Home > News > Arto Lindsay - ──紙エレ別冊『アート・リンゼイ──実験と官能の使徒』発売中!
ノーウェイヴの実験性とブラジル音楽の官能性を繋ぐことができる唯一無二のアーティスト、アート・リンゼイ。彼が卓越した音楽家であることはすでに知られているが、しかしその本質がどこにあるのかを見極めるのは非常に難しい。たとえば彼はいまはなき昔の『ele-king』でドラムンベースの偉大さについて語ったり、アウトキャストやウータン・クランに熱中していることを告白したりする一方で、暴力温泉芸者やメルツバウ、ボアダムスを褒め称えてもいる。「僕の見方だと、ノイズもポップなんだ。一般的にはそうは考えられてないけど。同じものを違った面から捉えたものなんだ」。そう言って彼は自身の作品でノイズとボサノヴァを両立させてみせるのである。
『別冊ele-king』第5号は、そんなアート・リンゼイの全景を俯瞰する。
あるときはノーウェイヴの尖鋭として、あるときはギターの弾けないギタリストとして、あるときはフェイク・ジャズのパフォーマーとして、あるときはアヴァン・ポップの職人として、あるときはブラジル音楽のプロデューサーとして、これまでじつに多様な音楽を世に送り出してきたアート・リンゼイ。その幼少期から現在までを、そしてDNAから最新ソロ・アルバム『ケアフル・マダム』までをあますところなく語り、みずからその多面性を振り返った最新ロング・インタヴューも興味深いのだけれど、それ以上にカエターノ・ヴェローゾとの対談がすさまじい。レヴィ=ストロースからゴダールまで、人種差別から脱構築まで、とてもミュージシャン同士の会話とは思えないほど人文学的な単語が飛び交っており、そのさまはまるで学者同士の対談のようだ。もちろん音楽の話題も多岐にわたっていて、ジェイムス・ブレイクからディアンジェロまでもが次々と俎上に載せられていく。
いったいアート・リンゼイとは何者なのか? ノーウェイヴ世代最高のこの知性の本質を、ぜひあなた自身の目で確認してみてほしい。
別冊ele-king 第5号 アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
contents
【LONG INTERVIEW】
●アート・リンゼイ、新作『ケアフル・マダム』とヒストリーを語る
Part 1:ニューヨーク前史から90 年代へ(松村正人/高橋龍)
Part 2:ソロ活動期(中原仁)
Part 3:付言と断片もしくは解題(松村正人/高橋龍)
【CROSS REVIEW】
●『ケアフル・マダム』クロスレヴュー(高見一樹、吉本秀純、松林弘樹)
【INTERVIEW】
●メルヴィン・ギブス「音の干渉主義者の名参謀」
●イクエ・モリ「いつでも、自分にすごく近い音楽をやってきた」
●菊地成孔「ジョイフルなのにエレガント」
●今福龍太「ブラジルから広がるアメリカの地平」
●オノ セイゲン「誰も聴いたことのない音楽をつくるとなったとき
最初にコラボしたのがアートだった」
●三宅純「彼の魅力は自己矛盾を抱え込みそれを隠さないところです」
【COMMENT】
●大友良英:アート・リンゼイのギターを語る
●ドローイング、コラージュ、テキスト:やくしまるえつこ
【DIALOGUE】
●中原昌也×湯浅学「ノーウェイヴ放談」
【CRITIQUE, COLUMN, ESSAY】
●畠中実「初期アート・リンゼイにおける特異性」
●吉田ヨウヘイ「フェイクジャズは、その後本当のジャズになった」
●佐々木敦「歌えるか歌えないのか、弾けないのか弾かないのか、
そんなことはどっちでもいいじゃないか」
●吉田雅史「イニシャルAL の裂け目たち」
●恩田晃「都市の変調」
●ケペル木村「アートをアートたらしめるもの」
●江利川侑介「ブラジルの混淆」
●ケペル木村「ディスクガイド アート・リンゼイから聞こえるブラジル音楽」
●松山晋也「表層の官能」
【SPECIAL】
●アート・リンゼイ「トロピカリスタたち」
●特別対談:
アート・リンゼイ×カエターノ・ヴェローゾ(松村正人/宮ヶ迫ナンシー理沙)
【DISCOGRAPHY】
●アート・リンゼイ セレクテッド・ディスク・ガイド
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別冊ele-king 第5号
アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
松村正人(編)
2017/1/7 Release
本体 1,850円+税
ISBN:978-4-907276-73-7
https://www.amazon.co.jp/dp/4907276737