「Nothing」と一致するもの

Ken Ikeda - ele-king

 1964年生まれのケン・イケダは、デヴィッド・リンチの展覧会への音楽提供をするなど、世界的に名高いサウンド・アーティストである。彼はジョン・ラッセル、デイヴィッド・トゥープなどとも共演歴があり、くわえて、森万里子などのインスタレーション作品の制作にも関わっている。自身の音楽作品としては、英国の名門〈タッチ〉から『ツキ〈ムーン〉』(2000)、『マージ』(2003)、日本の〈スペック〉から『ザ・ミスト・オブ・ザ・ウィンドウ』(2007)、『コサメ』(2010)など、計4作のアルバムをリリースした。〈タッチ〉からのアルバムは、DX-7のサイン派のみを用いた電子音楽、〈スペック〉からの作品は釘や輪ゴムなどを用いた自作の「楽器」を用いたアンビエント/音響作品だ。前者は極限まで削いだミニマルな音響でありながら、心を揺さぶる情感を醸し出し、後者はやわらかな物音が空間の中に溶け合う風情豊かなアンビンエト作品である。これらのアルバムは、電子音響/アンビエント・ファンからも深く愛されており、音楽家としてのイケダも伝説的な存在なのだ。とくに、〈スペック〉からの2作は、00年代以降のアンビエント/ドローンを考えていくうえで、重要な先駆的作品といえよう。

 本作は、その『コサメ』から6年ぶりの新作である。リリースは、フランシスコ・ロペス、トーマス・フィリップス、サスピション・ブリーズ・コンフィデンス、ニャントラ/ダエン/ヘア スタイリスティクスまでの高品質なアルバムを送り出してきた日本のエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈サッド rec.〉。同レーベルは、オーナー、エンジニア、アーティストでもあるドヴァスキーによるクオリティ・コントロール/プロデュースは常に完璧に近いが、本作もまた同様の仕上がりであった。マスタリングのみならず、リミックスまでドヴァスキーが手掛けており、事実上の「共作」といってもいいのではないかと思えるほど。このレーベルの「音楽をCD盤として世に送り出す」ということへの使命感の強さを垣間見ることができた。録音・パッケージとともに、プロダクツ/アートとして、非常に質が高いのである。

 だが、しかし、やはり本作は、ケン・イケダの音楽である。これまでのアルバム同様に、たゆたうような清冽なアトモスフィアが流れているからだ。アトモスフィアとは空気である。空気は、反復しない。そう、彼の作品は、録音された音楽なのに「反復」的ではない。いちど限りの儚さがある。そう、ケン・イケダは音の「一回性」を、たゆたうような音のタペストリーの中に生成させている。繰り返し聴いても、まるで、新しい空気のように、身体をすりぬけていく感覚。まるで聴く度ごとに初めて/改めて生まれる音。本作は永井荷風の『断腸亭日乗』がモチーフになっているとのことだが、繰り返す日常/生活の一回性の感覚は、たしかに光や時のうつろいのようなコンクレート・サウンドに、とてもよく表れているように思える。

 細やかなノイズ。淡い音響。微かな旋律。それらは薄光の音響のように生成し、やがて儚く消えてゆく。その音響のつづれ織りが美しい。だが、「美しい」といっても大袈裟な美学ではない。そうではなく、むしろ「美しさ」の一歩手前に留まるような「慎ましさ」が魅力的なのである。柔らかで、微かで、ときに大胆な音の蠢きが、耳を潤す……。そんな瀟洒なコンクレート/電子音楽/音響作品の傑作である。まさに、彼は帰ってきたのだ。

 先月末はベルリン・ポルノ映画祭(10月26~30日)に出席するためドイツ、ベルリンに1週間ほど滞在した。今泉浩一監督と自分が制作した短編映画<https://www.shiroari.com/habakari/toto.html>が上映されたためで、2011年に初参加してから5回連続、おそらく日本人としては自分たちがいちばんこの映画祭に足を運んでいる筈なのと、かつ日本語で纏まった記事がほぼ見当たらない事もあって、この機会に今回で第11回目を数えることとなったPorn Film Festival Berlin<https://pornfilmfestivalberlin.de/en/>を紹介したい。

第11回ベルリン・ポルノ映画祭メイン・ヴィジュアル

 まずはこの映画祭のメイン・ヴィジュアルをご覧いただきたい。第5回(2010年)から基本的に同じモチーフでアレンジを変えて使われ続けているが、これを見て思わずムラムラしてしまう人はまあ居ないだろうにも関わらず、誰が見てもこれは「ポルノ映画祭」以外の何物でもない、と納得してしまう秀逸なデザインである。この映画祭は人目を憚ってこっそり行われるアンダーグラウンドかつプライヴェートな「シークレット・(セックス・)イベント」ではなく、あくまで──もちろん成人向けではあるが──社会の窓に向かって開かれた「映画祭」である、という主催者の強い意思を感じさせる。

 ベルリン・ポルノ映画祭はドイツ在住の映画プロデューサー兼インディー系映像作家、ユルゲン・ブリューニンク(Jürgen Brüning)によって2006年に創設された。メイン会場は例年ベルリンのクロイツベルク地区にある「MOVIEMENTO KINO <https://www.moviemento.de/>」という小さな劇場が3つある映画館で、期間中5日間は映画館全体がポルノ映画祭一色となる。今年の上映作は長編・短編併せて140本以上、大半は欧米制作の作品でアジアからは拙作を含めた短編が2本だけ。聞けば映画祭初日の時点で既に3000枚の前売券が出ており、昨年の観客動員数は8000人以上ですっかり恒例イベントとして定着した感がある。劇場では写真展が、サブ会場では縛りのワークショップ、おしっこプレイのワークショプ、「ポルノにおけるレイシャル・ポリティクス」と題されたレクチャー、VRセックス無料体験コーナー etc. と関連イベントも盛り沢山である。映画館で各劇場の入れ替え時間が重なったときには身動きがとれないほどの大混雑になる。客層……は18歳以上の男女、とでも形容する他は無い印象で観客全体にはとくに偏りは感じられない。

映画館にあるラウンジで、スタッフがチケットのキャンセル待ちのお客さんを呼び出している。

 映画祭開催中は3つのシアターをフル回転させて朝から晩までプログラムが組まれており、すべてを観るのは無理ではあるが大抵の作品は期間中に2回上映されるので、観たいものが同時間の別劇場で被ってしまう危険性はそんなにない。ないがしかし、そもそもヘテロポルノ・ゲイポルノ・レズビアンポルノ・トランスポルノ・フェティッシュポルノ・お笑いポルノ・実験ポルノ、などなど「ポルノ」の領域がとめどなく拡がっているため、上映される作品もソファーにおばはんが二人座って交互にぷうぷう屁をこいているだけのものから人体が若干切り刻まれるようなものまで多岐に渡り、自分が関心があるプログラムを拾って観ていけば人によって全く違う映画祭となる──例えばヘテロポルノを外してゲイ映画を中心に観る自分たちにとっては完全に「ベルリンゲイ映画祭」である。加えてその年2月開催のベルリン国際映画祭で上映された作品もセレクトされていたりするので、日本未公開の話題作を観られるのも嬉しい。

 創設者であり、かつ現在も映画祭ディレクターであるユルゲンに改めて「あなたがこの映画祭を始めた理由」を訊いてみた。いつもにこやかな彼は、「『ポルノ』という言葉で一括りに隔離されている作品を映画館で、いわゆる普通の映画と同じように見知らぬ誰かと隣り合わせの席で観る、という場所を作りたかったからだ。アート色の強いものもそうではないものも全て同じ映画祭の元で上映したいと思ったし、実際そうしている。第1回の映画祭では日本の作品もたくさん上映したけれど、中にはゴキブリとセックスする作品なんてのもあって、ベルリンの観客はショックを受けていたよ」と明解な回答を返してくれた。これは「ポルノ(日本語のニュアンスでは「AV」に近いだろうか)」と呼ばれる映像作品にも劇場での鑑賞に耐えうるものが多いのに関わらず、それが全く正当に扱われていない、という現場の危機意識であると思う。またかつて「アダルト映画(ヴィデオ)」として作られた作品も毎年一体どこから発掘してくるのか、様々な作品がレトロスペクティヴ上映されているが、年月が経ちいまではとっくにエロ・コンテンツとしての効力を失った映像を改めて劇場で観てみると、例えば風俗資料として驚くほどの発見があったりする。

上映後のQ&Aはこんな感じで「東京の発展場はその昔うんたらかんたら」とか言ってます。

 各作品の上映前には映画祭スタッフが前口上(作品解説や協賛企業への謝辞など)を述べるのですが、そこで今年頻繁に耳にしたのは「今回の映画祭のテーマはレイシズム、セックスワーク、そしてHIV/AIDSです」ということで、実際狭義の「ポルノ」には当てはまらない作品も多く上映されていた。日本でも来年1月に公開される予定の、ロスアンジェルスのトランスジェンダー売春婦(夫)たちの苛烈にして超くだらない日常を描いた秀作長編『タンジェリン(Tangerine L.A.)』、高齢になったHIVポジティヴのゲイ男性がリタイア後の「終の棲家」として集まってくる砂漠地帯で撮られた美しいドキュメンタリー『Desert Migration』、ニューヨークのブラック・コミュニティー内でダンス・音楽とともに生き抜く若い性的少数者たちを追った『KIKI』、ブラジル:リオデジャネイロのファヴェーラ(貧民街)のメインストリーム音楽である「バイレ・ファンキ」シーンに溢れる女性蔑視を乾いたパッションで切り抜いた『Inside the mind of Favela Funk』、挙げれば切りがないが映画祭プログラマー達の、揺るがない視点で選ばれた作品も数多く上映される。

 そんなプログラマーの一人であり、第1回ではジャーナリストとして取材に訪れ、そのまま翌年からメインのスタッフとなってしまったヨーハン・ヴェアルナにも話を訊いた。「この映画祭のスポンサーを見つけるのは本当に難しい。メインストリームのポルノ制作会社は、売り上げに直結しないと言う理由で協賛してくれないし、一般企業は『ポルノ』と聞くだけで尻込みする。ともあれこの映画祭が11年も続いているのは、我々が観客を育てたという側面もあると思う。ここは出来るだけ多種多様な性の有り様に基づいた作品に触れる機会を作り、観た人が何かを発見する場となっているはずだ」この映画祭では「ポルノ」の名の元に実に幅広い作品が集まっているので、例えば自分とは違うセクシュアリティーに基づいた作品に驚いたり、長年の誤解と偏見があっさり解けたり、またはシンクロしてしまったり、といった経験が可能なのだ。

映画祭のクロージング・パーティ

 逆説的ではあるが、そう考えるとこの映画祭は「性(セックス)を賛美する祭典」などではない。性は人間が人間になるずっと前からのんべんだらりと伴っていたものであり、いまさら言祝いだり称賛したりしたところで性自体がどうにかなるわけでもない。じっさい観ていて憂鬱になるような作品をもプログラムに含むこの映画祭が行っているのは「セックスって、すばらしい(どんどんやれ)」などと無闇矢鱈に観客をけしかけることではなくて、「映画」という表現手段を使って性と人間を捉えようとしている作家と、それを受け取る観客の意識への問いかけであり挑戦である。毎年浴びるようにこの映画祭でポルノを観続けて自分が理解したのは、表現物はそれが傑作であれ駄作であれ全て「芸術(アート)」であり、「猥褻(エロ)」は作り手を含めた受け手の中にしか存在しない以上「芸術か猥褻か」という命題はそもそも成立しない、ということでした。

 いつかの回のオープニングでユルゲンが、当然のような顔をして「少しでも早く、このような映画祭をやらなくていい日が来る事を願っている」とスピーチしたことがあった。この発言だけでは運営に疲れた主催者の愚痴のようであるが、彼と彼の映画祭の最終目的はこの超面白いけど大して儲からない「お祭り」を延々と続ける事ではなく、映画という文化の妥当な位置に「性」を嵌め直すことであるはずだ。わざわざ「ポルノ映画祭」というタイトルを冠した、ある種「特区」としてのこの映画祭がその役割を終える日が来るとき、映像表現を発表する場所は誰に対してもいまよりずっと自由に呼吸が出来る空間となっているはずだ──そんな空間が出現するのは、おそらく未来の日本ではないにしろ。

 【追記】関心をお持ちになった方は是非来年10月、実際に足を運んでみて頂きたい。ドイツ語ができなくても全く問題はなく、英語が何となくでも判れば充分映画祭を堪能できます。ちなみに今回、自分らの東京羽田―ベルリン往復航空券はカタール航空利用(帰国便には天然温泉平和島の無料一泊サービス付き)で6万5千円ちょっとでした。

RIP Jean-Jacques Perrey - ele-king

 誰でもそうだと思うが、ペリー&キングスレーの『The In Sound From Way Out! 』のジャケットを見たとき、ただただ、うっとりした。ドキドキするほどカラフルで、それは幸福な夢の世界の扉だった。去る11月5日、電子音楽の先駆者のひとり、いや、電子“娯楽系”音楽の先駆者と言い直そう、ジャン・ジャック・ペリーがスイスで亡くなった。87歳だった。
 よく知られるように、ジャン・ジャック・ペリー氏とってのエレクトロニック・ミュージックは、当時としては実験的だったが、しかし無邪気でハッピーで、ユーモアとポップスを志向し、楽しみのためにあった。1929年フランス生まれの氏は、30歳のとき渡米し、1965年、ニューヨークでドイツ生まれのユダヤ人のガーション・キングスレイと出会い、オンディオラインや発信器、数マイル分のテープなどを駆使し、275時間かけてくだんのアルバムを作ると、1968年にはもう1枚のクラシック『The Amazing New Electronic Pop Sound』をヴァンガードよりリリースしている。モーグ・シンセサイザーを使った実験的なラウンジ・サウンドの『Moog Indigo』も人気作だ。氏の影響はエイフェックス・ツインからステレオラブ、ビースティー・ボーイズまでと幅広く、2007年にはルーク・ヴァイバートと『Moog Acid』なる作品も発表している。が、氏の音楽がもっとも輝いていたのは60年代という夢見る時代だったし、その無邪気さはそうなかなか真似できるものではなかった。

松本 哉 - ele-king

 明日はどっちだ? こっちこっち。

 思えば、あれは6年前。当時、ユリシーズという音楽誌があり、そこの編集者さんから原稿依頼のメールをいただいたとき、彼女はこう書いていたのだった。
「ブログの文章を拝読し、素人の乱みたいだと思いました」

 あの頃わたしは日本で起きていることなどまるで追っておらず、首相の名前すら知らなかったぐらい(またよく変わってたんだ)で、好き勝手に英国で見聞きすることをブログで書いていただけだったから、「素人の乱って何?」と思った。
 で、彼らの情報をネット検索して思ったのは、ひゃあー、なんか英国的。ということだった。「鍋闘争」だの「くさや闘争」だの、はなから人をなめたような闘争は、まるでモンティパイソンみたいじゃないか。「鍋」とか「くさや」とかは英国にはないでしょ、だからパイソンなわけがない。ダッせえ。とかおっしゃる輩は、横文字で書かれたものはすべてクールかと思って、一見すると異文化のように見えるカルチャーの根底を流れる万国共通のスピリットというやつが掴めない、そっちこそダッせえ方々ではありませんか。

 だから今年はじめに本の取材で東京に滞在したときも、「素人の乱が勢いを失ったのはダサかったから。昨今の日本の運動はそうしたものを排除しようとしている」と言われたときには、わたしも大人なので温厚ににっこり微笑んではいたものの、貴様らはユーモアと貧乏というクールさの源泉が理解できないプラスティックな資本主義のしもべになりやがってと内心はらわたが沸騰していた。そんなわけで東京取材の最後の晩に松本哉さんに会う所存だったが、会えなかったということは二木信さんがご存じである。

 さて、その松本さんが書いた『世界マヌケ反乱の手引書』は、大バカな仲間の集め方とか、バカステーションの作り方とか、やたらとバカバカ言っているのだけれども、このバカというのは英語にすれば「shrewd」。もっとわかりやすい言葉にすれば「ストリートワイズ」ということが読んでるうちにわかってくる。で、山手線大宴会作戦だの、新宿でハンモックだの、大笑いさせられながらふと気づくと赤ペンで線を引いていたりするのであり、哲学書として読むのもいいと思う。時代は玉虫色から始まる。などは珠玉の金言である。

 わたしなんかも今年はバカの一つ覚えで「グラスルーツ」と言い続け、こないだ出た本の主題なんかもそれだったんだけど、そしたら松本さんもこの本の中で、(全共闘世代との付き合い方で爆笑させてくれた後に)こっそりこんなことを書いていた。

「あ、あと当時はすぐでかい物を狙いにいく傾向があったけど、特に今の時代、小さな謎のスペースを無数に作っていく方がいいと思う。潰れても潰れてもどんどん新しいバカセンターができて、全国津々浦々、いったいどこにどんな場所があるかわからなくなるぐらい増えたら最高に面白いし、実はそれが一番強い」

 これこそグラスルーツの定義である。
 だいたい昨今の我が朝では(もう「我が」ではないが)、社会を変えるには「デモ」か「テロ」か、みたいなことをシリアスな陰影の入った顔で言う人々が多い。が、第三の道はそこらへんに転がっている。しかもこれ、実はわたしの住んでいる国では左派と呼ばれる人たちが最近さかんに口にしていることであり、特にジェフ・マルガンという識者なんかは、「プラカードを振って誰かに何かをしろというのではなく、身近なところでお前がまずやってみろ」と言っていて、「全国津々浦々のコミュニティーに根を張ったグラスルーツがばーんと一気につながった時には無敵。本来こうした草の根は左派の得意技だったはずなのに、すっかり右派にお株を奪われてないかい」と言っている。素人のくせに半径5m内での実践を忘れてすぐでかい物を狙いにいくから、いつの間にか右翼のグラスルーツが地道にびっしり広がっていたのを見て「うわあ」とびっくりすることになるんだよと。
 しかも松本さんのグラスルーツ構想がさらに面白いのは、全国津々浦々のレベルではなく、アジア津々浦々の根っこを繋げることを志向している点で、これなどは日本のレイシズムの特徴を鑑みると非常にアグレッシヴな動きだし、アジア言語は俺らが思っているより似ているから、交流が進んで誰か頭のいいやつがうまくまとめたら、アジアでもエスペラント語みたいな共通語がすぐできるはず、なんて提言にはつい下側の未来を感じてしまう。

 また、「バカ」と同じぐらいたくさんこの本に出てくる「マヌケ」という言葉については、「あまり壮大なスケールの理想社会なんか実現したらたいていつまらないことになるので、世の中の隙を見て勝手なマヌケ社会を作るのがいい」と最終頁でご本人が種明かしされているように、マヌケとは漢字で「間抜け」と書く。
 「デモ」か「テロ」かの息苦しい正義や、「働け、働け、死んでも働け」の資本ファースト主義や、おおらかさを失ったデフレ精神に因るみみっちい足の引っ張り合いで生きづらくなった社会の隙間から抜け出す。間が抜けてるんじゃなくて、間を抜けるのだ。せせこましい時代だからと言って自分まで緊縮してからだをすぼめて削減せず、隙間を見つけてつるっと抜け出せ。明日はどっちだ、だって? こっちこっち。

アナキズム保育園こうもり組主任保育士 ブレイディみかこ

この10年、スポーツバイクは人気の趣味/人気のスポーツとして定着している。オランダ、ドイツ、北欧、イギリスのように、自転車が安心して走れる都市の道路の再整備は、いまでは先進国のトレードマークでもある。日本も安いママチャリの時代から脱し、最近では、少々値は張るが性能的に優れたスポーツバイクに乗る人たちの姿が日常的に見られている。気合いを入れて、ぴっちりしたレーサージャケットに、もっこりしたレーサーパンツ(通称レーパン)を履いて、ロードバイクを漕いでいる人たちの姿は珍しくない。しかし、それって本当に正しい乗り方なのか? ロング・ライドはどこまで健康に良いのか? ダイエットに良いって本当なのか?

ベンディングペダルにすれば引き足も使えるなんていうのは幻想だって? そもそも自転車を楽しむのに、なんで服からアクセサリー、細かいパーツまでプロの真似をしなければならないのか? 自動車を楽しむ人たち、スキーが好きな人たち、みんなプロの真似をしていないのに、なんで自転車乗り(バイクライダー)だけが何でもかんでもプロの真似をしているのか。それってどこかおかしくないかい?

長年自転車業界で仕事をしている著者=グラント・ピーターセンが、サイクリング文化の間違いを説く。自転車を乗る上でのすべての常識をひとつひとつ検証し、読者に新たな考えを巡らせる。そして、自転車生活の魅力をあらたに提唱する。

これは長年のサイクリング経験から編み出された必読の、ハッタリのない知識だ。 ストレスフルで過度に複雑で、さらには売れ線を重視した関係性が、あまりにも多くの人間とサイクリング、そして自転車の間に築かれている。グラントはそれをシンプルに噛み砕き、産業のトレンドやトリクルダウン構造、入り組んだプロ・レース業界とは別の豊かでやりがいのある世界を見せてくれる。 ──イーベン・ウェイス、バイクスノッブNYC、『The Enlightened Cyclist』著者

レース重視のサイクリングにうんざりしている自転車乗りのために、グラント・ピーターセンが『ジャスト・ライド』で提示するのは、魅力的な代替案だ。 ──ジャン・ヘイン、『Bicycle Quarterly magazine』編集者

実際に乗らない人間にも配慮した、自転車や乗り方、身体に関する著者の信条を大いに楽しんだ。グラントは世間に対して怒りを隠さない、知識に富んだ友人だ。そして本書は、優れたアドバイスで溢れている。 ──アンディ・ハンプステン、ジロー・デ・イタリア1988年の優勝者、ハンプステン・サイクルズの共同設立者

競争とは無関係の余暇を楽しむライダーたちも、レーサーたちと同じ服を着て、同じ靴で同じペダルをこぎ、同じ自転車に乗り、多くはトレーニングを積みタイムを上げることに腐心している。この類の乗り方は楽しむためというよりも仕事である。(本書序文より)

著者について
【グラント・ピーターセン Grant Petersen】
サンフランシスコの自転車メーカー、リーベンデール(Rivendell)の設立者。ライターとしては 『Bicycling』、『Outside』、『Men's Journal』など、多くのメジャーなアウトドア雑誌/自転車雑誌に寄稿。著書に『Eat Bacon, Don't Jog: Get Strong. Get Lean. No Bullshit.』(2014年)がある。

Coldcut - ele-king

 いったい何年ぶりだろう。ひい、ふう、みい……じゅ、10年ぶりじゃないか! ついにコールドカットが再始動する。まずはEPからだ。
 色々と思いはある。もしこのふたり組がいなければ、UKのクラブ・シーンは、いや、世界のクラブ・シーンはまったく別物になっていただろう。……が、とりあえず僕の感慨は脇に置いておいて、とにかくいまはみんなで、この伝説のデュオの帰還を祝おうではないか。リリースは11月25日。あと3週間だ!

〈NINJA TUNE〉主宰の大重鎮、コールドカットが再始動!
超待望の最新作『Only Heaven EP』のリリースを発表!
新曲「Donald’s Wig feat. Roses Gabor」を公開!


Photo : Hayley Louisa Brown

アンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムらとともにUKクラブ・シーンの黄金期を牽引したサンプリング・カルチャーのパイオニアであり、アンクル、DJシャドウ、カット・ケミスト、DJクラッシュらと並んで、ブレイク・ビーツ黎明期の最重要ユニットにも挙げられるレジェンドがついに再始動! ジョン・モアとマット・ブラックによる伝説的ユニット、コールドカットが、〈Ninja Tune〉発足以前に初音源をリリースした伝説的レーベル〈Ahead Of Our Time〉から、超待望の最新作「Only Heaven EP」のリリースを発表! 新曲“Donald’s Wig feat. Roses Gabor”を公開した。

Coldcut - Donalds' Wig feat. Roses Gabor

「Only Heaven EP」には、“Donald’s Wig”や、M.I.Aやビヨンセのプロデュースやメジャー・レイザーの初期メンバーとして知られるスウィッチとの共同プロデュースで、ヴォーカリストに盟友ルーツ・マヌーヴァ、ベースにサンダーキャットが参加した“Only Heaven”を含む5曲が収録される。

長い沈黙を破り、ついに復活したコールドカットの最新作「Only Heaven EP」は、11月25日(金)にデジタル配信と12”でリリースされる。iTunesでアルバムを予約すると、公開された“Donalds' Wig feat. Roses Gabor”がいちはやくダウンロードできる。

label: Ahead Of Our Time
artist: Coldcut
title: Only Heaven EP

release date: 2016.11.25 FRI ON SALE
cat no.: AHED12014(12"+DLコード)

beatkart (12") : https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002120
iTunes Store (Digital) : https://apple.co/2fkgmkO

[Tracklisting]
1. Only Heaven feat. Roots Manuva
2. Creative
3. Dreamboats feat. Roots Manuva and Roses Gabor
4. Donald’s Wig feat. Roses Gabor
5. Quality Control feat. Roots Manuva

Jeff Mills - ele-king

 はい、こんにちは。現在ele-kingはジェフ・ミルズにジャックされております。またまたニュースでございます。
 先日、アフターパーティの開催をお伝えしましたが、その本公演のお知らせです。来る11月18日(金)、国内屈指の室内楽ホールの1つである浜離宮朝日ホールにて、ジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作の日本プレミア上映会が開催されます。同公演は、AACTOKYOが手がけるプロジェクトの第1弾でもあります。構成と演出はジェフ・ミルズ本人が、映像共同演出は新進気鋭の映像集団Cosimic Labが担当します。
連日お伝えしているように、この秋はジェフ・ミルズのイベントが目白押しです。もうこの際みなさんも心を決めて、ジェフ・ミルズにジャックされちゃいましょう!

AACTOKYO 第1弾プロジェクト
JEFF MILLS CINE-MIX “THE TRIP”

!! ジェフ・ミルズのシネミックス最新作 ジャパン・プレミア公演 !!

2014年のプレ開催を経て、昨年は東京、神戸、川崎の3都市で開催したアート・フェスティヴァル「TodaysArt.JP」が、2016年、世界に名だたるコスモポリス「東京」を舞台に、世界と日本を紡ぐアートのプラットフォームとなるべく、世界で開催されている様々なアート・フェスティヴァルとも連携しなが『AACTOKYO (アークトーキョー: Advanced Art Conference Tokyo)』として進化しました。
そんな『AACTOKYO』が手がけるプロジェクト第1弾として、浜離宮朝日ホールでのジェフ・ミルズのシネミックス(映像体験作品)最新作のジャパン・プレミア公演が決定です!

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ジェフ・ミルズがお届けする映像体験作品「THE TRIP」。
実験的でコンセプチュアルなテクノ・ミュージックの象徴的な存在として、またサイエンス・フィクション映画に魅了されたひとりとして、ジェフ・ミルズは「自身の作品をフィルムや映像のために制作しなければ」という衝動に駆られ、2000年より「シネミックス」というスタイルに着手しました。今回ご紹介するシネミックス作品は、日本人映像作家とのコラボレーションによる1時間半に及ぶサウンドとイメージのマスター・ミックス。
60以上のオールド・SF・ムーヴィー(1920~70年代)から抽出した映像+音像のライヴ・ミックスは、彼のエクスペリメンタルかつコンセプチュアルなDJ・ミックスと同じ原則に従い、私たちの美の鼓動、カオス、畏怖なる感情を呼び起こしてくれることでしょう。
「THE TRIP」は住みづらくなってしまった地球から、新しい世界を探すために地球より遠く離れた場所を開拓していくという、これから人間が経験するであろうテーマが描かれています。精神的かつ心理的な強烈な映像+音像体験が、あなたを未知の時空へお連れします。

Oval - ele-king

(デンシノオト)

 ある音楽を、音楽として聴かないこと。その行き着く先は、音楽の統合性が失調した世界だと思うのだが、ノイズや音響などの聴き手は、常にその境界線上を生きているともいえる。エクスペリメンタルなのは音楽ではなく、聴いている人間の方なのだ。となれば、ある音をノイジーと感じる理由は、何に起因しているのか。曲調か。音量か。音質か。音色か。レイヤーか。人間か。聴取する側の解像度の問題か。

 聴取のとき、音楽(の全体像)の解像度を一気に落とすと、音楽は壊れてしまう。試しに、身近な音楽を再生し、そのメロディでもビートでも、なんでも良いが、音楽的な要素に、まったく入り込まないで聴いてほしい。それはすでに音楽ではないはずだ。反対に聴取の解像度を上げると、ある部分がズームアップされ、その音楽は別の音楽に変わる。90年代末期から00年代にかけてのエレクトロニカや電子音響は、聴き手の聴取のレイヤー/解像度を上げたことが革命的だったわけだが、では、もう一度、聴き手の聴取の解像度を急激に下げてしまうと、われわれの聴覚/感覚はどうなるのか。たとえば轟音もある意味、聴き手の解像度を下げる作曲・演奏・発音行為だが、その「中」に没入することで、解像度はもう一度回復する。逆にいえば、解像度が低いまま、音を浴び続けると心身に不調をきたす。つまり、解像度の遠近法が回復しないと人間は崩壊する。

 そこでオヴァルの新作『ポップ』(「Popp」と書く)である。本作が凄まじいのは「ポップになった」とか、「クラブ・トラック」というだけでなく、確実にそれらの音楽でありつつも、「音楽」の解像度が低いまま展開していく点にある。アルバム冒頭の“ai”は、オヴァル特有の非周期的なループを聴きとれるが、実体化した「音楽」は分断され、声=ヴォーカルも分断され、圧縮された音質のようなポップの断片がレイヤーされていく。通常、非周期的なループは、音楽の情報量が上がるはずだが、本作のポップ化したオヴァルの凄まじさは、多量な音響・音楽情報が圧縮されたまま、つまりは「貧しい音楽」のまま、非周期的な構造を展開している点にある。しかも「ポップ」な音楽として聴取「できてしまう」。これは解像度を下げつつ、音へのアディクションを生むという意味で「狂気」の音楽といえよう(ブラックメタル的? オヴァルとバーズムの近似性について……)。

 なぜ、こんなことが可能になったのか。オヴァルは、2003年に発表された豊田恵里子とのユニット、ソー『ソー』以降、「声」と「音楽」への求心力を強めていく。2010年代の「復帰」以降の活動は、ソーでの試みを「オヴァルとして実体化させていくための実験・実践」であったといえる。たとえば、ブラジルの音楽家とコラボレーションをおこなった『Calidostópia!』(2013)、ヴォーカルを全面的に起用した『Voa』(2013)においては、ヴォーカルと電子音楽の融合を実験・実践していたし、2010年の復帰作『オー』や2012年の『オヴァルDNA』においては、生楽器による非周期性=ループを導入し、90年代の自身のグリッチ・ループ・サウンドを「音楽」として実体化させていった。しかし、「ヴォーカル」と「楽器」という彼の繊細な音楽家としての側面が、いかにもオヴァル的な非周期的ループの「貧しい」魅力を削いでいたことも事実である。だが、新作『ポップ』は違う。ループする音楽の対象を「R&B」や「EDM」的という、「あえて」の表層的なグルーヴを起用し、自身の本来の特性である「貧しい音楽」へと、つまりはオーガニックからケミカルへと舵を切っているのだ。その意味で、本作こそオヴァルの「復帰作」にふさわしいアルバムである。

 「聴取の解像度をアップデートして中毒性を上げる」のが2010年代初頭までのトレンドとするなら(情報量アップの知性)、「解像度を下げて中毒性を生む」(だらしない狂気へ)が2010年代中盤以降のモードになるのではないか。その最初の兆候が、このオヴァルの『ポップ』に思えてならない(むろん、マーカス・ポップは、90年代から本質的にはずっと同じだ)。2010年代後半は、「狂気への恐怖」がアウトになって、くわえて「狂気への誘惑」もアウトになって、「だらしなく狂気に行き着く」人間の時代になる。オヴァルの新作は、そんな「新しい人間」像をうまく表象している。統合性が失調する(音楽の)時代の始まり。いや、そもそも「90年代以降グリッチ・ミュージック」とはそのような音楽ではなかったか。貧しく痩せ細ったエラーが、それでいて、フレッシュであること。ここにおいて音楽の統合性はバラバラに分解してしまいそうになっている。廃墟の音楽。

 そう、グリッチとは、廃墟のなかに刹那に消えていく無数の天使たちの残骸/残滓なのだ。となれば、マーカス・ポップとは統合性が失調した時代の音楽を生む「新しい天使」であろうか。「新しい天使」による新しい「非=人間」のための音楽? それが『ポップ』なのだ。

デンシノオト

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●ライヴ情報 OVAL Live in Japan 2016

12月20日(火)
渋谷 TSUTAYA O-nest

12月22日(木)
京都 METRO

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(松村正人)

 河地依子さんの浩瀚なライブラリーと該博な知識に裏打ちされた、黒人音楽のヒストリーによりそいながら形式との相克でつくる音楽をていねいに聴き進めた『ソウル・ディフィニティヴ』、すでにみなさんの座右の書であろうが、その近年の動向をめぐる終章とそのひとつ前の章の導入文を要約しつつ私見をつけくわえるとこうなる。21世紀初頭のネオ・ソウルで電子音を有機的な音色で使う手法が浸透するとともに、エレクトロな方法論は当時のレゲトンやらダンスホールやらとむすびつき、そのビート感覚(とパーティ感覚)はのちのEDMを用意した、のみならず、ジェイ・ディラらのグルーヴの(再)発見をさかいに(政治性を含意した)ネオ・ソウルと合流していく、その合流地点こそ2010年代なかば現在であるのだとしたら――これ以上書くと河地さんの商売をじゃましそうなのでさしひかえたいが、R&Bが「エレクトロ~アンビエント~ドリーム」と形容すべき傾向をみせた2000年代なかば、河地さんのいうとおり「シーンの風景はまたガラリと変わった」。どのように変わったか、くわしくは本書を繙いていただきたいが、ひとつだけつけくわえると、ソウル、R&B、ジャズやヒップホップを問わず、たとえばグルーヴを軸に音楽を腑分けするのがたやすくなった反面、サウンドにおける形式の壁が液化する一方で、アンビエントやドリームといった主観性が幅を利かせる。
 前作から単体では6年ぶりとなるオヴァルの『ポップ』は資料によれば「ポストR&B」だという。いやそのまえに、今作こそ、『o』(2010年)から数年の比較的みじかめの間隔だったがそのまえはというと2001年の『ovalcommers』までさかのぼらなければならない。10年――生まれたばかりの赤ん坊が学校にあがり、きょうから私はオヤジとは風呂に入らないと宣言するまでに成長する、この長きにわたり黙して語らなければ、たいていのひとなら、オヤジであっても忘れ去られる。ところがオヴァルはちがった。『o』で復活したオヴァルは『systemisch』や『94diskont.』といった90年代の諸作でつきつめた「デザインとしての音響」から反転し、音楽のほうへむかいはじめる。もっともオヴァルはかつて一度も音楽的でなかったことはなかった。CDの盤面に人為的に操作をくわえプレイヤーを誤作動させた音をもちいる、初期のオヴァルの代名詞となったこの方法を縦横に駆使したこれらの作品でも、「Textuell」なり「Do While」なり、聴けばたちどころに私のいう意味は了解いただける。マーカス・ポップの含羞とも韜晦ともつかないものがそのような言い方を避けさせてきたのだとしても、90年代の磁場がそう仕向けたふしはなくはない。ワイヤーのだれかがいったという「ロックでなければなんでもいい」なるフレーズとおなじく、私たちはマーカスのことばを箴言としてのみとらえてはならない。背景があるのだ。制度と方法と原理の基底部を思考する、(そもそもアポリアであるかもしれない)その解は得られなくとも一度それを経なければオヴァルはオヴァルたりえなかった、というのは、時制の起点からして命題たりえないが、このパラドキシカルな過程もふくめたプロセスがオヴァルだった。
 なにせ『ポップ』はあざやかにポップなのである。ビートはくっきり輪郭を描き、楽曲はかつてないほど重層的に構造化している。とはいえそれはエレクトロニカの金科玉条だったレイヤーなる(きわめてデザイン的な)形容に収斂しない。IDM的レイヤーが薄い色紙を重ねたさいの色彩の重畳だとすれば、『ポップ』はもっとヴァーチカルである。奥行きがあり厚みがある。音色の選択とサウンド・プロデュースが立体感に拍車をかけるが、リズムの反復はあきらかにビートを指向している。つまるところポップかつダンサブルだが、ひたすら硬度をたもちつづけるアルヴァ・ノトと較べて――というのも、さっきまで渋谷でラスター・ノートンの20周年ライヴを観ていたのですね――有機的で滑らか。
 その一因は声にある。マーカス・ポップは『ポップ』の大半で、かなり加工した声をとりいれているのだが、この声のあり方がこのアルバムのグルーヴの土台を担っている。もちろん声は純粋なリズム楽器ではないが、そしてマーカスは一聴してリズム楽器として加工した声をもちいてはいないようにみえるが、マテリアルと化した声がトラックの一部に埋め込まれることで、音響はシームレスなゆらぎをはらむ。鍵盤楽器と声をシンセサイズしたポルタメントな音の動きには現象だけとりだせば90年代のオヴァルを彷彿させるドローン的な側面があり、2000年代後半を劃したボカロを思い出させるのはいわずもがなである。オートチューンやボカロといった身体をなくした声の身体性の影と、ビートという身体性をもっとも呼びさますものを交錯させる方法を、米国市場の主導権をにぎるR&Bになぞらえ、そこにポストを冠するのも新規なジャンル名をつくってみせたといったたぐいのことではない。かもしれない。すくなくともそれはマーカス・ポップの音楽観の一端ではある、と同時に今日のテクノロジーの人間観の反映でもある。やがてそれが完全に調和した制度(システム)となったとき、マーカス・ポップの批評性は事後的に発見されるだろう、というのは時制の起点からして予測でしかないが、オヴァルのプロセスはそのようにして走りつづけてきた、かつて思弁的なコンセプトと併走しながら、いまはポップさを全開にして。
 マーカス・ポップがこのアルバムに自身のファミリー・ネーム「popp」とつけたのはゆえなきことではないのである。(了)

松村正人

●ライヴ情報 OVAL Live in Japan 2016

12月20日(火)
渋谷 TSUTAYA O-nest

12月22日(木)
京都 METRO

Jlin - ele-king

 RP Boo率いるD'Dynamicsクルー所属のフットワーク第2世代プロデューサー、Jlin(ジェイリン)。僕が初めてその名を認識したのは、2011年に〈Planet Mu〉からリリースされたコンピレイション『Bangs & Works Vol.2』だったのだけれど(“Erotic Heat”のかっこよさといったら!)、その後の彼女の活躍はめざましく、あれよあれよという間にフットワークの新世代を担う中核アーティストへと成長していった。実際、昨年〈Planet Mu〉からリリースされたアルバム『Dark Energy』は、英『WIRE』誌の年間ベスト・アルバム第1位に選出されるなど、海外での彼女の評価の高さは尋常じゃない。

 このたび、そのJlin初の来日公演が開催されることとなった。大阪と東京の2ヶ所をまわる今回のツアーは、ジューク/フットワークのファンにとってのみならず、広くベース・ミュージックを愛する者たち全員にとってスルー厳禁の公演と言っていいだろう。詳細は下掲のリンクから!

フットワーク新章! 英『WIREマガジン』年間ベスト・アルバム第1位、Pitchfork Best New Musicなど2015年の年間チャートを総なめにし、シーン初の女性アーティストとして華々しいデビューを飾ったシンデレラJlinが満を持しての初来日!!

Jlin Japan Tour 2016


11.19 sat at CIRCUS Osaka | SOMETHINN Vo.18
w/ D.J.Fulltono, CRZKNY, Keita Kawakami, Hiroki Yamamura, Kakerun
OPEN / START 23:00
ADV ¥2,000+1D | DOOR ¥2,500+1D
https://circus-osaka.com/events/somethinn-vol-18-feat-jlin/


11.23 wed holiday at CIRCUS Tokyo | BONDAID #11
w/ Theater 1, D.J.Fulltono, CRZKNY
OPEN / START 18:00
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | UNDER 25 ¥2,000+1D
https://meltingbot.net/event/bondaid11-jlin-theater1

主催 : CIRCUS
制作 / PR : SOMETHINN / melting bot

Jeff Mills - ele-king

 ジェフ・ミルズはどこまで進み続けるつもりなのでしょう?

 すでに11月18日に表参道のVENTにて公演をおこなうことが決定しているジェフ・ミルズですが、ここにきて新たなイベントの情報がアナウンスされました。
 来年初頭にオーケストラのために書き下ろした新しいアルバム『Planets』をリリースするジェス・ミルズですが、なんと、その先行試聴会とトーク・イベントが11月15日(火)に開催されます。会場は日本科学未来館 ドームシアター ガイア。来るべき新作『Planets』とは一体どんなアルバムなのか? いちはやくその一端に触れるチャンスです!
 詳細は以下を。

Jeff Mills(ジェフ・ミルズ)、来年リリースの新作アルバム『Planets』の特別先行リスニング & トークイベントを日本科学未来館で開催!!

世界的なテクノ・プロデューサー、DJであるJeff Mills(ジェフ・ミルズ)が、来年2017年初頭に、初めてオーケストラのために書き下ろした新作『Planets』をリリースします。

PlanetsTrailer1

この作品の発表に先駆け、2016年11月15日(火)、日本科学未来館 ドームシアター ガイアにて、特別先行リスニング& トークイベントを開催することが決定しました。

Jeff Millsは2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。今年、3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

Jeff Millsの新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して、私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズの作品史上、最大の野心作。太陽系の各惑星へ旅をするチュートリアルなのです。

2017年の作品発表に先駆け、日本科学未来館の協力のもと、ドームシアター ガイアを会場に、5.1chサラウンドのサウンドシステムでいち早く新作『Planets』を体感していただく機会を設けることができました。また当日はJeff Millsが来場し、新作についてのトークも披露します。

チケット《https://jeffmillsplanets.peatix.com》は10月31日より発売開始。イベントは全3回、各回定員100名限定なのでご購入はお早めに。


【イベント開催概要】

[タイトル]
Jeff Mills新作アルバム『Planets』特別先行リスニング & トークイベント
開催日: 2016年11月15日(火)
会場:日本科学未来館 6Fドームシアター(東京都江東区青海2-3-6)
入場料:¥1,000(税込)
チケット購入:https://jeffmillsplanets.peatix.com

[スケジュール]
*定員:各回100名様
第1回 16:30-18:00
第2回 18:30-20:00
第3回 20:30-22:00

[プログラム]
・サイエンストーク「宇宙観・惑星観の変遷」
解説:ディミトリス・コドプロス(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
・楽曲「Planets」リスニング
・ジェフ・ミルズ トーク

[イベントに関するお問い合わせ]
U/M/A/A Inc.ユーマ株式会社
メール:info@umaa.net

■アーティスト・プロフィール

ジェフ・ミルズ(Jeff Mills)氏  テクノ・プロデューサー/DJ
1963年アメリカ、デトロイト生まれ。デトロイト・テクノと呼ばれる現代エレクトロニック・ミュージックの原点と言われるジャンルの先駆者。DJとして年間100回近いイベントを世界中で行なう傍ら、オーケストラとのコラボレーションを2005年より開始、それ以降世界中で行った全公演がソールドアウト。クラシック・ファンが新しい音楽を発見する絶好の機会となっている。オーケストラのために書き下ろした作品『Planets』を2017年初頭、発売予定。

■『Planets』について
ジェフ・ミルズ氏は2005 年、フランス南部のポン・デュ・ガールにて行われたモンペリエ交響楽団との共演以来、各国のオーケストラと世界各地でコンサートを行い、これまで全公演がソールドアウト。2016年3月21日に東京渋谷・Bunkamura オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団との共演や、『題名のない音楽会』(TV朝日)への出演が話題となったことも記憶に新しいところです。

新作『Planets』は、長年にわたるオーケストラとの共演を通して積み上げられた蓄積が注ぎ込まれた大作であり、これまで様々な作品を通して私達の住む“宇宙”というテーマに向き合ってきたジェフ・ミルズ氏の作品史上、最大の野心作です。

■ドームシアター ガイア

日本初の全天周超高精細立体映像システム“Atmos”や、1000万個の恒星を投影するプラネタリウム投影機“MEGASTAR-II cosmos”、7.1chの立体音響を備えた、直径15メートルのドーム型シアターです。

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