「S」と一致するもの

Chart JET SET 2012.11.27 - ele-king

Chart


1

三田格 / 野田努 - Techno Definitive 1963-2013 (P-vine)
およそ全250 ページ・カラー、テクノの名盤600枚以上のアートワークを掲載。各年代毎、最重要アルバムと最重要シングルを選びながら、エレクトロニック・ミュージックの歴史も読み取れます。

2

Atoms For Peace - Default (Xl)
Modeselektor率いる50weaponsからのデビュー12"は数分で完売。1st.アルバム『Amok』から、最前線Ukベースを消化した話題沸騰トラックが先行カットされました!!

3

Ame - Erkki (Rush Hour)
Kristian Beyer & Frank Wiedemannからなる"Innervisions"お馴染みの才人デュオAmeによる新作12"。"Running Back"主宰のGerd Jansonが監修したコンピ・アルバム『Music For Autobahns』の冒頭を飾る話題作が先行12"カットにて限定リリース!!

4

Juk Juk - When I Feel / Wars (Nommos)
Four Tetに見出され、主宰レーベルTextからデビューを飾った謎の新鋭Juk Juk。過去2作も爆裂ヒットした自主レーベルNommosからの第3弾12"が遂に登場しました!!

5

Poolside - Harvest Moon / When Am I Going To Make A Living (Poolside Music)
A面は『Pacific Standard Time』収録のNeil Young大傑作カヴァー。そしてB面はネット上で大人気を博していたSade名曲のメロウ・ディスコ・リエディット!!

6

Letherette - Featurette (Ninja Tune)
ご存じFloating Points率いるEgloのオフシュートHo_tepからデビューを飾ったUkベース・ディスコ人気デュオLetheretteが名門Ninja Tuneへと電撃移籍して放つハウスDjも直撃の1枚です!!

7

Slugabed - Wake Up (Ninja Tune)
お馴染みNinjaの天才Slugabed。名曲"Sex"を収めたアルバム『Time Team』に続いて、淡雪の如く舞う美麗シンセをまとったフィメール・ヴォーカル・ベース・ポップ歴史的傑作を完成です!!

8

Auntie Flo - Rituals (Mule Musiq)
チリアン・ミニマル新鋭Alejandro Pazのリリースでも注目を集めるHuntleys & Palmersの代表格Auntie Flo。傑作1st.『Future Rhythm Machine』に続く新作がなんとMule Musiqから登場です!!

9

Luciano - Rise Of Angels (Cadenza)
Mirko Loko Remixを収録、世界各地のフロアを盛り上げた"Rise Of Angels"が遂にシングル化!!

10

Miracles Club - U & Me / Ocean Song (Cutters)
エクスペリメンタル通過後のインディ・シンセ・ハウスの先駆者、Miracles Club。通算4枚目、Cut Copy主宰Cuttersからは2枚目となる12インチ!!

ICHI-LOW (Caribbean Dandy) - ele-king

偶数月第二月曜@The ROOM、奇数月第四火曜@虎子食堂等々のレギュラーでCaribbean Dandyはプレイ中。その他個人活動はTwitterの@ICHILOWをチェックしてください。

X'mas間近で毎年ヘビロテのアルバムの中からベスト10


1
JOHN HOLT - Happy Xmas (War Is Over) - Trojan

2
JOHN HOLT - Last Christmas - Trojan

3
JOHN HOLT - A Spaceman Came Travelling - Trojan

4
JOHN HOLT - Santa Clause Is Coming To Town - Trojan

5
JOHN HOLT - White Christmas - Trojan

6
JOHN HOLT - Blue Christmas - Trojan

7
JOHN HOLT - I Believe In Father Christmas - Trojan

8
JOHN HOLT - Auld Lang Syne - Trojan

9
JOHN HOLT - Lonely This Christmas - Trojan

10
JOHN HOLT - My Oh My - Trojan

Cero - ele-king

 街中がひっくり返ったような、東北地方の変わり果てた港町。その破壊のイメージが未だに私を離さない。比喩でもなんでもない、街は失われてしまった......と同時に、その街の記憶を持つ人びともまた、あるいは失われてしまったのだと思うと、奇妙な戦慄があった。完結してしまった喪失というものは、語り手を持たないものなのだと。
 私たちが放り込まれた「以後」の世界は、完結していない喪失が進行と回復を繰り返しているようなややこしい場所だ。もちろん、死や別れは最初から私たちの人生のオプションだし、その意味では何も変わっていないという言い方もできるだろう。だが、やはり、多くの人が見る世界の在り方が大きく書き換えられたのは間違いないと思う。
 その点、セロもたしかに、変わった。少なくとも、この新作『My Lost City』は、東京をもう以前とは違う(あるいは失われた)街と呼ぶことで生まれている。だが、ここには喪失を直視したことによって生じ得る重苦しさの類は、いっさいない。彼らは祝祭を継続する道を選んだのだ。いわば、現実に対する非服従としてのポップ・ミュージックを奏でている。喪失と、祝祭を、同時に引き受けることによって、それは高らかに鳴っている。
 
 "大停電の夜に"が持った奇妙な予見性、そして、『WORLD RECORD』(2011)がそれと同時に持った同時代的な切迫感との乖離。そのギャップが彼らを苦しめていたことを、私は知らなかった。「でも、その時、村上春樹が『海辺のカフカ』で「想像の世界においても、人は責任を負わなければならない」というようなことを書いていたなって、頭をよぎったんです。(https://www.kakubarhythm.com/special/mylostcity/)」――そう、セロは、より強力な物語を立ち上げることで、虚構の作り手としての責任を引き受けたのだろう。
 より大きな現実には、より大きな虚構を。"水平線のバラード"のア・カペラで導入され、以降、賑やかに、カラフルに、48分が目まぐるしく展開していく。何かヘヴィなものを振り切るように、ある種の切実さを持って、『My Lost City』は明確に祝祭性を志向する。現実からもっともっと遠く離れて。悲観や感傷ではなく、さらに大きな、情熱的なファンファーレで、「以後」の世界に生きる人びとを迎え入れている。

 音楽としてのスケールも遥かに大きくなっているように思う。はっぴいえんど、鈴木恵一、ジャズ、ファンク、合唱、テクノ、キューバ音楽......打楽器にしても、金管にしても、鍵盤打楽器にしても、1曲のなかでも目まぐるしくシャッフルされ、特に演劇仕立てのプログレッシブ・ポップな展開を見せる"船上パーティー"は中盤のハイライトとなる。
 また、セロ a.k.a. Contemporary Exotica Rock Orchestraというネーミングは実に的確で、チェンバー・フォーク的な緻密さと、ストリート・バンド的な豪快さを兼ね備えたムードがあり、何より、『My Lost City』からはたくさんの人の気配がする。スティールパンやトランペットで参加しているMC.sirafu、ドラムス、サックスで参加しているあだち麗三郎らは事実上のバンド・メンバーのようで、演奏のクレジットは賑やかなことになっている。
 そう、音楽を作ることがあまりにも簡単になったこの時代に、数分のポップ・ソングのために数十人が集まっている。その光景を想像するだけでも感動的である。ルー・リードのクラシック"A Walk on the Wild Side"(1972)をトロピカル・サイケ・ポップにリアレンジしたような"cloud nine"、合唱に包まれながら、幽霊船に乗って暗闇の中を突き進む"Contemporary Tokyo Cruise"、そしてアルバム本編の実質的なエンディングを飾る"さん!"の底なしの多幸感には、私は小沢健二を感じた。

 しかし『My Lost City』は、そこで終わらない(終わっていれば、いわゆる出来過ぎた「名盤」である)。"わたしのすがた"で、物語の主人公は現実の東京に戻っている。虚構の旅を終え、CDと文庫本でぐちゃぐちゃになった狭い部屋で、現実に思いを馳せる彼は、『My Lost City』を聴き終えたあなたそのものだ。そこで何を思う? 音楽で盛り上がったところで、「この街」は変わらない。そうした無力感とも取れる感情を吐き出し、『My Lost City』は、エレクトロニックな閉塞感とともに、ある意味では汚い終わり方をする。
 ポップ・ミュージックが多くの人を熱狂的にアップリフトさせる時代は終わったし、その不可能性に逆に陶酔するというシニシズムの時代も終わったのだと思うが、それを自覚した上で、個人以上/社会未満としての都市(シティー)の気分や気配を、そのまま音楽にしてしまうことを、セロは諦めていない。それでも、"わたしのすがた"が生まれなくてはならなかった(あるいは録音されなければならなかった)理由を考えると、なんともアンビヴァレントな気持ちになる、、、。

 少し話を変えよう。『My Lost City』が持つ意味について。筆者は昨年、「スモール・ミュージック」という言葉でこの国のあまり売れていない(だが素晴らしいと思える)音楽を形容したけれども、これは、かつて本誌編集長がロバート・クリストガウを引用する形で紹介した「セミ・ポップ」という概念とは少し違う。細分化に対して下位層に潜るのではなく、そこがどれほど狭い場所であれ、堂々とポップの可能性にベットする音楽――『ピッチフォーク』の表記に倣えばスモール・ポップ――の時代は、欧米ではアーケード・ファイアの『Funeral』(2004)で始まっているが、『My Lost City』はつまり、この国のインディ・ポップにおける始まりのはじまりである。
 また、地球儀を軽くスピンするようなその豊かな音楽性を踏まえれば、『Illinois』(2005)前後のスフィアン・スティーヴンスに対する「風街」からの回答とも言えるし、あるいは、90年代に『LIFE』があったのなら、私たちの時代にはこれがある、『My Lost City』はそういう作品だ。奇跡のようなポップの現象はもう、このさき生まれ得ないのだろう。だが、奇跡をともに願える仲間を、セロは見つけたようだ。それもまた、小さな奇跡なのではないだろうか。「いかないで、光よ/わたしたちはここにいます」("Contemporary Tokyo Cruise")――この祝祭は、きっと徒花ではないし、ひとりの天才が作り上げた孤城でもない。枯死していく風景の中に浮かび上がる、輝かしい宴の虚像。この時代を笑顔で生きようとする人びとに捧げられた、巨大な祈りとしての音楽が、ここにある。

interview with LOVE ME TENDER - ele-king

夜目が覚めて自分が最悪な人間だと思ったとき
思い出して欲しい
街は下水道やサーカスのように面白い場所だということを
ルー・リード"コニー・アイランド・ベイビー"


LOVE ME TENDER
SWEET

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 街を歩くのは楽しい。とくに夜更けから朝方にかけては。僕にiPodはいらない。頭のなかにはたくさんの音楽が鳴っているから。
 ラヴ・ミー・テンダーのデビュー・アルバム『スウィート』が完成した。彼らは正真正銘のシティ・ポップス・バンドだ。彼らの先行シングル「トワイライト」は、本当の意味での今日の渋谷の道玄坂の裏側の世界が描かれているが、アルバム『スウィート』はそれをさらに発展させている。ドリーミーでダンサブルなソフト・ロックをバックに、ロマンティックな週末の夜の片隅の出来事の断片、休日のドライヴ、そしてビルの谷間に輝く朝日を描いている。
 ラヴ・ミー・テンダーは、ドラムを叩きながら歌を歌っているMAKIを中心に、サブカル界隈では賞賛とディスのリツイートを浴びている鍵盤担当の高木荘太、ふだんはDJをやっているサックスのACKKY、ベースのTEPPEI、ギターのARATAの5人から成る。彼らは、渋谷......といってもあんまりおしゃれ感のない裏通りの、そのまた裏通りの雑居ビルのなかにあるDJバーを拠点に登場した。クラブ・カルチャーは、いまや欧米でも、ホーム・パーティやウェアハウス・パーティといったアンダーグラウンドな広がりを見せている。より、地下に潜伏しながら堂々と音楽をやっているという、逆説的な態度を示している。ラヴ・ミー・テンダーの本質もそこにある。

いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。(高木壮太)

"メスカリーター"からはじまっているのが良いと思ったんですよね。〈メスカリート〉という場所は、まあ、知る人ぞ知る秘密の場所であり続けたわけじゃないですか。それがこう、明るみにでることはどうだったんでしょう?

壮太:いや、もう、ルー・リードの"ワイルドサイドを歩け"の感じじゃないですか。

ハハハハ。もう、カミングアウト、カミングアウト(笑)! まあ、それはともかく、この10年というのは、クラブ・カルチャーがかたやアゲハのようなビッグ・クラブにになって、その片方でDJバーのようなものが増えていった10年だと思うんですけど、 ラヴ・ミー・テンダーはそういう、増えていったDJバー文化から出ていったバンドなんだろうなと思ったんですね。そういう意味で、"メスカリーター"からはじまるのはもっともだなと思いました。

壮太:いやー、僕も最初、"メスカリーター"といったときはびっくりしましたよ。いまさらなんか語ることがあるのかって。

マキ:はははは。

壮太:どうなんですか、ラヴ・ミー・テンダー=〈メスカリート〉になっているんですか? お抱えバンドのように。

いや、それはもうそうでしょう。モータウンにおけるファンク・ブラザーズみたいなものでしょう。

マキ:他にもバンド、いますけどね。

壮太:他にもいるけど......、俺たちなの?

マキ:そうなっちゃいましたね。

壮太:だったら光栄です。すごいバンドいっぱいいるのに。

マキ:ニビルブラザースでもミシマでもない。

壮太:〈メスカリート〉の名前を汚さないようにしないと。

マキ:汚さないように。先輩に怒られないようにね。

そこは意識しているんですか?

テッペイ:レペゼン・メスカってことですか?

そう。

テッペイ:そこは俺、逆ですけどね。

まったくない?

テッペイ:むしろあれを壊したいですね。もう最近はメスカって言わないようにしてますからね。

堂々と歌っているじゃない(笑)!

テッペイ:いや、前に若い子から、友だちに「メスカ行こうかな」って言ったら「危ないから行かないほうがいいよ」と言われたと聞いたこともあって、もう絶対に言いたくない。悪いほうにとらえられている。

マキ:ホントにね。

なおさら、そこは良いほうに解釈してもらわないとですよね。世間の評判を覆しましょうよ。

壮太:浄化作業ですよ!

アッキーはもう長年DJをやってるわけですが、DJバー文化についてどう思ってますか?

アッキー:それはね、耳が肥えている人、10人ぐらいの前でやることじゃないですか。すごいうるさ型の人たちの前で、がっつり10時間とかやる、みんな訓練をしているんで(笑)。そういうDJカルチャーはそれ以前まではなかったかもしれないですね。

奥渋谷だけじゃなく、下北沢にもあるし、いろいろありますよね。けっこう名前のあるDJが、10人や20人でいっぱいになってしまうような空間でDJをやっていますよね。

アッキー:あれもう、うるさ型の人たちの前で、どれだけ濃いものを聞かせられるかっていうことだと思います。

マキ:修行だよね。

アッキー:朝3時以降とか、狂っちゃいますからね。それでも自分は淡々とやらなきゃいけない。

マキ:時空がゆがむ瞬間というんですか。

アッキー:解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。

たしかにね(笑)。

マキ:そこからさらにどん欲な人だけが残るっていうか。

アッキー:だからそれを毎晩マキちゃんとかが見てたから。

壮太:渋谷で一番遅くまで開いてる店。

アッキー:やっぱり、僕はDJバーに聴きに行くのが好きですね。

アラタ:たんに年齢層が、そのひとたちが高くなってきてるっていうのもあるんじゃないですか。

それも一理あるけど、だけどクラブはクラブでやっぱりたくさんできてて、そっちが好きなひとはやっぱりそっちに行ってたから。かたや、それとは違ったベクトルでもって、DJバーがたくさんできたなあと思って。

壮太:たとえば、ひばりが丘なんかにもDJバーが2軒あるんだけれども、そこはDJブースがインテリアになってるらしいんですよね。でも、DJバーといっていい流行ってる小バコは昔からあったでしょう。2丁目の〈ブギー・ボーイ〉とか。吉祥寺の〈ハッスル〉とか。

2丁目の〈ブギー・ボーイ〉って懐かしいねえ。

壮太:店にキースへリングがいてビール奢ったらTシャツに絵を描いてくれた。

ゲイ・ディスコですよね。

アッキー:新宿だったじゃない、文化的に。でもいまは、東京のなかでも吉祥寺、渋谷、って分散してきてて。

このあいだ三茶がすごいって聞いたよ。

アッキー:三茶もあって。そういう広がりっていうのはここ10年なんじゃないですか。で、地域性によってノリがぜんぜん違うんですよね。それが不思議、なんか(笑)。

壮太:昔何かだった店がああなってるの? 昔の若者はどこで溜まってたの? DJバーに来てる若者は。

アッキー:いや俺クラブだったからわかんない。DJバーとか行ったことなかったから、昔。

テッペイ:小バコなんじゃないの。10年前から、〈グラスルーツ〉に似たような店がいっぱいできたような感じがする。

アラタ:ああ、〈グラスルーツ〉ね。

壮太:〈グラスルーツ〉も最初ヒカルくんが回して誰もいない、客もいないって感じだったけど、平日でもみんな店にちょこちょこ行くようになって、超盛り上がるようになって。その後に三茶のバーもできたしさ、みんな繋がってたじゃない。〈グラス〉と三茶ってとくに。で、それのチルドレンな感じでしょ。

アラタ:〈フラワー〉とか関係ないじゃん、でも。あそここの間14周年で。〈グラス〉が15周年で。

壮太:そうだね。

〈フラワー〉って何?

アラタ:三茶の重要なバーなんですけど。六本木のとは違って。

ああ、聞いたことある。

アラタ:ポンタ秀一とかもよく来るらしくって。

テッペイ:〈グラス〉とか三茶で言うと初期の〈DUNE〉じゃん。小バコで盛り上がるみたいな。

メンバーのみんなは、どちらかというとDJバー的な密室的な、濃い空間が好きで。

アラタ:おしゃべりが好きっていうのがあるかもしれないですね。

マキ:おしゃべりですね、みんな。

テッペイ:テクノとかハウスとか、昔のクラブとかだと住み分けがあったかもしれないけど、DJバーだとハードコアのTシャツ着てテクノで踊るとか、そういうのを見て「お、カテゴライズされてなくて超おもしれー」と思って。デカいレイヴ行くよりも、そっちのほうが早いんですよ。ひとが集まってるから。

なるほどね。いま地方にもほんと増えているよね。それはあるシーンを形成しつつあるのかなという感じがするんですけど。でも、今回のアルバムの1曲目を"メスカリーター"にしたのはなんでなんですか?

アラタ:チルドレン・オブ・メスカリートとしての誇りじゃないですかね。

宣言というか。

壮太:いや単純に曲調なんじゃないの(笑)?

はははは。

壮太:メッセージ性なんかないでしょ(笑)。

マキ:あれはすごくわたしの気持ちが入っていて。

テッペイ:ライヴでもいつも1曲目でやっていて。

マキ:そう、なんか1曲目ぽい感じがして。

壮太:曲はデモ・テープの並びの通りなんですよ。デモ・テープに耳が慣れちゃったから、もうこれでいいや、みたいな。計算してないですね、この順は。

"ロマンティックあげるよ"がボーナス・トラックみたいな。

マキ:みたいな扱い。

壮太:俺はずっと反対してた、最後まで。

マキ:ははは、外圧が(笑)。

こうやって意見が分かれたとき、誰がまとめるんですか?

アッキー:まとまんないですね。まとまんないままぐちゃぐちゃーと進行していく。それが面白いんじゃないですか(笑)?

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時空がゆがむ瞬間というんですか。(マキ)
解像度の上がり具合が、朝3時以降、クラブとはちょっと違う。クラブはだいたい5時や6時で閉まってしまうけど、DJバーは昼までやったりするじゃないですか。(アッキー)


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神泉とか、その辺が曲のなかで舞台になってるじゃないですか。これはマキちゃん個人のものなのか、それともバンドで共有しているものなんですか?

マキ:バンドでも共有してるとは思いますけど、わたしはすごく濃い感じであの街にいたんで(笑)。どうしてもそういうワードが出ちゃいますけどね。

奥渋谷系とかって書いてるけど、実際は――。

壮太:神泉ですからね。渋谷じゃないですからね。

まあそうですよね。あの辺で、〈メスカリート〉やラヴ・ミー・テンダーの影響で何か生まれたりしたんですか?

マキ:何にも生まれていない。

ははははは、砂漠として(笑)。

壮太:巨大すぎて。ブラック・ホールだから。

マキ:ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。

一同:はははははは!

マキ:みんなにサンプルをこうやって渡してたから。

壮太:富裕層が朝3時ぐらいに物凄く狂ってるのを見てびっくりしたんですけどね。

アラタ:あと道玄坂が観光地化してるよね。

テッペイ:あそこ日光みたいじゃん、もう。

アラタ:黒人の人たちがタクシーのバンパーの上に乗って跳ねてたり、酔った白人のスーツの人たちが「俺は大使館職員なんじゃー」っつって警察官に絡んでたりするのを見たりすると、「敗戦国だなー」と思って。

はははははは!

テッペイ:たぶんまだ見れてない部分がいっぱいあると思う。うちらはたぶん、けっこうピースですよ。あんまり暴力とかなくて。もっと怖い部分とかあると思うし。

いやいや、でもみなさんじゅうぶん見てらっしゃるんじゃないですか。これはオフレコだけど、それこそ小林とかがさ、得体の知れないカラオケ・バーから悪酔いした客を引き連れてきて、緊張感が走ったり。

壮太:それはピースのほうですね。

テッペイ:アリのほうですね。

でもわけわかんないじゃない(笑)。

マキ:わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。

テッペイ:最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。

まあその話は後でしようかなと思ってたんですけどね。でもバーってお互いの距離感が近い分だけ、いい面もあるけど、逆に言うと、それこそ一見さんという言葉があるように、入りづらいっていうのがあるじゃない?

壮太:どうしてもね、バーはそうじゃないですか。常連はお互いの悩みごとや弱点を知ってて仲良くなれるんじゃないですか。一回そういうイニシエーションを経ないと、常連にはなれませんね。入りづらいと言えば入りづらいですよ。俺も〈メスカリート〉とか絶対ひとりじゃ行けないですよ。

テッペイ:みんな一見さんじゃん、最初は。

アッキー:いやでも、誰かに連れて来られるんじゃない?

マキ:わたしも誰かに連れて来られて、すごい勢いでバーンってドア開けたのが最初なんですよ、やっぱり。すごいベロベロで。もう2回目場所も覚えてない、みたいな。

じゃあマキちゃんも偶然入った?

マキ:そうですね。その前にほかの〈メスカ〉のパーティでまあいろいろ出会って。

壮太:俺もコバに「中途半端な店があるから行こう」って言われて。

(一同笑)

アッキー:海の家からずっと繋がってるんだよね。

マキ:わたしも海のパーティが最初。

アッキー:そのときぐらいから、だんだんこういうゆるいサークルというか、いまの仲間ができていった感じがする。

壮太:〈スプートニク〉ができる前に、あの場所でパーティやってたから。2000年ぐらいの話なんですけど。

そうなんだ。誰が主催してやってたの?

壮太:コバがやってたのかな。

アッキー:でももう〈スプートニク〉なんじゃない? それって。たぶんそれの流れだよ。

でも、音楽をやるっていうのは、ある意味バーとは逆ですよね。もうちょっと不特定多数に投げかけるものじゃないですか。バーの閉鎖感とバンドとの開放感と、っていうのはどうなんでしょうね。

壮太:でもバーはあくまでも使い勝手のいい部室として使ってるから。

ははははは。

テッペイ:いや、むしろ逆ですよ。それを変えたくて、いま帯でDJ入れてるんですよ。同軸にしたくて。いままでギャップがありすぎたから。

アッキー:それ〈火曜メスカ〉でしょ?

テッペイ:そう〈火曜メスカ〉の話。ほかの曜日は知らないけど。

〈火曜メスカ〉って?

アラタ:火曜だけ俺らが〈メスカ〉を開けてるんですよ。いま俺とテッペイなんですけど。まあ部室状態で。

テッペイ:1時とかに開けてたから、「それヤバい」っつって、せめて午前の前から開けるようにして。23時とかに開けて、DJもふたりぐらい呼んで、実験的にやってます。

壮太:社会性を持たせたくないってこと?

はははは。

マキ:社会性って(笑)。

だいたい僕の世代だとバーって「ぼったくりバー」っていうイメージがあるからね。中途半端に行ったらヤバいっていう。

マキ:たしかに、いくらかわかんないし。

バンドがデビューしたのが去年ですよね。で、お店を中心にしてみんながいて。この10年に街っていうのはどういう風に様変わりしたと思いますか? 

マキ:変わったのかなあ......。

あんまり思わない?

マキ:自分も変わっちゃってるから(笑)。

いや(笑)。だってさ、昔はさ、平気で公園通りの雑居ビルに個人商店が作れたわけだけど。

マキ:たしかに。自分も10年でだんだん奥のほうに移動してるかもしれないですね、行動範囲が。

壮太:駅の近くとかチェーン店しかないわけですよね。で、駅から離れるにつれて個人商店が増えていくっていう構造なわけでしょ、繁華街って。

その離れる距離がどんどん広がってるよね。

壮太:奥に行けば行くほどディープになるという。どこでもそうなんじゃないかな。新宿でも池袋でも。駅前は和民とかケンタッキー・フライドチキンとか、なんかそういうのばかりで。奥のほうに行くとだんだん変なバーが出てくる。

アッキー:でも職質の回数は増えたよね。

マキ:奥のほうは増えたよね。

壮太:〈エイジア〉の通りは渋谷署のボーナス・ステージですよ。

はははははは!

壮太:マリオの地下の面みたいな。コインざくざくの面。

マキ:あそこは防犯カメラがないから。ラブホ街って、だからおまわりさんがすごい多いの。

壮太:なるほど。

アッキー:スケボーで街を移動できなくなりましたね。

そういう意味で言うと、街から猥雑なものをどんどん排除しようっていうのがこの10年であったと思うんですけど。たぶん〈メスカ〉なんかはそういう砦となって(笑)、ふんばっているんだろうなと。

マキ:でも不思議だよね。何にも起こらないっていうか。

壮太:〈エイジア〉の通りみたいなプラスイオンがガンガン出てるとこに行くと、ちょっともう。そういうときはBunkamuraの入り口に行って、Bunkamura見ながらタバコ吸って、「俺はスノッブ、俺はスノッブ」って思う。

一同:ははははは!

プラスイオンって(笑)。去年『トワイライト』を出して面白いリアクションはありましたか? 

壮太:ぜんぜん知らないライヴ・オファーが増えましたね。全部アウェーで。

テッペイ:夜が合うって言われる、ツイッターとか見てる感じだと。

いや、そりゃそうでしょうね。

テッペイ:いや、昔「海が似合う」とか言われてたんで。

アッキー:ええー、そんなことないでしょ。

マキ:そんな時代あったの?

テッペイ:実際海とかでやってたじゃん。新島とか。

アッキー:知らないバンドと対バンすると、びっくりする。

アラタ:でも、クラブの夜中でバンドがうちらしかいなくて、DJとかじゃなくて、たとえば〈新世界〉とかで夕方から夜にいると、知らない客層がいて、それはすごい新鮮。

ああー。〈新世界〉のお客さんなんかはどうです? けっこう受け入れられてる?

アラタ:世代が近いのか、意外とMCがウケる(笑)。あともっと若い世代もいて。

マキ:若いよね。

アラタ:呼ばれて行くと、意外と対バンで面白いのがいたりとか。

アッキー:イン・ジャパン(Inn Japan)とやったときとか、面白かったですね。

イン・ジャパンって?

アッキー:高円寺の〈クラブライナー〉っていうけっこうちっちゃいライヴハウスがあって、イン・ジャパンって言うバンドがいて。

アラタ:サブカル臭が強い感じ。

壮太:メタ・ヘヴィメタ・バンドですね。

※小林=コバ(渋谷で汚い遊びをしている人でこの人を知らなければモグリ)

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何にも生まれていない。(マキ)
巨大すぎて。ブラック・ホールだから。(高木壮太)
ちょっとヘッドショップとかで、"マリフレ"がかかるぐらい。(マキ)


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自分たちよりも若い世代のリアクションなんかはどうでした?

壮太:ほとんど若いですよ、どこ行っても。

テッペイ:うーん、でもウケるのサブカル系ばっかっすね、なんか。

(笑)。

テッペイ:ほかに見るものがないからこっちを見てくれてる、みたいな。〈メスカ〉といっしょだな。メンヘラの最終砦みたいになってるという。

アラタ:だからジャズトロニカにいるような綺麗なお姉さんはいないよね。

テッペイ:そう、いない(笑)。

アラタ:客層が羨ましい、ほんとに。

テッペイ:一瞬かわいい子だとしても、なんかここ(手首)に巻いてたりとかする感じでしょ(笑)? だから勘繰っちゃうよね、全員。

アッキー:OLが買わないってこと?

アラタ:OLはジャズトロニカ。

でも、これだけ危うい言葉を使ってたら、それはやむを得ないというか。それは敢えてわかっててやってるでしょう?

アッキー:わかっててやってるところも、個人的にはありますよね、やっぱり。

それは手ごたえとして、伝わるものなの?

アッキー:伝わってるとは思うんですけど、誤解してるひとが多くて。

どういう風に?

アッキー:壮太くんの人格イコールうちのバンドみたいな。

はははははは!

アラタ:それは違うっていう。

壮太以外:それは違う!

アッキー:でもそれを考えると、壮太くんはいまサブカルの砦なんじゃないかっていう。それは違うって言ってますけどね。

テッペイ:かあちゃんから「あんたのバンドのひと、ドラッグの話しかしないけど」とか言われて。

壮太:(爆笑)

えっ、そんなこと言われたの!?

テッペイ:それ親父の還暦祝いのときで。

でもお母さんがそこまでわかるってすごいよね!

テッペイ:だからラヴ・ミー・テンダーで検索すると、壮太くんのツイッターが出てくるらしくて。ツイッターのやり方までは知らないと思うんだけど、見れるのは見れるじゃないですか。そのせいで、じいちゃん家住めなくなったからなあ......。

アラタ:ははははは! そうなの(笑)!?

テッペイ:だってオッケーが出て、その次の日いきなりダメになったから。

アラタ:でも壮太くんの荷物は置いてあるっていう。

壮太:知らないっすよ。

テッペイ:そうやって情報を得るのが、いまはいろんな入り口があるじゃないですか。そうなっちゃうのはしょうがないんですよね。それはそれで面白いんですけどね。そういう広がり方をしていて。

そこでどのぐらい伝わるかっていうのは難しい話だなとは思うんですけど。

壮太:いちばん反響があったのはele-kingですよ。でもあれ音楽の話してないですけど(笑)。結局だから怖いもの見たさとかそういう感じで(笑)。

いや、そんなことないですよ(笑)。「コード進行が好きで」とか「細野さんが大好きで」とか、ちゃんと話してるよ。

マキ:ちょっとだけありましたね。

壮太:それがちょっとしかないからそこが映えるんですよ(笑)。

いやいや。めちゃくちゃ音楽の話してたよ。

壮太:ひひひひ。

でも普通、アレじゃないですか? ここまであからさまにドラッグねたを表現するっていうのはさ。ほかにそういうバンドがいないからでしょう?

テッペイ:いや意識してないですよ(笑)。

壮太:今回はしませんよ。もう卒業しました。

アラタ:うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。

マキ:はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。

なるほどね。シングルほど直球な言い回しはしてませんが。でも今回は控えめながらも、相変わらずそのスタンスは貫いてるなっていうふうに思ったんですけど。

テッペイ:曲もそうですね。ぜんぶなんかこう、中和した感じですね。たぶん、いままでよりも。

あくまでもラヴ・ミー・テンダーの確固たる主題なわけでしょう?

アラタ:いや、ぜんぜんそんなことは......(笑)。

マキ:ないですよね。

テッペイ:でもわかんないよね。次のテーマはもしかしたら子どものことばっかりになっちゃうかもしれない。

マキ:そうなっちゃうかもしれない。いやでも、出産こそドラッグかもしれないんで。

ああ、それはほんとにそうらしいよ。

マキ:それを期待してる。気持ちいいならやってやる! みたいな。

男性陣:(爆笑)

その前に究極の痛みを乗り越えての気持ちよさらしいですけどね。

テッペイ:デトックス(笑)。

マキ:デトックスで(笑)。

壮太くんみたいな、肝の据わったひとはともかくとして――。

壮太:いや、肝据わってないですよ。

ははははは。

壮太:俺ここ3年でうろたえてる姿を見られてるんで。

テッペイ:それ女関係だけでしょ? 女関係以外はすげー肝座ってますよ(笑)。

はははは(笑)。自分たちより下の世代からどういうリアクションがあったの?

アラタ:あるのかなあ......?

テッペイ:ライヴのあとにブログを書いてたのがあって、たぶん若いやつだと思うんだけど、そこには「演奏はすごい良かったけど、怖かった」って。

はははははは。

テッペイ:たぶん免疫がないひとから見たら、見た目どうこうじゃなくてオーラみたいなのがダメみたいで。だからそういうひとは次ライヴ来ないのかなあと思っちゃって。演奏はいいんだけど、うーんみたいな、そういうのはあるのかなって。

壮太:わかるわかる、でも。怖いって言われるよ。ただ年がいってるからじゃないの?

テッペイ:うん、それもあると思う。

それはどういう意味なんだろうね。

壮太:感情移入ができない。

マキ:ふふふふふ。

昔で言うと、スピード・グルー&シンキというかね。

テッペイ:免疫がないものに接すると、さいしょパーって来るじゃないですか。わーって。そのあとにそれを好きになるか嫌いになるかは、そのひと次第だと思うけど。

アラタ:つけ胸毛じゃなくて、つけリストカットみたいにしたほうがいいかもしれない、うちらは。

壮太:くくくく。

あとはパロディもあるわけでしょう? それを嗤うっていう。

アッキー:根本的にユーモアっていうのはすごくあるかもしれないですね。シリアスというよりは、なんちゃって感は。

なんちゃって感はすごくあるよね。だってHBでやってるマキちゃんと、ぜんぜん別なわけだから。こんなにメンバーに個性の強い方が集まっていて、レコーディングはうまくいったんですか?

壮太:いきました。

マキ:はい。でも出前がちょっとね。

テッペイ:壮太くんがピザがいいって言い張って、ほかのひとが違うっていう。

そこでもめるんだ(笑)?

アッキー:マキちゃん魚ダメだから寿司もダメだし。

マキ:出前問題がけっこう大変でしたね。

前に2枚を出したことによって、自分たちで自信を得たことはあったんでしょうか?

テッペイ:技術的なことですけど、3作ともエンジニアが違ったので、いままでのふたりも良かったんですけど、メリット・デメリットがあったから、今回それぞれ自分の楽器に関しては録りやすくなったと思うけど。自分の音をこうしたほうがいいっていうのがわかったんで、そこは早かったと思う。

マキ:もともと時間もないし、そういう意味ではけっこうどんどんどんどん進めていけましたけどね。

アッキー:やっぱ週1でリハーサルに入ってたのは良かったと思ってますけどね。週1で、4時間。

マキ:部活っぽく。

歌詞はどうなんですか? 

マキ:そうですね。日々の生活のなかではっと思いついたことを書きとめて。

"リバウンド"も。

マキ:まあそうですね。

テッペイ:あれはもう"DIET"のアンサー・ソングを作ろうっつって。

ああ、なるほどね。"ムードウーマン"とかね、いいですね。これムードマンへの返答として(笑)。

テッペイ:まったく意味ないです(笑)。ムーディだからじゃないですか。

壮太:俺の作った映画にムードウーマンって出てくるの。架空の人物。

マキ:そうそう、あれに出てくる。

ラヴ・ミー・テンダーを面白がってくれればいいなと思うんで、怖がられたっていうのはちょっと残念だなと思って。

マキ:あと怒られたりとか。

怒られるっていうのは何なんですか?

アラタ:どこのイヴェント行っても「こんなのめんどくさいよねー」とか言いながら、結局最後まで残って飲んでて。スタッフからしたら「早く帰んねーかなこいつら」みたいな(笑)。もうベロベロになってて。

アッキー:電気がバーッとついて「早く出てってください」っていう(笑)。

マキ:「いつまで飲むつもりなんですか」みたいなね、多いよね。どこでも。

テッペイ:楽屋で怒られたこともあったもんね。ステージで弾き語りか何かやってて、「静かにしてください」って。楽屋でうちらで盛り上がってて、声が全部なかに漏れてたみたいで(笑)。

アラタ:でもそれはお店の問題で。

テッペイ:ねえ?

アラタ:それを「静かにしろ」っていうのはおかしいでしょう。

マキ:いや、迷惑でしょ(笑)。

ははははは。

アラタ:〈FEVER〉の楽屋は最高ですね。

もうちょっと軋轢を起こすのかなって思ったんですよ、僕は。日本は冗談が通じないじゃないですか。冗談を、わりと真顔で怒ったりとか、笑ったら怒ったりとか。

マキ:怒られてますね。

テッペイ:いやあ、一番コアな部分は突かないようにしたいですよね。壮太くんがやりそうだけど。

なるほどね。壮太くんはそれを狙ってるでしょう?

テッペイ:壮太くんはうまくやってるけど、でも俺らがストッパーの役ですよね。たまにそれをぶっ刺しすぎてるから、「そこはやべえ」っつって(笑)。

壮太:デモの映像を使ったPVとか、すごい叩かれましたね。

マキ:そう、叩かれましたね。炎上しちゃって。

テッペイ:違法のモデルガンを3丁持ってて。しかも道玄坂の交番の前で撮ってたから(笑)。

だははははは。

アラタ:それデモじゃないじゃん。

マキ:それは"メスカリーター"だ。

そういうのは、バンド内では「しょうがないねー」っていう感じですか。

マキ:(笑)まあいっかー、みたいな。

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わけはわかんないですけど、受け入れてねじ伏せるみたいな感じで、けっこうピース。まとまりますね。あんまり暴力とかはね、3年に1回ぐらいしかないよね。(マキ)
最近はさ、だって合法系はみんな暴力に行くじゃん。(テッペイ)


LOVE ME TENDER
SWEET

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自分たちがやろうとしてることと、世のなかとの距離を改めて感じたところはあるのかな?

壮太:ライヴハウスとかでやりづらいですね。

ほう。なんでですか?

壮太:昔から嫌いなんですよ、ライヴハウスが。システム自体が。

それは音響的な問題?

壮太:いや音響的な問題じゃなくて。だってお金払って行かないでしょう、ライヴハウスに。「今日ライヴでも観ようかな」って。自分の知り合いのバンドが出てるなら行くようなもんで。本来は「ちょっと音楽でも聴きながらビール飲みてえな」ぐらいの感じなのに。

アラタ:アメリカとかね。

マキ:うん、そういう風に入りたい。

壮太:そうじゃなくて、なんか貸しスペースみたいになってるから。

テッペイ:客も下手したら入れ替え制みたいになってるもんね。

壮太:興味ないときのお客さんって、エレベーターの階数表示見てるみたいな表情でそのバンド見てるじゃないですか。「耳栓しろよ」っていう。ああいうのイヤですね。

クラブは雑多なひとが集まるから、そこはホントにライヴハウスとの違いだよね。

壮太:そうなんですよ。お客さんと一緒の高さでやって、俺たちが演奏してるときもお客さんがバラバラの方向向いて踊ってるみたいな状況のときが一番好きなんだけど。

マキ:うんうん。

ラヴ・ミー・テンダーにとって、もっともコアにあるものというか、中核を成すものは何だと思いますか?

アッキー:マキちゃんじゃないですか、やっぱり。

ほう......いやそれこのあいだも言ってましたよね。じゃあマキちゃんの次は?

テッペイ:最初はアフター・スクール感、放課後の感じって言ってたよね。

壮太:自分たちでもわからない。話し合ったこともないし。

「こういうことを歌ってるけど、ドラッグ・ソングのバンドだとは思わないでほしい」と言ってるわけじゃない? 

壮太:バンドが音を紡いでいるところ。バンドの部活感。その、何て言うんですかね。バンドとはこういうものですよ、というものを見てほしいですね。

バンドの部活感?

壮太:何て言うんですかね、典型的なバンドだと思うんですけど。集まってアンサンブルするときにどんなことが起こるかっていう。すべて起こってますから。

アッキー:誰かが大統領じゃないっていう感覚というか。誰かひとり出てるわけじゃないっていうか。

バンドの面白さっていうこと?

アッキー:マキちゃんはすごく象徴的なんだけど、演奏とかそういう部分で言うと、全員が同列というか。

アラタ:バンドやってるのが楽しいっていうことじゃないですか(笑)。

テッペイ:楽しそうに見られれば一番いい。

でもマキちゃんはHBもやってるわけだから、ラヴ・ミー・テンダーやらなくてもいいわけじゃないですか。

マキ:あ、そうですね、あはは。

(一同笑)

じゃあHBとラヴ・ミー・テンダーの違いは何ですか?

マキ:違い。違いはもう......それは全然違いますね。ギャル・バンドと。

アッキー:あれはやっぱり女子高でしょ。

マキ:女子部。

でも世のなかにはすごくバンドが数多くいるわけじゃないですか。ラヴ・ミー・テンダーは存在する必要はないじゃないですか。

アッキー:存在してないのかもしれないです。

(笑)ほら、これはCDの売り上げに直結する質問をしているつもりなので。

テッペイ:そうやって外向いちゃうとキリがないじゃないですか。

いいじゃないですか(笑)。

壮太:どうなんですか、アンディ

いやアンディはアンディなりに解釈してるんだから(笑)!

マキ:アンディが言う通りなんじゃないかな(笑)。

アラタ:でもまあ、たとえば下北で演劇系のひとたちとミュージシャンのひとたちをざっくり分けると、こういう言い方すると悪いけど演劇系のひとたちは頭でっかち。芝居論の話をしたりとか。ミュージシャンのほうがもっとバカというか、考えてないっていうと語弊があるけど、ほんと楽しいからやってる。快楽主義的な傾向が強いというか。

マキ:そうだよね。

アラタ:あるじゃないですか、そういうの。

はいはい。

マキ:終わらない討論を朝までやってる感じ。

そうそう。

マキ:そういうのじゃない。もっとくだらないことで朝までいるっていう。

アラタ:楽しいとしか言いようがない。

マキ:そう、楽しいからやってる。

アラタ:ほかのバンドとの差別化ってことで言われちゃうと、まあどのバンドも楽しいからやってんだろうなっていう。

アッキー:でも洗練されたポップ・ミュージックをやりたいっていうのが......俺はあるんだけどどうなの?

それすらも共有されてない(笑)。

アラタ:まあ洋楽志向ではある。

アッキー:それを通ったAOR感みたいなそういうことが。

AOR感はあるね。

アッキー:日本独特のポップスもあるじゃないですか。僕は80年代の終わりぐらいから見てるけど。そういうのはちょっとねじれ度が違うと思うんですよね。たとえばなんだろう、ボ・ガンボスとかフィッシュマンズとかが残したものを、そのまま置き換えたって子たちもたぶんいたりして。でもそことは違うっていうか何ていうか(笑)......。言いづらいな。

アラタ:AORとかそういうので言ったらさ、流線形とかキリンジとかのほうがそうかな、って。あれよりもうちょっとうちらのほうが綻びがあるっていうか、何だろうね。自分たちのことを言葉にしようとすると難しい。「どんなバンドやってるの?」って言われたら答えられない。

テッペイ:そう、俺も言えない。

アラタ:ざっくり歌ものメインでインストもある、みたいな(笑)。

なるほどね。どうですか、壮太くんは?

壮太:いやだから、奥渋谷系ですよ。渋谷の奥のバーで醸成されたもの。実際そうなんだから。それがどういうプロセスを経てそうなったかはちょっと説明できないですけど。そう思ってくれたら。メンバー募集で集まったバンドでもないし、ここでしかないケミストリーがあったわけで。そうとしか言いようがないですね。

テッペイ:まだ途中だからね。

壮太:バンドだけが落下傘で落ちてきたわけじゃなくて、周りの人脈とか細かいバー同士の繋がりとか、そういうのが全部くっついてる。ファミリーを形成してるわけじゃないけど、どうしてもそういうの濃厚ですよね。

まあそうだよね。だから、ちょっと硬い言い方になっちゃうけど、コミュニティ的なところもある。

壮太:そうですね。

ちなみにアルバム・タイトルは誰が決めるんですか?

マキ:あ、あたしが。今回は。

『スウィート』ってしたのはとくに意味があるの?

マキ:えっと、あんまりないんですけど。友だちがニューヨークに行ってて、帰ってきたときにお土産でくれたポストカードに、「LOVE ME TENDER SWEET」って書いてあって。それで、「これだ!」って(笑)。

ははははは。自分たちの音楽を形容するのに今回ぴったりかなって?

マキ:はい。ぴったりで。すごくピンと来ちゃったので、それにしちゃいました。

ところで、今日はみなさんが来るまでにアッキーと話してたんですけど、6日付のロイター通信によると、アメリカの2州でマリファナが合法化されたという。

アラタ:まあ連邦法が変わんないとっていうところではありますけどね。

まあそうだけどね。ただ、いわゆる多数決で嗜好目的の大麻の是非が問われたときに決まったっていうのはね。住民投票で可決されたっていうのは初めてのことなので。ここ数年のアメリカの大麻合法化の動きはすごいじゃないですか。それはいい悪いの問題じゃないですよ。日本ではもちろん違法ですからね。でも、まず情報として日本のニュース番組でそういうものがまったく報道されていない不自然さというかね。

壮太:いや、簡単ですよ。大麻の是非以前に、ドラッグの会話自体がタブーなんですよ。たとえばカニバリズムってあるじゃないですか、人間がひとを食うっていう。あれは日本人は話題にするでしょ、「お前人間の肉食える?」「いや」「腹減ってたら食うかも」っつって。でも欧米だとそういう話自体が禁止ですよ。おおっぴらには。そういう話題に触れること自体がひととしてマナーに反するみたいな。日本でのドラッグがそうですよ。ドラッグの是非論とかやってもしようがないですよ。ドラッグの話題に触れることがタブーだから。

逆に日本は少女ポルノに寛容でしょ。たとえばマッシヴ・アタックの3Dが反戦運動をやったときに、何でイギリス政府が彼を捕まえたかって言うと、少女ポルノですよ。

壮太:ええー。

ドラッグじゃなくてね。そっちのほうが向こうだと罪が重いから。こうした文化の差っていうか、きっとそういうことも含めて、ラヴ・ミー・テンダーは投げかけてるのかなっていう風に思うんですよ。

壮太:解禁して安くなるなら万々歳ですけど。俺はその問題を考えるけど、解禁しても吸うひとは増えないと思いますよ。

アラタ:それはそうよ。

日本文化の異分子ではあり続けようとしてるとは思うんですよ。アゲインストしてないにしても。

壮太:でもたしかに東京にしか居場所がないですね。もうどこにも住めません。東京じゃないと自分みたいなのの居場所がない。受け入れてくれるところが。

テッペイ:東京の数店舗しかない(笑)。

(一同笑)

テッペイ:そういう話は毎回してますけど、そこを直接曲に入れたくはないです。重くなるから。

いやいやわかりますよ。

テッペイ:だからたとえば、全曲スウィートな曲調だったらタイトルを『スウィート』にはしてなかったと思うし、そのギャップは絶対出したい。

そういう意味で言うとね、コンセプト自体がすごくギャップがあるよね。一番清潔感のある日本のポップスのスタイルを取りながら、いちばんタブーなことを言ってるっていうね。

アッキー:でもそれも意識してたわけじゃないですね。結果的にそうなっちゃったっていう。

ああ、そうなんだ。

壮太:なんか、カシミアのセーターを着てまつ毛の長いおぼっちゃんがいつもナイフ持ってるとか、そういう感じ。

ははははは!

壮太:そういうのあるじゃないですか。フリッパーズ・ギターとかもそうだったと思うし。

※アンディ(LMT担当の敏腕A&R)

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今回はしませんよ。もう卒業しました。(高木壮太)
うちのバンドは合法ドラッグ・覚醒剤は禁止ですから。(アラタ)
はい、そうですね。悪いものはちょっとやめていこうか。(マキ)


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ああー、なるほどなるほど。じゃあ、みなさんは自分たちのリスナー像っていうのは見えてる部分ってあるんですか?

壮太:オタクが聴いてるっていうのはあるんですけど――。

えっオタク聴いてる!? 

壮太:オタクは聴いてると思いますよ。

テッペイ:俺のイメージは、ヒップホップとか何かを20代前半で飽きたひとが寄り道して聴いてる感じがするかな。

壮太:フュージョン・ファンとかシティ・ポップ・ファンは聴いてないと思います。

マキ:怒られるよ、だって。

壮太:なんちゃってシティ・ポップ、なんちゃってフュージョンだから。本格派のひとは聴かないと思いますよ。聴くひとは変わったバンドと思って聴いてるんじゃないですか。

いまの壮太くんのなかで、とくに問題意識みたいなものがあったら教えてください。

壮太:社会的にですか? やっぱりシリアスになりすぎてるくせに、すごくカジュアルになってて、インテリが迫害されているし、かと言って冗談も通じないし、窮屈になるいっぽうですね。

ああ、なるほどね。たしかに。

壮太:俺とか完全に知性のひとなんですけど。キャラクターはフクロウみたいな感じなんですけど。ぜんぜんそういうのは受け入れられなくなってるなあと。尊敬されない。

ははははは!

壮太:もの知ってるとバカにされるっていう。

アラタ:いやそれ、日ごろの行いなんじゃないでしょうか(笑)?

壮太:そのくせ冗談が通じない。戦争コメディとかがぜんぜん作られなくなった。昔はあったでしょ。『M★A★S★H』ぐらいまではあったじゃないですか。朝鮮戦争ぐらいまでの戦争パロディは。湾岸戦争とかを舞台にした戦争コメディとか全然ないじゃないですか。アフガニスタンを舞台にしたものとか。

ああ、でもイギリスはありそうだよね。

アラタ:アメリカも『ヤギと男と男と壁と』っていうやつは、あれはイラク戦争だよね。あれはけっこう面白かったけどね、脱力してて。

アッキー:なんかあったよね、湾岸戦争でコメディ。アイス・キューブが出てたやつだと思うけど(注:デヴィッド・O・ラッセル『スリー・キングス』だと思われます)。

壮太:アメリカ大統領選もわけのわからない泡沫候補が出なくなった。昔はスパイダーマンの格好したやつとか、出てたのにいつも。キャプテン・アメリカの格好したやつとか。

アラタ:日本もね、参議院選でUFO党がどうとかあったよね。

壮太:そういうのがなくなってきてると思います。

息の詰まりそうな場面っていうのはどんなときに思いますか? 日々?

壮太:日々。

なるほど。じゃあ......。

壮太:自分がいま大恋愛をしているからかも。街を歩くとみんなうつ病に見える。

ははははは! 自分は楽しいのにっていう。アラタくんも恋愛中だっけ? 恋をしているほうがテッペイくん?

マキ:そうです。

じゃあアッキー、ほかに言い足りないことがあれば言ってください。脱法ハーブについてでも何でも。

アッキー:うーん......合法はやめたほうがいいですよね。

マキ:やめたほうがいいですね。

壮太:仕組みはわからないけど、これだけバッドな症例がいっぱい報告されるってことはやっぱ統計学的にもおかしい。

アッキー:若いひとが死ぬってニュースを聞くのはやっぱイヤですよね。

また脱法ハーブっていう言い方もイヤだよね。

アラタ:存在自体が姑息。法の抜け穴でっていうのが何か。存在してる過程自体が姑息だし、やだなあって。キマり方が孤独に陥るキマり方だし。

それで儲けてるひともいるわけだからね。

アッキー:DJバーはぜんぶ、合法ハーブを店で吸うのを禁止にしたほうがいいですよ。

DJバーで吸ってる?

アッキー:うーん、吸ってるひともいる。

アラタ:合法だからね、堂々と吸える。

とにかく、合法には手を出すなと。

アッキー:そういうプロパガンダをしてもいいんじゃないですか、DJバーが。

アラタ:身近でもね、20年覚醒剤をやってたひとが、最後は合法に手を出して死にましたからね。

ああ、危険なんですね。

アラタ:覚醒剤もすごく危険なドラッグなのに、それをちゃんと20年コントロールしてやってられるようなひとですら。キングギドラだっけ? そういう銘柄があるらしくて。

それはどういうやつなの?

壮太:バス・ソルトとして売ってるんですよ。

奇妙な世のなかだよね。

アッキー:ねじれがすごいですよね。

壮太:ラボの技術が法律を制定する速度を上回ったって、ただそれだけしょう。新薬を作る速度のほうが、法律を制定する速度より速くなったからこの現象が起こってて。そのいたちごっこはいままでもあったけど。ちょっとだけ化学式を変えて、新薬だっていうのは。この先はどうなるか予測がつかないです。

なるほどね。わかりました。今日はいろいろ話を聞きましたが、ラヴ・ミー・テンダーは基本的には、すごくロマンティックな音楽だと思ってるから。

マキ:ありがとうございます。

テッペイ:ラヴです、ラヴ。

壮太:化学式はやりません。

言い方は悪いですけど、すごくバカなことをやってるでしょう、この歌詞にしても(笑)。敢えてバカなことをやっているのはなにゆえなんでしょう?

壮太:計算してやってるわけじゃなくて、ほんとにイノセント感の表れだと思ってます。

テッペイ:冗談が好きなんですよ、ただただみんなほんとに。へへへ。

なるほど、わかりました。そんなところでしょうか。

アッキー:最後に一言。

お、なんですか?

アッキー:脱法には愛がない。これ、壮太くんが言った名言だと思ってます。

壮太:言ってたっけ、俺?

いいですね。バンド名がラヴ・ミー・テンダーってぐらいだからね。本質はあくまでそっちにあるってことですね。ではどもありがとうございました!

一同:ありがとうございました!

LOVE ME TENDER "SWEET" RELEASE PARTY ~また逢う日まで~
2012.11.28 (WED) SHIBUYA WWW
OPEN 18:00 / START 19:00

LIVE: LOVE ME TENDER / ホテルニュートーキョー / LUVRAW & BTB
DJ: 二見裕志

ADV 2,500 yen (+ drink fee) / DOOR 3,000 yen (+ drink fee)
TICKET: e+ / LAWSON [L: 70179] / WWW

INFO: WWW 03-5458-7685 https://www-shibuya.jp
LOVE ME TENDER https://lovemetender.mond.jp

 前作『ダズ・イット・ルック・アイム・ヒア?』(2010)で、そのステージをアメリカ中西部のストーンドなノイズ・シーンから世界のインディ・シーンへと広げたエメラルズが、新作をリリースする。いまやメンバーそれぞれのソロ活動もリスナーの大きな関心を集めているが、ジョン・エリオットは、エメラルズが3人にとってもっとも大きなプロジェクトであり、いちばん時間をかけているのだということを述べている。日本盤リリース(今月24日)を前に、そのエリオットのコメントがもらえたので紹介したい。

 「2012年6月の始まりからレコーディングをスタートして、3週間かけて終わらせました。最後の週はアルバムのミックスに時間を費やしました。」

今作で大きな特徴をなしているのはローランドTR-808、通称やおやの使用だと言えるだろう。

「『ダズ・イット・ルック・アイム・ヒア?』から2年以上たつので、新しいレコードではもちろん自分たち自身やエメラルズのサウンドの繰り返しはしたくありませんでした。アルバムは線状の流れの上に構成されていて、だから結果的に、録音された順番通りにアルバムのトラックが現れるようになっています。サウンドや方向性は僕らの環境を映し出すものとして生まれてきました。」

こうした新機軸もあくまで彼らの音楽性の自然な発展形である、と。どんな環境だったのだろうか?

「制作中は閉じ込められたような環境でした。なぜなら、スタジオはアクロン北部にあって、ほとんどの時間、室内にはほんの少しの太陽の光しか差し込まないんです。僕らは夜行性になってスケジュールをこなしていました。」

"ザ・ルーザー・キープス・アメリカ・クリーン"などにはかつての暗黒があるが、とくに閉鎖性は感じられない。むしろマッガイアの熱情的なギターがこれまで以上にフィーチャーされている印象だ。

「ジョンと僕はたくさんの様々なアプローチを取りました。だからその結果、とても面白いサウンドとテクスチャーのオーヴァーラップが生まれました。それに、僕らはマークのギターの音色にもこだわり、異なるアンプやマイクに通したりしてたくさんの時間をかけました。今回はたくさんの物がより自由に使える環境だったので、だから今作では前のアルバムよりももっとたくさんの楽器を使っています。」

夏のマッガイアのインタヴューでは「いいスタジオを借りてもらえるんだ!」と話していたことが思い浮かぶ。ちなみに、どんなスタジオでした?

「タンジェリン・スタジオは、アクロン北部にあるスタジオで、シンセサイザーのコレクションやたくさんの録音機材をもっているBen Vehornが主に運営をしています。彼の機材はリストにできないほどたくさんあるのですが、僕たちはそれらを使ってたくさんの作業をしました。」

シンセサイザーのコレクションに喜びながら録音に没頭する彼らの姿が目に浮かぶようだ。さて、あなたはこの新作をどのように聴くだろう?

Bat for Lashes - ele-king

 全裸のナターシャ・カーンが、生気のない全裸の青年を抱えて立っている。
 それは例えばお姫様抱っこの男女転換版みたいなよくあるフェミニズム的構図ではなく、だらり。と肩から提げているのである。
 青年は、33歳の彼女よりかなり若く見える。ということは、交際していた年下の男を殺して、その死体をこれから埋めに行くところなのだろうか? それとも、自分が若い頃に恋に落ち、別れてしまった男のことを、三十路になったいまでも心情的に引きずって生きているということのメタファーなのだろうか?

     *************

 「このアルバムでもっともブリリアントなのはジャケットだ」
 英国にはそういう趣旨のレヴューを書いたメディアもあった。
 まったくこの国の批評というやつには慈悲もへったくれもありゃしない。と思うが、ブライトンで保育士をしていたナターシャには、個人的に思うところもある(という情が入って来るあたり、わたしは生粋の日本人だが)。それに、本国での彼女のポジショニングを考えれば、もうちょっと日本で認知されても良いお嬢さんではないかと思う。
 デヴェンドラ・バンハートやトム・ヨークを魅了し、ビョークに「ブリリアント」と言われ、ベックともコラボ済み。というブライトン在住のナターシャ・カーンことBat For Lashesのサード・アルバムは、良い意味でも悪い意味でも洗練されている。「ビョークっぽい」と言われることの多いお譲さんだが、アーバン・エレクトロ・ヒッピーみたいだった1作目や2作目に比べると、今回のアルバムはぐっと方向性が絞られてエレガントになり、ケイト・ブッシュに接近している。"Laura"などはエキセントリックなファルセットでケイトに歌わせたくなるし、"All Your Gold"や"Oh Year"を聴いていると、これは21世紀版『魔物語』なのか。と思う。ケイト・ブッシュが1979年生まれだったらこんな曲を書いていただろうと思うほど、どの楽曲もビューティフルで才気に溢れているのだ。

 「彼女のアルバムは、ビョーク、ケイト・ブッシュ、PJハーヴェイなどの女性アーティストを髣髴とさせ、その事実が最大の弱点にもなっている」と書いたのはBBCのサイトのミュージック欄のレヴューだ。
 我が祖国で彼女の知名度が低いのも、この二番煎じ感が災いしているのかも知れない。二番煎じであるならば、同時代に同じ場所で生きているという連帯感を持つことのできない海外の人びとは、オリジナルの方を聴く。時代のギャップと、地理的・社会的ギャップは、距離感であることには変わりないからだ。

     *************

 ナターシャ・カーンはパキスタン人の父親と英国人の母親の間に生まれた雑種ブリティッシュだ。
 「世界に何か新しいものが生まれるとすれば、それはハイブリッドだ」と言った我が祖国の文人、坂口安吾の提言の通り、英国の大衆音楽がネタ切れすることなく新たな「何か」を生み続ける理由は、この国が単一民族の国ではないからだと思う。
 とは言え、混血化が進む国では、その反動としての人種差別が活発化するのも必然のプロセスであり、ナターシャも十代の頃に「ファッキン・パキ」といじめられ、それが原因でヴァイオレントになって問題児になった時期もあったらしい。そんなバックグラウンドを持つ彼女が、ケイト・ブッシュのような真っ白なサウンドを志向しているという事実は、わたしにとっては全裸のジャケット写真よりよほど衝撃的だ。
 「主流と迎合するのは嫌」と言う彼女の音楽に、彼女自身の中に半分流れている(この国における)少数民族の血の匂いが全く感じられないのは何故なのか。
 やはり雑種である子を持つ親として、この辺はなかなかディープなサブジェクトである。

 裸のナターシャがだらりと肩から提げて立っているのは、本当は死んだ男ではなく、彼女が11歳のときに去って行ったという父親から受け継いだムスリム民族の血なのではないか。
 彼女の肩で生気を失っているのは、ロマンスの相手としての男ではなく、抹殺しようとして抹殺することのできない父方の血の呪縛ではないだろうか。

「夕べは眠れなかった 
あなたのことを忘れようとしたから
老いた男と海が歌っているのが聞こえた
銀色の感触 彼女は泣く 
忘れはしない 消えたわけでも 死んだわけでもない」
"The Haunted Man"

 彼女が前述の女性アーティストたちを超えるのは、彼女がこの亡霊を肩から下ろし、ハグを交わして一緒に踊りはじめるときだろう。そのときこそ、ナターシャは堂々と自らの個性を打ち出し、雑種ブリティッシュ・ミュージックを代表するレジェンドになる。
 そこに到達するまでの、並外れた才能を持つ女性の道程を示しているという点で、彼女のアルバムは1枚1枚がプレシャスな里程標である。

Photodisco - ele-king

聴いていて気持ちの良い、最近の楽曲を選びました。
よろしくお願いします。

■2012/11/12 CASSETTE TAPE - EP "BETA" Release!!!
https://diskunion.net/portal/ct/detail/IND11111

■Profile
https://p-vine.jp/artists/photodisco

■Photodisco Official Website
https://www.photodisco.net/

■YouTube
https://www.youtube.com/user/Photodisco

最近、よく聴いてる音楽10選


1
Madalyn Merkey - Scent - Siren

2
How To Dress Well - Total Loss - Ocean Floor For Everything

3
Teams - Dxys Xff - Stunts

4
Wishmountain - Tesco - Dairy Milk

5
Toro Y Moi - June 2009 - Talamak (First Version)

6
V.A. (100% SILK) - The SIlk Road

7
KINK GONG - XINJIANG

8
Southern Shores - New World - Sankasa

9
Piano Overlord - Aninha Mission - En Sveno

10
ICE CHOIR - AFAR - Teletrips

泉まくら - ele-king

 「ふつうの女の子」がどんな女の子のことを指すのか、そのニュアンスには各時代ごとの通念が反映されていて、一通りではない。加えて、いまのようにたくさんの「ふつうの女の子」がアイドルになってしまう時代には、「ふつうの女の子」の「ふつう」自体がパラドキシカルな特殊性を帯びてしまって、もはやどのような存在を指すのか判然としない。アニメ表現においても平沢唯から小鳥遊六花まで「ふつうの女の子」モデルは非常に多彩だ。
 しかし、「ふつうの」と形容詞で考えるからわからなくなるのかもしれない。彼女たちは「ふつうの女の子」ではなくて「ふつうに女の子」なのだとすれば、どうだろうか。振る舞いや境遇において「ふつうに」女の子をやっているだけで、それぞれはゆたかな個別性を持った存在。当然ながら「ふつうの」性質というものはなく、いつの時代もおのおのが個別の在り方をしながら「ふつうに」女の子として生きているだけだ、と。ただ、平凡ながらもそれぞれがそれぞれに生きてきた時間があるということを尊重するかどうか、こちら側=見る側のパラダイム転換があったのだ......とすれば、このおびただしい「ふつうの女の子」モデルの氾濫はとても好もしい状況なのではないかと思えてくる。

 「ラップをしちゃうふつうの女の子」として紹介されているMC、泉まくらの音楽には、こうした「ふつうに女の子」だらけの状況への祝福がある。それは無論、女の子のための安逸な応援ソングといったものとは異なる。"バルーン"の出過ぎない音圧や、主張するのではなくて人を容れるように空隙を残すプロダクションは、誰かを応援するためではなく、誰をも認めるための凹型の柔構造を成しているように、筆者には感じられる。おそらくその裏側には「生きること許されちゃったんだし」("ムスカリ")という感覚があるのだろう。「人生は苦しい」でも「人生はすばらしい」でもなく、人は人生を授けられてしまったという偶然をどう納得していくのか。ふつうに女の子として生きていくというのは、そのひとつの回答でもある。その回答は、他人の人生の偶然性や他人が選択したさまざまな生き方にもやさしく響きあうだろう。

 一方で、ラップそのものにもとても繊細なものを感じた。ヒップホップについてはまったく詳しくないので、そのスキルのほどを云々することはできないが、ポスト・チルウェイヴ、ポスト・ヒプナゴジックを生きるインディ・ロック好きの耳に、そして同じ時代の空気を呼吸する一個人の耳に、じつにすんなりと馴染む言葉だ。
 音節をつぶしながら、センテンスとしてはすんなりと日本語の収まりをつける。百人一首のテープを早巻きにするともしかするとこんな感じにならないだろうか? 考えてみれば、和歌の朗詠は抑揚としてとても平坦なものを持っていて、われわれはぼちぼち3千年近くをその抑揚とともに生きている。英語のラップ表現を日本の言葉の表現に落とし込むべく、さまざまな工夫と努力が多くの先人たちによって続けられてきたわけだが、そうした歴史にきちんと接続しながら、日本語に潜在していたラップ的な音節感覚との近接点を自然とあぶり出すような、天性の音感ならぬ音節感を、泉まくらは感じさせる。
 それはとくに"バルーン"に顕著で、そのことでもって作品中もっとも高い完成度をみせている。いまなら、何も知らずに耳にするとボカロ曲のように聴こえる人もいるかもしれない。独特の平坦な抑揚、舌っ足らずな萌えヴォイス。ボーカロイド表現の抑揚のなさは無感動や感情の抑圧ではない。「われわれもまた機械のように動く社会の歯車のひとつに過ぎない」等のメッセージや、「無感動であることを反抗の証として大人に眉をひそめられたい」といった動機はとくになく、もっと無邪気な明るさを持ったものだ。どちらかといえば、激しい抑揚によって感情表現をすることに対するブレーキ、自分の大きな声が他の声を圧迫したり不快にさせたりすることへの遠慮や忌避、まさに「生きること許されちゃった」他者への想像力のようなものと相性のいい音声ではないだろうか。泉の声は、無意識にせよそうした現在の音表現にもかすりながら響いている。

 ただ、断っておくと、実直にリリックを読むかぎりではそうしたことは見えてきづらい。"バルーン"のミュージック・ヴィデオでは、友だちや決まった恋人がいるものの、いっしょにいても孤独を再確認するばかりというセンシティヴな女の子の生活が描き出され、彼女は傷だらけの素肌を抱いてベッドにうずくまる。「あの娘の毎日がやけにドラマチックに見えだしてから急に笑えなくなったの」というサビにつづいて、カートのついたカバンをひきずって歩くその姿は、ガーリーかつ痛々しいその鉛筆イラストからも、90年代の自傷的な女流作品を引きずるようでやや古めかしい。あるいはヴォーカルにおいても少しチャラを思わせるようなところがあり、ピュアネスをむき出す痛みのような、やはり少し古風なフィーリングを感じなくはない。身体を消耗品だと言う("ムスカリ")詞にも、援交少女の形骸がある。

 しかし、ラップやトラック全体から受ける印象はまったく別で、そちらの方に泉の中心を見つける方が正しいのではないかと思う。"春に"のあまりにストレートな卒業モチーフは、まごうことなき現在の感覚だ。あるいは京アニ風にアップデートしたチャラと言ってもいいかもしれない。抜けるように透明な色の校舎や桜、田舎の風景が浮かび上がる。泉自身が福岡在住であることも大きいだろうが、ヒップホップの地方へのスポットの当て方として、新しい視点を想像していくことができるだろう。また、たどたどしい、ガレージバンド事始めといった手つきの(に偽装された)トラック(プロデュース:観音クリエイション)や、神聖かまってちゃんのように無防備で無遠慮なピアノもじつにいまらしい。こうしたエクスキューズのない感傷やナイーヴさを筆者はとてもいいものだと思う。『卒業と、それまでのうとうと』というタイトルからもわかるように、主要な舞台は学校であり、そこをエスケープしないし、塾にもちゃんと通う「ふつうに女の子」の表現としてとても鮮やかな筆致を持っている。現役の女子高生ではないようだが、筆者が高校生なら、彼女の発明に嫉妬を覚えたかもしれない。

 本作はデビュー作となり、曲数は少ないもののリミックスを多数収録したEPのような体裁をとっている。活動をはじめたのが2011年。ユーチューブへの"ムスカリ"の投稿からだということ以外、それまでの経歴はあきらかではない。リリースはフラグメントやドタマを擁し、日本の新しいヒップホップ表現を模索する〈術ノ穴〉、プロデューサーにはOMSBはじめ、観音クリエイション、AVEC AVEC、Lil'諭吉らが名を連ね、まだまだ未完成な部分を残しながらも、非常に期待されている存在であることは疑いない。本当は彼らプロデューサー陣の仕事やリミックス作についても詳述すべきだろうが、力不足で申し訳ありません。

vol.42 oorutaichi @ Japan Society - ele-king

 11月16日に、オオルタイチくん(愛称を込めてこう呼ばせていただきます)のショーが、NYのジャパン・ソサエティで行われた。彼のライブは、2009年のアメリカ・ツアー以来観ていないので、彼の音楽がどのように変化したのか、アメリカ人のオーディエンスはどう感じるのか。訊きたいことはいっぱいあった。ショーを次の日に控えて準備が忙しいさなかだったが、インタヴューをさせていただいた。


会場のポスター

お忙しいところ、時間をとっていただきありがとうございます。まず、オオルタイチくんが、ジャパン・ソサエティでショーをすることになった経緯を教えてください。

オオルタイチ:今年の3月に、横浜で芸術見本市みたいな、海外のパフォーマンス・アートのディレクターが集まるイベントがあり、僕はそこに、ダンサーの康本雅子さんとコラボレートして出演しました。そこに、ジャパン・ソサエティの塩谷陽子さんがいらっしゃっていて、アメリカに来ることがあればぜひ連絡して、と名刺をいただいたんです。僕も、新しいアルバムをリリースしてから海外ツアーをしていなかったので、またNYにも行きたい、と思い連絡をしたところ、こういうかたちであれば、という提案をしていただき、今回の開催になりました。

今回は、「コズミック・ココとオオルタイチ」という名義ですが、いつものショーとは違うのでしょうか。

オオルタイチ:塩谷さんが提案してくださった「パーティー」な感じにしたい、というイメージからはじまっています。『コズミック・ココ』というのは、僕の最新アルバムの名前で、そこから塩谷さんが「宇宙」というイメージを引き出されたそうです。今回は、20分/40分で2部に分けてプレイするのですが、参加するお客さんにも、宇宙をイメージしたコスチュームで参加していただくように呼びかけました。

以前にもアメリカでショーをしていますが、そのときの経験は、今回のショーや、それ以後のタイチくんの活動に変化を与えましたか。

オオルタイチ:前のアメリカでのショーは、2009年の3月でした。曲は変わっていますが、基本的なやり方は同じです。今回のジャパン・ソサエティのショーは、デコレーションがあったり、もっと雰囲気が出ると思います。

タイチくんの音楽は、宇宙的で、浮遊感漂う、無国籍な雰囲気を持っていて、そこにきき慣れない言葉が乗っていますが、何語なのでしょうか。あえて、理解しづらい言葉を使うことで、言葉の意味よりは、音やリズム、ビートに注目して欲しいということなのでしょうか。また、それは、海外のオーディエンスを意識してのことなのでしょうか。

オオルタイチ:まず言語に関しては、意図はないです。僕が音楽を作るときは、単純に、まずトラックをババっと作って、そこに即興で歌を載せて、いいラインだな、と思ったらそれを選んでいきます。自分がいいな、と思うものが、こういう言葉、サウンドになりました。海外のオーディエンスは、意識したことはないです。

ライブでは、タイチくんのパフォーマンスや映像も重要です。パフォーマンスにおいて、視覚的なものはどれほど意識していますか。パフォーマンスで、言葉は通じなくても、視覚で自分が訴えたいことが、オーディエンスに伝えられていると感じますか。

オオルタイチ:VJは、いつもスフィンクスという人たちに任せています。感覚的なことだけで、とくに込み入った打ち合わせもしないのですが、たしかに、大きな会場では、映像があると自分の音楽がより広がるのを感じますし、オーディンスに伝えるのを助ける気がします。

アメリカやその他日本以外の国でプレイするときに、気をつけていることなどはありますか。また海外でプレイするときのお客さんの反応の違いはありますか。

オオルタイチ:海外のお客さんは反応がストレートですね。音楽が入ってくるところにフィルターがないというか、入ってきたらそのまま、体の動きやモーションで、反応がダイレクトに伝わってきます。日本のお客さんにも、ストレートな反応をする人はたくさんいますが、やっぱりフィルターみたいなものを感じます。海外のお客さんは、すごい速いBPMのテンポにも、ガンガンついてきてくれます(笑)。日本の人は、体が動いていなくても、楽しんでいる、と感じるときもあります。

オオルタイチくんは大阪出身ですが、いまは東京在住とお聞きしました。東京に移った理由を教えてください。また東京に住む良い点と悪い点を教えてください。

オオルタイチ:東京には住んでないです(笑)。行きたいとは思ったのですが。いまは、もうちょっと音楽が作りやすくて、ある程度音を出せる環境をと思い、京都に引っ越しました。活動は東京が多くなり、WWWやネストなどでプレイしていますが、東京は、生活するのにお金もかかるし、大変だと思います。大阪は地元なので、盛り上げてくれる友だちもたくさんいます。

地元の大阪と、いま住んでいる東京で、タイチくんが、共感するオススメのアーティストを紹介して下さい。

オオルタイチ:東京出身で面白いと思うのは、トクマルシューゴくん、彼ももちろん好きですが、彼のバンドでパーカッションをしている、シャンソンシゲルというアーティストです。大阪では、みんな面白いんですけど、半野田拓くんという、サンプラーなどを使って、インプロをやっているソロギタリストが好きです。僕もいっしょにデュオみたいな形でやることもあります。

今回のアメリカ滞在はどれぐらいですか。いる間にぜひやってみたいことを教えてください。

オオルタイチ:今回は、全部あわせて3週間ぐらいです。NYの後は、西海岸(サンフランシスコ、ロス)に行って、合計7本ぐらいのショーをやります。やってみたいことは、無理だと思いますが、インディアンのコミュニティーに行ってみたいですね。自然というか、町とは違うところに行ってみたいです。あとは、レコード屋です(笑)。

このショーが終わった後の活動予定と、個人的に興味があり、今後やってみたいことなどを聞かせてください。

オオルタイチ:12月に東京と大阪で自分のイベント(※)をやろうと思っています。ソロでいつもやっている音楽を、生楽器でやるバンドがあってその企画です。個人的な興味は、最近田舎の方に引っ越して、生活を見直すというか、そんなにシリアスじゃないんですけど、いまはそういう時期なのかな、と感じています。

※オオルタイチ企画 / イーヴンシュタイナー Vol.7 and 8
東京 : https://www-shibuya.jp/schedule/1212/003056.html
大阪 : https://conpass.jp/2702.html

ライヴ・レポート
――コズミック・ココとオオルタイチ@ジャパン・ソサエティ 11/16/2012


オオルタイチ

 ジャパン・ソサエティに一歩入ると、エイリアンが頭の上でゆらゆら揺れる仕掛けのヘアバンドをつけた受付嬢たちに迎えられる。
 会場全体は、緑や赤のエイリアンのカラフルな風船や、金、銀、紫のピカピカしたテープ/ダングラーズで埋め尽くされ、アルミホイルや、エイリアンのヘアバンド、グロウ・ブレスレットやライト・セーバーなどを身につけた人たちがたくさんいる。
 メイン会場は奥だが、手前のスペースからもパフォーマンスを見ることができる。ジャパン・ソサエティの水を用いた風情ある雰囲気と、宇宙的な雰囲気、パーティー感、異国情緒、などなどがミックスされた独特の空間=コズミック・ココがそこにあった。ローカルのDJ Akiが、オオルタイチの登場まで、会場を盛り上げている。

 ショーは2部に分かれ、1部は前振り的セット。タイチくんは黒のTシャツで登場した。バイクのエンジン音からスタートし、あちこちにヒュンヒュン飛ぶスペーシーなビートや、ジャングリングでエスニックなヴォーカルが、多方向に駆け抜け、お客さんのヴァイブも急上昇。ダンスフロアはいつの間にか満員になっていた。

 2部は、タイダイ柄のカラフルTシャツに衣装替えし、ダンシーで、エレクトリックなチューンを連発する。1部は控えめだったタイチくんのパフォーマンスもどんどん前に出て、お客さんを煽ったり、ダンスも激しくなる。VJのスフィンクス・チームが、音楽と映像をシンクさせ、ムードを出し、会場と一体になって盛り上げる。反復的、アディクト効果のある音楽と映像が、全身に吸収され、お客さんも最高潮で、身体がルースになっていくのを感じる。いちばん前で見るのと、離れて後ろから見るのでは、また違う印象で、お客さんの動きを見たり、映像の手元を見たりして存分に楽しめた。タイチくんの音世界は、彼の着ていたTシャツのように色(特にカラフル)がついていて、それをうまく表現していると思う。


VJのスフィンクス・チーム


DJ Aki

 お客さんは、アメリカ人の男子が大半(オタク風)。今回のショーについて、ランダムに反応を聞いてみた。

ジャパン・ソサエティのお客さんの反応

このショーをどのように知ったか。

マックス(男):友だちから聞いた。

スコット(男):10月にジャパン・ソサエティで開催された、ホソエ・レクチャーの際に聞いた。

今回のショーの感想は?

マックス:とてもすばらしかったし、挑戦的だと思う。

スコット:すばらしかったの一言!

ショーのどの部分が印象的でしたか?

マックス:すべてだけど、ヴォーカルがよかった。あれは、ジバーリッシュなのかな。
(注)ジバーリッシュ......英語のタームで、スピーチのように話すことを指す。内容に意味がないことが多い。

スコット:VJも音楽も完璧だったし、なんといってもエネルギーに感動した。

日本のバンドとアメリカのバンドで、違いを感じますか? そうであれば、どのように。

マックス:難しい質問だけど、違いは感じる。日本のバンドは、キチンとオーガナイズされてる。アメリカのバンドはもっと感覚的かな。僕の個人的意見だけど。

スコット:日本のバンドは、もっとエモーションを感じる。アメリカのバンドは、ベース(低音)だけだね。もっと複雑なんだけど、ここだけでは、語れないよ。

1ヶ月にどれくらいショーに行きますか? どこの会場へ?

マックス:1回ぐらいかな。あまりいかない。

スコット:2~8回ぐらい。グラスランズ、パブリック・アセンブリーなどブルックリンの会場がほとんど。

好きなバンドを教えてください。

マックス:クラフトワーク、ギャング・ギャング・ダンス。

スコット:ボアダムス!

オオルタイチくんにメッセージを。

マックス:とても難しい仕事をしたと思う。こんな経験をさせてくれてありがとう。

スコット:次の夏に会おう!

 三田格+野田努が激しい議論の末に選出した約700枚にもおよぶテクノ作品を、全ページ・カラーで収録。これまでにありそうでなかったテクノの王道に迫るカタログとして、記念すべき一冊ができあがりました!

 本日から2日間、新宿タワーレコードのみの特設ブースで販売いたします! 編集部も参加、野田努もどこかのタイミングで現れますので、ぜひお声がけください!

 シュトックハウゼンからクラフトワークへ、クラフトワークからデトロイト・テクノへ、デトロイト・テクノからジャングル/ダブステップへ。アンビエント/ノイズ/インダストリアルからニューエイジへ。ムーグ・シンセサイザーからラップトップ・ミュージックへ......

 さまざまなジャンル名を横断しながら、この半世紀にわたって発展したエレクトロニック・ミュージックを追うスリリングな270ページ!
各年代ごとに最重要アルバムと最重要シングルを選んでいくスタイルなので、歴史を読み取りながらその発展を理解するには最適!
アート・ワークの変遷も、カラーなのでとても楽しく追っていくことができるのではないだろうか。

 毎日午前0:00くらいからバトルをはじめ、掲載作品の吟味を繰り返したという両氏。「載せられなかったボツ原稿も多いんだよねー」と、載らなかったさらに多くの作品を水面下にたっぷりと抱えた、熟議の末のベスト・チョイスであることをうかがわせる。

 「人から『テクノをわかりやすく説明してください』とたまに言われるんです。そういう時はかなり端折って『電子楽器で作った音楽』と答えているんですが、そうとも言えるかもしれないし、そうとは言えないかもしれない。(中略)長いあいだ使われてきたジャンル名にしてはあまりにも曖昧なんです。」というのは冒頭の対談からの引用だ。複雑に領域を拡大する電子音楽の起源や射程をどのようにとるか、このディスク・ガイドの前提となる対話が展開されている。
 応えて三田氏は、エレクトロニック・ダンス・ミュージックという「場」を異質なもの同士が共有したという歴史性にテクノの輪郭を捉え、「僕の場合はあくまでも軸足は90年代のレイヴ・カルチャーに置いておいて、そこから遡行できるものと発展したものとして認識できるものだけを対象にしたつもり。核になる時代がはっきりとあって、いかにも通時的なカタログのようにつくっているけれど、年代が持っている意味はまるで違う。」と述べる。
 二者の視点を反射しながら「テクノとは何か」ということから考え直す、重要作にして必携、保存版! このつづきはぜひお手にとって読んでください!


TECHNO definitive 1963 - 2013
テクノ・ディフィニティヴ 1963 - 2013

¥2,625(定価)¥2,500(本体)
三田格+野田努・共著
A5判 書籍:978-4-906700-62-2


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