「Not Waving」と一致するもの

 いまもなお、政治発言とか伝記映画とか、なんだかんだと話題を霧散し続けているロックスター、モリッシーを描いた『いまモリッシーを聴くということ』の刊行を記念して、8月26日、福岡にてブレイディみかこさんのトークショーが開催されます。ブレイディさんの地元ですね。会場はカフェ&ギャラリー・キューブリック。
 ザ・ スミスのライブを体験した数少ない日本人のひとりであるブックスキューブリック店主大井さんが聞き手となり、ザ・スミス/モリッシーを熱く語り合います。行ける方はぜひ! このうだるような真夏の最後をモリッシーで決めましょー。

『いまモリッシーを聴くということ』発売記念
ブレイディみかこさんトークショー

日時:2017年8月26日(土)19:00スタート(18:30開場)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック
(ブックスキューブリック箱崎店2F・福岡市東区箱崎1-5-14
JR箱崎駅西口から博多駅方面に徒歩1分)
出演:ブレイディみかこ
聞き手:大井実(ブックスキューブリック)
参加費:2000円(ドリンク付・要予約)
*終演後に懇親会有(1ドリンクとカフェキューブリックのキーマカレー付・参加費1000円・要予約)

予約先:①メールでお申し込み
hakozaki@bookskubrick.jpまで、件名を「8/26トーク予約」として
[1.お名前、2.参加人数、3.ご連絡先電話番号 4.懇親会参加有無]
をご記入の上お申込みください。
当店からの予約確認メールをもってお申し込み完了といたします。
※返信がない場合はお電話にてお問合せください。

②peatixというサービスからも簡単に予約が可能です。
こちらの「チケットを申込む」ボタンからお申込ください。
参加費は当日受付でお支払いくださいますようお願いいたします。

https://bookskubrick.jp/event/8-26

REFUGEE MARKET / WISDOM - ele-king

 かねてから「ミュージシャンズミュージシャン」的に玄人受けしてきたラッパー、仙人掌の待望のソロ・アルバム『VOICE』(https://www.ele-king.net/review/album/005576/)のリリースを経て、そのレーベル〈WDsounds〉と仙人掌の所属するクルー、 DOWN NORTH CAMPおよびDOGEAR RECORDSは、この数ヶ月合同で「BACK 2 MAC TOUR」なる全国ツアーをやってきたそうだが、8月5日恵比寿リキッドルームにて、ついにそのファイナル・ショウが開催される。
 17時会場の18時開演。以下の詳細を見ていただければわかるように、こんなに格好いいヤツらが揃うなんて滅多にないです。絶対に行こう。


Bjørn Torske - ele-king

 90年代初頭からなんらかの名義で作品を出し続けているビョーン・トシュケがノルウェーのエレクトロニック・ミュージックのパイオニアであることは事実であるが、彼はただ“早かった”だけではない。DJソトフェットからトッド・テリエ、プリンス・トーマス、リンドストローム、あるいはインディ・ロック寄りのロイクソップにまで影響を与えている。ダンスの深い地下まで掘っている人たちに人気のレーベル〈Sex Tags Mania〉からも作品を出し続けている。ぼくはトシュケの作品のなかではサード・アルバムに当たる『Feil Knapp』(2007)が最高に好きなのだけれど、それは控え目ながら優雅な彼の幅広い音楽性/そのユニークな折衷主義が楽しめるからであり、また、北欧系独特のオプティミズムを感じられるからだ(同作は、FACT MAGのゼロ年代のベスト100枚にも選ばれている)。
 その名作の前に、彼はソロ名義では2枚のアルバムを出していて、今回はそのうちの1枚、2001年にリリースされたセカンド・アルバム『トロベル』のリイシュー/リマスター盤を紹介しよう。再発した〈Smalltown Supersound〉からはつい先日プリンス・トーマスとの初のコラボレーション・アルバムがリリースされたばかりなのだが(トシュケにはこの共作というスタイルの作品が多数ある)、ここは再発盤のほうを紹介しよう。というのも、これがまた古くなっていないどころか、いまも新鮮で楽しいからだ。〈Sex Tags Mania〉のファンもトシュケを再発見するだろう。

 2001年というと、90年代的なダンスの熱狂がいったん落ち着いた/ピークが終わった直後でもあるので、本作はダンス・ミュージックを基調にはしているが、家聴き(ラウンジ)用に作られたものだろうか。2曲目の“Bobla”という曲は、ほとんどジ・アップセッターズの『Blackboard Jungle Dub』を彷彿させるユニークなダブで、モンド・レゲエとでも言えそうな“Møhlenpris”も面白い。3曲目の“Hard Trafikk”などはいまウケているハーヴィー・サザーランド系の生演奏の入ったディスコ・ファンクで、透明感のある上物とベースのうねりが見事な“Trøbbel På Taket”やロイクソップとの共作“Westside Hotel”、メロディアスで軽快なスティーリー・ダン調の“Don't Push Me”もまったく魅力的。まあ、マシュー・ハーバート的な、茶目っ気ある、奇抜なサンプリングをループさせた1曲目の“Knekkebrød”からして素晴らしい。
 この作品がいまも新鮮というのは、彼こそが北欧的折衷主義(AORからモンドまで何でもアリ)のディスコ・ダブの型を作ったというか、さもなければ周期的なこともあるのかもしれない。この頃からたいした変化がないということでもあるのだろうし、いまシーンは落ち着いている/なんらかのピークが終わった後である、ということなのかもしれないが、なんにせよ没頭できる音楽がここにある。思い詰める音楽ではなく、軽くて微笑みのある、楽しい瞬間を増幅させてくれる音楽をお探しなら、この作品はお薦めである。ダンス・ファンのみならずいろんな人がアプローチできる音楽という点で、本作のオリジナル盤をリリースした〈テレ〉が、インディ系のレーベルという話もうなずける。

Hampshire And Foat - ele-king

 〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉はギリシャではなく、スコットランドのエディンバラを拠点とするレコード・レーベルである。レーベル設立者のユアン・フライヤーがレア・グルーヴやディープ・ファンク方面のDJなので、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉も主に1960~1970年代のマイナーなソウルやファンクのリイシューを行ない、リリース・フォーマットも7インチが多い(フライヤーはほかにも〈ソウル・スペクトラム〉や〈ソウル7〉など、やはり7インチ中心のレア・グルーヴ系レーベルをやっている)。アルバムではミルトン・ライト、ペニー・グッドウィンなど、やはりマニア垂涎のレア盤をリイシューしており、最近はロウ・ソウル・エキスプレスの未発表作品集を何と初アナログ化させたばかりだ。こうした中、ハンプシャー・アンド・フォートというアーティストの『ギャラクシーズ・ライク・グレインズ・オブ・サンド』は、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉にとって異色のリリースと言えるだろう。レーベルとしておそらく初めての現行アーティストによる作品で、またサウンドもいままでのレーベル・カラーとはかなり異なるものだ。

 このユニットはウォーレン・ハンプシャーとグレッグ・フォートによるコラボレーションで、おそらく恒久的なものではなく、本作のみのために組まれたものだろう。ウォーレン・ハンプシャーはマルチ・インスト奏者で、ワイト島出身のインディ・ロック・バンド、ザ・ビーズのメンバーである。1960年代のサイケやガレージ・ロックから、レゲエやジャズなど幅広い音楽性をミックスさせ、マーキュリー・アワードにもノミネートされたことがあるバンドだ。一方、グレッグ・フォートはザ・グレッグ・フォート・グループのリーダー及び鍵盤奏者で、〈ジャズマン〉から英国らしいディープなジャズ・アルバムを5枚発表していることで知られる。このふたりがどのような経緯で出会い、コラボレーションするに至ったのか詳しいことはわからないが、ユアン・フライヤーのアイデアで一種のライブラリーというか架空のサントラのようなアルバムを作り出した。ふたりのサポートにはザ・グレッグ・フォート・グループのメンバーが名を連ねるほか、英国ジャズ界の重鎮であるスタン・トレイシーの息子で、彼のバンドでも演奏したドラマーのクラーク・トレイシーから、エディンバラ交響楽団のメンバーも参加している。

 基本的にビートは薄目で、アンビエントやチルアウト・テイストのアルバムとなっており、“ザ・ソーラー・ウィンズ(アンド・カデンツァ)”でのグレッグ・フォートのエレピ・ソロとか、極めてシネマティックな光景が浮かんでくる作品集である。サウンドの軸となるのはジャズだが、ブルースやビ・バップから発展してきたアメリカのメインストリーム・ジャズとは、また異なるものだ。クラシックやモダン・クラシカル、現代音楽やミニマル・ミュージックと交わっており、極めてヨーロッパらしいジャズのあり方と言えるだろう。こうした作曲やアレンジ能力は重厚で深遠な“ハウ・ザ・ナイツ・キャン・フライ”あたりに顕著で、マイク・ウェストブルックやニール・アードレイなど、英国ジャズのパイオニアたちの才能を今に引き継いでいる部分も感じさせる。そして、ブリティッシュ・トラッドやケルティック・フォークからの影響を感じさせるのが英国特有で、そこがエディンバラを舞台にした本プロジェクトの真髄ではないだろうか。宇宙的なタイトルの表題曲はじめ、“ララバイ”や“オール・ウォッシュト・アップ”がその典型で、アコースティックでフォークロアなモチーフの楽器演奏が、むしろ宇宙や自然の神秘性を密やかに物語る。フォーキーなテイストとモーダル・ジャズが見事に溶け合った“エンド・ソング”は、エレピやトランペットのソロに雄大なオーケストラ・サウンドも交え、アルバムのハイライトとなる素晴らしい作品である。

 なお、録音はすべてアナログ・テープにより、エディンバラのスタジオで録音後、スウェーデンのスタジオでミックス・ダウン、フィンランドのスタジオでマスタリングとカッティングを行なったとのことで、ハンプシャーとフォート、フライヤーの音に対する拘りが溢れたものとなっている。いまの時代、ここまで音にお金や時間、労力をかけるのはとても贅沢なことで、それを満喫するにはやはりアナログ盤を購入するのが一番だろう(一応、カセット、CD、デジタルでのリリースもあり)。あと、ジャケットは1960年代に活躍したマイケル・ガーリック・クインテットの『オクトーヴァー・ウーマン』をモチーフにし、〈アテネ・オブ・ザ・ノース〉のレーベル・ロゴも今回はその発売元の〈アーゴ〉を真似ている。そんな細部にまで遊び心と、ブリティッシュ・ジャズへの敬愛が溢れた作品である。

Oneohtrix Point Never × Ryuichi Sakamoto - ele-king

 これは事件です。最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』のリリースを控えるOPNが、なんと坂本龍一のリミックスを手がけました。原曲は坂本の最新作『async』に収録されている“Andata”です。2015年にLIQUID ROOMで開催されたOPNの来日公演ではカールステン・ニコライが前座を務めていましたが、いやはや、ついに坂本龍一とも繋がってしまいましたか。そのこと自体ビッグ・ニュースではありますが、いや、これまたこのリミックスが良いんですよ。どういうふうに料理するのかとどきどきしながら再生ボタンを押すと……2分を過ぎたあたりで鳥肌が立ちました。OPN、おそるべし。なお、このリミックスは後日リリース予定の坂本龍一の作品(リミックス・アルバムでしょうか?)に収録される予定で、そこにはOPNの他にもコーネリアスアルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどが参加しているとのこと。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーが坂本龍一をリミックス
- Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework) -

前衛的な実験音楽から現代音楽、そしてアートや映画の世界にまで、年々活躍の場を広げ、日本でも今年公開予定の映画『グッド・タイム』のサウンドトラックで、本年度のカンヌ・サウンドトラック賞も受賞したワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)ことダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)が、坂本龍一の最新アルバム『async』収録曲「andata」のリミックス・ワークを公開した。

Ryuichi Sakamoto - Andata (Oneohtrix Point Never Rework)
https://soundcloud.com/milanrecords/ryuichi-sakamoto-andata-oneohtrix-point-never-remix/

本楽曲は、『async』に続く坂本龍一の最新作に収録され、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの他、コーネリアス、アルカ、ヨハン・ヨハンソン、モーション・グラフィックス、エレクトリック・ユースなどの参加が明かされている。

ますます注目を集めるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新作『Good Time Original Motion Picture Soundtrack』は8月11日(金)世界同時リリース! 国内盤には、ボーナストラック“The Beatdown”が追加収録され、解説書が封入される。iTunesでアルバムを予約すると、公開中の“Leaving The Park”と“The Pure and the Damned (feat. Iggy Pop)”の2曲がいちはやくダウンロードできる。


label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Good Time Original Motion Picture Soundtrack

cat no.: BRC-558
release date: 2017/08/11 FRI ON SALE
国内盤CD: ボーナストラック追加収録/解説書封入
定価: ¥2,200+税

【ご購入はこちら】
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002171
amazon: https://amzn.asia/6kMFQnV
iTunes Store: https://apple.co/2rMT8JI

【商品詳細はこちら】
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Oneohtrix-Point-Never/BRC-558

8年ほど前、ぼくらは音楽に、あるいはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーその人に興味を持っ た。ぼくはいつもダンの音楽(特に初期の頃の)を、まだ作ってもいない映画のサウンドトラックとして想像していた。『Good Time』でのコラボレーションから、それを取り巻く対話を通じて、ぼくらは深い友情と、もちろんこの色鮮やかでこの世のものとは思えないようなスコアを手に入れた。制作の前にダンとはコンセプトのことでよく話し合った。それがカンヌで花開くことになるとは……まるでハイレゾ・ファンタジーだね。 ― ジョシュア・サフディ

ぼくはワクワクしながら、ミッドタウンにある兄弟のオフィスを訪ねた。そこには彼らが好きなものが何でもあって、まるで聖地みたいだった。巨大な『AKIRA』のポスターと『King of New York』が並んでたよ。ふたりはぼくに、特殊な映画に取り掛かるつもりだと言った。ぼくから見たサフディ兄弟は、非常に特異なことに取り組みながらも、伝統を尊重する監督だ。ジム・ジャームッシュやクエンティン・タランティーノ、レオス・カラックスといった監督を思い浮かべても、彼らは映画の歴史を愛するがゆえに映画制作そのものから遠ざかりがちだが、いずれにせよあの独特の個性を失うことはない。ぼくらに共通しているのは、傷ついてボロボロになったものに対する愛着と敬意だ。たぶんぼくらは今現在の歴 史を守りたいという衝動を感じていると思う。昔の、ではなく。ぼくら自身の言葉でだ。 ― ダニエル・ロパティン


映画『グッド・タイム』
2017年公開予定
第70回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門選出作品

Good Time | Official Trailer HD | A24
https://youtu.be/AVyGCxHZ_Ko

東京国際映画祭グランプリ&監督賞のW受賞を『神様なんかくそくらえ』で成し遂げたジョシュア&ベニー・サフディ兄弟による最新作。

コニー(パティンソン)は、心に病いを抱える弟(ベニー・サフディ監督兼任)のため、家を買い安全に生活させてやりたいと考えていた。そこで銀行強盗をふたりで行うが、途中で弟が捕まり投獄されてしまう。弟は獄中でいじめられ、暴れて病院送りになる。それを聞いたコニーは病院へ忍び込み、弟を取り返そうとするが……。

出演:ロバート・パティンソン(『トワイライト』『ディーン、君がいた瞬間』)、ベニー・サフディ(監督兼任)、ジェニファー・ジェイソン・リー(『ヘイト・フルエイト』)、バーカッド・アブティ(『キャプテン・フィリップス』)
監督:ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟(『神様なんかくそくらえ』)

2017/アメリカ/カラー/英語/100分
(C) 2017 Hercules Film Investments, SARL

配給ファインフィルムズ

NORIKIYO - ele-king

 これは自分がいかに不良だったのかを述べる本ではない。そういう箇所がないわけではないが、アジアン・カンフー・ジェネレーションの後藤正文氏がツアー前の忙しいなか、本書のゲラを読んで、帯コメントとしていみじくも書いてくれたように、これは「反骨と愛」の本だ。
 ぼくが仕事させてもらって感じたことのひとつは、NORIKIYOのある種の“無垢さ”、ないしは“一本気”なところだ。換言すればそれは庶民的な小粋さのことである。無粋なことはしない、大きなモノには媚びない。NORIKIYOの言葉には、庶民的があるゆえの反権力、反エリート、負けん気がある(それがポリティカルに表出することもある)。反骨心に溢れていて、あるいは社会の裏側まで知っているかのような風情もある。
 が、しかし、愛も滲み出てしまう。NORIKIYOの言葉を特徴付けているもうひとつのことは、ギャングスタかっけーと思わせるムキとは正反対の、ロックの理想主義の精神が注がれていることだ。“゙ジョン・レノンに会いたい”という曲はそうしたNORIKIYOらしさの典型だが、本書には他にも清志郎をはじめとするロック・ミュージシャンたちの名前が何回も出てくる。『路傍に添える』を読んでいると、昨今のファッショナブルなインディ・ロックが失ったモノを神奈川県相模原を拠点にするこのラッパーは執拗に追い求めている/むしろ継承しているように思えてくる。(ぼくが思うに彼の言葉には、庶民性、無頼性、社会性という点において、泉谷しげるを彷彿させるところがある)
 
 8月7日、ele-king booksからNORIKIYOの詩集にして回想録『路傍に添える』が刊行される(※7月30日「Bouquet Tour Final」のライヴ会場、恵比寿リキッドルームでは限定先行発売予定です)。
 国際的に活動するグライム・プロデューサー、米澤慎太朗の音楽にのめり込むきっかけが高校時代に聴いたNORIKIYOだったと最近知ってビックリしたのだけれど、本書にはNORIKIYOの有名な『EXIT』から最新作『Bouquet』までの、あるいは語り下ろしによる、彼の言葉という言葉が印刷されている。アイルランドの詩人トーマス・ムーアによれば詩人とは魂の揺さぶりを記述する人であるというが、自由を失った片足を持つ、ひとりの人間の人生への情熱──正直で、魂を揺さぶる熱い1冊をどうぞ。


NORIKIYO
『路傍に添える』

ZAKAIAmazon
Disk UnionTower
HMV

Jeff Parker - ele-king

 ジェフ・パーカー『ザ・ニュー・ブリード』を聴いて、ギュイヨン夫人の本にあった一文を思い出して、本棚から引っ張り出してみた。
 「第二段階の魂は、ゆったりと重々しい足取りで行く大きな川にたとえることができる。こうした川は、壮麗さや威厳に満ちている。そして、その流れは際立って几帳面な様子をしている。こうした川は、よく水運に利用され、また、他の川の流れに頼らずに、一人で海まで行き着くこともできる」(村田真弓訳/以下同)

 柳樂氏のライナー・ノーツには、「ポストロックを代表するバンド、トータスのメンバーであり、一方で現代最高のジャズ・ドラマー、ブライアン・ブレイドのバンドに起用されているジャズ・ギタリストでもある」から始まって、バイオグラフィーや影響、トータスやアイソトープ217°はもちろん、ATCQ『Low End Theory』、Jディラ『Donuts』、マカヤ・マクレイヴン『In The Moment』と今作の伏線になるような作品の紹介が交えられていて、その観察はやはり、わかりやすく且つさりげなくディープである。お陰で、これら関係している作品を初めて聴く機会にありつけた。『Donuts』も初めて聴いた。ヒップホップ初心者にも程がある。「第三段階の魂を形容するあたり、高い山から流れ落ちる奔流のようだと言う以外に、何か付け加える必要があるだろうか。何ものをもってしてもその流れを遮ることはできないのだ。彼らはなに一つ身にまとわず、すっかりむきだしのまま、どれほど大胆な人であろうと思わず怖気づくような速さで駆け抜けて行く」ような音楽だと思った。

 『ザ・ニュー・ブリード』ほど、様々なものが流れていながら、それらが強すぎないまま形をなしている作品はあまり聴いたことがない。なるほど、Jディラのビートが流れていることもよくわかった。よくヨレていると表現されるそれは気持ちいいところに行きたかった故のもので実は理にかなっている。元々、ふたつのリズムが一緒に流れてひとつになることは、よくスクエアと表現されるそれより、ずっと長い歴史を持つ。ほんとの意味ではヨレても訛ってもない。その上で1曲目からやられた。生楽器メインで、ディラ的ビートを柔らかく打ち出したと思ったら、ジャズ的即興要素のある展開へ行き、それらを繰り返す。そして、どちらも強すぎないし、サウンドスケープとしての余白があるから、何が起こったか理解できないままでも音に入ることができる。強要されずに、飛び込んでくる。気づいたら音は広がっていたり、気づいたら気持ちのいい8ビートが聴こえていたり。
 そもそもギターリストのソロ作としては、ギターがさりげなさすぎる。もちろん抜群なギターで、何度か現れるしつこいまでの管とのユニゾンは、スピリチュアルジャズのようなトリップ感をもたらすが、それだけを押し出すものではなく、音像の一部であることから外れていないし、柳樂氏が指摘している“Get Dressed”のグラント・グリーン的ギターも、ループ的リズムと相まって抑制がよく効いていて、安易な踊りを誘い出しはしないし、ケニー・バレル的“Cliché”も、やはりリズムと相まって、4ビート臭さは一切ないままジャズの質感だけを残すのだが、音楽にあるスペースのお陰か自然に音に入っていける。7:45あるアルバム中最も長い“Jrifted”の7:14辺りから現れるサンプリングが、もはやサウダージといってもいいんじゃないかというリラックス効果を発揮しているのも面白い。というか気持ちいい。

 ここまで書くだけに何度聴いただろうか。もうひとつ言えることは、この作品には、捨て曲どころか捨て局面さえ一切ない上に、リスナーをして強要をしない。個性を隠すことが、個性を際立たせるようなマジックがある気がする。それは、奔流には作りえない不思議な魅力だ。一体どんな人なのだろうか。再三柳樂氏の名前を出して恐縮だが、彼をしても「わからない」らしいが、ジェフ・パーカー初心者の僕はいま、ギュイヨン夫人の言葉がしっくり来るような気がしている。

TECHNIQUE - ele-king

 この4月に大幅に店舗をリニューアルした渋谷のレコード・ショップ、テクニーク。そのリニューアルにあわせて、大々的なセールが開催されます。これは嬉しい! 期間は7月28日(金)~8月3日(木)。ぜひ足をお運びください。

「テクニーク リニューアルセール」開催
【開催期間:2017年7月28日(金)~8月3日(木)の7日間】

半期に一度の中古盤全品30%OFFに加え、リニューアルに伴う新古品が30%OFF~
中古盤2000枚以上、新古品2000枚以上放出予定

テクニーク(運営:株式会社エナジーフラッシュ、所在地:東京渋谷区)は、「テクニーク リニューアルセール」を2017年7月28日(金)~8月3日(木)までの7日間渋谷店舗にて開催いたします。

 2017年4月、よりお客様に快適にレコードを視聴して、購入していただける店舗を目指し店内を大幅にリニューアルしました。
 半期に一度、毎年7月に開催している中古盤全品30%OFFセールに加え、リニューアル記念を兼ねまして新古品も大放出いたします。中古盤全品30%OFF、新古品30%OFF~80%OFFでお探しのレコードがお買い求めいただけます。
 中古盤2000枚以上、新古品2000枚以上放出予定しております。また放出スケジュール/ジャンルは7月28日(金)にテクノをメイン、7月30日(日)はシカゴ、ディープハウスをメイン、8月1日(火)は、デトロイト、ミニマルをメインとなります。
 7月29日(土)と7月30日(日)はリニューアル際に設置したDJブースからインストアーイベントを開催し、その模様はストリーミング配信いたします。

 中古、新古品併せて4000枚以上を放出する今までにない大規模なセールとなっております。この機会に是非、お探しのレコードを見つけにテクニークへ足をお運びください。

「テクニーク リニューアルセール」
開催期間:2017年7月28日(金)~8月3日(木)
内容:中古盤全品30%OFF 新古品30%OFF~80%OFF
詳細:https://www.facebook.com/events/1759382054353011/

テクニークとは
■1994年から時代の様々な変化に沿いながら、その時々のトレンドに合わせた音楽を輸入、販売してきた渋谷は宇田川町にあるレコードショップ、「テクニーク」。アナログ・レコードの重要性や希少価値、レーベル、アーティストのブランディングのひとつとしてなど現在の音楽シーンの中で重要なパートを担っているといえよう。
■オンラインショップ
www.technique.co.jp

ハテナ・フランセ - ele-king

 夏といえばフランスでもロック・フェスティバルが毎週末のように各地で行われている。一口にロック・フェスティバルと言っても色々なタイプがあるので、今回は私が今年参加したいくつかのフェスを紹介しながらそれぞれの特色をお話ししたい。

 まずはシャンパーニュ地方はランスで行われた3万人規模の比較的こぢんまりしたラ・マニフィック・ソサエティから。ヘッドライナーはジェイミー・カラム、モデラット、エールやグレゴリー・ポーターなどのフランスでは中規模フェス仕様のラインナップ。
 シャンパーニュ地方はその名のとおりシャンパンの生産地のため経済的に豊かな地方で、その地方自治体や市などの全面協力を得て、ユネスコ指定公園のシャンパーニュ公園で行われた。他のフェスとの違いといえばアーケードゲーム機やファミコン、フィギュアなどを揃えた日本テントだろう。日本人アーティストも水曜日のカンパネラ、Seiho、Dé Dé Mouse、YMCK 、kiLLa、Dotama、ピノキオPが出演したのだが、中でも水曜日のカンパネラは個性&工夫溢れるステージで日本といえばゲームとアニメのイメージしかないフランスのオーディエンスをまずは唖然とさせ、そして最後には心を鷲掴みにしたようだった。公園の両脇はシャンパン畑だし、フランスのフェスでも初(との宣伝文句だったが真偽のほどはナゾ)のシャンパン専門ブースがあったりと優雅な雰囲気。客層も家族連れが多くシニア層もチラホラ。泥んこ万歳! な感じの若者よりもカットオフデニムにフラワークラウンを頭に乗っけてコーチェラ気分な若者の方が多く、移民系の若者はほとんど見かけなかった。

 深夜帯には若者たちしか見かけなくなったが、酔っ払って正体をなくす輩は全く目にすることもなかった。以前よく行っていたブルターニュ地方はレンヌのフェスティバル、レ・トランスミュージカルで若者たちの立ちション危険地帯やゲロ攻撃に閉口していたことを思い出し、地方によって若者たちの生態やフェスのあり方も違うのだと改めて感心した。レ・トランスミュージカルは約40年も続いている新人発掘に定評のあるフェスだが、それより何より地元の若者たちが羽目を外せるお祭りでもあるようで。しかも深酒に定評のあるブルターニュ地方とくれば、へべれけティーンネイジャー軍団に混じって深夜にシラフでライブを見るのはほとんど苦行のですらあった。

 その点、都市型フェス、パリ郊外ヴァンセーヌ公園で行われたウィ・ラブ・グリーンも別の意味での苦行であった。パリ郊外で行われるいくつかのフェスのなかでも一際スノッブなのがこのフェス。いまヨーロッパのマーケティングにおいて欠かせない要素のエコを標榜したフェスだが、今年のヘッドライナーはソランジュ、アンダーソン・パーク、ジャスティス、リッチー・ホーテンらオシャレ層に響くラインナップで集客も2日で5万8千人と大規模フェスの範疇に入る。
 おが屑を使用したバイオトイレやフードスタンドの食器を全てリサイクルにするなどのわかりやすいエコから、消費電力を食用油のリサイクルによって捻出するという一般的にはあまり聞いたことのない手法まで看板に偽り無しのエコぶり。ただオーディエンスの捌き方などには無頓着でトイレからフードスタンドまで行列がひどい。ラテン系ヨーロッパに独自のメンタリティかもしれないが、フランス人は秩序を守って行列をするのが本当に苦手だ。どこの行列もとにかくびゃーっと人が広がって、それを整える人員もいないので、皆我先にと人を出し抜こうとする。フェス仕様の軽いオシャレをしたパリジャンが澄ました顔をしてどうにかしてズルをしようとする様は、エコという意識の高さとはまったく相容れない。そこに無頓着なフェス側の姿勢はエコをマーケティングのみで取り入れているとしか思えないというのはうがった見方だろうか。
 そんなヘコんだ気持ちを持ち直してくれたのがフランス東部のベルフォールで行われたレ・ユーロケンヌだ。日本人アーティストReiに同行したのだが、約30年続いているフェスだけに地元民総出でフェスを支持している感が溢れていた。約12万人規模の大型フェスなので、他地方、スイス、ドイツなど周辺国から集まったいわゆるフェス慣れしたオーディエンスも多かったが、地元の家族連れ&シニアととてもいい塩梅で共存していた。
 Reiのサイン会には老若男女が集まり「あたしたちゃ初回からレ・ユーロケンヌに来てるけど、あんたみたいなアーティストは見たことないよ。いい筋してる!」と太鼓判を押してくれる半ズボン&サンバイザーの老夫婦などに大変癒され、会場となっている自然公園の湖畔の緑に癒された。あくまで個人的感想だが、フランスの地元密着型なフレンドリーなフェスは悪くないなあとフードブース定番のケバブを頬張りながら思ったのだった。

D.A.N. - ele-king

 子供が生まれると、徐々に成長していく過程の中で、教えてもいないのに音に合わせて小さな体を自分で揺らしはじめる場面に遭遇する。愚かな我々はたちまち「うちの子って何だか音楽に興味があるみたい(やはり!)」などとのぼせ上がるのだけれど、そのうち集団に紛れて周りに目を配る余裕ができて、そこでやっと大事なことを思い出す。そうだった、人は誰でも気に入った音楽が流れると気分が高まり、踊りたくなるのだと。

 昨年出たD.A.N.の1stアルバム『D.A.N.』を聴いたときに、長いこと忘れていたダンス・ミュージックのリズムを思い出した。エレクトロニカの複雑で歪んだ音や、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの熱に浮かされ、他のことに気を取られたりしているうちに、記憶の彼方へ葬られていた暗闇で反復するリズム。それによく似た種類の、血の通った新しいミニマル・サウンドを人力で鳴らす。なんて飄々としてこなれたダンス・ミュージックを作るバンドなんだ、しかもすべてにしっかりと日本語が乗っている、と唸りながら何だかもう百回位は聴いた。

 そこから1年経って発売されたミニ・アルバム「TEMPEST」。昨年末に配信リリースされていた“SSWB”は、タイトでしなやかにうねるリズムの繰り返しとスティールパンの淡い音色が土台になり、親しみやすいメロディに馴染んだクールな歌詞が重なって、D.A.N.のダンサブルな魅力を凝縮させたような素晴らしい出来。あの音の上に高い声で「Hold on baby いいかい」なんてさらっと乗せてしまう感性にまいった。誰かにD.A.N.を勧めるならいまは迷わずこの曲を選ぶ。続く“Shadows”はゆっくりとテンポを落として更にスケールを広げ、不穏な空気を漂わせる。この曲のMVがまた美しく壮大な作品で、クリエイティヴな才能に囲まれている証拠を見せつけてくれる。D.A.N.のMVはハズレが無い。

 そして表題曲の“Tempest”。もはや何処の国かもわからない謎なリズムと分厚いベースと怪しい歌声が、寡黙に進んでいくうちに徐々に交差して浮かび上がり、別の形になって耳をじわじわ襲いながらも幻のように消えていくカオスな空間が生まれる。クラブでDJが2時間かけて作り上げるようなグルーヴをD.A.N.はこの1曲でやってのけてしまった。手と足と声を使って。

 きっと彼らは音楽の趣味が良く、それを自分たちで消化して表現する能力がとくに優れているのだと思う。そういうセンスのある人たちは、国やジャンルや世代の壁をひょいっと外して、無防備な誰かの懐に忍び込み、体を揺らすことができるはず。いくつになっても、人は踊りたいものだ。それは夏のせいかもしれないけれど。

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