「P」と一致するもの

 そう、そういう言葉があるのだ、“オンライン・アンダーグラウンド”……の、オフライン祭が23日に開催される。フレッシュなメンツをメインに、Seihoや食品まつりa.k.a foodmanなど八面六臂の活躍をみせる先輩的プロデューサーたちが脇をかため、VJには§✝§の名も。連休明けにオチないために!

 テクノ専門学校、ドローン大学、スパイス部にレコ部――世に学府、部活はあまたあれど、『映像夜間中学』ほど、習熟度のいかんを問わず、あまねくひとびとに門戸の開かれた学舎はふたつとございません。特殊漫画家であるとともに学長である根本敬秘蔵の映像とディープなトピックでつづる語りの場はマンガ以上にマンガな不条理あふれるこの世の仕組みをあらわに。観るだけではなく、聞くだけともちがうこの至高のイヴェントが、15年め突入を記念し、ふだん根城にする渋谷〈UPLINK〉を飛び出し、この黄金週間、あなたの街にやって来る!
 五月病はおろか中2病にも効果覿面! 映像夜間中学、今晩より開校です!!

■学長の言葉
 “この世”の存在は根本(こんぽん)的に下らなくてフザケたものだ。そこを大大大前提とし、その認識から出発した上で人は真面目に生きるべきだろう。ようするにマジメな事を只、無自覚にマジメなままやってマヌケの魔力に足下掬われるのではなく、フザケた事を真面目にやり通す者たれという事。その辺の事を一見バカバカしく思える映像を見ながら体験して頂ければ幸、ってな『場』でありたや。

■DAY1:京都“メトロ大學”校
5月1日(金)18:30開場 / 19:00開演
会場:クラブメトロ|CLUB METRO
Tel. 075-752-4765 / https://www.metro.ne.jp/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

■DAY2:福岡校
5月2日(土)18:30開場 / 19:00開演
会場:アートスペース・テトラ|art space tetra
Tel. 092-262-6560 / https://www.as-tetra.info/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)
※翌日の5月3日(日)にはDJ根本敬出演のライヴ・イヴェントあり。

■DAY3:広島校
5月4日(月祝)
会場:音楽喫茶 ヲルガン座
Tel. 082-295-1553 / https://www.organ-za.com/
【夜の部】19:00開場 / 19:30開演
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)
【昼の部】14:30開場 / 15:00開演
※夜の部にご参加の方のみお申し込み頂ける“根本敬入門編” です

■DAY4:大阪校
5月5日(火祝)20:00開場 / 20:20開演
会場:シネ・ヌーヴォ|Ciné Nouveau
Tel. 06-6582-1416 / https://www.cinenouveau.com/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

■DAY5:名古屋校
5月6日(水祝)18:30開場 / 19:00開演
会場:パルル|parlwr
Tel. 052-262-3629(当日のみ対応)/ https://www.parlwr.net/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

詳細は以下よりご確認ください
https://www.uplink.co.jp/news/2015/36798


Young Guv - ele-king

 ファックト・アップにもギタリストとして参加するヤング・ガヴァナーことベン・クックの、初のソロ・アルバムがリリースされた。ファックト・アップと記すとファックト・アップ・ファンが聴くものとどこか限定されてしまいそうだけれども、本作は一見彼らの対角線上にあるような、アリエル・ピンクやマック・デマルコ、あるいは〈スランバーランド〉や〈キャプチャード・トラックス〉のギター・ポップ、もしくはガールズなどのファンこそ──近年のUSインディ、ことに2000年代末に2000年代末のやり方で(=ガレージーでサイケデリックでシューゲイジンでニューウェイヴィなやり方で……と書くといっこも新しい要素がないみたいだけど)ギター・ロックのリアリティを更新してきたアーティストたちが気になるリスナーこそ聴くべき作品だ。ファックト・アップはもちろん素晴らしいバンドだけれど、ダミアン・アブラハムのインパクトとベン・クックのこのソロ作の音楽性とのあいだにはひとまず関係はない。両者がハードコアを概念的にも方法的にも共有していることはたしかだが、まあ、まずは聴いてみれば瞭然とすること。『ライプ・フォー・ラヴ』のジャケと音だけに触れてみれば、それはあたかもフレッシュな新人……もしくはすこし注意深く聴けば、年齢のいった新人の作品として深い印象を残すだろう。若い人間では得られない時間と経験の堆積が味わいとして滲み出つつ、しかし、その音はとてもみずみずしい。たとえばダックテイルズにおいてエクスペリメンタリズムであったはずの深いリヴァーブや粗いプロダクションは、ここでは微量の疲労感や「やれやれ」感として鳴っているようでもあり、それはひりっと切ない。

 “クラッシング・センセーション”などは〈キャプチャード・トラックス〉以降のガレージ・ナンバーとして、ニューウェイヴィな打ち込み音楽との折衷がありつつもオーセンティックな味わい。アルバム全体のムードを統べるのはそうした曲調だが、“クローリング・バック・トゥ・ユー”など、ティーンエイジ・ファンクラブかという堂々たるギター・ポップ、“リヴィン・ザ・ドリーム”のラヴからハーマンズ・ハーミッツまで彷彿させるソフト・サイケがはさまり耳の食欲を刺激する。さらにポップスとして奥行を加えているのが、表題曲の“ライプ・フォー・ラヴ” や“ロング・クラウド(Wrong Crowd)”など、プリンスからホール&オーツ、またスタイル・カウンシルなどを思わせ、ソウルを介してニューウェイヴやネオアコをつらぬくようなトラック。とくに終曲の“ロング・クラウド”は7分強とアルバム内ではダントツに長尺で、GWの浮かれた空気からスムーズにチルアウトするにはもってこいだ。若い痛みや苦みが経年によって心地よく摩耗したようなこれら楽曲のフィーリングが、前掲のアリエル・ピンクかマック・デマルコか、はたガールズかダックテイルズかといった現在形のモードと混在しているところがとてもいい。

 かといって「普段聴きにちょうどいい」というような機能性が目指されているわけでもないことは“アクエリアン”ラストの意味不明なノイズなどにもあきらかだ。人への、ライフへの、音楽への「愛が熟した」タイミングに実った、きっとそんな作品なのだろうと思う。

PortaL (Soundgram / PLLEX) - ele-king

最近良かったなぁと思った曲を並べました。

HEADZ 20th Anniversary Party - ele-king

 ここ最近も、空間現代やgoat、あるいはMoe and ghostsなど、むちゃくちゃ刺激的でユニークな作品をリリースしている、佐々木敦主宰のHEADZが今年で20周年を迎えます。GWの真っ直中5/2と5/3の2DAYS、レーベルは渋谷で20周年を記念にしてのイベントを開催します。
 これだけのメンツが揃うことは滅多にないでしょう。ぜひ、日本の音楽シーンのカッティングな局面を体験してください!

HEADZ 20th Anniversary Party
“HEADZ 2015-1995=20!!!”

日時:2015年5月2日(土)、5月3日(日)
会場:渋谷TSUTAYA O-nest

開場:16:30 / 開演:17:00
料金:2,500円+1 D(当日のみ)


UNKNOWNMIX DAY(5月2日)

伊東篤宏(Optrum)
豊田道倫
core of bells
空間現代 × Moe and ghosts
goat
ju sei
MARK
コルネリ
suzukiiiiiiiiii × youpy


WEATHER DAY(5月3日)

三浦康嗣 & 蓮沼執太
木下美紗都と象さんズ
detune.
Jimanica
minamo(杉本佳一 + 安永哲郎)
ASUNA
よだまりえ
毛玉
SUBMARINE


問い合わせ:HEADZ(TEL. 03-3770-5721 / https://www.faderbyheadz.com

80年代後半より、映画、音楽、芸術、近年では文芸、演劇とジャンルを横断し、精力的な活動を続ける批評家の佐々木敦が主宰するHEADZが今年で発足20周年を迎えます。

カッティング・エッジな音楽雑誌『FADER』、ジャンルレスな濃縮雑誌『エクス・ポ』他の編集・発行、トータス、ジム・オルーク、オヴァル、カールステン・ニコライ他の海外ミュージシャンの招聘(来日公演の企画・主催)、UNKNOWNMIXやWEATHERといった音楽レーベル業務、飴屋法水の演劇公演の企画・制作等(ままごと『わが星』のDVD他、演劇やダンス・パフォーマンスの作品を発表するplayレーベルもスタート)、HEADZはこの20年、多岐な活動を続けて来ています。

このアニヴァーサリー・イヤーを記念したイベントをゴールデンウイークに行います。
5月2日(土)は佐々木がHEADZ発足以前よりスタートさせていたレーベル、UNKNOWNMIX所縁の音楽家が、5月3日(日)は2000年よりスタートし、こちらも15年以上の歴史となったWEATHERレーベル所縁の音楽家が出演致します。

「空間現代 × Moe and ghosts 」や「三浦康嗣(□□□) & 蓮沼執太」のような、この日限りの貴重なコラボレーションも含む、HEADZが紹介して来たさまざまな刺激的な音楽をぐっと凝縮して体感出来る、この二日間の公演に是非お越し下さい。

MUST COME !!


Adrian Sherwood - ele-king

 時計は19時30分頃を指していた。ダビーでインダストリアルなビートをBGMに、たくさんのひとが地上階からフロアへと伸びる階段にたむろしている。この日最初に目にした光景だ。当日券がソールド・アウトになってしまったのは、自分が会場に着いてからものの5分後の出来事だったらしい。エイドリアン・シャーウッドと関係を築いてきたリスナーたちはこんなにも多いのである。

 おそらく、その各々に独自のシャーウッドへのアクセス経路があったにちがいない。ミキシングのスペシャリストである彼が関わってきた作品はあまりにも多く、その影響はあまりにも大きい。ダブ好きが通る道でもあれば、インディ史にクレジットされた人物でもある。階段に居座る様々な世代のレイヤーがそれを体現しているのだろうか、と考えているうちににせんねんもんだいのライヴがはじまっていた。

 バンドの演奏をシャーウッドが生でミックスするというセットだったのだが、ステージ上にシャーウッド本人の姿はなく彼はフロアの後方で黙々と作業を行っていた。両者が向かい合う立ち位置で真剣勝負さながらの空気のなか、あたかもピッチャーとバッターの関係のようにドラムが放つ変化球的スネアを強烈なディレイで客席に打ち返し、ギターの放つマシンガンのような金属音をリヴァーブで加工していく。エンジニアとしてシャーウッドが演奏に展開をつける演出家的な立ち位置にまわることもあれば、彼自らが音を操り前に出ていき第四のメンバーのように立ち振舞う局面も。ライヴ前の短い日程で行われたレコーディング・セッションにおいてシャーウッドはバンドの音を深く理解したようだ。先月シャックルトンとの共演も経験したにせんねんもんだいは一体どのような作品を彼とスタジオで作り上げたのだろう。

 バンドとの「セッション」を終えて、ふたたびシャーウッドがステージに戻ってくると「マルチ・トラック最新セット」と銘打たれたこの日最後のステージが始まった。手元にある膨大な数のノブとSEパッドを叩きながら、ガラージよりのダブステップからダブへジャングルへとセットは展開していく。
 
「最新セット」を耳にしていたはずなのだが、シャーウッドの魅力は過去に焦点を当て続けることのなのだろうかという考えが頭をよぎった。数ある彼のリリースのなかで自分が初めてリアルタイムで手に取ったものは2006年の『ビカミング・ア・クリシェ』(〈 Real World Records〉)なのだが、ダブステップが全盛期を迎えていたUKから届いたそのアルバムのなかで一番輝いているのはジャングルだ。その曲“ピース・オブ・ジ・アース”はコンゴ・ナッティのリズムにリトル・ロイのヴォーカルという文句のつけどころのない曲なのだが、随所にちりばめられている鼓膜が干上がるようなダブ・エフェクトなしではそこに科学反応は生じえない。表現しつくされたかに見えたジャンルを自身のミキシングを通すことによって、シーンの先端でも戦える武器に変換してしまう手腕がシャーウッドにはある。

 この日のセットで彼はピンチとの共作“ディファレント・アイズ”や“プリシンクト・オブ・サウンド”もプレイした。今年リリースされた『レイト・ナイト・エンドレス』に収録されたナンバーなのだが、ゼロ年代中期の古典的なダブステップのスタイルを踏襲したものでいわゆる「新しさ」はない。けれども計算し尽くされた緻密なリズムと音響エフェクトを通過した音を聴いていると、曲が未来から語りかけてくるようにも聴こえてくる。常にブラン・ニューであることを強要するのではなく、シーンにあり続けるものを真に理解することの重要性を説く音楽がそこにはあった。

 肝心なベースについて語るのを忘れていたようだ。ステージ下に設置されたサブ・ウーファーはとてつもない鳴りをしていた。会場の外に出たとき、これでもかというほど空気は澄み渡っていたほどだ。

V.A.
Sherwood At The Controls Volume 1: 1979-1984On-U Sound / Beat Records

Tower HMV Amazon

Sherwood & Pinch
Late Night EndlessOn-U Sound / Tectonic / Beat Records

Tower HMV Amazon

OG from Militant B - ele-king

ラガラガ救出大作戦!

KEIHIN (Maktub / Prowler) - ele-king

Surgeon Remix Works

 昨年『ノーザン・ソウル』という映画が公開された。この映画でわたしが一番ウケたのは、リアルなノーザン・ソウル・ファッションである。どうも日本でノーザン・ソウルというと、どちらかと言えばスウィンギング・ロンドンやモッズ系の格好をした人びとのイメージがあったのだが、この国に住むようになって「ノーザン・ソウル同窓会」みたいな催しに行った時、わたしは度胆を抜かれた。
 おっさんたちが履いているあのフレアと呼ぶにはあまりにも幅広のズボンは、ありゃ何だっけ、ほら中学校でヤンキーが履いてたやつ。あ、ボンタン? いやボンタンは裾が締まってたし、そうじゃなくてなんだっけほら、ああドカンだ、ドカン。しかもよく見れば青いドカンに白エナメルのベルトを締めた人なんかもいるし、上半身はランニング一丁でその上からサスペンダーでドカンを吊ってたりして髪型さえ違ったらこれはまるで……。と訝っていたら、おばはんたちは裾が床につきそうなフレアースカートでくるくる回っていて、これもまさに昔のヤンキーの姉ちゃんたちの制服のスカート丈である。なんのこたあない。ノーザン・ソウラーズは70年代の日本のヤンキーだった。そしてそのファッションを忠実に再現していたのが『ノーザン・ソウル』である。
 またこのUK版ヤンキーたちの集団ダンスシーンの野太さというかマッチョさが圧巻でブリリアントなのだが、どうやら日本ではヤンキー文化は反知性主義などと言われているらしく、その文脈で言えば『ノーザン・ソウルl』なんかはもう反知性主義大爆発である。

              ******
 
 5月7日の投票日を控え、UK総選挙戦がたいそうおもしろい。アナキー・イン・ザ・UKとはこのことかと思うほどのカオスである。二大政党だった保守党と労働党はどちらも不人気でマジョリティーを取れそうになく、右翼政党UKIPが台頭していたかと思えば、その勢いをスコットランドのSNPが奪った。昨年スコットランド独立投票で敗けたこの政党のシュールなまでの大躍進と、現代にあっては「極左」と呼ばれてしまうスタンスが、保守派からは危険視され、左派の心を躍らせている。それはまるでUKIPが出現したときの逆ヴァージョンのようだ。下層の人びとが右から左にまたジャンプしはじめている。
 うちの近所でもその現象は見られる。もともとブライトンはアナキストやエコ系の人が多いので以前からみどりの党が強い。が、みどりの党の支持者といえばミドルクラスのインテリと相場は決まっていたのに、今年は貧民街の家の窓にもみどりの党のステッカーが貼ってある。
「スコットランドのSNPの候補者がブライトンにいればSNPに投票するけど、いないからSNPと協力体制を組んでいるみどりの党に入れる」と言っている人がわたしの周囲にも多いのだ。
 この右からいきなり左に飛んでしまう軽さは識者に「小政党のつまみ食い」とか「危険な愚衆政治」とか言われる。彼らはこれを政治危機と呼び、「英国だけじゃない。欧州の有権者は長期的な目線でしっかり物を考えて大政党に投票しなくなった」と嘆く。
 が、大政党は何年も前から下層を存在しないものとして国を回している。はなから相手にされてない層の人たちが大政党のマニフェストを聞いていったい何を長期的に考えろというのだろう。

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 昨年、『ノーザン・ソウル』とほぼ同時期に公開されたのが『ライオット・クラブ』だ。こちらは前者とは正反対の特権階級のポッシュな青年たちを描いた作品だ。オックスフォード大学でも両手で数えるほどのトップエリートしか入れない架空のクラブが、田舎のパブでチャヴも真っ青の反社会的行為を行う話なのだが、これはオックスフォードに実際に存在しているブリンドン・クラブをモデルにしている。実際このクラブにはあの映画の若者たちのように正装してレストランでディナーし、その後で店舗を破壊して店主に金を握らせる伝統があるそうだ。クラブ出身者の若者たちが政界に入り、国を支配する立場になるのも映画と同じである。ブリンドン・クラブの元メンバーには英国首相デヴィッド・キャメロンやロンドン市長ボリス・ジョンソンがいる(彼らは同期)。 
 ある日本のサイトを読んでいたら、「愛」、「夢」、「友情」、「仲間」などはヤンキー用語であり、よって反知性主義の言葉でもあると書かれていた。なるほど『ノーザン・ソウル』にもたしかにこのヤンキー概念はすべてあった。が、『ライオット・クラブ』ではこれらの概念は片っ端から否定されている。代わりにポッシュな青年たちが叫んでいる言葉は「レジェンド(伝説)」と「パワー(権力)」である。「愛」や「夢」を下層のコンセプトと否定し、「伝統」と「権力」を奉ずる青年たちは、自分たちが借り切ったパブの(店主と従業員が一生懸命に装飾した)一室をゲラゲラ笑いながら破壊し、庶民階級の女学生を呼び出して「3年分の学費を払ってやるから俺たち10人に口淫しろ」と言い、「もう金はいらないから出て行ってくれ」というパブの店主に暴行を加える。で、その店主が瀕死の状態になるので警察沙汰になるのだが、「出て行け」と言った店主にクラブのメンバーが札束をちらつかせながら言う台詞が印象的だ。「君たちは僕たちを嫌いだと言う。でも、君たちは本当は僕たちが大好きなんだよ」
 だがパブの店主はふふんと笑い「あんたたちはそこら辺でストリートを破壊しているガキどもと何の変わりもないじゃないか」と言うものだから死ぬ寸前までボコられるという、はっきり言って胸糞の悪い映画だ。この映画は選挙前の年に公開されたアンチ保守党プロパガンダ映画として物議を醸した。

           *********

 いま「英国の政界で最も危険な女」と呼ばれているスコットランドのSNPの女性党首は、「希望の政治」と「オルタナティヴな政治」という言葉をよく使う。
 ホープ。なんてのもまたいかにもヤンキーな響きだし、オルタナティヴという言葉だってけっこうヤバい。引用文献や歴史的&数字的裏付け等々の証拠を見せてから代替案を説明することもなく、大雑把に「オルタナティヴ」なんて言葉を投げるのはいかにも反知性的ではないか。「知識」より「感じ」を重んじるのはヤンキーの専売特許だ。
 こう書いてくるとロックなんてのもまた相当ヤンキーであり、「転がる石のように生きる」なんつうのも何の石がどの角度の傾斜で転がり、どの水準におけるライフを生きるのかグラフ化して解説しない点でフィーリング本位だし、「僕はドリーマーかもしれない。でも国なんてないとイマジンすれば僕たちは一つになれる」に至ってはもう「夢」とか「一つになろう」とかヤンキー概念の連発だ。
 かくしてロックは単なるバカと見なされ衰退し、伝統という名の世襲のものや、権力、財力といった計測可能な目に見えるものだけが世間で幅を利かすようになり、社会を牛耳ることになる。ロックというヤンキーが没落すると共に、息苦しいほど社会に流動性がなくなったのは偶然のことなのだろうか。
 『ライオット・クラブ』では特権階級の青年たちが「あいつらは上向きの流動性のことばかりバカの一つ覚えのように語っている」と言ってゲラゲラ笑っていた。
 一方、『ノーザン・ソウル』ではランカシャーの工場に勤める労働者階級の青年たちが下から上に向かって拳を突き上げながら力強く踊っている。

                
                 ******
 
 下側にいる人間が拳を上に突き上げられない時、その拳はどこに向かうのだろう。
 行き場のない拳はさらに下方に振り下ろされたり、横にいる人びとの中でちょっと毛色が違う者に向かうことになる。
 が、そんな鬱屈しきった救いのない社会で「希望」や「オルタナティヴ」といった言葉を恥ずかしげもなく口にし、本当に拳を向けるべき方向を指す者がいれば時代の空気は豹変する。ということを示しているのがいまのUKのムードではないだろうか。
 とはいえ、社会は下層だけで構成されているわけではないから、今度の選挙でも再び『ノーザン・ソウル』は『ライオット・クラブ』に負ける可能性もある。
 「反緊縮だの核兵器撤廃だの一昔前のロック・ミュージシャンのようなことを言っている。そんなことをすれば財政は崩壊するし、自国の防衛もできなくなる」
大政党のSNPに対する批判もワンパターンの様相を呈してきた。
 が、では現代の知性というやつは要するに喧嘩に強くなることと金勘定に長けることを意味するのかと思えばそれはそれでまたずいぶんと反知性主義的である。少なくとも貧困に落ちる家庭の数を増やし、飢えて汚れた子供たちをストリートに放置している為政者たちのエモーショナル・インテリジェンスの低さは、ヤンキーやチャヴに劣りこそすれ勝るものではない。

からだとこころの環境 - ele-king

蜜と富だけを求め
自分の健康に気を配らないヤツは消え失せろ
ジュニア・バイルズ“フェイド・アウェイ”

 だいたい音楽というのは、健康など顧みないどころか身体に悪いことをさんざんやってきてはしかもその素晴らしい成果を残しているほどの文化なので、健康の問題となったとき、医者から酒は身体に悪いと言われても、どちらかと言えば、呑まずにやってられっかばーろーという立場を支持してきたと言えるだろう。若さ故の暴走だ。ハラが減ったら、コンビニでパンでも買って胃に流し込めばいいだろう。
 たしかに若いうちは暴走しても無理が利くのだが、当然、人間の保証期間と言われる40歳を過ぎたあたりから、現実的な支障が出てくる。しかも医療費というのがこれまた金銭的にもバカにならない。それどころか、村上春樹も言うように、身体な調子はその行為において、とくに内面が関わるときは影響が出てくる。現実の試練のなかで、心が折れそうになったとき、実際に折れてしまうと、これまた現実もますますたいへんなことになってしまうものだ。
 さらにまた、健康問題は社会問題でもある。たとえば、昔は花粉症などなかった。しかし、高度経済成長期の日本政府が、林業の効率化をはかるため、本来あった広葉樹を切り、産業的に効率のいい針葉樹を大量に植えたために起きるようになった現代のアレルギー病だ。当たり前だが、昔は花粉症はなかったし、ほとんどの欧米にもない。

 ある意味、健康の問題は、大きな問題でありながら、これまでいろいろな主題を扱っていた音楽においては、なかば避けられていたことのひとつだろう。

 伊達伯欣(だてともよし)は、いかがわしい魔術師ではなく、ふだんは西洋医学の臨床の現場で働いている医師だ。現代的な医療の現場から医学と音楽を考えるという、珍しい医師であることは間違いない。電気も通らない山小屋で暮らしていた人ではなく、若い頃はジェフ・ミルズで踊っていたほどの人で、現在も都内の大学病院に勤めている。
 そういう人が、アンビエント・ミュージシャンとして国際舞台でも活躍して、そして、医師としては、じょじょに漢方医学の効果に目覚めていったことは、とくに90年代からele-kingを読んでいるような、ある世代以上の方々には興味深いのではないだろうか。
 というか、ele-kingではすっかりお馴染みの伊達伯欣だ。イルハ(Review)、オピトープ、最近では、坂本龍一とテイラー・デュプリーとの共作……中途半端にはなっているが、連載中のコラムもある。

 信じられない話だが、彼の個人医院であるつよくさ医院の待合室では、アンビエント・ミュージックが流れている。
 それって不謹慎なことだろうか。
 病院の待合室は、つねに無音か、さもなければNHKのニュースが流れていればいいのだろうか……という慣習化された病院の日常に対して、人に平穏さをもたらす目的で作られたアンビエント・ミュージックをここで流さなくてどうするとでも言いたげに、実際に、それまでの人生でアンビエント・ミュージックとはまったく関わりのなかった中年女性がその作品名をメモしたりとか、明らかにリアクションがある。

 伊達は、このように自分が音楽で得たことを臨床の現場で活かしているわけだが、そもそも音楽文化に身を置く医師が書いた医療書というのは、世界的にも珍しいのではないだろうか。

 彼の『からだとこころの環境』は、健康というものの考え方を西洋医学と東洋医学との見地から検証しつつ、同時に社会問題とも照らし合わせながら、よりよい医療を考察し、実践するための本だ。西洋医学の対処療法の長所短所を解説する。「1日30品目」や「牛乳は身体に良い」などという常識の間違いを指摘しながら、よりより食事法の指南もある。ストレスや「怒り」の問題にもけっこうなページを割いている。
 「からだ」「こころ」「環境」についての章があり、そして、巻末には彼のお勧めのアンビエント・ミュージックの作品の解説もあるという、かなり画期的な本になった。
 40歳を過ぎた人、ないしは女性、自分の健康生活を反省したい人には、とくに読んで欲しい。

伊達伯欣
からだとこころの環境 ――漢方と西洋医学の選び方
特典がつくお店があります!

著者制作&選曲のアンビエント音源スペシャルコンパイルCD-Rを、一部レコード店・書店様にてお買い上げのお客様に頒布中!

お取り扱い店舗
◾︎タワーレコード
仙台パルコ店、京都店、吉祥寺店、名古屋近鉄パッセ店、福岡パルコ店、神戸店、梅田大阪マルビル店、金沢フォーラス店、札幌PIVOT店、新宿店7F、難波店、渋谷店2FBOOKS
上田店、梅田NU茶屋町店6F、静岡店、アミュプラザ博多店、横浜ビブレ店、池袋店

◾︎ディスクユニオン
通販サイト、お茶の水駅前店、神保町店、新宿本館、下北沢店、吉祥寺店、町田店、横浜関内店、津田沼店、千葉店、柏店、北浦和店、大宮店、池袋店、渋谷店、横浜西口店、中野店、立川店、BIBLIOPHILIC & bookunion新宿

◾︎代官山 蔦屋書店

◾︎STANDARD BOOKSTORE 心斎橋店

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