「!K7」と一致するもの

ヤマシタトモコ - ele-king

 押井守や北野武が描くアウトサイダーはたいていの場合、組織に属している。いわゆる「お荷物」とか「不良社員」といったやつである。泥棒やドラッグ・ディーラーを主役にして反社会的行為を色とりどりに描く洋画や香港映画に較べて、そのような「アウトサイダー」には当然のことながら「悪いこと」には一定のラインがあり、最終的に主役が手にするものは「美学」ばかりである。実を取る気配すらないし、間違っても生活感などは漂わせない。

 不出来もいいところだった林海象監督『キャッツ・アイ』は論外として、最近だと内田けんじ監督『鍵泥棒のメソッド』や伊藤匡史監督『カラスの親指』でようやく日本の映画でも組織に属していない悪党たちがコン・ゲームを繰り広げはじめたと思ったら(以下、ネタばれ)「どこにも悪人はいなかった」という価値観に終始し、ストーリーの妙もそのような結論から演繹されるものばかりだった。バカバカしい。たかがエンターテイメントだけに、事態は余計に深刻な気がしてくる。犬童一心監督『のぼうの城』でも金子文紀監督『大奥~永遠~』でも権力者の内面に同調させる映画作りは得意なのに、持たざるものからの視点はタブーなのかと思ったり。

 「組織に属するアウトサイダー」は、しかし、新自由主義があっさりと過去のものにしてしまった面もなくはない。 原田眞人監督『金融腐食列島・呪縛』や本広克行監督『踊る大捜査線』以降、「はみ出し者」のレッテルはどちらかというと組織の周縁ではなく、組織を内部から改革しようとする者に貼られるようになり、以後、ストーリー的には「敵は頭の上」という図式がデフォルトと化してしまった感もある。佐藤嗣麻子監督『アンフェア』といい、堤幸彦監督『スペック』といい、警察上層部が悪くない例を探し出す方が最近は難しいし、改革=正義を行うという意識ととらえれば、このことは『沈黙の艦隊』や『デス・ノート』から連綿と続いてきた感覚であり、ゼロ年代よりもさらに強化されていると言える(クエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス』は無意味な殺し合いを描いたものだったのに対し、『ジャンゴ』では人を殺す時に「正義」が持ち出されるという驚くべき変化があった)。

 こうした変化は押井モデルや北野モデルのアウトサイダーを組織内には居ずらくさせ、自主退社を迫られるものにしてきた。『鍵泥棒のメソッド』や『カラスの親指』だけでなく、吉田大八監督『クヒオ大佐』や、国家単位で考えた時には木村祐一監督『ニセ札』が美学の路頭に迷ったアウトサイダーたちを暫定的に詐欺師ものにトランスフォームさせたとも考えられるし、それはそのまま正社員が非正規(=ノンキャリ)にずり落ち、ついにはオレオレ詐欺に手を染めるしか生き延びる方法がなかった時代の写し絵とも見えなくはない(『クヒオ大佐』にはアレックス・コックスばりの政治的センスがあり、『ニセ札』には民衆側の視点というものがあった)。

 さらには「ソーシャル」というキーワードが無条件で是とされ、「自由」に振舞うことが迷惑行為と同義語のようになってくると、「アウトサイダー」は単なる自己愛パーソナリティ障害か時代の変化に気づいていない人にしか見えなくなってくる。松本人志監督『大日本人』は戦闘少女に救える地球はあっても、旧型の男性ヒーローには救ってもらいたい人もいないというカリカチュアとしては有効に思えたし、同時に押井守や北野武の美学が笑われているようなセンスもあった。このような時期に押見修造『悪の華』は意外なほど反社会的行為をストレートに描き、しかも、「受けまくった」。ここには押井モデルのような屈折もなく、同時多発テロ以降、題材にしにくかったテロリズムを心情的に理解させながら話を進めていくことにも成功し、『殺し屋1』のように動機は捏造だったというようなトリックもない。それこそイスラムもないしw、強いていえば思春期原理主義というようなものかもしれないけれど、これに中2病のバイブルというような表現で時代性にフタをしてしまうと、見失しなわれてしまうことも出てくるはずであう。社会が常に変化しているならば、「反社会」も一定ではないはずだし、作者が参考にしたという『太陽を盗んだ男』だけが繰り返し上映されていれば、ほかはいらないということになってしまうし。

 とはいえ、『悪の華』には「反社会」を内面化する決定的なプロセスがない。最も肝心な部分は主人公の外側からやってくる。教室で誰とも口を利かない女子生徒がいわば「反社会」の源泉のように描かれ、主人公はそれに染まるだけである。要するに少年マンガにありがちな「女の子は天使」とか、戦闘美少女と同じく、なぜか絶対なものとして描かれるものが、とくにこれといって位置関係を変えることなく男子生徒に影響を及ぼしているだけで、その女性徒が反社会的なパーソナリティになった理由はまったく明らかにされていない(少なくとも第1部では)。これではレールを踏み出したものがひとりいれば、後はつられて踏み外してもオッケーみたいな感覚に思えてくるし、逆にいえば、ひとりも踏み外す者がいなければ誰も踏み外さないということにはならないだろうか。最初のひとりはどうして反社会へと振り切れたのか。それが描かれていなければ、「反社会」を規定できるのはどの部分なのか、あまりにもわかりづらい。

 ヤマシタトモコがいつもとは作風を変えた『ひばりの朝』が、そして、そのアンサーになっていると思えた。同作は3人の女性がそれぞれに社会と距離を感じていくプロセスが克明に描かれ、その気持ちが何度も上塗りされていくという残酷な作品である(全2巻)。彼女たちにつられて、同じように距離を表現する男性はひとりも出てこない(=だから、『悪の華』のようなテロリストは育たない)。男性たちはむしろ、彼女たちに距離を感じさせる原因でしかなく、ある種の男性たちに対する作者の怒りはみしみしと伝わってくる。彼女がここで描いている女性たちの何人かは、キャラクターをそのままにして男性化させれば吉田秋生の描いたアッシュやヒースと、そうは変わらないものになるだろう(……そう、ヤマシタトモコには、近い将来、吉田秋生の後継といえるような作品を生み出すのではないかとドキドキさせてくれるものがある)。『ひばりの朝』が、そして、とんでもないのは、『悪の華』ではひとりだった反社会的な女性のパターンが3倍になっているだけでなく、それらがさらに憎悪やネグレクトとして絡み合い、女性同士が必ずしも連帯しないという構図にもなっていることだろう。「反社会」性は、そして、なんらかの行動として実行されるものではなく、孤独へと跳ね返ってくるだけで、3種3様の諦めや逃避が描かれる。そして、周辺にいる登場人物たちは反社会に染まるどころか、近づくことさえできないものになっていく。

 「息をとめていたので平気でした」
 「人に興味を持たなければ 傷つかず 良心も痛まない」。

 こうなってくると、もはや「アウトサイダー」という立場が成立していたことさえ奇妙なことに思えてくる。三池崇史監督『悪の経典』のように、一切の理由も正義も省かれている方が納得はできてしまうし、じとーッと『ひばりの朝』を読んでいると、一方では、きっと何も変わっていなかったのだろうと思わせるものがあり、それを普遍性と呼ぶならば、そのように呼べること自体が諦念と結びついているとも考えられる。吉田秋生でいえば『吉祥天女』のようでいて、どれだけ映画化されても悲惨な結果しか生まない(のに、懲りずに映画化される)『桜の園』に近い作品ではないだろうか。「社会」という言葉をもっと分解して考えなければ、ここではこれ以上は先に進めない。

 安直に比較してしまったけれど、『悪の華』と『ひばりの朝』は主題も違うし、読者も効果も何も重ならないに違いない。強いていえば、『ひばりの朝』で克明に描かれているようなプロセスが省略されているにもかかわらず、『悪の華』がこれだけの読者を得たということは、理由もなく、反社会的な行動に駆り立てられている人が少なからずいるということにはならないだろうか。それは、もしかすると新自由主義が生み出したアウトサイダーの変貌がタイムリミットを迎えているのかもしれないし、小泉政権以降、組織に組み込まれなかった人たちが増えすぎて、情緒の受け皿が必要になっているということなのだろう。

(参考)

Hair Stylistics - ele-king

 ヘア・スタイリスティックス=中原昌也のビート集、ビート・ミュージックだ。僕はこの27曲65分にも及ぶ、ビート集を聴いて、心の底から愉快な気持ちになった。発売から2ヵ月以上経つが、いまだによく聴いている。いま、日本でもビートメイカーのレヴェルはぐんぐん上がっていて、彼らは海外のムーヴメントのフォロワーとは異なるオリジナリティを獲得している(という物言いそのものが古臭い!)。コンピレーションとしてまとまっている、『Lazy Replay』や『Sunrise Choir - Japan Rap&Beat』は、日本のビートメイカーのいまを知るためのひとつの参考になるだろう。とはいうものの、良し悪しの問題ではなく、やはりLAのビート・ミュージックや、SoundCloudやbandcampにおける世界的なモードは大きな影響力があり、日本のビートメイカーの多くもその時代の空気のなかにいる。
 ヘア・スタイリスティックスのビート・ミュージックからはそのような空気と同じ匂いがするが、それは中原昌也が90年代の暴力温泉芸者の頃からずーっとやってきたことがたまたまいまの時代の空気にフィットしただけだとも言える。おそらく、このビート集がもう5年早くリリースされていたら、中原昌也のコアなリスナーには届いたとしても、鎮座ドープネスをフィーチャーした曲(“This Neon World Is No Future”)が収録されるには至らなかったのではないだろうか。3年前から制作がはじまったというこの作品が、2013年に世に出たというのは素晴らしいタイミングだ。いや、タイミングではなく、『Dynamic Hate』が素晴らしいのだ。

 好き嫌いといった趣味はあるにせよ、多くのビートメイカーやビート・ミュージック・フリークは、この作品を聴いて考え込むのではないだろうか。「いま“新しい”と言われているビート・ミュージックが果たして本当に“新しい”のか」と。『Dynamic Hate』は、“ビート・ミュージック”という既存の土俵に揺さぶりをかけるビート・ミュージック集だ。中原昌也自身はそんな大それたことを意図していないだろうが、そのような問題提起を孕んだ作品でもある。例えば、アルカの『&&&&&』はたしかに面白いと思うし、いまの時代に支持される理由もわかる。ただ、インターネットの大海原には、アルカに匹敵する才能はゴロゴロ転がっている。僕なんかよりも、SoundCloudやbandcampで日夜ビート・ミュージックをディグっているビート・フリークの諸氏がそのことをよく知っているだろう。カニエ・ウェストが『イーザス』で大抜擢しなければ、アルカがこれほど脚光を浴びることはなかっただろうし、もっと言えば、アルカの分裂的な手法は子供騙しと表裏一体でもある。

 中原昌也は、紙版『ele-king vol.11』のインタヴュー「いよいよ脈打つヘイト」で、「ビート=黒人のものっていう図式もなくなってきたじゃないですか。黒人だからいいビートをつくれるわけじゃない。そういった状況は後押しするものがあったかもしれない」と語っている。さらに、「昔はブギ・ダウン・プロダクションズとマイナーなノイズをいっしょに買うと気ちがい呼ばわりされたものです。僕の頭のなかで常に共存はしていましたけど、そういうことを共有できる友だちはいなかったですよね」とも言う。興味深い発言だ。ラス・Gの『Back On The Planet』の土臭くコズミックなビート、アートワークに接すると、やはりいまだアフロ・アメリカンの音楽家には、拠り所にすることのできるルーツや、アフロ・フューチャリズムのような思想が脈打っているのだなと思う。 “ビート=黒人”という図式があったのかは議論を差し挟む余地があると思うけれど、ビートをグルーヴと言い換えれば、たしかに“グルーヴ=黒人”という図式はあったと思うし、いまだに根強く存在すると思う。

 僕が『Dynamic Hate』を面白いと思った最大の理由は、いち音いち音の音色のヴァラエティとコンビネーションが耳を楽しませてくれるところにある。耳のチャンネルが面白いように次々に切り替わっていくのだ。資料に拠れば、本作は「Ensoniq SP1200、AKAI MPC3000などのサンプラー、ROLAND TR-808などのリズムマシン、ARP2600などのシンセサイザーなど、数々のヴィンテージ・アナログ機材を使っ」て制作し、カセットデッキに録音しDATに起こしたというから、その音色は想像できるだろう。
 一応断っておくと、僕はなにもローファイなサウンドに拘ることが、音への誠実な態度であると言いたいわけではない。グルーヴィーなビートもあれば、グルーヴをあえて否定しているようなビートもある。それが不思議で、興味深くて、何度も聴いてしまう。中原昌也流の諧謔精神ももちろんあるが、そのような態度よりも、とにかくビートのユニークさに耳がぐいぐい惹きつけられる。そして、中原昌也流の分裂的な手法もある。というか、『Dynamic Hate』を聴けば、先ほどのブギ・ダウン・プロダクションとノイズの話ではないが、それが実は分裂でもなんでもなかったことがわかるし、僕自身もいまだからこそその感覚を実感できる。10年前は頭では理解しているつもりでも、実感としてそのことがわからなかった。マントロニクス流のエレクトロ・ファンクとウェルドン・アーヴィンのジャズ・ファンクの名曲“We Getting` Down”をミックスしたような“Empire of Plesure”があり、“No Funk (Tk1)”というタイトルなのに、ベースとキーボートがシンコペーションしているファンキーなビートがある。エキゾ・ブレイクビーツとでも言いたくなる“Music For The Murder Festa”と、シンセサイザーがうなりを上げ、ノイズを撒き散らし、シンプルなビートがズンドコ叩きつけられるタイトル曲からは、中原昌也の気合いと激情が溢れ出しているように思う。手を叩いて大笑いしながらでも、難しい顔をして議論しながらでも聴ける作品だが、いまビート・ミュージックを追っているのであれば、無視できない作品だ。

MARK E - ele-king

Mark E Japanツアー
11.22(金) 名古屋 @ Club JB’S
Info: Club JB’S https://www.club-jbs.jp
名古屋市中区栄4-3-15 丸美観光ビルB1F TEL 052-241-2234

11.23(土/祝) 東京 @ AIR
Info: AIR https://www.air-tokyo.com
東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビルBF TEL 03-5784-3386

Running BackからBlack Country RootsというEPが先日リリースされました。
https://www.juno.co.uk/products/mark-e-black-country-roots/506311-01/

Merk Music:
https://mercmusic.net
https://twitter.com/mark_e_merc
https://www.facebook.com/pages/MERC/124366710936688

THE BLACK COUNTRY ROOTS CHART


1
Tony G - Simple Dreams - infinite juju

2
Glbr & Sotofett - Foliage - Versatile

3
Young Marco - In the Wind - Rush Hour

4
KDJ - Imotional Content - TP Deep remix - JDRecords

5
Mount Kimbie - You took your time - Warp

6
Roc & Kato - Jungle Kisses -eLegal

7
Mark E - Black Country Roots - Runningback

8
Pat Methany - Are you going with me - GU remix - white

9
Black Rox 1 - Black Rox

10
Frak - Matador

YO.AN (HOLE AND HOLLAND) - ele-king

https://yo.an/

11月に発売されるTBPRの新作DVD LENZ II宮原聖美パートの為に1曲制作しました。
PONCHI (OPSB)にguitarで参加してもらった曲です。DVDは2013/12/14発売でサントラもTBPRから発売予定です。
LENZ IIのデッキはEvisenより発売中。今回は思いつきで好きなスケートの映像10個リストしました。

DJ SCHEDULE
11/15 fri  @幡ヶ谷Forest limit
11/23 sat @代官山Air "MARK E JAPAN TOUR"
11/30 sat @渋谷Koara
12/28 sat @静岡eight&ten
12/29 sun @代官山Unit "MOVEMENTS ONENESS MEETING"
12/30 mon @中野heavysick zero  "HOLE AND HOLLAND & OPSB presents『UP↑ 』year's end special"
every 4th tuesday "Sun Hum" @神宮前bonobo

https://hole-and-holland.com/
https://soundcloud.com/holeandholland

10 skate clips.


1
Haruka Katagata - Pick Up - VHSmag
https://www.vhsmag.com/pickups/haruka-katagata/
soundtrack by YO.AN

2
DESHI - NIGHT PROWLER - Katsumi Minami
https://www.youtube.com/watch?v=aIN7a-A84G4
soundtrack by BALKAN BEAT BOX

3
Sunshine60dub - AKIOCHAM.com
https://www.youtube.com/watch?v=xTcu1LA0BHY

4
Zerosen (Shintaro Maruyama) - Underground Broadcasting - FESN
https://www.youtube.com/watch?v=ixrkuRAMkZI
soundtrack by HIDEYUKI DOI a.k.a. Taikoman

5
Takahiro Morita - ON THE BROAD - FESN
https://www.youtube.com/watch?v=g_QvqevXqBs
soundtrack by Kouta Andou

6
AARON HERRINGTON - BLOOD WIZARD
https://www.youtube.com/watch?v=XcgYCU5E8qQ

7
Greg Hunt -Tincan Folklore - Stereo Skateboards 
https://www.youtube.com/watch?v=TaA7jqP8pKo
soundtrack by TORTOISE

8
este ó este 2 - HOLE AND HOLLAND 
https://www.youtube.com/watch?v=lzmLL8WMIhg
soundtrack by KPK (kujitakuya)

9
TRES TRILL - PALACE SKATEBOARDS
https://www.youtube.com/watch?v=oXi0ucVsqFk

10
Mark Gonzales - Kicked Out Of Everywhere - Real Skateboards
https://www.youtube.com/watch?v=GI4YJs3Xmqs
soundtrack by Hiroshi Fujiwara

Vic Mensa - ele-king

 セイヴマネー・クルー――シカゴのクリエイティヴで騒々しい若者たちのコレクティヴだ。ラッパーに限らずトラックメイカー、ミュージシャン、ヴィデオ・ディレクター等々、様々な才能を持った連中がたむろしているらしい(https://cokeandfrozenpizza.blogspot.jp/2013/07/whats-save-money-crew.html)。セイヴマネーという集団の雰囲気を存分に伝えているこちらのヴィデオで、構成員のひとりであるチャンス・ザ・ラッパーはこんなことを語っている。「セイヴマネーにリーダーはいないんだ」(セイヴマネーの音楽については『ザ・ベスト・オブ・セイヴマネー』というミックステープをぜひ聴いてほしい)。

 高校時代からのチャンス・ザ・ラッパーの良き友人(先のヴィデオでも終始仲よさそうにしている)、ヴィック・メンサことヴィクター・メンサーももちろんセイヴマネー・クルーの一員だ。今作、ヴィックの新しいミックステープ『INNANETAPE』(ダウンロード・イット!)のジャケットにはしっかりと"SAVEMONEY"の文字が刻まれている。
 もともとヴィック・メンサはキッズ・ディーズ・デイズというラップ・ロック・バンドのラッパーだった。ウィルコのジェフ・トゥイーディーとの共同プロデュースによる傑作フリー・アルバム『トラップハウス・ロック』(ダウンロード・イット!)をリリースした後、レーベルとの契約を済ましていたにも関わらず今年に入って方向性の違いから解散、ヴィックは新曲"DID IT B4"のリリースとともにソロ・キャリアに注力することとなる。

 誰もが聴き紛うほど、ヴィック・メンサの音楽はチャンス・ザ・ラッパーのそれと多くのものを共有している。兄弟なんじゃないか? と疑う者もいるほどだ。ソウルフルで、ファンキーで、メロウで――それに、2人の声はよく似ている(チャンスの方がアクが強いが)。チャンスとヴィックの音楽とは逃れがたい結び付きがあって、比較は避けがたいものがある。
 しかし、チャンスの泥臭い『アシッド・ラップ』よりも『INNANETAPE』は爽やかで温かい開放感を携えており、より軽やかな陽性のグルーヴがみなぎっている。それが端的に現れているのが冒頭の2曲、ジャジーなフィーリングを携えたオーセンティックなブレイクビーツの“オレンジ・ソーダ”と、軽やかなジャングル風ビートとソウルフルなコーラスやトランペットに彩られた“ラヴリー・デイ”だ。ヴィックのベスト・トラックとも言えるこの2曲がアルバムのカラーを決定づけている。この爽やかなメロウネス、リラックスしたチルアウトな感覚は、まるでザ・ファーサイドの素晴らしき最初の2枚が表現していた幸福感をスマートにアップデートしたかのように響く(余計なことを言えば、“ウェルカム・トゥ・INNANET”におけるウータン・クランの引用や、“YNSP”の最後にチラッと聴こえるア・トライブ・コールド・クエストの“アワード・ツアー”、チャンス・ザ・ラッパーをフィーチャーした“トゥウィーキン”においてヴィックがノトーリアス・B.I.G.の声を真似ている点など、黄金の90年代の影がそこかしこに見え隠れしている。プロ・エラのジョーイ・バッドアスにしろ、90'sヒップホップは現在のモードのひとつなのかもしれない)。

 “オレンジ・ソーダ”でヴィックは視界を曇らせる「デーモン」を排し、「俺の音楽への傾倒はビジネスよりもずっと深い」「俺は俺の『イルマティック』を書こうとしているんだ」と素朴だがシンプルで逞しいメッセージをラップしている。「重要に思えることが常に(自分を)ミスリードしているようなのはなぜだ?/未来を見ることができればとただ望んでいる」と逡巡しながらも。
 他方、アルバムの後半ではシリアスな顔も見せている。メイバック・ミュージックからロッキー・フレッシュが客演した“タイム・イズ・マネー”ではシカゴの格差や暗い現実を映しだし、「金は稼げ、だが稼いだ金がお前を決めるわけじゃない」と父の言葉を反芻している。“フィア&ダウト”やブラック・ヒッピー(ケンドリック・ラマーらが所属するクルーだ)のアブ・ソウルをフィーチャーした”ホーリー・ホーリー”といった曲では内省に沈んでもいる。
 それでも、〈ブレインフィーダー〉からサンダーキャットを迎えた“ラン!”ではワードプレイを排除した簡素でシンプルな言葉遣いでもって「君がどこへ行こうとするのかを知りたかった/だから俺は光を捨てて、一人暗闇を行く/君の反射光が見えるさ」と自らを鼓舞し、クロージング・トラックの“ザット・ニガー”ではアトランティックとの契約を蹴ってシカゴのステージに立ち戻り、「セイヴマネー・スティル・アライヴ!」と宣言する(チャンス・ザ・ラッパーがTDEからのオファーを蹴ったことも話題となったが、セイヴマネーはインディペンデントであり続けることに矜持を持っているようだ)。

 『INNANETAPE』は『アシッド・ラップ』ほどのバズを引き起こすことはなかったし、完成度も及んではいない。それでもなお、軽やかにビートを乗りこなし、ユーモラスな所作を交えながらラップするヴィック・メンサの姿には唯一無二の魅力がある。『INNANETAPE』はヴィックにとっての『10デイ』になるだろう。次作はもっとブリリアントだ。そう思わせるポテンシャルがたしかに感じられる。すでにJ・コールとのツアーを終え、来年にはディスクロージャーとのジョイント・ツアーも控えている。前途は洋々だ。

- ele-king

RP BOO JAPAN TOUR 2013 - ele-king

 今週末、東京大阪、やばいっす。ジューク人気が急上昇するなか、シカゴからそのシーンの重鎮、RP ブー(今年、 名作『Legacy』を出している)が来日するの知ってる? 楽しいから、絶対に行ったほうが良いよ。

RP Boo - Legacy JP (Planet Mu)


 来日のサポートにはシーンを牽引してきた〈Booty Tune〉、CRZKNY (Dubliminal Bounce)、Satanicpornocultshop (Negi)、〈SHINKARON〉、Keita Kawakami (Dress Down)をはじめ、ジュークと共鳴するゴルジェ、テクノ、ベース、ヒップホップ / ラップなどの周辺ジャンルと華麗にクロスオーバー、そしてフットワークのバトル・トーナメントで優勝したTa9yaや準優勝の女性ダンサーHarukoなど多くのダンサーもジャンルを超えて結集した、若手を中心にベテランや中堅も織り交ぜ、もはやこれがジュークであるとは言えないほど多様化するハイブリットな国内シーンとそのカルチャーを堪能出来るキレキレのラインナップをお見逃しなく!

≈ RP BOO JAPAN TOUR 2013 ≈

〈東京公演〉

11.23 (SAT) @ Shinjuku LOFT Tokyo
OPEN/START 23:30 ADV 3,000 yen | Door 3,500 yen

shinjuku LOFT Presents
SHIN-JUKE vol.5

RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Satanicpornocultshop (negi)
hanali (Gorge In, Terminal Explosion!!)
HABANERO POSSE
ALchinBond
Booty Tune crew
SHINKARON crew

More Info:
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft/18988


〈大阪公演〉

11.22 (FRI) @ Club Circus Osaka
OPEN/START 21:00 ADV 2,500 yen | Door 3,000 yen

Booty Tune & Dress Down Presents
SOMETHINN3

RP Boo (Planet Mu from Chicago)
D.J.Fulltono (Booty Tune)
Keita Kawakami (Dress Down)
DJ TUTTLE (Marginal Records)
Quarta330 (Hyperdub)
terror fingers (okadada + Keita Kawakami)
CRZKNY (Dubliminal Bounce)
DjKaoru Nakano
Paperkraft (Alt)
AZUpubschool (doopiio)

More Info:
https://circus-osaka.com/events/booty-tunedress-down-presents-something3


Gun Club Cemetery - ele-king

 アラン・マッギーに「君が契約したバンドってみんなサイケとパンクに影響されていて、それがいまの音楽の主流になったよね」と言ったら、「俺はテレビジョン・パーソナリティーズのダン・トレイシーの〈ワーム!・レコード〉をマネしただけだ。偉大なのはダン・トレイシーだ」と言ってました。
 ダン・トレイシーはレッド・ツェッペリンのレーベル、〈スワン・レコード〉で、ジミー・ペイジに「お前はパンクか」と白い目で見られなが働いていたそうで、レッド・ツェッペリンのマネージャー、ピーター・グラントのようになったアランは、ダン・トレイシーの復讐をしたのかと思うとなんか、感慨深いものがあります。

 アランに「そんな謙遜せずに、マイブラがいまの若者の琴線にいちばんふれる音楽になったじゃん」と言うと、「ケンジ、マイブラなんか大したことないぞ。いまに若いやつらが“オアシスがいい、オアシスがいい”と言い出すぞ。そのときはもっと大変なことになるぞ」と言っていた。というわけでガン・クラブ・セメタリーを出すことにしたんでしょうか。オアシスより白黒な感じがいいです。ガン・クラブという名前を付けているのはあのジェフリー・リー・ピアースのガン・クラブへのリスペクトなんでしょうか、ガン・クラブな荒野の不法地帯な匂いがします。

 僕はガン・クラブ・セメタリーのブルージーなところが好きです。彼らが新しいオアシスになるのかどうかはわからないですが、ガン・クラブのようなカリスマ的人気を得ていきそうな気がします。
 しかし、本当にガン・クラブの再評価は高いですよね。前にパーマ・ヴァイオレットのチリ・ジェッソンにインタヴューしたら、「ガン・クラブが好き」と言ってましたが、ガン・クラブ・セメタリーはまさにそのようなバンドになりそうですね。いまのところは元ハリケーン#1のボーカルで元ボクサーでリアム・ギャラガーを殴ったというくらいしか伝説はないですが、これから作っていくのでしょう。でも、元ボクサーだったら殴ったらダメですよね。犯罪ですよね。僕ももう鼻血ブーな伝説を作らないように、彼には殴られないように気をつけていきたいです。

DJ SHIBATA - ele-king

[Schedule]
11/22(FRI) "探心音"@渋谷KOARA
11/23(SAT) "MARK E JAPAN TOUR"@代官山AIR
11/29(FRI) "VIDEOGRAM"@吉祥寺Star Pine's Cafe
11/30(SAT) "大三元"@三軒茶屋タイ衆居酒屋三角 / Slow Mo'@青山TUNNEL
12/06(FRI) "THE OATH"@青山OATH
12/14(SAT) "Misty"@三軒茶屋Orbit

Deep House/Disco Chart for November 2013.11.18


1
Guillaume & The Coutu Dumonts - Impossible Rendez-vous - Meander

2
V.A. - Chicago Service - Lumberjacks In Hell

3
Ivano Tetelepta & Friends - Volume 1 - Fear Of Flying

4
Felix Dickinson - Ousana - Is It Balearic?

5
DJ QU - Eden / Do This Here - Yygrec

6
Arno E. Mathieu - Tribute & Fantasy - Clima Records

7
Lay-Far - Green EP - Fifty Fathoms Deep

8
Anthony Nicholson - Pathways And Sidesteps - Deepartsounds

9
Dego & The 2000Black Family - Find A Way - Neroli

10
Mazzy Star - Seasons of Your Day - Rhymes Of An Hour Records

7e (Romanescos) - ele-king

https://7ehome.tumblr.com/
https://soundcloud.com/7e_romanescos

最近DJでかけたお気に入り音源


1
Matmos - Rag For William S. Burroughs - P-VINE

2
PSILOSAMPLES - Sonhos no quintal - Octave / Desmonta

3
Los Sanpler's - Mambo Brillante (HD Mambo) - Audio View

4
Jun Miyake - Cream - Agentcon-Sipio

5
Jichael Mackson - Flatscreen_Original Mix - Stock5

6
Figura - Ze Bula (Chancha Via Circuito Remix) - ZZKrecords

7
Animation - Sanctuary - Sacred Rhythmic Music

8
Coppe' with Nikakoi - Forbidden (Remix) - Mango+Sweet Rice Records

9
Axel Krygier - Serpentea el tren - LOS ANOS LUZ DISCOS

10
Groupshow - anyone care for a drink? - Scape Germany
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