「Dom」と一致するもの

Sapphire Slows First US Tour Diary! - ele-king

昨年末ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉から12インチ・シングルでインターナショナル・デビューを果たした東京在住のサファイア・スロウズ。彼女がele-king読者のために去る3月のツアー日記を書いてくれました。現在のUSインディの感じがそれとなく伝わると思います。それはどうぞ!!!


Sapphire Slows
True Breath

Not Not Fun

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 こんにちは。Sapphire Slowsです。

 今年の3月に初めてのUSツアーで、ロサンゼルスとサンフランシスコとテキサスのSXSWに二週間かけて行ってきたんですが、そのとき書いていた日記を読んでもらうことになりました。(恥ずかしいけど!)

 最初にアメリカに行くと決めたのは去年の10月くらいで、〈Not Not Fun〉のブリットからSXSWに誘われたのがきっかけです。アメリカでツアーするなんて最初は想像もできなかったけど、レーベルの人たちやアーティストのみんなに会いたい! という気持ちが強くて、何はともあれ行ってみることにしました。少し時間が経ってしまったけど、いろんなことがあって最高だったので、とにかく、この日記を読んで向こうのシーンについて少しでも知ってもらえればなぁと思います。


ようやく対面した〈100%Silk〉のアマンダは、会うまではものすごくぶっ飛んでるんじゃないかと思ってたけど、実際に会ってみると小さくて華奢で、ものすごくかわいらしかった。

3/5
ロサンゼルス初日

 朝8時、LAに到着。LAでは車がないと不便すぎるので、すぐに空港の近くでレンタカーを借りて、アメリカで使える携帯電話も購入。とりあえず〈Not Not Fun〉のアマンダとブリット、その他にも会う予定にしてたアーティストたちに連絡をいれて、ハリウッド近くのステイ先にチェックイン。ランチを食べたあとは、LAで絶対行こうと思ってたWELTENBUERGERへ。ここはアマンダおすすめの服屋さんで、ヨーロッパやいろんな国のデザイナーの服やアクセサリーをおいてるセレクトショップ。二階建ての小さなお店だけど、本当にセンスがよくてとってもいい感じ。店内には〈100%Silk〉のレコードも置いてある。私はそこでピアスと黒いドレスを買って、そのあともショッピングや視察のために街中をブラブラ。

 夜はDUNESのライヴへ。他にも何組かやってたけどDUNESが一番よかったな。ギター/ヴォーカルはショートヘアの小さくて可愛い女の人、ベースは普通の男の人。そしてドラムの女の人の叩き方がエモーショナルで超よかった。そのあとは近くのビアバーで飲んで帰った。1日目は当たり前だけど見るものすべてがただおもしろくて新鮮でアメリカにきたなーという気分を始終満喫。ただの観光客。


DUNESのライヴ

3/6
ロサンゼルス2日目。 NNF & 〈100%Silk〉 Night @ Little Temple

 この日がアメリカで最初のライヴの日。というか正真正銘初めてのライヴ。ああとうとうきてしまったこの日がという感じで朝から緊張しまくりだったけど、夜まで時間があったのでPuro InstinctのPiperに会いにいった。Piperがたまに働いてるらしいヴィンテージのインテリアショップへ。彼女は女の子らしい感じだけどなんていうか強そうで、でもすごく優しくて、そしてとてもよくしゃべる。最近のPuroの話をいろいろしてくれた。いろんな人と共同作業しながら新しい音源を作っていて、次の音源は打ち込みっぽいこととか、もっと実験的な部分もあるのだとか。楽しみ!

 夜になって、「〈100%Silk〉 Night」の会場、Santa MonicaにあるLittle Templeへ。着いたらまだ誰もいなくて、どきどきしながら待っているとメガネで背の高い男の人がやってきて、「君、Sapphire Slows?」と話しかけてきた。誰だろうと思ったらLeechのブライアンだった。「僕も今日プレイするんだ、よろしくね!」「あ、よ、よろしく!」そのうちにみんなぞくぞくとやってきて会場に入る。行くまで知らなかったけど一階がライヴフロアで二階は〈dublab〉のオフィスと放送スタジオになっていた。すぐに〈dublab〉のDJでもあるSuzanne KraftのDiegoとSFV AcidのZaneがレコードをまわしはじめて、PAの用意ができるまでみんなでシャンパンをあけてわいわい。遊びにきてくれたPiperもすでにアガっている。なんだか素敵な部室みたい! そしてようやく対面した〈100%Silk〉のアマンダは、会うまではものすごくぶっ飛んでるんじゃないかと思ってたけど、実際に会ってみると小さくて華奢で、ものすごくかわいらしかった。「ハローキヌコ! やっと会えて本当に嬉しいわ!」私は皆に会えた感動でアワアワしつつ、「こ、これは夢じゃないぞ!」と自分を落ち着かせるのに必死......。


dublabのスタジオで。左からPuro InstinctのPiper, Austin, Suzanne KraftのDiego.

 この日、最初のアクトはソロアーティストのLeech。LeechといえばMiracles ClubのHoneyたちがやってる〈Ecstasy Records〉界隈の人だと思っていたけど、〈100%Silk〉ともしっかり繋がりがあったみたい。私の好みド直球の音で、最初からやられた。次のPharaohsは意外にフィジカルで、数台のアナログシンセやサックスなどを使って本格的に演奏していた。グルービー!転換の間はSuzanne KraftとSFV Acidが始終いい感じのDJをしてる。そしてやってきたLA Vampires、やばい! Amandaのダンスは神懸かっていて、音は最近のOcto Octaとのコラボレーションの影響もあるのか、過去のレコードと違ってかなりビートもしっかりした、ハイファイな感じ。

 私がライヴをしているあいだも、お客さんはあったかくて皆盛り上がってくれた。私はここに来るまでインターネットでしかフィードバックがなかったから、正直自分の音楽がちゃんと受け入れられるのか不安だったけど、たくさん反応があってなんだかすごくほっとした。ほっとしすぎて泣きそうになりながら二階で機材を片付けていると、SFV AcidのZaneがライヴよかったよと話しかけてくれた。そして色々話しているうちに「LAにいるあいだ暇があったらうちで一緒にレコーディングしよう!」という流れに。ワーイ。

 それからPeaking Lightsの後半半分くらいを見た。彼らはライヴに巨大なカセットデッキを使っていて、この日はいきなりテープが再生できなくなったり機材のトラブルも多かった。でもそれも含めアナログっぽさならではの良さがあってとても素敵だった。パーティが終わり、最高だった2日目も終了。


LA Vampires @ Little Temple

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家のなかは本とカセットとレコードだらけで、(Night Peopleのカセットが全部ある!)私が想像してた通り、というかそれ以上のセンスでまさに完璧な理想の家。全部の配置が、おしゃれなインテリアみたい! 

3/7
ロサンゼルス3日目。

 お昼過ぎにRoy St.のNNF Houseに遊びに行く。アマンダは出かけていて、ブリットが迎えてくれた。それからすぐLA Vampiresのニックも来てくれた。ブリットたちは去年の11月くらいに引っ越したばかりで、新しい家は本当に超かっこいい! 外の壁は全部紫っぽく塗ってあって、絵が描いてあったり、変な形の植物がいっぱいあったり。庭にはハンモック、納屋みたいな小さな離れはスタジオルームになってる。スタジオにはCasioのSK-1とかSK-5とか、おなじみの古いチープな楽器がいっぱい。家のなかは本とカセットとレコードだらけで、(Night Peopleのカセットが全部ある!)私が想像してた通り、というかそれ以上のセンスでまさに完璧な理想の家。全部の配置が、おしゃれなインテリアみたい! 家具も、アマンダの趣味の作りかけのジグゾーパズルも、ちょっとした置物も。将来こんなふうに生活したいよね......と誰に同意を求めるわけでもなく納得。かっこいいことしてるかっこいい人たちがかっこいい家に住んでてよかった。音と、人と、環境が、まったくズレてない。彼らのセンスを信じてて良かった。


Not Not Fun Houseの居間にてブリットと。


Not Not Fun Houseにて。壁にはカセットテープ。

 BrittとNickといろいろおしゃべりしたあと、お腹すいていたのでNNF Houseを後にし、Eagle Rockあたりにある、Brittに教えてもらったタイレストランへ。うまー。それからハリウッドの近くに戻り、Amoeba Musicっていう死ぬほどデカイ、あらゆるジャンルが置いてあるレコード屋さんに行った。90年前後のハウスのレコードを中心に掘ったけど、何時間あっても見きれない。そして古いレコードはほとんどが1枚2ドルで、クリアランスは99セント。安すぎるー。


レコードをディグる。

 夜は昨夜の約束通り、SFV AcidのZaneの家へ。待ち合わせ場所でZaneは絵を描きながら待ってた。彼はスケッチブックを持ち歩いていて、いつでもどこでも絵を描いてる。部屋にもそこら中に絵があって、どれもめちゃくちゃかっこよかった。彼にとって絵は音楽と同じくらいかそれ以上に大切なものなんだろうと思う。不思議で、ちょっと(だいぶ?)変で、でもちゃんと自分の考え方やこだわりを持ってて、そして何より本当は繊細なんだってことが、話してても作品を見ててもわかった。Zaneの家は地下がスタジオになっていたので、アナログシンセやTR-707、TR-909、TB-303などを使ってジャム! 声をサンプリングさせて、と言われて適当に歌ったりしてすごく楽しかった。



SFV Acidの自宅スタジオでセッション!

 そうしてるうちに誰かが家に帰ってきて、誰だろう? と思ったらなんと4ADのINC.のDanielとAndrewが来てた。ここが繋がってるとは思ってなかったのでびっくり。2階に住んでるらしい。ふたりは双子なので顔もそっくりで見分けがつかないくらいなんだけど、Danielが一瞬二階に上がって降りてくると「いま剃った!」とスキンヘッドになっていた。おかげで見分けがつくようになったよありがとう......。

 そのあとはしばらくみんなでダラダラ。INC.たちがご飯を作ってくれたので、お礼に煙草が好きらしいAndrewに日本のマルボロをあげたらすごく喜んでた。それから、僕も何かあげなきゃ、と渡されたのが大量のINC.のロゴ入りコンドーム。なんじゃこりゃ、と思ってよく見ると小さく<inc-safesex.com>のURLが。一体なんのサイトだろうとドキドキしながら、結局帰国してからアクセスしてみたんだけど......。それにしてもゴム作るってすごいセンス。余計好きになった! そんな感じで盛り上がっていると、Andrewが明日よかったら僕たちのスタジオにくる?と言ってくれて、次の日遊びに行くことに。

 そのあとはみんなでDown Townのクラブへ遊びに行った。そこは本当にLAでも最先端の若者たちが集まってるっていう感じで、みんなエッジーで本当におしゃれ、というか、垢抜けていてセクシーだった。この夜、私は楽しさと疲れで飲んでいるうちに緊張の糸が切れたのか、あまりに幸せすぎていきなり泣き出してしまった。みんなびっくりしてどうしたの!? と心配して慰めてくれたんだけど、こんなに素晴らしいアーティストたちがたくさんいて、みんな友だちで、っていうのはそのときの私には東京じゃ考えられないことで、心底うらやましかった。ずっとひとりで引きこもって音楽を作っていたし本当はすごく寂しかったっていうのもあると思う。だからアメリカにきて、あまりにもたくさんの素晴らしい人たちに出会えたことが夢みたいで、号泣しながら、日本に戻りたくない! と思った。

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彼はスケッチブックを持ち歩いていて、いつでもどこでも絵を描いてる。部屋にもそこら中に絵があって、どれもめちゃくちゃかっこよかった。彼にとって絵は音楽と同じくらいかそれ以上に大切なものなんだろうと思う。

3/8
ロサンゼルス4日目。Korallreven/Giraffage @ Echoplex

 この日はLAでふたつめのライヴ。その前にINC.のスタジオに遊びに行かせてもらった。家の地下にあったスタジオとは別の、かなりちゃんとしたINC.専用のプライヴェートスタジオ。わかんないけど、4ADに与えられてるのかなぁ?スタジオは広い倉庫みたいなところで、中は真っ白に塗ってあってとてもきれい。天井からは白い透けた布みたいなのがたくさんぶら下げられていて、彼らの美へのこだわりを感じた。メインの空間にはiMacと、生ピアノ、シンセ、ミキサー、数本のギターとベース、ドラムセットがあって、それとは別にクッションで防音してある小さな歌入れ用の部屋がある。(スタジオの写真は彼らのサイトで見れるよ! でもつい最近レコーディングが終わって引き払っちゃったみたい。)

 ふたりは今新しいアルバムの最後の作業中で、そのなかの何曲かを聴かせてもらった。INC.のアルバムなんてもう聴かなくても最高なのはわかってるけど、やっぱり最高だった。それからふたりは曲を作りはじめた。AndrewがMPCでドラムを打ち込んで、Danielはピアノをひいてる。ふたりはもともと、他のアーティストのライヴのサポートをするスタジオミュージシャン? のようなことをしていたらしく、とても演奏がうまい。私はふたりの生演奏をききながらぼーっとして、このまま死んでもいいなって感じだった。そのくらい素晴らしい空間で、素晴らしい音楽で、ふたりが美しくてかっこよすぎたから! そんな感じでしばらく音を聴かせてもらったり、いろいろしてるうちにライヴのリハに行かなくちゃいけない時間になった。名残惜しかったけど、AndrewとDanielに自分のレコードを渡して、お礼を言って、お別れ。


INC.のスタジオにて。左奥がAndrew、一番右にいるのがDaniel.左手前がリハーサル前に迎えにきてくれたPiperで、右奥に立ってるのはPiperの友だちのJosh.

 この日のライヴはKorallrevenやGiraffageと。同じくUSツアー中のKorallrevenは意外ながら〈Not Not Fun〉が好きらしく、私が彼らのオープニングをつとめさせてもらうことに。場所はEcho ParkというLAのインディーシーンの中心にある、Echoplexという結構大きめの箱だった。私はこの日のライヴ中、実はあまり体調がよくなくて、ダウナーで頭がフラフラになってたんだけど、友だちを連れて見にきてくれてたPiperやBritt, Nick, Zaneたちはみんな暖かく見守ってくれた。


Sapphire Slows LIVE @ Echoplex

 ライヴのあと、私が明日LAを経つから、ということでPiperたちがホテルの屋上のバーみたいなところに連れて行ってくれた。オープンルーフで開放的な中、音楽がガンガン鳴っていて、ダウンタウンが見下ろせる景色のいいところ。夜景がすごくきれいで。きっと彼らなりに、普段行かないような特別な場所に連れて行ってくれたんだと思う。Piperはずっとおしゃべりしてたし、PuroのバンドメンバーのAustinはずっとハイテンションで踊ってる。Zaneはここでもずっと絵を描いてた。みんな同い年くらいで友だちみたいに接してくれたからすごく楽しかったな。LAのシーンでは結構若い人が多かった。Puro Instinctも、SFV Acidも、Suzanne Kraftも、INC.も、みんな20代前半。みんなと離れるのは本当に寂しかったけど、またアメリカに来たら遊ぼうね! 日本にも来てね! と言ってバイバイ。


ホテルの屋上のバーで、Austin, Josh, Piper, 私, Zane。(左から)

3/9
サンフランシスコ初日。Donuts @ Public Works w/Magic Touch & Beautiful Swimmers

 ロサンゼルスからサンフランシスコへ移動の日。朝早く出発。フライトは一時間くらいで、すぐサンフランシスコに到着。空港まではMagic Touch/Mi AmiのDamonが迎えにきてくれた。Damonはツアーのことも助けてくれていたし、アメリカに行くずっと前から連絡を取り合って一緒に曲を作ったりもしていたので、やっと会えたって感じで嬉しい! サンフランシスコでは一緒に作った曲をプレイできるのも楽しみだった。

 この日の夜はDonutsというDamonの友だちのKat(DJ Pickpocket)がオーガナイズしてるパーティでライヴ。とりあえずDamonの家に荷物をおかせてもらったあと、タコスを食べに行った。サンフランシスコではほぼ毎日タコスだったような......そのあとBeautiful SwimmersのAndrewとAriと合流して、アイスクリームを食べたり、公園みたいなところで犬と遊んだりビールのみながら夕方までまったりと過ごす。サンフランシスコにいる間はずっとMagic Touch、Beautiful Swimmers、Katと一緒に遊んでた。

 17時くらいに一旦サウンドチェックへ。会場はPublic Worksという、壁いっぱいに派手な絵が描いてあって素敵なところ。この日のライヴはMagic Touchと私だけだったので、サウンドチェックとセッティングを終えてDamonの家に戻ると、オーガナイザーのKatと、テンション高めのAndre(Bobby Browser)が来てた。Andreは大量のパエリアとサラダを作ってくれて、すごくおいしかった! みんなで腹ごしらえをしたあと、疲れていた私はパーティのオープンまでちょっとだけ寝て、ライヴのため再びPublic Worksへ。ライヴはこのとき3回目だったけど、まだ緊張で頭がぼーっとしてる感じがあって、なかなか慣れない......。

 ライヴのあとは外でAndreと話して、その会話がすごく印象的だった。機材についてきかれたから、Macと、中古のMidiコントローラーと、ジャンクのキーボードと500円のリズムマシンしか使ってないの、というとびっくりしてた。Andre いわく、「音楽を作るっていうこととDJをするのは全然ちがうし、DJをやろうとする人は多いけど作ろうとする人はあんまりいない。お金と機材がないと作れないと思ってる人が多いし、持ってる奴らに限ってみんな『僕はJunoもMoogも808も、あれもこれもたくさん持ってるんだぜ!』って機材ばかり自慢する。じゃあ君の音楽はどうなの? ときくと『それはちょっと......』って、肝心の音楽は作ってなかったりしてね。でも君は少ない機材でもちゃんと自分らしい音楽を作ってるし、もしもっとお金と機材があったらもっとすごいことができるってことじゃん!」私はそんなふうに考えたことがなかったからすごく嬉しかったけど、なんだか照れくさくなってなんて言えばいいのかわからなかった。それでまた「でも、日本にはこんなに素敵なミュージシャン仲間たくさんいないからうらやましいよ」って言ってしまったんだけど、Andreが「僕はOaklandに住んでるけど同じ趣味の仲間たちとミーティングするときは10人もいなくて、多くて7、8人くらいかなぁ? OaklandはHIPHOPのシーンが盛んだからあんまり仲間がいないんだ」と言ってるのを聞いて、どこにいても同じなのかもしれないなぁと思った。

 私の次にはMagic Touchがライヴをして、そのときにDamonと一緒に作った曲もプレイした。初めてで慣れないけど、一緒にライヴをするのはすごく楽しかった。Beautiful SwimmersのDJもかなり最高で、みんなで踊りまくった。思っていたよりディスコっぽくなくて結構ハードな4つ打ちばかりだったのは、最近の彼らの趣味かも。

 同じPublic Worksでは別の階にある大きいフロアで同時に違うイヴェントをやってて、(スタッフのChrisいわく、Burning Manみたいなイヴェント)そっちにも少しだけ遊びに行った。変なコスプレをしたり、変な帽子をかぶったり、頭に角をつけてる人たちがたくさんいて、異常に盛り上がっていた。どのへんがBurning Manだったのかは謎だけど、たぶんあのコスプレみたいな人たちのことを言ってたんだろう......。

 そのあと疲れてきた私はうっかり、階段のところでうたた寝をしてしまった(ほんとに一瞬)。知らなかったけど、アメリカではクラブで寝るのはタブーらしく? いきなりガードマンのいかつい黒人さんたちが3人くらいやって来て引きずり出されてめちゃ怒られた(まじで怖かったー!)。みんな私が疲れてるのを知っててかばってくれたけど、最初なんで怒られてるのかわからず、え? 何も悪いことしてないよ! 状態でした。寝るだけであんなに怒られるとは......。そう、場所によるとは思うけど、アメリカと日本のクラブで違うなぁと思ったところはいくつかあって、「絶対に寝てはいけない(経験済み)」「お酒は2時までしか飲めない」「イヴェント自体もだいたい朝4時までには終わる」「室内は絶対禁煙」っていう感じだったな。

 イヴェントが終わったあとみんなで歩いて帰って、朝7時頃に違うパーティでBeautiful SwimmersのDJがあったけど私は起きられなくてそのまま寝ちゃった。みんなが帰ってきたのは朝9時くらい!

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こんなに素晴らしいアーティストたちがたくさんいて、みんな友だちで、っていうのはそのときの私には東京じゃ考えられないことで、心底うらやましかった。ずっとひとりで引きこもって音楽を作っていたし本当はすごく寂しかったっていうのもあると思う。

3/10
サンフランシスコ2日目。

 みんな帰りが遅かったので、昼すぎまで寝てる。昼ごはんはタコス。とはいえもう夕方だったけど。そのあとはみんなでドライヴ。「どっか行きたいとこある?」と言われて、ほんとは服とかも見たかったんだけど、Magic TouchとBeautiful Swimmersに女の子の買い物付き合わせるのもなぁ、と思って大人しくレコード屋に行きたいと言う。ということで、サンフランシスコで一番有名な通りらしいHaight Streetを通って(通っただけ)、Amoeba Musicサンフランシスコ店へ。LAよりは少し小さいけど、やはりデカイ。みんな大量にお買い上げ。でも私はもうこれ以上買えない......LAでも結構買っちゃったし、重すぎてひとりで運べなくなるから。機材もあるし仕方ないけど悲しいなぁと思っていると、KatとDamonがおすすめのレコードを1枚ずつ選んでプレゼントしてくれた。こういうのは宝物!

 夜は日本料理屋 へ。精進料理(のつもり)のレストラン。みんなたぶん私のために連れて行ってくれたんだけど、揚げ出し豆腐以外はまずかった!でもみんなで精進料理っていうシチュエーションがおもしろしすぎて十分楽しかった。夜はDamonと近くのクラブに遊びに行ったけど、疲れていたのであまり長居せずに帰った。

 みんな本当にレコードおたくで、とくにAndrewは昨日もこの日もめちゃくちゃ買ってた。そして家に帰ると「今日買ったレコード自慢大会」がはじまるのが恒例。なんかそういうのがいいんだよね。やっぱりみんな大好きなんだなと思って。あと、最近はなぜかコクトー・ツインズのCDがお気に入りみたいで、家でもハウスのレコードかけてみんなで盛り上がったあとは必ずコクトーツインズで落ち着いた。

3/11
サンフランシスコ3日目。

 起きてみんなで歩いて出かけて、昼ごはんはまたまたタコス。いいけど! 私はビーフサンドイッチみたいなのを選んだ。そのあとはぶらぶらしながらコーヒを飲んだり、アイスを食べたり、本屋やレコード屋にいってのんびり過ごした。街の小さなレコード屋で、〈Triangle〉からリリースしてるWater Bordersっていうバンドのレコードを買った。彼らはサンフランシスコに住んでて、Public Worksにも来てくれてたけどすごくかっこいい。

 その後は車に乗って、サンフランシスコで有名なGolden Bridgeっていう大きな橋を渡って、Muir Woodsという国立公園に行った。平均樹齢500歳以上のカリフォルニア・レッドウッドの原生林で、気持ちよく森林浴。そのあとグニャグニャした崖の道を走って、サンセットを見るために海へ行く。サンフランシスコの海岸はすごく広かった。車のなかでは大音量で音楽をかけてみんなテンションあがってハイになって、
 めちゃくちゃ綺麗なサンセットを見ながら幸せすぎてこのまま死んでもいいなぁと思った(二度目、いやほんとは三度目くらい)。


サンフランシスコの海岸で。Damon(左)とAndrew(右)と記念撮影!

 夜はみんなでIndian Pizzaを食べに行った。ピザの上にカレーがのってるような食べ物で、アメリカで一番おいしかったかも。サンフランシスコではほとんどダラダラ遊んで過ごしただけだったけど、住むならここがいいなと思えるくらい居心地のいい街で、やっぱり離れるのは嫌だった。でも明日はもうテキサスに移動する日。荷造りをして早く寝た。

3/12
SXSW初日

 朝早くにサンフランシスコを出発。空港へ。飛行機に乗ってすぐロサンゼルスやサンフランシスコでのことを思い出していると、ホームシックならぬカリフォルニアシックになって、なぜかひとりで号泣してしまった。飛行機のなかでだいぶ怪しかったと思う。ロサンゼルスもサンフランシスコも両方だけど、カリフォルニアは最高だった。本音を言うと、疲れもピークだったテキサスでの最初の数日よりもずっとずっと楽しかったし、すぐにでもまた行きたいと思った。泣き止んで気持ちが落ちついた頃にはソルトレイクに着いて、乗り換えてテキサスのオースティンについたのは夕方頃。

 オースティンにいる間は広い家に住んでる若い夫婦のエクストラルームを借りてステイした。家について挨拶したあと、バスや電車でSXSWのメイン会場のほうへの行き方を教えてもらって、夫婦に連れられてタコスを食べに行った(また!)。でもさすがに、本拠地テキサスのタコスは格別にうまい。フィッシュタコスっていう魚のタコス。ステイ先のエクストラルームは部屋もバスルームもすごく綺麗でずっと快適だった。この日はライヴを見たりすることもなく終了。

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みんな本当にレコードおたくで、とくにAndrewは昨日もこの日もめちゃくちゃ買ってた。そして家に帰ると「今日買ったレコード自慢大会」がはじまるのが恒例。なんかそういうのがいいんだよね。やっぱりみんな大好きなんだなと思って。

3/13
SXSW2日目。ここからは適当なライヴ・レヴューがメインかも!

 昼間は中心のストリートからちょっと歩いたところにある小規模な野外ステージでXray EyebellsやBig Dealを見る。芝生でビール飲んでごろごろしながら見たBig Dealはよかったな。アメリカ、テキサスで聴くUKの感じが新鮮で。男女2人組のメランコリックで優しい空気感。

 夕方からはこのあと何度も行くことになる会場Mohawkで『Pitchfork』のパーティへ。ここ、中心部にある結構メインでいい会場なんだけどいかんせん人が多くて入るのも大変。 Shlohmo,、Star Slinger、Sun Araw、Trustを見る。Shlohmoは若手のイケメンビートメーカーということでわくわくしてたけど込みすぎててほとんど顔見えなかった。音はもちろんいいよ! Trustは〈Sacred Bones〉からの「Candy Walls 」が大好きで本当に楽しみだったんだけど、最前列のファンたちがなんというかダサくて、テンションさがってしまった......逆にStar Slingerは頑張って真ん前まで見に行くと、気付けば周りに熱狂的なデブとオタクとオッサンしかいなくて妙に納得、より大好きになった。

 夜も更けてきて、そのあとは会場忘れたけど別のとこでSurviveとBodytronixを見た。どっちも最高。Surviveは見た目怖い人たちがヴィンテージのドーンとしたアナログシンセを横に4台並べてプレイ。最前列のファンもやばげな人たちが踊り狂ってていい感じ。Bodytronixはオースティンの2人組のアーティストで、見るまでは知らなかったのだけれど、そこにいた同じくオースティン在住のPure XのボーカルNateに「オースティンで一番かっこいいから見たほうがいいよ!」と激押しされ見てみると最高にかっこよかった。SFV Acidをもっとハードにした感じの音で、どツボでした。


Survive @ SXSW

3/14
SXSW3日目。

 昼間はまたMohawkへ。大好きなBlood Orangeを見る。ひとりでトラックを流しつつ、ギターソロを弾きまくりながら歌うスタイル。ステージから降りて激しくパフォーマンスをしているとき、記者会見並みにみんな写真を撮りまくっていてなんだかなぁという気分に。私は自分のライヴ中にパシャパシャ携帯で写真をとられるのが嫌いでそういうの見てるといつも嫌になる。Pure XのNateもライヴ中に写真撮られるの本当は嫌いなんだって言ってたなぁ。まぁその話はいいとして......人混みに疲れてしまった私はしばらくダウンして、夜になり同じストリートにあるBarbarellaでD'eonを見た。そのあと一度抜けて違うクラブに行き、Italians Do It Betterのドン、Mike SimonettiのDJで飲みながら踊る。どこに行ってもそうだったんだけど、私が行ったところには日本人が全くいなくて踊っても何してても浮いてた。そのあとBarbarellaに戻って見たPure XとBlondesは最高だった。Pure Xのサイケデリックでノイズな夢の中、ボーカルNateの唐突なシャウトは心のかなり奥の方にガツンときたし、NYからのBlondesはあの音で全部ハードウェアで演奏してるっていうのが超かっこいい。ああいうダンス的な音楽はもはやラップトップやMidiを使ってやるほうが多いと思うから。

3/15
SXSW4日目。

 またまたMohawkへ。もうドアマンに顔を覚えられている。ほんとはFriendsが見たかったんだけど、混みすぎてて並んでるうちに終わっちゃった(涙)ので、SBTRKTとCloud Nothingsを見た。SBTRKTは「?」だったけど、Cloud Nothingsはグランジな感じで演奏もよくてかっこよかった。そのあとメインストリートとは逆のサイドにある会場まで行って、Dirty Beachesを見る。なんというか本当にアジアの星だね、彼は。カナダだけど。見た目に関してだけ言うと、アジア人ってそれだけで普通は欧米人よりダサくなってしまうような気がするけど彼は違う。最高にエッジーでかっこいい。彼になら殴られてもいい! いや、殴られたい! そしてそこには同じくカナダのJeff Barbaraもいて、話していると彼らが仲良しなことが判明。Dirty BeachesとJeff Barbara、音は全然違うけど、なんかいいね。スタジオをシェアしたり、LAでのSFV AcidとINC.みたいにルームシェアしてたりとかそういうの。東京はどうだろう?なんて思ったり。音が違っても心が通じてる、そんな感じの仲間がたくさんいればいいね。

 夜はRed 7という会場で〈Mexican Summer〉ショーケース。〈Mexican Summer〉rはもちろん大好きだから本当は全部見たかったんだけど、この日は本当に疲れていて、最初のPart Timeだけ見て帰ってしまった。Light Asylumも、Oneohtrix Point Neverも、The Fresh & Onlysも、Kindnessも、死ぬほど見たかった! けど、ここまでの旅の疲れと、なんともいえない孤独感と、SXSWの人混みとクレイジーな祭り状態にしんどさがMAX限界状態だったのです。ちなみにPart Timeはめちゃくちゃダサかった(良い意味で)。

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私は自分のライヴが終わったあと、トリのPeaking Lightsを見ながら、明日には日本に帰るのかと思うと悲しくなりすぎて、またホロリ。何度目? 本当に帰りたくなくて。

3/16
SXSW5日目。NNF House Show@Hounds of Love Gallery

 あまりに疲れたのでこの日はライヴは見に行かず、自分のライヴのために体力温存&準備しながらまったり。

 夜。SXSWで最初のライヴはNNFファミリーの身内感あふれるハウス・パーティ。Hounds of Love GalleryはギャラリーではなくNNFのヴィデオなどを作っている映像作家Melissaのギャラリーっぽい自宅。そこによく集まってるらしいMelissaとそのアートスクール仲間たちはみんな映像を作ったり絵を描いたりしてる子で、年も私と同じくらいだったので話しやすかった。この日のうちにCuticleのBrendan、Samantha GlassのBeau、Willieと仲良くなり、彼らと最後の2日間遊び続けることに。

 ライヴはオースチンの漢(おとこ)、Xander Harrisからスタート。VJで怪しげな映像を流しつつ、途中から脱いでいた。彼の人柄は野性的なのか律儀なのかよくわかんない感じでおもしろかった。その次はCuticle! 話してると普通なんだけど、ライヴしてるときはなんともいえない色気があってぞくぞく! Cuticleは似たような音のアーティストたちのなかでもなんとなく奇妙さと個性があって好き。アイオワに住んでるからカリフォルニアのSILKアーティストたちとは場所的にも離れているけど、離れたところでひとりマイペースにやってるとこも共感できるのかな。Samantha Glassはゆったりとした、ディープでサイケでギターの音が溶ける心地のいいサウンド。私はこの日トリで、そこそこ飲んでいたし音響などの環境も悪かったけれど、とくに問題なくプレイできた。床でやったけどね。この日のライヴはMelissaのVimeoで見ることができるので興味ある人はこちらからどうぞ。(https://vimeo.com/40269662


ライヴ中はセクシーなCuticle @ Hounds of Love Gallery

 ハウス・パーティが終わったあとはCuticleとSamantha Glassと違うパーティに遊びに行って、そこでSleep Overをみた。他のメンバーと別れひとりになったSleep Over、心無しかライヴも悲しく哀愁が漂っている。そして変な弦楽器を悲しげに弾いている。嫌いじゃない......。そのあとはお腹がすいたのでみんなでスーパーにいって、ご飯を買ってかえった。

3/17
SXSW6日目。最終日そして最後のライヴ。Impose Magazine Presents The Austin Imposition III @ Long Branch

 前日からもはやお祭り騒ぎのSXSWに疲れ果て、他のアーティストのライヴを見に行くことを放棄している私。この日、昼間はCuticleのBrendan、Samantha Glassのふたりとその友だちの女の子たち6人くらいで車に乗って郊外へ遊びに行った。なんとかSpringっていう池なのか川なのかよくわからないところで泳いだり飛び込んだりして(飛び込んではしゃぎまくってたのは主に男たち)、遊んだあとはSXSWに戻って会場入り。アメリカで最後のライヴだ......。Cuticle、Xander Harris、Peaking Lightsとは二度目の共演。この日初めて見たキラキラで怪しさMAXの女子ふたり組Prince Ramaのパフォーマンスはすごかった。ライヴっていうか、儀式。ダンスが最高で、取り巻きファン的な男の人たちもかなり熱狂的だった。Tearistも力強いというか強烈なインパクトがあって、ヴォーカルの女の人の髪が扇風機的なものでずっとTM Revolution並になびいていた。私は自分のライヴが終わったあと、トリのPeaking Lightsを見ながら、明日には日本に帰るのかと思うと悲しくなりすぎて、またホロリ。何度目? 本当に帰りたくなくて。でもみんなに背中を押されつつなんとか帰って、無理矢理荷造り......。

3/18
帰路

 早朝に出発、したにも関わらず飛行機が5時間くらい遅れてやってきて、デトロイトで乗り換えできなくなってしまった。よくあることらしいんだけど、想定外のホテル一泊。ここで帰るのが遅れても嬉しくないよ。結局丸一日半ほど遅れて日本に帰国。ただいま。

あとがき

 日記、めちゃくちゃ長くなっちゃった。読んでくれてありがとうございました。行くまでは大変だったけど、楽しすぎて何度も日本に帰りたくないと思った。でも向こうのアーティスト同士のつながりやシーンを見ていて、東京でもこれからやっていけることがたくさんあるんじゃないかなと思ったし、離れた場所にたくさんの仲間がいることがわかって、どこにいても何をしてても、ちゃんとつながっていけるんだなぁと実感。それが一番の収穫かな? とにかく行ってよかった。またいつでも行けるようにこれからも音楽作っていこうと思います。

オワリ

 

※この続きは......というか、彼女のインタヴューは、紙版『ele-king vol.6』にてご覧ください!


Hot Chip in DOMMUNE - ele-king

 ABBAは持ってないし
 GABBAはプレイしない
 ZAPPが好きなんだ
 ZAPPAじゃない
 だから、そのタワゴトは止めてくれませんか
 僕はMACCAを選曲してる
 ここはAIYA NAPAじゃないんだよ
 僕がラッパーに見えるかい?
 
 僕 が ラ ッ パ ー に 見 え る か い ?
 
        ホット・チップ"ナイト・アンド・デイ"(2012)


 見えません。

 ele-kingの読者のみなさん、初めまして! ホット・チップくんです。ファンサイトなき時代に、ホット・チップの情報を垂れ流すツイッターをやっています(https://twitter.com/#!/HOTCHIPjp)。パブリック娘。というグループでラップもやっているぞオラオラ。辛辣な合評を待ってます。ライターとしては、ele-kingの癌あるいは恥部のようでありたいと思っています。毒ポスト・ツイッタラーのみなさんもどうぞお手固くよろしくお願いします。

 さて、チケットもどうやら完売の<Hostess Club Weekender>2日目での来日公演に併せて、ホット・チップのアレクシス・テイラーとアル・ドイルがDOMMUNEでDJをするぞ。1年前にアレクシスと話をしたときはDOMMUNEのことをまったく知らなかったようなのに、今じゃ出演するようになるなんて。ホット・チップも大きくなったんだなと思うよね。アレクシスの背も伸びているのだろうか。
 新譜『In Our Heads(イン・アワ・ヘッズ)』もどうやら絶賛の嵐で、これをきっかけに日本でのブームがようやくやってきたのかもしれません。僕は、新譜には複雑な思いがあるのだけど!

 冒頭にも上げた新曲"ナイト・アンド・デイ"やオフィシャル・インタヴュー(https://www.iloud.jp/interview/hot_chipin_our_heads_1.php)で語っているように、あまりにも注文をつけるとレコードを投げ飛ばし、DJ機材をなぎ倒してしたことがあるとのこと。温厚なアレクシスが暴れているところはなかなか面白そうなので、ぜひ「ザッパをかけろ!」「おい、ラッパー! ガラージをかけろ! プリンスはかけるな!」とリクエストしてみよう(ただし、PCの前でね)。ハッシュタグは#DoILookLikeARapperで。
 そうでなくて、まったりとグッド・ミュージックに身体を揺らしたい人はぜひ現場へ!あと、眼鏡男子に萌えの女子もね。先着50人だなんてあっという間だから。

予約はコチラから!

 1年前、アレクシスはagehaで開催された<KITSUNE CLUB NIGHT>で朝4時から2時間DJを務めたのだけれど、アゲアゲでイケイケなパーティーピーポーは、ジルダや80KidzやHEARTSREVORULTIONで踊りきったのか、アレクシスのプレイしはじめたミニマルなテクノをBGMに「おつかれー!」とばかりに続々と帰っていった。アレクシスはさして気にしている様子も見せず(でもきっと気にしてる)、まったり身体を揺らす客に「やっぱり、これいいよね」と無言で語りかけるかのようにYAZOO(ヤズー)の"Situation(シチュエーション)"をプレイし、自身のヴォーカル曲でマイクをとり客を盛り上げ(分かってやってるのがニクい)、ポール・マッカートニーの"Silly Love Songs(心のラヴ・ソング)"を笑顔で流しながら締めくくるのだった。
 アレクシス、それ2年前にも流していたよね。今年も待ってるよ。


斎藤辰也akaホットチップくん

QN - ele-king

越境者としての彼 文:中里 友

QN
New Country

Summit

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 5月31日にポストされたQNのツイート...そこに貼られたOMSB'Eatsに対するディス曲"OMSBeef"の音源。その、あまりに唐突過ぎる決別の報を、この楽曲によって知った人がほとんどではないだろうか。このビーフ自体が相当衝撃的だったのだけれど、"OMSBeef"を聴いて、さらに驚かされてしまった。それは、前作以上の拡張と深化を遂げている彼の音楽に、だ。

 どんなジャンルの音楽にも熟練というものはある。僕が日本語ラップを面白いと思うのは、それぞれ独自の言語――それは言葉のアクセントや起伏、間の取り方、もちろん生来の声質によるところはかなり大きい――を思考錯誤して体得しているところにある。10人いれば10通りのスタイルがある。それはキャラクターとも言い換えられ、それは彼らの最大の「武器」でもある。他にはない表現やスキルを見せようとする初期作は冒険心に溢れ、フレッシュでいて、ときとして非常にトリッキーであったりする。それが作品を重ねる毎に、じょじょに言葉は削ぎ落とされて整理され、次第に聴きとりやすいオーソドックスなラップ・スタイルへ移行していく(それはメッセージ性に重きを置きはじめるというより、メッセージを持ちはじめるというケースが多いような気がする)。イコール独自の言語を捨てていくという事では必ずしもない......が、表現がこなれて洗練されていくという事はこういうことなのか? と疑問を感じたりもする。
 ヒップホップというシーンへの帰属意識の高いアーティストほどこういう面が強く、かたやジャンルの横断を繰り返すアーティストほどブレずに言語の独自性を保持・深化させながら、音楽性を拡張させていっている。僕は彼らを「越境者」と呼んでいる。韻踏を早くに抜けたミンちゃんやEVISBEATS、さらに言えばKREVAやイルリメは拡張の末にポップ・フィールドにまで波及した例だと思う。もちろん例外はあって、降神はさらに独自のコミュニティで表現に磨きをかけていった気がするし、KILLER BONGなどは越境......というよりも間違って地球に産み落とされた宇宙人のよう。

 QNは間違いなく越境者だ。越境者は実験を繰り返す(ミレニアルズ以降のネット・ネイティヴな世代は生まれながらに「越境者」なのかもしれないが)。QNの作品にはいつも耳を惹くアイデアがある。先月リリースされたDJ松永のアルバムにラップで客演した"Tell The Truth"での甘いフックを聴かせた後の1バース目はつかみとしても最高だし、昨年、名義を変えてトラックメイカーとしてリリースしたEarth No Madでは実験的な試みにも意欲的で、自身を拡張しようとしている意図がとれる。相模原CITYのLABORATORYから、自らをProfessorと名乗っているのも頷ける。

 そして件の"OMSBeef"だ。このトラックはやや風変わりなクラウドラップで、おまけに彼のラップはどんどん訛っていっている(同時にアップされている歌詞がなければ聴き取れなかっただろう......)。先の持論を漠然と考えていた折に、編集部から今作『New Country』が届き、聴き通してみて、やはり! と思った。もちろんまだ彼がSIMI LABに所属していた際に作られた作品なのだが、よりグルーヴを求めて削ぎ落とされたタイトなサウンドで、前作以上に無国籍なビートを鳴らしている。
 フリーキーでエキゾチックな"Cray Man"、"Hands"。ベースとドラムとわずかな音色、その上をラップでスイングする"Freshness"、"DaRaDaRa"。ファニーなルーディーズ・ミュージック"Hill"、"Boom Boom"、そしてJUMAのフックが効いたモラトリアムなメロー・ソング"Cheez Dogg"からは彼のプロデュース能力の高さが伺い知れる。アルバムの終焉にふさわしい"船出"と"Flava"は旅情と言うべき感傷さが漂っていて、総じて温かみに溢れた作品となっている。

 熟練というのは、キャリアの積み方という事でもある。3年の間に、2枚のソロ、SIMI LABのアルバム、別名義Earth No Madのアルバム、Dyyprideのアルバムのプロデュース...そして前作から5カ月というハイペースで発表された今作の『New Country』。早い。彼の初となる商業作品のタイトルを『THE SHELL』(抜け殻)とした意味も「やりたい事がコロコロ変わるから、このアルバムも今やりたいことではもうないんですよ。」とかつてインタヴュー(https://amebreak.ameba.jp/interview/2010/08/001618.html)で語っていたが、本当にそのスピード感で彼は成長を続けている。今回の脱退は残念だが、すでにRAU DEFと共にMUTANTANERSなるユニットを組んでYOUTUBEに作品をアップしている。歩調や歩幅を変えても、この先も決して歩むことはやめないのだろう。

 ラジオを通じてQNとOMSB'eatsに熱いメッセージを送った菊地成孔じゃないが、4月のDCPRGとのライヴで、STUDIO COASTという大舞台で見せたSIMI LABの素晴らしいステージング......世代も越えて観客をロックした、あの光景に夢を見てしまった僕も含めて、多くのファンが今回のQNの脱退がとても残念な事に思えてしまうのは、それはしようがないことだ。いや、こんなこと書いても本当にしようがないのだけれど。
 

文:中里 友

»Next 竹内正太郎

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物語の外側へ 文:竹内正太郎

QN
New Country

Summit

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 「早熟」という形容は、むしろこの作品の前では礼を欠くかもしれない。

 「もう僕はSIMI LABには居ません。QN」、突如そうツイートされたのは5月22日だった。ツイートは確かに本人のアカウント(@professorQN)だったが、前後の書き込みからしてもまったくの無文脈だったので、私は何かの冗談だと思っていた。が、6月1日、QNのSoundCloudに"OMSBeef(Dis)"がアップされ(https://soundcloud.com/simi-lab/omsbeef-qn)、どうやら事態は想像以上にシリアスであると、多くの人がさらなる深刻化を覚悟してしまったのではないだろうか。少なくとも、OMSB'Eats(@WAH_NAH_MICHEAL)やMARIA(@MariaPPgirl)のアンサー・ツイートを見る限り、QNとSIMI LABメンバーとのあいだには何か決定的な行き違いがあり、容易には復しがたい距離が存在する、それがどうやら一定の事実であるようだった(注:残念だが、6月12日、QNの脱退がオフィシャルで報じられた......)。当然、詳しい内部事情はいっさい承知していない。無用な推測は控えるべきだろう。何かを言うべき立場の人はもうコメントを出している、例えば菊地成孔のように。オーケー、私が言いたいこと(言えること)はたったひとつ、『New Country』は本当に素晴らしいアルバムだ。

 そもそも、OMSB'EatsもMARIAも、そしてDyyPRIDEも、このアルバムに参加している。あたかもそこになくてはならない既定の風景のように、SIMI LABの面々はこの作品に協力し、パフォーマンスしている。それに、RAU DEFや田我流もいる。本来であれば、純度100%の、大きな祝福の中で聴かれるべき作品だと思う。もちろん、例の件をできる限り肯定的に捉えれば、SIMI LABが馴れ合いで運営される仲良しクラブでないことが公けに示されたとも言えるが、この作品の完成とこのタイミングでの発売を、決してよく思わない人たちもいるであろうことは、(ぶり返すようだが)残念ではある......。SIMI LABのデビュー・フルレンスに寄せ、かつて「個人的にはQNにもう少し出しゃばりを期待」している、などと書いた人間からすれば、本作はまさにあのとき理想に描いたとおり作品であるが、だからこそ余計、複雑な感情になってしまうのもまた事実で......。

 いや、妙な感情論はやめよう。QN(今後はプロフェッサーQNと呼ぶべきなのだろうか?)は、さらに磨きあげたトラック・プロデュースで、すべての協力者に報いている。音楽家としては、まず間違いなく最高の仕事を果たしている。アレンジメントされる多彩な弦類、重く揺れ動くベース・サウンド、淡々とリズムを刻む軽やかなドラムスは、彼の手によって美しい循環構造を描いている。そして、これは相変わらずと言っていいのか、この1990年生まれが持つ雰囲気というのは、ちょっと並はずれたものがある。絶対に浮かれてたまるかと言わんばかりの、常にローにコントロールされた異様なテンション。ビートの鳴りやループの展開は、前作『Deadman Walking 1.9.9.0』(2011)以上にタイトになっている。そして、ベースの効かせ方がとにかく心地よい。J・ディラのビート・プロダクションを"21世紀のヘッドフォン・ファンク"と評した海外のライターがいたが、それはこの作品にもそのまま当てはまるのではないか。これはQNによるファンク解釈のグルーヴィな作品である。

 そしてラッパーとしても、その不遜な口振りは更なる自信を見せつけている。この年功序列国家においては、ときに過剰なまでの謙遜が重んじられる傾向にあるが、ヒップホップはその道徳を破棄する文化でもある。そう、QNは誰よりもクールに、だが自分がナンバーワン・ラッパーであるかのように、ファンク・ビートの上で堂々と韻を流している。日本語も英語もない交ぜに、とにかく滑らかに流れていく。引用すべきパンチ・ラインも、もちろんある。とくに、表題である「新国家」の、おそらくは同義語として「夢」という言葉がふたつの意味で使われる"Better(feat. RAU DEF, MARIA)"には、QNの決意がもっとも強く表れている。が、韻文として組んだリリックを、あくまでも散文のように崩して聞かせる技術には舌を巻く。ゼロ年代、ドメスティック・ラップの潮流に物語回帰(それも、"Street Dreams"としての物語ではなく、"My Space"としての物語への回帰)があったとすれば、QNはまたぶらぶらと物語の外側へ出て、意味のあること/ないことを問わず、背景にある物語からいくつかの場面や感情のみを取り出し、新たな世界を立ち上げているように思える。

 また、こうした純粋なラップの機能性からの影響なのか、浅からぬ縁を持つ田我流を招いた"船出"は、粒揃いの本作でも群を抜いたコズミック・ファンクで、『B級映画のように2』という、おそらくは現在の日本に対する複雑な心境を込めたアングリーなアルバムからは一転、「こんな国は捨てて/空を突き抜けて/大気圏に突入/無重力でパーティ」とラップする田我流が、私には実に楽しそうに見える。彼の『B級映画のように2』が、ヒップホップの圏外へと向かう社会性の作品だったとすれば、本作はヒップホップの原理的な魅力にこだわった、周囲との国境線を強く意識した作品だ。貫禄めいたこの落ち着きぶりはいったいなんだ? 表情はまだどこかに十代の面影を残しているが、「早熟」という形容は、むしろこの作品の前では礼を欠くかもしれない。浮かれることを知らない弱冠21歳が、新たな王国を築こうというのか。月並みの結論であるが、事情はどうあれ、作られた音楽そのものに罪はないと思う。おそらくは多くの人の期待を凌いでいるのではないか。『New Country』、その確信めいたヘッドフォン・ファンク。存分に楽しんで欲しい。


文:竹内正太郎

teams - ele-king

 スペースゴーストパープのデビュー・アルバム『Mysterious Phonk』のジャケを見たとき、このギャングスタみたいな見てくれの作品のどこがチルウェイヴと繋がっているのか見当つかない。しかし、いざレコードに針をおろしてみると......下北沢のジェットセットの試聴機で二木信が「これ、俺向きじゃないしょ!」と根を上げたように、そのサウンドはウィッチハウスやダークウェイヴそのもの......このチルウェイヴ以降のヒップホップにおける新しい展開、つまりクラウド・ラップのネクストとして注目されているがトリルウェイヴ。初期チルウェイヴやクラウド・ラップの代表格のリル・Bと違って、トリルウェイヴとは、 たとえば三田格がレヴューしていたメイン・アトラキオンズのように、ネタありきではなく、ポスト・チルウェイヴとしてのオリジナル・トラック、ラップのあるなしにかかわらず、クラムス・カジノ以降のヒップホップの流れのようだ。
 トリル──などという言葉を言われるとクラシック音楽の演奏におけるそれ(32分音符)、あるいはヘヴィーメタルのギターのそれを思い浮かべる人もい少なくないだろうが、あながち外れではない。トリルとは、音のああした震えのことを意味するわけで、"チル(沈静)"ウェイヴのネクストのひとつが、"トリル(震え)"ウェイヴだそうである。まだ、"クラウド(雲のような)"ラップと呼んだほうがしっくり来る気もするが、とにかく、そんな季節目の変わり目に、トリルウェイヴ/クラウド・ラップ系の使者が今週末、来日する! 東京では主宰の〈WHITE LILY〉レーベルをはじめ、〈コズ・ミー・ペイン〉も登場。大阪では本サイトも注目のMadeggも出演します。
 これはなかなか注目すべきイヴェント、真新しい現場を体験したい人、ぜひ!


 2011年に〈MEXICAN SUMMER〉からリリースされたSTAR SLINGER とのコラボ作「TEAMS VS. STAR SLINGER」も話題となった、マイアミの新世代ビート・メイカー、SEAN BOWIEによるソロ・プロジェクト、TEAMS。7月のデビュー・アルバム『Dxys Xff』の国内盤CD発売に先駆けて行われる初来日ツアー(東名阪)が今週末に開催されます!
 会場では東京公演を主宰するインディ・レーベル〈WHITE LILY〉とのコラボレーション盤も販売予定(※JET SETなど一部レコード・ショップでも販売中)。同作はTEAMSの最新録音となる完全未発表の新曲4曲に加えて、国内の気鋭5アーティス トによるリミックスを加えた全9曲を収録とのこと!

PLANCHA サイト内では前売りチケットの予約も受付中です。
<Teams Japan Tour 2012 チケットご予約フォーム>
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/teams-japan-tour-2012-form/

■Tokyo
White Lily Presents "CULT CLUB Vol.8″
――Teams Japan Tour Special!!! -

6/29(金)
at Lush (Shibuya)
Open & Start 24:00 -
前売り¥2,500(include 1 drink.) / 当日¥2,500(include 1 drink.)

Live:
Teams (from Los Angeles)
Nag Ar Juna
HNC

DJ:
Gikyo Nakamura (The Pegasuss)
YO!HEY!!(Threepee Boys)
Tetsuya Suzuki (TOP GUN)
Ozawa Gentaro-Z (Young Fidelity)
&
Cuz Me Pain DJs(YYOKKE/ODA/NITES)

https://whitelilyrecords.tumblr.com/

-------------------------------------------------------------

■Nagoya
White/Black

6/30(土)
at Cipher
18:00~
前売り¥2,000 /当日¥2,500(without 1D)

LIVE:
Teams (from Los Angeles)
ORLAND
NILE LONG

DJ:
W/B DJs
Love Action DJs

https://www.underground.co.jp/cipher_top/schedule/

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■Osaka
INNIT

07/01(日)
at Grand Cafe Osaka
Open & Start 17:00
ADV/Bring Your Music:2300YEN (w1D)
DOOR:¥2,800(w1D)

Teams (from Los Angeles)
Seiho
Avec Avec
Taquwami
And Vice Versa
Magical Mistakes
Madegg
Ryuei Kotoge
Jemapur/Aspara
Keita Kawakami
VJ:Kezzardrix

HP:https://innitmusic.com/

[Electronic, House, Dubstep]#11 - ele-king

Swindle - Do The Jazz | Deep Medi Musik


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E王   「ジャズ・シング」(1990)、「ジャズ・イズ・ザ・ティーチャー」(1992)、「ハイテック・ジャズ」(1993)、「イッツ・ア・ジャズ・シング」(1994)......そして「ドゥ・ザ・ジャズ」(2012)。16分で打たれるハンドクラップ、ムーディーなハミング、アシッドな電子音とサブベース、コンクリートを砕くんじゃないかと思わせる迫力満点のユニゾンとドラム・パターン......「格好いいグライムください」と、下北沢のZEROで買ったのがコレ。ラップはないが、ストリート・ミュージックというものの魅力が満載のトラックで、メランコリックな上ものをミックスしながら脈打つビートはどう聴いてもパンク。
 "アンダー・ザ・サン"は、シルキー風のメロウな感じではじまり、そして雷鳴のような、ジュークのような好戦的なシンセサイザーがこじんまりとしたダンスフロアに一撃を加える。エレクトロのようなファンクの粘っこさもある。"イフ・アイ・ワズ"では、グライム式のR&Bを展開する。汚れて、そして、どこまで汚れている。歌は、何を言っているのかわからない。この先のことなど何もわからない。本当に素晴らしい"詐欺"からの1枚。グライム......ああ、痺れる。

Jessie Ware - Running | PMR Records


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 SBTRKT、あるいはジョーカーのアルバムでも歌っている女性シンガー、ジェシー・ウェアの2枚目のソロ・シングルで、両面ともにリミックスを担当しているのが前回のこのコーナーで紹介したディスクロシュア......このような形で頭角を現してきた。もっとも、ディスクロシュアが自分たちの曲でやっているUKガラージ風のビートはここにない。これはベース・ミュージックを通過した、完璧なハウス・ミュージックである(ジョイ・オービソンの流れ)。ジェシー・ウェアのまったくパワフルな歌/ヴォーカリゼーション、そしてキャッチーなメロディも肝だが、ディスクロシュアのグルーヴィーなビートも見事。いやー、素晴らしい。ダンスの魅力満載。3ヴァージョンとも輝いている。

Fresh Touch - The Ethiopian EP | Angular Recording Corporation


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 これは今日の(とくにイギリスでの)トレンドのひとつ、ワールド・ミュージックへのアプローチ。デイモン・アルバーンとのDRCミュージックで味をしめたのか、アデルで商業的な大成功をおさめた〈XL〉の社長、リチャード・ラッセルが同じDRCミュージックのメンバーでもあり、また、キング・クルエルやジ・XXなどの仕事をこなしているロダイド・マクドナルドとのコンビによるシングルで、エチオピアで現地の人たちと録音した音源をもとにベース・ミュージックへと変換した4曲が収録されている。エチオピア人のコーラスがこだまする1曲目の"ハーラー・リズム"も、2曲目の"68ジョイント"も、B面2曲目の"アダージ・ライト"も、ダブステップというよりはグライム。ワールドなテイストを除けば、アンダーグラウンドへと回帰しようとしているダブステップの動きとも重なる。

LA Vampires by Octo Octa - Freedom 2K | 100% Silk


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 これ、ハウスっす。ローファイでもなんでもなく、4/4キックドラムを使ったハウス・ミュージックです。ベテラン・リスナーは、1990年代なかばあたりのロン・トレントやシェ・ダミエのディープ・ハウスを思い出しましょう。あの頃のラリー・ハード・チルドレンたちのハウスを軽めに展開した感じとい言いますか......。ビート的な新しさはない。しかし、たとえば"ホエアエヴァー"のような曲ではハウスのクリシェを使いまくりながら、ドリーミーな上ものとアマンダのセクシャルなヴォーカリゼーションによって惹きつける。"ファウンド・ユー"などはダンス・ミュージックであり、ヒプナゴジック・ポップでもある。ロサンジェルスでは踊りながら眠っているのだろう。気持ちよすぎる。5曲+リミックス1曲、計6曲入りの......EPなのかLPなのか。ジャケのアートワークも最高。

interview with Hot Chip - ele-king

 2006年のセカンド・フル・アルバム『ワーニング』は、ホット・チップの名を広く世に知らしめるとともに、こんにちまでのバンド・イメージを決定することになった代表作である。アレクシス・テイラー(ヴォーカル)の叙情的なソング・ライティングと、ジョー・ゴッダード(シンセサイザー)の乾いたサウンド・メイキングは、同時期にフェニックスが提示したようなダンス・フロア仕様のガレージ・ロックに交差する、エレクトロニックなディスコ・ポップの軌道を描いた。
 しかし〈DFA〉との邂逅によってスマートなダンス・アルバムとしてのアウト・プットを得たこの作品や、つづく『メイド・イン・ザ・ダーク』などの背後には、おそらくつねに2004年のデビュー作『カミング・オン・ストロング』がドグマとして意識されていたのではないかと思う。いま聴けば瀟洒なポップ・ソング集といったたたずまいのその作品は、実際にはそれぞれにマイナーなセンスを持っている彼らがなぜこんにちまでポップな表現にこだわってきたのかということの、ひとつの根拠となるようなアルバムである。

キミの両手にあるエンターテインメントの世界
腕の長さくらいの世界
"モーション・シックネス"


Hot Chip
In Our Heads

Domino/ホステス

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 エンターテインメント(ポップ)の世界といっても、それは卑小なきみの両腕の長さに収まるものだ......ホット・チップには、つねに自らの拠って立つ場所に対するアイロニカルな認識があった。アイロニーとしてのポップというのは、それじたいはありふれた批評意識であるが、移り変わりのはやいポップ・ミュージックのシーンにあって実践をつづけることはむずかしい(また、その実践が目的化してしまっても意味がない)。
 5作目となる本作『イン・アワー・ヘッズ』で、彼らははじめてメンバー外の人間をプロデューサーとしてむかえた。それは彼らがなぜポップを志向し、ホット・チップというバンドをつづけているのかということの意味を整理するためではなかったかと思う。各メンバーはすでに優れたサイド・プロジェクトを持っていて、そこで自由にそれぞれの嗜好を試している。
 ホット・チップとはすでにただやりたいことをやるプロジェクトという以上のなにかだ。その互いのバランスを塩梅するのが今回のプロデューサー、マーク・ラルフということになるだろう。 "ルック・アット・ホエア・ウィ・アー"や"ナウ・ゼア・イズ・ナッシング"など今作には思いきってR&B調の歌ものトラックがいくつか収録されている。ながく聴いているリスナーには少々カドが取れたように感じられるかもしれないが、次のステージをめざすアルバムとして、誠実でリアルなヴィジョンがある。むしろよりひろく新しいリスナー層によって咀嚼されていく作品ではないだろうか。ドラムマシン担当のフェリックス・マーティンはほのぼのとした人柄をしのばせながら答えてくれている。

ダンス向きのサウンドにしたいと思ったし、押し出しの強い、シングル向きなサウンドというね。ダンスフロアでもいける、クラブでもいける、そういうものを目指してたんだ。

『Warning』まではホーム・レコーディングが基本スタイルで、前作『One LifeStand』もその原点に戻る作風でしたが、今回はマーク・ラルフとともにスタジオで制作が進められたのでしょうか?

フェリックス:これまでもアルバムのなかで3、4曲はスタジオでレコーディングしてたけど、1枚通して1箇所のスタジオでレコーディングするっていうのは初めてだった。レコードのサウンド的な面で必要だと思ったんだよ。そこに僕らの友だちのマーク・ラルフが来てくれて、プロデュースやレコードのエンジニアリングを努めてくれたんだ。共同プロデューサーとしてね。当然、彼はいろんな「おもちゃ」を持ってるからさ。音楽的なおもちゃをね。

レコーディングの模様を教えてください。

フェリックス:今回は時間をかけてじっくりと、去年の8月から今年の1月、2月くらいまで休み休みしながらやっていたんだ。あまり締切のこととかも考えずに、自分たちに作れる最高の音楽にすることだけを考えて。これまで作ったレコードのなかでもっともミックスやサウンド的に満足しているアルバムになったと思う。今回のスタジオはクラブ・ラルフというところだった。いままでやってたみたいに、家で半分作ってきて、っていうのもできたと思うけれど、せっかく機材がたくさんあったからね。ホーム・スタジオだとそうはいかないし、そばに何でもわかる人がいてくれて作業するほうがよっぽどわかりやすい。実際にできあがったものを見ても、やっぱりはっきりと違うと思った。ここが違う、って明確に名指しできることではないけれど、たしかに違いはあると思う。より大きく、よりひろがりがあると思ったよ。

音色もアレンジも豊富で、情緒的なソングライティングが基調となった前作『One Life Stand』に対して、今作はよりハードでディスコ寄りな作品であると感じます。制作にあたってメンバー間ではそうしたコンセプトが共有されていたのでしょうか。

フェリックス:そう、ダンス向きのサウンドにしたいと思ったし、押し出しの強い、シングル向きなサウンドというね。ダンスフロアでもいける、クラブでもいける、そういうものを目指してたんだ。それが僕らにとって大事なことだったから。それだけじゃなくて"ルック・アット・ホエア・ウィ・アー"や"ナウ・ゼア・イズ・ナッシング"のように内省的な曲もあるけど、それはアレクシスが書きたいと思う曲だったんだ。それもアルバムのいち部だし、それがなかったらホット・チップじゃない、と思うんだよね。ハウス・ミュージックとクラブ・ミュージックとのラヴ・アフェアがあってこそのサウンドだと思ってる。

『イン・アワ・ヘッズ』というタイトルがアルバムの内容を指したものだとすれば、いまあなたがたの頭のなかや音楽は、とてもすっきりと整理されているように思われますが、いかがでしょう?

フェリックス:そうだね、実際は歌詞から取ったんだけど。1曲目の"モーション・シックネス"のなかに出てくる歌詞なんだ。それから、最後の曲にも出てくるかな。このレコードを聴いている70分くらいの間は、僕らの頭のなかが少しのぞけるよ、という意味もあるね。アルバムのタイトルをつけるときに、単純にシングルとか、アルバムの曲のタイトルにするのはイヤだったんだ。もう、それはやりつくしちゃったからね。

"ルック・アット・ホエア・ウィ・アー"や"ナウ・ゼア・イズ・ナッシング"といった、R&B的でときにブルージーですらあるナンバーは、これまでのホット・チップからすれば異質なキャラクターを持っていますね。作品のなかでも絶妙なタイミングではさまれます。これらはどのように生まれてきた曲なのですか?

フェリックス: "ルック・アット・ホエア・ウィ・アー"は僕らがアメリカンR&Bを聴くのが好きなことから生まれた曲だね。古いデスティニーズ・チャイルドとか、Rケリーとか。この曲はアメリカでシングルとしてアピールすると思うんだ。"ナウ・ゼア・イズ・ナッシング"はアレクシスが途中まで書いて、いちどやめて、もういちど書き直したといういきさつがあるんだよ。ちょっとビートルズ風というかポール・マッカートニー風でね。僕らはみんなマッカートニー・ファンなんだよ。

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チャールズ・ヘイワードやロバート・ワイアットともまたやりたいと思うし。プロデューサーだったらティンバランドやブライアン・イーノとか。どうせだったらデヴィッド・ボウイも言っちゃおうかな(笑)。


Hot Chip
In Our Heads

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今作『イン・アワ・ヘッズ』でアレクシスとジョーが手掛けた曲はホット・チップ以外の活動期間に作られているものも多いということですが、アバウト・グループや2ベアーズでの経験からのフィードバックは感じますか?

フェリックス:たしかに、他のプロジェクトに参加して、いろんなテクニックとか新しいワザを覚えてくることはあるよね。他のミュージシャンと一緒に仕事することで学ぶことはたくさんあると思うし。それをホット・チップに持ち帰ってくることはあると思う。でもホット・チップで大事なことはジョーとアレクシスとみんなが参加して作ること。それがグループとして、バンドとしての意義だと思うんだ。彼らがサイド・プロジェクトを持っている、ということは、ホット・チップにとってというより、彼らにとって意味のあることなんだろうね。アレクシスはアバウト・グループが好きで、ああいうサウンドの音楽が好きなんだけど、ホット・チップに戻ってきたら、頭をきり替えてポップの考え方に変わるんだ。

チャールズ・ヘイワード(ディス・ヒート)は引き続きの参加となりましたが、彼が加わることには音楽的にどんな効果を期待していましたか?

フェリックス:彼はすばらしいミュージシャン、ドラマーで独特なプレイスタイルを持ってるし、スタジオでも前向きなパワーを出してくれているんだ。彼が部屋にいてくれるだけで素晴らしいと思うような、みんながすごく影響されるエネルギーを出してくれるんだ。彼がいっしょにプレイしてくれるだけで光栄だと思うよ。

生ドラムの使用はあなたの視点からするとホット・チップの音楽にどのような影響を与えていると思いますか?

フェリックス:そう。レオ・タイラーもまたドラムを叩いてくれてるし、ほかにもパーカッションではいろんなミュージシャンに来てもらってるし、バンドのライヴでプレイしてくれるロブ・スモウトンとか、彼もすばらしいギタリストだと思う。多くのミュージシャンに来てもらって、彼らの解釈によって曲が変わるのを聴くのがとても好きなんだ。だからそういう人たちに来てもらうことができて、とてもうれしく思ってるんだ。

曲順について特に意識されている部分はありますか? 毎回かなりの曲数になりますね。

フェリックス:うん。すごく意識するよ。アルバムのなかで曲の流れとか、アルバムとしての一体感を考えてどうするべきか、考えるのはとても大事なことだと思ってる。まず1曲目はアルバムの導入としても大事だから、あの曲があってよかったと思う。そこから、聴く人の興味をそらさないように、流れを変えないように気をつけた。それはDJをやってて覚えたことだと思うんだよ。人の気持ちを盛り上げて、それを維持していく方法って。DJでは大事なことだから。曲数に関しては、本当はもっと入れたいと思ったんだけどね。でも10曲、11曲に収めなくちゃいけないから。だから本当はアルバムに入れたかったのに、さまざまな理由で入れられなかった曲がたくさんあるから、近々Bサイド・アルバムを出したいと思ってる。

"ウォント・ウォッシュ"のようなサイケデリックな作品は『メイド・イン・ザ・ダーク』以降には出てきませんが、ありえたかもしれないホット・チップのもうひとつの姿として、エスニックな要素やサイケデリックな表現、あるいはアンビエントな作風を思い描くことはできますか?

フェリックス:あの曲はちょっと変わったサウンドだよね。他にあんなサウンドの曲は作ってないから。将来的にまたやってみようと思うかもしれないけど、いまのところは思いつかないし......。でも、あの曲のことを持ち出すなんておもしろいね。もし、こういう曲が好きなんだったら、ほかの連中にも伝えとくよ(笑)。もっとできるかもしれない。

2008年リリースのレコード・ストア・デイ限定シングルは「ナイト・アンド・デイ」のダフニ(カリブー)によるリミックスでした。ダフニ自身もその名義ではエスニックなサイケデリアを追求していますが、どういう経緯で彼が手掛けたのですか?

フェリックス:彼はむかしからの友だちでね、もう何年も前からいつかやってくれと話してたんだけど、ようやく実現したんだよ。リミックスとDJと。携帯のなかの「電話帳」探してたら、彼がいたからかけてみたらOKしてくれた、って感じだね。

その「ナイト・アンド・デイ」では政治的な詩作で知られるロバート・ワイアットのような大御所、「アイ・フィール・ベター」(2010)でのボニー・'プリンス'・ビリーとのコラボレーションまで、ポップスに収まらないディープな方向性を持ちあわせたホット・チップですが、あなたがいま注目したりいっしょに仕事をしてみたいと思うアーティストはいますか?

フェリックス:プリンスなんかいいよね。誰でもいいんだったらやってみたいよ。もちろん、ロバート・ワイアットともまたやりたいと思うし。プロデューサーだったらティンバランドやブライアン・イーノとか。どうせだったらデヴィッド・ボウイも言っちゃおうかな(笑)。いまは自分たちだけで手いっぱいだけど、ツアーが終わったらやってみたいことはいっぱいあるよ。もうすぐ日本のツアーもあるしね。

〈ドミノ〉移籍となったことでバンドにとって大きな変化はありましたか?

フェリックス:もともとむかしから知ってた人たちだし、友だちだったからとてもよくしてくれてるし、自由を与えてもらってるよ。だから移籍してよかったと思ってる。

あなたにとって今作中どの曲がもっとも印象深いでしょう?

フェリックス:僕がいちばんすきなのは1曲目の"モーション・シックネス"かな。シングルの"ナイト・アンド・デイ"もライヴではすごくいいと思うんだ。

MANDOG - ele-king

Mandog web - Mandog Official Info : https://mandog.info/

「ROOM FULL OF RECORDS」
マンハッタンレコードのハウスセクション主宰レーベル「ROOM FULL OF RECORDS」記念すべき第一弾シングル。
"ライブ演奏が可能なオリジナル曲とそのリミックス"
をコンセプトにワールドワイドな展開で国産ミュージック紹介の一旦を担う事を目指す。
第一弾は、未だにシーンに多大な影響力を持つドイツ発プログレッシブロックバンドCANの日本人ヴォーカリストであったダモ鈴木氏に絶賛され、当初のギタリストを変更してツアーに同行されたという実力派ギタリストMandogによるオリジナル曲を、DJ Harvey等要人が関わる最重要レーベルの一つ<International Feel>から堂々のリリースを果たし世界的知名度を上げるDJ GONNOがリミックス。オリジナルが持つ多重録音によるサイケデリックなプログレ感とGONNO独特のビート感と空気感が融合した作品。
https://www.roomfullofrecords.com/

2012.06.15 (FRI)
ENESPNO.1 ROOM FULL OF RECORDS KICK OFF PARTY @ eleven
LIVE: MANDOG、 KAORU INOUE
DJ: LOVEFINGERS、THE BACKWOODS aka DJ KENT、5IVE、CHIDA

2012.06.19(MON)
MANDOG LIVE & DJ GONNO @ DOMMUNE

ギターを弾きたいと思わせてくれた曲


1
CAN - Oh Yeah 「Tago Mago」 - United Artists Records

2
Manuel Gottsching - Echo Waves 「Inventions For Electric Guitar」 - Kosmische Musik

3
Les Paul - Lover「The New Sound」 - Capital Records

4
寺内タケシとブルージーンズ - 津軽じょんがら節「レッツ・ゴー・エレキ節」 - King Records

5
Suicide - Ghost Rider「Suicide」 - Reachout International Records

6
Johnny Mathis / Open Fire 「Open Fire, Two Guitars」 - Columbia

7
Dick Hyman - Evening Thoughts 「Moog」- Command

8
V.A. - ヌドクパ族の音楽 「世界民族音楽大集成 中央アフリカの音楽」- King Records

9
Raymond Scott - Little Miss Echo 「Soothing Sounds For Baby Vol.3」- Basta

10
Django Reinhardt / Nuages 「The Quintet Of The Hot Club Of France」- Decca

interview with Jazzanova - ele-king

ビットとバイトからなる世界に生きている
一緒になれるのはネットの世界だけ "アイ・ヒューマン"

 ジャザノヴァとは、温かきジャズやソウル、そして最新のエレクトロニックの激突だった。たとえば、ジャズなど生楽器によるヴィンテージな音楽、ドラムンベースのような打ち込みによるクラブ・ミュージックを並行して聴いてきた僕にとって、ある時期までそうしたふたつのジャンルは別モノとして接していたが、1997年に登場したジャザノヴァは、生音を好む耳とクラブの耳との交流をうながした。
 ジャザノヴァは、もともとはサンプリング主体の音楽だったけれど、たしかにそこには最初からライヴ感と臨場感があった。15年も前にリリースされたデビュー曲「Jazzanova EP」は、生とエレクトロニックの混合、ヴェンテージと最先端を組み合わせがある。ドイツらしくバウハウス調のデザインにパッケージされたそれは、クラブ・ジャズの新境地を切り開いた名盤として知られている。
 彼らの初期の影響はアメリカのヒップホップ(ATCQやジャングル・ブラザース)だが──そこがベルリンのテクノ一派とは違っている──、彼らにはセンスがあり、なによりも勤勉さと緻密さとテクニックがあった。やがて、ジャザノヴァはヨーロッパのジャズとマスターズ・アット・ワークやデトロイト・テクノをミキシングした。彼らのレーベル〈コンポスト〉はジャズ・ハウスの引率者となり、他方で彼らは、そして、いわゆるnu jazzの走りともなった(そしてもうひとつの彼らのレーベル〈ソナー・コレクティヴ〉は、その後、新しいヨーロッパ・ハウスの潮流を生んでいる)。


Jazzanova
Funkhaus Studio Sessions

Sonar Kollektiv/Pヴァイン

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 ベルリンを拠点とするジャザノヴァは、ステファン・ライゼリング、アクセル・ライネマー、ロスコ・クレッチマンのプロデューサー・チーム、そしてユルゲン・フォン・ノブラウシュ、アレクサンダー・バーク、 クラアス・ブリーラーのDJチームからなる。ベルリンにおけるクラブ・ジャズの最重要拠点である。
 2002年にリリースされたファースト・アルバム『イン・ビトゥイーン』では、うまさや熱狂だけではなく、彼ら自身の深いエモーショナルな側面も強調しているが、2008年に由緒ある〈ヴァーヴ〉からリリースされた『オブ・オール・シングス』では、アジムス、ドゥウェレ、ホセ・ジェームス、ベン・ウェストビーチなどなど豪華なゲストを招き、それまで以上に生演奏の比重を増やし、よりダイナミックで華麗なサウンドを確立している。ちなみに『オブ・オール・シングス』のクローザー・トラックが、大人に成長することを拒む少年の気持ちを歌っているモリッシーの"ダイアル・ア・クリシェ"(1988)カヴァーだったことは実に興味深い。
 そして、先月リリースされた4年ぶりのサード・アルバム、『ファンクハウス・スタジオ・セッションズ』で、ジャザノヴァはまったくの生バンドとなった。デジタル化する世界とは逆行するように、彼らはビットとバイトの世界よりもアナログを選び、サンプリングよりも生演奏に徹し、ジャザノヴァ流のバンド・サウンドの完成へと向かった。アルバムにおける唯一の書き下ろし曲"アイ・ヒューマン"がそうなったことの本心を明かしている。
 いずれにせよ、美しい歌、心躍る演奏、それらヒューマンな行為のなかの陶酔する甘美な時間......我々がなぜソウル・ミュージックを必要とするのか、その理由がここにはある。
 ジャザノヴァをステファン・ライゼリングとともにオーガナイズしている中心人物のアクセル・ライネマーに話を訊いた。

バックステージでも空港でもemailをチェックしたり、Facebookのコメントをチェックしたりと、これも僕たちの生活の一部になっている。まあ、当たり前なことだと思う。でも隣に座っている人とSkypeで会話をするのではなく、向い合って心のこもった会話をすることは大切なことなんだ。

まずはアルバム完成おめでとうございます。とても人間味あふれる素晴らしい内容で、いつまでも色褪せないアルバムだと感じました。まず、今回のこのバンド・プロジェクトを試みることになった経緯を教えて下さい。

アクセル:このバンド・プロジェクトのきっかけは2009年にロンドンで開かれたジャイルス・ピーターソンのワールドワイド・アワードだった。ジャザノヴァは今年で結成15年になるんだけど、前作の『オブ・オール・ザ・シングス』では、いままでのプログラミングとサンプリング主体とは違って、ミュージシャンをたくさん使って制作した。だからジャザノヴァのDJは世界中でプレイするたびに各地で「なんでバンドを連れてこないの? DJだけなの?」と質問され続けてきた。だから僕とステファンは「すべてサンプリングで制作された自分たちのエレクトロニック・ミュージックをどうやってステージ上で再現しようか」と話し合ってきた。
 最初はやり方がわからなかったけど、『オブ・オール・ザ・シングス』はドラムスだけがプログラミングされたものだったから、もしかしたらいまならバンドで再現することができるかもしれないと思って、そこで以前から一緒に仕事をしてきたミュージシャンを招いた。ミカトーンのポール・クレバーはいつも僕たちの楽曲でベースを弾いてくれていたし、セバスチャン・シュトゥッドゥニツキーは音楽的なディレクターとして楽曲の別アレンジを作る際に協力してくれた。前のアルアバムではオーケストラやストリングス隊など多くのミュージシャンと制作していたから、一緒にステージで演奏するのは難しいと思っていた。でも、セバスチャンが別のアレンジを作ってくれたので9人編成で演奏することができるようになった。

打ち込み、ダンス・ミュージックに飽きてしまったんでしょうか?

アクセル:飽きたってことはないね。ライヴだってダンス・ミュージックだろう。"フェディムズ・フライト"のようなクラシックから"アイ・ヒューマン"のような最新曲まで演奏するよ。充分にダンサブルな曲だし、パーティ用のセットでもあるからね。クララ・ヒルやラ・ルーの作品をプロデュースしたり、たくさんレコーディングしてきたんで、スタジオでの作業もどんどん良くなっていって、その制作過程を自分たちの楽曲にも活用できると思った。だからステファンはもっと作曲にフォーカスするようになってきたんだ。それでもプログラミングでの制作に飽きたわけじゃないよ。いまでもビートはクレイジーな感じにプログラムしているしね。

これまでの制作との違いはなんでしょう?  こだわりの部分や、苦労したこと、予想もできないハプニングなどがあったら教えて下さい。

アクセル:もっとも変わったことといえばフル・バンドとともにスタジオに3日間入ってレコーディングしたことだね。いままでのジャザノヴァの制作ではホーン隊で1日、次の日にストリングスをレコーディングしたりと、すべてレイヤーになっていて、録音も分けてやっていた。
 だけど今回はフル・バンドで一緒にスタジオに入ってレコーディングしたんだ。これは本当に新しいことだったね。しかもかなり上手くいったよ。一緒にツアーをしてきたバンドだから楽曲も知っていたし、演奏も熟知してたからね。このスタジオ・セッション・アルバムはジャザノヴァのスタジオで制作された楽曲とライヴ・ショーとの架け橋だと思っている。ライヴについて言えば、つねにステージの上でジャザノヴァのスペシャルなサウンドが出せるわけでないけどね。ときには20分しか準備時間がないときなんかもあって、9人のバンドでみな違うセッティングだと正しい音が出せないこともある。だけどこのレコーディング・セッションではヴィンテージなマイクをたくさん持ち込んでレコーディングして、自分でミックスをした。だからサウンドがスタジオでのプロダクションとライヴ・バンドの中間なんだ。

前作から4年間ブランクがありましたね。たとえば、その間、アレクサンダー・バークはクリスチアン・プロマーとのコンビで〈Derwin Recordings〉から積極的に作品をリリースしていましたよね。」他のアーティストは、どのような活動を続けていたのですか?

アクセル:ステファンと僕はバンドと一緒にずっとツアーに付きっきりだった。新しいアルバムはすぐリリースできると思っていたんだけど、ツアーや準備に思った以上に時間がかかってしまった。新しい体験だったからね。でもすごく楽しいことだったよ。それから他のミュージシャンのスタジオ作業やプロデュースでも忙しかった。たとえば〈P-VINE〉からリリースしたフィン・シルヴァーも僕のプロデュースだし。フィン・シルヴァーとはレコーディング、ミックス、ツアーとたくさんの仕事をしてきた。この4年間はこんな感じだったよ。

各個人が有名なって、なかなか一緒に制作をする時間がないと思いますけど、どのようにやり取りし、制作を進めたのですか? また、衰えることのない制作意欲の源はなんでしょう?

アクセル:ジャザノヴァのメンバー全員がレコーディングに参加したわけではないんだ。オリジナルのメンバーは僕とステファンだけだった。このふたりですべてのプロジェクトをオーガナイズしている。ライヴ・バンドはジャザノヴァのオリジナルのメンバーとはまったく違ってライヴのために結成した新しいものだよ。DJたちは世界中をツアーしたり、コンピレーションを作ったり、自分たちのレーベル、〈ソナー・コレクティヴ〉のことに集中したりとみんな忙しいから、少し休んでからまた制作を再開したんだ。

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ジャザノヴァのDJは世界中でプレイするたびに各地で「なんでバンドを連れてこないの? DJだけなの?」と質問され続けてきた。だから僕とステファンは「すべてサンプリングで制作された自分たちのエレクトロニック・ミュージックをどうやってステージ上で再現しようか」と話し合ってきた。


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手本にしたバンドや、影響を受けたバンドはいましたか?

アクセル:そうだね、たとえばば昨日は僕にとってはダラダラした感じの日曜日だった。ゴロゴロしながらたくさんの音楽を聴いたよ。僕にとってはいろんな音楽のサウンド・スケープに飛び込んでいくような感覚が楽しくて、どうやって曲を作っているのか考える。とても刺激的で、すぐにでもスタジオに入ってレコーディングしたくなる。スタジオで多くの人と働くことも素晴らしいことで、さまざまな人がいるからそれぞれが音楽に何を感じているのか、音楽で何を表現しようとしているのかを理解しようとする。だからみんなの音楽から影響を受けるんだ。

ジャザノヴァのデビュー当時は、ボサノヴァ色が強かったように思いますが、あの頃に比べ、よりジャズやソウル・ミュージックへ傾倒している理由はなんでしょう?

アクセル:ジャザノヴァが音楽を作りはじめた90年のはめの頃、僕とステファンは、ア・トライブ・コールド・クエストやジャングル・ブラザーズといったヒップホップにどっぷりとはまっていた。それと同じ頃にレコード収集もはじめて、サンプリングに使えそうなものを探していたし、他のアーティストがサンプリングに使っていたものもたくさん聴いた。だからソウル、ファンク、ジャズには大きな影響を受けてきた。時間が経つに連れてロックだったり、カントリーなんかも聴くようにもなったけどね。
 音楽を作るときには新しいスタイルを見つけたり、異なったスタイルのなかから類似点を見つけることができる。これが自分のスタイルを確立するのに影響をあたえるんだよ。だから最初にはまったヒップホップやソウルからの影響が大きいんだ。

デトロイト出身のポール・ランドルフをヴォーカルに起用してますよね。前作でも彼は歌っていますが、どうしてこうなったんですか?

アクセル:自然な流れだったんだ。彼はクールなソウル・シンガーだからね。うまくいったと思っているよ。

どこでポール・ランドルフとつながったんですか?

アクセル:ジャザノヴァのDJ、ユルゲンがオーストラリアでDJしたときに、ポールはアンプ・フィドラーとツアーしていた。そこで彼らが会った。数年たってからポールがベルリンでライヴをやった際にまた連絡を取って、そのときのアフター・パーティでポールが即興で歌った。彼がマイクを取ったときは本当に驚いた。こんなにすごいシンガーだったとは思ってなかったからね。そこで新しいアルバム(『オブ・オール・ザ・シングス』)で数曲歌ってくれないかと尋ねてね。そして"レット・ミー・ショー・ヤ"と"ラッキー・ガール"、それからモリッシーの"ダイアル・ア・クリシェ"のカヴァーの3曲をレコーディングした。
 ライヴ・プロジェクトをはじめる際に「一緒にツアーできるのは誰だろう?」と悩んだ。あのアルバムに参加してくれたホセ・ジェームスとベン・ウェストビーチもツアーで相当忙しかったし、全員で一緒にツアーを回るのは難しかった。そこでポールがいいと思った。ポールならベースも弾けるし、いろんな曲も歌える。ホセが歌った"リトル・バード"もポールの個性で歌えるし。
 ポールがマイクを握ると、ジャザノヴァ・バンドのフロントマンにぴったりな感じだった。素晴らしい決断だった思うし、彼もちょうど時間があったからね。いまではジャザノヴァ・バンドの重要な一員になったよ。ライヴ・バンドで制作した曲も、ポールはすべての曲を歌えるからね。

また、次のシングルでは同じくデトロイトのハウスDJ、マイク・ハッカビーをリミキサーに起用しているようですね。デトロイトへの憧れ、デトロイトからの影響みたいなものはあるのでしょうか?

アクセル:ベルリンとデトロイトはエレクトロニックな音楽で昔から繋がっている。もちろん初期のテクノの時代からDJはデトロイトに影響を受けてきた。僕はそこまでデトロイトの音楽に詳しいわけではないけど、ジャザノヴァのオリジナル・メンバーのユルゲンとアレックスが"アイ・ヒューマン"のリミキサーにマイク・ハッカビーを選んだ。"アイ・ヒューマン"は、僕たちが交流のあるカール・クレイグなどに代表されるデトロイトのエレクトロニックなダンス・ミュージックからの影響ももちろん受けている。

さらにその次のシングルはウクライナの気鋭ヴァクラのリミックス盤がリリースされそうですが、リミキサー選びの基準は?

アクセル:"アイ・ヒューマン"のテンポやフィーリングはクラップ的なリミックスにぴったりなんだ。歌もヴァクラの音にはまるんだ。クラップな感じのミックスができるDJを探していた際に、僕たちのブッキング担当のダニエルがヴァクラを紹介してくれたんだよ。

また、ここ数年で友だちのDJやアーティストが数多くベルリンに引っ越してしまいました。あらためて訊きますが、ベルリンの魅力はなんでしょう? 他の都市と違うと感じるところがあったら教えてください。

アクセル:ベルリンはちょうどいい街なんだ。多くの人がベルリンを訪れるよ。ここに住んでDJをはじめたり新しいプロジェクトをはじめたりね。ただ、ある人はベルリンで仕事を見つけるのは難しいとも言うけどね。正しい人と繋がらなければ、シーンが独特なので、仕事を得るのは難しいかもしれないな。イギリスからきたDJレッケムみたいにうまくやっている人もいるけど。また、ベルリンに作曲をしに来るミュージシャンもけっこうまだいるよ。ジョナサン・ジェレマイアーの曲を書いているヘリテイジ・オーケストラのメンバーとも最近出会ったんだけど、彼もロンドンからベルリンに移ってきたんだ。まぁ、手頃な価格で生活できる街なんだよ。

アルバムには、15年前のデビュー・シングル曲"フェディムズ・フライト"のリメイクも収録されていますが、当時自分たちが作った作品を今再び聴いてみた感想は? また、歳をとったなと感じるところはありますか?

アクセル:"フェディムズ・フライト"は僕たちにとってすべてのはじまりだった。思い出の曲だ。だからこそリメイクを作るべきだと考えたんだ。いまでもライヴで演奏するとき、ベースラインがはじまるとお客さんがすぐに反応してくれる。いまではバンド・メンバーはツアーを通して曲を熟知したから、ソロ・パートを入れたり、レコーディングもリラックスしてできたりと、とてもクールな感じなんだ。昔を振り返ると、すべてをプログラミングするのは時間もかかりすぎたし、考えすぎていた。いまではいろいろな音の個性が見えてくるので、僕自身もこの曲が大好きなんだ。ソロ・パートもかっこいいし、本当にうまくリメイクできたと思っているんだ。
 この話を訊いてくるとき、みんな「レジェンド」という言葉を使うんだ。ちょっと怖い言葉だと感じるときがあるよ。自分も歳を取ったのかなーと感じてしまうんだ。もちろん実際に歳は取ったけど、でも気持ちは若いままだよ。すべてが新しくてエキサイティングに感じるしね。毎日が学ぶことの連続でそれが重要なんだ。ライヴでは20代の若者が僕たちをレジェンドのように見ているときがある。でも彼らは"フェディムズ・フライト"を知っている。とても不思議な感じがするんだ。

昔のように、新譜のガンガンにレコードを買ったり、クラブに遊びに行ったりするんですか?

アクセル:DJとステファンはいまでもたくさんレコードを買っているね。僕は昔ほどではないけど、いまでもクラブには行くよ。僕はそこまでたくさんのレコードを買わないけど、いまはマイクやプリアンプといったスタジオ用の機材をもっと買うようになった。みんなはレコードに夢中で僕は機材に夢中なんだ。

アルバムで唯一の新曲"アイ・ヒューマン"の歌詞には、人間と人間の「生」のつながりの大切さが歌われていますよね。いまのネット社会に対する危機感が込められてるように思いましたが、いかがでしょうか?

アクセル:仲の良い友人の話なんだけど、みんなで集まって食事に行ったとき、彼女はみんなで話しているあいだもブラックベリー(スマートフォン)を手にとっていま何をしているかをずっとネットにアップしていたんだ。彼女は仲の良いたくさんの友だちに囲まれているのに、本当は楽しんでいないように見えた。ずっと投稿していたんだね。ちょっといき過ぎな感じがして、これを曲にしようと思ったんだよ。でも彼女はこの曲が自分のことだとは知らないけどね。
 この話は誰にも当てはまることだよね。バックステージでも空港でもemailをチェックしたり、Facebookのコメントをチェックしたりと、これも僕たちの生活の一部になっている。まあ、当たり前なことだと思う。でも隣に座っている人とSkypeで会話をするのではなく、向い合って心のこもった会話をすることは大切なことなんだ。だからこの曲は楽しい曲にしたかった。「みんなで集まって何かしたり、楽しもうよ!」ということを言いたかった。情熱を込めたかったんだ。これは本当にピースフルな曲なんだよ。

数年前に比べ、12インチ・シングルのリリース・タイトルは増加している(量は減りましたが......)様に感じますが、あなた達もレコード(盤)に対する愛着、リリースすることに対するこだわりはお持ちですか?  また、最近ではデータのみのリリース音源もありますが、どう思いますか?

アクセル:もちろん愛着はあるよ。音質を考えてアルバムをアナログでも作ることにした。これはDJの伝統でもあるしね。しばらくのあいだアナログの人気は下火だったけど、また復活してきた。CDしか売ってなかった店でも、いまではアナログもまた買えるようになってきたんだ。次第に戻ってきた感じがするよ。多くの人はmp3をダウンロードするけどね。でももちろん僕たちはアナログも大切にするよ。DJもみんながアナログだけでプレイするわけではないけど、「ある音楽」にとってはアナログは必要なものなんだ。
 やっぱりいまでも手に取れるものが好きなんだ。情報を知ることができる読むことができるブックレットも重要だ。どこでレコーディングしたのか、誰が作曲したのか、バックグラウンドの情報を知ることができるからね。デジタルだと見逃してしまうことだよ。

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気持ちは若いままだよ。すべてが新しくてエキサイティングに感じるしね。毎日が学ぶことの連続でそれが重要なんだ。ライヴでは20代の若者が僕たちをレジェンドのように見ているときがある。でも彼らは"フェディムズ・フライト"を知っている。


Jazzanova
Funkhaus Studio Sessions

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あなたたちにとって音楽は仕事ですか? 趣味ですか?

アクセル:実際には仕事ではないね。ときには簡単なことではないけれど、僕たちにエナジーを与えてくれるんだ。音楽なしでは生きられないよ。ライヴのときは前の方の観客がバンドにあわせて反応するのを見るのは気持ちのいいことで、一体感を感じる。頑張った甲斐があったと感じるんだ。

制作しているのは売れる音楽? それとも好きな音楽?

アクセル:売れる音楽を作っているとは思っていないよ。たぶんできないね。つねにジャザノヴァは僕たちのなかから出てくるものを制作する。僕たちにはレディ・ガガのような音楽はできないし、彼女にも僕たちの音楽はできないんじゃないかな。これは個性であって真似できるものではないよ。ヒットを作ろうとは思わない。一度ヒットしてしまうと、同じようなものを作ろうと思うんだけど、同じものは作れないよ。それでは成功したとは言えないでしょ。ラナ・デル・レイも一緒。セールスはとてもいいし、他と同様な曲は入っていない。同じようなことを繰り返ししようとは思わないんじゃないかな。

ある意味、このアルバムでジャザノヴァにとってのひとつの最終地点/完成形を迎えてしまったと思うのですが、次はどこへ向かうのか、次に向かう先はもう明確に見えているのか?

アクセル:休もうとは思っていないよ。次のアルバムを作りたいんだ。向かう先は今作で作った道の延長だろうね。バンドで作曲した曲を増やしたいし、また原点に帰ったインストの曲も入れたいな。そういう曲もジャザノヴァらしい曲だと言えるし、新しいテクニックや、新しいサウンドを見つけたい。
 完成形と言われるのが不思議だよ。このアルバムではジャザノヴァは大して変化していないからね。すべての音符をきっちりプログラミングしてきたことから、ライヴ・バンドによってレコーディングするという変化はあったけどね。自分たちでこれ以上コントロール出来ないこともあって、諦めたこともあったけど、いろいろと学ぶことができた。僕とステファンにとってはとても楽しい経験だったよ。もしバンドがいいグルーヴを持っていたら、レコーディングしたものを切り刻んでつなぎ合わせることはしない。ひとつの音が遅れてたり、もしくは走っていたとしても、良い感じに聴こえるのならOKなんだ。昔はすべてをきっちり作ろうとしすぎていたけどね。ポールのヴォーカルもきっちりと正そうとは思わなかった。たとえ音がずれていても、それがライヴ・パフォーマンスなんだ。これは僕たちの主張でもある。すべてを完璧にしようとは思わない。感情に従って、全体像を見る。相互作用を聴くんだよ。でももしかしたらおかしなところがあるかもしれないけどね。

最後に日本のリスナーにメッセージをお願いします。

アクセル:いつでも日本には行きたいと思っているよ。僕たちの住むベルリンとは全く異なる街だからとても楽しいしね。長く滞在して文化を学べたらいいと思ってるよ。どこへ行ってもライヴに集中して、インタヴューなど受けたりするとその街をじっくり探検することができないからね。みんな日本が大好きで、友人からは日本に行くことを羨ましがられるんだ。素晴らしいファンがいてくれて、素晴らしいコミュニティがあるしね。日本に行けることを本当に楽しみにしているよ!

ゆっくり生きていたときを忘れないで
いっしょにどんちゃん騒ぎをして祝おう
"アイ・ヒューマン"


I Human feat. Paul Randolph


Believer


Let It Go


【ジャザノヴァがバンドセットでの来日決定!】
BROOKLYN PARLOR presents
"GOOD MUSIC PARLOR" LIVE at BLUE NOTE TOKYO


JAZZANOVA LIVE featuring PAUL RANDOLPH
ジャザノヴァ・ライヴ featuring ポール・ランドルフ

DJ : DJ KAWASAKI (7.16mon.)、沖野修也(Kyoto Jazzz Massive) (7.17tue.)

2012 7.16mon.-7.17tue.

7.16mon.
 [1st]Open4:30p.m. Start6:00p.m.
 [2nd]Open8:00p.m. Start8:45p.m.
 ★DJ
 [1st]4:30p.m.-6:00p.m.
 [2nd]8:00p.m.-8:45p.m.

7.17tue.
 [1st]Open5:30p.m. Start7:00p.m.
 [2nd]Open8:45p.m. Start9:30p.m.
 ★DJ
 [1st]5:30p.m.-7:00p.m.
 [2nd]8:45p.m.-9:30p.m.

https://www.bluenote.co.jp/jp/artist/jazzanova/

Actress - ele-king

 彼が"女優"と名乗ることは思考回路にちょっとした目眩を与えるかもしれないが、同様に、女優の音は彼のレトリックと風変わりなテクスチャーをもってリスナーの気を引いている。
 あるいはこの新作は、ポスト・ダブステップ時代における『アンビエント・ワークス』と説明できるかもしれない。が、あんな風に愛らしく、リスナーを桃源郷に連れていってはくれない。女優という彼=ダレン・カニンガムの、そして第3のアルバムは『R.I.P』――レスト・イン・ピース、安らかに眠れ。どう聴いてもこれはユーフォリックな音楽だ(つまり、気持ち良い、快楽的な音楽)。ところがアルバムのテーマは、「死」そして「楽園の喪失」であると彼は『ガーディアン』の記者に話している。
 そうしたディストピックなテーマを持ちつつ、アルバムは本当にスリル満載だ。周知のように、彼は、レディオヘッド、『シャンガーン・シェイク』(https://www.ele-king.net/review/album/002029/)、あるいはパンダ・ベアらの作品のリミキサーとして抜擢され、期待以上の再構築を見せている。デイモン・アルバーンのDRCプロジェクトにも参加している。ポスト・ダブステップにおいては5本の指に入る売れっ子だとも言える。

 『R.I.P』をジャンルで分類すれば、──ダブステップでもポスト・ダブステップでもなく──テクノだ。オープニングの"レスト・イン・ピース"は、じりじりとしたノイズをもったレクイエムのような趣を持っているが、いわゆるアンビエント・トラックだ。続く"上がること(Ascending)"では、催眠的なテクノ・ループが重なり、チョップされたストリングスが挿入され、曲はゆれている。
 "聖水(Holy Water)"はノイズ、そして浄土めいたストリングスが絡まる曲で、"大理石叢(Marble Plexus)"の透明なシンセサイザーはポリゴン・ウィンドウの郷愁を彷彿させる。"ウリエルの黒いハープ(Uriel's Black Harp)"は汚れたループの不吉な協奏曲で、続く"ジャルダン(Jardin)"はサティ風のピアノによるアルバム中もっとも静謐なトラックだ。悲哀に満ちた"ヘビ(Serpent)"では控えめながら4/4キックドラムがミックスされている。これらの曲はひとつひとつが短く(長くて5分)、CDで聴いているとわりと小気味よく感じられる。ぱっと曲が終わり、はじまる。総じてアンビエント調の作品だが、冗長さはない。
 ダレン・カニンガムは、アルバムを死を思ってはじめたと『ガーディアン』の記者に語っている。「わずかな希望を与えるスペースをすぐでにも埋めてしまいそうな死......」
 "タルタロスの影(Shadow From Tartarus)"や"知識の木(Tree of Knowledge)"、"大ガラス(Raven)"......抽象的な電子音の反復によるなかばコズミックな響きを持ちながら(そして低域を響きかせながら)、彼の「死」の感覚は展開される。「我々は死んでいる」と、彼は語る。「人生で唯一、確実に保証されていること、すなわち死」、そう話している。

 "パラダイスの洞穴(Caves of Paradise)"にはシャックルトンめいたパーカッションが注がれ、アルバムの最後から3番目の"支配者の落書き(The Lord's Graffiti)"では再度4/4キックドラムが、こんどはやかましく叩かれ、緊張感のあるカール・クレイグ流のストリングスが疾走する。それはアルバム中、最初のクラブ・サウンドだと言える。それから"N.E.W."の静寂を経てクローザー・トラックの"Iwaad"へ、これはアルバムにおいてふたつ目のクラブ・サウンドだ。ミニマル・ビート、音域をくねらせ歪むベースライン、チョップされた声......、点滅するストロボを幻視しそうだ。ちなみにハウス/テクノが彼の原点であり、デビュー時の彼は毎日のように記憶が飛ぶほど吸っていた。

 「俺の時間をとことん無駄にしろ」と言ったのはジョン・ライドンだったが、ダブステップにもある種自虐的なところがあった。ダブステップは、灰色やガラクタに目を向けた。それはしかし、パンクのアイロニーではなかった。本当に灰色だったのだから。レスト・イン・ピース、安らかに眠れ。

Chart by JET SET 2012.06.11 - ele-king

Shop Chart


1

Bepu N'Gali - I Travel To You - Todd Terje Remix (International Feel) /
幼少期を南アフリカにて過ごしたという経歴を持ち、同時に収集していたカセット音源からアフロ・ビートやカルチャーを習得していったというボツワナ出身のニューカマーBepu N'Galiをフックアップ。

2

Bottin - Lust (Tin) /
Bear Funk、Eskimo、Italians Do It Betterといった人気ディスコ・レーベルからリリースを重ねてきたヴェニスの気鋭プロデューサー、Bottinによるスペース・ディスコ最新トラックを渾身のワンサイデッド・プレス。

3

Janka Nabay & The Bubu Gang - An Letah (True Panther) /
DeloreanやLemonadeらのリリースでお馴染みUsレーベルTrue Pantherから、500年の伝統を持つ西アフリカ/シエラレオネ共和国発のアフロ・グルーヴをモダンに蘇らせた衝撃盤が到着です!!

4

Lord Finesse - Pull Ya Card / Check Me Out Baby Pah (Slice Of Spice ) /
クラシックとして名高い95年リリースの3rdアルバム『Awakening』に惜しくも収録されなかった楽曲がコチラ。2003年にレア音源集としてコンパイルされましたが、インスト収録は本盤のみとなっています!

5

Anthony Valadez - Just Visiting (Plug Research) /
2009年にDublubからKutmahとのスプリットも印象的だったLaの新鋭ビートメイカー=Anthony Valadez。SonnymoonのAnna Wiseや、Miles Bonny, Damon Aaronらと共に美しくまどろむ世界を形成した全11曲!

6

Hot Chip - In Our Heads (DOMINO) /
2010年の世界的ヒット作『One Life Stand』に続く2年ぶり5枚目のアルバムは、名門Dominoに移籍してのリリース!!Us盤アナログ2枚組、ダウンロード・コード封入。

7

The Saint Petersburg Disco Spin Club & Lipelis - I Need It (Teardrops) /
Shanti~"Tusk Wax"といった要注目レーベルのコンピレーションに参加してきたThe Saint Petersburg Disco Spin ClubとLeonid Lipelisのロシアン新鋭コンビによるデビュー作。

8

Tyrone Evans / Greenwood Rhythm Coalition - Rise Up (Names You Aan Trust) /
'70~'80年代にかけて活躍したジャマイカのシンガーTyrone Evansが"Wackie's"から'83年にリリースしたアルバム『For Lovers Only』に収録されたレア・パーカッシヴ・ブギー「Rise Up」を復刻。

9

The Backwoods - Cloud Nine (Esp Institute / Ene) /
躍進が続く国産インディペンデント・レーベル"Ene"とLovefingersが指揮する"Esp Institute"による話題沸騰コラボレート・リリース第一弾、FonのDj Kent A.K.A. The Backwoodsによるデビュー傑作アルバムからのリミックスEpが遂に入荷しました!!

10

V.A - Oh Everywhere! (Love Edits) /
Miami Sound Machine「Dr. Beat」ネタのフロア・ライク・エディット前作も素晴しい一作だったミステリアス・エディット・シリーズ"Love Edits"からの最新作。引き続き大推薦!!
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