「TT」と一致するもの

interview with Derrick May - ele-king

 久しぶりだった。女子高生が踊っているような、10代が主役の若者文化の渦中にいたのは。その翌日この原稿を書いている。それで僕は、彼女たちにデリック・メイを紹介するとしたら、どう説明すればいいのだろうか......と考えている。
 デトロイト・テクノとは、テクノにとっての、ロックにおけるブルースのようなモノと言って通じるのだろうか。立ち帰る場所であり、一種のルーツだと。君たちがもし将来テクノを好きになったとしたら、いちどは訪れる場所だと。デリック・メイはそのルーツにおいて、3本の指に数えられる重要人物で、言葉がないゆえにカヴァーということのあまりないテクノ・ミュージックにおいては珍しく複数の人にカヴァーされている、当時もっとも多くの人に幸せを感じさせた曲"ストリングス・オブ・ライフ"の作者だと。
 世界でもっとも影響力のあったイギリスの『NME』というロック・メディアが、全盛期にもっとも肩入れしていたDJという説明もできる(その当時のデリック・メイの傍若無人ぶりと反抗を知れば、彼もまたロックンロールのひとりだということがわかってもらえるだろう)。
 実話としてこれもある。ノッティングガムからロンドンにやって来たふたりの青年のうちのひとりがマンチェスターのライヴハウスでストーン・ローゼズを発見して、もうひとりは1988年にデトロイト・テクノの記事を書いたと。1988年のその記事と同時に発売されたデトロイト・テクノのコンピレーションが、国際舞台で初めて「テクノ」という言葉が使われたときなのだと。そして、翌年にはデペッシュ・モードがそのゲットーな街を斜めに走るグラショット・アヴェニュー沿いの、デリック・メイのレーベル(そして当時は彼の住居でもあった)〈トランスマット〉を訪れている。

E王
V.A.(Compiled by DERRICK MAY) - MS00 / BEYOND THE DANCE ~ TRANSMAT 4
ラストラム

Amazon

 『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』は、デリック・メイと〈トランスマット〉にとって4枚目のレーベル・コンピレーションだ。デリック・メイの実質的な制作活動は、80年代で終わっている。自身の曲に関して言えば、90年代以降は未発表曲しか出していない。彼には完成間近だったアルバムがあったが、そのリリースは見送られ、結局、当時録音された曲はこの20年のあいだ、前触れなく、1曲ずつ、地味~に発表されている。『ビヨンド・ザ・ダンス』にも新しい"未発表"がある。パズルのワンピースだ。
 もちろん『ビヨンド・ザ・ダンス』は、未発表曲のために発売されるわけではない。CDにして2枚組、全23曲には、〈トランスマット〉の眩しい歴史が編集されている。  ブックレットには、懐かしい写真もたくさんある。カール・クレイグ、ロラン・ガルニエ、ケニー・ラーキン、ステイシー・プレンといったベテラン勢から、トニー・ドレイクやマイクロワールドといったマニアにはお馴染みの名曲、そして、地味~に発表されている〈トランスマット〉の新人までが並んでいる。なにせ10年ぶりのレーベル・コンピレーションなので、選曲にもパッケージングにも気持ちが込められている。当然、良いアルバムだ。
 僕にはこの機会に、突っ込んで訊いておきたい話があった。11月末、代官山のエアーのレストランでデリック・メイと待ち合わせた。

この男は、若くて、怒りに満ちていて、革命を起こしたくてうずうずしている。しかしこの男は、レコード・ビジネスに疲れてぐったりしている。DJをしながら世界を回って、女の子とセックスしてダンスして、たまに東京にも住んでいる。このふたりはまったくの別人だ。

まずアートワークがすごく良いね。ブックレットには〈トランスマット〉レーベルの歴史がわかるように、古い写真、関わった人たちの写真がコラージュされている。歴史を見せようという意図が伝わってくるよ。

デリック:歴史だけじゃなくて、これからのはじまりの〈トランスマット〉も出したかったんだよ。

今回の『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』を出すに当たって、いくつか僕のなかで「おや」と思ったことがあって、そのひとつが、デリックが25年以上にもわたるレーベルの歴史を初めて振り返ったということなんですよね。

デリック:そうだね。

たしかに過去には、1992年の『レリックス』のような、80年代のベスト盤みたいなコンピレーションはありました。でも、あれは、あくまでリズム・イズ・リズム中心の内容でした。今回のように、カール・クレイグの"クラックダウン"(1990)からケニー・ラーキンの"ウォー・オブ・ザ・ワールド"(1992)、そしてロラン・ガルニエ(ルドヴィック・ナヴァールやシャズ)の"アシッド・エッフェル"(1993)とか、〈トランスマット〉というレーベルの歴史を綴っているのは、今回が初めてなんですよね。

デリック:ああ、そうだね。ただし、今回のコンセプトは忘れられているものを選んだんではない。いま聴き返されるべきものを選んだ。いまの時代でも古くなっていないもの。たとえばジョン・アーノルドの"スパークル"(2000)、この曲は当時も売れたけど、早すぎたんじゃないかと思っていた。いまこそ、あのドラム・パターンは聴かれるべきだってね。

最近はまた、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノへの回帰みたいなことが起きているので、良いタイミングではありますよね。世界的にダンス・ブームだし。

デリック:もちろん。逆に言えば、今回"ヌード・フォト"や"ストリングス・オブ・ライフ"のような曲を入れなかったのは、知られていない曲に光を当てたかったというのもある。これからの〈トランスマット〉をよくするものじゃないかと。俺は過去に生きているわけじゃない。「いま」を生きている。その視点で選んだ。そして、こうなった。

なるほど。もうひとつ......、まあ、個人的には最大の興味は、デリックの未発表曲が入っていたことなんですよね。

デリック:(日本語で)うっす!

はははは。

デリック:ああ、"ハンド・オーヴァー・ハンド"ね。

あれ、良かったよ。

デリック:(日本語で)ありがとございます。

俺は好きだね。

デリック:そりゃあ、良かった。本当に。入れないほうが良いんじゃないとも思った。ものすごく考えたよ。

古い曲だからね。

デリック:最初は2~3曲入れようかなと思った。でも、気が変わった。あまりにも多くの才能が〈トランスマット〉にあることを再発見したから、できる限り、たくさんの人のたくさんの曲を入れたいと思った。本当に良い才能が揃っているよ。彼らの曲への注目が削がれるようなことはしたくなかった。それで"ハンド・オーヴァー・ハンド"だけを残した。
 この曲は、もともとは15分の曲なんだよ。このアルバムのために8分にエディットしたけど、フル・ヴァージョンは12インチで発表するよ。

それは楽しみ。

デリック:どう思った?

デリックらしい、メランコリックで美しい曲だよね。あのー、1993年に『ヴァーチュアル・セックス』というコンピレーション盤が出たじゃない?

デリック:(日本語で)うっす!

あのコンピで、初めて"アイコン"を発表したわけだけど、あんな曲が未発表曲であるってことに当時はすごく驚いて。普通「未発表曲」というと、ボツにした曲だったりして、質は落ちるけどマニア向けの曲として価値があったりするものじゃないですか。でも、"アイコン"は、通常言われる未発表というレヴェルじゃなかったでしょ。で、あとからあの曲は幻のファースト・アルバムのために録音した曲のひとつだって知って納得したんだけど。

デリック:ああ、そうだよ。アルバムのために録音した曲は、他にも9曲ある。

[[SplitPage]]

俺のコンセプトは、ドラム・マシンの限界に挑戦することだった。ドラム・マシンでどこまでできるのかを見せたかった。しかし"ハンド・オーヴァー・ハンド"ではドラム・マシンに集中するんではなく、メロディや構成で、もうひとつのチャプターを見せるという考えだった。

E王
V.A.(Compiled by DERRICK MAY) - MS00 / BEYOND THE DANCE ~ TRANSMAT 4
ラストラム

Amazon

実は今日、そのことについて訊きたかった。ようやく幻のファースト・アルバムについて訊くことができる(笑)。いままでも訊きたくても訊けなかったからね。1992年にデリックは『イノヴェイター』というベスト盤を〈ネットワーク〉から出している。しかし、本当は、『イノヴェイター』ではなく、あなたのファースト・アルバムが出るはずだった。

デリック:そう、トレヴァー・ホーンとミーティングをしていた。彼は"ハンド・オーヴァー・ハンド"に興味を持ってくれた。デイヴ・ガーン(デペッシュ・モード)もこの曲で歌っても良いと言ってくれた。ビョークも気に入ってくれた。俺の当時のエージェントは、この曲で俺をポップスターにしようと企んでいた。彼らは俺がデペッシュ・モードやビョークのようなポップの一部になることを望んだ。それで俺は、トレヴァー・ホーンとエージェントと喧嘩した。和解できずに終わってしまった。

1992年の『イノヴェイター』のアナログ盤には、"ザ・ビギニング"が入ってないんですよね。なんで、初めてのベスト盤に"ザ・ビギニング"が入っていないのかがずっと引っかかっていましてね。そこで推理したんだけど、"ザ・ビギニング"にはデリックにとっての次のコンセプトが詰まっていた。しかし、UKの音楽業界がそれを理解しなかったってことなのかなと。

デリック:そう、理解されなかった。"ザ・ビギニング"は、リズム・イズ・リズムの最初のアルバムの1曲目に収録されるはずだった。だから『イノヴェイター』には入れなかった。"ケオティック・ハーモニー"、"ザ・ビギニング"、"アイコン"、"ハンド・オーヴァー・ハンド"......それから......。

ロング・アゴー? 

デリック:いや、あれは違......、いや、そうそう、イエス、イエス、イエス! 俺は......、本当にUKの音楽業界が嫌いだ。本当に大嫌いだ。本当に、本当に、だいっきらいだ! "ハンド・オーヴァー・ハンド"は一発録りだったな。たった1回で録った。心を込めて作った。

こうして、時期がズレながらも、当時の曲が発表されて、デリックの幻のファースト・アルバムの正体がじょじょに露わになってきているというのも面白いね。相当にメランコリックなアルバムだったんだなと思いますが。

デリック:そうだよ。そういうことだ。まあ、パズルだな。

インナー・シティがヒットしていた頃なんで、UKの音楽業界がリズム・リズムにヒットを求めるのもわからなくはないんですが、そんなにも考えに大きなギャップがあったんですね。

デリック:80年代の話から話そうか。俺とホアン・アトキンスとケヴィン・サンダーソンの3人は、(バーミンガムの)〈クール・キャット〉レーベルのニール・ラシュトンとディストリビューション契約を結んだ。俺らのレコードのUKやヨーロッパでの流通は、すべて〈クール・キャット〉が拠点となってやっていた。やがてケヴィンはインナー・シティとして〈ヴァージン〉と契約したが、俺は依然として〈クール・キャット〉だった。〈クール・キャット〉は大手の〈ビッグ・ライフ〉と契約していたから、〈トランスマット〉の作品はすべて〈クール・キャット〉~〈ビッグ・ライフ〉経由で流通していた。最初に揉めたのは、〈トランスマット〉の作品が、結局、〈ビッグ・ライフ〉傘下でしか流通しなかったということにあった。

デリック・メイがやりたかった音楽性が理解されなかったとか、そういうのが原因ではなかったんだ?

デリック:それは大いにある。ニール・ラシュトンは俺の音楽性をディレクションしはじめて、どんどん意見を言うようになった。たとえば"アルセム(R-Theme)"、これがリズム・イズ・リズム名義で出なかったのは、〈クール・キャット〉が気に入らなかったからだ。なぜ俺が好きな曲を自分のレーベルから出せないんだろう、俺はそう思った。〈ビッグ・ライフ〉は......、ヤズ(Yazz)っていただろう? ポップ・シンガーの女の子で、ああいうのを出したがっていた大手メジャーだ。最初〈クール・キャット〉は、〈ビッグ・ライフ〉からリズム・イズ・リズムのアルバムを出すつもりでいた。それで最初に"ザ・ビギニング"の12インチ・シングルのUK盤がリリースされた。しかし、〈ビッグ・ライフ〉は"ザ・ビギニング"を嫌った。〈ビッグ・ライフ〉は、"ザ・ビギニング"は完成度が低いと言ってきたんだ。

それは怒るよね。

デリック:アルバムのタイトルは『ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド』だった。〈ビッグ・ライフ〉は〈クール・キャット〉に圧力をかけてきて、そして俺と〈クール・キャット〉の関係も悪くなってしまったんだよ。

あのドラム・マシンをよりパーカッシッヴのように扱うのが、"ザ・ビギニング"のコンセプトだったと思うけど、その後の"アイコン"、"スエーニョ・ラティーノ"もそうだったし。

デリック:その通りだよ。あのときの俺のコンセプトは、ドラム・マシンの限界に挑戦することだった。ドラム・マシンでどこまでできるのかを見せたかった。そのリリースを終えたあとに、そして"ハンド・オーヴァー・ハンド"ではドラム・マシンに集中するんではなく、メロディや構成で、もうひとつのチャプターを見せるという考えだった。

そのパーカッションのコンセプトはどこから来たんですか?

デリック:俺は当時3つのドラム・マシンを使っていた。909と808、それから727と626も使っていた。基本は909と808を同期させて、スウィング・パターンのループを少しずつ変化させながら、独特なうねりを出すことを考えていた。いまでこそ簡単にできることだけど、当時は複雑な構成だったと思うよ。ドラム・マシンによるバウンシーな感覚を表現したかったんだ。
 俺は高校時代から、ホアン・アトキンスと一緒に毎日のように909で遊んでいたんだよ。パーティに909を持って行って、パーティを盛り上げる楽器のひとつとして、909を使った。ジェフ・ミルズがまだ909の存在を知るずっと前の話だぜ(笑)。ジェフがDJで909を使ったりするのは、誰のアイデアから来ていると思うよ?

はははは。〈ミュージック・インスティテュート〉?

デリック:いや、だから高校生時代からやっていたから。ジェフにこんど会ったら訊いてくれよ。その909のアイデアについて。

高校時代から知り合いだったの?

デリック:18歳の頃から知っているよ。

ザ・ウィザード。ジェフはもう有名なDJだったでしょう。

デリック:有名だったよ。ジェフは俺よりもつねに有名だった。ジェフはランDMCのようなポップな選曲もしていたからね。

[[SplitPage]]

3つのドラム・マシンを使っていた。909と808、727と626も使っていた。909と808を同期させて、スウィング・パターンのループを少しずつ変化させながら、独特なうねりを出すことを考えていた。いまでこそ簡単にできることだけど、当時は複雑な構成だったと思うよ。

E王
V.A.(Compiled by DERRICK MAY) - MS00 / BEYOND THE DANCE ~ TRANSMAT 4
ラストラム

Amazon

話を戻すけど、デリックの性格を考えると、〈ビッグ・ライフ〉からダメだしされたぐらいで動揺するとは思えないんだけど。なおさら燃えてくるほうじゃないですか。あんたは、そんなことで心が折れるようなヤワな人間じゃないでしょう!

デリック:娘にも同じことを言われたよ。「ネヴァー・ギヴ・アップ!」って。

はははは。

デリック:もうどうしようもなかったんだよ。1991年~1992年は、ニール・ラシュトンが俺のマネージャーで、〈トランスマット〉も彼に半分預けていたところがあった。だから彼と揉めて、〈トランスマット〉を誰かに売ることも考えた。一文無しになったし、追い詰められたよ。

悔しさもあったでしょうね。

デリック:自分のレーベルだけでやっていれば良かったんだけど、〈ビッグ・ライフ〉みたいな大手と組んでレコード・ビジネスの世界に足を踏みれて......、その頃は学びながらやっていこうと思っていたんだけれど、でも、それが失敗だったな。"ビヨンド・ザ・ダンス"を作ったときも〈ビッグ・ライフ〉は理解しなかったんだからね。
 俺も自分で反省しているよ。当時の俺はマネージャーに頼りすぎていたんだ。世間知らずだった。だから、ニール・ラシュトンから意見を言われると、まるで自分を否定されたような気持ちになった。自分が追い出されているような気分になってしまったんだよ。それで、とにかくニールがレーベル経営のこともほとんどやっていたから、彼と別れて、俺は路頭に迷うような感じになった。それでもなんとか、2年かけてレーベルを立て直すことができた。新しいアーティストを集めて、また一からやり直そうと思った。

その立て直した〈トランスマット〉から何故、リズム・イズ・リズムのアルバムを出さなかったんですか?

デリック:(ブックレットに載っている20代のデリックの写真を指さしながら)この男は、若くて、怒りに満ちていて、革命を起こしたくてうずうずしている。(もう1枚の写真、現在の自分の写真を指さしながら)この男は、もうレコード・ビジネスに疲れてぐったりしている。すべてにクソ疲れている。DJをしながら世界を回って、女の子とセックスしてダンスして、たまに東京にも住んでいる。このふたりはまったくの別人だよ。

いや~(笑)。しかし、ホアン・アトキンスだって新しい作品を出しているんだから、デリックだって、新しいシングルを出したいと思っているでしょ? それとも怒りにまかせてスタジオを破壊したとか?

デリック:まさか! そんなことやるわけないだろう。

リー・スクラッチ・ペリーみたいに(笑)。

デリック:止めてくれよ、俺はそんなことはしない。いまでちゃんとスタジオはあるよ。ちゃんと証拠の写真だってあるよ。今回もアルバムも自分のスタジオを使ったんだ。

そういえば、今年デトロイトのベル・アイランド(デトロイト川の中州にある公園)でやった「デイパック・フェスティヴァル」について教えてください。

デリック:ベリー・ナイス。ジュディという友人がやったんだ。おまえは来るべきだったよ。

子供のためにやったんですよね?

デリック:そう、腎臓のない子供たちのためのチャリティでやった。デイパックには、腎臓のない子供たちの薬が入っている。薬を持ち歩かなければ外に出れないからね。だからデイパックを背中に背負った子どもたちのためのチャリティとしてはじまったんだよ。

ああ、それで......、それであんなにもそうそうたるメンツが出ていたんですね。デリック、マイク、ホアン、カール、ケニー、ムーディーマン......。

デリック:もちろん、フェスティヴァルには障害のない子供たちも遊びに来るよ。

それでワークショップをやったり、子供たちにDJや機材の使い方を教えたりしていて。

デリック:そうだね。でも、もともとは募金のためのフェスティヴァルなんだ。だから、みんなで協力した。金儲けのためにやったんじゃない。子供たちのためにやったんだ。

小学生を相手にベテランのDJたちがやっているのが良いなと思いました。

デリック:まったくそうだよ。でも、その根本にはもっとシリアスな理由があるけどね。子供たちを相手にしているけど、あくまで腎臓のない子供たちのためにやったんだからね。まあ、俺の娘みたいな変な子ばかりがそこに集まって(笑)、日中は子供たちみんなが楽しそうだったな。でも、夜になると子供たちは帰ってしまうから、ちょっと訳がわからなくなった。でも、日中は良かったよ。

子供たちにテクノやハウスの作り方、機材の使い方を伝えたいと思いますか?

デリック:すごくあるよ。来年はワークショップを増やして、子供たちにもっとたくさんのことを教えたいと思っている。ただ俺は、良い先生じゃないからな。精神的なことなら教えられるけど、テクニックに関しては良い先生じゃない。気持ちのあり方に関しては教えられるだろうな。子供たちにエネルギーを注入することはできるよ。

ターンテーブルの使い方を教えてないと。

デリック:ふぅ~。この写真を見ろよ!(といって、自分の娘、ソレンがDJミキサーをいじっている写真を見せる)

はははは、いいね。

デリック:彼女は俺のDJを知らないのに、クロスフェーダーをこう操作してやがった。

はははは、父親似じゃない。

デリック:そうなんだよ、それって俺のDJスタイルだろ(笑)!

才能があるんだね。

デリック:かもしれないな。

ソレンちゃんに自分の音楽を聴かせたの?

デリック:いや、俺は聴かせてない。母親がいちど、車のなかで聴かせたことがあるらしいけど、あんまよく憶えてないみたいだ。

[[SplitPage]]

サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック!!!! 音質は良くはないけど、ファンキーで、ダーティーで、速くて......ってヤツだろ。俺、ああいうの大嫌い。

E王
V.A.(Compiled by DERRICK MAY) - MS00 / BEYOND THE DANCE ~ TRANSMAT 4
ラストラム

Amazon

いつか感想を聞くのが楽しみだね。ところでデリック、シカゴのフットワークについてはどう思う?

デリック:知らない。

ジュークと呼ばれている音楽だよ。新世代のゲットー・ハウス。

デリック:知らないな-。

けっこうテンポが速い最新のダンス・バトルで、デトロイトで昔、ジッツと呼ばれていた音楽とも似ている。

デリック:ああ、ハウスというよりもエレクトロを速くした感じじゃない。(早口で)トゥクトゥクトゥクトゥク!!!! パーパパパーララパーパパパーララ!!!! トゥクトゥクトゥクトゥク!!!! (甲高い声で)プッシー・プッシー・プッシー・プッシー!!!! サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック・サック・マイ・ディック!!!! 音質は良くはないけど、ファンキーで、ダーティーで、速くて......ってヤツだろ。俺、ああいうの大嫌い。

〈ダンス・マニア〉は好きだったじゃない。

デリック:好きだよ。〈ダンス・マニア〉はそこまで酷くなかっただろ。もっとハウス寄りだった。

それがもっと進化したんだって!

デリック:でも、野田が言っている意味もわかるよ。ただ、俺はもともとエレクトロがそこまで好きじゃなかった。エジプシャン・ラヴァーのような好きなエレクトロもあるよ。でもホアンほど好きじゃなかったな。

なるほどね。エレクトロが好きか嫌いかでそこが分かれるんだね。

デリック:あんま若い人の音楽知らないんだよね。いまでもよく付き合っている若い世代は、セオ・パリッシュとオマー・Sぐらい。

いまでも〈トランスマット〉はグラショット・アヴェニューにある?

デリック:ああ、そうだよ。

昔は、グラショット・アヴェニュー沿いの〈トランスマット〉の隣には〈KMS〉(ケヴィン・サンダーソンのレーベル)があって、ダニエル・ベルの〈セヴンス・シティ〉があったけど、いまはもう誰もいなくなったでしょ。なんでデリックだけがいまでもグラショット・アヴェニューに居続けるの?

デリック:コミュニティのためだよ。あの辺のコミュニティにとってものすごく重要だからだ。良い写真を見せてあげよう。(iPhoneから写真を探して見せる)

結婚式?

デリック:そう、誰かがそのあたりで結婚すると、必ずここで写真を撮るんだ。それが〈トランスマット〉がそこに居続ける理由だ。(注:オフィスのあるビルの通り沿いの壁に、デリック・メイは〈トランスマット〉に関わってきた絵描きたちに絵を描いてもらっている。たとえば壁にはアブドゥール・ハックなどの絵が描かれている。いつしか、その大きな壁画の前で近所の教会で式を挙げた新婚さんたちが記念を写真を撮るようになった)

ああ、なるほど-。

デリック:もう〈トランスマット〉のビルは歴史の一部になったんだよ。それだけで、そこに居続ける理由が充分にある。

デトロイト・テクノのヒッツヴィルUSA(モータウンの拠点)だね(笑)。

デリック:はははは。

観光名所だ(笑)。

デリック:それもある。観光客が、テクノの生まれた場所としてそこを訪れて、写真を撮るんだ。

へー、初めて〈トランスマット〉に行ったときには、地下の部屋をアブドゥール・ハックがアトリエにしていて、事務所にはニール・オリヴィエラ(デトロイト・エスカレーター・カンパニー)がいたね。そしてグローバル・コミュニケーションがかかっていたんですよね。

デリック:ニールはいま、すごい、ハリウッドで二番目に有名な弁護士として活躍している。

えー、ホント! 映画のために大学院に再入学するっていうメールはもらってたんだけど。

デリック:もともと頭の良い男だったからね。

ミスター・スポックと呼ばれていたほどだもんね(笑)。

デリック:そうだった(笑)。ちなみに『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』ではニールもライナーを書いているんだよ。(......と言って、見本盤を見せる)

ホントだ。

デリック:デリック・オーテンシオ(ニールが辞めた後のレーベル・マネージャー)にも書いてもらっている。覚えているだろ?

もちろん。

デリック:それからジョン・マックレディ(デトロイト・テクノについてよく書いていたUKの音楽ジャーナリスト)にも頼んだ。

へー、ホントに、歴史なんだね。

デリック:そういう意味でも、音源だけではなく、パッケージも含めて、とても良いコンピレーションになったと思う。野田、でも歴史だけじゃないんだ。とくにChronophoneってヤツの曲をよく聴いてくれよ。こいつは、若き日のロラン・ガルニエに匹敵する才能だと思う。

わかったよ。それでは今日はありがとう。相変わらずデリックがクレイジーで嬉しかったよ(笑)。いつか幻のファースト・アルバム『ザ・ビギニング・オブ・ジ・エンド』を聴ける日を楽しみにしているよ。

vol.5 『Hotline Miami』 - ele-king

 みなさんこんにちは。一年は早いもので、もう年末です。海外ゲーム市場も10月~12月はホリデー・シーズンといって、その年の目玉を中心に、数多くのゲームが集中的にリリースされる時期です。当然ゲーマーとしてもいまは一年でいちばん遊びまくる時期。それもあってこれから数回は新作を連続で紹介していくことになりそうです。

 今回ご紹介するのは10月にPCゲームとして発売された『Hotline Miami』。知り合いに薦められて遊んでみたのですが、これがすごく良かった。ゲームプレイ、物語、ビジュアルや音楽ともに文句なしで、今年遊んだなかでも屈指の満足度でした。ただ暴力表現が激しい作品なので、そういうのが苦手な人は注意です。

 この『Hotline Miami』は区分としては前回ご紹介した『Fez』と同じくインディーズのゲームなのですが、『Fez』がいわばインディーズ内におけるメジャーな立ち位置なのに対し、本作はインディーズ内においてもマイナーな存在と言えるでしょう。かくいう自分も本作を開発した〈Dennaton Games〉なんて知らなかったし、同スタジオの中心人物のひとり、“Cactus”ことJonatan Söderström氏のことももちろん知りませんでした。

  Cactusはスウェーデンで活動するゲーム・クリエイター。猛烈な多作ぶりで知られており、その数なんと40作以上! とはいえ、それらには一般的な意味での作り込みは皆無で、とにかくワン・アイディアのプリミティヴなゲーム・デザインをそのまますばやく形にすることを信条にしているのだとか。彼の公式HPを訪れると、荒削りのドットと極彩色で形成されたゲームの数々に触れることができます。


Cactusの過去作の映像。後の『Hotline Miami』につながるセンスを感じさせる。

 もっともこれまでの知名度はインディーズ・ゲーム界でも知る人ぞ知るという感じで、大舞台に出てくることはなかったようです。しかし今回の『Hotline Miami』の開発では、かつて上記映像にもある『Keyboard Drumset Fucking Werewolf 』をともに作ったDennis Wedin氏と合流し、〈Dennaton Games〉を設立。パブリッシャーにDevolver Digitalを据えて、満を持しての商業デビューを飾ったのです。

[[SplitPage]]

■現代に蘇った暴力ゲーム

 そんな経緯から生まれた『Hotline Miami』は、これまでの下積みの厚さを感じさせるすばらしい出来栄えです。とくに過去作で多々見られた極彩色のエフェクトと偏執的な作風が、「80年代風サイコスリラー」というコンセプトに結実しており、その明快さが全体の完成度の高さにつながっていると言えます。今回はそれをさらに暴力表現、ゲームプレイ、物語の3点に噛み砕いて見ていきましょう。

 ゲームのタイプとしては8ビット・スタイルの見下ろし型のアクション・ゲームで、ひたすら敵を倒していくだけのシンプルなもの。この部分だけ抜き出して見れば、凡百のレトロ調インディーズ・ゲームと大差ありません。しかしながら血出まくり・惨すぎ・殺しまくりな猛烈なヴァイオレンス表現は近年見ない異質なもので、さらに眩いネオンやゆらゆら揺れるエフェクト、それにハイテンションな音楽が加わると、その体験はまさにサイコ或いはドラッギーという形容詞で言い表す以外にない強烈なものとなります。

ゲーム序盤の様子。ハイスピードで展開されるゲームに血とネオンと音の洪水。

 このような作風を見て真っ先に思い出すのが、かつて〈Rockstar Games〉が開発した『Grand Theft Auto: Vice City』か、あるいは『Manhunt』という作品。とくにタイトルからして物騒な『Manhunt』はスナッフ・フィルムの都市伝説をゲーム化した作品で、残虐な方法で敵を殺せば殺すほど高得点が得られるという狂った内容。シチュエーションから映像表現、ゲーム性まで『Hotline Miami』が影響を受けていることは明らかです。


『Manhunt』より。いままさに人を狩らんとするところ。ここから先はグロ過ぎるのでお見せできません!

 少し話が逸れますが、この手の作品は暴力ゲームと呼ばれ、ひと昔前までは少数ながらつねに存在していたジャンルです。しかし発売されるたびに世界各国で発禁処分になったり、ゲームは犯罪を助長する云々の論争の槍玉に挙げられたりと、なにかと物議をかもすジャンルでもありました。

 ここにはゲーム表現の限界や、超えてはならない倫理の壁といった命題がつねにあり、単なる愉快犯的な作品もあれば(大半はそれなんだけど)問題提起的な側面を備えた作品も存在して、独特の熱さがあったのです。ただ近年はそういった従来の事情とは別に、元々のニッチさが開発規模の巨大化の割に合わなくなってきたという商売上の問題から、廃れてきてしまっているように思えます。

 〈Rockstar〉もいまでこそ落ち着いた感がありますが、かつては『Manhunt』にしろ『Grand Theft Auto IV』以前の同シリーズにしろ、容赦ないセクシャル&ヴァイオレンス表現の常習犯だったのです。ただ〈Rockstar〉の場合はそんな暴力表現のなかに、いまの作風にも見られるセンスの良さが共存していて、それが独特の魅力やブランド性をかたち作っていました。

 『Hotline Miami』はそんな途絶えつつある文脈の上に立っている作品です。パッと見こそ荒削りの8ビット調ですが、それでも過剰な暴力は確かに表現されており、むしろ見た目の抽象性があらぬ想像力を掻き立てさえします。そして数々のエフェクトと音楽、80年代風で妙にハイ・テンションな雰囲気が織り成すインモラルなクールさは、まさにかつての〈Rockstar〉を引き継いでいると言えましょう。

■目くるめく殺しのルーティン・ワーク

 暴力ゲームと呼ばれるものは、実際のところそのセンセーショナルさに頼ってゲーム性をおざなりにしてしまったり、暴力表現の必然性の証明、ゲーム・プレイとの一致という部分で問題を抱えることが多いです。しかし『Hotline Miami』はその命題に、たしかな完成度と巧妙なトリックで応えています。

 本作のゲーム・ルールについて改めて説明すると、これは建物内にいる敵を倒していくアクション・ゲームで、プレイヤーは敵の落とした近接武器や銃器をとっかえひっかえしながら殲滅を目指します。具体的な様子は前項の映像にあるとおりで、幕間の日常シーンを含めても1ステージ3分に満たない、非常にハイ・スピードでインスタントなゲーム性が特徴です。

 ただしそれはノー・ミスでクリアできればの話であって、よっぽど慣れた人でもないかぎり、まずゲーム・オーヴァーになりまくります。なにせ敵の攻撃はすべて一撃死。反応もはやいし、複数人固まっているのが普通なので、何も考えずに突っ込めば間違いなく死ぬし、考えてもやっぱり死ぬ。


殺っては殺られてまた殺って・・・

 なので、プレイヤーは幾度となくゲーム・オーヴァーになりながら敵の配置を覚え、パターンを構築してクリアを目指すことになります。こういうゲームを一般的には”覚えゲー”と言いますが、クリア時の達成感とゲーム・オーヴァーの連続によるストレスとのさじ加減が難しいゲーム・システムでもあります。

 しかし本作はチェック・ポイントの感覚が絶妙で、且つやられても本当に一瞬、0.5秒ぐらいでやり直せるのがうまいストレス緩和になっていますね。敵を倒すのが爽快なのも、リトライのモチヴェーションになってくる。

 また敵を倒すというシンプルな目的ながら、発見されずに近づくというステルス要素もあれば、見つかった後どう捌くかというアクション要素もあり、そのアクションも近接武器を使うか銃器を使うかで事情はまったく変わってきます。そして何よりこれらがハイ・スピードなゲーム・プレイのなかで渾然一体となっているのがとてもおもしろい。

 ステルスとアクションのハイブリット作品というのはいまではなんら珍しいものではありません。ただ僕がいままで遊んできた作品はどれも、敵に見つかるまではステルス、見つかった後はずっとアクションという具合に、両者の境界とゲーム・プレイの差異は明確に線引きされていました。

 しかし『Hotline Miami』にはそのゲーム・プレイがシフトする境界というものがありません。と言うよりも目まぐるしく変わりまくる。映像を見ていただくとわかりますが、敵への接近から攻撃までが本当に一瞬の出来ごとで、ステルスしている1秒後には殴り合いになり得るし、さらにその1秒後には倒した敵の銃を奪って遠方の敵を狙い撃っていることも普通にあるのです。これらが継ぎ目なくシームレス移行しつづけていくゲームというものは、いままでにない体験でした。

 当然、操作中はなかなかの忙しさになるので、パターン化が重要になってきます。敵を殺しまくっては殺されて、より最適なパターンを導き出すため、さらに殺して殺されまくる。殺されまくってイライラが募ろうとも、それさえも糧にして再び挑む。それだけの中毒性が本作にはあるのです。

 そしてこの何度もリトライをする、せざるを得ないゲーム・メカニックが、じつは本作の物語、ひいては暴力表現の正当化につながる巧妙なトリックにもなっているのです。

[[SplitPage]]

■『Hotline Miami』はプレイヤーを道づれにする

 なぜ何度繰り返してでも殺しをつづけるのか、その果てに何を求めているのか、またなぜ何度も繰り返すことができるのか。これが『Hotline Miami』の物語における、重要なテーマになっています。

 本作の物語開始時の設定は、ガール・フレンドを殺された主人公が復讐のため留守番電話の謎のメッセージに従いながら、暗黒街の殲滅を行っていくというもの。しかし程なくして殺されたというガール・フレンドとの出会いの場面が出てきて(上記プレイ動画の後半)設定に矛盾を感じさせたり、中盤以降は日常パートで頻繁に幻覚が出てくるなど混迷の色を濃くしていきます。


ステージ前後に挟まれる日常パートはストーリーを読み解く重要な場面だ

 その末にどのような結末をたどるのかは、ネタバレになるのでここでは書くことはできません。しかしたしかに言えることは、主人公が終始抱いていた復讐願望に、何度リトライしてでもクリアしたいプレイヤーの願望が重ね合わせられている節があるということですね。

 要はプレイヤーは主人公の共犯者に仕立て上げらてしまうわけです。本作は主人公のことを最終的に哀れで空虚な存在として描いている。それはつまり、クリアを妄執するプレイヤーのことをも同様に断罪しているのです。否定しようにも、何度もリトライを重ね、その度に暴力が振るわれることを是認し、その末にクリアしたという事実が言い逃れを許さない。お前もこの主人公と同じ、妄執に生きる哀れな存在だ、このゲームの暴力に意味があろうがなかろうが、ここまでクリアした時点でお前に意見する資格はないんだ! という具合です。

 容赦なくプレイヤーの努力を踏みにじるこの結末は、かつての『BioShock』でAndrew Ryanに対峙する場面、あるいはもっと古い作品なら『たけしの挑戦状』でクリア後に「こんなげーむにまじになっちゃってどうするの」と言われることに匹敵するメタな手のひら返しと言えましょう。

 それでも、いやそれだからこそ、僕はこの作品の物語が好きなんです。プレイヤー自身を当事者として巻き込んでしまうこと。これはゲームでしか成立しないストーリー・テリングのひとつです。それも丁寧なお膳立てをしてプレイヤーに能動的に没入させるのではなく、プレイヤーの無意識に働きかけて気づいたときには取り込まれてしまっていた、という状況を作る。これは相当至難の技のはず。僕も本作の仕掛けに気づいたときには、これは一本取られたと、痛快な気分になりました。

■まとめ

 傑作です。恐らく暴力表現とゲーム・プレイがひとつでもわずかに欠けていたら、本作の物語は成立しなかったことでしょう。それは他ふたつの要素を個々に見ていった場合でも同じです。暴力表現、ゲーム・プレイ、物語の3本柱がそれぞれを絶妙に補完し合い、それが”80年代風サイコスリラー”としての総体を抜群の完成度でかたち作っています。

 いまさらですが唯一欠点らしきものを挙げれば、ステージ・クリア後に手に入るマスクや武器の性能がイマイチ差別化できていないことが挙げられますが、そんなの些細な枝葉の要素に過ぎません。根幹のデザインが非常に優れているため、小技に頼らなくても十分すぎるほどおもしろい。この点は小技に頼りすぎで根幹が空っぽな最近のメジャー・ゲームはぜひ見習ってほしいところ。

 過激な表現の数々から、人をものすごく選ぶ作品なのは否定できませんが、最近の主流のゲームにはないアナーキーさを求めている人、または単純に完成度の高いゲームを求めている人に強くお薦め。このレヴューでひとりでも多くの人に興味を持っていただければ幸いです。



Bushmind(Seminishukei) - ele-king

https://soundcloud.com/bushmind
https://www.facebook.com/bushmind
https://seminishukei.shop-pro.jp/
https://wdsounds.com/

Nipshit of 2012(順不同)


1
King 104 / Margarita

2
Lil Mercy & Mamimumemosu / 20mamimume12

3
Hoodies / Dogbite

4
Campanelra & Toshi Mamushi / K.B.P

5
D.U.O / Wish Wash

6
Bes & DJ One-Law / U Can't See Me

7
Owl Beats feat.Yuksta-Ill / Time Less

8
Rhyda feat.piz? / Yah Yah Yah

9
Tonosapiens feat.Rockasen / SquAll

10
Fla$hbackS / Gladiator

「REPUBLIC」 - ele-king

 2012年12月1日。日本のオーディオ・ヴィジュアル・イヴェントのパイオニア「REPUBLIC」が遂に終焉を迎える。書籍「映像作家100人」とのコラボレーションなどでも多くの話題を呼んだ本イヴェントが初回開催された2007年5月から5年の月日を経て、多くの映像作家や、ミュージシャン、DJ、VJといったアーテイストに「音と映像」の新しい関係を提示してきた。そんな「REPUBLIC」も10回目で遂に最終回となりフィナーレを迎える。

 そんな、最終回となる今回は、もっともフラットで自由な表現に溢れており、ホームグランドである「WOMB」のDAY TIMEでの開催となる。

 出演陣も豪華で、「bonobos」や「OGRE YOU ASSHOLE」、「ハイスノナサ」、「ATATA」などのバンド勢に、今年最も話題を呼んだMCでもある「田我流」、ネクストブレイクを期待される「転校生」、巷で話題のガールズラッパーのニューカマー「泉まくら」などのフレッシュな面々も揃える。
 さらに、sasakure.UK、TeddyLoid、okadada、DJ WILDPARTYなどネットから新しい音楽カルチャーを発信する面々に、骨太のビートを生み出すトラックメーカーの「Fragment」、「Himuro Yoshiteru」、「SUNNOVA」に、「dot i/o (a.k.a. mito from clammbon)」、「aus」といったジャパニーズ・エレクトロニカの雄と「DUB-Russell」、「metome」、「Avec Avec」、「Seiho」などの新世代のエレクトロニカ・シーン牽引するアーテイストが一挙に渋谷に集結する。

 また、映像面も「伊藤ガビン」や「原田大三郎」などのレジェンドとともにVimeoでの映像が海外でも高い評価を受ける「yusukeshibata + daiheishibata」、「吉田恭之」、「Kezzardrix」。そして、日本を代表するメデイア・アーテイストの「exonemo」と「FREEDOM」で一躍世にその名を知らしめた「神風動画」に気鋭のデザイン・チームの「TYMOTE」、「FREEDOMMUNE」や「TOWER RECORDOMMUNE」のヴィジュアルを手がけた「yasudatakahiro」など新旧のTOPヴィジュアル・クリエイターが最後の宴に映像で花を添える。

 そして、その豪華面々がこの日にしか見れない極上のオーディオヴィジュアル・ショーケースを準備。また、前回好評を博した各フロアの映像演出もさらにスケールアップ。プロジェクターと液晶モニターを大量に特設で用意し、「WOMB」の全フロアを余すところなく映像で包み込む。もちろん長時間にわたる開催にあたってのホスピタリティとしてFOODもご用意。


2012年12/01(Sat)
REPUBLIC VOL.10~THE FINAL~
@WOMB
13:30-21:30(予定)
当日¥4,500 / 前売り¥3,500 ※ドリンク代別途

【SOUND ACT× VJ】
bonobos × TYMOTE
OGRE YOU ASSHOLE × TBA
okadada × exonemo with 渋家 (VideoBomber set)
ジェイムス下地 × 神風動画
dot i/o (a.k.a. mito from clammbon) × Kezzardrix
Daizaburo Harada -Audio Visual Set-
田我流 × スタジオ石×SNEEK PIXX
sasakure.UK × まさたかP
ATATA ×伊藤ガビン+hysysk+matt fargo
aus × TAKCOM
ハイスイノナサ × 大西景太
DUB-Russell×(yusukeshibata+daiheishibata)
転校生 × 大橋史(metromoon)
TeddyLoid × COTOBUKI
Avec Avec × 超常現象 [水野健一郎. 水野貴信 (神風動画). 安達亨 (AC部). 板倉俊介 (AC部)]
DJ WILDPARTY × SUPERPOSITION
Fragment × ogaooooo
shhhhh × 最後の手段
泉まくら × 大島智子
Inner Science × Takuma Nakata
Yaporigami × yasudatakahiro
Hiroaki OBA - Machine Live - × らくださん
metome × 吉田恭之
Himuro Yoshiteru × maxilla
Seiho (Day Tripeer Records, +MUS, Sugar's Campaign)× 子犬+UKYO Inaba
munnrai(TYMOTE/ALT) × leno
hiroyuki arakawa × Shinji Inamoto
Free Babyronia × NOISE ELEMENT
Licaxxx × DEJAMAIS

【SOUND ACT】
SECRET GUEST LIVE!!!
SUNNOVA
MASTERLINK
i-sakurai with passione Team B
specialswitch
Narifumi Ueno ( Ourhouse / Arabesque )
neonao(futago traxx)
M'OSAWA
SHIGAMIKI
MAYU
motoki
iYAMA(konnekt, MESS)

【VJ】
BENZNE by VMTT
VideoNiks
blok m
アサヒ
VJ PLUM

【映像装飾】
S.E.E.D

【プロジェクション コーディネート】
岸本智也

【FOOD】
浅草橋天才算数塾
錦糸町izakaya渦

【ORGANAIZED BY】
ishizawa(sonicjam Inc.)

2012/12/01(SAT)渋谷WOMBにて終焉を迎える「映像と音の共和国」を見逃すな!!

https://republic.jpn.org/

Schoolboy Q - ele-king

 USヒップホップ・シーンでは現在、ケンドリック・ラマーのメジャー・デビュー作『good kid, m.A.A.d city』が大きな話題を呼び、日本のラップ・ファンのあいだでもずいぶん騒がれているが、同じくブラック・ヒッピーのラッパーであるスクールボーイ・Qのセカンド・アルバム『ハビッツ&コントラディクションズ』も面白い。この作品のいちばんの魅力は、スクールボーイ・Qの、ダークではあるが、自嘲気味でとぼけた感じのするギャングスタ・スタイルのラップではないだろうか。

 スクールボーイ・Qことクインシー・マシュー・ハンリーは1986年、在ドイツの米軍基地に生れている。幼少期に母親とLAに移り住み、特別に貧しくも豊かでもない環境で育ったという。優等生でもあったが、12歳で地元のギャング、52フーヴァー・クリップスに加入する。日本のヒップホップ・サイト『YAPPARI HIPHOP』が『Complex』のインタヴュー記事を翻訳しているが、それに拠れば、スクールボーイ・Qがギャング業をもっとも活発にやっていたのは16歳から、逮捕されて刑務所に送り込まれる21歳頃までの間で、クラックやウィード、オキシコドン塩酸塩(医療用麻薬製剤)などを売って稼いでいたという。本格的にラップに情熱を傾けはじめたのも21歳の頃からだった。

 その後、2008年にインディ・レーベル〈トップ・ドウグ・エンターテイメント〉に加わったスクールボーイ・Qは、2009年にはケンドリック・ラマー、ジェイ・ロック、アブ・ソウルとともにブラック・ヒッピーを結成する。その間に、ミックステープを2枚発表、11年には配信限定のデビュー作『SetBacks』をリリースして頭角を現す。このデビュー作の発表はギャングを辞めてから4ヶ月後のことだった。ブラック・ヒッピーはギャングスタ・ラップのパイオニアの、同じくLAを代表するN.W.A.の再来であるという見方もあるが、スクールボーイ・Q自身は、ノートリアスB.I.G.とナズと50セントからもっとも強く影響されたと語っている。

 『ハビッツ&コントラディクションズ』の歌詞の対訳を読むと、ドラッグやセックス、暴力やビッチといったギャングスタ・ラップにお決まりのワードやトピックがずらりと並んでいる。 "レイモンド 1969"という曲名はレイモンド・ワシントンという人物が1969年にベイビー・アヴェニューズ(のちのクリップス)というギャングを結成した史実からきている。ベイビー・アヴェニューズは、結成当初こそブラック・パンサーのスタイルを継承して、自己防衛の信条を示すために黒い革ジャケットを着ていたというが、やがて血なまぐさい抗争をくり広げるようになる。スクールボーイ・Qが育ったのはそういった歴史と背景のある街で、"レイモンド 1969"では、「ここは恐怖で包囲されてんだ/死の臭いが立ち込める」とラップしている。さらに、冗談か本気か、「俺がギャングスタ・スタイルを戻しに来たのさ」("セクスティング")と意気込んでもいる。

 とはいうものの、セックス・ソングにしろ、セルフ・ボースティング(自慢話)ものにしろ、バイオレンスものにしろ、ラップのフロウから、スクールボーイ・Qのコミカルで、多彩な表情がみえる。凄んでみたり、好き者っぷりをひけらかしたりしているが、二枚目というよりは三枚目のノリで、それが面白い。英語が理解できれば、ブラック・ユーモアをもっと楽しめるのだろう。アブ・ソウルとぶりぶりのゲットー・ベース風のトラックに乗って、「ヤバイ、クスリが切れそうだぜ」だの「エクスタシーをキメてる女はイクのが早い」だの......ここに書くのを遠慮したくなるようなナスティーなラップをハイテンションで連発していく"ドラッギーズ・ウィット・ホーズ・アゲイン"は、要はボンクラ・アンセムである。ケンドリック・ラマーをゲストに迎えた"ブレスド"では唯一前向きで信心深いライミングをしているものの......、『ハビッツ&コントラディクションズ』(=常習と矛盾)というのはなかなか気が利いたタイトルだと思う。

 サウンド・プロダクションに、ポスト・ダブステップをはじめとするUKのクラブ/エレクトロニック・ミュージックやトラップ・ミュージックからの影響がうかがえるのもこの作品の魅力だ。『SetBacks』や『good kid, m.A.A.d city』のソウルフルでオーガニックなプロダクションとは対照的である。一曲目の"サクリレジアス"からして四つ打ちではじまるし、ジェネイ・アイコのセクシーなヴォーカルをフィーチャーした"セックス・ドライヴ"もUKのクラブ系のインディ・レーベルが出してそうな音だ。RZAを彷彿させる"レイモンド 1969"の陰鬱なトラックでは、ポーティスヘッドの"カウボーイズ"がサンプリングされている。そうかと思えば、マリーナ・ショウが歌う官能的なソウル・ミュージック"フィール・ライク・メイキン・ラヴ" をループさせ、ドム・ケネディとカレンシーとともにねっとりとフロウしていたりもする。

 2012年1月14日に配信限定で発表された作品のCD盤である今作に、エイサップ・ロッキーとコラボレーションした"Hands on the Wheel"が収録されなかったのは残念だが、日本盤にはボーナス・トラックが二曲入っている。ケンドリック・ラマーの新作とおなじく、同時代のUSのラップ・ミュージックを聴いているワクワク感が堪らなくいい。

 ロンドンとパリは列車で結ばれている。ユーロスターで所用2時間。時差が1時間なので往路は3時間、復路は1時間という幻惑を誘うタイムラグ。しかも海底を抜ける。その途方もなさに、果たしてパリに無事辿りつけるのかという幼児なみの不安が頭をよぎる。住んでいるロンドンの自宅で予約はウェブ上で済ませる。当日、無事に起床することができた。出国手続きを終え、無事列車にも乗れた。なんてことはない。新幹線のような快適な乗り心地。いつの間にか海を越えていた。地上を走っている時間のほうが長い。フランスののどかな田園風景を走り抜ける。と、パリのターミナル駅に着く。最初の驚きは、駅舎の壁面に途切れることなく続くグラフィティ。その後、5日間の滞在でパリはロンドンをしのぐグラフィティの街だと知る。

 ウェブ・マガジン『ピッチフォーク』のフェスティヴァルがパリで開催されるというのでチケットをとった。ジェームズ・ブレイク、ファクトリー・フロア、アニマル・コレクティヴ、ジェシー・ウェア、ラスティー......と話題のアーティストばかり。7月にシカゴで開催された同フェスティヴァルの様子をウェブで見ていたので即決だった。正直、ちょっとパリにも行きたい気持ちもあったし、フェスティヴァルでパリジェンヌがどんな風に狂気するのか見てみたかった。  同じ歴史を感じさせる都市とはいえパリは明らかにロンドンよりも落ち着いた街だ。そして悦ばしいことに食べ物が美味しい。いずれもロンドンがうるさ過ぎ、食べ物が不味い、とも言える。フランス語ができればパリは日本人にとって住みやすい街なんじゃないか。とはいえ、たった数日の滞在では計り知れない。街中にグラフィティが溢れかえっている。この意味するところは何だろう。アートの街だから許容されている? 確かにお金を出しても惜しくない立派な作品にストリートで出合ったりする。そして、スリの腕は世界一だから気をつけるよう散々言われた。しかもよく考えると、2005年にこの街では暴動が起きている。表面的に落ち着いているように見えても、他の欧州各国と同様に煮えたぎるものがある? でも、いち早く左派政権になったし、この落ち着きは余裕をしめしているのか......。などと色々と頭の中を駆け巡った。だけど街中を歩く人びとがオシャレで似合っていて、ただただ魅了され雑念もふっ飛ぶ。たった2時間の移動でロンドンとパリでここまで違うのか、と当然のことかもしれないが改めて驚く(ロンドンのコモン・ピープルは必ずしもオシャレじゃないから)。

 会場はパリの北東部に位置する〈Grande halle de la Villette〉。大きな倉庫を改造したのか、ちょうどサッカー・コートぐらいの広さで天井がやたら高いホール。フランスで『ピッチフォーク』が扱うようなオルタナティヴなロックやダンス・ミュージックがどこまで人気があるのか知らない。しかも、ほとんどが英語圏のアーティスト。ピークでも会場の6割ぐらいしか埋まらなかったので、すごく人気がある訳ではなさそう。でも、その分、会場のなかに逃げ場があって過しやすかった。耳にイギリス英語が飛び込んでくる。とくに2日目はイギリス人が多かった。結局、僕のようにユーロスターでロンドンから来たオーディエンスが多数いる印象。

 パリに着き、ホテルにチェックインしてから会場に入った。言葉が通じないので終止緊張していたせいか、疲れが出てボーとアルーナジョージなんかチェックしていたアーティストも遠巻きに見る。ティンバランドとミッシー・エリオットの出会いがいまのロンドンで実現されたら、と評されるこの異色ユニット。アルーナの愛くるしい佇まいが微笑ましかった。
 さて、いまはとにかくフジ・ロックでのライヴも終え話題になっているファクトリー・フロアに備えよう。アルコール片手にリラックスして会場を歩き回った。ロンドンのラフ・トレードが大きな物販ブースを出している。オフィシャルのバックをここで買う。片隅でジュエリーや靴なんかのハンドメイドの作品を扱ったフリー・マーケットも開かれている。オシャレ! いちいち立ち止まって見てしまう。そうこうしているうちにファクトリー・フロアだ。終止ストイックに展開するミニマリズム。退廃美はスロッピング・グリッスルのそれに近いが、さらに渇いている。この渇きは諦念に近いのか......。打ち鳴らされる音の粒の快楽に酔いしれる。どうしようもない寄る辺なさに身をゆだねる。恍惚とする......。
 その後、バンクーバーを拠点にするJapandroidsという謎のふたり組のロックバンドを見てポカンとしたり、The xx やSBTRKTのレーベル〈Young Turks〉からリリースのあるJohn Talabotで身体をほぐしたりしながら、ジェームズ・ブレイクに備えた。
 パリのジェームズ・ブレイクは都市のもつ気高さに演出され、いっそう高貴なものに映った。ヨーロッパを覆っているであろう無力感を一歩進めて絶望に至り、そこからの救済を希求しているような...、というと大袈裟? 不安定なトラックと彼の中性的な声が心の襞に分け入ってくる。見たことのない世界を見せてくれそうな予感に包まれる。
 午前1時頃、この日のヘッドライン、フランスのポスト・ロック・バンド、M83のやたらとテンションの高いライヴを横目にホテルに向かう。

[[SplitPage]]

 2日目。午後5時開始。遅い朝に貴重なパリの1日を怠惰に過す。ルーブル美術館の近くにあるビルごとアーティストのスクワットになっている59 RIVOLIというスペースに行く。たくさんのアーティストの制作現場になっていて展示も無数にある。どれも個性的で目を惹く。街中で見かけたグラフィティと同じアーティストの作品もあった。1999年にはじまったスペースらしい。ヨーロッパではスクワットが違法ではない国がある。ちなみにイギリスでは2ヶ月前に住むことが違法になった。が、不思議なことに空いている建造物を一時使用することは違法になっておらず、まだスクワット・パーティなんかがある。
 少し遅れて午後6時頃開場についた。その日は目的がたくさんあった。まずはジェシー・ウェア。彼女を最初に見たのは5月にKOKOロンドンであったベンガのリリース・パーティだった。日本では考えられないが、ロンドンではダブ・ステップでモッシュが起る。DJも応酬してアオりにアオる。この日もそうだった。そんな、どちらかというと男くさい匂いが漂うパーティで、ジェシー・ウェアが登場すると変わった。たった1曲歌っただけなのに会場がしっとりとした雰囲気に包まれた。その後、ずっと気になっていたらジョーカーやSBTRKTと楽曲制作をしている歌手だと判った。ニュー・アルバムが発売される頃には、レコード屋のみならず駅の掲示板などにもポスターが貼られ、ちょっと盛上っていた。新作『DEVOTION』はイギリスのエレクトロニック・ミュージック・シーンを背景にしながら、しかし耳ざわりのよいソウル作品だ。ブロー・ステップのように過激/過剰に行きがちなシーンに淡々と距離をとっているとも言えるし、ただ自分の好きな音楽を黙々と追求しているだけにも見える。最近ではディスクロージャーと絡むなど趣味のよさ、立ち位置のうまさを印象づける。僕は新作をどう聞いたかと言うと、決して雰囲気がよいとは言えない不景気のロンドンで、ゆらぐことのないイギリスのアーティストとしての誇りのようなものを感じた。エイミー・ワインハウスは......あまりにもいまのイギリスの雰囲気を暴きだし過ぎている、と感じることもあるから。「DEVOTION=献身」が彼女を育んだミュージック・シーンに対するものであったら、それは素晴らしいことじゃないか。

 可愛い言葉づかいのジェシー・ウェア。肩の荷を下ろし一曲終わるたびに何やら語りだす。可愛い。歌いはじめると一気にオーラを身にまとう。特に凝った演出もなかったがその分、歌に集中できた。まだキャリアが始まったばかりのアーティストにありがちな衒ったところもなく純粋な歌がそこにあった。ジーンとする。
 続いてワイルド・ナッシング。80年代風、イギリスのギーター・ポップ・サウンドは日本人にとって聞きやすいがもはや"カルト"と評されている。ジャック・テイタム──実質、彼ひとりのバンドみたい──が、アメリカ人なのも共感できる。シンセも相俟ってキラキラしたギター・サウンドを、他国の過去の音に想いを馳せながら作っている感じ。わかる。新作『ノクターン』を愛聴していたのでライヴも楽しめた。なんだかんだいっても現代の解像度の高いサウンドとフェスの大音響の効果は心地よく、快感だった。

 ピッチフォーク・ミュージック・フェスティヴァルは個性派ぞろいのフェスティヴァルで、まったくノー・チェックでも意外なアーティストに巡り合う。例えばザ・トーレスト・マン・オン・アース。ボン・イーヴェルのツアーのフロント・アクトを務め知られるようになったというスウェーデンのアーティストだ。ボン・イーヴェルやベン・ハワードなんかの極楽系フォーク・サウンド。だけど、どこかボブ・ディランぽい。まとめると、現代スウェーデンのボブ・ディラン兼ボン・イーヴィル、その名もザ・トーレスト・マン・オン・アース。謎だが、謎めいた魅力があった。次に、初めて知ったけど欧米では結構知られているらしいロビンも強烈なシンガーだった。エレクトロニック・サウンドにのせ歌われるポップ・ソング。彼女独特のコケティッシュな魅力に溢れたステージ。どこか振り付けが80年代のアイドルっぽい。どうしても日本のアイドルを思い出してしまうステージをパリで、しかもピッチフォークのイベントで目撃するという倒錯感がすごかった。

 2日目のヘッド・ライナーはアニマル・コレクティヴ。新作『センティピード・ヘルツ』がこれまでの作品と一変していたので、ライヴはどうかと興味深く観た。新作の楽曲中心に進んでいく。リズムとサンプリングのおもちゃ箱をひっくり返したような躁状態が続く。サイケデリックなデコが虹色に怪しく明滅するステージのうえでたんたんと演奏したり機材をいじっている。変拍子や過剰なサウンド・エフェクトを駆使しながら不可思議な物語を感じるステージ。終盤は、これまでのアニコレのイメージどおりアシッドにフォークに展開し陶酔する。深夜2時近く、この日のパリの夜は時空が捩じれたまま深けていった。

[[SplitPage]]

 さて3日目だ。またも遅い朝。昼食にパリに在住していたレゲエ・ライターの鈴木孝弥さんに教えてもらったアフリカ料理を食しに出向く。パリの南に位置する大通りブルヴァール・バルベス周辺はアフリカ人の街。その北側にあるセネガル料理屋シェ・アイダ。しかし...一向に見つからない。しばらく漂う。パリのアフリカ人街はヨーロッパ大陸に突然アフリカへの入口が出現したかのようで軽く混乱する。結局、見つからない。たぶん閉店したのだろう。何度か鈴木孝弥さんがこの店のメニューをお手本にして創った料理を東京で食して期待が膨らんでいたので、泣く。そのあと、ロンドンからの友人と落ち合い3日目のフェスティヴァル会場に向かう。

 この日、まずはプリティ・リングという4AD所属のユニットに度肝を抜かれる。声だけでなく佇まいもビヨークっぽいメガン・ジェームズと、均整のとれた体つきなのにラップトップに向かってひたすらヘッドバンギングするコリン・ロディックの男女二人組。クリック系のサウンドに浮遊感ただよう歌声。聴いているだけでひたすら気持ちいい。小さい体のメガンが時おりドラを打ち響かせるのでハッとし、ニヤっとする。
 3日目だけオール・ナイトだったのでお客さんも若く、オシャレ。ロンドナーだったら無造作にアーティストTシャツなんかで済ますところ、やっぱりパリッ子は違う。マフラーの巻き方や靴の合わせ方ひとつ違う。もしかして日本のクラバーに近いのかもしれないが、まあ、なんというか絵になる。パリッ子のファッションに憧れても、絶対に真似できない。さすが本場、なんて常套句を思わず心の中でつぶやく。ロンドナーよりも踊らないけれど、踊る姿が美しい。見惚れる。そして、この人たちのなかで踊っている自分はなんてオシャレなんだ、なんて自己満足。
 さて、このフェスティヴァルで一番楽しみにしていたグレズリー・ベアーだ。新作『シールズ』はバンド・サウンドの完成度と、楽曲としての先進性が同居する近年では希有な作品として聴いていた。これがいわゆるロックなのかどうかもはやわからないが、ロック編成の音楽の可能性みたいなものさえ感じていた。
 いたってクールに進んでいくステージ。サウンドに対して忠実でストイックな印象さえ受ける。しかし、だからこそ時おりサイケデリックに、またゴシックに展開するとき、音の渦に吸いこまれる。アンサンブルに酔い痴れ、コーラスワークの虜になる。
 しかしハイライトはグレズリー・ベアーではなかった。演奏が終わると、間断なくデェスクロージャーがはじまる。ピンとした空気が暴発して一気にパーティ・ムードへ。まだ20歳そこそこの兄弟のデュオ。"Tenderly"のようなUKガラージから、"Latch"のようなハウスまで気の利いたグルーヴが会場全体を覆う。うまい......と油断していたらジェシー・ウェア"ランニング"のリミックスが投下される。まるでドナ・サマーを初めてクラブで聴いたときみたいに、我知らず全身で踊っていた。

夜は長かった。トータル・エノーモス・エクスティンクト・ダイナソーズの変態的なエレクトロ・ポップに嵌ったと思ったら、グラスゴー出身のラスティーのDJセットにも終止引き込まれ、何度も雄叫びをあげる。このとき、客席前線の熱狂度はすごくて、オシャレなパリジェンヌが乱舞。なんというか、世界中どこにいっても変わらない。結局は、そういうことだ。

Chart JET SET 2012.11.27 - ele-king

Chart


1

三田格 / 野田努 - Techno Definitive 1963-2013 (P-vine)
およそ全250 ページ・カラー、テクノの名盤600枚以上のアートワークを掲載。各年代毎、最重要アルバムと最重要シングルを選びながら、エレクトロニック・ミュージックの歴史も読み取れます。

2

Atoms For Peace - Default (Xl)
Modeselektor率いる50weaponsからのデビュー12"は数分で完売。1st.アルバム『Amok』から、最前線Ukベースを消化した話題沸騰トラックが先行カットされました!!

3

Ame - Erkki (Rush Hour)
Kristian Beyer & Frank Wiedemannからなる"Innervisions"お馴染みの才人デュオAmeによる新作12"。"Running Back"主宰のGerd Jansonが監修したコンピ・アルバム『Music For Autobahns』の冒頭を飾る話題作が先行12"カットにて限定リリース!!

4

Juk Juk - When I Feel / Wars (Nommos)
Four Tetに見出され、主宰レーベルTextからデビューを飾った謎の新鋭Juk Juk。過去2作も爆裂ヒットした自主レーベルNommosからの第3弾12"が遂に登場しました!!

5

Poolside - Harvest Moon / When Am I Going To Make A Living (Poolside Music)
A面は『Pacific Standard Time』収録のNeil Young大傑作カヴァー。そしてB面はネット上で大人気を博していたSade名曲のメロウ・ディスコ・リエディット!!

6

Letherette - Featurette (Ninja Tune)
ご存じFloating Points率いるEgloのオフシュートHo_tepからデビューを飾ったUkベース・ディスコ人気デュオLetheretteが名門Ninja Tuneへと電撃移籍して放つハウスDjも直撃の1枚です!!

7

Slugabed - Wake Up (Ninja Tune)
お馴染みNinjaの天才Slugabed。名曲"Sex"を収めたアルバム『Time Team』に続いて、淡雪の如く舞う美麗シンセをまとったフィメール・ヴォーカル・ベース・ポップ歴史的傑作を完成です!!

8

Auntie Flo - Rituals (Mule Musiq)
チリアン・ミニマル新鋭Alejandro Pazのリリースでも注目を集めるHuntleys & Palmersの代表格Auntie Flo。傑作1st.『Future Rhythm Machine』に続く新作がなんとMule Musiqから登場です!!

9

Luciano - Rise Of Angels (Cadenza)
Mirko Loko Remixを収録、世界各地のフロアを盛り上げた"Rise Of Angels"が遂にシングル化!!

10

Miracles Club - U & Me / Ocean Song (Cutters)
エクスペリメンタル通過後のインディ・シンセ・ハウスの先駆者、Miracles Club。通算4枚目、Cut Copy主宰Cuttersからは2枚目となる12インチ!!

ICHI-LOW (Caribbean Dandy) - ele-king

偶数月第二月曜@The ROOM、奇数月第四火曜@虎子食堂等々のレギュラーでCaribbean Dandyはプレイ中。その他個人活動はTwitterの@ICHILOWをチェックしてください。

X'mas間近で毎年ヘビロテのアルバムの中からベスト10


1
JOHN HOLT - Happy Xmas (War Is Over) - Trojan

2
JOHN HOLT - Last Christmas - Trojan

3
JOHN HOLT - A Spaceman Came Travelling - Trojan

4
JOHN HOLT - Santa Clause Is Coming To Town - Trojan

5
JOHN HOLT - White Christmas - Trojan

6
JOHN HOLT - Blue Christmas - Trojan

7
JOHN HOLT - I Believe In Father Christmas - Trojan

8
JOHN HOLT - Auld Lang Syne - Trojan

9
JOHN HOLT - Lonely This Christmas - Trojan

10
JOHN HOLT - My Oh My - Trojan

Cero - ele-king

 街中がひっくり返ったような、東北地方の変わり果てた港町。その破壊のイメージが未だに私を離さない。比喩でもなんでもない、街は失われてしまった......と同時に、その街の記憶を持つ人びともまた、あるいは失われてしまったのだと思うと、奇妙な戦慄があった。完結してしまった喪失というものは、語り手を持たないものなのだと。
 私たちが放り込まれた「以後」の世界は、完結していない喪失が進行と回復を繰り返しているようなややこしい場所だ。もちろん、死や別れは最初から私たちの人生のオプションだし、その意味では何も変わっていないという言い方もできるだろう。だが、やはり、多くの人が見る世界の在り方が大きく書き換えられたのは間違いないと思う。
 その点、セロもたしかに、変わった。少なくとも、この新作『My Lost City』は、東京をもう以前とは違う(あるいは失われた)街と呼ぶことで生まれている。だが、ここには喪失を直視したことによって生じ得る重苦しさの類は、いっさいない。彼らは祝祭を継続する道を選んだのだ。いわば、現実に対する非服従としてのポップ・ミュージックを奏でている。喪失と、祝祭を、同時に引き受けることによって、それは高らかに鳴っている。
 
 "大停電の夜に"が持った奇妙な予見性、そして、『WORLD RECORD』(2011)がそれと同時に持った同時代的な切迫感との乖離。そのギャップが彼らを苦しめていたことを、私は知らなかった。「でも、その時、村上春樹が『海辺のカフカ』で「想像の世界においても、人は責任を負わなければならない」というようなことを書いていたなって、頭をよぎったんです。(https://www.kakubarhythm.com/special/mylostcity/)」――そう、セロは、より強力な物語を立ち上げることで、虚構の作り手としての責任を引き受けたのだろう。
 より大きな現実には、より大きな虚構を。"水平線のバラード"のア・カペラで導入され、以降、賑やかに、カラフルに、48分が目まぐるしく展開していく。何かヘヴィなものを振り切るように、ある種の切実さを持って、『My Lost City』は明確に祝祭性を志向する。現実からもっともっと遠く離れて。悲観や感傷ではなく、さらに大きな、情熱的なファンファーレで、「以後」の世界に生きる人びとを迎え入れている。

 音楽としてのスケールも遥かに大きくなっているように思う。はっぴいえんど、鈴木恵一、ジャズ、ファンク、合唱、テクノ、キューバ音楽......打楽器にしても、金管にしても、鍵盤打楽器にしても、1曲のなかでも目まぐるしくシャッフルされ、特に演劇仕立てのプログレッシブ・ポップな展開を見せる"船上パーティー"は中盤のハイライトとなる。
 また、セロ a.k.a. Contemporary Exotica Rock Orchestraというネーミングは実に的確で、チェンバー・フォーク的な緻密さと、ストリート・バンド的な豪快さを兼ね備えたムードがあり、何より、『My Lost City』からはたくさんの人の気配がする。スティールパンやトランペットで参加しているMC.sirafu、ドラムス、サックスで参加しているあだち麗三郎らは事実上のバンド・メンバーのようで、演奏のクレジットは賑やかなことになっている。
 そう、音楽を作ることがあまりにも簡単になったこの時代に、数分のポップ・ソングのために数十人が集まっている。その光景を想像するだけでも感動的である。ルー・リードのクラシック"A Walk on the Wild Side"(1972)をトロピカル・サイケ・ポップにリアレンジしたような"cloud nine"、合唱に包まれながら、幽霊船に乗って暗闇の中を突き進む"Contemporary Tokyo Cruise"、そしてアルバム本編の実質的なエンディングを飾る"さん!"の底なしの多幸感には、私は小沢健二を感じた。

 しかし『My Lost City』は、そこで終わらない(終わっていれば、いわゆる出来過ぎた「名盤」である)。"わたしのすがた"で、物語の主人公は現実の東京に戻っている。虚構の旅を終え、CDと文庫本でぐちゃぐちゃになった狭い部屋で、現実に思いを馳せる彼は、『My Lost City』を聴き終えたあなたそのものだ。そこで何を思う? 音楽で盛り上がったところで、「この街」は変わらない。そうした無力感とも取れる感情を吐き出し、『My Lost City』は、エレクトロニックな閉塞感とともに、ある意味では汚い終わり方をする。
 ポップ・ミュージックが多くの人を熱狂的にアップリフトさせる時代は終わったし、その不可能性に逆に陶酔するというシニシズムの時代も終わったのだと思うが、それを自覚した上で、個人以上/社会未満としての都市(シティー)の気分や気配を、そのまま音楽にしてしまうことを、セロは諦めていない。それでも、"わたしのすがた"が生まれなくてはならなかった(あるいは録音されなければならなかった)理由を考えると、なんともアンビヴァレントな気持ちになる、、、。

 少し話を変えよう。『My Lost City』が持つ意味について。筆者は昨年、「スモール・ミュージック」という言葉でこの国のあまり売れていない(だが素晴らしいと思える)音楽を形容したけれども、これは、かつて本誌編集長がロバート・クリストガウを引用する形で紹介した「セミ・ポップ」という概念とは少し違う。細分化に対して下位層に潜るのではなく、そこがどれほど狭い場所であれ、堂々とポップの可能性にベットする音楽――『ピッチフォーク』の表記に倣えばスモール・ポップ――の時代は、欧米ではアーケード・ファイアの『Funeral』(2004)で始まっているが、『My Lost City』はつまり、この国のインディ・ポップにおける始まりのはじまりである。
 また、地球儀を軽くスピンするようなその豊かな音楽性を踏まえれば、『Illinois』(2005)前後のスフィアン・スティーヴンスに対する「風街」からの回答とも言えるし、あるいは、90年代に『LIFE』があったのなら、私たちの時代にはこれがある、『My Lost City』はそういう作品だ。奇跡のようなポップの現象はもう、このさき生まれ得ないのだろう。だが、奇跡をともに願える仲間を、セロは見つけたようだ。それもまた、小さな奇跡なのではないだろうか。「いかないで、光よ/わたしたちはここにいます」("Contemporary Tokyo Cruise")――この祝祭は、きっと徒花ではないし、ひとりの天才が作り上げた孤城でもない。枯死していく風景の中に浮かび上がる、輝かしい宴の虚像。この時代を笑顔で生きようとする人びとに捧げられた、巨大な祈りとしての音楽が、ここにある。

interview with LOVE ME TENDER - ele-king

夜目が覚めて自分が最悪な人間だと思ったとき
思い出して欲しい
街は下水道やサーカスのように面白い場所だということを
ルー・リード"コニー・アイランド・ベイビー"


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

Amazon iTunes

 街を歩くのは楽しい。とくに夜更けから朝方にかけては。僕にiPodはいらない。頭のなかにはたくさんの音楽が鳴っているから。
 ラヴ・ミー・テンダーのデビュー・アルバム『スウィート』が完成した。彼らは正真正銘のシティ・ポップス・バンドだ。彼らの先行シングル「トワイライト」は、本当の意味での今日の渋谷の道玄坂の裏側の世界が描かれているが、アルバム『スウィート』はそれをさらに発展させている。ドリーミーでダンサブルなソフト・ロックをバックに、ロマンティックな週末の夜の片隅の出来事の断片、休日のドライヴ、そしてビルの谷間に輝く朝日を描いている。
 ラヴ・ミー・テンダーは、ドラムを叩きながら歌を歌っているMAKIを中心に、サブカル界隈では賞賛とディスのリツイートを浴びている鍵盤担当の高木荘太、ふだんはDJをやっているサックスのACKKY、ベースのTEPPEI、ギターのARATAの5人から成る。彼らは、渋谷......といってもあんまりおしゃれ感のない裏通りの、そのまた裏通りの雑居ビルのなかにあるDJバーを拠点に登場した。クラブ・カルチャーは、いまや欧米でも、ホーム・パーティやウェアハウス・パーティといったアンダーグラウンドな広がりを見せている。より、地下に潜伏しながら堂々と音楽をやっているという、逆説的な態度を示している。ラヴ・ミー・テンダーの本質もそこにある。

いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。(高木壮太)

"メスカリーター"からはじまっているのが良いと思ったんですよね。〈メスカリート〉という場所は、まあ、知る人ぞ知る秘密の場所であり続けたわけじゃないですか。それがこう、明るみにでることはどうだったんでしょう?

壮太:いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。

ハハハハ。もう、カミングアウト、カミングアウト(笑)! まあ、それはともかく、この10年というのは、クラブ・カルチャーがかたやアゲハのようなビッグ・クラブにになって、その片方でDJバーのようなものが増えていった10年だと思うんですけど、 ラヴ・ミー・テンダーはそういう、増えていったDJバー文化から出ていったバンドなんだろうなと思ったんですね。そういう意味で、"メスカリーター"からはじまるのはもっともだなと思いました。

壮太:いやー、僕も最初、"メスカリーター"といったときはびっくりしましたよ。いまさらなんか語ることがあるのかって。

マキ:はははは。

壮太:どうなんですか、ラヴ・ミー・テンダー=〈メスカリート〉になっているんですか? お抱えバンドのように。

いや、それはもうそうでしょう。モータウンにおけるファンク・ブラザーズみたいなものでしょう。

マキ:他にもバンド、いますけどね。

壮太:他にもいるけど......、俺たちなの?

マキ:そうなっちゃいましたね。

壮太:だったら光栄です。すごいバンドいっぱいいるのに。

マキ:ニビルブラザースでもミシマでもない。

壮太:〈メスカリート〉の名前を汚さないようにしないと。

マキ:汚さないように。先輩に怒られないようにね。

そこは意識しているんですか?

テッペイ:レペゼン・メスカってことですか?

そう。

テッペイ:そこは俺、逆ですけどね。

まったくない?

テッペイ:むしろあれを壊したいですね。もう最近はメスカって言わないようにしてますからね。

堂々と歌っているじゃない(笑)!

テッペイ:いや、前に若い子から、友だちに「メスカ行こうかな」って言ったら「危ないから行かないほうがいいよ」と言われたと聞いたこともあって、もう絶対に言いたくない。悪いほうにとらえられている。

マキ:ホントにね。

なおさら、そこは良いほうに解釈してもらわないとですよね。世間の評判を覆しましょうよ。

壮太:浄化作業ですよ!

アッキーはもう長年DJをやってるわけですが、DJバー文化についてどう思ってますか?

アッキー:それはね、耳が肥えている人、10人ぐらいの前でやることじゃないですか。すごいうるさ型の人たちの前で、がっつり10時間とかやる、みんな訓練をしているんで(笑)。そういうDJカルチャーはそれ以前まではなかったかもしれないですね。

奥渋谷だけじゃなく、下北沢にもあるし、いろいろありますよね。けっこう名前のあるDJが、10人や20人でいっぱいになってしまうような空間でDJをやっていますよね。

アッキー:あれもう、うるさ型の人たちの前で、どれだけ濃いものを聞かせられるかっていうことだと思います。

マキ:修行だよね。

アッキー:朝3時以降とか、狂っちゃいますからね。それでも自分は淡々とやらなきゃいけない。

マキ:時空がゆがむ瞬間というんですか。

アッキー:解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。

たしかにね(笑)。

マキ:そこからさらにどん欲な人だけが残るっていうか。

アッキー:だからそれを毎晩マキちゃんとかが見てたから。

壮太:渋谷で一番遅くまで開いてる店。

アッキー:やっぱり、僕はDJバーに聴きに行くのが好きですね。

アラタ:たんに年齢層が、そのひとたちが高くなってきてるっていうのもあるんじゃないですか。

それも一理あるけど、だけどクラブはクラブでやっぱりたくさんできてて、そっちが好きなひとはやっぱりそっちに行ってたから。かたや、それとは違ったベクトルでもって、DJバーがたくさんできたなあと思って。

壮太:たとえば、ひばりが丘なんかにもDJバーが2軒あるんだけれども、そこはDJブースがインテリアになってるらしいんですよね。でも、DJバーといっていい流行ってる小バコは昔からあったでしょう。2丁目の〈ブギー・ボーイ〉とか。吉祥寺の〈ハッスル〉とか。

2丁目の〈ブギー・ボーイ〉って懐かしいねえ。

壮太:店にキースへリングがいてビール奢ったらTシャツに絵を描いてくれた。

ゲイ・ディスコですよね。

アッキー:新宿だったじゃない、文化的に。でもいまは、東京のなかでも吉祥寺、渋谷、って分散してきてて。

このあいだ三茶がすごいって聞いたよ。

アッキー:三茶もあって。そういう広がりっていうのはここ10年なんじゃないですか。で、地域性によってノリがぜんぜん違うんですよね。それが不思議、なんか(笑)。

壮太:昔何かだった店がああなってるの? 昔の若者はどこで溜まってたの? DJバーに来てる若者は。

アッキー:いや俺クラブだったからわかんない。DJバーとか行ったことなかったから、昔。

テッペイ:小バコなんじゃないの。10年前から、〈グラスルーツ〉に似たような店がいっぱいできたような感じがする。

アラタ:ああ、〈グラスルーツ〉ね。

壮太:〈グラスルーツ〉も最初ヒカルくんが回して誰もいない、客もいないって感じだったけど、平日でもみんな店にちょこちょこ行くようになって、超盛り上がるようになって。その後に三茶のバーもできたしさ、みんな繋がってたじゃない。〈グラス〉と三茶ってとくに。で、それのチルドレンな感じでしょ。

アラタ:〈フラワー〉とか関係ないじゃん、でも。あそここの間14周年で。〈グラス〉が15周年で。

壮太:そうだね。

〈フラワー〉って何?

アラタ:三茶の重要なバーなんですけど。六本木のとは違って。

ああ、聞いたことある。

アラタ:ポンタ秀一とかもよく来るらしくって。

テッペイ:〈グラス〉とか三茶で言うと初期の〈DUNE〉じゃん。小バコで盛り上がるみたいな。

メンバーのみんなは、どちらかというとDJバー的な密室的な、濃い空間が好きで。

アラタ:おしゃべりが好きっていうのがあるかもしれないですね。

マキ:おしゃべりですね、みんな。

テッペイ:テクノとかハウスとか、昔のクラブとかだと住み分けがあったかもしれないけど、DJバーだとハードコアのTシャツ着てテクノで踊るとか、そういうのを見て「お、カテゴライズされてなくて超おもしれー」と思って。デカいレイヴ行くよりも、そっちのほうが早いんですよ。ひとが集まってるから。

なるほどね。いま地方にもほんと増えているよね。それはあるシーンを形成しつつあるのかなという感じがするんですけど。でも、今回のアルバムの1曲目を"メスカリーター"にしたのはなんでなんですか?

アラタ:チルドレン・オブ・メスカリートとしての誇りじゃないですかね。

宣言というか。

壮太:いや単純に曲調なんじゃないの(笑)?

はははは。

壮太:メッセージ性なんかないでしょ(笑)。

マキ:あれはすごくわたしの気持ちが入っていて。

テッペイ:ライヴでもいつも1曲目でやっていて。

マキ:そう、なんか1曲目ぽい感じがして。

壮太:曲はデモ・テープの並びの通りなんですよ。デモ・テープに耳が慣れちゃったから、もうこれでいいや、みたいな。計算してないですね、この順は。

"ロマンティックあげるよ"がボーナス・トラックみたいな。

マキ:みたいな扱い。

壮太:俺はずっと反対してた、最後まで。

マキ:ははは、外圧が(笑)。

こうやって意見が分かれたとき、誰がまとめるんですか?

アッキー:まとまんないですね。まとまんないままぐちゃぐちゃーと進行していく。それが面白いんじゃないですか(笑)?

[[SplitPage]]

時空がゆがむ瞬間というんですか。(マキ)
解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。(アッキー)


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

Amazon iTunes

神泉とか、その辺が曲のなかで舞台になってるじゃないですか。これはマキちゃん個人のものなのか、それともバンドで共有しているものなんですか?

マキ:バンドでも共有してるとは思いますけど、わたしはすごく濃い感じであの街にいたんで(笑)。どうしてもそういうワードが出ちゃいますけどね。

奥渋谷系とかって書いてるけど、実際は――。

壮太:神泉ですからね。渋谷じゃないですからね。

まあそうですよね。あの辺で、〈メスカリート〉やラヴ・ミー・テンダーの影響で何か生まれたりしたんですか?

マキ:何にも生まれていない。

ははははは、砂漠として(笑)。

壮太:巨大すぎて。ブラック・ホールだから。

マキ:ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。

一同:はははははは!

マキ:みんなにサンプルをこうやって渡してたから。

壮太:富裕層が朝3時ぐらいに物凄く狂ってるのを見てびっくりしたんですけどね。

アラタ:あと道玄坂が観光地化してるよね。

テッペイ:あそこ日光みたいじゃん、もう。

アラタ:黒人の人たちがタクシーのバンパーの上に乗って跳ねてたり、酔った白人のスーツの人たちが「俺は大使館職員なんじゃー」っつって警察官に絡んでたりするのを見たりすると、「敗戦国だなー」と思って。

はははははは!

テッペイ:たぶんまだ見れてない部分がいっぱいあると思う。うちらはたぶん、けっこうピースですよ。あんまり暴力とかなくて。もっと怖い部分とかあると思うし。

いやいや、でもみなさんじゅうぶん見てらっしゃるんじゃないですか。これはオフレコだけど、それこそ小林とかがさ、得体の知れないカラオケ・バーから悪酔いした客を引き連れてきて、緊張感が走ったり。

壮太:それはピースのほうですね。

テッペイ:アリのほうですね。

でもわけわかんないじゃない(笑)。

マキ:わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。

テッペイ:最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。

まあその話は後でしようかなと思ってたんですけどね。でもバーってお互いの距離感が近い分だけ、いい面もあるけど、逆に言うと、それこそ一見さんという言葉があるように、入りづらいっていうのがあるじゃない?

壮太:どうしてもね、バーはそうじゃないですか。常連はお互いの悩みごとや弱点を知ってて仲良くなれるんじゃないですか。一回そういうイニシエーションを経ないと、常連にはなれませんね。入りづらいと言えば入りづらいですよ。俺も〈メスカリート〉とか絶対ひとりじゃ行けないですよ。

テッペイ:みんな一見さんじゃん、最初は。

アッキー:いやでも、誰かに連れて来られるんじゃない?

マキ:わたしも誰かに連れて来られて、すごい勢いでバーンってドア開けたのが最初なんですよ、やっぱり。すごいベロベロで。もう2回目場所も覚えてない、みたいな。

じゃあマキちゃんも偶然入った?

マキ:そうですね。その前にほかの〈メスカ〉のパーティでまあいろいろ出会って。

壮太:俺もコバに「中途半端な店があるから行こう」って言われて。

(一同笑)

アッキー:海の家からずっと繋がってるんだよね。

マキ:わたしも海のパーティが最初。

アッキー:そのときぐらいから、だんだんこういうゆるいサークルというか、いまの仲間ができていった感じがする。

壮太:〈スプートニク〉ができる前に、あの場所でパーティやってたから。2000年ぐらいの話なんですけど。

そうなんだ。誰が主催してやってたの?

壮太:コバがやってたのかな。

アッキー:でももう〈スプートニク〉なんじゃない? それって。たぶんそれの流れだよ。

でも、音楽をやるっていうのは、ある意味バーとは逆ですよね。もうちょっと不特定多数に投げかけるものじゃないですか。バーの閉鎖感とバンドとの開放感と、っていうのはどうなんでしょうね。

壮太:でもバーはあくまでも使い勝手のいい部室として使ってるから。

ははははは。

テッペイ:いや、むしろ逆ですよ。それを変えたくて、いま帯でDJ入れてるんですよ。同軸にしたくて。いままでギャップがありすぎたから。

アッキー:それ〈火曜メスカ〉でしょ?

テッペイ:そう〈火曜メスカ〉の話。ほかの曜日は知らないけど。

〈火曜メスカ〉って?

アラタ:火曜だけ俺らが〈メスカ〉を開けてるんですよ。いま俺とテッペイなんですけど。まあ部室状態で。

テッペイ:1時とかに開けてたから、「それヤバい」っつって、せめて午前の前から開けるようにして。23時とかに開けて、DJもふたりぐらい呼んで、実験的にやってます。

壮太:社会性を持たせたくないってこと?

はははは。

マキ:社会性って(笑)。

だいたい僕の世代だとバーって「ぼったくりバー」っていうイメージがあるからね。中途半端に行ったらヤバいっていう。

マキ:たしかに、いくらかわかんないし。

バンドがデビューしたのが去年ですよね。で、お店を中心にしてみんながいて。この10年に街っていうのはどういう風に様変わりしたと思いますか? 

マキ:変わったのかなあ......。

あんまり思わない?

マキ:自分も変わっちゃってるから(笑)。

いや(笑)。だってさ、昔はさ、平気で公園通りの雑居ビルに個人商店が作れたわけだけど。

マキ:たしかに。自分も10年でだんだん奥のほうに移動してるかもしれないですね、行動範囲が。

壮太:駅の近くとかチェーン店しかないわけですよね。で、駅から離れるにつれて個人商店が増えていくっていう構造なわけでしょ、繁華街って。

その離れる距離がどんどん広がってるよね。

壮太:奥に行けば行くほどディープになるという。どこでもそうなんじゃないかな。新宿でも池袋でも。駅前は和民とかケンタッキー・フライドチキンとか、なんかそういうのばかりで。奥のほうに行くとだんだん変なバーが出てくる。

アッキー:でも職質の回数は増えたよね。

マキ:奥のほうは増えたよね。

壮太:〈エイジア〉の通りは渋谷署のボーナス・ステージですよ。

はははははは!

壮太:マリオの地下の面みたいな。コインざくざくの面。

マキ:あそこは防犯カメラがないから。ラブホ街って、だからおまわりさんがすごい多いの。

壮太:なるほど。

アッキー:スケボーで街を移動できなくなりましたね。

そういう意味で言うと、街から猥雑なものをどんどん排除しようっていうのがこの10年であったと思うんですけど。たぶん〈メスカ〉なんかはそういう砦となって(笑)、ふんばっているんだろうなと。

マキ:でも不思議だよね。何にも起こらないっていうか。

壮太:〈エイジア〉の通りみたいなプラスイオンがガンガン出てるとこに行くと、ちょっともう。そういうときはBunkamuraの入り口に行って、Bunkamura見ながらタバコ吸って、「俺はスノッブ、俺はスノッブ」って思う。

一同:ははははは!

プラスイオンって(笑)。去年『トワイライト』を出して面白いリアクションはありましたか? 

壮太:ぜんぜん知らないライヴ・オファーが増えましたね。全部アウェーで。

テッペイ:夜が合うって言われる、ツイッターとか見てる感じだと。

いや、そりゃそうでしょうね。

テッペイ:いや、昔「海が似合う」とか言われてたんで。

アッキー:ええー、そんなことないでしょ。

マキ:そんな時代あったの?

テッペイ:実際海とかでやってたじゃん。新島とか。

アッキー:知らないバンドと対バンすると、びっくりする。

アラタ:でも、クラブの夜中でバンドがうちらしかいなくて、DJとかじゃなくて、たとえば〈新世界〉とかで夕方から夜にいると、知らない客層がいて、それはすごい新鮮。

ああー。〈新世界〉のお客さんなんかはどうです? けっこう受け入れられてる?

アラタ:世代が近いのか、意外とMCがウケる(笑)。あともっと若い世代もいて。

マキ:若いよね。

アラタ:呼ばれて行くと、意外と対バンで面白いのがいたりとか。

アッキー:イン・ジャパン(Inn Japan)とやったときとか、面白かったですね。

イン・ジャパンって?

アッキー:高円寺の〈クラブライナー〉っていうけっこうちっちゃいライヴハウスがあって、イン・ジャパンって言うバンドがいて。

アラタ:サブカル臭が強い感じ。

壮太:メタ・ヘヴィメタ・バンドですね。

※小林=コバ(渋谷で汚い遊びをしている人でこの人を知らなければモグリ)

[[SplitPage]]

何にも生まれていない。(マキ)
巨大すぎて。ブラック・ホールだから。(高木壮太)
ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。(マキ)


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

Amazon iTunes

自分たちよりも若い世代のリアクションなんかはどうでした?

壮太:ほとんど若いですよ、どこ行っても。

テッペイ:うーん、でもウケるのサブカル系ばっかっすね、なんか。

(笑)。

テッペイ:ほかに見るものがないからこっちを見てくれてる、みたいな。〈メスカ〉といっしょだな。メンヘラの最終砦みたいになってるという。

アラタ:だからジャズトロニカにいるような綺麗なお姉さんはいないよね。

テッペイ:そう、いない(笑)。

アラタ:客層が羨ましい、ほんとに。

テッペイ:一瞬かわいい子だとしても、なんかここ(手首)に巻いてたりとかする感じでしょ(笑)? だから勘繰っちゃうよね、全員。

アッキー:OLが買わないってこと?

アラタ:OLはジャズトロニカ。

でも、これだけ危うい言葉を使ってたら、それはやむを得ないというか。それは敢えてわかっててやってるでしょう?

アッキー:わかっててやってるところも、個人的にはありますよね、やっぱり。

それは手ごたえとして、伝わるものなの?

アッキー:伝わってるとは思うんですけど、誤解してるひとが多くて。

どういう風に?

アッキー:壮太くんの人格イコールうちのバンドみたいな。

はははははは!

アラタ:それは違うっていう。

壮太以外:それは違う!

アッキー:でもそれを考えると、壮太くんはいまサブカルの砦なんじゃないかっていう。それは違うって言ってますけどね。

テッペイ:かあちゃんから「あんたのバンドのひと、ドラッグの話しかしないけど」とか言われて。

壮太:(爆笑)

えっ、そんなこと言われたの!?

テッペイ:それ親父の還暦祝いのときで。

でもお母さんがそこまでわかるってすごいよね!

テッペイ:だからラヴ・ミー・テンダーで検索すると、壮太くんのツイッターが出てくるらしくて。ツイッターのやり方までは知らないと思うんだけど、見れるのは見れるじゃないですか。そのせいで、じいちゃん家住めなくなったからなあ......。

アラタ:ははははは! そうなの(笑)!?

テッペイ:だってオッケーが出て、その次の日いきなりダメになったから。

アラタ:でも壮太くんの荷物は置いてあるっていう。

壮太:知らないっすよ。

テッペイ:そうやって情報を得るのが、いまはいろんな入り口があるじゃないですか。そうなっちゃうのはしょうがないんですよね。それはそれで面白いんですけどね。そういう広がり方をしていて。

そこでどのぐらい伝わるかっていうのは難しい話だなとは思うんですけど。

壮太:いちばん反響があったのはele-kingですよ。でもあれ音楽の話してないですけど(笑)。結局だから怖いもの見たさとかそういう感じで(笑)。

いや、そんなことないですよ(笑)。「コード進行が好きで」とか「細野さんが大好きで」とか、ちゃんと話してるよ。

マキ:ちょっとだけありましたね。

壮太:それがちょっとしかないからそこが映えるんですよ(笑)。

いやいや。めちゃくちゃ音楽の話してたよ。

壮太:ひひひひ。

でも普通、アレじゃないですか? ここまであからさまにドラッグねたを表現するっていうのはさ。ほかにそういうバンドがいないからでしょう?

テッペイ:いや意識してないですよ(笑)。

壮太:今回はしませんよ。もう卒業しました。

アラタ:うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。

マキ:はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。

なるほどね。シングルほど直球な言い回しはしてませんが。でも今回は控えめながらも、相変わらずそのスタンスは貫いてるなっていうふうに思ったんですけど。

テッペイ:曲もそうですね。ぜんぶなんかこう、中和した感じですね。たぶん、いままでよりも。

あくまでもラヴ・ミー・テンダーの確固たる主題なわけでしょう?

アラタ:いや、ぜんぜんそんなことは......(笑)。

マキ:ないですよね。

テッペイ:でもわかんないよね。次のテーマはもしかしたら子どものことばっかりになっちゃうかもしれない。

マキ:そうなっちゃうかもしれない。いやでも、出産こそドラッグかもしれないんで。

ああ、それはほんとにそうらしいよ。

マキ:それを期待してる。気持ちいいならやってやる! みたいな。

男性陣:(爆笑)

その前に究極の痛みを乗り越えての気持ちよさらしいですけどね。

テッペイ:デトックス(笑)。

マキ:デトックスで(笑)。

壮太くんみたいな、肝の据わったひとはともかくとして――。

壮太:いや、肝据わってないですよ。

ははははは。

壮太:俺ここ3年でうろたえてる姿を見られてるんで。

テッペイ:それ女関係だけでしょ? 女関係以外はすげー肝座ってますよ(笑)。

はははは(笑)。自分たちより下の世代からどういうリアクションがあったの?

アラタ:あるのかなあ......?

テッペイ:ライヴのあとにブログを書いてたのがあって、たぶん若いやつだと思うんだけど、そこには「演奏はすごい良かったけど、怖かった」って。

はははははは。

テッペイ:たぶん免疫がないひとから見たら、見た目どうこうじゃなくてオーラみたいなのがダメみたいで。だからそういうひとは次ライヴ来ないのかなあと思っちゃって。演奏はいいんだけど、うーんみたいな、そういうのはあるのかなって。

壮太:わかるわかる、でも。怖いって言われるよ。ただ年がいってるからじゃないの?

テッペイ:うん、それもあると思う。

それはどういう意味なんだろうね。

壮太:感情移入ができない。

マキ:ふふふふふ。

昔で言うと、スピード・グルー&シンキというかね。

テッペイ:免疫がないものに接すると、さいしょパーって来るじゃないですか。わーって。そのあとにそれを好きになるか嫌いになるかは、そのひと次第だと思うけど。

アラタ:つけ胸毛じゃなくて、つけリストカットみたいにしたほうがいいかもしれない、うちらは。

壮太:くくくく。

あとはパロディもあるわけでしょう? それを嗤うっていう。

アッキー:根本的にユーモアっていうのはすごくあるかもしれないですね。シリアスというよりは、なんちゃって感は。

なんちゃって感はすごくあるよね。だってHBでやってるマキちゃんと、ぜんぜん別なわけだから。こんなにメンバーに個性の強い方が集まっていて、レコーディングはうまくいったんですか?

壮太:いきました。

マキ:はい。でも出前がちょっとね。

テッペイ:壮太くんがピザがいいって言い張って、ほかのひとが違うっていう。

そこでもめるんだ(笑)?

アッキー:マキちゃん魚ダメだから寿司もダメだし。

マキ:出前問題がけっこう大変でしたね。

前に2枚を出したことによって、自分たちで自信を得たことはあったんでしょうか?

テッペイ:技術的なことですけど、3作ともエンジニアが違ったので、いままでのふたりも良かったんですけど、メリット・デメリットがあったから、今回それぞれ自分の楽器に関しては録りやすくなったと思うけど。自分の音をこうしたほうがいいっていうのがわかったんで、そこは早かったと思う。

マキ:もともと時間もないし、そういう意味ではけっこうどんどんどんどん進めていけましたけどね。

アッキー:やっぱ週1でリハーサルに入ってたのは良かったと思ってますけどね。週1で、4時間。

マキ:部活っぽく。

歌詞はどうなんですか? 

マキ:そうですね。日々の生活のなかではっと思いついたことを書きとめて。

"リバウンド"も。

マキ:まあそうですね。

テッペイ:あれはもう"DIET"のアンサー・ソングを作ろうっつって。

ああ、なるほどね。"ムードウーマン"とかね、いいですね。これムードマンへの返答として(笑)。

テッペイ:まったく意味ないです(笑)。ムーディだからじゃないですか。

壮太:俺の作った映画にムードウーマンって出てくるの。架空の人物。

マキ:そうそう、あれに出てくる。

ラヴ・ミー・テンダーを面白がってくれればいいなと思うんで、怖がられたっていうのはちょっと残念だなと思って。

マキ:あと怒られたりとか。

怒られるっていうのは何なんですか?

アラタ:どこのイヴェント行っても「こんなのめんどくさいよねー」とか言いながら、結局最後まで残って飲んでて。スタッフからしたら「早く帰んねーかなこいつら」みたいな(笑)。もうベロベロになってて。

アッキー:電気がバーッとついて「早く出てってください」っていう(笑)。

マキ:「いつまで飲むつもりなんですか」みたいなね、多いよね。どこでも。

テッペイ:楽屋で怒られたこともあったもんね。ステージで弾き語りか何かやってて、「静かにしてください」って。楽屋でうちらで盛り上がってて、声が全部なかに漏れてたみたいで(笑)。

アラタ:でもそれはお店の問題で。

テッペイ:ねえ?

アラタ:それを「静かにしろ」っていうのはおかしいでしょう。

マキ:いや、迷惑でしょ(笑)。

ははははは。

アラタ:〈FEVER〉の楽屋は最高ですね。

もうちょっと軋轢を起こすのかなって思ったんですよ、僕は。日本は冗談が通じないじゃないですか。冗談を、わりと真顔で怒ったりとか、笑ったら怒ったりとか。

マキ:怒られてますね。

テッペイ:いやあ、一番コアな部分は突かないようにしたいですよね。壮太くんがやりそうだけど。

なるほどね。壮太くんはそれを狙ってるでしょう?

テッペイ:壮太くんはうまくやってるけど、でも俺らがストッパーの役ですよね。たまにそれをぶっ刺しすぎてるから、「そこはやべえ」っつって(笑)。

壮太:デモの映像を使ったPVとか、すごい叩かれましたね。

マキ:そう、叩かれましたね。炎上しちゃって。

テッペイ:違法のモデルガンを3丁持ってて。しかも道玄坂の交番の前で撮ってたから(笑)。

だははははは。

アラタ:それデモじゃないじゃん。

マキ:それは"メスカリーター"だ。

そういうのは、バンド内では「しょうがないねー」っていう感じですか。

マキ:(笑)まあいっかー、みたいな。

[[SplitPage]]

わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。(マキ)
最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。(テッペイ)


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

Amazon iTunes

自分たちがやろうとしてることと、世のなかとの距離を改めて感じたところはあるのかな?

壮太:ライヴハウスとかでやりづらいですね。

ほう。なんでですか?

壮太:昔から嫌いなんですよ、ライヴハウスが。システム自体が。

それは音響的な問題?

壮太:いや音響的な問題じゃなくて。だってお金払って行かないでしょう、ライヴハウスに。「今日ライヴでも観ようかな」って。自分の知り合いのバンドが出てるなら行くようなもんで。本来は「ちょっと音楽でも聴きながらビール飲みてえな」ぐらいの感じなのに。

アラタ:アメリカとかね。

マキ:うん、そういう風に入りたい。

壮太:そうじゃなくて、なんか貸しスペースみたいになってるから。

テッペイ:客も下手したら入れ替え制みたいになってるもんね。

壮太:興味ないときのお客さんって、エレベーターの階数表示見てるみたいな表情でそのバンド見てるじゃないですか。「耳栓しろよ」っていう。ああいうのイヤですね。

クラブは雑多なひとが集まるから、そこはホントにライヴハウスとの違いだよね。

壮太:そうなんですよ。お客さんと一緒の高さでやって、俺たちが演奏してるときもお客さんがバラバラの方向向いて踊ってるみたいな状況のときが一番好きなんだけど。

マキ:うんうん。

ラヴ・ミー・テンダーにとって、もっともコアにあるものというか、中核を成すものは何だと思いますか?

アッキー:マキちゃんじゃないですか、やっぱり。

ほう......いやそれこのあいだも言ってましたよね。じゃあマキちゃんの次は?

テッペイ:最初はアフター・スクール感、放課後の感じって言ってたよね。

壮太:自分たちでもわからない。話し合ったこともないし。

「こういうことを歌ってるけど、ドラッグ・ソングのバンドだとは思わないでほしい」と言ってるわけじゃない? 

壮太:バンドが音を紡いでいるところ。バンドの部活感。その、何て言うんですかね。バンドとはこういうものですよ、というものを見てほしいですね。

バンドの部活感?

壮太:何て言うんですかね、典型的なバンドだと思うんですけど。集まってアンサンブルするときにどんなことが起こるかっていう。すべて起こってますから。

アッキー:誰かが大統領じゃないっていう感覚というか。誰かひとり出てるわけじゃないっていうか。

バンドの面白さっていうこと?

アッキー:マキちゃんはすごく象徴的なんだけど、演奏とかそういう部分で言うと、全員が同列というか。

アラタ:バンドやってるのが楽しいっていうことじゃないですか(笑)。

テッペイ:楽しそうに見られれば一番いい。

でもマキちゃんはHBもやってるわけだから、ラヴ・ミー・テンダーやらなくてもいいわけじゃないですか。

マキ:あ、そうですね、あはは。

(一同笑)

じゃあHBとラヴ・ミー・テンダーの違いは何ですか?

マキ:違い。違いはもう......それは全然違いますね。ギャル・バンドと。

アッキー:あれはやっぱり女子高でしょ。

マキ:女子部。

でも世のなかにはすごくバンドが数多くいるわけじゃないですか。ラヴ・ミー・テンダーは存在する必要はないじゃないですか。

アッキー:存在してないのかもしれないです。

(笑)ほら、これはCDの売り上げに直結する質問をしているつもりなので。

テッペイ:そうやって外向いちゃうとキリがないじゃないですか。

いいじゃないですか(笑)。

壮太:どうなんですか、アンディ

いやアンディはアンディなりに解釈してるんだから(笑)!

マキ:アンディが言う通りなんじゃないかな(笑)。

アラタ:でもまあ、たとえば下北で演劇系のひとたちとミュージシャンのひとたちをざっくり分けると、こういう言い方すると悪いけど演劇系のひとたちは頭でっかち。芝居論の話をしたりとか。ミュージシャンのほうがもっとバカというか、考えてないっていうと語弊があるけど、ほんと楽しいからやってる。快楽主義的な傾向が強いというか。

マキ:そうだよね。

アラタ:あるじゃないですか、そういうの。

はいはい。

マキ:終わらない討論を朝までやってる感じ。

そうそう。

マキ:そういうのじゃない。もっとくだらないことで朝までいるっていう。

アラタ:楽しいとしか言いようがない。

マキ:そう、楽しいからやってる。

アラタ:ほかのバンドとの差別化ってことで言われちゃうと、まあどのバンドも楽しいからやってんだろうなっていう。

アッキー:でも洗練されたポップ・ミュージックをやりたいっていうのが......俺はあるんだけどどうなの?

それすらも共有されてない(笑)。

アラタ:まあ洋楽志向ではある。

アッキー:それを通ったAOR感みたいなそういうことが。

AOR感はあるね。

アッキー:日本独特のポップスもあるじゃないですか。僕は80年代の終わりぐらいから見てるけど。そういうのはちょっとねじれ度が違うと思うんですよね。たとえばなんだろう、ボ・ガンボスとかフィッシュマンズとかが残したものを、そのまま置き換えたって子たちもたぶんいたりして。でもそことは違うっていうか何ていうか(笑)......。言いづらいな。

アラタ:AORとかそういうので言ったらさ、流線形とかキリンジとかのほうがそうかな、って。あれよりもうちょっとうちらのほうが綻びがあるっていうか、何だろうね。自分たちのことを言葉にしようとすると難しい。「どんなバンドやってるの?」って言われたら答えられない。

テッペイ:そう、俺も言えない。

アラタ:ざっくり歌ものメインでインストもある、みたいな(笑)。

なるほどね。どうですか、壮太くんは?

壮太:いやだから、奥渋谷系ですよ。渋谷の奥のバーで醸成されたもの。実際そうなんだから。それがどういうプロセスを経てそうなったかはちょっと説明できないですけど。そう思ってくれたら。メンバー募集で集まったバンドでもないし、ここでしかないケミストリーがあったわけで。そうとしか言いようがないですね。

テッペイ:まだ途中だからね。

壮太:バンドだけが落下傘で落ちてきたわけじゃなくて、周りの人脈とか細かいバー同士の繋がりとか、そういうのが全部くっついてる。ファミリーを形成してるわけじゃないけど、どうしてもそういうの濃厚ですよね。

まあそうだよね。だから、ちょっと硬い言い方になっちゃうけど、コミュニティ的なところもある。

壮太:そうですね。

ちなみにアルバム・タイトルは誰が決めるんですか?

マキ:あ、あたしが。今回は。

『スウィート』ってしたのはとくに意味があるの?

マキ:えっと、あんまりないんですけど。友だちがニューヨークに行ってて、帰ってきたときにお土産でくれたポストカードに、「LOVE ME TENDER SWEET」って書いてあって。それで、「これだ!」って(笑)。

ははははは。自分たちの音楽を形容するのに今回ぴったりかなって?

マキ:はい。ぴったりで。すごくピンと来ちゃったので、それにしちゃいました。

ところで、今日はみなさんが来るまでにアッキーと話してたんですけど、6日付のロイター通信によると、アメリカの2州でマリファナが合法化されたという。

アラタ:まあ連邦法が変わんないとっていうところではありますけどね。

まあそうだけどね。ただ、いわゆる多数決で嗜好目的の大麻の是非が問われたときに決まったっていうのはね。住民投票で可決されたっていうのは初めてのことなので。ここ数年のアメリカの大麻合法化の動きはすごいじゃないですか。それはいい悪いの問題じゃないですよ。日本ではもちろん違法ですからね。でも、まず情報として日本のニュース番組でそういうものがまったく報道されていない不自然さというかね。

壮太:いや、簡単ですよ。大麻の是非以前に、ドラッグの会話自体がタブーなんですよ。たとえばカニバリズムってあるじゃないですか、人間がひとを食うっていう。あれは日本人は話題にするでしょ、「お前人間の肉食える?」「いや」「腹減ってたら食うかも」っつって。でも欧米だとそういう話自体が禁止ですよ。おおっぴらには。そういう話題に触れること自体がひととしてマナーに反するみたいな。日本でのドラッグがそうですよ。ドラッグの是非論とかやってもしようがないですよ。ドラッグの話題に触れることがタブーだから。

逆に日本は少女ポルノに寛容でしょ。たとえばマッシヴ・アタックの3Dが反戦運動をやったときに、何でイギリス政府が彼を捕まえたかって言うと、少女ポルノですよ。

壮太:ええー。

ドラッグじゃなくてね。そっちのほうが向こうだと罪が重いから。こうした文化の差っていうか、きっとそういうことも含めて、ラヴ・ミー・テンダーは投げかけてるのかなっていう風に思うんですよ。

壮太:解禁して安くなるなら万々歳ですけど。俺はその問題を考えるけど、解禁しても吸うひとは増えないと思いますよ。

アラタ:それはそうよ。

日本文化の異分子ではあり続けようとしてるとは思うんですよ。アゲインストしてないにしても。

壮太:でもたしかに東京にしか居場所がないですね。もうどこにも住めません。東京じゃないと自分みたいなのの居場所がない。受け入れてくれるところが。

テッペイ:東京の数店舗しかない(笑)。

(一同笑)

テッペイ:そういう話は毎回してますけど、そこを直接曲に入れたくはないです。重くなるから。

いやいやわかりますよ。

テッペイ:だからたとえば、全曲スウィートな曲調だったらタイトルを『スウィート』にはしてなかったと思うし、そのギャップは絶対出したい。

そういう意味で言うとね、コンセプト自体がすごくギャップがあるよね。一番清潔感のある日本のポップスのスタイルを取りながら、いちばんタブーなことを言ってるっていうね。

アッキー:でもそれも意識してたわけじゃないですね。結果的にそうなっちゃったっていう。

ああ、そうなんだ。

壮太:なんか、カシミアのセーターを着てまつ毛の長いおぼっちゃんがいつもナイフ持ってるとか、そういう感じ。

ははははは!

壮太:そういうのあるじゃないですか。フリッパーズ・ギターとかもそうだったと思うし。

※アンディ(LMT担当の敏腕A&R)

[[SplitPage]]

今回はしませんよ。もう卒業しました。(高木壮太)
うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。(アラタ)
はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。(マキ)


LOVE ME TENDER
SWEET

Pヴァイン

Amazon iTunes

ああー、なるほどなるほど。じゃあ、みなさんは自分たちのリスナー像っていうのは見えてる部分ってあるんですか?

壮太:オタクが聴いてるっていうのはあるんですけど――。

えっオタク聴いてる!? 

壮太:オタクは聴いてると思いますよ。

テッペイ:俺のイメージは、ヒップホップとか何かを20代前半で飽きたひとが寄り道して聴いてる感じがするかな。

壮太:フュージョン・ファンとかシティ・ポップ・ファンは聴いてないと思います。

マキ:怒られるよ、だって。

壮太:なんちゃってシティ・ポップ、なんちゃってフュージョンだから。本格派のひとは聴かないと思いますよ。聴くひとは変わったバンドと思って聴いてるんじゃないですか。

いまの壮太くんのなかで、とくに問題意識みたいなものがあったら教えてください。

壮太:社会的にですか? やっぱりシリアスになりすぎてるくせに、すごくカジュアルになってて、インテリが迫害されているし、かと言って冗談も通じないし、窮屈になるいっぽうですね。

ああ、なるほどね。たしかに。

壮太:俺とか完全に知性のひとなんですけど。キャラクターはフクロウみたいな感じなんですけど。ぜんぜんそういうのは受け入れられなくなってるなあと。尊敬されない。

ははははは!

壮太:もの知ってるとバカにされるっていう。

アラタ:いやそれ、日ごろの行いなんじゃないでしょうか(笑)?

壮太:そのくせ冗談が通じない。戦争コメディとかがぜんぜん作られなくなった。昔はあったでしょ。『M★A★S★H』ぐらいまではあったじゃないですか。朝鮮戦争ぐらいまでの戦争パロディは。湾岸戦争とかを舞台にした戦争コメディとか全然ないじゃないですか。アフガニスタンを舞台にしたものとか。

ああ、でもイギリスはありそうだよね。

アラタ:アメリカも『ヤギと男と男と壁と』っていうやつは、あれはイラク戦争だよね。あれはけっこう面白かったけどね、脱力してて。

アッキー:なんかあったよね、湾岸戦争でコメディ。アイス・キューブが出てたやつだと思うけど(注:デヴィッド・O・ラッセル『スリー・キングス』だと思われます)。

壮太:アメリカ大統領選もわけのわからない泡沫候補が出なくなった。昔はスパイダーマンの格好したやつとか、出てたのにいつも。キャプテン・アメリカの格好したやつとか。

アラタ:日本もね、参議院選でUFO党がどうとかあったよね。

壮太:そういうのがなくなってきてると思います。

息の詰まりそうな場面っていうのはどんなときに思いますか? 日々?

壮太:日々。

なるほど。じゃあ......。

壮太:自分がいま大恋愛をしているからかも。街を歩くとみんなうつ病に見える。

ははははは! 自分は楽しいのにっていう。アラタくんも恋愛中だっけ? 恋をしているほうがテッペイくん?

マキ:そうです。

じゃあアッキー、ほかに言い足りないことがあれば言ってください。脱法ハーブについてでも何でも。

アッキー:うーん......合法はやめたほうがいいですよね。

マキ:やめたほうがいいですね。

壮太:仕組みはわからないけど、これだけバッドな症例がいっぱい報告されるってことはやっぱ統計学的にもおかしい。

アッキー:若いひとが死ぬってニュースを聞くのはやっぱイヤですよね。

また脱法ハーブっていう言い方もイヤだよね。

アラタ:存在自体が姑息。法の抜け穴でっていうのが何か。存在してる過程自体が姑息だし、やだなあって。キマり方が孤独に陥るキマり方だし。

それで儲けてるひともいるわけだからね。

アッキー:DJバーはぜんぶ、合法ハーブを店で吸うのを禁止にしたほうがいいですよ。

DJバーで吸ってる?

アッキー:うーん、吸ってるひともいる。

アラタ:合法だからね、堂々と吸える。

とにかく、合法には手を出すなと。

アッキー:そういうプロパガンダをしてもいいんじゃないですか、DJバーが。

アラタ:身近でもね、20年覚醒剤をやってたひとが、最後は合法に手を出して死にましたからね。

ああ、危険なんですね。

アラタ:覚醒剤もすごく危険なドラッグなのに、それをちゃんと20年コントロールしてやってられるようなひとですら。キングギドラだっけ? そういう銘柄があるらしくて。

それはどういうやつなの?

壮太:バス・ソルトとして売ってるんですよ。

奇妙な世のなかだよね。

アッキー:ねじれがすごいですよね。

壮太:ラボの技術が法律を制定する速度を上回ったって、ただそれだけしょう。新薬を作る速度のほうが、法律を制定する速度より速くなったからこの現象が起こってて。そのいたちごっこはいままでもあったけど。ちょっとだけ化学式を変えて、新薬だっていうのは。この先はどうなるか予測がつかないです。

なるほどね。わかりました。今日はいろいろ話を聞きましたが、ラヴ・ミー・テンダーは基本的には、すごくロマンティックな音楽だと思ってるから。

マキ:ありがとうございます。

テッペイ:ラヴです、ラヴ。

壮太:化学式はやりません。

言い方は悪いですけど、すごくバカなことをやってるでしょう、この歌詞にしても(笑)。敢えてバカなことをやっているのはなにゆえなんでしょう?

壮太:計算してやってるわけじゃなくて、ほんとにイノセント感の表れだと思ってます。

テッペイ:冗談が好きなんですよ、ただただみんなほんとに。へへへ。

なるほど、わかりました。そんなところでしょうか。

アッキー:最後に一言。

お、なんですか?

アッキー:脱法には愛がない。これ、壮太くんが言った名言だと思ってます。

壮太:言ってたっけ、俺?

いいですね。バンド名がラヴ・ミー・テンダーってぐらいだからね。本質はあくまでそっちにあるってことですね。ではどもありがとうございました!

一同:ありがとうございました!

LOVE ME TENDER "SWEET" RELEASE PARTY ~また逢う日まで~
2012.11.28 (WED) SHIBUYA WWW
OPEN 18:00 / START 19:00

LIVE: LOVE ME TENDER / ホテルニュートーキョー / LUVRAW & BTB
DJ: 二見裕志

ADV 2,500 yen (+ drink fee) / DOOR 3,000 yen (+ drink fee)
TICKET: e+ / LAWSON [L: 70179] / WWW

INFO: WWW 03-5458-7685 https://www-shibuya.jp
LOVE ME TENDER https://lovemetender.mond.jp

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780