「S」と一致するもの

interview with Ana Tijoux - ele-king

ラテンアメリカは、自立のために絶え間ない闘いを繰り返し、非植民地化のために必死で生きている。私たちの微笑みを壊す、キャピタリズムの沈黙の支配を前にしながら。


Ana Tijoux (アナ・ティジュ)
Vengo(ベンゴ)

MUSIC CAMP

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 ラテン・ヒップホップといえばマイアミやニューヨーク、ロサンゼルスのラテン系ルーツを持つアーティストたちによるスペイン語のヒップホップを思い浮かべる人のほうが多いのではないだろうか。それも間違いではないが、すべてではない。ここでは、いままで大々的に語られることがなかった、反米運動やグローバリズムに抵抗するために確立されたラテンアメリカのアンダーグラウンド・ヒップホップついて説明したい。
 2000年代初頭、ブラック・パンサー思想を継承するキューバのフェスティヴァル、「ブラック・オーガスト」は、エリカ・バドゥ、ザ・ルーツ、モス・デフ、コモン、ファット・ジョーらを含む米国のアーティストたちとキューバやラテンアメリカのアーティストたちが参加し、国を越えたアーティスト同士の交流を目的にした、伝説的なイベントだった。その動きに触発され、2005年からラテンアメリカじゅうのアンダーグラウンド・ヒップホップのアーティストを集めた、サミット的フェスティヴァル、『クンブレ』がベネズエラで始動する。同国では前大統領のウーゴ・チャベス政権による、ゲットーでのヒップホップを媒介にした教育や社会活動が政策を行っており、クンブレもその一環だった。そして、ドミニカ共和国、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、チリ、プエルトリコなどラテンアメリカ全域に『ヒップホップ・レボルシオン(ヒップホップ革命)』と呼ばれる大きなムーヴメントが広がり、2010年ごろまで活発化していた。

元大統領チャベス政権のヒップホップ政策により生まれた、ベネズエラのオクマレ・デ・トゥイという村の少年たちによる、ヒップホップ・クルー、ムーチョクモの曲〈Nuestra Juramento(俺たちの誓い)〉。
ベネズエラでは、現大統領、ニコラス・マドゥロ政権への反体制デモが起こり、紛争状態と米系大手メディアは報道する。一刻も早く同国の混乱が治まることを願うばかりだが、そんな今でこそ、表向きに報道されていなかったチャベス政権の活動を伝えるこのビデオを紹介したい。

 そんなラテンアメリカ全域を巻き込んだムーヴメントの功績により、メッセージと高い音楽性を持つヒップホップ・アーティストが着実に増え、現在ではメジャーとアンダーグラウンドの垣根もなくなりつつある。
 プエルトリコのデュオ、カジェ13はヒップホップ、レゲトンを自在に操り、ポップ・シーンを股にかけるメジャー・アーティストの代表といえる。2013年末に発表されたミュージック・ビデオ、「Multi_Viral」は、ウイキ・リークスのジュリアン・アサンジとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロがゲスト参加した曲であり、パレスチナのベレンを舞台に、ビデオ撮影が行われた。もちろん、そこには反キャピタリズムのメッセージが込められている。

カジェ13「Multi_Viral」。カジェ13の戦闘的ラップと、ジュリアン・アサンジの朗読、トム・モレロのロックギターが炸裂。

 メジャーに君臨しながらも、プエルトリコの米国からの独立のために活動し、大胆なメッセージを放つ彼らは、ラテンアメリカのみならず、世界中に刺激を与えている。

 また、英国のDJジャイルズ・ピーターソンは、かねてからキューバの首都ハバナのアーティストたちと組んだプロジェクト「ハバナ・クルトゥラ」の活動を2009年から継続しているが、そこには、ヒップホップ・グループのロス・アルデアーノスやドブレ・フィロのビートメイカー、エドガロ・プロドゥクトー・エン・ヘフェら硬派なアーティストたちが参加している。

エドガロ・プロドゥクトール・エン・ヘフェ「VIDA」

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グラミーにノミネートされただけでも、嬉しくて狂いそうだった。だっていままでに、ノミネートされたチリ人アーティストは私でふたり目だったし、決してメジャーではないチリの文化やヒップホップを世界に知らしめるための扉が開いたと思った。


Ana Tijoux (アナ・ティジュ)
Vengo(ベンゴ)

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 ラテンアメリカのコンシャス・ラップが、もはやマニア向けなものではないことを示すのが、チリのMC、アナ・ティジュの活躍だ。
 ジャイルズ・ピーターソンのレーベル、ブラウンズウッド・レコーディングスのコンピレーション、『Brownswood Bubblers』にも曲が収録され、アルゼンチンの鬼才音楽家、グスターボ・サンタオラージャが率いるグループ、バホフォンド・タンゴ・クラブの『Supervielle』や、ウルグアイのシンガー・ソングライター、ホルヘ・ドレクスレールの最新作『Bailar en cueva』にも参加し、コロンビアを拠点とする英国人DJ、クアンティックとコラボレーションしたEP「Entre Rejas/Doo Wop(That Thing)」を発表するなど、さまざまなジャンルのアーティストからのラヴ・コールを受けている。

 米国グラミーのラテン・オルタナティヴ部門で、2作目『1977』(2011年)と3作目『ラ・バラ』(2012年)で、二度もノミネートされていることも、彼女が注目を集めるきっかけとなった。だが、アナは明らかに先進国の音楽界でトップになることをゴールとはしていない。

 筆者は2011年に、アナにインタヴューする機会を得たのだが、それは彼女のアルバム『1977』がグラミーにノミネートされたロサンゼルスでの授賞式直後だった。惜しくも受賞は逃したが、彼女にとって、それは重要な問題ではないというように、こう言った。

「グラミーにノミネートされただけでも、嬉しくて狂いそうだった。だっていままでに、ノミネートされたチリ人アーティストは私でふたり目だったし(2000年にロックバンド、ラ・レイが同部門でノミネート)、決してメジャーではないチリの文化やヒップホップを世界に知らしめるための扉が開いたと思った」

 グラミーで、アナがラップする機会を得たことには深い意味がある。というのも、米国の新自由主義に踊らされた、アウグスト・ピノチェトが1973年に起こしたチリの軍事クーデターにより、フランスに亡命した活動家の両親から1977年に生まれた女性こそが、アナ・ティジュだったからだ。アナの一家は、ピノチェト政権崩壊後の1993年に、チリへと戻った。発言や表現の自由を得た現地の若者たちのあいだで、産声をあげたヒップホップに、彼女は魅せられていった。
 だからこそ、米国の、世界中から注目される音楽の祭典で、彼女の抵抗のライムが響き渡ったことは、歴史的な出来事だったのである。

アナ・ティジュのアルバム『1977』に収録された同名曲。トム・ヨークがお気に入りとTwitterで発言して話題になった。

「私は母国で政治のために闘った両親の娘であることを誇りにしている。日々の会話のなかや、育て方にも彼らのポリシーが現れていた。私がヒップホップを選んだのは、言葉を書くことが大好きで、それをリズムに合わせることも、音楽そのものも好きだから。そして何よりも自分のメッセージを的確に表現できるから。私にとって音楽はセラピー、エネルギーであり、感覚、怒り、羞恥、喜び……つまり、すべての感情をひとつにするもの」

 アナ・ティジュの2作目の『ラ・バラ』は、ピノチェト政権末期の1990年3月にチリで公布された教育基本法により、教育の民営化が進み、学生や教員たちにとって不利な状態が続いていた状況を打開するため、2011年に学生運動が激化した頃に制作された。デモの参加者はのべ120万人以上。中心となるのは中高生を含む学生たちだ。
 同アルバムのシングル・カットされた曲、“ショック”は、不正を繰り返す権力者たちへの怒りと、世の中を変えようと立ち上がる者たちへの惜しみないリスペクトを込めた曲だ。それは、クーデターや大惨事といった衝撃に便乗し、復興や改革の裏に入り込む資本主義にメスを入れる、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインの著書『ショック・ドクトリン』にインスパイアされ作られたという。“ショック”のプロモーション・ヴィデオは、実際に占拠されている学校で撮影され、主人公は、運動に参加している学生や関係者たちの姿だ。衛星テレビ局アルジャジーラでも、アナの勇気ある行動は大きく取り上げられ、“ショック”はチリの学生運動に欠かせないテーマ曲となった。

アナ・ティジュ 『ショック』のPV(日本語字幕付き)

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私のなかで、南とは北からの度重なる圧力に立ち向かう抵抗の力だと意識している。ラテンアメリカとアフリカの歴史は非常に似通った部分があり、それは音楽的にも交差している。アフリカはすべての母だと意識しているし、それを拒むのは、私たちの歴史を拒むことになる。

 そして、3月9日にリリースされた最新作の『ベンゴ』(「私はやってきた」の意味)は彼女の決意とともに出現したアルバムといえる。リリックは、グローバリズムやキャピタリズムに抵抗する姿勢を示しているのはもちろんだが、前作よりも、ルーツやコミュニティの大切さ、自治、環境問題や女性の人権についてを深く物語っている。
 まさに南からの声明ととれる同作について、アナ・ティジュが、メール・インタヴューに答えてくれた。

「アルバムタイトルとなった同名曲“ベンゴ”はその構想の段階からメロディもメッセージも、とても自然な形で生まれた。友人たちとの日々の会話のなかで、私たちのアイデンティティについて語ってきたことが原点となった。この曲は、アルバムの根幹について要約しているものだと思ったの」


Ana Tijoux (アナ・ティジュ)
Vengo(ベンゴ)

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 アルバムのアートワークには、メキシコ革命の戦士やサパティスタ民族解放軍の乳飲み子を抱えた女性、チリを含む南米を拠点にする先住民族マプーチェの老女、そしてアナの子どもの頃と重なる少女の姿が描かれている。闘い続ける女性たちの姿が並んだ、素晴らしいイラストだ。

 「チリ人アーティストのパブロ・デ・フエンテが手がけた。最終的にこのイラストのコンセプトはほとんど彼が決めたものだけど、事前に私たちは人生やこのアルバムに収録された曲について語り合い、それを彼がイメージして描き上げた。だからこそすごく美しいものになったの」

 今作は、南のルーツを感じさせる音がふんだんに入っているのが特徴だ。アンデス地方のフォルクローレで使われるケーナやチャランゴのざわめきと、太いパーカッションの振動や、美しいクラシックやジャズの旋律と交わり、豊かなバンドサウンドとなっている。そこに載せられた鋭いライムが聴く者の心に突き刺さる。

「ラテンアメリカ由来の楽器を加えたのは、ずっと前から自身に問いかけてきたテーマからだった。私たちのルーツに回帰するためには、どうやって音楽で向き合えるのかを模索した結果だった。このプロジェクトに、かつて共演したことがなかった異なるジャンルの演奏家たちが参加し、経験を共有できた。そのプロセスは、実に豊かでパワーに満ちたものだった」

 学生運動が沈静化したように見えるチリの現況だが、先住民の土地利権問題などは根本的には解決していない。同国の状況について、アナはこのように語る。

「チリは現在欠陥を抱えた困難な状況にある。それは恒久的に信頼性を失ってしまった状態なの。いままでの不当な歴史で受けた、数々の深い傷口を広げたまま、なんとか確立している場所。政府が誠意を持った解決に向かって動いていないあいだに、この複雑な怒りを込めた私たちの隔たりは大きくなっていくいっぽう。ラテンアメリカは、自立のために絶え間ない闘いを繰り返し、非植民地化のために必死で生きている。私たちの微笑みを壊す、キャピタリズムの沈黙の支配を前にしながら」

 本作で、白眉といえるのが、ラテンアメリカとアフリカを意識したリリックが印象的な〈Somos Sur〉(「私たちは南」)だ。

「私のなかで、南とは北からの度重なる圧力に立ち向かう抵抗の力だと意識している。ラテンアメリカとアフリカの歴史は非常に似通った部分があり、それは音楽的にも交差している。アフリカはすべての母だと意識しているし、それを拒むのは、私たちの歴史を拒むことになる」
 さらに、同曲に参加する、パレスチナの血を引く、英国人MC、シャディア・マンスールの畳み掛けるようなラップに圧倒される。シャデイアはアラブ圏初の女性MCとして知られている。
 「シャディアのラップを聴いたときに、強烈な印象を受けた。彼女の力強い言葉のなかに、絶え間ない熟考を読み取った。私は彼女と何かやらなければいけないと心に誓った。私たちは以前から交流はなかったものの、最初にコンタクトをとったときから、瞬発的に理解しあうことができた。私たちの世界へ向ける目線は同じであり、彼女は素晴らしい音楽家である以上に、人生の同志であると感じる」

 言葉と音をしっかりと握りしめ、地上にやってきたアナ・ティジュ。彼女の南からの視線は、きっと日本のリスナーの心を打つだろう。

「このアルバムに命を吹き込むため、共有するために、招いてくれるところにはどこへでも行きたい。日本でも『ベンゴ』が発売されたことに感謝している。私の友人たちでもある米国のヒップホップのアーティストたちは、日本でツアーしたこともあるんだけれど、リスナーが真摯で、ブラック・ミュージックやヒップホップ文化の背景にも理解があるって感動してたの。心からあなたたちの大地を訪れたいし、あなたたちの文化を知りたい。そして音楽と言葉によってもっと近づきたい」

Méta Méta - ele-king

 先日、アンビエント・ミュージックの作家で知られる畠山地平氏と、紙エレキング最新号のフットボール特集のためブラジルW杯について語り合った(特集には、尊敬する今福龍太氏の原稿、ブレイディ家のW杯座談会も掲載されている)。
 この1〜2年、〈スペック〉からのオピトープや自身のレーベル〈White Paddy Mountain〉が話題となっている畠山氏だが、そのキャリアは長く、2006年にシカゴの名門〈クランキー〉からデビュー・アルバムを出して以来、国内外のレーベルからコンスタントに作品を出し続けている。サンバを踊るわけでもなければ、DJをするわけでもなく、オアシスローゼズを熱唱するわけでもない氏は、ミニマル/アンビエントと呼べる作品を発表しながら、ボールを足であつかうこのゲームを愛しているのだ。
 僕は、フットボールといえば南米スタイル、ことブラジルのスタイルを崇拝している。速い人よりも、大きい人よりも、高く飛べる人よりも、足元がうまい人、フェイントがうまい人を尊敬している。プレミアに代表される、スピーディーでガチンコな現代プロ・フットボールの世界から取り残されているのだ。
 ……というような話を畠山氏と延々としたのだが、ふと思えば、今日ブラジル音楽というコーナーがCDショップにあるとしたらその多くはボサノヴァやら過去の遺産に占められている。ロックのコーナーでも何でもそうなのだが、僕自身もいまだにジーコ、ソクラテス、ファルカン、セレーゾの時代のブラジルから逃れられていないようにも思える。正直、いま現在のブラジル代表についてはよくわかっていないし、ネイマールにロナウジーニョほど熱狂できない自分がいることも知っている。ノスタルジーという病にかかっているのだろうか……そうかもしれない……(時代は変わった。日本代表から静岡人がいなくなり、長谷川健太がG大阪で指揮をとり、セレソンは俊足になった)。

 ブラジルのユース・カルチャーはいまどこで聴ける? 僕は、2010年の『Oi! A Nova Musica Brasileira!』というサンパウロの若い世代のバンドを集めたコンピレーションを聴いた。CDケースには「あなたはここに、ブラジルのソニック・ユースやクラフトワークを見つけるでしょう」などと記されたステッカーが貼ってある。
 その2枚組のなかにはルーカス・サンタナの曲も入っている。彼の音楽は、かつてコパカバーナで大学生が歌ったボサノヴァとは別の、世界中の情報が身近になった今世紀特有の混ざり方をしている。手法的には、今日の都市の若者ならではの折衷主義だが(たとえばUKならダブとUSアーバン・ミュージックを混ぜたりするところを、彼らはサンバ・ルーツと北半球の目新しい音楽を混合する。90年代末にもDJマーキーがいたよね)、しかしブラジル人の歌には、そのアクセントには、リズムには、ポルトガル語だろうと英語だろうと、独特の訛り、響き、うねりがあって、それはきっと永遠なのだと思わせる。ネイマールのなかにもペレは生きているはずだ。どこまでもひらべったい、フラッターなポストモダンを生きようと、失われないものがある。

 ルーカス・サンタナを出したレーベルの〈Mais Um Discos〉は、昨年、『Daora: Underground Sounds of Urban Brasil-Hip-Hop』なる興味深い題名の、ブラジル・ヒップホップのコンピレーションを出している。コンパイラーはザ・ルーツやプリンス・ポールとも共演経験があり、〈ニンジャ・チューン〉とも繋がりのあるというロドリゴ・ブランドンなる人物で、僕は未聴だが、このアルバムの最後に登場するるのが、メタ・メタである。本作『メタル・メタル』は彼らにとって最初のアルバムだ。

 これはもちろんへヴィメタルの作品ではない。メタ・メタは、歌手、サックス奏者、ギター奏者の3人組で、先日来日したトニー・アレンが参加しているくらいだから、アフロ・ラテンのリズムを意識している。ジャズといえばジャズだが、パンク・ジャズで、曲によってはラウンジ・リザーズ(ジョン・ルーリー、アート・リンゼーのギターで知られる80年代NYのジャズ・バンド)を思い出さずにはいられない。決してうるさくはないが、破壊的な演奏がときに突き刺さる。無調(フリー)な演奏も挿入される。サン・ラやザ・ストゥージズが好きで、またバンドはブレイディみかこさん推しのUKのポストパンク・ジャズ・バンド、メルト・ユアセルフ・ダウンへの共感を表明している。躍動感は高まり、情熱はほとばしる。衝動的でもなく、無闇にわめいたりもしないが、熱い演奏だ。そして、歪んでいても華麗だ。
 この美しいカオスに、現在のブラジルの社会状況がどこまで関わっているのかはわからない。が、無関係とは思えない。何か強い気持ちを感じるし、音楽的には、影響を受けたあらゆるもの──トン・ゼーからソニック・ユースまでもが吸収されている。が、こうしてどんなに混ざろうとも、彼らの音楽からブラジルらしさが失われることはない。高度な演奏技術を持っているギターは、まるで最高潮のセレソンを見ているようだ。ギターもサックスも、アフロサンバ/アフロビートと一体となって時空を駆け抜ける。そして僕は、休日の小学校の校庭で肩リフティングしている少年と会う。ブラジルW杯の僕のサウンドトラックは決まった。

弓J (S) - ele-king

サディスティックでキレキレなものからディープハウス寄りな漂えるものまで、テクノ、ハウスと混ぜてかけれるベース周辺を10曲。

3/29(土)はKABUTOくんをゲストに「S」を開催します。ぜひ!

女3人がテクノ、ハウス、ベースで攻める「S」@KOARAを不定期開催でオーガナイズ。
次回は3/29(sat)開催。ゲストはKABUTO(CABARET/LAIR)。

偶数月第1水曜「Radical Simplicity」@Bar Jam、偶数月第3火曜「SUPER DRY!」@KOARA、にレギュラー参加。
その他、都内各所にて活動中。

twitter | S blog

S的ベース周辺 10選 (2014.3.9)


1
Objekt - Fishbone - Objekt

2
Second Storey - Still Seas/Just Mortal - Houndstooth

3
Bass Clef - Stenaline Metranil Solar Flare - Punch Drunk

4
Pasteman & Tanka - Torino - 877 Records

5
Nubian Mindz - Only Lover - Teng

6
H-Sik - Sonic Rage - Black Acre

7
Jam City - Worst Illusion - Night Slugs

8
Jack Dixon & Rick Grant - Muted - Man Make Music

9
Aardvarck - Brawa - Skudge

10
Kloke - To The Rescue - Granholme

GET ACTION - ele-king

 ちょっと自分の話をする。
 ぼくは1975年生まれで、89年ごろにバンドブームの直撃を受けて音楽に興味を持った。ブームが去るのは早かった。坪内祐三『昭和の子供だ、君たちも』によれば90年3月までだったそうだ。ブームを支えた高校生たちが卒業すると同時にブームも終了したということで、ぼくが高校に上がるころにはもう終わっちゃっていたということである。
 ブルーハーツ(当時)の真島昌利は92年リリースのソロ・アルバム『Raw Life』発売時に「バンドブームが終わって、けっきょく日本はチャゲアスじゃねえか!」と発言している。よく言われることだが、あれは「バンドブーム」であって「ロックブーム」ではなかったのだ(功罪あって、収穫も多かったとは思いますが)。
 それでも自分はブームが去ってからもしつこくロックを聴きつづけ、とくにボアダムス界隈とパンク~ハードコアに夢中になる。なんといっても90年代のパンク・シーンはすごく盛り上がっていた。
 ぼくが大学時代に初めて結成したバンド(少年ナイフのコピーバンドでした・笑)のギタリスト(「T君」としておこう)とはもともとラモーンズやジョニー・サンダースが好きということで意気投合したのだが、その後はけっこう違う方向に進み、ぼくはノイズとかファストコア/パワーヴァイオレンスにどっぷりハマり、T君はガレージやパワーポップのほうに行ったのだった。そんな彼に教えてもらったバンドのひとつが、この映画で取り上げられたティーンジェネレイトだったのである。
 静岡出身のレコード・マニア、Finkが兄のFifiとともに結成したのが前身バンド、アメリカン・ソウル・スパイダーズ(ASS)。映画は兄弟が故郷を訪ねるところからはじまる。ひょっとしたらここに出てくるレコード屋やライヴハウスには野田編集長も通っていたのかな、とか、なんて思いながら観るのも楽しいかと。
 ストゥージズ~MC5的なガレージ・ハードロックを演奏するASSは、バンドブームの日本には居場所がなく、最初から海外のレーベルにデモテープを送り海外に演奏の場を求めていく。バンドブームとそのあとの空洞化したシーンにあって、90年代には続々と海外に活動の場を求めるバンドが増えていくのだが(ゼニゲバとかメルト・バナナとか)、なかでも彼らは周囲に先駆けていた部類だと思う。
 ヴォーカリストが活動拠点をアメリカに移すためにASSを脱退、バンドはそのままFinkがヴォーカルとなってTeengenerateと名前を変えるとともに、音楽性もよりシンプルなロックンロールへと変更。映画の中では「あんまり練習しなくてもいいような音楽」なんていう表現がされている。
 基本的にはパンク・バンドにカテゴライズされることの多い彼らだが、50年代のロカビリー、60年代ガレージ~プロト・パンク、ブリティッシュ・ビート~モッズ、NYパンクに77パンク等々と続くロックンロールの歴史すべてを取り込んだその音楽は、〈Crypt Records〉の名コンピ『Back From the Grave』シリーズなどに端を発するロウファイ(サンフランシスコ周辺などの奇天烈なバンド群を指すケースもあるが、この場合はガレージ・パンク系)のムーヴメントとも時を同じくし、世界的な評価を得てバンドの大躍進がはじまるのである。
 以後、映画のキャッチコピーにもあるように結成からわずか3年のあいだに「年間海外ツアーおよそ80本、総制作楽曲73曲、世界10か国から音源発売」――解散までのバンドの勢いはおそらく本人たちにもよくわからぬまま駆け抜けたという感じだろう。
 そして本作にも登場するThe5678'sやJackie & The Cedrics、ギターウルフ、Supersnazzといったバンドたちもけっして後を追ったというわけではなく、それぞれ独自に海外で熱い支持を得ており、それが逆輸入されるような形で国内のシーンも盛り上がっていくことになる。規模は小さかったかもしれないが、その熱さは「DOLL」の誌面などから傍目にも伝わっていた。
 結局バンドは93年から95年末までという非常に短い期間で突然の解散を迎える。「そんなに短かったんだ」という感じもするが、あの頃はいまと密度が違ったというか、1年がもっと長かったような気がする(自分が暇な大学生だったからかもしれないが)。ちなみに解散間際のライヴ映像には、最前列かぶりつきで盛り上がっているT君が映り込んでいて感慨深いものがありました。

 今回の映画を監督したのは映画館〈シアターN〉の支配人として数多くのロック・ドキュメンタリーを世に出してきた人物であり、さすがにツボをおさえた王道のドキュメンタリーに仕上がっている(もちろんバンドへの強烈な愛とリスペクトあってのものだ)。
 よくもまあこんな映像が残っていたな、というライヴ映像の数々はもちろんどれも超かっこいいのだけれど、やはり中心となるのはFinkとFifiの兄弟をはじめ、元メンバーたちのコメント。とくにベースのSammyのいい意味でくだけた発言の数々には試写室でも笑いが起きていた。
 そして周辺人物たちの人選もツボを押さえている。個人的にとくに重要だと思うのは、当時おそらく日本で唯一このシーンをしっかりと伝えていたライターの関口弘(少なくとも紙メディアでは、氏が「DOLL」や「クロスビート」に寄稿していたレビューがほぼ唯一の情報源だったんじゃなかろうか)。ギターウルフをはじめ、先述したような同時代・同シーンのバンドマンたち、それに個人的には高円寺のレコード店BASEの飯島氏がアメリカで目撃したエピソードがものすごくぐっときたので実際に観てみてください。ぼくはあそこでちょっと泣きました。

90年代半ばというインターネット普及前、レコード店が現場でありメディアだった時代である。ガレージもハードコアも毎週のように面白い7インチ・シングルがたくさんリリースされていて、お店に通うのがすごく楽しかったのだ。おかげでいまでもぼくは7インチというメディアがいちばん好きですね。というか実際いまでもレコード屋は現場でありメディアなのだけど、忘れられがちだ。
そして「90年代中盤のライヴハウスのおもしろさ」というのは個人的にも大事なテーマなのだが、その感じをすごくよく伝えるドキュメンタリーである。もっと大事なのは、ティーンジェネレイトはすでになくとも、Fifi率いるFirestarter、Fink率いるRaydiosという最高のロックンロール・バンドが健在だということ。ロックンロールというのは50年代から、ときにレッテルを貼りかえられながら連綿と続いているのである。

3/15(土)~3/28(金) 新宿シネマカリテにて連日21:00より
2週間限定レイトショー!

Photo by Masao Nakagami (TARGET EARTH)

幻のロック・バンド“TEEN GENERATE”のドキュメンタリー映画が2014年3月、公開! なんと監督は日本でもっとも多くのロック映画を上映しつつも2012年に閉館となった映画館、〈シアターN渋谷〉の元支配人・近藤順也さん。本当にかっこいい音楽を知ってもらいたいという思いだけで作られた映画『GET ACTION!!』が、今週末より〈新宿シネマカリテ〉にて限定レイトショー!

公式サイト https://www.get-action.net/

■映画『GET ACTION!!』公開記念イベントin新宿シネマカリテ
☆3/15(土) 初日舞台挨拶
ゲスト:Fink、Fifi、(以上TEENGENERATE)、近藤監督
☆3/18(火)「あの頃僕らは最前列にいた!」
ゲスト:TSUNEGLAM SAM(YOUNG PARISIAN)、近藤監督
☆3/21(金)「音楽ドキュメンタリーはどこへ行く!?」
ゲスト:樋口泰人(映画評論家、boid主宰)、川口潤(映像作家)、近藤監督
☆3/22(土)「90年代初めのUSツアーってこんな感じでした!」
ゲスト:TOMOKO(SUPERSNAZZ)、Fifi、近藤監督
☆3/27(木)「間もなく公開終了! ズバッと総括!」
ゲスト:Fifi、近藤監督

さらに、クロアチアで世界最速上映決定!
本作の公開発表と同時に欧米の様々な国から上映への問い合わせがあり、中でも最も早い問い合わせがあったのが、何とクロアチア! サッカー以外に馴染みの薄い国ではありますが、今年で8回目を迎える“FILM FESTIVAL DORF”から熱心な誘いを受けました。聞くところによるとプログラム・ディレクターが94年のヨーロッパ・ツアーでスロヴェニアにて彼らのライヴを観ているというTEENGENERATEの大ファン! 上映は現地時間3/8(土)の17:00~ということで世界最速上映となりました! 世界で最初の上映がクロアチアというのもTEENGENERATEらしいエピソードではないでしょうか!?

Sima Kim (Umor-Rex / Blwbck) - ele-king

韓国を拠点に活動するプロデューサー/音楽家。大学で音楽学を学び、2011年から音楽制作を開始。mu-nestからリリースされたコンピレーションアルバムでデビュー、以降はrural colours、umor-rex、ginjoha, soft corridor recordsと数多くのレーベルから作品をリリース。2012年には東京で初めてライブパフォーマンスを行う。これまでpost-classical, ambient, droneなどに影響を受けた楽曲を発表していたが、フランスのレーベルBLWBCKからリリースした最新EP『Ur Silhouette』は浮遊感のあるダークなシンセにボーカルやトラップなどの最新のビートを取り入れた意欲的な作品として注目を浴びる。今後、本国のみならず世界中での活躍が期待されるアーティストだ。
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Current Top 10


1
Kurtag / Jelek / ECM

2
芦川聡 / Still Park Piano Solo / Sound Process

3
Henri Dutilleux / Au Gre Des Ondes / ECM

4
Flying Lotus / Such A Square / self-release

5
Ametsub / Vestige For Wind Day / Nothings66

6
Balam Acab / Welcome / Tri Angle

7
Canooooopy / 骨蒔く真鍮馬 [boneprints of brasshorses] / Virgin Babylon

8
メトロノリ / 水面 / selfーrelease

9
Eadonmm / Mirage / Day Trippers Records

10
The Salovers / Sad Girl / TAIYO

カタコト - ele-king

 カタコトって何者? 快速東京のメンバーがいるとかいないとか?
 YANOSHITの言葉を借りれば「♪カタコトのカは快調~/カタコトのタは体調/カタコトのコは好調~/カタコトのトはトウチョウ~?」(“Man In Da Mirror”)とのことで、あるいは『bounce』誌のインタヴューによれば「カタコトっていうのは概念なんですよね。いわば宗教……ですよね」(MARUCOM)とのこと。ううん? まあ彼らがそう言うのであればそういうことなのだろう……。

 とにかく。カタコト、超待望のファースト・アルバムである『HISTORY OF K.T.』をプレイすれば、このヤングでギャングなボーイズが何者かなんてことはどうでもよくなってしまう。『HISTORY OF K.T.』はとんでもなくゴキゲンでグルーヴィで──もっとも重要なことに、底抜けに楽天的だ。
 だってこのご時世に「♪安心なのさ/安心なのさ/安心なのさ/安心なのさ~」(“からあげのうた”)なんてだれが歌えるのだろう(とはいえもちろん「こんなループに乗せて歌う日本の平和な音楽」というアイロニカルな一節は無視すべきではない)? ふざけたおしすぎて意味不明で笑かしてくれる謎のブックレットやスキットにはいったいどんな意味が? ……つまり、カタコトにしか表現できないへんてこな抜けの良さ=大衆性が、アルバムにはぎゅうぎゅうに詰まっている。
 元気の良さとふざけっぷりはティーンだった頃のオッド・フューチャーの悪ガキどもと同じくらいだ。でもカタコトは露悪的な猟奇趣味じゃない。というよりは、橋元さんが書いているように(https://www.ele-king.net/review/live/003305/)「コミカルな妖怪たち」あるいはオバケみたいな「はっきりした正体不明さ」でもって肯定的な開放感をめいっぱい呼び込んでいる。

 “Man In Da Mirror”にはビースティ・ボーイズとB級ホラー映画が、VIDEOTAPEMUSICを迎えた“リュックサックパワーズ”にはローファイと裏山の冒険が、“G.C.P”にはファンクとパンクが、“魔力”にはサイケデリックと超能力が、“からあげのうた”には童謡が、“Starship Troopers”にはアシッド・フォークと昆虫採集が、“ピアノ教室の悪魔”には学校の怪談とゲームボーイがそれぞれひしめきあっている。そして、どの曲にも映画と食べ物とヒップホップへの愛が詰まっている。それは、何かの間違いでそういったものをぜんぶ洗濯機に投げ込んで回してしまって、ぐっちゃぐちゃのかっちかちのぴっかぴかの一塊の何かとして取り出されたような、ストレンジで強引なラップ・ロックとして形成されている。

 もちろん僕らをそわそわさせるあの名曲“まだ夏じゃない”も、ゴキゲンでキュートなお宝探し冒険譚“Gooonys”もパワーアップして再録されている。とくに“Gooonys”は最高だ。カタコトというバンドをよく表している。
 YANOSHITはここで「心が未だにTeen-age/もしかしたらと思った大人が大冒険」なんてヴァースをぶちかましていて、RESQUE-Dのフックは「鎖繋がれてるモンスター」「悪餓鬼6人集めて映画にすれば大人が感動する」といった具合だが、果たしてカタコトはティーネイジャーの心を持った大人なのか、それとも「悪餓鬼」なのか、はたまた鎖に繋がれた「モンスター」なのか? もしも「モンスター」だったとしたら大変だ。いまに鎖をぶっちぎって僕らに襲いかかってくるかもしれない……。

 『HISTORY OF K.T.』は愉快痛快な一撃だ。スチャダラパーとRIP SLYMEの王座を奪うのは、もしかしてカタコトなんじゃないの? そんなことまで想像させるだけのポップネスとユーモアがきらきらと炸裂している。

“玉之丞ウィンク”に気をつけろ! - ele-king

劇場版も絶賛公開中。ドラマ『猫侍』に惚れ込んだ岡田屋鉄蔵が、“浪人斑目久太郎(北村一輝)”と“怪猫玉之丞”を活写する! 猫好きの目と筆は本作をどうとらえるのか。そして、この北村一輝が……すごい!

岡田屋鉄蔵
2007年「タンゴの男」(宙出版)でデビュー。2010年奇譚時代劇『千』(白泉社)発表後、時代劇ジャンルに活動の場を広げる。2011年、歌川国芳一門を題材にした『ひらひら国芳一門浮世譚』(太田出版)を発表、文化庁メディア芸術祭推薦作品に選出され評判を得る。現在『口入屋兇次』(集英社)『無尽-伊庭八郎伝』(少年画報社)『むつのはな』(太田出版)を同時連載中

 幕末の江戸、主人公である元加賀藩剣術指南役斑目久太郎は、剣の道をひたすら追い求め、その凄まじい太刀筋から「まだら鬼」の異名を取る剣豪であった。ゆえあって役を解かれ、いまは浪人となり江戸で仕官先を探す毎日。しかし戦国時代ならいざ知らず、泰平の世にあって剣の腕だけで雇い入れる藩もなく。ツテもコネもない上に愛想笑いの一つもできない愚直で無骨ですこぶる強面な斑目久太郎。必死の就職活動も空しく、気づけば絵に描いたような貧乏浪人に。内職でもして当座をしのげばよいものの元剣術指南役のプライドが邪魔をする。まるでリストラされた潰しの利かないサラリーマン。ああ生きるのに不器用な男の悲哀はいつの世でも変わらない。

 さて、斑目は困っていた。半年溜めた家賃を今月中に払わなければ長屋を出て行ってもらうと大家から宣告されていたのだ。いよいよ住む家すら無くなる危機に。無宿人となっては洒落にならん、なんとか金を調達しなければと焦る斑目。そこへ奇妙な依頼が舞い込む。依頼人は大店の番頭佐吉と名乗る男。店の主人与左衛門が玉之丞と言う魔性の猫に取り付かれ魂を抜き取られている、主人を助けるためにこの猫を成敗してほしいと言うのだ。猫を斬るなど侍のやることではないと断る斑目に、相手は化猫、ただの猫にあらず、立派な侍の仕事だと佐吉は必死に食い下がる。尋常ではない佐吉の様子、加えて報酬は金三両。気乗りはしないが金のためと斑目は化猫退治を引き受ける。佐吉の手引きで深夜の大店に忍び込み、化猫玉之丞の部屋へと向かう。豪奢な部屋の真ん中に絹の座布団で鎮座まします玉之丞、後ろからエイと斬り込むその瞬間、玉之丞が振り向いた。

 大きく愛らしい目が斑目を捉え、鈴のように軽やかにニャーンと一声。
 斑目の動きが止まる。

©岡田屋鉄蔵

 ……というところまでをYoutubeの予告動画で観た。昨今珍しい娯楽時代劇。加えて北村一輝の浪人姿。とどめは主演の玉之丞。これは観なければならんドラマだ、とゴーストが囁いた。直感とも言う。第六感か。何でもいい。ともかく時代劇&猫好きのアンテナにビンビンと引っ掛かったのだ。だがまだ油断はならない。「萌え」とか言うてるしな。猫が歩く度に「ぷきゅっぷきゅっ」とか妙な効果音ついたりしないとも限らん。甲高い声で人語喋るやも知れん。おまけに語尾が「~にゃん」だったりしたら目も当てられん。正直わたしはその手の動物ドラマが苦手なのだ。とくに猫はいかん。猫は猫のままでいい。愛らしさを強調する必要などないのだ。すでに完璧なものに何かを足すのは蛇足というものだ。猫の考えていることなど人にゃ分からんし分からなくていいのだ。妙な効果で可愛いアピールされたらいっそ白ける。どうかそれだけは止めてくれ。重度の猫好きなら誰もが思うであろうが普通の人にはどうでもいい期待と不安を抱いて第一話放映を待った。

 放映初日、まずオープニングで「おお!」と思った。格好いい。歌詞の土臭さ、そしてイントロに使われているズルナ(なのだろうか?)の独特な響きが、現代的でありながら地に足のついた演出を感じさせ時代劇とうまく噛み合っている。これぞ娯楽時代劇! という感じだ。そして途中途中で挟まれる玉之丞&斑目画像の犯罪的な愛らしさ。この時点で床を転げまわった。期待が高まる。高まり、高まって、そのままエンディングまで一気に視聴。そして確信した。これは猫好きによる猫好きのためのドラマだ。

©岡田屋鉄蔵

 懸念材料だったアテレコも効果音もなく、画面の玉之丞は気侭にフリーダム。自然体でありながらどのシーンもこれでもかと猫好きのツボを突いてくる。昔、サーカスの調教師から猫を調教するのは相当難しいと聞いたことがある。とすると、さらっと流しているあのカットもこのカットも現場の努力と忍耐のたまものか。特筆したいのはオープニングと第2話に出てくる玉之丞ウィンク。抱き上げた斑目と目があった時に玉之丞がゆっくりとウィンクするこのカット。一体どうやって撮ったのか。奇跡としか言いようがない。画面の前で魂を抜かれ与左衛門化した視聴者はわたしだけではないはずだ。たまらぬ。

 全話を通して、猫飼いなら頷かずにはいられない猫あるある満載なのも制作側の猫愛を感じ「分かってらっしゃる…!」と言わざるを得ない。布団で小便、留守中の悪戯、蚤の洗礼、口に合わなければ腹ペコでも食わないグルメ舌……などなど、斑目が玉之丞に翻弄される姿にいちいち「あるある」と頬が緩む。ちなみに玉之丞は三猫一役で撮っているそうで、あなご(メイン、くりくりの大きなブルー・グリーンの瞳)、さくら(鼻筋が通ったゴールドの瞳)、大人さくら(最年長、動じない貫禄演技とまろやかボディ)がそれぞれ場面にあった役をこなしているとか。どの場面がどの猫なのかを当てるという楽しみ方もできる。

©岡田屋鉄蔵

 さて、ココまで書いて猫語りしかしていないことに気づいた。内容についても触れておこう。コメディベースではあるが、コメディだからという甘えはなく至極真面目に作られた作品だ。何より制作側の熱意と情熱を感じさせ観ていてわくわくする。「萌え」が売りの作品は少しでも制作側の「こういうの好きなんだろ? ほらヨ」的な傲慢さが見えると萎えてしまうのだが、猫侍は最後まで楽しめた。面白いものを作ろう、楽しませようという制作側の熱気と遊び心が、オープニング、エンディング、予告、アイキャッチにいたるまで行き渡っている。

 時折差し込まれる現代的要素や横文字は計算されたギャグなので素直にクスリと笑えるし、そもそも娯楽時代劇に「時代考証ガー」などと突っ込みを入れるのは野暮というもの。視聴者に斑目の心の声が聞こえるという手法は漫画的だが嫌いではない。時代劇では珍しいので最初は驚いたが慣れると斑目の意外と怖がりで俗っぽい心の声が楽しくなる。同時に、元剣術指南役の凄腕剣豪という遠い存在が、「うちの駄目なお父さん」くらい身近な存在になりぐっと感情移入しやすくなるのだ。悪を裁く闇のヒーローがいるでもなく、将軍のご落胤が暴れるわけでも陰謀渦巻くわけでもなく、極悪人も聖人君子も出てこない。登場するキャラクターは誰もが人間的で当たり前で、地に足がついている。「基本的にみな根はいい奴」というファンタジーを嫌味なく描いているのは素晴らしいと思う。最終的にはどのキャラクターも嫌いになれないのだ。斑目を執拗に狙う水責めの政や、仕官の道を故意に閉ざしたかつてのライバル内藤勘兵衛、さらには不良武士蜂谷孫三郎ですら、最後はなんだか憎めない。トラブルを巻き起こした番頭佐吉も気持ち悪い男だな……だったのが「お前、しっかり幸せになれよ!」とエールを送りたい相手になっている(ところでこの佐吉役水澤紳吾の演技がべらぼうに上手い、視聴時にはぜひ注目していただきたい。最終3話はその迫真の演技にぐいぐい引き込まれるだろう)。

©岡田屋鉄蔵

 気侭な玉之丞と生活するうちに、武士として父として男して「あらねば」「あるべきだ」にがんじがらめだった斑目が、憑き物が落ちたようにホッと肩の力を抜けるようになった。観る人にも同じように心地よい脱力と爽やかな癒しを与えてくれる、それが猫侍ワールドだ。1話20分程度という長さもいい。現代社会の荒波を泳ぎ疲れた夜はちょっとだけ夜更かしして猫侍の世界に癒されてみてはどうだろう。第1話で嵌った人はその週末は空けておくといいかもしれない。我慢できず全話一気視聴からのリピート再生ルートをたどると思われる。

©岡田屋鉄蔵

 放映終了からペットロスならぬ玉之丞ロスに悩まされた人にとっては、待ちに待ったDVD発売。(BDが出なかったのが返す返すも残念だがDVDの売り上げ次第ではまだ出るチャンスが残っていると信じている)玉之丞関連書籍も続々発売。猫好きならば手に入れて損はない。いますぐ本屋へGOだ。そして今月ついに劇場版も公開された。ドラマ版に負けない素晴らしいキャスト、音楽、そして大画面の玉之丞&斑目! 萌えるもよし、癒されるもよし。こちらもリピート間違いないので手前の懐が少々不安だが気にしない!


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猫侍

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劇場版も現在公開中

全国15局ネット、BSフジ、ひかりTV、スターキャットなどで放送中の、猫好き、動物好きの枠を超えて評判を呼んでいる連続ドラマ『猫侍』が、全編撮り下ろしのオリジナル・ストーリーで映画化。絶賛公開中だ。
主演は、たしかな演技力と強烈な個性を併せ持つ実力派・北村一輝。映画版オリジナルのキャストとしてヒロインに蓮佛美沙子、敵役に寺脇康文を配し、〈EDO WONDERLAND日光江戸村〉の全面協力によりリアリティ溢れる日本最大級の江戸の街並みの中で全編を撮影。『ねこタクシー』『幼獣マメシバ』『くろねこルーシー』の製作チームが“笑い”と“癒し”で贈る剣客ムービー。

公式サイト 
https://nekozamurai.info/


R.I.P. Robert Ashley - ele-king

 去る3月3日、現代音楽家であり、電子音楽の開拓者のひとり、ロバート・アシュリーが肝硬変のために他界した。
 1930年、ミシガン州アナーバーに生まれたロバート・アシュリーは、大学卒業後、ミシガン大学スピーチ研究所(音響心理学と文化的なスピーチ・パターン)に勤務しながら、1958年にゴードン・ムンマと電子音楽スタジオを共同創立。機材が市販される以前から、エレクトロニクスに作曲の可能性を見たふたりは、機材環境を自分たちの手で作りあげ、実験した。1969年にはサンフランシスコ・テープ・ミュージックセンターの責任者に就任、1970年代は現代音楽のためのミルズ・カレッジ・センターで教鞭をとっている。
 
 昨今、声を機械で変調することはごく普通におこなわれているが、ロバート・アシュリーは音声合成を試みた先駆者として知られている。無意識の言語と意識不明状態への関心を膨らませた彼が1979年に発表した『Autmatic Writing』は、もっとも有名な作品のひとつで、言葉と電子音が織りなす実に奇妙な音楽だ。無意識に呟かれる言葉、フランス語の朗読(トゥーレット障害に関する論文)、ムーグ・シンセサイザーの音、オルガン──これらのミックスは、極限的なフリースタイルだったと言えるかもしれない。リル・Bの催眠的ラップの青写真かもしれない。スティーヴ・ステイプルトン(ナース・ウィズ・ウーンド)がLSDを摂取してこの作品に感動した話は有名で、NHKコーヘイも大好きなアルバムとして『Autmatic Writing』を挙げているが、しかしロバート・アシュリーの実験が本当に再評価されるにはもう少し時間が必要なのだろう。合掌。(野田努)

Bibio - ele-king

 静かに雨が降っている。道の脇にふとしゃがみこんで草むらの水たまりを覗き込めば、透き通った水のなかを緑の色彩が揺れている。雨粒が歌っている……。
 子どものころに幾度となく過ごしたそんな時間の贅沢さを、ビビオの音楽によってふと思い起こすことがある。スティーヴン・ウィルキンソンことビビオの最高傑作がいまでも『アンビヴァレンス・アヴェニュー』であるのは、あのアルバムで彼の風景画家としての才能がもっとも発揮されているからだ。フィールド・レコーディングも駆使して描写されたのは、街や身近な自然がざわめく音と、それを感じ取る心の反響音であった。IDMやヒップホップのビートと実験主義の影響を往復しながらビビオは、しかしあくまでもフォーキーな音質でもって柔和に、クロード・モネのように目に映る色彩の変化を丹念に捕らえてきたように思える。そういう意味でエレクトロニックな意匠を強調していた『マインド・ボケー』は、サウンド・クリエイションとしての冒険はじゅうぶんに認めた上で、しかし、少しばかり「らしくない」……無理をした作品だったと言いたくなってしまう。

 そうした声が多かったのかは知らないが、自分の名を冠したその次作『シルヴァー・ウィルキンソン』は、ウィルキンソンらしい徴がよく出た、真新しくはないけれどもバランスの取れたアルバムだったと言えよう。よりソング・オリエンテッドな、フォーキーなビビオが好きなリスナーには“ア・トゥ・ア・ルール”が用意されていたし、ヒップホップよりのファンキーなビートを鳴らすビビオがお気に入りのファンには“ユー”がちゃんとあった。そしてそんななかでも、アルバムを貫いているのは生音を効かせた心地よい耳障りであり、何よりも、彼が作る音が好きな誰もが微笑むその牧歌性であった。
 だから本EP『ザ・グリーンEP』のリード曲を、『シルヴァー・ウィルキンソン』のなかでももっともアンニュイな風合いの“ダイ・ザ・ウォーター・グリーン”としたのはやや意外な選択である。それ以外の5曲(日本盤にはボーナス・トラックが加えて1曲用意されている)は古いトラックから選んで再録したそうだが、結果として非常にフォーキーで、そしてメロウなムードで統一されている。“ダイ・ザ・ウォーター・グリーン”……「水を緑に染める」は、雨の日に自宅のガレージで録音したとわざわざ説明されているが、そんな雨天の薄暗い情景がありありと浮かび上がってくるようなEPである。牧歌的だと言えなくもないが、そう言い切ってしまうにはあまりに陰影に富んでいる。その部分では〈マッシュ〉時代を彷彿とさせる部分もあるが単純にそれだけでもなく、たとえば『シルヴァー・ウィルキンソン』収録曲の“ウルフ”の一発録りヴァージョンという“カーボン・ウルフ”はアンビエント/ドローンに近接しているし、“ア・サウザンド・シラブルス”のはじめ2分のオーケストレーションは現代音楽風ですらあり、僕はティム・ヘッカーを連想したほどだ(これがベスト・トラックでしょう)。ラストの“ザ・スピニー・ヴュー・オブ・ヒンクレー・ポイント”の温かな物悲しさなども、ビビオとしては異質な部類ではないか。
 これは『シルヴァー・ウィルキンソン』よりも聴く時間を限定する小さな作品であるように僕には感じられ、だから何もしたくない日に……もしそんな時間が許されるのならば、ゆっくりと沈み込みたいレコードである。春の訪れが遠く思えるこんな寒い夜にすら、生暖かい雨の日の心地よい倦怠を呼び起こしてくれるだろう。

Nicolas Bernier - ele-king

 2013年、世界的なメディア・アートの祭典〈アルス・エレクトロニカ〉において「デジタル・ミュージックス・アンド・サウンド・アート」を受賞したアーティストがモントリオールのニコラス・ベルニエである。作品の名は「フリークエンシーズ (a)」。「音叉」の震動を音響的に拡張させる装置/テクノロジーを用いたサウンド・アートだ。

 音叉の物質的な震動によって生成する響きは、既存の(90年代後半以降、PCのHD内での音色生成・エディットや、エラーによる偶然性の活用=グリッチを用いた)ポスト・デジタル・ミュージック作品と似て非なる魅力の音を生み出すことに成功している。氷のようなクールなビジュアルと、透明なガラスに反射する光のようなクリスタルな音の生成と持続は、観るものに静かな衝撃を与えるだろう。インターネットでダイジェスト映像が公開されているので、そちらをご覧になっていただきたい。この装置の概要がわかるはずだ。


frequencies (a) | nicolas bernier from Nicolas Bernier

 本盤は「フリークエンシーズ (a)」の音源化である。リリースはリチャード・シェルティエが主宰するサウンド・アート・レーベル〈ライン〉。タイトルに「フラグメンツ」とついていることからも、実際のインスタレーションの音をエディットしたものと思われる。

 ニコラ・ベルニエは、この作品を「純と不純の二分法に関するシリーズ」と述べている。この「純」とは何か。音叉によって生まれる響きのことか。事実、彼は「音叉は純粋な正弦波に近いサウンドを生成するオブジェクト」と語ってもいる。では「不純」とは何か。それが人間によるエディット・コンポジション、もしくはコンピューターによるフリーケンシーな音色の生成のことであろうか。純=音叉とアナログ、不純=コントロールとマシンとは、いささか粗雑な解釈だろうが、ひとつの補助線を引くことくらいはできるだろう(それにしても音叉という本来、調律を行う器具を用いて、このような非平均律的なノイズを生み出すというコンセプトがユニークだ)。

 私見だが、「純と不純の二分法」という概念は、本シリーズ作品のテーマでもあるようにも思える。そう「フリークエンシーズ」はシリーズ作品なのだ。アルス・エレクトロニカ受賞作品「フリークエンシーズ (a)」は、音叉による震動を音に変換する独自のシステムを用いたインスタレーション/サウンド・アート作品。そしてシリーズ2作め「フリークエンシーズ(シンセティック・バージョン)」は、同じシステムを用いたラップトップによるデジタル・ミュージック作品。こちらも動画がある。


frequencies (synthetic variations) | nicolas bernier from Nicolas Bernier

 本シリーズの音源化は、まずは、2013年に、フランスの実験音楽レーベル〈エントラクト〉から「フリークエンシーズ(シンセティック・バージョン)」がリリースされたことにはじまる。〈ラスター・ノトン〉的な律動感に満ちたトラックばかりの傑作で、コンピューター制御されたトラックが脳髄をバキバキに刺激していくアディクティヴなアルバムである。そして2014年、〈ライン〉から『フリークエンシーズ (a / フラグメンツ)』も発表された。これでまだ発表されていない第3部を除き、第1部「(a)」と第2部「(シンセティック・バージョン)」が音盤/音源化されたことになる。

 個人的には、ニコラス・ベルニエの新作が〈ライン〉から出るというアナウンスを知ったときは軽い驚きを感じたものだが、同時に納得もした。ベルニエは〈ホーム・ノーマル〉などからポストクラシカル/アンビエントな、可憐なアルバム『Music For A Piano / Music For A Book』(2012)などもリリースしていたので、〈ライン〉からのリリースは意外に感じるものの、彼のライヴやインスタレーションの動画を観ると、エクスペリメンタルな楽曲をコンスタントに発表していたし(こちらにいくつかの動画がまとまっている。https://vimeo.com/nicolasbernier)、そのうえ13年のアルス・エレクトロニカ受賞が追い風にもなったであろう。さらに〈エントラクト〉からの本シリーズの別バージョン音源の完成度の高さを考えると、〈ライン〉のラインナップに加わることは納得がいく。そして〈ライン〉としても、そのレーベル・カラーに大きな変革をもたらす重要なアルバムになるのではないかとも思えるのだ。

 では〈ライン〉的なるものとは何か。それは音響の建築的(アーキテクチャー)設計によるサウンド/アートの再設定というものではなかったか。聴こえないほどの微音=震えを、建築的な音の構造論から設定し、新たな音環境を構築すること。それがレーベル初期の思想であったように思われる。それらは主宰リチャード・シェルティエらの作品のようにロウワーケース・サウンドなどと呼ばれもした。

 そのブームのようなものが去った後も〈ライン〉はいくつもの方法論を模索しながら、やはり「音/響のアーキテクト的な再設定の思考」を進めてきた。00年代中盤以降〈ライン〉はもはや微音量にこだわってはいなかった。彼らが、その時期以降に実践してきたことは、「音楽的ではないドローン」の環境的・美学的な音響生成であったように思う。12kが「音楽的なドローン」=アンビエントへと向かっていたこととは対照的であった。

 しかしこの2014年最初のリリースにおいて、〈ライン〉は、非音楽的ドローンをエステティックなレベルに持っていくという一連の実験・実践とは異なるコンセプトをプレゼンテーションしてきたように思う。それはどのような変化なのか。一言で言うならば、音の物質的な震動を再生成することではないか。同時リリースされたディスクが、環境音からほとんど鳴っていないような静寂と震えを生み出すフランシスコ・ロペスの音源データ(7時間分)を収録したクロニクルDVDであったことも示唆的だ。そう、2014年、〈ライン〉は、音の「震動」に焦点を当ててきた。

 となると、ベルニエのこの作品のどこが「震動」的なのか。いうまでもなく、音叉の震えから純粋な電子音響を生成しているところである。この作品は、一聴したところ透明な電子音が持続と変化と切断の中でコンポジションされるポスト・デジタル・ミュージック作品に聴こえるし、たしかに、コンピューターによって制御されてもいるのだが、しかし、その音は、音叉とその装置の接触による物質的な震動なのだ。それこそが、ほか(の電子音響作品)にはない、新しさに思える。事実、本盤の響きをよく聴いてみると、そのトラックを満たしている震動には、微細なアナログ感があり、それがフェティッシュな音の快楽を生んでいる。デジタルな音の生成とアナログで物質的な音の震動の交錯とでもいうべきか。

 アルバムは33分程の1トラックだが、音は変化を繰り返すので飽きることはない。冒頭からガラスを弾くような響きが間をおいて繰り返され、残響から別の音の層が空気のように生まれ出ていく。さらに打撃音が持続の中に打ち込まれ、光のようなアンビエンスの層と融合する。透明な打撃と持続。微細なノイズの粒。微かなノイズから生まれるクリッキーなリズム。パチパチとした細かいリズムに、ガラスのカーテンのような音の交錯。それらはまたも非反復的な打撃音ともに消え去っていくのだが、そこからさらに氷のように冷たく透明なサウンド・カーテンやマイクロ・ノイズが幾層にも生まれ出る……。

 個人的には、やはり9分から12分あたりで展開されるクリッキーなリズムと、砂時計のような微細なノイズと空間を揺らすような透明な音が交錯するあたりが好みだが、全33分、どの瞬間も、透きとおっていて、美しい緊張感がある。そのクリスタルな音の持続は電子音楽と非電子音楽の間を越境し、音の磁場・震動・環境は、マシニックな緊張と官能性の中で見事に刷新されている。まさに2014年、ポスト・デジタル・ミュージックの最前線。必聴のアルバムである。

 最後になったが、ニコラ・ベルニエは、ボールドというインプロ・ノイズ・ユニットとしても活動しており、昨年はカセット作品『FMV/SHR』を発表した。こちらもインターネットにパフォーマンス動画がアップされている。まるでボードゲームをプレイするかのように3人向かい合ってのラップトップでパフォーマンス。ユニーク極まりない。


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