「Re」と一致するもの

special talk : Arto Lindsay × Caetano Veloso - ele-king

 どれでもいい、『ケアフル・マダム』から1曲抜き出してみよう。

WHERE HAIR BEGINS
WHERE IN THE AIR
LEAST WEIGHT DISPLACED
LIKES STRINGS AND SEAMS
CROSSED AND UNCROSSED ROADS

毛がはえはじめるところ
空中で
一番少ない重量が
とってかわった場所
糸や縫い目のように
交差し、交差しない道
“アンクロスト(交差しない)”(喜多村純訳)


Arto Lindsay
Cuidado Madame(ケアフル・マダム)

Pヴァイン

AvantgardeAvant PopBossa NovaNo Wave

Amazon Tower HMV

 ホウェアとヘアとエアーで韻を踏み、髪のイメージを糸や縫い目がひきとり、重力に逆らい逆巻き、縺れあったりあわなかったり――視覚と関係性の官能を二重写しにするこの曲はもとより、アート・リンゼイの歌詞のほとんどが短詩形で詩的ヴィジョンをもつのはDNAのころから変わらない。とはいえ、“Horse”の歌詞のネタ元が「リア王」だったとは、アートの基本姿勢が異質なものの同居にあるとしても、連想ゲームとしてはなかなかに高度である。なにがアートをアートたらしめるのか、詳しくは『別冊ele-king』を手にとっていただきたいが、歌詞、とくにポルトガル語での詩作において、アートはカエターノ・ヴェローゾを意識していたのはもって認めるところである。むろん、カエターノの歌詞は、ことばのイメージが科学反応をおこすアートの歌詞よりも、展開の妙味を読む散文詩的なものだが、詩の背負う世界の飛躍の距離と角度において通ずるものがある。
 本稿は『別冊ele-king』第五号に収録したアート・リンゼイとカエターノ・ヴェローゾの特別対談の、紙幅の関係で割愛した部分である。本書ではおもに音楽についての対話を掲載したが、以下はその前段にあたる、音楽におけることばについて、アートとカエターノふたりきりで語っている。いささか高踏的に思われる向きもあるやもしれぬが、やすっぽい感情やメッセージや思想によらない音楽のことばを考えるヒントに!

     

ドロレス・ドゥランの歌詞に感激したんだ。彼女の作詞は、ヴィニシウスより優れていると思うこともあった。(カエターノ・ヴェローゾ)

最初にぼくが歌詞に魅了されたうちのひとつは、ジミ・ヘンドリックスだったんだ。ある種ボブ・ディランに影響されているようなひと。(アート・リンゼイ)

アート・リンゼイ(Arto Lindsay、以下AL):歌詞と音楽の関係性について意識的に考えはじめたのはいつなの? 子どものころからだったの? コンポーザーか歌手か誰かきっかけになったひとがいるの? なにかそのへんのことについて憶えている?

カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso、以下CV):それが、子どものころからなんだ。ことばとメロディに関係がある、歌詞のある歌について考えることがあったんだ。そういうことが印象に残って、頭から離れなかった。子どものころからそういうことを考えるのが好きだった。ベターニア(註1)の名前も、ある歌にちなんでぼくが名づけたんだよ。あのときぼくは4歳だった。

AL:うわぁ。

CV:大好きな歌だったんだ。カピーバ(註2)の“マリア・ベターニア”。ペルナンブッコのひとだ。その曲はネルソン・ゴンサルヴェス(註3)が録音して、詞が大好きだった。「Maria Bethânia / Tu és para mim / A senhora do Engenho」の「Engenho(構想力、発明の才の意)」がなんなのかもわからなかったけど、なんて美しいんだって思ったんだ(笑)。

AL:はい。あははは。

CV:愛するひとに捧げた曲のタイトルで、至極美しい。成長しながら、そういうことに気づいていったこともある。なんというか、年長者からサインを受け取ったというか。少年だったころに、口笛などめったに吹かない、歌うことなんてなかった父が、母はね、よく歌っていて、いろんな歌を歌うひとだったんだけど、父はメロディとかそういうものが頭に入ることもなかったようでいっさいそんなことがなかった、その父が、誰かと話をしていて、こういったんだ「“Três Apitos(三つの笛)”(註4)はブラジルで作られた最高作だ。なんとすばらしい歌詞なんだ!」と。

AL:うわぁ。

CV:ぼくはすごくうれしい驚きを感じたんだ。ぼくがノエル・ホーザの“Três Apitos”に関心を寄せていたからさ。だって、曲のタイトルはすべてを語っていたし、どんな種類の笛だろうとあれこれ想像させるからね。工場から聞こえてくる汽笛なのか、「apito(笛)」はここで繰り返さないけれど、車のクラクションなのかと。最後にわかるわけだよ、曲の主役が夜勤の守衛なんだってことが。父は、曲が非常によくできているということがわかっていたわけだ。だからなおさら、歌詞について考えた。そうして、他にもいろいろあったわけさ。成長して、18歳のころだったか、ぼくはカイミ(註5)が誰よりも完璧だと思っていた。

AL:そういう理由から?

CV:歌詞と音楽の関係性においてね。「Você já foi a Bahia nega não / Então vá / Quem vai a Bonfim minha nega(愛しい人よ、バイーアに行ったことないのか?/じゃあ、行きなよ/ボンフィンに行く人はね……)」。人が語っているようだと思ったよ。だけど、メロディもそこにあって、語りのすべてのイントネーションが含まれているんだ。疑問符も、句読点も、それでいてこうコロキアル(話し言葉的)、誰かに話しかけているみたいでありながら完全に音楽なんだ。ぼくはそれにとても感激した。そうして、ぼくの音楽の素晴らしい二大素地でもあるノエル・ホーザとカイミのおかげでほかのことにも気がついていったんだ。どちらが先だったか憶えていないけどドロレス・ドゥラン(註6)とヴィニシウス・ヂ・モラエスの歌詞が世に出はじめたころのことを思い出すよ。どちらも同時期に出てきたと思う。ドロレス・ドゥランの歌詞に感激したんだ。彼女の作詞は、ヴィニシウスより優れていると思うこともあった。ヴィニシウスは詩人で、後から作詞家になったからね。彼の詩はより複雑で、彼女がしないようなことを書いていたけど、彼女の詞は音節ひとつひとつまでもが完全に音楽を成していた。アイデアもとても明確で、非常によく書かれていた。ヴィニシウスが優れているとわかるまで、時間がかかったくらいだよ。ドロレス・ドゥランはとても――

AL:カイミのようなんだね。とてもパーソナルで、コロキアル。

CV:そうとてもコロキアル。そしてとてもインスパイアされている。コロキアルなんだけれども、フラットではないんだ。その逆だ。

AL:ぼくの経験を語ると、ぼくはナット・キング・コール、それからドリヴァル・カイミをたくさん聴いた。青春時代の初期に母のレコードを聴いていたんだ。印象に残るものはあったけれど、歌詞と音楽にかんしてそこまで意識的に考えたことはなかった。最初にぼくが歌詞に魅了されたうちのひとつは、ジミ・ヘンドリックスだったんだ。ある種ボブ・ディランに影響されているようなひと。

CV:そうだね。すごくボブ・ディランっぽいね。

AL:完全にボブ・ディランに影響されている。

CV:彼がボブ・ディランの詞が大好きだったのがわかるものね。

AL:彼はそこからスタートして、だけどちょっと息切れしちゃった感じがあるよね?

CV:そう。

AL:ボブ・ディランより音楽的だとも思うんだ。彼はちょっと前衛的なアティテュードがあった。厳密にいえば、ボブ・ディランのケースではなかった。ボブ・ディランは結果的に前衛的になったけれど、ジミ・ヘンドリックスのようにみずから前衛的なスタイルをとらなかった。
 ボブ・ディランはまた詩的な意志を、他のアヴァンギャルドとは異なる詩的なアヴァンギャルドをミックスする。詩人のアヴァンギャルドで、それとフォークロアな音楽との類似性を認識させるね。

CV:アメリカのフォークロアとブルースもね。

AL:ブルースとかカントリーとか古いものすべてね。ヒルビリーとかそういうのもすべて。

CV:フォークとカントリー・ブルースもね。じつはぼくにとってアメリカの曲の歌詞も、とても存在感があったんだ。英語がまったくしゃべれないときから。いまはすこししゃべるけど、あのころはまったくしゃべれなかった。フランク・シナトラとか、ビリー・ホリデイとか、中学生のころみんなと同じように英語を勉強していたからね、なにを歌っているかわかったんだ。でもロックンロールが登場してからは、もう全然わからなくなっちゃった。

AL:そうだね。昔は理解できるように作詞がされたけど、ロックの後は、理解されないように作詞されるようになったからね。

CV:ふたつの意味でね。ことばそのものの選択という意味でも、発声の仕方においても。

AL:どちらかというと発声の仕方においてだと思う。

CV:でもどちらもだよ。歌詞を読んでもあんまりさ……わかる? なんか投げられた感じのフレーズで聴くひとの頭に残るような、とても刺激的じゃない? 聴きながら、歌詞を辿っていける感じのものではないというか……

1) Maria Bethânia:1942年生まれのカエターノの4歳年下の妹。トロピカリズモ周辺に出入りし、歌手デビューした65年の“Carcará”で早くも頭角をあらわす。78年の『アリバイ』でブラジル国内に広く知られた。2005年の『キ・ファウタ・ヴォセ・ミ・フェス(Que Falta Você Me Faz)』は全編、文中にも言及のあるヴィニシウス・ヂ・モラエスの楽曲からなるアルバム。カエターノは軍事政権下のブラジルを脱し、亡命したロンドンで1971年に発表した3作目の『Caetano Veloso』に妹に宛てた手紙を模した同名異曲を英語で吹き込んでいる。

2) Capiba(1904~1997):本名ロレンソ・ダ・フォンセカ・バルボサ。ノルデスチ(ブラジル北東部)のカーニヴァルを象徴する音楽形式フレーヴォの作曲家として知られる。

3) Nélson Gonçalves(1919~1998):リオグランデ・ド・スル州生まれ、サンパウロ育ちのシンガー・ソングライター。1950年代(カエターノの幼少期)もっとも人気を集めたラジオ歌手のひとりだった。

4) 20世紀ブラジルのポピュラー音楽を代表するシンガー・ソングライター、ギター/マンドリン奏者ノエル・ホーザ(1910~1937)が1933年に作曲した楽曲名。

5) Dorival Caymmi(1914~2008):バイーア州サルヴァドール出身の歌手、作曲家。のちにハリウッドで成功するカルメン・ミランダの映画『Banana-da-Terra』(1933年)に“O Que É Que A Baiana Tem?”を提供したことで名を知られる。54年に『Canções Praieiras』でデビュー。アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトにも影響を与えた。カエターノが文中であげているのは“Você já foi a Bahia(君はもうバイーアに)”の一節。

6) Dolores Duran(1930~1959):ボサノヴァ成立前の1950年代に活躍した歌手、作曲家。ジョビンの“Por Causa de Você”、“Estrada do Sol”などの共作者でもある。

[[SplitPage]]

DNAのやることは強烈だった。ロックの先端の、エッジというか、ぼくには非常に印象が強かった。ラディカルな経験を思い起こす。歌詞はそれでいて、コミュニケーションへの切迫感があった。(カエターノ・ヴェローゾ)

理念そのものにとても迷いや疑問があった。芸術に横たわっていた哲学的な理念や、60年代からきた、それらの理念の源に疑問があった。それで、ぼくたちはなにか突っ込んでいこうとするところがあったんだ。(アート・リンゼイ)

AL:ヘンドリックスのやったことがおもしろいと思うんだよね。ヘンドリックスは、三つ、四つ、五つくらいのパターンでことばと音楽とを関係づけるというか。ポルトガル語でなんて言うのかわからないんだけど、彼は「ポエティック・デヴァイス」のレパートリーをもっていた。詩的な仕掛けというのか、くりかえして、拍子やアップ、ダウンと関係があって、抑揚とリズムと……彼は早くに亡くなったんだよね。彼が27歳で亡くなったのを忘れるくらい。若すぎたよね。ぼくは作詞をはじめたとき、あなたの最初のインプレッションと似たような、歌詞を会話のようにしたかった。しかしよく聴いて、文字を追えば、より複雑で抽象的で独特なものになるように。歌ったときにまるで自然に響かなければいけないと。DNAの初期の歌詞はすべてそうだった。まるでなんというか……

CV:うん。DNA(の曲)は、ひとがまるで差し迫って主張している感じする。

AL:そう。とても……プレッシャーがかかっていた。

CV:そのスタイルに真の緊急性があるようだった。とても美しいと思う。とても、なんというか……DNAのやることは強烈だった。ロックの先端の、エッジというか、ぼくには非常に印象が強かった。ラディカルな経験を思い起こす。歌詞はそれでいて、コミュニケーションへの切迫感があった。フレーズがとても――

AL:投げられている感じ?

CV:そうなんだけど、よく聴くと、各パーツとても統合的で、いろいろなものが含まれている。とても濃い。

AL:ぼくが思うに、それはあの青春、衝動、願望とがすべて混ぜ合わさった――

CV:青春のバイタリティだね。

AL:そう、青春のバイタリティ。理念そのものにとても迷いや疑問があった。芸術に横たわっていた哲学的な理念や、60年代からきた、それらの理念の源に疑問があった。それで、ぼくたちはなにか突っ込んでいこうとするところがあったんだ。

CV:ぼくは66年から67年ころに確固たる意志をもってそうしようとしはじめた。ぼくは、ほんとうはわざと、子どものときに会得した美的感覚に背いたんだ。

AL:なるほど。でもその後背いたことにさらに背いたよね。

CV:そうだね。背いたことに背いた。いくつか美しい作詞をしたからね。

AL:いや、待って。たくさんだよ。

CV:幼少期から青年のときまで身につけた美的感覚に背いた、その多くが、世に出てきた当時は誰にもそう美しく捉えられなかったんだ。いまでこそ、容易に美しいと認識されるけれど。

AL:その通りだね。英語ではテレグラフと呼ばれるものがあるんだ。なにが言いたいかというと、ある文章が、その方向に要約されるというか。文章それぞれが、世界観がある。別々の異なった世界観が。

CV:それは、ぼくよりあなたのほうが強いよね。ぼくの作品にもいくつかそんなところに行き着くものがあるけれど、でもあなたのほうがずっとそうだよね。でも、よく考えてみたら、アメリカ文学の伝統は、ブラジル文学の伝統というかポルトガル語文学のそれよりその傾向があるよね。テレグラフに寄りかかるところが。

AL:そうね。でも、おもしろいよね。例えば、20世紀の終わりの詩をみてみると、ブラジルの詩はとても具体的で、なんというか、ミニマリストだ。

CV:そうだね。ミニマリストだね。長詩だったビート派と同じ時代にしてね。

AL:ジョン・アシュベリー(註7)とか、そのへんはみんなとても長いよね。苦痛にすら感じるほどに、終わりのない感じ、リズムがない。だけどこの会話とアシュベリーを関連させられる唯一の共通点はコロキアルということだ。彼はさまざまな文章を寄せ集めて、混ぜ合わせて、すべてどこからかとってきて小さな変更を施しただけのような。

CV:ちょっとレディ・メイドみたいなね。レディ・メイドのパーツを寄せ集めた感じ。でも興味深くて、美しい。彼特有の良質な空気感をそれで作り出すから。でも、おもしろいね、あなたがそう話し始めたとき、エズラ・パウンド(註8)について話しているように聞こえたよ。そうそれで、アシュベリーは、リオで見たことがあるよ。彼はリオでおこなった講演で、エズラ・パウンドは大嫌いだと語っていたよ。エズラ・パウンドが書いたものはすべて醜いといったんだ。「ugly」という言葉を使ったからね。彼はエリザベス・ビショップ(註9)が好きだと語っていた。彼にとってアメリカの偉大な詩人であると。

AL:うわぁ。クレイジーだ。

CV:フラメンゴ公園での講演だった。

AL:憶えているよ。たしかワリー(註10)とシーセロ(註11)とが招いたんだ。

CV:そう。それにジョアン・ブロッサもね。ジョアン・ブロッサと、それにジョアン・カブラル・デ・メロ・ネトもね。

AL:ジョアン・カブラルもいたのは知らなかった。

CV:ジョアン・カブラルはすごかったよ。信じられないようなことがあったんだ。ジョン・アシュベリーは唯一のアメリカ人だった。講演の最後に客席からの質問も受けたんだ。3人に対しての質問が客席からあった。こんな質問だった、「ご自身の作品を、声に出して読むことは好きですか?」と。ジョアン・カブラル・デ・メロ・ネトを敬愛するジョン・ブロッサが最初の回答者だった。彼はこう答えた「私にとって詩は、自分自身で声に出して読み、満足できたときにはじめて存在する。だから、ひとり読み上げて、詩の音も含め楽しむのだ」と。それから、ジョアン・カブラルにマイクが渡って彼はこう言った「いや。私は自身の詩を読むのが大嫌いだ。正直、この世にぼくの本を手にとって、ぼくの詩を声に出して読む人がひとりたりともいてほしくない。ぼくは年齢とともに視力が弱くなってきたが、耳が聞こえなくなった方がよかった」って。

AL:うわお。あはは

CV:それで、アシュベリーにマイクが渡って、「ご自身の詩を声に出して読まれることに対してどう思いますか」と質問されて彼は言ったんだ。「それでお金がもらえるならね」と(笑)。それぞれの特徴が表れているよね。ジョン・アシュベリーのユーモア・センスはとてもアメリカ的だ。この返答はハードな皮肉であると同時に、アメリカ的なものを反映している、アメリカン・ジョークだよね。

AL:とてもアメリカ的だ。わかる気がするんだ。エズラ・パウンドをいま読むと、彼はとても他の言語の形式を模倣する人だったのがわかる。それを英語で読む人は――

CV:まるで英語ではないように感じるんだね。

AL:なにか偽りのようなものがあって、まるで彼が英語そのものに喜びを感じていないように感じるんだよ。

CV:ぼくは英語話者ではないのでわからないけれど、エズラ・パウンドの作品をいくつか読んだとき、そのページでぼくは迷子になったよ。中国語の要素があったり、表意文字があったり。文章はオリエンタルなものに似ているかと思えばコロキアルな、ちょっとアメリカっぽい平俗なものが入ってくる。

AL:コラージュのようだよね。

CV:そうして語調が変わる。すごく魅力的だったけど、ぼくは迷子になってしまったよ。でも、ひとつ言っておくと、インターネットとかいう技術のおかげで、エズラ・パウンドが詩を読んでいる映像を見たんだ。なんとも美しいんだ。叫びがあって、そのうちに重低音な声ですごくコロキアルになって、そのあとまた別のものがくる……すばらしく美しかった。詩が非常に美しくなる。

AL:探してみる。彼が読んでいるのは見たことがない。

CV:ぜひ聞いて見てほしいね。

AL:ジョン・ケージ(の朗読)を聞いたことある?

CV:ケージはリオで見たよ。直接、読んでいるのを見た。

AL:彼自身の文章を?

CV:(ジェームス・)ジョイスの文章を(註12)。

AL:彼自身が語を刻みながら?

CV:そう。

AL:ぼくはニューヨークで見たよ。いままで見たなかで最高なパフォーマンスのうちのひとつだった。

CV:最高だよね!? すばらしいと思ったよ。彼は『フィネガンス・ウェイク』の一節を読むんだ。

AL:そう。ハシッ、キッ、ハシッ、キッ(とケージを真似る)。ぼくと同じ作品を見ているかわからないけど、彼は言葉を刻むんだ。

CV:ほんとうに小さなピースにしてしまう。

AL:音節の小さな一部だけが聞こえるんだ。

CV:子音の一部のあとに文章全体とかね。

AL:ぼくも見て、すごく感激したんだ。パフォーマスとして。経験として。芸術の……なんだか定義しないでおいて、とにかく信じられないパフォーマンスだった。

CV:T・S・エリオットが自身の詩を読んでいるのは見たことある?

AL:聞いたことがあるけど、実のところあまり憶えていないよ。エリオットを読むのは大好き。

CV:美しいよね。エズラ・パウンドのような苦しみはない。すべて美しく、英語も美しい。でもエズラ・パウンドが読んでいるのを聞くと、そっちの方がもっと好きなんだ。

AL:あなたがそういうのなら聞かないといけないな。エリオットは、ひととして最悪だったというか、抑制された、存在することに問題を抱えていたというか。プロテスタント的なものが強いというか。

CV:カトリックに改宗したんだよね?

AL:より一層人間らしくなくなっていったというか……

CV:それとも、英国国教か。彼は、アメリカの近代的なプロテスタンティズムよりもクリスティアニズムのよりフォーマルな伝統的なほうへ行ったんだね。

AL:あの当時はなかったものだけど。でも……ぼくはとてもよく聞いたのはバース(註13)だ。音読するバース…

CV:それは聞いたことがない。

AL:なんと! これこそ信じられないほどにすばらしいよ。彼はとても皮肉的で、本は……読んだことある?

CV:読んだよ。

AL:彼はとても気を楽にしてくれるというか…

CV:クレイジーだよ。

AL:そう、クレイジー。でもそこまでではないよ。2回読むと、とてもよく書かれているとわかるんだ。

CV:そうだね。とてもよく書かれている。

AL:彼はとても調節された韻律をもっていて、安定していて、とても……とても皮肉的でおもしろい。エリオットとはとても異なっていて、パウンドが音読しているのは見たことがないけれど、彼は南部の人で、アフリカの影響を受けたアメリカの要素があって、リズムがあり、グルーヴがあり、流れるようなグルーヴ感のある読み方なんだ。(了)

7) John Ashbery(1927~):現代アメリカを代表する詩人。アッシュベリーとも。作風はポストモダンを経由した実験的なもので、米国の主要な文学賞を数多く受賞している。翻訳書に『波ひとつ』(書肆山田)、『ジョン・アッシュベリー詩集』(思潮社)。

8) Ezra Pound(1885~1972):アイダホ州ヘイリー生まれのアメリカの詩人。20代でヨーロッパに渡り、イギリスでイェイツやT・S・エリオットらと親交をもち、パリ、イタリアと移り住むなかで、長文の自由韻律詩を発表し、俳句、漢詩、能などの東洋文化の紹介者として活発に活動した。第二次大戦中、ムッソリーニを支持し反ユダヤ主義をとったかどで告発され、米国に強制送還ののち、精神障害を理由に12年の病院暮らしをおくる。退院後イタリアで没したが、死後20世紀モダニズム運動の中心人物と見なされた。

9) Elizabeth Bishop(1911~1978)アメリカの詩人。マサチューセッツ州ウースター生まれ。1951年の南米旅行で立ち寄ったブラジルに15年間居住し、その間発表した『北と南/寒い春』でピューリッツァー賞を受賞。ほかに全米図書賞、全米批評家協会賞の受賞歴もある、20世紀アメリカを代表する詩人のひとり。

10) Waly Dias Salomão(ワリー・サロマゥン、1943~2003):詩人、作詞家、音楽プロデューサー。トロピカリズモ運動の立役者のひとりであり、ガル・コスタの“Vapor Barato”やベターニアの“Mel”、“Talisma”の作詞者でもある。

11) Antonio Cicero(アントニオ・シセーロ):1945年、リオ・デ・ジェネイロ生まれのブラジルの詩人、作曲家、作家。1993年ワリー・サロマゥンとともに「Banco Nacional de Idéias(アイデアの国立銀行)」をたちあげた。スペインの前衛詩人ジョアン・ブロッサ、具象派の詩人ジョアン・カブラル・デ・メロ・ネトらが参加した後述のイベントもその一環だと思われる。

12) ケージが講演などで話すことばを作曲作品と見なしていたことは主著『サイレンス』(水声社)所収の文章などでもあきらかだが、カエターノの言及する、ジョイスの集大成『フィネガンズ・ウェイク』を朗読するのは1970年の“ロアラトリオ”。ケージはこの曲で、『フィネガンズ・ウェイク』からのランダムなテキストの引用と、作中に言及のある音を録音した音源と、小説に登場するダブリン市内の環境音とを組み合わせる。

13) ピンチョンらとならぶ、米国ポストモダン文学を代表する小説家ジョン・バース(John Barth、1930~)を指すと思われるが、バースが朗読活動をおこなっているかは不明。またバースは南部出身でもない。発言者に問い合わせたが、期日まで回答を得られなかった。追って修正の可能性あり。

Shobaleader One - ele-king

 続・音楽を破壊すべし――スクエアプッシャー率いる覆面バンド、ショバリーダー・ワンからふたたびele-king編集部にインタヴューが届けられました。相変わらずとても興味深い内容です。
 待望のアルバムは3月8日に日本先行でリリース。4月には来日ツアーも決定しています。東京(4/12)、名古屋(4/13)、大阪(4/14)の3都市をまわります。リリースおよび来日公演の詳細はこちらをご覧ください。
 それでは以下、新たなインタヴュー全文をお届けします。

Company Laser :俺がギグを悪用してるなんて話、信じるなよ。その件で何か聞いてるか?

Squarepusher:ショバリーダーが浮遊しているとかっていう話なら幾つか。でも俺は自分で見たことないから、そいつが本当に良いものなのかどうか確かめたいね。そしてこの馬鹿げたミッションのことは忘れるんだ。

■では、あなた達はフォローアリーダー(※先導者の後を追え)に従うんですね。それでは意味がないのでは? それについてはどう感じてます?

Strobe Nazard:俺がどれほど無意味に感じてるかって?

Squarepusher:自分達が模倣されているかどうかについては、あまり考えても仕方ないと思う。プロテクトが必要なのは、アイディアを自分自身で実行した時だ。ミュージシャンはそれぞれが一定量の仕事をこなしてこそ真似できるようになる。創作の技法はどこにでも転がってるんだよ。

■ですが、ミュージシャンが進歩するにつれ、次のような発言やオリジナリティのある音楽を残せるようになるのは確かですよね。

Arg Nution:オリジナリティを気に掛けるやつなんているのかよ?

■ですが、音楽で表現する様々な精神状態に到達するために、人は特別な技術を用いる努力をしてはいませんか? 様々な音楽の感じ方を体験したり、音楽的アイディアを得る方法の1つとして、睡眠不足があると言いますよね。あるいは意識に変化をもたらすような薬物(サブスタンス)についてはどうでしょう?

Arg Nution:俺の本質(サブスタンス)に変化をもたらしてみるってのはどうだ?

■はい?

Squarepusher:こいつは音楽の良心となるべきものなんだよ。だが様々な薬物の使用というのは、人をそういった主張へと導く建物を取り巻いている神秘性を経験するための安易な手段なのさ。さもなければ、そうあるべきだとされる態度を演じるために、人は危険な心理的領域に踏み込んで、アーティファクト(人工物・芸術品)を持ち帰って来なくてはならない。そこで音楽の気体状態が形成されるんだ。このアーティファクトは、そういった移行サービスにとって申し分のない音楽的な精神状態にすぎない。これはミュージシャンとしてのブラウザの概念だが、俺にとってはむしろプロとしての作品に近いね。

■ということは、もしかしたら私達は、ミュージシャンが自分達の音楽的な努力について語っていても、そういった話を信じるべきではないのかもしれませんね。

Arg Nution:信じられるなら、どんなおとぎ話でも信じればいいさ。

■大抵のミュージシャンが口にすることだけれども、実際には嘘をつく機会がなかったこと、何か思い付きますか?

Company Laser:ミュージシャン達がビジネス会議を開くおかげで、圧力がかかっているテーマについては有意義なことは何も語れないってのはよくあるね。

Squarepusher:そういう厄介な状況では、アーティスト自身が満足するようなことは何も伝えられないんだよ。伝記的な部分に空白状態があるのは忌み嫌われる。そして他の誰かがケチをつけるんだ。それどころか大抵の場合、自分が言ったハッタリやデタラメな話を、他の連中が膨らませる方が望ましいのさ。

■では、このインタヴューでこれまで語ったことの中にデタラメはありますか?

Arg Nution:「では、このインタヴューでこれまで語ったことの中にデタラメはありますか?」だとさ。

■私をイラつかせようとしてるんですね、でも今、現実が段々と……どうぞ、真似してもいいですよ。

Strobe Nazard:俺達の発言は全部デタラメなんだよ!

Squarepusher:Strobeは矛盾してるのさ。今言った一文は「うそつきのパラドックス」(※「この文は嘘だ」という命題は真か偽か、いずれにしても矛盾するということ)の一例みたいだろ。

Company Laser:その問題の方が面白いね。むしろ、自分の作品について語っているミュージシャンの話が真実かどうかなんて、そんなの誰も気にしないだろ? って感じ。音楽業界がこれまで築いてきたのは、常軌を逸した物語を求め、それを聞いたら真偽にかかわらず議論を終わらせるっていう土壌だろ。証明書の有効性を公表せずにいる方が都合がいいって話でさ。それで、人の発言について真実を語るのが難しくなる。事実に基づく報告よりも、大げさに誇張した表現をする熱意の方が受け入れられるんだよ。

■特に現在の政治的意思の状況を考えますと、真実を語るということは重要なんではないでしょうか?

Strobe Nazard:俺達の発言は全部本当だよ!

■それが疑わしくなり始めてきたんですよ!

Arg Nution:俺はこうしてあんたと同じ部屋に腰を下ろして喋ってるってことに疑問を感じ始めているぜ。

Company Laser:この件に関して、まともに話さなくてもいいという権利があることが、事態を難しくしているんだよな。俺達もちょっと冷静にならないと。今の政治情勢は、この宇宙の他のどの場所ともかなり異なってるだろ。もしかしたら政治的な部分では合意が成されていて、正直であることが期待されていると分かれば、あんたもホッとできるかもしれない。地上の問題については、何かの破壊を促し、そいつをぶっ壊しているボーブ(愚かな奴ら)は受け入れられないというのが、あんた達の間で浸透している一般的な考えだろ。互いの結びつきを断ち切り続けているというのは嘘だね。

■でもあなたは先ほど、私が嘘ばかりついていたと言いましたよね?

Strobe Nazard:彼は嘘をついていたね。

■ちょっと目まいがしてきたんですが……窓を開けていただいてもいいですか?

Company Laser:俺は想像の星に魚を集めさせ始めたんだ。そこには何でも加えられる、特定の星の魚(ヒトデ)に関するどんな思い出でも、どういった見た目の魚の星がいいかという例でもいい。俺は収集を始めているんだ。

Squarepusher:俺にも幾つかあるぜ、ちょっと待ってな。

Arg Nution:気分は良くなったかい?

■ええ、大丈夫だと思います。あなたがアイディアを生む際、あらゆるネタを集めまくることが重要なのはどうしてでしょうか? 例えば“50 Cycles”という曲がありますが、詩が頭に浮かんで、あなたのクリエイティブな文体がそのプロセスに寄与するよう、そういった言葉が聴こえてくるということですか?

Squarepusher:でも俺は、テキスト形式の音楽という形で曲を書くのが楽しいんだよ。曲は注意を払わないやり方で書かれるべきだからね。俺はそういうことはしないから。名前を電車の軌道整備士(※ジェイムズ・ジョイスの小説『ユリシーズ』に、スクエアプッシャーと呼ばれる軌道整備士が登場)から取った場合、どこまで許されるのかってことを言いたくて書いているのさ。

■正にその通りですね、制約なんて、なぜあるんでしょうか? 冷蔵庫のボトル入りの水をお渡ししても?

Company Laser:あんた、名前は?

■私の名前はスティーヴンです。

Arg Nution:でも俺の名前はインタヴュアーじゃなかったっけ?

 アルバムおよび来日公演の詳細はこちらから。

Laurel Halo × Hatsune Miku - ele-king

 昨年ベルリンのCTMフェスティヴァルで発表されたローレル・ヘイローの新しいプロジェクト、「スティル・ビー・ヒア(Still Be Here)」。これはクリプトン・フューチャー・メディアのソフトウェア「初音ミク」にインスパイアされたもので、Mari Matsutoya、Darren Johnston、LaTurbo Avedon、Martin Sulzerとの共同プロジェクトとなっている。そのスティル・ビー・ヒアが1月31日、“Until I Make U Smile”および“As You Wish”と題される2曲のMVを公開した。

 大きな文化現象となってしまったことで、かえってその勘所が見えづらくなってしまった感のある初音ミク~ボーカロイドだが、近年少しずつ音楽の文脈からそれを捉え直す流れが生まれてきているように思われる。かつてデトロイト・テクノにどっぷり浸かり、OPNことダニエル・ロパティンらと共同作業をおこない、〈ハイパーダブ〉から作品を発表してきたローレル・ヘイローのようなアーティストが、まさにいま初音ミクとがっつり向き合うというのは、何かひとつ大きな突破口になるような気がしてならない。今後の動きに注目である。

https://www.aft3r.us/still-be-here/

P Money - ele-king

「俺はここにいる」というメッセージ

 10年以上のキャリアでmixtapeやEP作品をハイペースで発表し続けているロンドンのMCピー・マニー(P Money)が、15曲収録のデビュー・フル・アルバム『Live + Direct』を〈Rinse〉からリリースした。これまで、ダブステップやドラムンベースのトラックで名前をご存じの方もいるかもしれないが、彼はキャリアの中で一貫してグライム・サウンドでラップしてきた。今作もトレンドであるトラップの影響を受けたグライム・チューンの上でマイクを握った曲が多く、USヒップホップから入った人でも聴きやすい。

 さて、オープニングトラックのIntroを聴いたとき、このアルバムが単なるヒット曲の寄せ集めではなく、ひとつの作品であることを確信した。シーケンスが重なり合っていく4分のトラックの上で、不在の父に対する報われることのない期待、義理の弟、彼のグライム・クルーとなるOGzとの出会い、トラブル、母への愛をラップする。そして、なぜアルバムを出すのか? という創作の原動力につながる、複雑な感情が表れている。

I had hate for my creator
Only used to see him in the paper
Mum tried to get me to stop stressing
Looking at the front door, wondering and guessing
Now there ain't a thing that could make me forgive him
Once upon a time my dad asked me how old I was on my birthday
Man I thought he was kidding

俺はお父さんを嫌ってた
彼は紙の上でしか見たことがなかった
ママは俺が父にこだわらないようにさせた
家の玄関を見て、考え、想像した
今でも彼を許すようなことはない
いつか、お父さんは誕生日に俺が何歳になったか聞いた
俺はからかわれてるかと思った
(“Intro”)

 15歳の時、濡れ衣で裁判所に呼び出されたP Moneyはそんな父に頼ろうとする。

I called my dad, sent him texts, left him voicemails
But the guy wouldn't pick up
And there's me thinking he would've fixed up
Then randomly out of the blue I got a text from him
Saying "it's gonna be alright, good luck"
Oh my days, what the fuck

お父さんに電話した、テキストを送ってボイスメールを残した
あの男は電話を取ろうとしなかった
俺はお父さんがこの問題を解決できたと思ったんだ。
そして、出し抜けにこんなメッセージが届いた
“きっと良くなるさ、グッドラック”
なんてこった !
(“Intro”)

 TR.02“Panasonic”では、Street Fighterのサンプルとともに、イギリスのグライムにおける自身の存在をボーストし、Stormzyを迎えたTR.04“Keepin' It Real”では、音楽に対する姿勢とフェイクとリアルの境目についてこだわる。OGzを率いて自身が運転するバンで周る彼が言うなら、それはとてもリアルな表現である。

 Terror Danjahの歌フックとP Moneyのスキルが冴える(複雑な)恋愛ソングTR.06“Contagious”、信頼に足る「Man」であるかをへらへら近寄ってくるクソ野郎に問うた“Don't Holla At Me”を挟み、TR.11“Gunfingers”へつながる。

 Skepta、Wiley、JMEをゲストに迎えたこの曲からは、アルバム・ジャケットでBorn & Bred フェスティヴァルのステージから、学生が集まる小さなクラブまで全てのショーをロックするP Moneyの姿が目に浮かんだ。そして、ラスト・ソングの“10/10”へ向かっていく。音が注意深く選ばれたSir Spyroのシリアスな雰囲気漂うトラックの上で、彼はイギリスのManchester、Bristol、Leedsなど各都市でショーを完全にロックする。フードを深くかぶった彼のライヴ映像が入るMVも素晴らしい。

 ラップは声なきものに声を与えると言われる。そして、P Moneyは「俺はここにいる」というメッセージを繰り返し発している。それは紙の上でしか知らない父に向けて、パーティでたまたま遊びに来たお客さんに向けて、ビックフェスのショーを観にくるファンに向けて、生で直接伝え続けることだ。ダブステップからグライムへとトレンドが移り変わっても、彼のラップはUKにあり続けるという宣言でもある。

Jesse Osborne-Lanthier - ele-king

 ジェシー・オズボーン・ランティエは、ベルリン/モントリオールを拠点とするサウンド・アーティストだ。彼はソロに加えて、バナルディーノ・フェミニエーリとのフェミニエーリ・ノワール、ホボ・キューブズとのザ・エイチ(The H)というユニット活動もおこなっており、2015年にはロバート・リッポックとの『タイムライン』を、2016年にはグリーシャ・リヒテンバーガーとの『C S L M』をリリースするなど、コラボレーションにも積極的。リリースは主にカセットとデータ(リヒテンバーガーとの作品はLP/データ)を中心におこなわれ、〈ホエア・トゥーナウ?〉や〈ハルシオン・ヴェール〉など、知る人ぞ知るレーベルから作品を送り出してきた。そのサウンドは、聴き手の知覚の磁場を不安定に拡張するかのように強烈である。

 そのジェシー・オズボーン・ランティエが、2016年に〈ハルシオン・ヴェール〉からリリースしたアルバムが、この『アズ・ザ・ロウ・ハンギング・フルーツ・ヴァルネラビリティーズ・アー・モア・ライクリー・トゥー・ハヴ・オールレディ・ターンド・アップ』である(以下、『ATLHFVAMLTHATU』)。私には、この『ATLHFVAMLTHATU』こそ、2010年代のインダストリアル/テクノの現在形を示すアルバムに思えた。ヒップホップやグライムをルーツに持っているように聴こえながらも、それらの要素は、ノイズの中に焼け焦げ、まるで残骸のようなノイズとして放出されていたからだ。融解ではなく、焼き尽くされた感覚。まさに、この不穏な時代を象徴するような感性である。その衝動の連鎖のごときサウンドは、メタリックで乾いた感覚をリスナーの耳に残す。まるで鉄屑の美学のように。彼のリズムは、自身の衝動的な律動そのものだ。やや古い映像だが、3年前のライヴ映像を観ても、それはわかる。

 肉体の衝動。そして光の衝撃。この強烈な暴発感覚は、本作『ATLHFVAMLTHATU』でも同様だ。衝動と鉄屑のように乾いたサウンドは、より緻密に、強靭になり、同時に、一種の(奇妙な)ノイズ・レイクエム的な終末感覚を醸し出していた。そう、2010年代のインダストリアル/テクノが、ある種の同時代性を持っていたとするならば、この「世界が終わっていくこと」の意識/無意識を、強く反映した音楽だったからではないか。じじつ、1曲め“ノース・フェイス・キラ”から、まるで「空爆」のような壊れたビート、爆発のようなノイズが炸裂する。まさに「世界の終わり」の感覚である(むろん、それが一種のフェイクであったとしても問題はない)。

 だからこそアルバムの終曲=終局である“ヴェロシティ、バイロケーション、パイロキネシス”は、どこか讃美歌のように響いているのだろう。爆風と瓦礫。その果てにあるハーモニー。なんという美しい構成か。まさに崩壊していく「世界」へのノイズ・レクイエム。そして、その終末感覚こそが、本作を含む2010年代的なインダストリアル/テクノ、最大のテーゼといえる。いわばダークで物語性の強いテクノ。「ダーク・テクノ」。

 しかし、である。2017年以降、それは一定の役割を終えることになるのではないか。ノイズだとか、ミュージック・コンクレートだとか、エクスペリメンタルだとか、アンビエント/ドローンだとか、それら言葉の記号性が有効性を持ちえた時代が終わったともいえるし、より内実を伴いつつ、現実的な応用の時代に入ったともいえるし、そもそも世界は、いったん清算すべき時の直前に来ているのが、いまや明確になったからだ。世界は終わる。ゆえに物語は終わった。では、世界の無意識を反映する先端的音楽に、どのような方向性があるのか。ひとつは、ヴァーグのように、この世界のダークを鏡のように映しだすブラック・メタル・ダーク・テクノへと進む道があるかもしれない。

 もうひとつは霧のようなアトモスフィアがさらに押し進まれていく傾向だ。これはウォルフガング・ヴォイトが2016年のタスク・フェティヴァルで披露したライヴ/映像が、そのモデルとなるのではないか。現象の生成。

 さらに、もうひとつは、より電子音の即物性や生々しさを追及するモードである。近年のモジュラーシンセ・ブームを経由したものだが、より電子音パルスの衝撃が聴覚と体を揺さぶるタイプのものだ。それはもはやモノのように、そこにある。その本年最初の重要な作品が、〈ラスター・ノートン〉からリリースされたジェシー・オズボーン・ランティエのEP『アナロイド、アンライセンスド、オール・ナイト!』になるのではないか、と思うのだ。

 『アナロイド、アンライセンスド、オール・ナイト!』は、パリでのライヴ・セットの2時間前に制作・録音されたものだという。そのせいか収録された全4トラックは、即物的かつ即興的電子音の運動感覚とジェシー・オズボーン・ランティエらしい前のめりのメタリック・リズム感が生々しく横溢しており、シンプルながら、まさにパルスの衝撃のような中毒性がある。このマテリアル・オブジェクト的なパルス感覚こそ、2010年代的なインダストリアル/テクノ「以降」を示す兆候に思えてならない。
 私はこのEPを聴きながら、イヴ・ド・メイがベルギーの〈アントラクト〉からリリースした『レイト・ナイト・パッチング 1』を思い出した(なんとなく名前も似ている)。『レイト・ナイト・パッチング 1』もまた、イヴ・ド・メイがモジュラーシンセを用いて一晩で作り上げた即興的音響テクノである。『レイト・ナイト・パッチング1』は、〈スペクトラム・スプールス〉からリリースされた『ドローン・ウィズ・シャドウ・ペンズ』(2016)のダークで緻密な音響空間と比べると、即物的な電子音の集積による楽曲であり、その評価は賛否両論であったが(たしかに『ドローン・ウィズ・シャドウ・ペンズ』以降の過渡期的音源であるのは事実だ)、しかし、私などは、そのマテリアリズム/テクノに、インダストリアル/テクノ「以降」の兆候を強く感じてしまった。これは『アナロイド、アンライセンスド、オール・ナイト!』にも繋がる感覚である。

 2010年代前半的なダークなインダストリアル/テクノの物語性(世界の終焉のような。つまり『ATLHFVAMLTHATU』的)から、2010年代後半的なマテリアリズム(人間以降のモノ世界。つまり『アナロイド、アンライセンスド、オール・ナイト!』的)への移行である。音楽から「物語性」が漂白された世界へ。つまりはマテリアル・テクノロジカルな電子音楽へと変化(ある意味では遡行、ある意味では進化)しつつあるのだろう。

 ボノボことサイモン・グリーンの新作『マイグレーション』のタイトルを目にしたとき、まず連想したのは空港の入国審査ゲートであり、昨今の話題であればトランプ大統領が掲げるアメリカとメキシコとの間に国境の壁を設けるという公約だ。メキシコからアメリカへの不法滞在者の流入防止、アメリカ経済や労働者の保護、麻薬対策、安全保障などの側面からの施策であり、移民から成り立っているアメリカ社会が直面する問題である。考えてみれば、ボノボの前作『ノース・ボーダーズ』も『北の国境』というタイトルだった。どこの国境か明確ではないが、たとえばアメリカとカナダの国境と解釈すれば、今回の『マイグレーション』からはアメリカの南の国境線が想起される。アメリカだけでなく、こうした移民や難民問題は世界中で勃発しており、ヨーロッパ諸国でも移民の受け入れの是非を巡って意見が対立し、日本も今後どうなるのか他人事ではない状況である。ボノボ自身はアルバム・タイトルに明確な社会的意味を持たせるアーティストではないが、『マイグレーション(移住・移民)』についてはネガティヴな側面からとらえるのではなく、自身の人生と照らし合わせた上で肯定的なものとしてとらえているようだ。


Bonobo - Migration

DowntempoHouseFuture Jazz

Amazon Tower iTunes

 2013年の『ノース・ボーダーズ』の制作に入る前、ボノボは長年生活したロンドンを離れ、ニューヨークへと移住している。明確な移住の意思に基づくものというより、その前作である『ブラック・サンズ』(2010年)のツアーで3年ほど世界中を旅し、そこから帰って腰を落ち着けた先がニューヨークだった。そして、『マイグレーション』は『ノース・ボーダーズ』のツアー後、ロサンゼルスへ移住して作られた。偶然ではないだろうが、ここ数年来のボノボはアルバムを発表し、大掛かりなワールド・ツアーをおこない、その後に新しい土地での生活が始まり、そして新作を作るというサイクルになっている。どこか無意識の中で越境や移動というイメージが彼にはあり、それが音楽を作ったり、ライヴをする上でのモチベーションの源となっているような気がする。そもそも、ツアーのときは一年の大半を旅路で過ごしており、そうした移動や流浪の中からボノボの音楽は生まれていく。ニューヨークにしろ、ロサンゼルスにしろ、長く定住するというイメージではなく、ツアーとツアーの合間に骨休みをし、英気を養う場所という感覚なのだろう。インタヴューでも語っているが、今回ロサンゼルスに移住したのも、今音楽的に面白い街である、いろいろなミュージシャンが集まっている、トレンド・エリアであるといった理由からではなく、自分にとって音楽制作に没頭できる環境があったからだということだ。ロサンゼルスというと、ハリウッドやビバリーヒルズに代表されるセレブなイメージを抱く人が多いかもしれないが、ボノボは静かな東側のエコパークに住み、自宅スタジオでコツコツとトラック制作に励んでいる。そして、彼はロサンゼルスの明るく輝かしい面だけでなく、ホームレスも多くて荒んだ側面、格差社会が広がる問題点も冷静に見ている。

 『マイグレーション』は、こうしたロサンゼルスでの生活が100パーセント反映されたものかというと、決してそうではない。最終的にロサンゼルスの自宅スタジオで完成させてはいるが、作品の多くはツアー中、移動中に作曲し、アイデアを膨らませていった。たとえばライのミロシュをフィーチャーした“ブレイク・アパート”は大西洋を横断する飛行機の中で作曲し、ベルリンのホテルで録音している。チェット・フェイカー改めニック・マーフィーをフィーチャーした“ノー・リーズン”、モロッコの伝統音楽を演奏するイノヴ・グナワをフィーチャーした“バンブロ・コヨ・ガンダ”は、現在彼らが住むニューヨークでの録音だ。アフロ・ハウス調の“バンブロ・コヨ・ガンダ”に顕著だが、ニューヨークでの録音作品はダンサブルな傾向が強い。2ステップ調の“アウトライナー”は、彼がレジデントDJを務めるニューヨークのクラブ、〈アウトプット〉での経験から生まれている。ほかにも香港の空港のエレベーター、シアトルの雨、アトランタの洗濯乾燥機、ニューオリンズのエアボートのエンジンなどさまざまな音をフィールド・レコーディングスで録音し、作品の中に混ぜている。こうした具合に、『マイグレーション』からはどこか旅をしているようなイメージ、どこかに定住するのではなく世界を移動しているような感覚が得られる。

 『マイグレーション』の制作に取り掛かる前、ボノボは近親者を亡くし、その葬儀でイギリスのブライトンに戻り、自身の出身地や故郷について改めて考えることがあったそうだ。彼の父親はブリティッシュ・フォーク・シーンに関わってきたミュージシャンで、その家族や親類は世界をさすらうように生きてきた。ブライトン、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスとボノボが移住してきたのも、そうした流浪の一族だからかもしれない。ボノボは父親の影響でギターやピアノの演奏を始め、幼少期には父親や仲間たちのセッションするところをよく目にしてきたそうだ。伝説的なフォーク・シンガーのピート・シーガーの歌を引用した“グレインズ”は、そうしたボノボの中にあるルーツ的な世界を浮かび上がらせており、今までのフィンクやグレイ・レヴァランドなどフォーク系アーティストをフィーチャーした作品から繋がる曲である。ボノボはタイトルである『マイグレーション(移民・移動)』について、「世界には多くの場所があり、いろいろな人がそこを行き来し、いろいろな人が住む。人間と場所や環境は相互に作用している。人間が移動することで、文化もある場所からある場所へ運ばれ、受け継がれるものなんだ」といった趣旨のことを述べている。彼のルーツにあるブリティッシュ・フォークもまた、異なる場所に運ばれ、そこで新たに紡がれていくのである。

 ボノボの音楽の本質は、世界のさまざまな場所を旅し、そこに住む人たちとの交流があり、いろいろな音楽を吸収し、そうした中から育まれているということだ。もともと彼の中に備わっていた音楽性が、それまでとは異なる場所や人との出会いから化学反応を起こし、新たなものへと洗練されていく。彼の今までの歩みは常にそうしたものだった。〈トゥルー・ソウツ〉からデビューした当時、ジャジーでオーガニックなサウンドを取り入れたブレイクビーツ・アーティストだったボノボ。〈ニンジャ・チューン〉へ移籍してからは、ヴォーカリストたちをフィーチャーするとともに、次第にストリングスなどを取り入れて有機的かつスケールの大きなサウンドを見せていく。『ブラック・サンズ』の頃にはライヴ・パフォーマンスのスキルに磨きを掛け、視覚的にも訴えるシネマティックなサウンドとともに、ポスト・ダブステップやUKガラージを咀嚼したダンサブルなサウンドの両面を見せる。『ノース・ボーダーズ』ではエリカ・バドゥと共演し、USのR&Bへのリンクと影響を浮かび上がらせ、世界的なアーティストとしての立ち位置を揺るぎないものとした。それから4年後にリリースした『マイグレーション』も、ボノボの人生の旅を反映したものであり、だからこそ彼の楽曲はエレクトリックな佇まいであっても、ヒューマンな温もりや感情の動きに沿うような美しさが感じられるのである。

Anohni - ele-king

 アノーニ、怒っています。昨年リリースされたアルバム『Hopelessness』でテロや死刑や環境破壊について激しくかつ流麗に歌い上げ、アメリカという国の希望のなさ=ホープレスネスをあぶり出してみせたアノーニですが、トランプの大統領就任を受け、女性こそが道を変えるというメッセージとともに新曲“Paradise”を公開しました。

 まさに「ホープレスネス」という言葉が何度も登場するこの新曲は、3月17日にリリースされる新作EP「Paradise」に収録されます。同EPはアルバムに引き続き、ハドソン・モホークおよびOPNとのコラボレイション作品となっています。

A N O H N I
ブリット・アウォード2017ノミネートも話題のアノーニが
3月リリースの最新EPより、新曲“PARADISE”を公開!

本年度のブリット・アウォード2017にて「ブリティッシュ女性ソロ・アーティスト」部門にノミネートされたアノーニが、最新アルバム『HOPELESSNESS』に続く、最新EP「PARADISE」を3月にリリースすることを発表し、タイトル・トラックを公開した。

ANOHNI: PARADISE

アルバム同様、〈Warp Records〉所属の気鋭プロデューサー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとハドソン・モホークのふたりとのコラボ作品となっている“PARADISE”には、電子音と政治的な歌詞の衝突を通して、活動家たちの発言をサポートし、ポピュラー音楽に対する既成概念を破壊しようとするアノーニの姿勢が表れている。

本作には、完全未公開の新曲やライヴでのみ披露されている楽曲など計6曲が収録される。

label: Rough Trade
artist: ANOHNI
title: Paradise

release date: 2017/03/17 FRI ON SALE

[TRACKLISTING]
1. In My Dreams
2. Paradise
3. Jesus Will Kill You
4. Enemy
5. Ricochet
6. She Doesn’t Mourn Her Loss

Brian Eno - ele-king

 ひねりをきかせた言い回しが誤解を招き、まったく別の意味として、ときには真逆の意味として流通してしまうというのは、紙のメディアが中心となっていた時代から散見される事態ではあったけれど、インターネットの普及はその流通の速度と強度をより増幅させるようになった。いわゆる「炎上」というやつである。
 1月23日、英『ガーディアン』紙に「ブライアン・イーノ:『われわれは40年間衰退してきた――トランプは再考する機会である』」という記事が掲載された。それはイーノ本人へのインタヴューをもとに構成された記事で、そこでイーノは、上位62人の富豪をバスに乗せて衝突させればいいなどと痛快なジョークをとばしていたので、これ大丈夫かいなと心配していたのだけれど、どうやら本当に「炎上」してしまったようである。ただし、そのジョークが原因ではない。
 「40年間」というのはサッチャーやレーガンに代表されるネオリベラリズムの支配を指しており、イーノはそれを「(人類にとっての)衰退」だと捉え、トランプの勝利をその衰退の終わり(のはじまり)だと考えている。人類はこの40年間どんどん悪い方向へと進んできたが、いまこそがどん底の状態であり、つまりこれからわれわれは良い方向へ進んでいくしかない――そういうニュアンスでイーノは、ブレグジットやトランプの勝利について、われわれの「ケツを蹴り上げてくれた」という点で「喜んでいる」と発言しているのだが、どうもこの箇所が一部で「イーノはトランプを支持している」と解釈されてしまったようである。要するに、イーノはトランプがわれわれを良い方向へ導いてくれると主張している、と誤解されてしまったわけだ。
 この「炎上」を受け、イーノは1月26日にフェイスブックにステイトメントを投稿している。彼はそこで「絶対に明確にしておきたいこと」として、トランプが完全に大惨事(disaster)であること、そしてブレグジットもまた大惨事であることを強調している。そしてそれ以上に大惨事なのは、われわれがそのような結果を引き起こす政治制度のなかに生きていることである、と彼は続ける。イーノはたしかにトランプの就任をターニング・ポイントだと考えているが、それはトランプが良い政治をおこなってくれると期待しているからではまったくない。トランプという出来事によって、現行の政治制度が根本的に壊れているという事実が明らかになったこと、まさにそれこそがチャンスなのである。それはクリントンが大統領になっていたら(あるいはUKがEUに残留していたら)見えなかったことかもしれない。だから彼は「喜んでいる」と発言したのだ。
 イーノはトランプを支持してなどいない。それはちゃんと記事を読めばわかることだ。「熟考」という意味を持つタイトルの新作『Reflection』をリリースしたばかりのイーノだが、残念ながら世の中はまだまだ「熟考」からほど遠いところで動いているようである。
 以下にイーノがフェイスブックで公開したメッセージの全訳を掲げる。あなた自身の目で、彼の意図を確認してほしい。(小林拓音)

今週のはじめに『ガーディアン』紙からインタヴューを受けたが、その記事の見出しにはこうあった:「われわれは40年間、衰退をたどってきた。トランプは、それを見直す機会だ」。(記事を読んでもらえれば明確だが)私はそのような意味で言ったのではない。この言葉により、私がトランプ支持者であることを示唆していると思っている人たちがいる(特にアメリカの一部のウェブサイト)。私の見解を知っている人ならだれでも、それは真実ではないとわかるだろう。

そこで、絶対にはっきりさせたいことがある。ドナルド・トランプは、全くもって最悪の事態だ。また、イギリスのEUからの離脱も最悪の事態である。このふたつを述べた上で、さらに最悪なのは、アメリカやイギリスに住むわれわれが――そして世界の他国も徐々に――このようなばかげた結果を生み出す政治体制の中に存在しているということだ。

今になってわかるのは、政治の仕事とは、嘘と偽りの上に成り立っており、民衆に本当の情報を与えることよりも収益や視聴率を重要視する、明らかに偏ったメディア機関によって促されているものだということだ。この体制全部が変わらなければならない。政治を引率する者だけでなく、われわれの政治的過程・社会的過程の奥底にある、より根本的なものが変わらなければいけない。民主主義は、情報を得た民衆を前提としている。つまり、腐敗したメディアにおいては成り立たない。トップの顔ぶれを変えたとしても、その下にある仕組み全体がそのままであれば、何も変わらない。裕福なものはさらに富を増し、中流階級は停滞し、貧困層はさらに貧しくなる。

私の望み――まさに唯一の望み――は、トランプが就任したことにより、彼の本性が明かされ、民衆が、トランプ本人と彼が象徴するすべてのものを激しくきっぱりと拒否することだ。彼のひどい政策、好戦的な愛国主義、傲慢さ、幼稚さ、嘘、偏見、視野の狭さ。トランプを拒否すると同時に、われわれは、彼をあんなにも愛し育て上げた、悪質なメディア/政治体制すべてを解体しはじめるだろう。

前に述べたように、私は、トランプが長い衰退のはじまりではなく、衰退の終わりを告げるものだと信じている。転換期だ。この40年間、われわれは、不平等や、恐怖に煽られた愛国主義と保守主義という深まる穴に、ほとんど気づかないまま滑り落ちてきた。トランプの大統領任務は、この状態を変えてくれる可能性がある。トランプが正しいことをやってくれるからではない。今回の選挙によって、政治体制がもっぱら機能していないということに民衆が気づき、今こそ自分たちで何とかしなければならないと活気づいたからだ。先週おこなわれた一連のデモは、この新たな傾向を反映している。

こんなところまで来ない方が、われわれにとって良かっただろう。だが、われわれはここまで来てしまっている。たとえ、クリントンが大統領に就任したとしても、(また、イギリスが「EU残留」を選んだとしても)、それは短期的には楽だったかもしれないが、アメリカやイギリスの政治体制を悩ます根本的な問題は解決されなかったと思う。トランプが選ばれたことによって、体制が壊れていることが疑いようもない事実という証拠になった。だから、これからは修復していこう。

2017年1月26日 ブライアン・イーノ
(翻訳:青木絵美)

interview with The xx  part.2 - ele-king






E王


The XX

I See You (ボーナストラック2曲収録)


XL Recordings/ビート

PopHouseIndie Rock



Amazon

 ザ・エックス・エックスのコアは何かと考えたとき、これまでは“VCR”のミュージック・ヴィデオ(https://youtu.be/gI2eO_mNM88)にもっとも分かりやすい形で表れていたと僕は思う。モノクロームの映像のなか、廃墟のような場所でたったふたり親密な愛を交わす恋人たち。ふいに色づく映像と、誰にも知られることのないふたりだけの感情の昂ぶり。その密室性と緊密さこそがザ・エックス・エックスの「わたし」と「あなた」の物語だった。
 だが、予想外の成功を経て、バンドははっきりと変わった。いま、ザ・エックス・エックスを表現しているのは見事なポップ・シングル“オン・ホールド”のヴィデオにおける淡くも眩い光だろう。そこでは無邪気に笑うザ・エックス・エックスの3人がいて、そしてどこにでもいるような10代の男女が楽しそうに踊ったり、愛を交わしたりしている。ジェイミーが少し照れながらDJをして彼らを楽しませている。インティマシーはザ・エックス・エックスにとってもっとも重要なテーマだが、それはいまより多くの音と感情を手に入れて、ダンサブルに、そしてポップに開かれているのだ。

 それでは、先日女性との婚約を発表したばかりのロミー・マドリー・クロフトのインタヴューをお届けしよう。オリヴァー&ジェイミーといくつか同じ質問を投げながらも、より彼女らのラヴ・ソングが描いているテーマに踏み込んだ会話になったと思う。ロミーもまた、シャイな佇まいを残しながらも、気さくに誠実にひとつひとつ答えてくれた。3人の経験したささやかな喜びや切なさが、『アイ・シー・ユー』には変わらず高い純度で、しかしもっとも鮮やかに封じ込まれている。(木津)

わたしたちが考えていたのは、ただ新しいことに挑戦したいということ。それから姿勢としてよりオープンでいること、明かりを取りこんだような音にすること。だからルールも何も設けない、というのがわたしたちが最初に話し合ったことだったね。


発表前の新曲をプレイする気分はいかがでしたか?

ロミー:今回のツアーはとにかく新曲に集中していて。新曲にどんな反応が来るかわからなかったからすごく緊張していたし不安だったけれど、うまくいって良かったと思うな。

オーディエンスの反応を感じました?

ロミー:ええ、すごく良かったと思う。

観客側から見ていてもそう感じられました。

ロミー:そうだよね。新曲は“リップス”から演奏したんだけれど、すぐに頭を動かしたりしてくれるのが見えて、緊張感がほぐれたよね。

それから、ライヴの終盤の重要なポイントでジェイミーのソロ曲を演奏するのが印象的でした。そうしたことも含めて、今回の『アイ・シー・ユー』というアルバムはセカンドの『コエグジスト』の続きというよりは、ジェイミーのソロ・アルバムの続きなんだという認識が3人のなかで共有されていたのでしょうか?

ロミー:延長線上というよりは、ジェイミーのソロがあったから今回のアルバムがセカンドと全然違うものになったんだと思うな。

野田:ジェイミーのソロとザ・エックス・エックスの関係性についてもう少し説明してもらえますか?

ロミー:前回のアルバムだとライヴでプレイすることを意識しすぎたり、みんながどういうものが好きかを考えすぎたりしたんだけど、今回のアルバムは自分たちの好きなサウンドをエンジョイすることができたんだよね。ジェイミーのソロのサウンドもすごく好きだったから、自分たちの好きなものを音にするっていう意味ですごく大きい影響を受けたと思う。自分たちもあとからそのことに気づいたんだけど、それも意識してやったわけじゃなくて、自然とそういう曲の作り方になってたのね。ジェイミーがソロで自分の好きなサウンドを表現したように、ライヴでも曲作りでもこれまでの「バンドらしさ」に囚われずに自分たちの好きなことができたのが大きかったね。

なるほど。ロミーから見て、ジェイミーのソロ作の魅力って何ですか?

ロミー:ジェイミーってすごく想像力豊かだから、オーディエンスを旅に連れていくような曲を作り出すことができるんだよ。構成もおもしろいし、メロディもすごく魅力的だし、あとは遊び心が曲にあると思う。

なるほど、ではジェイミーのソロを経ての『アイ・シー・ユー』の話をしますね。サウンドにもテーマにも広がりが出て、見事な作品だと思いました。アルバムに取りかかる前に3人で共有していたゴールはありましたか?

ロミー:いいえ、何も考えてなかった(笑)。わたしたちが考えていたのは、ただ新しいことに挑戦したいということ。それから姿勢としてよりオープンでいること、明かりを取りこんだような音にすること。だからルールも何も設けない、というのがわたしたちが最初に話し合ったことだったね。

そうでしたか。では、制作しながら見えてきた曲同士で共通するテーマやモチーフはありましたか?

ロミー:コンセプトやテーマっていうのはあまりなくて、一曲一曲がすごく違う折衷的なアルバムになっていると思うんだけど、それがかえってわたしたちのテイストを表現してるんじゃないかな。どんな音楽に対してもオープンだし、ミニマル・テクノだけ聴くとかニューウェイヴだけが好きとか、そういうことはないからね。わたしたちはジャンルってものが好きじゃなくて……そういうわたしたちそのものが表現されたアルバムだと思う。

では、そのヴァラエティに富んだアルバムをまとめるものとして『アイ・シー・ユー』というタイトルを決めたのはあなたですか?

ロミー:ええ(笑)。

それはどういうところから出てきたアイデアだったのでしょうか?

ロミー:制作の本当に最後のほうだったんだけど、タイトルどうしようって考えすぎて頭がおかしくなりそうだった(笑)。タイトルってアルバムのトーン全体を決めるすごく重要なものだと思うからね。だから歌詞を何度も読み返したりしたんだけど、やっぱり作品を作るプロセス自体がすごく重要だったんだと思えて。そのプロセスのなかでは友情っていうのがすごく大きかったんだ。自分たちが成長するなかでより良い友情っていうものが築けるようになっているし、3人の関係性も以前よりいい状態になって、だからこそいい音楽を作ることができた。あともうひとつは、人間って誰しも「見られたい」っていう願望があると思う。見られることによって理解されていると感じることができるし、それを今回すごくお互いに感じることができたからね。だからそのことをタイトルにしたんだよ。

なるほど。

ロミー:もうひとつ付け加えるとすると、わたしたちはバラバラに過ごした時期っていうのもあったんだけど、このアルバムを制作することによってより近くなることができた。そのことも表現しているね。それから、ファンへのメッセージでもあって……自分たちが若いとき、たとえばジャック・ホワイトのライヴを観ているときなんかに「どうせ彼には自分たちなんか見えてないよ」と思ってたんだけど、いざ自分たちがパフォーマンスするようになると、本当にオーディエンスが「見える」んだよね。だから、ちゃんと見ているよ、っていうメッセージでもあるんだ。

それはすごく納得できるお話ですね。それから、『アイ・シー・ユー』という言葉は、親密なコミュニケーションを描いているという点で、すごくザ・エックス・エックスらしいなと思ったんですよ。歌詞でもつねに一対一の関係というモチーフにこだわっていますよね。

ロミー:ええ。

それはどうしてだと思いますか?

ロミー:自分でもどうしてかはわからないんだけど、愛とか、ひととひととの間に起こる感情を描くことに惹かれるんだよね。ミュージシャンによっては怒りや政治について描くひともいるけれど、それは自分にはあまり理解できなくて。自分が惹かれて、なおかつ描きたいのがそういうテーマなんだよ。


[[SplitPage]]

前のアルバムを作ったときは22歳だったけど、今回は27歳だから、その間の成長ってすごく大きいんだと思うんだよね。それがダイレクトに表れたんじゃないかな。

ザ・エックス・エックスの歌詞で特徴的なのは、三人称がほとんど出てこなくて、かつあなたとオリヴァーでヴォーカルを取っているので、ジェンダーレスなラヴ・ソングになっていることだと思うんですね。それはバンドにとって重要なことなんでしょうか?

ロミー:ええ、ええ。それはすごく意識的にやってる。そうすることによって男性であっても女性であっても、年齢がいくつであっても、すべてのひとが音楽に繋がりを感じることができると思うから、歌の物語を決めつけずに、緩さを設けるようにしているんだよ。

なるほど。『アイ・シー・ユー』はそのなかで、これまで描いてきた感情とは異なるものを捉えようとしたのか、あるいは深めようとしたのか、どちらに近いと思いますか?

ロミー:つねにより良ものにしようとトライしているんだけど、より複雑な感情をよりシンプルな方法で表現しようとしているんだよね。今回もそのことを追求したね。

「シンプル」、という部分をもう少し説明していただけますか?

ロミー:言葉をダラダラと並べて表現するのではなくて、より少ない言葉を使うようにしているかな。シンプルで、美しい言葉だね。

なるほど。僕が今回『アイ・シー・ユー』の言葉に感じたのは、“デンジャラス”にしても“ブレイヴ・フォー・ユー”にしても、「勇敢さ」というモチーフが前に出てることだったんです。

ロミー:ええ、そのことに気づいてもらえて嬉しいな。年齢を重ねたことによって自信がついたということもあるし、そのことによっていい意味でリスクを冒すということに繋がっていくと思えるんだよね。自分たちが大人になっているということがそのまま表現されていると思う。今回、自分たちが心地よいと感じるところから抜け出しんだよね。レコーディングの環境を変えたこともそのひとつだしね。ロンドンはやっぱり自分たちにとって心地いいけれど、いろいろなところで曲を制作したし、ライヴでもさっき言ったみたいにルールを設けず、あまり考えずに組み立てていったし。あと歌詞も、メールじゃなくてオリヴァーと同じ部屋で作ったっていうのも新しいこと、リスクを冒すことのひとつだったね。

「勇敢さ」というモチーフに今回僕が惹かれたのは、これまでは儚さや脆さみたいなもののほうによりフォーカスされていたと思うからなんですよ。

ロミー:そうだね。

その変化って、ザ・エックス・エックスというバンドのキャリアとシンクロしているのかなと思って。たった3人ですごくビッグな存在になって、この間のライヴもそうでしたけど、そのプレッシャーをはねのけて前に進んでいるというか。

ロミー:ええ、わたしもそう思うな。

そのことを表現したいという想いはありましたか?

ロミー:それを敢えて表現しようとしたわけではないよね。もっと勇敢であろうとか、もっとオープンであろうとかいう風にね。それは時間とともに自然と起こった変化で、それがそのまま表現されていると思う。前のアルバムを作ったときは22歳だったけど、今回は27歳だから、その間の成長ってすごく大きいんだと思うんだよね。それがダイレクトに表れたんじゃないかな。

なるほど、すごくよく分かります。もうひとつザ・エックス・エックスらしさでいうと、“オン・ホールド”のヴィデオがすごくいいなと思ったんですよね。さっき「友情」って言葉も出ましたが、バンド3人の親密さがよく表れていて。あれはどうやって出来たものなんですか?

ロミー:ありがとう(笑)。まず、レコーディングした場所に戻って撮りたいっていうのがあって、テキサスのマーファっていう本当に小さい町に行ったんだけど。フォトグラファーのアラスデア・マクレランが監督してくれて、温かさや若さといったような、これまでのザ・エックス・エックスからは連想できないテーマを引き出してくれた。そうやってできたヴィデオだね。いままではミュージック・ヴィデオに関してもっと神経質になってたんだけど、今回は誰かに任せてしまおうと思って、自分たちの親密さと温かさ、光と若さ、それからマーファの地元のひとたちを取り入れてほしいということだけフォトグラファーにお願いして、あとは本当に彼に任せちゃったんだ。

“On Hold”

ただ、ヴィデオがいまおっしゃたように光や明るさが表現されているのに対して、“オン・ホールド”の曲そのものはビターなラヴ・ソングですよね。これは言葉と音のどちらが先でしたか?

ロミー:言葉が先だったね。あの曲に関してはすごくいろんなヴァージョンがあって……ありすぎるぐらい(笑)。なかなかしっくり来なかったんだけど、ジェイミーがサンプルを取り入れたことでムードがガラッと変わって、息を吹き込んでくれたんだよね。

ほんとそうですよね。“オン・ホールド”はシングルらしいダンサブルでポップな曲ですけど、切ないラヴ・ソングが明るい曲調になっていることでどのような効果があると思いますか?

ロミー:ポップ・ミュージックのいいところってまさにそこだと思う。クラブに行くとすごく踊れて楽しめるんだけど、ちょっと止まって集中して聴いてみると悲しい失恋の曲だったりするよね。その二面性を楽しめることができることが魅力だなと思う。

[[SplitPage]]

ええ、大好き。わたしもオリヴァーもすごくよく聴くよ。ジェイミーはもちろんだけど(笑)。ポップスやダンス・ミュージックは本当大好きでずっと聴いてきたんだけど、今回のアルバムはリスナーにもわたしたちのそういう一面を感じてもらえるものだと思うな。

ロミーはクラブ・ミュージックってよく聴くほうですか?

ロミー:ええ、大好き。わたしもオリヴァーもすごくよく聴くよ。ジェイミーはもちろんだけど(笑)。ポップスやダンス・ミュージックは本当大好きでずっと聴いてきたんだけど、今回のアルバムはリスナーにもわたしたちのそういう一面を感じてもらえるものだと思うな。

とくにどんなダンス・ミュージックが好きですか?

ロミー:80年代のシンセっぽいサウンド……ニュー・オーダーだったりオーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークだったり、それからイタロ・ディスコ。うん、ディスコ・ミュージックだね。エモーショナルなシンセサイザーが感じられるダンス・ミュージックが好きだな(笑)。

“アイ・デア・ユー”はザ・エックス・エックスのなかでも、ダンスという意味も含めてもっともアップリフティングな曲ですよね。とくにコーラスの「singing…oh, oh, oh」っていう部分に僕はビックリしたんですよ。すぐにライヴでシンガロングになりそうだなって。

ロミー:ええ、わたしもすごく興奮してるんだ。まだ6公演しかやってないんだけど、みんな曲をまだ知らないのに曲に繋がりを感じてくれているようなリアクションなんだよね。だからこれからアルバムが出て、曲をもっと知ってくれたときにどうなるかなってすごく楽しみにしてるんだ。

ええ、きっとすぐ合唱になりますよね。ただ、あそこまで一体感のあるものっていままでのザ・エックス・エックスにはなかったんじゃないかなと。

ロミー:ええ、わたしもそう思う。さっきも言ったみたいに、ああいうところから自分たちはポップなものも好きなんだよっていう、新しい面を見せてられていると思うな。今回のツアーのはじめの3公演では“アイ・デア・ユー”からスタートしたんだ。するとすぐにコネクトすることができたね。“リップス”から始めたときは、ミステリアスなムードを残しつつ、だんだん熱をこめていくセットにできたと思うよ。わたしは“アイ・デア・ユー”から始めるほうが好きかな。すぐにオーディエンスとの繋がりを感じることができるからね。それに、それっていままでのザ・エックス・エックスにはなかったものだと思うから。

『コエグジスト』の“エンジェル”なんかもライヴの映像を観るとアウトロで大合唱になってますよね。

ロミー:ええ、すごいよね!

あれって、あなたたちにとってすごく驚きだったんじゃないかなと思って。

ロミー:ええ! ほんとに。感動したよね。日本もそうなんだけど、いろいろな国や場所でそうやって応えてくれるんだよね。それはやっぱり、すごく嬉しいことだね。

いっぽうで、ニューヨークで45人限定のライヴもされてますよね。そうした小さい会場と大きい会場での親密さや一体感の違いってどういうところにあると思いますか?

ロミー:ええ、あれは2、3回同じ日にショウをやったりとか。それが何日も続いて。それは大きい会場でプレイするのとはすべてが違うよね。それは大きさというよりは、ライヴそれぞれで違った親密さというものがあるんだと思う。ニューヨークでプレイしたときも、入ったらすぐに大きいスペースがあるんじゃなくて、サイド・エントランスからトンネルを通って入ってもらうと3人が真ん中にいて、みんなに角で見てもらうっていう状態にしたんだよね。それでみんなは小さい部屋にはじめいるんだけど、天井がどんどん上がっていって、そこで壁が倒れて……そこではじめて大きい部屋にいることがわかるっていう仕組みになってたんだ。

へえー、おもしろいですね!

ロミー:オーディエンスはそこでちょっと混乱しちゃうんだけど、そうやって旅につれて行きたかったんだよね。そこではオーディエンスとの壁が本当になくなっている。触りたければ触れるっていうぐらいね。それを一度やってみたかったんだ。

『アイ・シー・ユー』というアルバムには、そういう最小限の親密感と、大勢のオーディエンスとの一体感の両方が表現されているように思えますね。

ロミー:ええ、ええ。“パフォーマンス”っていう曲なんかにはそういう小さい会場で演奏した経験がすごく反映されているね。そういう静寂のなかで生まれる関係性に影響を受けて作った曲もあるね。そこからアルバムに適した形、ライヴに合った形をイメージして作っていった曲もこのアルバムには入ってるよ。

すごくよくわかります。ザ・エックス・エックスってすごく緊密なコミュニケーションを体現してきたバンドだと思うんですが、これだけビッグになっても、その親密さをより多くのひとに純度の高い状態で届けようとしているように見えるんです。それがすごくよく表れたアルバムではないかなと思いますね。

ロミー:ええ。わたしたち自身もこの変化にはすごく驚いていて(笑)。わたしはバンドにいることによってどんどん自信をつけることができるんだけど、それをすごく嬉しく思ってるな。

では、ザ・エックス・エックスのもっとも変わった部分と、もっとも変わらない部分はそれぞれどんなところだと思いますか?

ロミー:お互いがお互いをより理解するようになったのが一番大きな変化だと思う。自分たちが何をどう感じるかを理解しているし、そのコミュニケーションの取り方もより良いものになったと思うな。変わらないところは、友情そのものだね。それはまったく変わってないね。たとえば今日もみんなでプールに行ったんだけど、オリヴァーとジェイミーは子どもみたいにはしゃいでて(笑)。わたしが感じるオリヴァーとジェイミーとの特別な繋がりはいまだに変わらないね。

(笑)まさにそれがザ・エックス・エックスだな、と思いますね。

ロミー:ええ(笑)。

野田:最後にひとつだけ。さっき政治的なことを表現することに興味がないとおっしゃいましたけど、2016年はブレクジットであるとかトランプ勝利だったり、政治的不安定さが露呈した時代だったと思うんですね。そういう社会的な出来事というのは、ザ・エックス・エックスの音楽にまったく影響を与えないんでしょうか。

ロミー:もちろんわたしたちも大人になってはいるし、世界で何が起こっているかは把握してはいるよね。で、もしかするとそれが将来反映されることもあるかもしれない。ただ、社会でそういうことが起こっていながらも、バンドや自分にとって何が大事かを考えたときに、自分がリスナーとして音楽を聴くときは自分が抱えているものから逃避させてくれたり、あるいは逆に向き合わせてくれて乗り越えることを助けてくれたり勇気づけてくれたりするものを優先しているんだよね。自分にとって一番関係があって、作りたいと思える音楽はやっぱりそういうものだと思うな。

野田:なるほど。ではUKには偉大なバンドがたくさんいますが、たとえばザ・スミスみたいなバンドは好きですか?

ロミー:ええ、もちろん(笑)! こうやってUKを離れてみると、たくさんの国のひとがUKの音楽を好きだって本当に実感したんだよね。それでますます、いまは自分の国の音楽が好きになってるよ。

Thundercat - ele-king

 新年早々、魅力たっぷりのアルバムが続いている。まずはザ・エックス・エックス、アンダーグラウンドではデムダイク・ステア、ブルックリン実験派としての意地を見せるダーティ・プロジェクターズ、いまの英国でもっともエネルギッシュな音楽=グライムの大物ワイリーの新譜、なにも変わらないことがむしろ変わることであるとでも言わんばかりの我らがスリーフォード・モッズ、そして、おそろしいほどドリーミーなソウルを展開するサンダーキャットの新作……そのふわふわで甘々のブラック・ソウル・ファンタジー……もちろん、いま絶好調と言っていいレーベルのひとつ、〈ブレインフィーダー〉からのリリースである。

再び迎えたブラック・ミュージック隆盛の立役者、サンダーキャット
待望の最新アルバム『Drunk』のリリース&来日ツアーを発表!
20曲以上収録の大作に、超豪華アーティストが勢揃い!

ケンドリック・ラマー|ファレル|フライング・ロータス|マイケル・マクドナルド|
ケニー・ロギンス|ウィズ・カリファ|カマシ・ワシントン
80年代を代表する黄金コンビ、マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンス参加の新曲「Show You The Way」公開!

ここ数年のブラック・ミュージックの盛り上がりにおいて、誰もが認める立役者のひとり、サンダーキャットが、待望の最新アルバム『Drunk』のリリースを発表! 20曲以上を収録したこの大作には、ケンドリック・ラマー、ファレル・ウィリアムス、フライング・ロータス、マイケル・マクドナルド、ケニー・ロギンス、ウィズ・カリファ、カマシ・ワシントンら、シーンきっての人気者であるサンダーキャットでしか考えられない、超豪華アーティストが勢揃いしている。脇を固めるミュージシャン/プロデューサーにも、自身のプロジェクトKNOWERなどでも知られるプロデューサーのルイス・コール、人力ビートのパイオニアとも言われるレジェンド・ドラマーのディアントニ・パークス、そしてサンダーキャットとともにケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』に大きく貢献したSOUNWAVEらが名を連ねる。

今回の発表に合わせ、80年代を代表する名曲、ドゥービー・ブラザーズの「What A Fool Believes」を生んだマイケル・マクドナルドとケニー・ロギンスが参加した新曲「Show You The Way」が公開され、『Pitchfork』にて「Best New Track」に選出されている。このコラボレーションは、ケニー・ロギンスの息子がサンダーキャットのファンだったことから実現。ケニー・ロギンスの声がけで、同じく娘がサンダーキャットの大ファンだったというマイケル・マクドナルドまで参加することになったという逸話も、彼のキャラクターと非凡な音楽的才能を証明している。

きっかけは、俺がラジオ番組に出演してインタビューされたことだった。そのインタビューの中で「もし誰かと、どこかの島に取り残されるんだったら、誰がいいですか?」という質問をされたんだ。俺は瞬時に「ケニー・ロギンスとマイケル・マクドナルド」と返答した。そのときは冗談のように聞こえたかもしれないけど、ソングライティングの上で彼らに多大な影響を受けてるんだ。自分をもっと掘り下げることを彼らから学んだ。ラジオでその発言をしたあとに、俺のバンドのピアノ奏者のデニスが、ケニー・ロギンスと何度か演奏したことがあったから、「ケニーに連絡してみようか?」と言ってくれたんだ。信じられなかったね。そこから、ケニーの息子さんとメールをするようになって、いつの間にかケニーもメールに参加するようになったんだ(笑)。ケニーは一緒に音楽を作ることに興味を持ってくれた。俺はケニー・ロギンスとしゃべってるだけでビビッてたよ(笑)。彼は俺の音楽についてほとんど何も知らなかったけど、「僕の子供が君の音楽のファンなんだ。僕の子供が君のファンじゃなかったら、僕はここにいないよ」と彼が言ったんだ(笑)。実現しただけで俺はうれしかったね。彼と初めて会ってレコーディングして、彼が曲を聴き返してたら、彼が「マイケル・マクドナルドを呼ぼうかな」と言い出したんだ。そのときに、俺は本当にオシッコをチビるかと思ったよ(笑)。マジで冷静を装ってた。ケニーがマイケル・マクドナルドに連絡してくれたんだ。マイケルも、たまたま娘さんが俺の大ファンだったから、一緒に仕事をしてくれることになったんだ。ケニーとマイケルがスタジオに来たんだけど、ケニーは「何年間もマイケルに会ってないよ」と言ってた。どうやら、ふたりは10年以上も一緒に曲を作ってなかったみたいで、それにもびっくりしたね。ことの重大さに気づくと、正直心の中ではすごくビビったし、すごくプレッシャーを感じたよ。俺は彼らに曲のアイデアや、新曲、古い曲を聴かせたんだ。それから「Show You The Way」を完成させようということになった。
- Thundercat

------------------------------------

THUNDERCAT Presents
"DRUNK" JAPAN TOUR

さらに、今回のアルバム・リリースの発表に合わせ、単独来日ツアーも決定! これまで〈Brainfeeder〉のレーベル・ショウケースや、フライング・ロータス、エリカ・バドゥのバンド・メンバーとして幾度も来日をしてきたサンダーキャットだが、今回が初の単独公演となる。サンダーキャットの超絶ベース・プレイはもちろん、長らくバンド活動をともにしているドラマーのジャスティン・ブラウン、キーボード奏者のデニス・ハムという超一流ミュージシャン3人による縦横無尽なバンド・アンサンブルと強靭なグルーヴ、そして何より素晴らしい楽曲の数々とサンダーキャットの美しい歌声……そのすべてを至近距離で体験できるこの貴重な機会をお見逃しなく!

【東京】
2017.4.27 (木) LIQUIDROOM

OPEN 18:30 / START 19:30
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途)

チケット詳細
[先行販売]
LAWSONチケット プレリクエスト抽選先行: 1/28 (土) 12:00~2/5 (日) 23:59
beatkart [shop.beatink.com]: 2/6 (月)~
チケットぴあ プレリザーブ: 2/6 (月) 11:00~2/13 (月) 11:00
イープラス・プレオーダー: 2/6 (月) 12:00~2/12 (日) 18:00
LAWSONチケット プレリクエスト2次抽選先行: 2/8 (水) 12:00~2/12 (日) 23:59
[一般発売]:2/18 (土)~
ローソンチケット (Lコード: 76628)、チケットぴあ (Pコード: 322-585)、イープラス [https://eplus.jp]、Beatkart [shop.beatink.com]
INFO: Beatink 03-5768-1277 / www.beatink.com

【名古屋】
2017.4.28 (金) 名古屋ブルーノート

1stステージ 開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ 開場20:30 開演21:15
一般価格 ¥8,900 / 名古屋ブルーノートメンバーズ ¥8,500

チケット詳細
2/22 (水)~ 名古屋ブルーノートメンバーズ会員先行
3/1 (水)~ 一般予約受付開始
INFO: 名古屋ブルーノート 052-961-6311

【京都】
2017.4.29 (土) 京都METRO

OPEN 18:30 / START19:30 → 21:00 close 予定
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途)
当日 ¥6,500 (税込 / ドリンク代別途)
早割 ¥5,500 (税込 / ドリンク代別途) [受付期間:1/27~2/2]←枚数限定!

チケット詳細
[一般発売]:2/18 (土)~
チケットぴあ (Pコード: 323-052) 、ローソンチケット (Lコード: 57107)、e+ [https://eplus.jp/]
[限定早割]
★一週間限定! 特別先行早割チケットを発売!!
¥5,500 ドリンク代別途 [受付期間:1/27~2/2]←枚数限定!
※『特別先行早割お申し込み方法』→タイトルを「4/29 サンダーキャット早割希望」
としていただいて、お名前と枚数を明記して 宛てでメールして下さい。
※枚数限定のため、キャンセルは不可となっております。何卒ご了承下さい。
INFO: 京都 METRO 075-752-4765 https://www.metro.ne.jp
Supported by α-STATION 京都FM

【大阪】
2017.4.30 (日) Conpass

OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥6,000 (税込 / ドリンク代別途) ※未就学児入場不可


------------------------------------

サンダーキャット待望の3rdアルバム『Drunk』は、2月24日(金)に世界同時リリース。国内盤にはマック・ミラー参加のボーナストラックを含め、計24曲が収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。初回限定生産盤はスリーヴケース付。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Show You The Way (feat. Michael McDonald & Kenny Loggins)”がいちはやくダウンロードできる。

label: Brainfeeder / Beat Records
artist: Thundercat ― サンダーキャット
title: Drunk ― ドランク

cat no.: BRC-542
release date: 2017/02/24 FRI ON SALE
初回限定生産盤:スリーヴケース付き
国内盤CD:ボーナストラック追加収録/解説書/英詞・歌詞対訳封入
定価:¥2,200+税

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884