方で」なんて言いながら、「うわっっつっ」って(笑)。まあ、そういう感じで研ぎ澄まされていたから、あんまり失敗したことないですよ。

世の中に自分たちがいる理由を考えていた、と。

漢:そうそう。俺らのなかでは、実際にあったことを題材にリリックを書いたり、パンチラインを出したり、歌うんだけど、つい出てしまった言葉は、後付けでもやっちまえばリアルだぞって。そういうルールがあったんですよ。

恐いですね、それ。

漢:そりゃ、恐いですよ。

言葉が背後から迫ってくる、みたいな。

漢:「だったら血判を押そうぜ」って、またPRIMALが言い出すんですよ。こっちは、「血判ってなんだろう?」って感じですよ。紙と刀で。あ、刀は違うけど、まあ持ってくるんですよ、本気で指を切るものを。危なくないですか?

危ないですね、ハハハ。恐いですね。

漢:で、意外とちびちび指を切り出すんですよ。「切れる? そのやり方で」なんて言いながら、「うわっっつっ」って(笑)。まあ、そういう感じで研ぎ澄まされていたから、あんまり失敗したことないですよ。

言葉を先に吐いて、その言葉をあとから実践して、自分を言葉に追いつかせていくっていうリアルのとらえ方は、逆転の発想ですよね。

漢:まあ、プロのMCになりたきゃ、リリックでも言っているんだけど、「まず根拠のない自信が必要」で、「プロの世界で生き残りたければ今度は言葉の裏付け取る必要」(“次どこかで”)があると。そういう感じですよね。俺がだいたいイケてるなって思っていたり、ある程度の線を超えていると思うラッパーの人たちや業界の人らは、ヒップホップやレゲエ関係なく、それぞれがその部分で勝負していたり、ルールを守っていたりしている人が多いかな。感覚で言うとね。

なるほど。

漢:これは俺の持論で、リリックでも言っているけど、やっぱり「縦でもない横でもない斜め社会」(“次どこかで”)が必要なんですよ。縦社会でも横社会でもない、“斜め社会”を作って自分らで物事を決めていくというね。ただ、日本社会は年功序列で、リスペクト文化じゃないですか。たとえば敬語という文化は、みんなが幸せに生きるためのルールでしょ。なにかやるときでもとりあえず敬語を使っておけば、無駄な争いはいちおう避けられると。あと、当たり前に法律がある。裏社会も表社会も体育会系も警察でも政府でもヤクザでも、そのルールはぜんぶいっしょですよ。小学校の学級会みたいのは、その練習というか、けっきょく形式は似ている。だから、会長や社長やリーダークラスのあいだでは、下のヤツらがわからない話ができていて、で、そういう人たちの下に組合やサークルみたいのがいくつもあって上手く回っていたのがこれまでの日本社会で、そういうルールで生きてきたのが、まあ俺が思う我々日本人なんですよ。ただ、いまの時代、日本もアメリカナイズされて、そういうルールもいろいろな崩れ方をしているわけでしょ。君みたいにアメリカナイズされて、こうね。

ハハハ。そういう既存のルールが崩れかけている時代にどう生きるか、と。

漢:そういうなかで、これまでのルールややり方を簡単に止められないというのも社会だし、こういう時代に考え方が変わったり、変えるのも人間だし、変えないで貫くのもカッコいいけど、まあ、だから答えはひとつじゃなくて、“のぼり方”はいろいろあんだから、試そうぜと。俺は〈ライブラ〉のなかで、そういう違う“のぼり方”をどんどん説明していたんだけど、それを信じてくんねぇのかと。それだったら、自分は命綱なしに、他のルートで先にのぼってやっからな、と。勝手にのぼって、手助けしてやんのもいいよって感覚で独立しているんですよね。

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まあ、プロのMCになりたきゃ、リリックでも言っているんだけど、「まず根拠のない自信が必要」で、「プロの世界で生き残りたければ今度は言葉の裏付け取る必要」(“次どこかで”)があると。

MC漢の定義からすると、たとえば、DOMMUNEの場は“斜め社会”ですか?

漢:まあ、ここは意外と斜め社会系ですね。

意外と斜め社会系(笑)。

漢:あやふやでも許される、ある意味、心が広い系ですよ。

心が広い系!?(笑)

漢:ただ、やっぱり俺が日本のラッパーを好きなのは、そうだな、日本にはアメリカとは違うヒップホップのおもしろさがあるからなんですよ。アメリカ人からしたら、日本人のラッパーが「おいっす」(握手のジェスチャーをする)とか、こうやったりする(会釈のジェスチャーをする)だけでも、「おっ、なんだよ」みたいな目で見てきたりする。「あ、お辞儀した」みたいな驚きなのか、「かっけーじゃん」って感じなのかはわからないけど、まあ、そういう挨拶が日本人とアメリカ人の間で自然にできる世代もいるしね。それはそれでよくて、俺は「仲間入れろ、コノヤロー」って感じだね。

ほお。

漢:たとえば、こう、ZEEBRAというラッパーやDABOってラッパー、RYUZOってラッパー、いろんなラッパーがしゃべったりしているのを見ていても、日本人だったら、そこからいろんなものが読み取れるでしょ。そのしゃべり方や、どこに敬語でどこには敬語じゃないとか、そういうことから。その背景を分析できて、ちゃんと説明できるヤツがいたら、だいぶおもしろいよね。俺は彼らのことをもうとっくにリスペクトしていて、みんなどんどん仲良くなっていいんじゃないですか。

かつてはDABO氏とのビーフもありましたし、いろんなビーフを経て、いまそういう考え方に至ったということなのかなと。長い間〈ライブラ〉とともに活動してきて、一昨年に〈鎖グループ〉を立ち上げる経緯についても教えてもらえますか。

漢:ヒップホップのクルーでメシを食う、日本のなかで音楽でメシを食うっていうのは、だいぶ難しいんですよ。日本では、「おまえ、ヒップホップのラッパーでメシ食うだぁ? ふざけんな!」っていうのが普通の、一般的な感覚じゃないですか。けっきょく、武器になるのはソロなんですよ。やっぱりみんながソロを出せるようになっていかなきゃいけない。最初に話したとおり、MSCと〈ライブラ〉が合体したのは、隣町の先輩、要は日本ルールの先輩で、協力できると思える先輩がはじめてできたんですよ。俺もべつにそういう関係は嫌いじゃないですから。そういった仲ですし、契約書もなくて、最初は純粋な気持ちで楽しくスタートしたんですよ。べつに会社の役員とかになったわけではないんですけど、重役として会議にも参加して、自分の意見もけっこう通っていたんですね。

2005年からスタートするフリースタイル・バトルの大会の〈UMB〉の発案者も漢さんだったんですか。

漢:〈UMB〉はもともと、その前にあった〈お黙りラップ道場〉っていうイヴェントが原形なんですよ。当時〈ライブラ〉にいたA&RのMUSSOっていう中学の同級生のヤツが、イヴェントで自分の力を試すためにやってみるって話からはじまっている。「ラップ・バトルやろうぜ!」って。俺もラップ・バトルで優勝していたし、俺もアイディアを出して、気持ちとしても〈B-BOY PARK〉には出たくないってヤツらが集まるかなって考えていたね。

2002年の〈B-BOY PARK〉のMCバトルでMC漢が優勝したことが、日本のフリースタイル・カルチャーの大きな転換点ではありますよね。その流れで〈UMB〉が立ち上がるわけですよね。

漢:そうそう。そのあたりで、日本でもルールのあるバトルが本格的にはじまった。で、〈UMB〉のDVD作ったり、ソロ・アルバム『導 ~みちしるべ~』(2005年)やMSCの『新宿STREET LIFE』(2006年)が出たりして、俺ひとりだったら、最初の1、2年は、まあお金はもらっていましたね、それなりに。

そうですか。

漢:でも、俺らの仲間がどれだけのギャランティをもらっているのかという話はしていなかったんですよ。ただひとつ言えるのは、ストリート・ハスリングみたいな感じでやっていようが、ラップの金でやっていようが、組織やグループだったら、ある程度のところまでみんなが潤わないと、誰かが犠牲になることになる。そのあたりで、俺の理想と違うなあっていうところも出てきたわけですね。不安な部分もあるなと。余裕がないなら、まあまあ、俺が犠牲になってもいいよ、じゃあ、そこは、という気持ちもあったけど、身近な人間に抱きたくもない感情が増えてきたり、そういう人間社会現象が起きてきちゃうわけですよ。ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいな感じの狭いところでループするようになっていきましてね。

ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁?

漢:ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいなところですから、そこにいる人たちは外部の人間ではない。でも、その短い距離で人が離れていく。そうなっちゃうと、俺のなかではヒップホップじゃない。俺の一言にたとえ騙されてでも、それが100%だったら成功するルールじゃなくなってきた。主婦的行動の井戸端会議で極端な憶測も飛び交うようになってしまって、ブルい過ぎてしまうぞ、エヴリデイ、みたいな現象が起きてきたわけです。

どういうことですか?

漢:まあ、やっぱり人間が増えると、社会になりやすいですよ、日本ってね。身内でえげつねえ、みたいな現象が起きてくるようになるんですよ。「なんで、この短い距離でそのことを確認すんだよ」ってなってくる。そういうところから、僕がいまインターネット・サーフィンに乗せているインタヴューの旅がはじまっているんです。

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組織やグループだったら、ある程度のところまでみんなが潤わないと、誰かが犠牲になることになる。そのあたりで、俺の理想と違うなあっていうところも出てきたわけですね。不安な部分もあるなと。

つまり、そういう背景があって、〈鎖グループ〉を立ち上げようと動きはじめると。

漢:そう。ヒップホップだけで食っていくためにはいろんなところを改善したり、ルールを作らないといけないなと考えるようになったんですよ。独立して、自分のやり方や力を試して、なるべく日本の音楽でアーティストにお金が入るシステムって作れないかと考えた。そのためには、プレイヤーがやるレーベルじゃなきゃ意味がねぇなって考えたわけです。だから、早く〈鎖グループ〉を立ち上げて、軌道に乗せたかったんですけど、俺が独立するとなると、今度は不安がる人たちが増えちゃったんですよ、なぜか。

うーん。

漢:俺は、友だちとか先輩と言うのであれば、自分から問いかけてこないかぎりは信じないスタイルなんですよ。でもそうなると、今度は、「ナメられている」と勘違いしちゃう人も出てくるんですよ。いい歳をして使う言葉じゃないと思うんですけどね、「ナメられている」というのは。

MSCの結束力も揺らいだ?

漢:結束力の前に、そこが崩れることはまずないんです。MSのヘッズのオリジナル・メンバーに関しては、俺が身内社会でなにを言われていようが、風評があろうが、「いや、あいつは最初からそうだから大丈夫でしょ」という感覚なんです。お互いたしかめることもしない。我々は小さいながらも、いろんな形のヤマを乗り越えてきたメンバーだから、そこは大丈夫なんですよ。だけど、それ以上の人間の人数が関わっているので、その影響もある。たとえば、警察だったり、黒い世界の人たちだったり、井戸端会議の勝手な憶測で、そういう名前が浮上して、ぜんぶが俺のせいになるのであれば、俺は離れた方がいいじゃないですか。そういう話になったんですよ、〈ライブラ〉で。だから、まあ俺にも氷河期っていうのがあるんですよ。

氷河期なんてあったんですか!?

漢:ありますよ、ビックリすることに。簡単に言ったら、〈鎖グループ〉を立ち上げて、まずCDを一枚出して、出せなかった曲も出した。で、そのときに俺が予想していた一年から一年半よりももっと早く、半年という期間で〈鎖グループ〉の当時のメンバーとかアーティストたちはいちど散った感じですよね。散ったとしても戻ってくるんだろうなっていうのはわかっていますけど、いまの〈鎖グループ〉は、MASTERとDJ 琥珀と自分の3人がメンバーなんです。俺の氷河期のころのちょっと聞いたことがないおもしろい話をひとつしようか。いまはカタカタ(キーボードをタイプするしぐさ)の時代でしょ。

それ、インターネットのことですか?

漢:はい。駐車場を〈鎖グループ〉の会社名義で借りようとしたら、審査に落ちましたよ。駐車場の審査に落ちるなんて話は、俺はいっさい聞いたことがありませんよ、知り合いの不動産屋に聞いても。銀行系もギリでしたね。

えぇぇ。

漢:はい、ギリでした。そういう氷河期のときに、なるべく俺に暖房をあててくれたのがMASTERだったり、DJ琥珀がすげぇ優しくケツを叩いてくれたり、このふたりがいたから、〈鎖グループ〉は氷河期を越えることができましたよ。その当時、D.Oの曲がグッサリ刺さっちゃって。

どの曲ですか?

漢:「みんな俺に大丈夫か? って訊くが/みんなは逆に大丈夫か?」(“I'm Back”のD.Oのラップの真似をしながら)ってリリックに、「うわーっ」ってなっちゃって。

(会場大爆笑)

アハハハハハッ。

漢:まさに俺に「大丈夫か?」って訊いてくる「おめぇが大丈夫か?」って話だったんですよ、当時は。それを俺に言わせんなよって。だから、俺もひとりずつメンバーを呼んで、「俺は〈鎖グループ〉をやるから」と宣言したんですよ。


いち早く、若いうちにがっつりメイクできるのが、ヒップホップのひとつのドリームじゃないですか。そっから失敗しようが、成功しようが、そういう夢があるのがヒップホップだから。

こういう言い方も陳腐かもしれませんが、一世一代の勝負だったと。

漢:お笑いの世界とかをバカにしているわけじゃないけど、日本ルールで「30になってから売れる」とか「男は30から」とか、そういうのはヒップホップじゃないと俺は思っている。いち早く、若いうちにがっつりメイクできるのが、ヒップホップのひとつのドリームじゃないですか。そっから失敗しようが、成功しようが、そういう夢があるのがヒップホップだから。音楽を作って出して、もらえるもんはもらう、それで、見る夢は見る。そうじゃないと、モチヴェーションがなくなっちゃうでしょ。だから、〈鎖グループ〉を立ち上げたんです。俺もこれまで吐いたツバは多少、三口、四口飲んだことはラップやっているからあるかもしれないけど、たとえば、夏だからって、吐いたツバをキンキンに冷やしたジョッキでガブ飲みするようなことはしませんよ。

アハハハハ。

漢:そんな吐き気がするようなことはしないし、したくない。ただ、さすがに氷河期のころは、そこまであからさまにガブ飲みするような現象が起きるのかもしれないってところまで行った。だけど、もう氷河期を越えることができました。

最後に、今後のMC漢と〈鎖グループ〉の野望について訊かせてください。

漢:お互いがちょっとでも理にかなっていたり、おもしろい曲ができたり、意外とこういう人らがつながって、こういう曲になるんだとか、いまの日本で物足んなかったヒップホップやスタイルを提示していきたいと思っているね。さっきも言ったけど、「縦でもない横でもない斜め社会」で、タテノリ、ヨコノリよりも、35歳でいまだにワルノリで、ブリブリになれればいいなって感じですよ。俺の場合はやっぱりヒップホップだから、正式契約書にサインして、その場で楽曲を発表する契約公開を次はやりたいと考えていますね。宇川さん次第ですけど、できればドミューンで第2回めの放送もやらせてもらいたいなと。〈鎖グループ〉で俺がやろうとしているヒップホップ・ドリームは実現できると思っているんで。そうしたら、もっと威張りクサリますよ。

■2014年6月4日(水)

19:00~21:00 「BLACK SWAN presents THE SHO a.k.a. 佐藤将~ある日本語ラップ狂の唄~」

出演:DARTHREIDER(BLACK SWAN)、TONY BOY、黒鳥 司会:二木信

21:00~24:00 「9SARI OFFICE presents 鎖グループ&BLACK SWAN公開記者会見&SPECIAL LIVE!!!」

出演:MC漢(鎖グループ)、DARTHREIDER(BLACK SWAN)、MASTER(鎖グループ)、鎖グループ&BLACK SWAN契約アーティスト8、9組 司会:二木信

DJ:琥珀(鎖グループ)、KOPERO(BROTHER'S MACHINEGUN FUNK) & MORE!!!

DOMMUNE前回放送で話題が爆裂したMC漢率いる鎖グループ。社内別LABEL 〈BLACK SWAN〉の代表にDARTHREIDERを向かえ、新体制でついに始動! 前半は、〈BLACK SWAN〉前代表、故佐藤将氏の功績を辿る、佐藤将追悼特集「THE SHO a.k.a. 佐藤将~ある日本語ラップ狂の唄~」。後半は、公開記者会見を放送しレーベル構想を一気に語りまくります。メディアを呼び込み、それぞれが報道する新しい情報発信の形を提示します。所属アーティストとの公開契約、アーティストライヴ、質疑応答など内容は盛りだくさん。さらに、MC漢による爆弾発言のコーナーも……? 何が起こるのか……。間違いなく想定外な2時間! 今年、もっとも見逃し厳禁なHIPHOP放送!

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 「俺、UKIP支持に回るかも」
 と隣家の息子が漏らしていたというのは数カ月前に書いた話だ
 リベラルでお洒落なゲイ街にはレインボウ・フラッグがはためいているが、貧民街の家々には聖ジョージの旗が掲げてあり、それはまるで、もはや「自分はイングリッシュである」ということしか誇るものがなくなった白屑(ホワイト・トラッシュ)の最後の砦のようだ。と書いたのは一昨年の話だ。
 つまり、ずっと前から予感はあった。
 5月23日のEU議会選(地方選とセットで行われた地域もある。ブライトンはEU議会選オンリーだった)が近づくと、それは一気に明らかになった。貧民街の家々の窓に右翼政党「UKIP」支持のステッカーが貼られ始めたのだ。だいたい貧民街では選挙前に政党のステッカー貼ってる人なんていなかった。ミドルクラスなエリアに行くと緑の党や労働党のステッカーが貼られていて、玄関先にフラワーバスケットが下がっているようなお宅に保守党のステッカーが貼ってある。というのが通常の選挙前の光景だった筈だ。
 しかも、品のない貧民街となると窓にステッカーを貼るぐらいじゃ収まらないから、「UKIP」の巨大な落書きがフェンスや外壁に出現し、民家の窓に国旗まで掲揚され始めた。あれ、W杯って5月に始まるんだっけ?と思ったほどである。
 そしてとどめは、「EU議会選はUKIPに投票する」と言い出した連合いだった。うちはそれで離婚問題に発展しそうになった。
 異様な、実に面妖な夏の始まりである。

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 「政界に起きた地震」。
 今回の地方選&EU議会選はそうメディアに表現された。アンチEU、アンチ移民の右翼政党UKIPがまさかの大躍進を遂げたのである。「英国は4大政党の時代に突入する」と表現している新聞さえある。
 第三政党の自由民主党(ブライアン・イーノがサポートしてきた党だが、保守党と連立を組んだ時点で死んだ)が壊滅的に議席数を減らし、UKIPがそれに取って代わる勢いで票を伸ばした。排外主義の右翼政党が「大政党」の一つになりそうな勢いとは英国もシュールな状況になったものである。
 が、なんで今さら排外リヴァイヴァルなのか。英国人は長い時の経過の中で「ま、しゃーないか」と外国人を受け入れ続けて来た筈で、だからこそ日本人のわたしなんかも、毎日こどもたちに絵本なんか読んで聞かせて「先生のLの発音、おかしいー」と指摘されても「いやー、わたしガイジンだから。へへへ」「ふふふ」「ははは」とみんなで陽気に笑いながら生きていける社会になったのではないか。
 「80年代に排外が盛り上がった時とは移民数のケタが違う」
 と連合いは言う。
 「EU圏内から来る労働者が多すぎ。このままじゃ下層の若者はマジで働けなくなる。サッチャーが地方の製造業をぶっ潰して失業者を大量生産した時は、あいつは失業保険とか生活保護とかをスッと出したんだよ。でも、今は生活保護打ち切りの時代だ。そういう受け皿を取り上げながらどんどん移民を入れるのは、下層民に死ねと言ってるのも同然だ」
 連合いの言い分は貧民街の人間たちの声を代弁している。トニー・ブレア以降、労働党が労働者をリプリゼントする党ではなくなってしまったから、労働者たちがUKIP支持に回っている。ずっと左だったのに、いきなり極右にジャンプしている人が結構わたしの周囲にもいるのだ。

 実は最近、ちょっとモリッシーについて書いていたのだが、彼も「移民が増えるほど英国のアイデンティティは希薄になる」という発言を『NME』に書かれて揉めたことがある。個人的にはこれはもっともな英国人の感慨だろうと思う(モリッシーの場合、血統的にはアイルランド人というオチがつくが)し、本当にそう言ったんだろうと思う。彼は猛烈な反王室派でアンチ・キャピタリストなので、今どき何処の共産党の爺さんなんだよというようなガチガチの左翼発言もするが、その一方で“National Front Disco”に代表されるような曲も書いた。「England for English」という歌詞を持つこの曲が、ナショナル・フロントに走る青年について客観的に歌ったものだとしても、悲しい情念に満ちた曲調からはモリッシーがそうした若者にある種のシンパシーを抱いていたことが伺える。
 モリッシーのこの左から右に唐突にジャンプする感じはまさに下層民のリアルな姿だ。だからこそ一見すると軟弱な大学生のアイドルのようなモリッシーが下層社会でも熱烈に支持されたのだろう。実はモリッシーも「もうちょっとでUKIPに投票するところだった」と発言したことがあり、(現在どう言うかは不明だが)同党の党首ナイジェル・ファラージを「好きだ」と言ったこともある。
 わたしはファラージという人はトリックスターだと思っているので、ただ掻き回して終わるだけだろうと思うが、その掻き回しに英国の下層民が乗っかっているのは、長いあいだ政治が彼らを完全に無視してきたからだ。英国民の右傾化は、政治へのリヴェンジと言ってもいい。
 今回の選挙で、EU議会においてはなんとUKIPが英国の第一党になった。しかも、UKIPに投票した人々の86%が来年の総選挙でもUKIPに入れると言っているらしい。政治がいつまでたっても下層の悲鳴を放置し、あまりにも巷の現実と剥離したエリート様ポリティクスを続けているから、国民が短絡的に2本指を突き上げている。英国は、たとえ短期的にせよ、とても良くない方向に向かうかもしれない。

*********

 ところで、個人的にもっとも驚いているのは、UKIP問題で人と話をする時に
 「ずっと前からこの国にいる移民として、近年になって入って来た移民についてどう思う?」
 尋ねられることだ。どうも英国の人々は、EU圏から近年になって流れ込んできた移民たちと、それ以前からいた移民とを区別して考えているらしい。
 「I’m one of them」
 と答えるとそれ以上は何も訊かれなくなるが、ひょっとすると、「そうなんだよねー、あいつらムカつくー」とか言ってぶーたれるのを期待されているのだろうかと思う。移民であるわたしが、どうして移民に対してムカつかねばならないのだ。
 だからUKIPに多くのブラックやブラウンの党員がいるという事実には驚くし、そうした有色人種の党員が「EU圏からの移民を制限するUKIPのポリシーは、EU圏外の地域から来る移民にもっと入国のチャンスを与えることになり、よりフェアな移民の制限に繋がる」と主張している動画を見た時にはもう呆れて大笑いした。
 それはバングラ系移民2世のお嬢さんのようだった。しかし、彼女の両親はその「EU圏外の地域」からやって来て、この国に受け入れてもらい、働く機会を得て生きてきたのではないか。先に入ったからと言って、後から入って来る者に「来るな」というのは、玩具をシェアすることを知らない幼児の如くに野蛮だし、「私と同じ地域からの移民はオッケーだけど、それ以外の移民はダメ」というコンセプトをレイシズムと呼ばずして何と呼ぼう。
 UKIPがその辺の旧移民の新移民に対する意識も利用し、取り込もうとしていると思うとなんとも恐ろしいが、逆に言えばUKIPなんてその程度だ。ちょっと考えると欺瞞だらけの理念には、人は長期的に心を奪われることはない。
 せいぜい短期間のリヴェンジに使われる程度だ。

*********

 「“フェア”な移民制限や“レイシストでない”移民制限などない。我々は移民制限に反対する。我々は、我々の出自や、我々またはその親が何処の国で生まれたかということや、肌の色、何語を喋るかということで人間の存在を非合法にする全ての法律に反対する」

 ケン・ローチの政党レフト・ユニティのポリシーにはシンプルにそう書かれている。移民を一切制限するな。とは、このご時世にアナキーどころかキチガイ沙汰だ。

 が、このポリシーの後半部分には、移民として18年生きて来たわたしには打たれるものがある。

 政治というものは、本来、この「打たれるもの」がコアにあるべきではないのか。
 それは古い言葉で言えば「思想」でもいいし、「社会は、そして人間はこうあったほうがクールだ」という個人的な美意識でもいい。
 「弱者が可哀そう」とかいうヒューマニズムばかり強調しているから左翼はダメになったという定説がある。が、わたしは全くそうは思わない。寧ろ真逆で、誰もポリシーの根本にある揺るがぬもの、妥協など入る余地のない美意識を語らなくなったから政治は人を動かすことができなくなったのだ。
 UKのみならず欧州全体が右傾化しているのは、人々がそうした妥協しない何かを右翼の中に見たような気になっているからかもしれない。
 社会の右傾化は、思想なき政治への民衆のライオットである。


V.A.
カーネーション・トリビュート・アルバム なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?

Tower HMV Amazon iTunes

 カーネーションのライヴをはじめて観てからというもの、僕はこの2カ月すっかりこのヴェテラン・バンドに恋してしまっている。僕は不覚にもカーネーションの名前しか知らなかった。が、いまは、i-podにはアルバムが5、6枚ほど常備されている。それらはすべてライヴ後に手に入れたものだ。勢い余ってというのも変だが、少し前に発売された2枚の7インチも買った。1枚は曽我部恵一とうどん兄弟がそれぞれ“Edo River”をカヴァーしたもの。もう1枚には、ミツメによる“YOUNG WISE MEN”、スカートによる“月の足跡が枯れた麦に沈み”のカヴァーが収められている。カーネーションが多彩なミュージシャンたちから愛され、現在のインディ・ミュージック・シーンに流れこむいくつもの水脈をつくってきたという事実が、僕にとってまず重要な発見だった。そして、より重要だったのは、カーネーションの音楽とともに春を過ごせたことで、悩ましい日常の幸福度指数が思いがけずリアルに急上昇したことと、ひさびさに魂を揺さぶるロックンロールを体感できたことだった。

 3月15日、昨年リリースされたカーネーション・トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』発売記念ライヴに足を運んだ。友人からの何気ない誘いがきっかけだった。その日、下北沢の〈GARDEN〉に集まったオーディエンスの年齢層は30代後半から40代が中心で、長年カーネーションの音楽を聴きつづけてきたファンが多かったように思う。20代らしき男女も見かけたが、「ライヴを観てやろう」という長年のファンが熟成させてきた静かな気迫がじわーっと会場に漂っていた。間違っても、「イエー!」というノリではなかった。日曜の夕方という、平日労働者の高揚と憂鬱が交錯する時間帯からはじまるライヴ・イヴェントだったが、バー・カウンター前でいい気分になっている酔狂な集団もいない。「これは手強い音楽ファンだ」というのがフロアを見渡したときの第一印象で、この独特の緊張感がカーネーションというバンドが歩んできた30年の道のりを物語っているようにも感じられた。

森は生きている、大森靖子、スカート、うどん兄弟、ブラウンノーズ、Babi、カメラ=万年筆、曽我部恵一、カーネーションという順番で、5時間を超える長丁場だった。が、オーディエンスの集中力は本当に高かった。僕もビールを2、3杯しか飲まなかった。このラインナップを前にして、飲んでいる場合ではないと自分に言い聞かせた。トップバッターにするのはもったいないほどディープなサイケデリアをすべて新曲で展開した森は生きている、“愛のさざなみ”で直枝政広のギターとからだと激情的なからみをみせた大森靖子、90年代初頭のヒップホップ・ソウルを彷彿させる“Edo River”のカヴァーを披露したアイドル・グループ、うどん兄弟、“グレイト・ノスタルジア”(僕がいまもっとも愛聴している曲のひとつ)をカヴァーしたカメラ=万年筆(歌手のマイカ・ルブテのあやうさのある不安定なヴォーカルがじつに魅惑的だった)……。詳述したいが、しかし、先に進む。

会場の空気があきらかに変わったのは曽我部恵一がギター一本で登場して歌いはじめた瞬間だった。それは、人気の高さによるものだけではなかった。曽我部恵一は、前口上抜きで大瀧詠一“それはぼくぢゃないよ”を祈るように歌いあげ、間髪入れずに“Edo River”を艶やかに披露した。歌の届く距離というものがまったくちがった。物理的にも、精神的にも。髪を振りみだしギターをがむしゃらに弾きまくり、あのセクシーな声をクールに低く響かせ、背景に黄金色の夕暮れがふわーっと広がっていくようなフォーキーな表情を浮かべる。そういったいくつもの側面を正味20分程度で、過剰さを感じさせずやりきる。会場の雰囲気がさらにぐっと引き締まったのは間違いなかった。

 そして、サポート・メンバーを加えた4人編成のカーネーションの登場だ。初っ端、大田譲の太く、力強いベースがからだを揺さぶったとき、4、5年前に沖縄のロック・バーで体感したライヴの記憶がよみがえった。長年コザ市(現沖縄市)で米兵相手にロックを演奏してきたそのベーシストはいまでも嘉手納基地近くのロック・バーで酔客相手にベースを弾いていた。身長160cmほどと小柄ながらも筋肉隆々とした体格と、物腰の柔らかさの中に潜む殺気が、彼の歴史を物語っていた。そのベーシストはバーに雇われているミュージシャンで、バンドはベース、ドラム、ギターのトリオだった。彼らの猛々しい演奏は、ロックンロールが理屈抜きのダンス・ミュージックであることを僕に教えてくれた。トリオの中央に立つ老ベーシストは、表情をほとんど変えずに力強くしなやかなベースを弾いた。彼らが刻むベースとドラムのシンコペーションと音量の具合は、酔客たちの肌の表面をやさしく愛撫しながら、からだの奥底のダンス衝動を揺さぶるものだった。その1年ほど前にリキッドルームで観たゆらゆら帝国のライヴと、音楽性は異なれども、ロックンロールの快楽という一点で同種のものだった。

カーネーションの、その日の最初の1、2曲(“YOUNG WISE MEN”→“学校で何おそわってんの”)の演奏に感じたのもまさにそれだった。ベースがバスドラの音の表面を撫でながら、有機的にからみあい、ブーンと腹に余韻をのこす音を発して演奏はずんずん前進していく。直枝政広と大田譲は派手な柄シャツを着こなしているが、期待を裏切らない似合い方をしている。ふたりとも長髪だ。ダンディである。「これぞロックンロールですね」。ライヴに誘ってくれた友人に興奮をおさえて耳打ちすると、彼の大きな目も輝いていた。当然だろう。だが、個人的なクライマックスはそのあとに待っていた。元メンバーのギタリスト、鳥羽修を加えての“Superman”だ。パワフルに跳ね上がるビート、軽快なキーボード、直枝政広の粗野と繊細のはざまを揺れ動くヴォーカル。そしてサビに入ると、なんとも切ないメロディと直枝政広の甘いファルセットが曲のドラマを最高潮に持っていく。最高のポップ・ソングとは、3~5分の短い時間、胸を締めつける恋心の幻想を見せる音楽のことだと断言したくなる、ロックンロールだった。こういうロマンチックな曲を書いて、演奏できるからこそ、カーネーションは愛されているのだろう。最後は、その日の出演者のほぼ全員がステージにあがり、“夜の煙突”の大合唱で締めくくられた。

年齢を重ねるたびに、その経験を活かして“枯れ”の技芸に磨きをかけていくというのは、フォークでもロックでもミュージシャンのひとつの“生き残り方”ではあるが、カーネーションの直枝政広と大田譲は年齢とともにますます瑞々しさを増していっているようにみえた。6月には、廃盤となり入手困難だった『LIVING/LOVING』『SUPER ZOO!』という2枚のアルバムが再発されるという。もちろん僕は聴いたことがない。新譜を待つような気持ちで、いまからときめく準備はできている。

ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって話そうよ 
ねぇ ねころがって夢みよう 
ねぇ ねころがって空飛んでこうよ 
小さな指をはなさずについておいでよ 
街がほら星くずのように 
ハイウェイが星くずのように輝くよ
“Superman”


追記

僕は、カーネーション結成30周年記念トリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』の発起人であるスカートの澤部渡とカメラ=万年筆の佐藤優介のいくつかのインタヴューや、カーネーション好きの友人の意見を参考にしながら、アルバムを手に入れてみた。「全員に対して『SPY FOR THE BAND』で様子を見ろとは言いたくないじゃないですか」と、『ミュージック・マガジン』(2014年1月号)で澤部が語っているので、ベスト盤『SPY FOR THE BAND』だけで様子を見るのは止めた。澤部が選んだ『Prakeet & Ghost』を聴いて、なるほど、澤部の発言の意味がわかった気がする。ポップと実験。ポップにおける実験。実験的なポップ。そのような多層的なカーネーションを知るためには、ベスト盤ではまったく事足りない。いわばコロムビア時代のシングル集である『SPY FOR THE BAND』に詰まっているきらめくポップ・サウンドはとても素敵だ。だが、たとえば『Girl Friend Army』と『天国と地獄』を聴き比べてこそ、カーネーションというバンドを深く堪能できるし、カーネーションがコアな音楽ファンから支持されつづけている理由を理解することができる。“ハリケーン”(『天国と地獄』収録)における、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの名曲“イン・タイム”のドラム・ブレイクのサンプリングのセンスはいま聴いても斬新で、発表が92年であることを考えれば、ヒップホップ的観点からも無視できない重要な一曲。

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カーネーション、現在入手困難なトリオ時代の名盤『LIVING/LOVING』、
『SUPER ZOO!』のアルバムが2枚組デラックス・エディションで再発決定!

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 2013年に結成30周年を迎えたカーネーション。トリビュート盤発売や精力的なライヴ活動で現在でも新しいリスナーを獲得しつづけている彼ら。現在のライヴ定番曲が多数収録されているCUTTING EDGE/avex所属時代(2002~2004)の作品はすべて廃盤=入手困難であったが、満を持してフル・アルバム『LIVING/LOVING』、『SUPER ZOO!』2タイトルの再発が決定。どちらもボーナス・ディスク付きのCD2枚組。ボーナス・ディスクにはアルバム未収録のシングルカップリング曲や限定盤収録の楽曲群を網羅。CCCD(コピーコントロールCD)での発売のみだった20周年記念シングル「スペードのエース」や同時発売のアナログ盤収録曲も晴れて通常音源/盤で収録される。
 また、デモ音源などファン垂涎の未発表音源も多数収録。

■『LIVING/LOVING Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2003年8月27日)
品番:PCD-18767/8 価格:¥3,000+税
最新リマスタリング
解説:岡村詩野

トラックリスト:

【LIVING/LOVING Disc 1 】
01. やるせなく果てしなく
02. 春の風が吹き荒れているよ
03. LOVERS & SISTERS
04. あらくれ
05. 永遠と一秒のためのDIARY
06. COCKA-DOODLE-DO
07. ハイウェイ・バス
08. 愚か者、走る
09. BLACK COFFEE CRAZY
10. USED CAR
11. OOH! BABY

【LIVING/LOVING Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 愚か者、走る (Rainy Day Demo)
02. ハイウェイ・バス (Home Demo)
03. LEMON CREME (Live Version)
04. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #1
05. ぼうふら漂流族 (Rainy Day Demo)
06. ダイナマイト・ボイン (Live Version)
07. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #2 "VENTURE CHRISTMAS TIME"
08. 放課後の屋上で
09. VENTURE BUSINESS SYMPHONY #3 "VENTURE MASSAGE 4 U"
10. 春の風が吹き荒れているよ (Home Demo)
11. あらくれ (Home Demo)
12. 永遠と一秒のためのDIARY (Home Demo)
13. COCKA-DOODLE-DOo (Home Demo)
14. USED CAR (Home Demo)
15. NO TITLE (未発表曲 Home Demo)
M1-9:限定生産シングルシリーズ『VENTURE BUSINESS Vol.1~Vol.3』収録曲
M10-15:未発表デモ

■『SUPER ZOO!  Deluxe Edition』

発売日:2014年6月18日(水)
カーネーション6月ツアーにて先行発売
(オリジナル・リリース2004年11月25日)
品番:PCD-18769/70 価格:¥3,000+税
発売元:P-VINE RECORDS
最新リマスタリング
解説:安田謙一

トラックリスト:

【SUPER ZOO! Disc 1】
01. SUPER ZOO!
02. レインメイカー
03. スペードのエース
04. 気楽にやろうぜ
05. El Soldado (フリーダム!フリーダム!フリーダム!)
06. あの日どこかで
07. カウボーイ・ロマンス
08. Miss Cradle
09. 十字路
10. ANGEL
11. 魚藍坂横断
12. RUNNIN' WILD

【SUPER ZOO! Disc 2:ボーナス・ディスク】
01. 夜の煙突 (20th Anniversary Party Version)
02. シケイロスのように (Recording Live At The Doors)
03. ANGEL (Home Demo)
04. ROSE GARDEN
05. MY LITTLE WORLD (Live Version)
06. BLACK COFFEE CRAZY (Live Version)
07. LOW PRESSURE
08. おそろいのお気にいり
09. OOH! BABY (Acoustic Solo version)
10. LOVERS & SISTERS (Acoustic Steel version)
11. SUPER ZOO! (Home Demo)
12. 十字路 (Home Demo)
13. 魚藍坂横断 (Vocal Demo)
14. LOW PRESSURE (Vocal Demo)
M1-3:20周年記念シングル『ANGEL』収録曲
M4-7:20周年記念シングル『スペードのエース』収録曲
M8-10:アナログ盤『LOVERS' FAVOURITES』収録曲
M11-14:未発表デモ

■2タイトル同時購入応募特典あり!(商品に応募券封入)

CARNATION official website
https://www.carnation-web.com/
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カーネーション、大阪&東京ツアーに旧メンバー、矢部浩志参加決定!
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 カーネーション、6月の大阪&東京ツアーまであと半月!
大阪&東京公演に旧メンバーの矢部浩志((MUSEMENT、Controversial Spark)の参加が決定!

 2009年に矢部がカーネーションを脱退して以来、直枝、大田、矢部の3人が同じステージに立つのは5年ぶり。本ツアーではカーネーションのエイベックス時代のアルバム『LIVING/LOVING Deluxe Edition』『SUPER ZOO! Deluxe Edition』の先行発売も行われる。

31年目のカーネーション
「タンジェリンとハイウェイ '14」
ツアーサポート:張替智広(Dr)、佐藤優介(Key:カメラ=万年筆)
Special Guest:矢部浩志(MUSEMENT、Controversial Spark、ex.カーネーション)

■大阪公演
2014年6月1日(日)
大阪 Shangri-La

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。

学割予約フォームは以下(大阪公演専用)
https://tangerineandhighway0601gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:231-868
ローソンチケット 0570-084-005 Lコード:54262
イープラス https://eplus.jp
モバイルサイトGREENS!チケット https://www.greens-corp.co.jp/

(問)GREENS 06-6882-1224

■東京公演
2014年6月8日(日)
東京 キネマ倶楽部

開場:17:00 開演:18:00

オールスタンディング
前売:5,000円 当日:5,500円(ドリンク別)
学割:2,500円
※学割チケットはプレイガイド発売はありません。
カーネーション公式HPからの受付のみとなります。
学割受付フォームは以下(東京公演専用)
https://tangerineandhighway0608gakuwari.peatix.com/

チケット一般発売 5月10日(土)
■Peatix https://tangerineandhighway0608.peatix.com
■ローソンチケット 0570-084-003 Lコード:70008 https://l-tike.com/
■イープラス https://eplus.jp (5/16より取り扱い開始)

(問)東京キネマ倶楽部 03-3874-7988


新しい夜へ - ele-king

 この間はアンディ・ストットとデムダイク・ステアのライヴを観に、西心斎橋のアメリカ村に行ってきた。大阪でのクラブ摘発が大々的にはじまった地域だ。そこには〈モダン・ラヴ〉のダークな美に身体を揺らすひとたちがいた。来月は同じ場所にトッド・テリエのライヴを観にいくのを楽しみにしている。……大阪の夜が、少しずつ、また賑わいはじめている。僕が「大阪の夜にはダンスがない」という記事を書いたのがちょうど2年前ごろのこと。法律はまだ変わっていない、が、何かはたしかに変わったのだ。

 いま思い返しても、2012年4月の〈NOON〉摘発はとりわけショッキングな出来事だった。大阪近辺に住む音楽ファンからすれば、そこが日夜おもしろい音楽を鳴らしている場所であることは周知だったからだ。ただ反射的に理不尽だと思えた摘発に対する怒りに任せて「ele-kingで何か記事が作れないだろうか」と野田努にメールした時点では、自分がその記事を書くとも思っていなかった。その後、摘発の事情についていろいろなひとに話を訊いたときも、「自分は法律のことは詳しくないし、現場の人間でもないし……」という声をたくさん聞いた。が、僕も当然法律の専門家ではないし、現場の人間でもなかった。どうしたものか……少し考えて、それでも文章を書いたのは、クラブという場所でおもしろい体験をしたことのある人間のひとりとして、そのとき大阪の街で起こっていたことの不気味さについて素朴に述べてみることからはじめられないかと思ったからだった。

 その約1年半後、僕が映画ページを担当している関西のファッション誌『カジカジ』の取材でドキュメンタリー映画『SAVE THE CLUB NOON』の宮本杜朗監督とプロデューサーである佐伯慎亮カメラマンに話を訊いたとき、それと近いことを話してくださった。「ただ、〈NOON〉という場所を知っている人間のひとりとして、『何かできへんか』って」。同作にはたくさんのミュージシャンがインタヴューとライヴ演奏で出演しており、それぞれの意見を真剣に語る姿がその場所に「集合」していた。僕は映画を観て、ああ、風営法によるクラブ摘発という問題がそれまで会ったことのない人間たちを引き会わせたんだと思った。僕は佐伯カメラマンとちょうど〈NOON〉が摘発された頃にぜんぜん別の仕事をしていて、「いやー、あれ、どうなるんでしょうねえ」と言っていたが、その1年半後、「いやー、こういう形でまたお会いするとは、ですねえ」などと言い合うこととなった(佐伯カメラマンの写真は紙エレキングvol.6の風営法の記事においても掲載されている)。多くのひとがそれぞれのやり方で、それぞれの意見を表明することとなった。Shing02は『Bustin'』というショート・ムーヴィーを撮り、踊ってばかりの国は「踊ってはいけない/そんな法律があるよ」と歌った。たくさんの議論が生まれたし、たくさんの交流が起こった。アメリカ村のクラブが摘発されたとき、新聞など多くのメディアがクラブに対して否定的なトーンだったのを僕はいまでもはっきりと覚えている。しかし、この2年でクラブ・カルチャーはそれまでよりも広い場所で見直されることとなったように思える。

 摘発があってよかったと言いたいわけではもちろんない。思い出のあるクラブや小さなハコがどんどんなくなっていったことはまぎれもない事実だからだ(その割にいわゆる「チャラ箱」は蔓延っているらしいし)。が、僕たちも多くを学んだ。少なからぬクラブが地域コミュニティから疎外されていた事実や、やはり近隣への騒音問題などがあったことをあらためて思い知ったし、クラブの営業が法律に対してきわめてグレーなままであったこともわかった。クラブ・カルチャーの本質とは何か、深夜に踊るために集まることの意義や魅力をいまいちど考え直さずにはいられなかった。あるいは25時までのパーティを楽しむことも覚えたし、着実に小さなイヴェントを成功させてきたSeihoは風営法時代の大阪の街が生んだ新世代のスターとなった。

 たくさんのことが変わった、が、まだ法律は変わっていない。多くのメディアでも大々的に報じられた〈NOON〉裁判の無罪判決には、僕はひとまずほっとしたというところだ。でないと先には進めないだろう。ひとつはっきりと言えるのは、風営法にただ中指を立てる時期はもう終わったということだ。ダンス文化推進議連による風営法改正案は今月中に国会に提出されるということだが、ここからは地道かつアクチュアルな展開が求められてくるだろう。「法律に詳しいひとたちがすることだから……」ではなく、ともに考えることを僕たちは経験してきたはずで、いまこそその続きが求められている。それに昨年末の紙『ele-king』における座談会でもまさに議題となったが、法律が改正されたからといってクラブ・カルチャーが絶対に盛り上がる保証なんてない。しかし、だからこそ新しいアイデアのチャンスだし、そこで楽しめることもあるはずである。
 ナイーヴな言い方かもしれない。が、この2年間、それでもいろいろな場所で音楽は鳴り続けていたし、ひとは集まっていた。次は、それをどうやって繋いでいくかだろう。僕は2年前、大阪の夜は決定的にある終わりを迎えたのだと本当に思った。けれどもいまは、また新しい夜が生み出されようとしているのだとたしかに感じられるのだ。

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