Home > Columns > R.I.P. Robert Ashley- ロバート・アシュリー(1930 - 2014)
去る3月3日、現代音楽家であり、電子音楽の開拓者のひとり、ロバート・アシュリーが肝硬変のために他界した。
1930年、ミシガン州アナーバーに生まれたロバート・アシュリーは、大学卒業後、ミシガン大学スピーチ研究所(音響心理学と文化的なスピーチ・パターン)に勤務しながら、1958年にゴードン・ムンマと電子音楽スタジオを共同創立。機材が市販される以前から、エレクトロニクスに作曲の可能性を見たふたりは、機材環境を自分たちの手で作りあげ、実験した。1969年にはサンフランシスコ・テープ・ミュージックセンターの責任者に就任、1970年代は現代音楽のためのミルズ・カレッジ・センターで教鞭をとっている。
昨今、声を機械で変調することはごく普通におこなわれているが、ロバート・アシュリーは音声合成を試みた先駆者として知られている。無意識の言語と意識不明状態への関心を膨らませた彼が1979年に発表した『Autmatic Writing』は、もっとも有名な作品のひとつで、言葉と電子音が織りなす実に奇妙な音楽だ。無意識に呟かれる言葉、フランス語の朗読(トゥーレット障害に関する論文)、ムーグ・シンセサイザーの音、オルガン──これらのミックスは、極限的なフリースタイルだったと言えるかもしれない。リル・Bの催眠的ラップの青写真かもしれない。スティーヴ・ステイプルトン(ナース・ウィズ・ウーンド)がLSDを摂取してこの作品に感動した話は有名で、NHKコーヘイも大好きなアルバムとして『Autmatic Writing』を挙げているが、しかしロバート・アシュリーの実験が本当に再評価されるにはもう少し時間が必要なのだろう。合掌。(野田努)