![]() 快速東京 ウィーアーザワールド felicity |
「僕たちは悪者だから」と一ノ瀬雄太は取材の最後にぽつりと言った。
快速東京は悪者ではない。が、そう言いたくなる気持ちもわからなくもない。彼らは、いまの日本では確実に少数派だろう。涙もろく、猫も杓子も「がんばれ」のこのご時世、快速東京の切り込み方は例外に思える。「ムダじゃん、ムダじゃん、いいじゃん」とか、「あー、ムダじゃん、絶望なんて」とか、ニヒルな言葉を撃ちまくる。いまどき、こんなパンク・ソングなんて誰が聴こうか。
快速東京は浮いている。ふざけているし、ナンセンスを面白がるような、ある種プリティ・ヴェイカントな感性が、真面目腐った日本で素直に受け入れられるとも思えない。思えば、セックス・ピストルズも出て来たときはアレルギー反応を示した人が多かった。時代は変われど、世のなかに何となく生まれるもやっとした情緒にあらがう小さな存在の扱いとは、だいたいそんなものでしょう。が、こういう人たちが切り拓くところには、いつの日か心地良い風が吹くものでもある。
2013年の1年を通して、個人的にもっと数多く見たライヴが、快速東京だった。レーベルの担当者よりも多く見た自信がある。彼らが演奏するライヴ会場に行けば若い子たちが踊っている。そして、筆者よりじじいなストーンズやキッスの10倍の速さで福田哲丸が踊っている。ミック・ジャガーとマイケル・ジャクソンを高速で動かしたような面白い踊りだが、いつぶっ倒れてもおかしくない運動量で、ときにそれは「面白い」以上の迫力を見せる。
哲丸が自らの音楽を「娯楽」とエクスキューズするわりには、その規模はまだ小さい。大きければいいってものではないのだが、彼らは規模の大きなバンドを好んでいる。筆者なんぞは、彼らが尊敬するキッスにもメタリカにも関心を持たない人間であるのだが(ブラック・サバスだけは別)、快速東京の「いま」には共感するところがある。
以下のインタヴューからは、その歴史性を失ってからのロックの現在が読み取れるかもしれない。彼らが実は2000年代の東京のハードコアに影響を受けていたこともわかる。これはリアルな話だ。筆者でさえもその時代はハードコアのライヴハウスに足を運んだものだ。彼らがまだ10代の頃、西荻のライヴハウスで会っていたかもしれない……取材には、ギターの一ノ瀬雄太、ヴォーカルと踊りの福田哲丸、ベースの藤原一真が参加してくれた。
「“ムダ”。暗いよね、これ」(哲丸)
「暗い」(一ノ瀬)
「実はさ、これ、希望なんだけどね」(哲丸)
なんでもいいワケじゃないぜ
どうでもいいだけなのだ
ムダじゃん ムダじゃん いいじゃん
“ムダ”
■先日のクアトロのワンマンが大盛況だったんだってね。良かったという評判しか聞いてないんだけど。
一ノ瀬:ほー。
■あんなにたくさんのお客さんがいるのがすごかったと、行った方々が言っててね。自分たちでも、ようやく快速東京が受け入れられてきた実感はありますか?
一ノ瀬:クアトロでワンマンをやると決めて、直前になってゲスト枠を増やすとか、そういうことをしなくて良かったなとか(笑)。
哲丸:人が増えてるなーとは思うけど。でも、増えてるからどうのとは思わない。
■冷静だねー。
哲丸:増えてんなー! ぐらい(笑)。
■1年ちょい前に快速東京と知り合って、それ以来、何回もライヴを見させてもらって、つくづく思ったのは、日本の音楽文化というか、シーンのなかでは、ホントに、似たものがいない。良い悪いの話じゃないんだけど、浮いているよ。
哲丸:へへへへ!
■ある種逆風のなかで活動しているっていうかさ。いまの日本のシーンで、快速みたいなことをやってオーディエンスを増やしていくのって、すごいよ。この面白さを理解してもらうのが、こんなに大変だったとはねー。
哲丸:ハハハハ!
一ノ瀬:キリンのCMはそこを逆手に取って、コレを見たら気になる人も増えるだろうと思ってやってるんだけど、クアトロのワンマンも、それまで普通にワンマンやるとチケット売り切れるんで、キャパを少し広くしていかないとお客さんに悪いなって気持ちでやったから。クアトロでやりたいって思ってやったわけじゃなく、クアトロでやらないと入れない人に悪いなって気持ちでやったんですよ。
哲丸:やったらできたみたいなね。
■そういうスタンスだと思うし、作年末の踊ってばかりの国との「東京ダンス」じゃないけど、まずは楽しんでもらいたいってことをやっていると思うんだけど、それがストレートに伝わらないという、変な状況もあるでしょう。
哲丸:それでもやりゃあいいじゃんってスタンス。
■クアトロのライヴでの哲丸君のダンスはどうだったの?
哲丸:いやね、正月明けで、怠惰な生活がたたってか、カラダが重たくて(笑)。
■いつものキレがなかった(笑)。
一ノ瀬:僕らは演奏しているから、哲丸の動きはよく見えてないんですよね。映像を見ると、「動いてるな、この人」って思うんだけど。
哲丸:(動くしか)やることないからね。
■で、新作『ウィーアーザワールド』、すごく良いアルバムだと思ったし、この表現は快速にしかできないと思うんだけど、ただね、今回のひとつの関心としては、いろんなことが出来たと思うんだよ。
哲丸:そうだね。
■3枚目だし、音楽性をどうするかって言ったときに、いろんな選択肢があったじゃないですか。
哲丸:流行っていたんだよな。
一ノ瀬:そうそう。
■何が?
一ノ瀬:来日ラッシュがあったんですよ。ブラック・サバス、メタリカ、キッスと。けっこうメンバー全員行って。
■ハハハハ、その流れすごいね。
一ノ瀬:オレ、去年ブラック・サバス死ぬほど聴いたし、まあ昔のアルバムだけど。
■ああ、たしかに昨年もTシャツ着てたもんね。
一ノ瀬:ホントにそれだけ(笑)。
■いや、でもスタジオ録音なわけだし。仮にブラック・サバスだとしてもスタジオ録音だからこそできることを追求するとか、いろんな選択肢はあったと思うんですよ。でも、大雑把に言って、ライヴ演奏とそう大差ない作品に仕上がったよね。
哲丸:ライヴのことしか考えていないからだよ。
■ああ。
哲丸:曲作りの段階でライヴのことしか考えていないから。
一ノ瀬:そうそうそうそう。
哲丸:短くて速くて、明るくてポップで、軽快な曲はいっぱいあるから、あのセットリストに足りないモノを、なんとなく考えながらやった。
■なるほど。あくまでライヴありきの楽曲なんだね。
一ノ瀬:他の楽器を入れるっていう発想は一回も出なかったすね。
哲丸:そうだね。
一ノ瀬:ギター的には、ライヴではできないことやっているところがあるんですよ。2本録ってそれぞれ違うことやってるっていう。
■それは初めて?
一ノ瀬:やってたかな。ギターに関しては。
哲丸:やってたけど、今回のほうが激しいわな。
一ノ瀬:そうね。
■哲丸君と一ノ瀬君ふたりの友情関係は大丈夫だったの?
一ノ瀬:いや、もう、最初から一回も仲良くないから。
■ハハハハ!
哲丸:いや、変わらないよ。ずっと一緒。
一ノ瀬:永遠に仲悪いから。
■ハハハハ、面白いな-(笑)。本当に仲悪いからね。なのに、しっかり作品作れるからすごいよ。
哲丸:そこは櫻木さん(※レーベルのボス)の仕事だから。
一ノ瀬:オレらはね、ワイワイやってればいいから。
■仲良しで「良いね」「良いね」なんて言い合ってるようじゃダメでしょう。喧嘩ぐらいしなきゃ良い物なんてできないよね。偉大なバンドはみんなメンバー仲悪いじゃん。
哲丸:今回はね、来日があったことが大きかったかも。
一ノ瀬:大きいよ。
哲丸:険悪な関係でも、キッスが来たら一緒に行くとか(笑)。
一ノ瀬:そう。
哲丸:ブラック・サバスが来て、雄太だけ行って、その感想を聞いて「良いなー」って思うとか。
一ノ瀬:こいつ、来日アーティストに高い金払って見に行くって発想なかったから。
哲丸:でもキッスは行かないと。
一ノ瀬:オレはガキの頃にオヤジにストーンズとか連れて行かれてるから、そういう発想があるんだよ。
哲丸:こういう、仲が悪くても好きなモノが一緒だから、好きなモノの話はできるじゃないですか。
一ノ瀬:いやでもね、見方が違う。
哲丸:ホントに見方が違う。
一ノ瀬:感想の話とかすると揉めるもんな。
哲丸:へへへへ!
一ノ瀬:面倒くさい!
■哲丸君はホントに面倒くさいよ。
哲丸:いいんだよ!
[[SplitPage]]オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。
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■リリースが予定よりも遅れたじゃない。それは何でだったの?
一ノ瀬:あれはね、googleのキャンペーン・ソングとかあったからだもんな。
哲丸:いろいろやってたから。
■キリンのCMもね。
一ノ瀬:ああいうのがあったり、いろいろあったから、レコーディングを遅らせてもいいかという話になったんです。
■哲丸君は昔から歌詞を書くのが早いと評判だけどさ。
哲丸:オレ、遅かった。今回は遅かった。
一ノ瀬:なんか、最後の最後まで、ごにょごにょやってたよな。
哲丸:書き方を変えたんですよ。みんなちょっと変えたように、オレもちょっと変えたいと思った。オレは楽器持ってないから、変えられるのは歌詞の書き方だけだって。
■歌い方も変わったよね。
哲丸:ホント?
一ノ瀬:メロディが出現しているんですよね。
■あと、歌い方がよりパンキッシュになった。
一ノ瀬:ほー。
哲丸:へー。
■それない?
一真:ジョニー・ロットン風味になった。
■ねえ?
一ノ瀬:それもねー、さも考えているようだけど、実は考えていないから。全然そんなことない。
哲丸:ハハハハ。
■でもオレは、今回のアルバムでアンガー(怒り)をより強く感じたんですよ。
一ノ瀬:そこはね、オレは哲丸も大人になったなと思ったところがあったんだけど、でも、ちょっと説教臭いんじゃない?
■えー、全然説教臭くないよ。むしろ、快速東京は、情緒とか、詩情とか、日本人が好きなウェットな感情をホントに取り入れないじゃない。
哲丸:入れないね。
■それを売りにしないというか、そこが素晴らしいと思うんだよ。
哲丸:娯楽だから。
一ノ瀬:その解釈はすごいね。たしかにそうかも! そういうものは全然オレらにはないですね。
■娯楽って言ってもね、ビジネスを考えれば、しんみりした音楽のほうが売れるわけだよ。
哲丸:そこを考えてないから。
■わかってて逆らっているのか、はなっからそれがないのか。
哲丸:はなっからないんだと思う。
■そうなんだ。
哲丸:音楽をやる理由がそこにない。
一ノ瀬:だけどね、意外とオジー・オズボーンやメタリカは詩情を出しているときもある。キッスにはないけどね。
■オジー・オズボーンはなんかわかる。
一ノ瀬:子供が生まれたときに優しい曲を書いているんですよ。けっこう、可愛いヤツなんですよ。
哲丸:生まれたらオレだって書くかもよ。
一ノ瀬:ブラック・サバスで最初あんなダークなアルバムを作ったのも、当時ゾンビ映画を作っていて、ただそれだけだっていうね。
■あの人たちは工場の町の労働者階級に生まれ育ったから、その環境に影響されたとも言ってるけどね。
哲丸:それはわかる。そこへいくとオレたちは、まあまあ幸せな家庭に育っているから、そんなヤツらが「生活が-」とか歌っても説得力ないじゃん。
■そうは言うけど、哲丸君の言葉には何か訴えるものがあると思うよ。今回も“ハラヘリ”とか“ダラダラ”とか“ムダ”とかさ、良い歌詞がいっぱいあって、さらに言葉の力も強まっていると思ったけど。
哲丸:お、“ハラヘリ”っていま言ったよ(笑)。
一ノ瀬:すげー、“ハラヘリ”に言及した(笑)。
■面白いよ、あれ。
哲丸:だよねー。ほらー、ハハハハ!
一ノ瀬:やっぱ虚無感みたいなもの(笑)?
■哲丸君がいちばん気に入っている歌詞はどれ?
哲丸:いや、別に、歌詞はぜんぶよく書けているでしょう。今回は、たくさん書いて、削って作っているの。このことは、原爆オナニーズのタイロウさんとの対談が関係しているんだけど、ま、それはいいとして、歌詞かぁ。
一ノ瀬:気に入ってる曲は何よ?
哲丸:オレは“ヤダ”とか好きだよ。
一ノ瀬:“ゴハン”がいいって言うのは?
哲丸:“ゴハン”は、曲における歌詞という意味では、いちばんハマったなと思ってる。僕のなかのパンクというぼんやりしたもののなかに、“ゴハン”という曲はばっちりハマった。書いて、「わー、パンクだ、これ」と思った。
■一ノ瀬君は?
哲丸:知らないだろ、歌詞なんて。
一ノ瀬:いや、こないだも久しぶりに聴いたけどさ。オレはやっぱ“メタルマン”がね。
哲丸:ハハハハ。
■“メタルマン”と“あくまくん”が好きなんだ。
一ノ瀬:ていうか、“メタルマン”はオレの曲で、オレが種を撒き、「お前ら触るなー」って育てているわけですけど。で、“メタルマン2”の歌詞を書いたとき、哲丸もやっとオレが言ってることがわかってきたなと思って。それは、歌詞の内容じゃなく、アクセントの置き方とか、そういうところで、他の曲は、オレが思っていたアクセントとは違っているところがいっぱいあるわけ。だけど、“メタルマン”は、アクセントが良い感じで入っている。
哲丸:一真はどれが好き?
一ノ瀬+哲丸:思い出して!
一真:……。
■ここに歌詞カードあるよ。
一真:……。
■もっとも哲丸らしいなと思うのはどれ?
一真:……。
■“ダラダラ”なんか哲丸節って感じじゃない?
一ノ瀬:これは説教臭さがないですよね。
哲丸:あれは時間がかかってない歌詞だね。
一ノ瀬:“アトム”なんかは哲丸にしては……。
哲丸:いや、あれはいろいろあんだよ。
■ポリティカルだしね。
哲丸:ハハハハ。
一ノ瀬:そういうことは出さないほうが、あんときは格好いいと思っていたんだけど……
一真:“ムダ”。
哲丸:“ムダ”。暗いよね、これ。
一ノ瀬:暗い。
哲丸:実はさ、これ、希望なんだけどね。
一ノ瀬:とにかく、哲丸の変化は感じてましたね。
哲丸:いいじゃん。
一ノ瀬:難しいことを言うようになったとは思いましたね。
一真:「じゃん」って言い方が哲丸らしいよね。
哲丸:ハハハハ!
一ノ瀬:腹立つよね。
■え、なんで(笑)?
一ノ瀬:うーん!
哲丸:ハハハハ!
一ノ瀬:まあ、歌詞はこいつの聖域だから、よほど迷っているときぐらいしか、オレらにも相談しないし、せいぜい「どっちが1番がいい」ぐらいだよね。
哲丸:そうそう。
■音楽的な主導権は一ノ瀬君なの?
一ノ瀬:いや、それは全員。
哲丸:「このあとどうしたら格好いいかな」とか、「キッスだったらこんなにドラムを細かくしないよ」とか。
一ノ瀬:意外とみんなで話しているんですよ。オレが主導権を握ったのは“メタルマン2”ぐらいで、あとはみんなで話し合ってやってますね。誰かが主導権握って、ひとりの頭で作れば、スタジオ代1/4で済みますよ。必ず、音を出して、確認するんですよ。オレがギターを弾いて、それをみんなで聴いて、そこからリズムを考えてって。時間がかかるんです。
哲丸:意外と建設的だよね。
一ノ瀬:全員が「いい」ってなると、「ヨシ!」ってね。
■しかし、今回は3作目だしさ、何か仕掛けてくるかなという期待もあったんだけどね。変化球とかさ。
哲丸:やらんね。
一ノ瀬:オレら、そんなにクレバーじゃなかったんでしょう。
■いや、賢さっていうか、バンドの信念みたいなものがあるのかな?
一ノ瀬:実は、信念もそんなないし……いや、オレらがバラードを作ることはないってことだけはわかっているんですけど。「やらない」ことははっきりしているんだけど、「やりたいこと」はわりとほんわかしていて。将司がおそいリズムを叩きたいと言ったのも意外だったし、あいつがキッスを聴き出したりとか。メタリカも遅い曲あるし。みんながステージに上がってやりたいことをやる、で、一真だけが一段上から見下ろしているっていうね。
哲丸:(一真が)いちばん冷静な判断をするからね。
■一真君もキッスやメタリカが好きなの?
一真:好きですけど……。
哲丸:ハハハハ。
■強制されたの?
一真:いやいや、そういうわけじゃないですけど。高校のときに聴いてたけど、最近は聴かないですね。
■だってさ、世代的にはおかしいでしょ。キッスはオレが小学校のときだったし、メタリカだって80年代からいるバンドだし。
一ノ瀬:メタリカやストーンズを好きなのって、僕らよりも下が多くて。
意外なんだけど。
東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。
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■ずっと思っていたんですけど、快速東京のお客さんは本当に若いじゃない。若い人が多いよね。
一ノ瀬:オレらの世代は、せいぜいニルヴァーナとか。もうちょっとリアルタイム感があったんですよ。90年代の音楽だったりとか。でも、いまの子たちは、ネットのせいなのか、マジで時間がフラットなんですよ。2000年以前はぜんぶ一緒くたに考えているから。
哲丸:「昔の音楽」みたいな。音楽の時間軸がない。
一ノ瀬:アナログ・レコーディングもエフェクトのひとつぐらいにしか考えてないから、悪い音でも素直に聴けてしまっているんだよね。オレらよろ上になると、80年代以前は古くさくて聴けないみたい人もいるんだけど、(中尾)憲太郎さんとかそうだよ。うちのプロデューサーです。ナンバー・ガールのベースやっていた。「オレらのときは、ニルヴァーナより昔の音は古くさくて聴けなかったけどね」って言ってたよね。リアルタイム感があるんですよ。
哲丸:ロックにまだ時間軸があったときだよね。
一ノ瀬:いまではもう歴史になってるから。いまロックが生まれている実感がない。
■まあ、言い方変えれば、ブラック・サバスと競り合わなければならないわけだ。
一ノ瀬:そうそう。新しいものを目指すとロックから離れなければならないという、この矛盾を抱えながらやっている。最近メジャー・レーベルがやっているのは、みんな、裏打ちの速いリズムで、そこに日本人ぽいメロディが乗るっていう。それってでも、日本にしかないから、新しいんですよ、サビでハモっちゃたりして。
■ちょっとエモな感じ?
一ノ瀬:90年代のエモの影響は大きいですよ。でも、イギリスなんかは、アークティック・モンキーズみたいに、ちゃんとブルースの影響が残っているところが面白いなーと思いますね。
哲丸:日本にはロックがなかったからさ。
一ノ瀬:メロディがさ。
哲丸:歌謡曲みたいになっちゃうんですよ。
一ノ瀬:アメリカ人がロックやると、そうはならない。
哲丸:生活にロックがある感じがするんだよね。
一ノ瀬:生まれ育ったところのメロディが違うんだよね。
■みんな、同世代のなかでも浮いてたでしょ?
一ノ瀬:どこで?
■学校とかで。
一ノ瀬:多摩美時代には、テクノ好きばかりだったね。
■マジで?
一ノ瀬:ホント、そうすよ。オレの入ったときは、『トレインスポッティング』世代が多くて、みんな“ボーン・スリッピー”から入ったみたいな。
週末はアゲハに行くみたいな(笑)。そんなヤツばっかりで、オレなんかが「ギター弾いてるんだよね」って言うと、みんなピンと来ないっていうか。やっとテクノ・ブームが終わりつつあるよ。東京人からすると、東京のリアルってテクノじゃないんだよね。オレが高校のときは、みんなバンドだった。銀杏ボーイズも人気あったけど、東京のハードコア・バンドに詳しいヤツ、いっぱいいたもん。で、大学に入ったら、田舎もんがいっぱい来て、「東京はテクノだね」って。
■それ何年の話?
一ノ瀬:8年前ぐらい?
■『トレインスポッティング』って1996年の映画だよ、多摩美のその子らが時代錯誤だっただけでしょう。
一ノ瀬:そうそう、田舎もんなんですよ。
■“ボーン・スリッピー”なんてもうかなり昔だよ(※1995年)。テクノのDJ、いまさらそんなものかけないから。
一ノ瀬:だから音楽好きじゃないヤツらが、テクノとかって言いだして、アゲハ行ってって、そんな感じだったんですよ。
■それはダサ過ぎるよー。
一ノ瀬:ですよね。まあ、それはとにかく、東京のリアルってハードコアだったんですよ。哲丸もやっぱそうだし。東京人はみんな聴いていたんだよな、ハードコア。
■オレでさえSFPを聴いていたからね、2000年代の東京がハードコアだっていうのは理解できる。みんなはどんなハードコアを聴いていたの?
哲丸:僕はレス・ザン・TVですよ。僕は、どしゃーと社会的なことを歌うのは耳が痛いってなってしまうんですけど、レス・ザン・TVの面白さは、客がみんな爆笑しているんですよ。だからあの人たちがやっている音楽にはユーモアがある。だけど、「それがどんな音楽か」と訊かれれば、ハードコアとかパンクとしか答えようがない。その現象が、僕にはハードコアだと。
一ノ瀬:ポリティカルなヤツらって、ハードコアにいなかったよね。
哲丸:いなかった。
一ノ瀬:BREAKfASTの“VOTE!!”が出たときは、すごかった。革命を感じたね。そこを歌ってしまうんだ! って思った。
哲丸:あれはすごかった。面白かったもん。
■へー、ちょっと意外。でもさ、BREAKfAST聴いている子なんて、同世代で言ったらかなりの少数派でしょう。
一ノ瀬:そりゃそうですよ。
哲丸:みんな、くるりとかさ、ナンバー・ガールとか、アジカンとか。
一ノ瀬:ハイスタの残り香のあるようなのとか、そういうのはいたけど、オレがクラプトンのライヴに行くことを理解できる友だちはいなかったです。
哲丸:オレもひとりでレス・ザンのライヴに行っていたから。
一ノ瀬:そういえば、高校のときもメタリカ聴いてたヤツなんかいなかったなー。
■だから一ノ瀬君が高校生のときなんか、メタリカのピークは過ぎていたでしょ。
一ノ瀬:そうっすね。
哲丸:オレらの世代だと、まわりは、洋楽自体をもうあんま聴いてなかったもんな。
一ノ瀬:グリーンデイぐらいじゃない。オフ・スプリングとかね。
哲丸:ああ、そういうのはいたね。
一ノ瀬:そこを入口に深いほうに行くヤツはいたよ。
哲丸:オレのまわりにはいなかったな。
■いまの、ハードコアが背景にあるのは面白い話だと思ったんだけど、快速東京のライヴでもみんな笑ってるじゃん。
哲丸:やっぱそうじゃなきゃ、意味ないもん。
一ノ瀬:楽しむことがいちばん大切なのに……、楽しくないライヴ多いよね。
哲丸:ライヴを聴いて、次朝起きて曲を思い出して、そして思いを深めてとか、止めて欲しい。オレらのライヴが終わったら、それはそれまで。オレらの話なんかしなくていい。
一ノ瀬:そこは見に来た人が勝手に考えることだろ。
哲丸:ぜんぜんそうなんだけど、僕がやりたいのはそういうこと。
■余韻を残すようなことはしたくないだよね。
哲丸:その瞬間に「イエー!」で。
■ユーモアとか反抗心とか、いろんなもんが吐き出ているんだけど、スカッと終わる。
哲丸:娯楽だから。
一ノ瀬:エンターメインメントだから。
■ところが日本のロックって、なんかちょっとトラウマがないとっていう。
一ノ瀬:そうそう。
哲丸:あれなんでなの?
一ノ瀬:演歌だからね。不倫のカルチャーでしょ。
哲丸:やべー(笑)。
■なにそれ?
一ノ瀬:不倫の歌って多いじゃないですか。でもオレ、“孫”とか売れたときに晴れやかなものを感じて、演歌も進化してんなーと思ったことがある。
哲丸:氷川きよしもいいよな。♪やだねってら、やだね~。
一ノ瀬:あれ、ロックだよ。ジェロも良いよね。でも、“天城越え”とか言われると「ちょっとなー」って。
■“天城越え”、いい曲じゃん(笑)。
哲丸:良い曲なんだよ(笑)。でもなー。
一ノ瀬:「越えられてもなー」って(笑)。
■ハハハハ。
一ノ瀬:オレら、わりと真面目に音楽聴いてるんですよ。演歌だってちゃんと聴いてる。
■そうだよね、“天城越え”なんか君らの世代は知らないものね。
一ノ瀬:アイドル文化の歌詞には最近は違和感を感じね。「みんな元気を出しましょー」とか。なんか、気持ち悪いんだよね。アイドル・カルチャーこそ本来はエンターテインメントであるはずなのに。
哲丸:ありゃ-、また別モノだからな。
■銀杏ボーイズの峯田君が、アイドルよりもこっち(ロック)のほうが格好いいよってことは言いたいみたいな話をしてて。たしかに、オレも正月帰省して同世代のヤツらと会ったりして、同世代のいいオヤジがアイドルに夢中になっている様を見ると、ちょっとマズいかもって思っちゃうよね(笑)。
一ノ瀬:合法ロリっていうか、海外ではNGじゃないですか。レディ・ガガがあれを批判的にやってるってことを気づけてないこともすごくダサいし。アンチテーゼってことが理解できてないんじゃないのかなって思いますね。
哲丸:お国柄かな。
一ノ瀬:励ましソングもいいけど、実際に励ますとき、励ましの言葉じゃない表現もあるじゃないですか。「元気出せよ」じゃなくて、「ふざけんなよ、おまえ」っていうのも励ましだったりするわけですよ。そういうことが理解できなくなっちゃったんですよ。
哲丸:みんな疲れちゃってんだよ。
一ノ瀬:疲れかぁ?
哲丸:だって、満員電車に乗ると、隣のサラリーマンのイヤホンの音がもれてくるわけですよ。そうするとさ、西野カナとか、慰めている曲を聴いているわけですよ。「がんばって」とか。「大丈夫だよ」とか。「なんとかなるよ」とか。そういうのばっか聴いてる。みんな、余裕がないですよ。ロックは、余裕がないとできないと思っているから。
■心の余裕だよね。
哲丸:そう、心の余裕。
一ノ瀬:金銭的な余裕がまったくないのも問題ですけどね。
哲丸:余裕がないんだよ。
一ノ瀬:オレ、そこだけじゃないと思うけどな。そこもあるんだけど、やっぱアンチテーゼを理解できないってことも大きいと思うよ。たとえば会田誠の絵を見てさ、あれはただのロリ好きのおじさんって本気で思っちゃってるじゃない。
哲丸:思ってるね。
一ノ瀬:でも違うじゃん。あれはアンチテーゼじゃん。そこが理解できないのよ。その裏側に何があるのかってことを。
哲丸:だから、考える余裕がない。
一ノ瀬:ま、それもそうか。
哲丸:見たまんま理解しちゃってるから。
一ノ瀬:宮崎駿の作品でさえ批判があるのに、なんでアイドルにはそれがないのかって。
■別にその人の趣味だったらどうでも良いけど、2~3年前までロックについて書いていたような、偏差値高そうな連中まで本気で論じちゃったりとかね(笑)。
一ノ瀬:昔のちゃんとしたアイドルとはまた別モノだからね。海外にもアイドルいるけど、歌うまいし、曲も自分で書いたりしているし。でも、日本では、なんかおっさんに踊らされてるっていうか。小学生や中学生の女の子は憧れらるからなりたいと思うじゃないですか。
[[SplitPage]]会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。
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■踊ってばかりの国もそういうところがあるけど、哲丸君の歌詞にはトゲがあって、でも、いまの日本ではそのトゲを見ないようにするっていう風向きが強いよね。
哲丸:ハハハハ。
一ノ瀬:会田誠はそのあたりうまいよね。アンチテーゼをうまく出せていると思う。直接的な言い方はしないけど、めちゃくちゃ批判しているっていうね。
■傷つけ合うのが恐いみたいな空気感があると思うんだけど、快速東京は良いよ、ふたりが仲良く喧嘩しててさ。
一ノ瀬:銀杏ボーイズみたいに(売れている)数字もあって、知らない人はいないような存在でさえも、なんかメインストリームからははじかれるっていうか。アイドルって、結局、無害で、いっさいの苦情が来ないような、綺麗なことしか歌えないようなカルチャーになってしまっているわけですよ。あの子たちもすげーがんばって、だんだん人気も出てって、それで会場も大きくなっていって、ももクロじゃないけど、日産スタジアムでどかーんって。それを記録して、見せて……で、それって、キッスとどこが違うだ? って言われれば、「同じじゃん」とも思うんだけど(笑)、でも、それを気持ち悪いって言う人間がひとりもいない状況は絶対に良くないよね。
哲丸:まあ、アイドル自身は悪くないからな。
一ノ瀬:でも、人生のいちばん大切なときに勉強しないでさぁ、どうするんだろうなぁって思うよ。
■日本のロック・バンドにがんばって欲しいよ、マジで。
一ノ瀬:がんばったほうがいいすよね。まあ、オレの読みでは、もうすぐロック・ブームが来るので。
■どこに根拠があるの(笑)?
一ノ瀬:いや、もう流れがきてますよ。僕の世代では、モーニング娘が下火になったときに、銀杏が出てきている。だから、AKBがそうなったときに(ロックが)出てきますよ。まあ、これだけアイドルの時代が続いてるんだから、そろそろ下火になっていくでしょう。
■今日は、せっかく一真君がいるんだし、彼の話を聞こうよ。
一ノ瀬:いいね!
■一真君から見て、いまバンドはどう?
一真:どうって?
■この1年で、どう飛躍したのか、どう変化したのか、どう……。
一真:どう変化?
■なんか感想あるでしょう?
一真:あんま変わってないですね。最初からこんな感じですよ。
■バンドにとってベースは重要だよね。
一ノ瀬+哲丸:ハハハハハ!
一真:ホントは、もっとうまく演奏したいんですけど、できないんで……。
一ノ瀬:いいよ、ルート弾きが似合っている人もあんまいないから。
哲丸:一真はそこにいるだけで格好いいんだよ。
一ノ瀬:ここにめちゃくちゃうまいヤツが来ても面白くないから。
哲丸:そんなじゃ、やる気なくなっちゃうよ。
一ノ瀬:オレ、絶対にソロ弾かないよ。
一真:ホントはね、フーみたいなベースを弾きたいんですけど。
一ノ瀬+哲丸:おいおい!
哲丸:すごいの出すね-(笑)。
■志は高いほうがいいでしょ。いずれベースソロが聴けそうだね。
一ノ瀬:ルート音のベースソロね。♪だらだだ~。
哲丸:格好いい~、格好良いね。
■今回の『ウィーアーザワールド』は、資料には「東京から世界へ」って書いてあるけど、本気で世界進出を意識しているの?
一ノ瀬:前作が『ロックインジャパン』だったから、今回は「ワールド」ってことで広くなるのと。
■ハハハハ、「ジャパン」の次に「アジア」とか、それはなかったの?
一ノ瀬:たまたま“ウィ・アー・ザ・ワールドを聴いたんですよ。「これだ!」って。で、後付けの意味としてはだんだん広くなっている。意味ありげなね。オレらがそれを言ったら、マイケル・ジャクソンの“ウィ・アー・ザ・ワールドとは別の意味を持てるだろうって。『ロックインジャパン』のときも、オレらが同じ言葉を使えば、あのフェスとは別の意味を受け取る人もいるはずだと。発言者によって意味が変わって聞こえる有名な単語。
■オレは深読みしちゃって。
哲丸:それはしてくれたほうが良いね。
一ノ瀬:深読みしやすいタイトルだからね。
■「オレたちが世界だ、おまえたちに見えてない世界がここにある」っていう風に。
一ノ瀬:あ、それ良いね。
哲丸:そうしよ。
一ノ瀬:良いタイトルだな。
哲丸:それで決まりだな。
■ところで今回のデザインは何? 不評だった、カッターで切らないと開かない仕様をまたしても踏襲しているけど。
一ノ瀬:いや、これは意志持ってやっているんだから! 中古対策なんで
す。BOOK OFFに持っていっても、ジャケが破けているから、値段が下がるはずでしょ。
■売るなと。
一ノ瀬:そう。あとは自分で開ける感動だよね。一回PCに取り込んでもう開かれないCDじゃなくて、友だちにデータ送るんじゃなくて、モノとしてこのCDを貸してやって欲しい。
■デザインは一ノ瀬君の聖域になっているの?
一ノ瀬:いや、ベースはオレが考えているんですけど、歌詞カードは前作の倍の大きさにしたいってい意見があって。
■歌詞カードの文字もでかいしね(笑)。
一ノ瀬:だから重いんだよ。
哲丸:重いCDっていいじゃん。モノ感があって良いよ。
一ノ瀬:オレは紙のケースが良かったんだけど、意外なことに哲丸がプラケースが良いって。
哲丸:オレはデジパックでも良かったけど、雄太のアイデアがデジパックでなければいけないほどのものじゃなかったから、じゃあ、プラでいいんじゃない? って。
■細かい話だけど、『ウィーアーザワールド』のこの書体は?
一ノ瀬:ハハハハ、それは勘亭流っていういちばんダサい書体で、そのダサい書体をどう使うのかっていうのが自分のテーマとしてあって。
哲丸:これだけはオレも一発で良いなって思ったね。
一ノ瀬:説明しちゃうと、段ボールに「取り扱い注意」ってステッカーが貼ってあるイメージなんです。
■いちいち理由があるんだね。
哲丸:ハハハハ。
一ノ瀬:そう、ぜんぶ理由があってやっているから。
(了)

















自身が昨年から思案し続けてきた、新しい名義、音楽的には80年代new waveのダークなno vocal music+現在の北欧Industrialシーンに対する私的な返答、Industrial,drone。
NeraeのメンバーだったReizen(guitar)その後の活動には常に注目しているのですが、そんな彼が参加したオムニバス作品。なんとIncapacitants美川さんと共に名前が挙がっている、これには驚いた、ReizenとはAndrew Chalkの影響やドローン、実験系のアーティストの話をした印象ばかりが強く残っていた。
Reizenの新作が出てしまいました、さてこちらの新作上記オムニバスの参加等、更にそのオリジナリティを突き進めた彼の音世界、激シブです。
Reizenに美川さんが並んだ事に驚くと同時にK2,hakobuneとのスプリットがリリースされたのも個人的には事件だった内容もK2コラージュnoise、hakobuneドローンとお互いの個性がいかんなく発揮されている、ノイズは日本で、東京でその形を、10年代以降更に進化、細分化している。そんな事を目の当たりにできる盤、しかもレコードで聴ける贅沢。
日本のノイズシーンの流れに対して、直系の担い手と言っても大袈裟ではないKubota Kazumaの存在を記しておきたい、
00年、10年代以降のエレクトロニカを含め細分化されていくノイズ、その進化にまた別の側面を提示、挑戦し、実は12,13年最も分かり易く、実験的なサウンドへのアプローチを見せた田中晴久さん、自身周辺のアンビエント、ドローンのコミュニティにも積極的に参加、関係を築き、その結果生み出されようとしている1stソロ作品。この作品には様々な可能性が秘められている、田中晴久さんは並行してMERMORT sounds film(Bass,Laptop)での活動も行っているが、その経歴の中にNY地下との関係を築いている。
モダーンミュージックのレーベルPSFから新譜としてvoidの音が飛びこんで来たのも今年の印象的な出来事だった、.esはalto saxの橋本孝之さんpianoのsaraさんから成るユニットである。
正直目標というか指針というか99年、2000年代初期、中期に実験的音楽シーン、メディアに登場したアーティストの皆様にはあこがれの気持ちがこの10年代に入っても消えないのだか、いや、おそらく生涯尊敬し続けるだろうアーティストの一人畠山地平さんの06年リリースの1st、アメリカは重要なレーベルKrankyからdroneとカテゴライズされた作品。
畠山地平さんとほぼ同時期、その名は07年からメディアに登場していたmoskitooさん、
13年DOMMUNEでの現代ノイズ進化論はvol.3まで開催したのですが、hatis noitさんはそのvol.3に出演。