ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 別冊ele-king 日本の大衆文化はなぜ「終末」を描くのか――漫画、アニメ、音楽に観る「世界の終わり」
  2. Nídia & Valentina - Estradas | ニディア&ヴァレンティーナ
  3. Bonna Pot ──アンダーグラウンドでもっとも信頼の厚いレイヴ、今年は西伊豆で
  4. Neek ──ブリストルから、ヤング・エコーのニークが9年ぶりに来日
  5. ゲーム音楽はどこから来たのか――ゲームサウンドの歴史と構造
  6. アフタートーク 『Groove-Diggers presents - "Rare Groove" Goes Around : Lesson 1』
  7. Overmono ──オーヴァーモノによる単独来日公演、東京と大阪で開催
  8. interview with Conner Youngblood 心地いいスペースがあることは間違いなく重要です | コナー・ヤングブラッドが語る新作の背景
  9. Loren Connors & David Grubbs - Evening Air | ローレン・コナーズ、デイヴィッド・グラブス
  10. interview with Sonoko Inoue ブルーグラスであれば何でも好き  | 井上園子、デビュー・アルバムを語る
  11. MODE AT LIQUIDROOM - Still House Plantsgoat
  12. Columns ノルウェーのオイヤ・フェスティヴァル 2024体験記(前編) Øya Festival 2024 / オイヤ・フェスティヴァル 2024
  13. interview with Tycho 健康のためのインディ・ダンス | ──ティコ、4年ぶりの新作を語る
  14. Black Midi ──ブラック・ミディが解散、もしくは無期限の活動休止
  15. Wunderhorse - Midas | ワンダーホース
  16. Columns ノルウェーのオイヤ・フェスティヴァル 2024体験記(後編) Øya Festival 2024 / オイヤ・フェスティヴァル 2024
  17. interview with Jon Hopkins 昔の人間は長い音楽を聴いていた。それを取り戻そうとしている。 | ジョン・ホプキンス、インタヴュー
  18. KMRU - Natur
  19. Columns 「ハウスは、ディスコの復讐なんだよ」 ──フランキー・ナックルズの功績、そしてハウス・ミュージックは文化をいかに変えたか  | R.I.P. Frankie Knuckles
  20. Fabiano do Nascimento and Shin Sasakubo ──ファビアーノ・ド・ナシメントと笹久保伸によるギター・デュオ・アルバム

Home >  Reviews >  Album Reviews > Teams- Dxys Xff

Teams

Teams

Dxys Xff

AMDISCS / プランチャ

Amazon

橋元優歩   Jun 11,2012 UP

 ヒップホップやハウス、あるいはディスコ・ミュージックに通じていない筆者のようなリスナーから心待ちにされるのもむべなるかなだ。意外なことにあたまの"セヴン・デイズ・ア・ウィード"は、アニマル・コレクティヴ『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』のポスト・ヒプナゴジック的解釈ともいうべきトラックで、ベン・アレンがポップに翻訳してみせたアニマル・コレクティヴの躁的なハッピー・サイケデリアを、さらにハイに、さらにドリーミーに加速したようなトラックである。深いリヴァーブ、オーヴァー・コンプでびりびりになったプロダクション、昂揚をつづけるシンセの波、たっぷりと響くバス・ドラム。『フィールズ』の天地をひっくりかえすような混沌にも同じようなフィーリングがあった。ただ、こちらのテンションにわずかに危険なにおいがただようのは、アニマル・コレクティヴの3連符を4拍打つようなビート感覚に対し、16分音符を3拍子で打とうとするためだろうか。なんとなくそこには精神よりも肉体のハイを求めるようななまなましさがある。曲名もそういうことかもしれない。

 インディ・ロックとエレクトロニックなダンス・ミュージックがかつてなく接近し、驚くほどのヴァリエーションを生みだす状況を、さまざまなレーベルがひろいあげている。〈ヒッポス・イン・タンクス〉や〈メキシカン・サマー〉、あるいは〈100%シルク〉などがフォーカスするのはまさにこの混淆である。『チームス vs. スタースリンガー』として〈メキシカン・サマー〉からリリースされたスプリット・シングルが、日本国内でも輸入盤店を中心として喝采をもって迎えいれられたことは記憶に新しいが、そのチームスのほうのフル・アルバムがいよいよ解禁された。ノックスヴィル出身、現在はLAで活躍するこの繊細な身体つきの黒人プロデューサー、ショーン・ボウイは、このリリースによってまたかなりのファンを得ることになるだろう。ドリーミーなディスコ・ポップとして、またローファイでエクスペリメンタルなIDMとして、ショーンはじつにのびやかなビートを描く。自らのフェイヴァリットとしてニルヴァーナやクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、キンクスやジェファーソン・エアプレインを挙げていて驚くが、サイケデリックでリヴァービーなものに惹かれながらも、ソリッドな音を追求したいということなのかもしれない。

 トロ・イ・モワをよりストイックなファンクネスで締め上げたようなディスコ・ナンバー"スタンツ"、ドラマチックでスローなビートでたたみかける"ワット・ターンズ・ユー・オン?"とつづけることでチームス本来の流れに引き戻し、軽やかにR&Bをはさみながら表題の"デイズ・オフ"などユーフォリックなドリーミー・ヴァイブへと展開していく。後半のローファイでアンビエントなサウンド・スケープは、まさにポスト・ヒプナゴジックが描くべき原野を浮きぼりにしているように思われる。

 チルウェイヴがどこからかつれてきたあの幻想のサマー・フィーリングはだれかが解くことになるだろう。それはあらかじめいつか解かれるものとしてのはかなさを持ったものであったし、それがゆえにせつなくエモーショナルにさまざまなアーティストの音を縁どった。『デイズ・オフ』(と読むのだろう)の秀逸なジャケットは、そうした夏の虚構性をクリティカルに解体する。グラフィックな海と南島にはそれがどこにも存在しない人工の夢であるという皮肉が美しくきざみこまれているようにみえる。クリア・ヴィニールに淡くマーブルな柄が入っているのがなんともせつなく痛い。醒めながらみる夢......チルウェイヴのその後を知的な筆致で描きおこすような、秀逸な1枚だ。

橋元優歩