2014年はディズニーの年だった。世界歴代5位の興行収入となった『アナと雪~』はもちろん、メアリー・ポピンズの作者を主役としたジョン・リー・ハンコック監督『ウォルトディズニーとの約束』もディズニー自身の夢を描くという骨子はけして悪いものではなく、アドラーの流行を尻目にフロイトの底力を思い知らされる面もあった。さらにはブラック・ユーモアを全開にしたランディ・ムーア監督『エスケープ・フロム・トゥモロー』である。ディスニーランドのダークサイド(とされるもの)をここまでがっつり見せてくれた作品も珍しく、上映中止にもDVDの回収処分にもならなかったことがかえってディズニーの度量を感じさせる作品ともいえる。ファンタジーの王道と、それを作り出す人、そして、それを裏側から叩きのめす3本が出揃っただけでなく、どこから見てもファンタジーには価値があるということを認めさせた年だったのではないかと。まあ、そういうことにしてケイトリン・アウレリア・スミスのデビュー・アルバムを再生してみよう。そうしよう。
オーカス島というリゾート地で育ったからということが説明になるとは思えないけれど、なるほどテリー・ライリーのミニマル・ミュージックに影響を受けたというケイトリン・アウレリア・スミスはこれをニュー・エイジ風の幻想的なアレンジのなかに解き放ってしまう。あるいはタイトル通り、前半の6曲はユークリッド幾何学を用いて作曲されたと解説され、どこがどうしてそうなのかはわからないけれど、その響きは柔らかい布を積み重ねていったようなしなやかさと可愛らしい質感に満ちている。ふわふわとこちょこちょ、キラキラとさらさらという感じだろうか。シンセサイザーと出会う前はムビラ(親指ピアノ)に凝っていたそうで、高音が多用されるアフリカ音楽のテクスチャーを思わせる面も多い。ローリー・シュピーゲルやスザンヌ・チアーニ(『アンビエント・ディフィニティヴ』P.96)といった70年代の先駆的な女性作曲家たちに、ヒッチコック映画の音響効果を担当していたオスカー・サラ(『アンビエント・ディフィニティヴ』P.36』)にも多大な影響を受けたそうで、あらゆるところからファンタジーを集めてきたようなニュアンスはそれで説明されてしまうような気も。マスタリングはマシューデイヴィッド。
後半は12パートに分かれた組曲形式の“ラビリンス”。それこそテリー・ライリーのフェミニンな変奏である。もともと、シュトックハウゼンと袂を分かつことがテリー・ライリーの出発点だったことを思うと、アカデミックな要素がまるでなく、むしろニュー・エイジへと接近させることはライリーの本意にかなうことなのかもしれない。寄せては返す主題の変奏と穏やかな質感の持続はスティーヴ・ライヒを取り入れたティム・ヘッカーやアレックス・グレイ(DPI)でさえマッチョに感じさせなくはないものがあり、ドローンだけでなく、ミニマル・ミュージックにも女性によって書き換えられる面があったとことに気づかされる。12パートは、そして、あっという間に終わる。
ディズニーが本気だなと思わせたのは、『アナと雪~』の4ヶ月後に公開されたロバート・ストロンバーグ監督『マレフィセント』も「男性を必要としないフェミニズム」を同じように打ち出していたから……かもしれない。『眠れる森の美女』を魔女の視点から捉え直した同作は、エルザがさらに心の醜い存在へと成り果てた状態といえ、子どもにもわかりやすいゴシック・ファンタジーとして仕上げられた。『アナと雪~』とは正反対に突き進んでもなお、「男を必要としない」女性像が子どもたちの心に刷り込まれたのである。結果が楽しみだなーと思いつつ、ガゼル・ツインことエリザベス・バーンホルツのセカンド・アルバムを再生してみよう。そうしよう。
ブライトンというリゾート地で育ったからということがまったく説明にはならないように、フードで顔を隠し、ヴォーカルは時に男の声に変調させ、絶望的なダーク・ウェイヴを聞かせる『アンフレッシュ』は、早くも『キッドA』(レイディオヘッド)を書き換えたという評が飛び出るほどガキどもの心には染み通っているらしい。明らかに気持ち悪さを強調したようなシンセサイザーはインダストリアル・ヴァージョンのポーティスヘッド、ないしはホラー・ヴァージョンのFKAツイッグスといった感触を最後まで貫き、暴力性を自己へと向けざるを得ない女性の姿を浮かび上がらせる。体の線を覆い尽くしていることやアルバム・タイトルもそうだし、シングル・カットされた「アンチ・ボディ」など肉体嫌悪がその根底をなしていることは想像にかたくなく、フランケンシュタインが子どもを生みたくなかった女性のファンタジーであり、ゲイの監督が映画化したものだという構図がここにはまだ生きていることを思わせる。

1996年 中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)によって大阪で結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェ リー」は、多様なジャンルを消化し、エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなる。以後、作品ごとに魅せる斬新な音楽性において、常 に日本の音楽シーンにて注目を集めている。2014年5月には、オダギリジョー主演テレビ東京系ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌・劇中歌、エンディングテーマの3曲を収録した、New Single「BRIGHT TIME」をリリース。
2001年結成、2003年『もうじき冬が来る』でメジャー・デビュー。レゲェ/ダブ、ドラムンベース、エレクトロニカ、サンバにカリプソと、様々なリズ ムを呑み込みながらフォークへ向かう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団。ROCK IN JAPAN、FUJI ROCK FES、RISING SUN ROCK FESなど、毎年数多くの野外フェスに出演し、ライヴ・バンドとしても確固たる地位を築いている。他アーティストへの楽曲提供、演奏サポートなど、それぞれ のソロ活動も精力的に行われ、2010年にはvo.蔡、dr.辻ともにソロアルバムも制作/発表。2014年3月5日には6thアルバム『HYPER FOLK』をリリース。さらに8月20日には初のライヴ・アルバム『HYPER FOLK JAMBOREE TOKYO.1/2』をライヴ会場限定販売にてリリース。
2003年に大阪・堺にて結成し、ライブを中心に活動するガールズ・ブラスロックバンド。3Rhythms&3Hornsの楽器構成。The Specials から絶大な影響を受けており、結成当初からスカバンドとして活動してきたが、活動を続けていくにつれて、2トーンをより精神的なものとして捉え、音楽のス タイルやジャンルをさまざまな方向に広げ、より自分たちらしい音楽を追求するようになる。2008年に全米46都市ツアーを行ってから、精力的に海外と日 本での活動を続けている。
ミュージシャン。オルガン・シンセを中心とする鍵盤演奏及び作編曲を行なう。ニューウエーブのバンドで音楽活動を始め、「ワールドミュージック」全盛 の’80年代末、JAGATARAとMUTE BEATに参加。’90年代前半にはライブハウス「代々木チョコレートシティ」及びそのレーベル「NUTMEG」においてあらゆる個性的な音楽、特に初期 のHip Hopやレゲエの制作に関わる。その後忌野清志郎&2・3′sを皮切りにフリーのキーボードプレイヤーとして活動。ロック畑からオルタナティブな 分野まで、音数は少ないが的確な演奏と音楽を広く深く理解する力によって、インディー/メジャーを問わない数多くのアーティスト・バンドをサポートしてき た。また、レゲエの創成期からジャマイカで活躍したミュージシャン、ジャッキー・ミットゥーの音楽を出発点としてリズムボックスと古いキーボードによるイ ンストゥルメンタル音楽を作っており、「エマソロ」と呼ばれる一人ライヴを全国各地や海外で展開している。2014年7月、オリジナル曲を中心としたソロ アルバム『遠近(おちこち)に』を、自身のレーベルからリリース。
1957年、北海道・札幌市生まれ。80年代から90年代初頭 に掛けて”TOMATOS”のリーダーとして活躍。メンバー には、じゃがたらのNABE CHANG(Bass)、EBBY(Guitar)や ミュート・ ビートの松永孝義(Bass)、今井秀行(Drums)ら が在籍。TOMATOSは、80年代にじゃがたら、ミュート・ ビート、S-KENと共にTokyo Soy Souceというライブ・イ ベントを企画、 シリーズ化して、それまでの日本のロック とはまた違った新たな音楽シーンを作った。彼らの活動が ベースにあった上で、後にリトルテンポやフィッシュマン ズが生まれた といっても過言ではない。又88年には、ス カの創始者ローランド・アルフォンの初来日公演 “Roland Alphonso meets Mute Beat”でサポート・ギタリストとし て参加、 後世に語り継がれる感動のライブとなった。その 後、ローランド・アルフォンとは2枚のアルバム 『ROLAND ALPHON SO meets GOOD BAITES with ピアニ カ前田 at WACKIES NEW JERSEY』、『Summer Place』を 一緒に作り、リリースした。
1981年、ライヴでダブを演奏する日本初のダブ・バンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム『QUIET REGGAE』から2003年発表の『A SILENT PRAYER』まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 『IN THE STUDIO』、2006年には『MORE』を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム『チャッピー・ドント・ クライ』等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のラ イブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても『スティル エコー』(1993)、『ノート・その日その日』(1996)、「空をあおいで」(2010)『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』(2014)がある。
