「ZE」と一致するもの

Special Talk : peepow × K-BOMB - ele-king


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

Hip HopExperimentalAbstract

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 目を閉じて想像したまえ。深夜、K-BOMBに呼び出され、マヒトゥ・ザ・ピーポーとの対談の司会を託された二木信の精神状態を。
 それはまるで……たまに電車で一緒の車両に乗り合わせる、名も知らぬあの美しき貴婦人から、いきなり電話をもらって、「いますぐ来て!」と言われるようなものだろう。そんなあり得ない、ウキウキした感情を以下の対談から読み取っていただけたら幸いである。
 もちろん賢明な読者には、これが先日〈Blacksmoker〉からリリースされたマヒトゥのラップ・アルバム『DELETE CIPY』に関する密談であることは、察していただいていることと思う。つまり、もう聴いている人はその余談として、まだ聴いていない人には聴くための契機としてある。

 まあ、悪名高きロック・バンド、下山のヴォーカリストのマヒトゥ(熱狂的なファン多し)が、名門〈Blacksmoker〉からK-BOMBをはじめとする素晴らしいトラックメイカーたちと共演していること自体が、すでに巷では話題となっているわけだが、そこでもっとも好奇心を掻き立てられることのひとつは、マヒトゥとK-BOMBがどのよう状態のなかで会話し、創造していったのかというそのプロセスなのだ。
 二木、この場にいられたお前が心底羨ましいぜ。(野田)

マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。──K-BOMB
たしかに揃ったことがないかもしれない。──peepow

二木:マヒトゥさんとK-BOMBが出会ったのはいつですか?

K-BOMB:わかんない。

peepow:あんまり思い出せないね、オレも。

K-BOMB:カルロス(・尾崎・サンタナ。GEZANのベース)に電話してみたら? 彼はそういうことを憶えている人だ。

二木:ライヴの現場?

peepow:ではない。

K-BOMB:わかるだろ? オレがいつも酔ってるのは。憶えてないな。KILLER-BONGに聞いてみたらいいんじゃねーか? 奴は家で寝てるよ。

二木:K-BOMBから見て、マヒトゥさんの才能とは?

K-BOMB:そういうのは、実のところよくわからない。魅力か。人物とか自由なとこ? かなぁ。

二木:自由とは?

K-BOMB:なんかスケボーにも近いような感じさ。

peepow:オレの〈Blacksmoker〉のイメージもスケボーのりにちょっと近い。好奇心の波みたいのがあって、いい風が吹いている。オレは人も場所もニュアンスでしか感じ取ってない感じがする。

K-BOMB:人といっぱい会うけどさ、才能って人物でしかないと思うんだ。そういうものの塊だと思う。目立つ、そういう雰囲気だ。

peepow:K-BOMBから最初「チャリ、かっこいいな」みたいな話をされたのを憶えてる。

K-BOMB:ママチャリでさ真っ赤に塗られててハンドルが片方無いんだ

二木:マヒトゥさんから見て、K-BOMBの表現者としての魅力は?

K-BOMB:オレとかさ、けっこう関西ノリなんだと思う。関西の人によく言われる。「K-BOMBくん、関西っぽいな」って。

peepow:いや、わかる。東京に来て、数字やデータみたいなもので足場を作ってる人が多いことにげんなりしていた時期にK-BOMBに会って、生き物感バーンって、純度あるなーって感じた。

K-BOMB:そういう軽いノリが似てんだと思うな。

peepow:恋に落ちる時もパッと一瞬目が合って、「あ、好きかも」ってなる。理屈や理由なんかそのだいぶん後でしょ。それは匂いやニュアンスとしか言えない。K-BOMBには細胞レベルの何かってやつを感じた。血なまぐさい獣の匂い。おいしそうなもの目の前に広がってたら、蛍光色でも1回つまんで食ってみる、みたいな感覚に近いな。ドキュメントがまじわるってことは。

K-BOMB:蛍光色っぽい感じだ。わかる?

peepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K-BOMB「SUNDANCE」

二木:『Delete Cipy』を聴いたり、それこそ“SUNDANCE”のミュージック・ヴィデオを見ると、ふたりが色や感覚で何か感じ合っていることは伝わってくる。

K-BOMB:うん。そうだね。

peepow:利害とかじゃないすよ。

K-BOMB:でも一方で、数字も手にしとかないと、またその逆をというのもある。そういうところを無視してやっているようで、実のところ絡ませたい。そうじゃないとあんまり意味がない。それが数字を相手にした時の面白さなんじゃないか。

peepow:オレは〈Blacksmoker〉やK-BONBをアンダーグラウンドと思ったことはないですね。そういう文脈を超越しよう姿勢で数字と関わってる。いびつなストリート感でしょ。

K-BOMB:アンダーグランドだと言われるけどさ、俺もそういう感覚はまったくないんだ。ただちゃんとリスペクトもある。だからさ、試してる、やってみる、やりたい。ただ、それだけなんだ。

二木:その話につながると思うんですけど、マヒトゥさんはキレイな歌声も出せるし、上手く歌おうと思えばいくらでも歌えて、メロディアスなポップ・ソングも作れる人だと思うんですよ。ただ、今回のアルバムでも上手く歌ったり、ラップすることを追求してるわけじゃないですよね。そこが面白いなと。

K-BOMB:そういうことだと思う。オレにもそういう風に聴こえる。

peepow:ジキルとハイドじゃないけど、朝起きた時は世界も征服をできるかもしれないぐらいの無敵感でも、寝る前にはひとりぼっちで無気力で何もやる気が起きないことすらある。ひとつにキャラクターをまとめることなんて本当は誰も不可能なはずなんだ。オレはいろんな場所を歩いて、歌ったり、形にしながら、自分が思ってることを楽しみながら探してる。おれのなかにいる何人もの顔を解放してあげたいんだよね。だから、卑屈な感じとか悲壮感はない。結局、映画にした時にいちばんグッとくるほうを選ぼうって感覚あるな。最速で最短でキレイなゴールに行きたいわけじゃない。全感覚でいい匂いのするほうに流されてる。

K-BOMB:感覚は大事だよ。絵を描いても写真を撮っても、イイ感覚で見えてると違う。ナナメ感もあるけど、ちゃんとまっすぐしてる。そういう感覚なんだ。マサトはバランスがいいんじゃないか。

二木:さっきの歌の上手さの話で言えば、K-BOMBも上手くフロウするラップもできるわけじゃないですか?

K-BOMB:できる。

二木:でも、あえてやらないわけでしょ?

K-BOMB:やらない。やれちゃうからね、つまらない。オレがつまらないんだからさ、人を楽しませることができない。

peepow:だから、新しい正解のカタチみたいなのを落としたいっていうのはある。

K-BOMB:どんどん知りたいんだからさ、そこら辺が重要で感覚なんだろうね。

peepow:オレのK-BOMBの好きなところは、生き方としてK-BOMBというジャンルになっているところ。その人がそのまんま音楽の言葉とイコールにならないやり方は嘘だと思うから、そこはリスペクトあるね。オレも自分がやるんだから、全部正解って言わせるよ。それは当たり前のことなんだ。

K-BOMB:そういう感覚でチャレンジして、自分を持っている人がやれんだと思う。

peepow:今回『Delete Cipy』を作って、ヒップホップは簡単にできるもんじゃないなって感じた。ただ、ヒップホップは血や生き方や生活だと思うから、そういう意味で言えば、オレもある意味ヒップホップだと思う。自分のフィルターやノドを通ったものはすべてオレのカタチになっていくから。

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上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。──K-BOMB


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
Delete Cipy

Blacksmoker

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二木:今回マヒトゥさんがラップ・アルバムを作ろうと思ったのはなぜですか? 

peepow:成り行きだと思うんですけど、自分も最初からそうありたいと思ったんですよね。ただ、オレのラップは、ヒップホップの人が言うラップなのかはわからない。ただ、少なくともオレが純度100%であることは間違いない

K-BOMB:ラップでしょ。

二木:ラップですね。

K-BOMB:うん。ラップにね、定義はないんだよね。韻踏んでりゃラップなんだから。そうだろ?

二木:韻を踏んでればラップか。うん。

K-BOMB:違うの?

peepow:ラップって何なんすか?

K-BOMB:ラップって何なの?

二木:フロウするのがラップじゃないですか。

peepow:オレのアルバム、ラップなんですか?

K-BOMB:だったら、そうとうフロウしてるからね。

二木:ラップですよね。だから。

K-BOMB:そうだね。いいアルバムだよ。

二木:そもそも表現者、ミュージシャンとしてのマヒトゥさんの原点はどこにありますか? 例えば、ロックなのか、パンクなのか、ブルースなのか。

peepow:そのどれでもないですね。何にも考えずに生まれた瞬間は、自分の感情と直結して言葉やルールがまったくわからないのにフロウがバーッと出てくるわけじゃないですか。オギャーって泣いて生まれてくるあの一発目のフロウですよ。いろんなルールや人と会っていく中で上手いこと表現しようとしているけど、オレは最初の、何も考えずに生まれた瞬間に近づきたい感覚がある。失っちゃったものを取り返しにいきたい。

K-BOMB:上手くなるっていうのは、下手になるっていうことでもある。だから、わざと変えていく。そうすりゃさ、オレははじめた時の気持ちが持続していく。オレがよく知らないものに触れることはラップをはじめた時と同じ感覚に戻ることなんだ。だからさ、新しくはじめたことをラップのようにやるだけだよ。何も変わらないんだよね、オレは。気分も変わらない。何をやってもそのうち上手くなっちゃうからな。ふっ(笑)。

二木:それこそ『Delete Cipy』にはK-BOMBの他に、KILLER-BONG、LORD PUFF、KILLA-JHAZZが参加していますよね。とくにLORD PUFFとKILLA-JHAZZは久々登場じゃないですか。

K-BOMB:彼らが連絡して来たんだよ。やらせてくれと。仕方ないよ。

二木:久々に連絡して来たのはなぜ? 

K-BOMB:JUBEくんがコンタクト取ってたみたいだ。そうでしょ?

JUBE:KILLA-JHAZZやLORD PUFFだけでなく、BUN君、WATTER、GURU、そしてKILLER-BONG。狂ったメンバーが集まりました。

二木:LORD PUFFとKILLA-JHAZZはかなり久々じゃないですか?

K-BOMB:だいぶ久しぶりだな。LORD PUFFはカリフォルニア辺りに行ってたらしーし。

peepow:オレも気になるとこですね。

K-BOMB:K-BOMB、KILLER-BONG、KILLA-JHAZZは三つ子だからさ。LORD PUFFはイトコだけど。アナル・ファイタ(ANAL FIGHTER)もイトコなんだ。そーゆーコトになってる。

JUBE:ファイタはTHINK TANKのP……

K-BOMB:彼はエグゼクティブ・プロデューサーだよ。

二木:やはりマヒトゥさんのキャラクターと才能を見て、今回はKILLA-JHAZZとLORD PUFFだと。

K-BOMB:だいたいさ、ヤツらの曲もその場でパッと作って、その場でパッとマサトがラップを入れる感じだったんじゃないか。KILLER-BONGのことも全然わからないからさ。オレ、K-BOMBだからさ。彼らにまた後日インタヴューしたらいいんじゃないの? KILLER-BONGはいま徳島辺りに行ってるんじゃないの? 

二木:なるほどね。アルバム制作はマヒトゥさん主導で作っていった感じですか?

K-BOMB:KILLER-BONGは50曲ぐらい作ったけど、50曲渡すということは、そのすべては完成形じゃない。KILLER-BONGは、他にもっと完成度の高いトラックがあるのに、マサトが20%ぐらいの完成度のトラックでどんどん勝手に歌ってしまったんだと。「なんでそれで歌うの? こっちにもっといいトラックがあるじゃねぇか」と。

peepow:食べ物だってすげぇおいしそうなスパイスの効いたカレーじゃなくて、パーキングエリアのカレーが食いたい時だってある。理屈じゃないんですよ。

K-BOMB:だから、KILLA-JHAZZやLORD PUFFがスパイスを注入する役だ。トマトとかセロリとか。ただ、KILLER-BONGは大変だったみたいだな。ライヴばかりの生活の中50曲近く作って渡すのは。

peepow a.k.aマヒトゥ・ザ・ピーポー feat. K BOMB 「blue echo」

二木:BUNさんがトラックを作った“sleepy beats”(KILLER-BONG『64』収録曲でpeepow a.k.a マヒトゥ・ザ・ピーポーが歌った楽曲をBUNが再構築している)で、マヒトゥさんはいろんな声を出してますよね。

K-BOMB:あれ、いいよね。

二木:もちろんすべてマヒトゥさんの声なんですよね。

peepow:そうです。

二木:これだけ多彩な声が出せるというのはマヒトゥさんのヴォーカリストとしての武器であり、魅力ですよね。

K-BOMB:そうなんだよ。オレも出したい。オレも歌とか歌いたいけど、やっぱヘタなんだ。いい声が出ない。

peepow:はははは。

Fumitake Tamura (Bun) / Sleepy instrumental [[SplitPage]]

K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。──peepow


peepow A.K.A マヒトゥ・ザ・ピーポー
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JUBE:マヒトゥはラップに初挑戦的なイメージだけど、GEZANのライヴを見たときに「もうラップしてるじゃねーか!」って思ったよ。色は違えど、常に挑戦し、すでに多彩な武器を備えてる。K-BOMBと重なったな。これは面白いと思ったよ。

K-BOMB:武器、いっぱいあるよ。声も七色ぐらい持ってる。オレもやっぱ物真似、上手いからさ。そう言えば、アルバムは13曲だけど、あと10曲ぐらいあった。だからさ、20数曲ぐらいラップを録音して、13曲に絞った。だって、マサトは1日に5曲とか録るんだ。似てるよな

peepow:トラックをもらって、その日にリリックを書いて、次の日には録音してる。そういう曲が入ってる。24時間オレなんだから時間はかからない。

K-BOMB:オレたちのスケジュールが合わないぐらい早かった。

JUBE:しかもだいたい一発録り。

K-BOMB:声の重ね方もラッパーのように上手いね。あと、マサトは少女マンガみたいなさ、雰囲気あるわけよ。

peepow:ははははは。

K-BOMB:ファッションもそうだし。

peepow:オレ、ファッション、少女マンガ感ある? 

K-BOMB:あるんじゃないの?

peepow:どこ?

K-BOMB:たまにあるんだよ。

二木:それ、髪長いとかそういうことじゃなくて?

K-BOMB:そうかもしれない。

peepow:そこじゃん(笑)。

K-BOMB:はっはっはっ。いや、だけど、マサトのファンや客は、いまのオレの意見に「わかります」って納得するはずだよね? マサトはロマンティストなのかもしれないな。ところで、君はマサトのアルバムをどう思ったんだい?

二木:相反する要素がせめぎ合っている作品だと思いましたね。混沌と秩序、理性と感情、上手いと下手、本当と嘘、美しさと醜さ、白と黒、そういうものが常にせめぎ合って闘っている。そのせめぎ合いが凄まじいなと。

peepow:2時間の映画じゃないから、そこで曲が完結したとしても、はじまりや終わりは、オレはないと思う。ずっと続いていて、はじまったり終わったりしている感覚がずっとある。だから、この作品も曲も続きのなかの最初の部分を切り取っただけかもしれない。K-BOMBと最初に会った頃に、K-BOMBがオレの弾き語りのソロのYouTubeの映像を〈Blacksmoker〉の事務所で観て、「狂ったことしかできないヤツはダメだ」と言っていて、スッと腑に落ちた。

二木:マヒトゥさんは、K-BOMBのラップする姿は見て、どういう印象を持ちました?

peepow:音との距離が近い。そう感じた。MPCを叩いている時も会話しながら叩いてるし、自然に手元で絵を描いたり、コラージュを切ったり、そういう速度や距離の近さが面白いと感じた。頭で先に考えて、遅くなる人が多いなかで、細胞レベルでバッと感じたことをそのまま行動に出せる。たとえば、今回のリリースもGEZANやオレのライヴを観て、何かの可能性を感じたとかではなくて、オレと会話している時のニュアンスで何かをやろうとなって実現している。その速度がK-BOMBや〈Blacksmoker〉の面白さだと思う。

二木:ということは、普段からけっこう会話してるんですね。

K-BOMB:してるね。メールもしてるしさ。

peepow:まあ、一向にマサトという呼び方が直らないけど。マヒトゥなのにマサトと呼ぶ(笑)。

二木:あ、本名がマサトじゃなかったの!!?

peepow:マヒトゥ。

K-BOMB:マサトで憶えちゃったんだよね。

peepow:はははは。

K-BOMB:マヒトゥって言う時もあるけど、オレのなかじゃ言いづらい。言いづらくて、会話が続かなくなっちゃう。

peepow:はははは。

二木:さすがですねー(笑)。最近、K-BOMBは自分より若い人とやる機会も当然増えていってますよね。

K-BOMB:若い人といろいろやると楽しいな。オレは知らないあいだ長いことやってるけど、いまでも同じ気持ちでずっとやっている。若者から大人になってそのままずっと続いていくんだろうなと思っていたし、そうやってきている。オレはそういうヤツが好きなんだ。マサトもそういうヤツだ。でも、世のなかはそういうヤツばかりではないってことに最近気づいたんだ。そういうのはつまらないよな。

peepow:あと、何かをテクニックだけで言ったり、やったりするのもつまらない。だからと言って、できない拙さみたいのを売りにするのもイヤだし、つまらない。今回のアルバムもそうはしたくなかった。

K-BOMB:あと、狂人を演じるようなヤツもつまらない。

peepow:狂人を演じるヤツはめちゃくちゃマトモだからね。真面目を絵に描いたようなヤツが狂人を演じる。つまらないからおれの半径10mにはいらない。

K-BOMB:オレの前に狂人ぶったヤツが現れやすいんだ。何故なのかわからねーけど狂人みたいなフリして荒々しい感じで近づいてくるんだけど、無視してると、そいつは普通に戻っちゃう。たまに本物の狂人もいるけどね。そういうヤツとは長年付き合っているよね。ある狂人はオレのライヴに10何年も来てくれている。あとさ、マサトはさ、靴下もさ、あってないんだ。オレと一緒なんだよね。

peepow:たしかに揃ったことがないかもしれない。

K-BOMB:オレもあまり揃ったことがない。そういう意味ではいろいろ似てて面白いんだよね。女物の靴下穿いてたりとかさ。おパンティも穿いてるかもしれないな。

二木:ははは。

K-BOMB:あと、マサトと俺は鼻のデザインが同じだ。

peepow:オレとK-BOMBとジャッキー・チェンの鼻のデザインは同じ。

K-BOMB:オレはけっこう鼻のデザインを見てるからね。HIDENKAも鼻のデザインがオレと似ている。オレは人と目を合わさないで鼻の部分だけ見て喋ったりするんだよね。

peepow:Phewさんがあるライヴで、いちばん簡単に人を騙せるのは目の色だ、みたいなことを話してたのを思い出した。目の色だけは嘘つけないってみんな思ってる分、目つきとかで真実味を出して人を騙すことがいちばん簡単だと。

二木:K-BOMBの目つき、ほんとに怖い時がある。

K-BOMB:ふっ(笑)。やめて。

peepow:鼻は嘘をつけない。

K-BOMB:うん。そうだと思う。

peepow:目は嘘をつける。

K-BOMB:オレは顔がいいのが好きだからね。一緒にやったり、何かをやってもらう時に、こいつがやるんだったらなんでもいいよって思える顔が好きなんだ。マサトもそう。

peepow:ずっとそういう表情で生きてきてるわけだから、自然とそういう顔になりますよね。

K-BOMB:顔に出てくる。顔がさ、輝きはじめる。汚い格好だろうが、シャネルとか、そういう豪華なパーティ会場にでも行ける顔っていうのがある。だから、売れていくヤツは顔がどんどん変わっていく。でも、会った時から顔が変わっていかないヤツっていうのは、わからないね。

peepow:プロフィールに具体名をどんどん出したり、誰々と知り合いとか出したり、そういうヤツはほんとに信用できない。基本的にそういうことを言っている時点で遅い。いや、その前にオレはもうお前の顔を見てるし、鼻も見ちゃってると思う。

K-BOMB:そうだよな。マサト。顔を見れば、だいたいさ、そいつがどれぐらいやってるのかわかるじゃない。そいつがどれだけ真剣にやってんのかは顔にも出てくるよね。

peepow:だからマサトちゃいますけどね。

(協力:みどりちゃん)

■■■■■■■ Release Party!! ■■■■■■■■
6/28(SUN)18:00-
at 中野HeavySickZero
ADV:2300yen+1D

LIVE
peepow special live set feat. GEZAN、skillkills、BUN
OMSB
NATURE DENGER GANG
skillkills
THE LEFTY

DJ
Fumitake Tamura(BUN)
WATTER
ひらっち(MANGA SHOCK)
イーグル・タカ


■前売りチケット
https://eplus.jp/sys/T1U90P006001P0050001P002155789P0030001P0007

loadedを“reloaded(再装填)”! - ele-king


久保憲司写真集loaded
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 ノイバウテンやSPKからストロベリー・スウィッチブレイドまで! ロックを中心に洋邦さまざまな媒体で活躍するフォトグラファー、久保憲司。とくに活発に活動を展開し、ロック・ジャーナリズムを支えた80年代半ば~90年代の仕事をたっぷり収録した写真集『loaded』を覚えておられるだろうか。刊行から1年半、「reloaded(再装填)」と題して久保憲司氏が新たに展示会を開催する。期間中にはDJイヴェントやトーク・イヴェントも予定されており、毎回いわくいいがたいテーマが掲げられているようだ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

日本を代表するロック・フォトグラファー、久保憲司。
今回は、これまでの展示にはなかった氏のアナザーサイドにスポットを当て、写真集「loaded」を“reloaded”(再装填)。
80年代を中心にニューウェイブ/ノイズ/インダストリアルのアーティストの貴重な現場写真を展示します。

今回の展示を記念したDJイベント、東瀬戸悟氏(Forever Records)とのトークイベントもありますのでぜひご参加下さい。

■久保憲司 exhibition「reloaded」

2015/6/6(sat) - 6/15(sun) ※closed on 6/10(wed)
mon-fri 15:00-20:00
sat,sun 13:00-20:00

at Pulp
(map https://pulpspace.org/contact)

Einstürzende Neubauten
SPK
Foetus
Depeche Mode
Psychic tv
Strawberry Switchblade
Laibach
Suicide
Soft Cell
Fad Gadget …more

■同時イヴェント

6/6 sat | opening talk event
「狂気の音楽 人はなぜ気が狂うのか」
久保憲司 ×流れの精神科医
19:30-21:30
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/7 sun | talk event
「80年代インダストリアル、ノイズ、ニューウェイブ再検証語り」
久保憲司×東瀬戸悟
19:30-
charge : 1000yen
※ご参加希望の方は、pulp.space.gallery@gmail.com まで
※定員25名(スペースに限りがありますので埋まり次第、終了となります。)

■6/14 sun | closing party
DJ:MR.A(from DAMAGE) / KENJI KUBO
19:00-21:00

::PROFILE::
久保 憲司 Kenji Kubo

https://twitter.com/kuboken999

1981年に単身渡英し、フォトグラファーとしてのキャリアをスタート。
ロッキング・オンなど、国内外の音楽誌を中心にロック・フォトグラファー、ロック・ジャーナリストとして精力的に活動中。
また、海外から有名DJを数多く招聘するなど、日本のクラブ・ミュージック・シーンの基礎を築くことにも貢献した。
著書久保憲司写真集『loaded(ローデッド)』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 〜誰も知らなかった音楽史〜』『ダンス・ドラッグ・ロックンロール 2 ~“写真で見る"もうひとつの音楽史』、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた1枚のアルバム』など。

Moved to England in 1981, and started his career as a photographer.
Kenji Kubo also works as a journalist specialized in rock ‘n’ roll music for various music magazines such as Rockin'on.
He also invited a number of big DJs to Japan and helped to establish the Japanese club music scene.
He has published numerous book in which he photographed and wrote, such as "loaded” , “Dance Drug Rock-on-Roll”, “Dance Drug Rock-on-Roll 2”, and “The Stone Roses, the album that changed the world”.


「ハテナ・フランセ」 - ele-king

  ボンジュールみなさん。本日のお題はフランスのお家芸のひとつ、デモとストライキ。

 ある日、フランスの国営ラジオの中でも若者向けでイケてるとされるLe Mouv’を聞きながら、そういや今日DJがしゃべんないなあと思っていた矢先「ただいまストライキのため、皆様のお聞きの放送は通常の放送ではありません。ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください」と流れた。
 あ、そういやフランスはラジオもストライキするんだったと思い出し、そんな時はどうなるんだっけと興味本位でしばらく放送を聴き続けると、ホワイト・ストライプス「Seven Nation Army」やら、最近テレビでもかかりまくってるブランディ&モニカの「The Boy is Mine」の恐ろしくダッサいフランス語カヴァーから、フランスの新人ラッパー、ジョルジオの曲までまあ脈絡のない選曲。
 というかそれすらしてなくて、局のライブラリーをランダムに放送してるだけかと思える曲たちが、数時間も聞いていると一回りしてもう一回掛かったりする、というどう見てもひどいとしか言いようのない放送が流れていた。
 フランスの国営ラジオはニュース/文化中心、クラシック中心、ジャズ中心、若者向けなど7局もの放送局を抱えているのだが、全部の局がその調子じゃいまだにラジオが重要なカルチャー発信源の一つとなっているフランスではオーディエンスのフランストレーションは結構なはず。しかもその時点で調べるとストライキは25日に突入です! とのこと。
 え? こんな放送なき放送が1ヶ月近く垂れ流されてるなんて、いい加減オーディエンスは怒るでしょ、と思いきや、周りのフランス人は「いや、これは彼らの権利だからね」とちょっと自慢げ。あれ、そこお国自慢のポイントだったっけ? と思ってハタとフランス人の権利好きを思い出した。

2012年5月1日メイデイ。労働組合は共産系が多い。cgtは炭鉱や工場など肉体労働者のための労働組合。photos by Cédric Gaury

 フランス人の子供が3〜4歳くらいから兄弟喧嘩で頻繁に使うようになる言葉の一つに「T’as pas le droit!」、直訳すると「おまえにそんな権利はないぞ!」というのがあり、意味合いとしては「やめろやい!」ということなんだが、ちびっこが権利なんて言葉使うんだ!? と最初は違和感を感じたものである。かようにフランス人は自分の権利に敏感でそれを主張するのが好きであり、その発露の一つがデモであり、ストライキなんである。
 ここでデモとストライキの簡単な定義を。この二つが違うのはわかってるけど、時々混同しちゃって「一緒にしちゃダメ!」とフランス人にプンスカ怒られる。デモは、日本でも反原発デモなどでも知られる通り、ひとつの思想なりスローガンなりの元に人が集まりその主張を行う行為で、フランス人のデモは行進とだいたいワンセット。5月1日はフランスでもメーデーであり、毎年パリでも労働組合を中心として労働条件の改善を声高に唱える大規模なデモ行進(祭りと密かに私は思っているが)が行われる。そしてストライキは労働者が雇用者に労働条件の改善などを求めて労働を行わないで抗議すること。デモで主張してもダメな場合は実力行使、と。

 ちなみに皆さんはもうご存知かもしれないが&日本もだいたい同じかもしれないが、このストライキの構造だが、まずは社員11名以上の会社では労働組合を組織することが義務付けられているのだが、その労働組合員代表は社員の投票によって決まる。そして、その組合員はフランスで正式に認められている労働組合連合に所属していることが多い。会社との交渉が行われる際はそういった労働組合連合を使ったほうがノウハウもあったり、ビラのコピーとか決起集会用ののぼりを作ってくれたりして便利らしい。そして交渉が決裂するとストライキをすることになるのだが、参加する社員は有給を使うことになる。ストライキをするかしないかはもちろんそれぞれの自由。しない人はしない人で主張があって、彼らも議論に応戦する体制はいつどんな時もバッチリできている。その時のよくある理論が「組合は自分たちと会社とのパワーゲームに勝つことに気を取られて、社員の利益を真に追求していない」というもの。

 旅行者がよく遭遇するストライキ体験は、航空会社エール・フランスのストライキで飛行機が飛ばないとか、タクシーがストライキで空港をぐるっと取り囲みパリ市内まで物騒なメトロに乗ってくるしか方法が無くて大変な思いをしたとか。世界一の観光地にして花の都パリは、綺麗かもしれない(あ、清潔とは違いますよ)がトラップがそこらじゅうに仕掛けてある刺激的な街でもあるのだ。
 そしてフランスの国民が日常的に遭遇するストライキ体験がメトロのストライキである。パリのメトロは東京のそれに比べると時間も正確じゃないし、故障やらなんやらで遅れることもしばしばだが、ストライキに入るとそれに加えて普段のダイヤの1/3やら1/2やらになる。そうなるともう通勤通学網は大混乱。それでもパリは山手線内にはいってしまうくらい小さいので、市内なら時間は多少かかっても最悪歩いて目的地まで行き着けることもあるが、郊外に住んでいるとそうはいかず、仕方なく普段の何倍もの時間をかけて通勤通学する羽目になる。
 そうするとフランス人のお得意のアレが出る。口を尖らせて「プー」と大げさにため息を吐くアレである。肩をすくめたり、目をぐるっと回したりするのと並んでのザ・おフレンチなゼスチャーのひとつ。ストライキ中の郊外の駅では「プー」の大合唱なのだ。もちろん私もここぞとばかりに張り切ってやる。まあ、権利権利というからには「ストライキ時にはぜったい文句は言わない」と豪語するフランス人もいるにはいるが、心の中では彼らだって「プー」なはずである。
 でもそうやって文句が言えなくなるとフランス人は生きていないので、彼らは生活が便利になりすぎるのを恐れているのでは、というのが私の持論だ。生活が味気なくなっちゃう、と。私に言わせればフランスでの生活は味気があり過ぎですけどね。

 兎にも角にもフランス人にとってストライキとはジュテーム・モア・ノンプリュな愛憎半ばする国民的行事なのではないかと思う。

威力 - ele-king

a history

Kendrick Lamar - ele-king

 N.W.A.の出身地でもあり、米西海岸ギャングスタ・ラップのメッカとも言えるカリフォルニア州のコンプトンから、ギャングスタではないコンシャスな若いラッパー、ケンドリック・ラマーがメジャー・デビューして大きな話題となったのは2年ちょっと前。まずは引出しがたくさんあるめちゃくちゃうまいラップに釘付けになったが、ファンク、ソウル、ジャズ、そして現行のトレンド、それらすべての音楽への敬意が滲み出すトラック群の魅力にも徐々に気付き、これは名盤だと確信するに至った。

 で、本セカンド。ものすごく期待している自覚があったので、その反動でガッカリするかもと覚悟していたが、この今年28歳の若者は悠々とその上を行ってくれた。何人分もの声色、無尽蔵のフロウ、ロング・ブレス、高度なリズム感から生まれる独創的な符割りなど、持てる能力を存分に発揮して生々しい感情表現を実現するラップの力は圧倒的だ。プロデューサーの顔ぶれは前作からだいぶ変わったが各トラックも秀逸で、尋常ではない美意識が全編を貫いている。これはほとんどの曲にプロデューサーやミュージシャンとして参加したテレース・マーティンの貢献も大きいのではないかと思う。
 スライ&ザ・ファミリー・ストーンの“Everybody Is A Star”の歌詞内容を黒人に特化したようなボリス・ガーディナーの“Every Nigger Is A Star”のレコードが穏やかにかかる中、JBのお得意のフレーズ“Hit me!”で勇ましく切り込んで風景を一変させるのは、まさかのジョージ・クリントン。バーニー・ウォーレルが切り開いた多彩な音色を引き継ぐシンセ・サウンドを軸に、Pファンク的な女性コーラスにも彩られたトラックに乗せて、ケンドリック・ラマーはジャブ的にサラリと技ありのラップを乗せてくる。すると電話越しにドクター・ドレーも登場したりして、いきなりファンクの歴史をざっくり提示したような1曲目から全く気が抜けない。息つく暇もなくジャズのインプロヴィゼイションに乗せて、緩急自在で鬼気迫るポエトリー・リーディングをガツン! とカマされて、この高水準の曲がインタールードだなんて、もうこちとらどうしたらいいのか。フック効きまくりの3曲目“キング・クンタ”は、アレックス・ヘイリーの『ザ・ルーツ』の主人公でアフリカから奴隷としてつれて来られたクンタ・キンテと自分を重ね合わせた一貫してハードな調子のラップが心を離さないし、モウモウしながら後ろに引っ張る幻想的な4曲目は、ヴァース1と2でまるで別人のように声色とフロウを変えてくる上に、一連のギャングスタ・ラップでのコケインのようなスタンスでビラルが歌い、スヌープがふにゃらかなラップで参加、さらにはアフリカ・バンバータの“Planet Rock”の有名なフレーズ「ズンズンズン~」も飛び出し、何やらめくるめく世界に連れて行かれる。
 続くジャジーでスムースな5曲目は往年のATCQでのQティップを彷彿させるラップが繰り出され、といった具合で、もうキリがないのでこれくらいにしておくが、以下の曲も慟哭を意識したフロウ、ヨーデルの発声で通した曲、鼻歌、アフリカを思わせるリズム、ぴろりろシンセ、ピート・ロックのスクラッチ、ジャジーなスキャット、プリーチなみの迫力のリサイト等々、音楽も含めてアフリカン・アメリカンの歴史に思いが及ぶ要素を随所に挟みながら、高い力量を惜しみなく発揮して突きつけてくるラップは聴きどころの連続だ。さらには1曲の中でもガラリと展開することの多いトラックは、どこで次の曲になったのか見失うほど刺激的だし、バックに聴こえるサックスやギターの凛とした美しい演奏にもハッとするので集中力が切れる間がなく、聴き終わった後はぐったりするくらいだ。

 さて、本作を購入した当初から気になっていた奴隷船を連想させるカヴァー・アートだが、音を聴いてますますリリックが気になったので対訳を取り寄せてもらった。案の定、そこには太い幹が通っており、それは奴隷制時代からの延長線上にあるアフリカン・アメリカンの閉ざされた現状の中で、自分はあちこちに仕掛けられた罠にハマることなく成功を手にしたが、自分ひとりが抜け出しても所詮、世界は変わらない、という葛藤だと思われる。それを裏付けたのは、3曲目の最後の「お前は心に葛藤を抱え/自分の影響力の使い方を間違えていた」というリリックを、5、7、8、10曲目で引き継ぎながらストーリーを長くしていることだ。そしてそれは1曲目でジョージ・クリントンが語る「お前は本当に彼らが崇拝するような存在なのかね/お前は食い物にされる蝶なのだ」という言葉、そして16曲目に続くアウトロでの2パックとの架空の対話にも繋がるという、実に念の入った工夫も施されている。
 このように、本作はラップ、トラック、リリック、構成、すべてが練り上げられた傑作なので、是非、聴いて味わい尽くしてほしい。

文:河地依子

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 ケースを開けてCDを取ると蝶──蛾に見えるが蝶なのだ。蝶は生物学的には花の蜜を吸うけれど、資本主義的には金に吸い寄せられる。そして、身を守るために身のまわりのすべてを消費しようとする毛虫(caterpillar)の音楽。ホワイトハウスをバックに、ドル札を見せびらかすブラック・ピープル──。ホワイトハウスをチョコレート色に染めたパーラメントの『チョコレート・シティ』、ドル札が子供たちを食べるファンカデリックの『アメリカ・イーツ・イット・ヤング』の影がちらつくかもしれない。その直観はおおよそ正しい。が、オバマへの皮肉もこもったこのアルバムは、それだけではない。

 トゥ・ピンプ・ア・バタフライ(To Pimp a Butterfly)──日本語に訳しづらいタイトルがこのブラック・ミュージックの一大絵巻、ブラック・パワーの一大叙情詩に冠せられている。話はそう単純ではないのだ。冒頭にあるボリス・ガーディナーの1973年の有名曲“Every Nigger Is a Star(すべてのニガーはスター)”のカットアップはある意味逆説であり、あるいは両義的に聴こえる。とくに2回目以降では。
 続いてジョージ・クリントンのお出ましとくる。御大のあの声が、言う。「お前は本当に彼ら(音楽産業/アメリカ社会/資本主義)が崇拝するような存在なのかね」──クリトンの警句が、内面の激しい葛藤が展開されるこのアルバムのはじまりだ。16曲後のその結末(アウトロ)には、ラマーによる2PAC(1996年に殺されたギャングスタ・ラップ黄金時代のスター)への合成インタヴューが待っている。
 その合成された対話において、ラマーは、2パックが気に入ってくれると思って『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』というタイトルにしたことを打ち明ける。そして、「groundってどういう意味なんだい」と唐突に訊く。2パックは答える。「(groundとは)貧乏人の象徴であり、貧乏人は全世界を切り開いて、富める者たちを飲み込んでいく」
 それからラマーは友人が書いた詩を朗読する。蝶とその幼虫である毛虫(caterpillar)に関する詩だ。この世界はその幼虫を避けているというのに、しかし蝶なら歓迎する。で、パック、あんたならこの話をどう思うんだい? その問いかけがアウトロの終わりだ。

 我々は、ブラック・ミュージックというタフな音楽から見える真実に、ときとして強烈に惹きつけられる。僕は、『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』を最初に聴きたとき、昨年のムーディーマンのアルバムと似ていると思った。それをよりダイナミックに展開した作品と言うか……およそ1か月ほど前は、ハウス好きの友人たちにはそう説明していた。家に帰って、1997年のムーディーマンのEP「アメリカ(Amerika )」に記された“another nigga”に関する文言を参照して欲しいと。
 しかしラマーは、さらにリスキーな挑戦をしている。
 『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』は、まず音楽作品として圧倒的だ。LAのコンプトン出身のたたき上げのラッパーが、同じくLAの、先鋭的シーンを代表するジャズ家系のサンダーキャットやフライング・ロータスを招き入れていることは、このアルバムの大きな魅力のひとつにもなっている。そのふたりがいるわけではないけれど、フリー・ジャズに乗せて俺のチンポはただじゃねぇと繰り返す2曲目の“For Free? ”などは、赤塚不二夫と山下洋輔トリオの共作を思い出さずにいられない。実験的であり、けっこう笑える。なんにせよ『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』はコンシャスなアプローチとシカゴのゲットー・ハウス/ギャングスタ・ラップ的なダーティーさにモダンな音響を混ぜながら、そう簡単に回収(Institutionalized)されないものとしてファンキーに突っ走る。ラマー言うところのアメリカの文化的アパルトヘイトを解放するかのように。

自分の身体でさえ自分自身にものではないために、(ロバート・)ジョンスンは自分の女を満足させることができない。彼の人生においてはそれが何よりも重要であるために、その事実がひとつの象徴として拡大し、さらに多くの事実を、さらに多くの象徴を生み出す。
グリール・マーカス             
『ミステリー・トレイン』三井徹訳

歴史学者のロビン・DG・クリーは言う。つまり、黒人の若者にとって、資本主義は最高の味方であると同時に、最大の敵でもあるということだ。
                 S・クレイグ・ワトキンス
『ヒップホップはアメリカを変えたか?』菊池淳子

 このアルバムはアメリカの歴史の荒れ狂う期間に対する黒人音楽家の苦しみのリアクションであり、カーティス・メイフィールドやマーヴィン・ゲイの優しい(穏やかな)公平性と違ってとにかく怒っている作品だ──というようなことをガーディアンは書いているけれど、ただ怒っているだけではない。『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』には、「大統領を殴ったる」「お前(アメリカ)が俺を殺人者に仕立てたんだろ」「オバマが『調子はどうだ?』ってよ」……などとアメリカへ憤りや不満をぶちまけるそのいっぽうで、自分が憎悪するその国で成功していることへの自己嫌悪、自己憐憫を隠さない。ネルソン・マンデラに思いを馳せながらも、社会と同時に彼の内面が発露される。そう、ファンキーだが内面的なのだ。オバマ以降の格差社会における社会的正義を訴えつつ、二重三重に抑圧された感情というよりも、それを克服してもなおもぬぐい去れない空しさと、なんとか克服しようとする思いとの、晒されることを恐れない葛藤がある。そして、それを突破する意味においてのファンク、あるいはジャズ、あるいはソウル、ゴスペル、ブルース。

 16曲目のアルバム中もっとも美しい曲、穏やかさと激しさの両方を併せ持つ“Mortal Man”が終わり、そして、アウトロにおける2パックの予言めいた言葉。「貧乏人は全世界を切り開いて、富める者たちを飲み込んでいく」──この作品において“希望”ないしは“オプティミズム”を探すとすれば、ひとつはそこだ。
 そして、ジョージ・クリトンの言葉ではじまったこの毛虫と蝶の物語は、先述したように、もうひとつの象徴的なものとして、夭折したギャングスタ・ラッパーの言葉で締められる。ブラック・ミュージックの偉大なる作品群と比肩しうる金字塔だと思うし、とにかく音を聴いているだけでもパワフルだが、だからこそ、歌詞対訳のついた日本盤をお勧めしたい。感情ばかりではない。スライ&ファミリー・ストーンの『暴動』のように、ケンドリック・ラマーはリスナーの頭をも使わせる。『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』は疑問符で終わっているのだ。

文:野田 努

Mark Fell / NHK yx Koyxen - Potato tour 2015 - ele-king

 ナイン・インチ・ネイルズからトム・ヨークまでもが「ファン」を表明、先日はパウウェルのレーベル〈Diagonal〉からの新作リリースと、国際舞台での人気もますます上昇、みんな大好きNHK yx コーヘイが凱旋公演!
 今回はいつものパートナー、マーク・フェル(snd)も同行するのだが、もうひとり、な、なんとラッセル・ハズウェル──〈Mego〉系のアーティストで、メルツバウとの共作をワープから出したり、最近はパウウェルのレーベルからもアルバムやら12インチを出しているIDM界の裏巨匠的な変人──も来日する。
 これは、そうとうラジカルな電子音楽の一夜になるだろう。
 この興味深いラインアップに、DJではNOBUが加わる。
 東京公演は、5月22日の代官山ユニット。



(ちなみに、この日からおよそ3週後の6月13日には、NHK作品のリリース元である〈PAN〉のショーケースもあるんだよな。こっちはこっちで、すごいメンツです。テクノ・ファンは、両方行くしかないか)

■NHKコーヘイ・ツアー・スケジュール

5月 . MAY
20日 NHK Special,9 at DOMMUNE
22日 東京 . Tokyo at UNIT
Phantasmagoria - tba
23日 岐阜 . Gifu at EMERALDA
Taxis - with Dj Conqus, Miyata
24日 大阪 . Osaka at NEW OSAKA HOTEL
-:Consep:- - with Microdiet, Metome, Yaporigami, Yuki Aoe, DJ Mayumi☆Killer

30日 大分 . Hita at CMVC
with Microdiet
31日 香川 . Takamatsu at RIZIN

with SIX (Dj Zen x vj ツジタナオト), Dj Takimoto Hideaki, REM PLANET
6月 . JUNE
6日 台北 . Taipei at Korner
7日 香港 . Hong Kong at The Empty Gallery
with Lee Gamble

https://nhkweb.info/potato_tour.htm


HATTORI (Black Cream / Pigeon Records) - ele-king

Prurient - ele-king

 ドミニク・フェルノウ(Dominic Fernow)がやり過ぎなのは誰の目にも明らかだ。レインフォレスト・スピリチュアル・エンスレイヴメント(Rainforest Spritual Enslavement)やヴァチカン・シャドウ(Vatican Shadow)としてあいも変わらず怒濤のリリースを続けるなか、プリュリエント(Prurient)とエクスプローリング・イザベル(Exploring Jezebel)の新作も発表。一体どうやって〈ホスピタル・プロダクション(Hospital Production)〉代表を務めながらこれだけの制作をこなすことができるのか、完全に理解を超えているとしか言いようがない。

いまでこそUSインディの先端を担う〈ホスピタル・プロダクション〉も元をたどればドミニクが若干16歳でスタートさせたDIYノイズ・レーベルであったわけで、ドミニク自身から止めどなく溢れんばかりに湧出する、かたちを成さない感情であるノイズをひたすらにアーカイヴ化することでその複雑な自身の表出にコンセプトを見出し、ラベリングすることが当初の目的であったと言える。

ノン及びボイドライスやデス・イン・ジューン、カレント93やコイルにSPK、ナース・ウィズ・ウォンド等のニューウェーヴ/インダストリアルからの多大な影響とブラック・メタルへの偏執的な傾倒をノイズ/エクスペリメンタルといった実験的な手法で自身の表現を模索してきたドミニクにとってプリュリエントはつねに彼の主たるプロジェクトであった。

シンセ・ダークウェーヴとパワー・エレクトロニクスの融合を試みてきたプリュリエントが、ドミニクのコールド・ケイヴへの参加を機に劇的な変化を迎えたのが2011年に発表されたバミューダ・ドレイン(Bermuda Drain)である。それまでになくメタル、もといロック的な起承転結が明快なダイナミズムとシーケンス/ビートにプリュリエントの手法を落とし込んだ意欲作であった。BEBからの前作、スルー・ザ・ウィンドウ(Through The Window)で90年代ハード・テクノを骨抜きにしたような作風を披露し、ヴァチカン・シャドウのサウンドと重複したことを危惧したのか、本作フローズン・ナイアガラ・フォールズ(Frozen Niagara Falls)ではドラマティックな展開を強調して再びプリュリエントの明確な差別化を意識したように聴こえる。ツインピークス風の不穏かつ幽玄なダークウェーヴからアコースティック・サウンドを基調とした激情、お馴染みの激昂とパワエレは以前より洗練された形でヴァリエーション豊かなトラックと共存している。活動歴約20年に及ぶ彼のプリュリエントな(卑猥な)試みの集大成として放つロック・アルバムだ。USインダストリアルの今後を占う90分近い圧倒的ヴォリュームの意欲作。


 今週末、ファッション・ブランドC.Eとレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉共同の主催のイベントで来日する、ウィル・バンクヘッドとピーター・オグレディことジョイ・オービソン。当日を待ちわびている皆さんのために、なんと今回が初来日のジョイ・オービソンがインタヴューに答えてくれました。
 ここで簡単に彼の経歴の説明を。音楽のバックグラウンドはジャングルのミックス・テープにあるというロンドン在住のジョイ・オービソンのデビューは2009年。そのトラック“Hyph Mngo”はいわゆるダブステップが「ポスト」へ移行した時代の象徴的な曲として記憶されており、ジャンルを越え本当に多くのDJたちがプレイしました。
 ですがその後ドラムンベースの鬼才ユニット、インストラメンタル(Instra:mental)の元メンバーであるボディカ(Boddika)とレーベル〈サンクロ(SunkLo)〉の立ち上げなどを経て、深淵なハウスやテクノの方面に舵を取りました。ツアーでヨーロッパを回るようになった彼は、デザイナーとしてのキャリアやレーベル〈ザ・トリロジー・テープス〉で知られるウィル・バンクヘッドとベルリンで出会い、よりロウなトーンを突き詰めたレーベル〈ヒンジ・フィンガー〉をふたりで始動させ現在にいたります。
 インタヴューには普段はあまり応じていないという彼ですが、最近買ったベスト・レコードから、一緒に来日するウィル・バンクヘッドについてまで、激多忙なスケジュールのなかシンプルにそして丁寧に答えてくれました。

いまどちらにいらっしゃいますか? ロンドンの自宅でしょうか?

ジョイ・オービソン(Joy Orbison、以下JO):うん。ロンドンのエレファント・アンド・キャッスルにある家の予備部屋兼スタジオの椅子に座っているよ。

あなたの来日が決定して、多くのファンが喜んでいます。が、ここにひとつ問題があります。ロンドンと東京って結構遠くて、片道10時間くらいかかるんですよね。どうやって時間を潰す予定ですか? やっぱり本を読んだり映画を見るんでしょうか? それともひょっとして機材を持ち込んで作曲ですか?

JO :ウィル・バンクヘッドと僕の彼女の間に座ることになったから、めちゃくちゃお酒を飲むことになりそうだ。少しは眠れるといいなぁ。いつもは飛行機のエンタメ・サービスを使ってチェスをするんだ。小さな子供に連敗しないように練習しないといけないからね(笑)。

今回はしかも初来日です。DJノブといった日本のDJたちもこの日は出演しますが、日本の音楽シーンや文化に関心はありますか?

JO :日本のシーンは全然知らないんだけど、いつも耳にする音楽と日本文化の関係性にはわくわくするよ。C.Eの素晴らしいスタッフたちの協力のおかげでDJノブと同じイベントへの出演が決まったことが単純に嬉しい。最高の初来日になるといいね!

最近買ったベストのレコードは何ですか?

JO :Automat & Max Loderbauerの“Verstärker”だね。

それでは最近注目しているプロデューサーは?

JO :Herronかな。

さて、あなたのキャリアを少々振り返ってみようと思います。2009年にあなたはスキューバの〈ホット・フラッシュ・レコーデイングス〉からのシングル “Hyph Mngo”でデビューを飾り、この曲はいわゆるポスト・ダブステップのアイコンのひとつとしてみなされています。ですが、あなたは〈ドルドラム〉から “BB / Ladywell”のリリース以降、テクノやハウスの方面へシフトし現在に至っています。この転機のきっかけとはなんだったのでしょうか?

JO :個人的にはその流れを変化だとは思っていなかったんだよ。でも当時の自分が周りからどうやって見られていたのかは理解できる。 “Hyph Mngo”はそれまでの僕の曲のなかでDJやオーディエンスに一番サポートされたものだったけど、同時に僕はたくさんの曲を作っていた。当時作った曲を見てみても、ハウスやテクノっぽいものもあれば、ドラムンベースみたいなものもある。そういう曲は世間が僕に抱いていたイメージとはかけ離れているだろうね。そんな感じでこれからも縛られないスタイルで曲を作っていこうと思うんだけど、その課程でシーンや時代性の呼吸が合っていたら最高だよ。

Joy Orbison – Hyph Mngo

あなたはボディカとの共作でも知られていますが、彼とのレーベル〈サンクロ〉からの最新リリースは2014年の2月にリリースされた“モア・メイム / イン・ヒア”なので、それから1年以上が経っています。最近はボディカと曲を作っていますか? 〈サンクロ〉は日本でもすぐにソールド・アウトになってしまうので、ファンは新作を期待していますよ。

JO :ボディカとは少なくとも週に2、3日はスタジオに入るように心がけていて、しばらくの間この作業を継続していたよ。おかげで本当にたくさんの曲が完成したね。実はもうすぐ新曲がリリースされるんだ……!

ウィル・バンクヘッドは何度かDJとして来日しており、去年もアンソニー・ネイプルズやレゼットと東京でプレイしました。彼は才能溢れるデザイナーであると同時に、違ったジャンルで活動するプロデューサーをつなぎ合わせる重要な役割も果たしていると思います。そして現在、あなたはバンクヘッドとともに〈ヒンジ・フィンガー〉を運営しているわけですが、アートワークやDJスタイルを含めて彼の「作品」をどのように評価しますか?

JO :彼の作品の大ファンだよ。ユニークなものの見方をしているから、いつも僕は驚きっぱなしさ。僕の音楽やレーベルのコンセプトを可視化してくれるひとは彼くらしかいないから、出会えてすごくラッキーだ。
 それに彼のDJも本当にヤバいんだよね。たぶん僕がいままでで出会ったなかで、飛び抜けて強烈なレコード・コレクションを彼は持っているんじゃないかな。あのレコードの壁を探索するのにかなりの時間を使ったよ。あそこでは必ず特別な曲が見つかるんだ(いまそのレコードは地下室にしまってあるんだけどね)。自分自身の知識をワクワクさせるような何かに変換させることに関して、彼の右に出る者はいないと思う。なんせブジュ・バントンからフランソワ・ベイルに繋いだりするんだからね!

ウィル・バンクヘッドの作品でお気に入りを挙げるとしたら何でしょうか?

JO : うーん、難しいね……。T++の「ワイアレス」かブラワンの「ヒズ・ヒー・シー&シー」ってことにしとこうかな。

様々なスタイルを経てあなたは現在に至るわけですが、2015年に私たちはどんなことを期待できるでしょうか?

JO :目標はたくさんリリースをすることだね。とにかく目の前のことに集中しなくちゃいけないな。

それでは最後に日本のオーディエンスにメッセージを!

JO :(日本語で)「トリッキーは、お茶を作ります」

 最後のひと言がどういう意味なのか質問してみたところ、英語では“Tricky, you make the tea”と打ったようです。 “Tricky’s Team”という似た名前のタイトルの曲をボディカとリリースしていますが、それから察するにインタヴューで触れている次なる新曲の名前なのでしょうか!? 週末に期待!

Joy Orbison & Boddika – Tricky’s Team


The Trilogy Tapes, Hinge Finger & C.E presents
Joy Orbison & Will Bankhead

2015/04/24(Fri)
@ Daikanyama UNIT & SALOON

[UNIT]
Joy Orbison(Hinge Finger)
Will Bankhead(The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
DJ Nobu(Future Terror / Bitta)
[SALOON]
Edward Occulus
Toby Feltwell (C.E)
1-Drink
Koko Miyagi
Bacon
Open/Start 23:30
Early bird 2,000yen(Resident Advisor only) / Adv. 3,000yen / Door 3,500yen
Ticket Outlets: LAWSON / diskunion 渋谷 Club Music Shop / diskunion 新宿 Club Music Shop / diskunion 下北沢 Club Music Shop / diskunion 吉祥寺 / JET SET TOKYO / TECHNIQUE / DISC SHOP ZERO / Clubberia / Resident Advisor / UNIT / min-nano / have a good time
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : Daikanyama UNIT
03-5459-8630 www.unit-tokyo.com https://goo.gl/maps/0eMrY

2015/04/28(Tue)
@CLUB CIRCUS

Joy Orbison (Hinge Finger)
Will Bankhead (The Trilogy Tapes / Hinge Finger)
AIDA
Matsuo Akihide
qands
Open/Start 22:00
Door 2,500yen
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)
More Information : CLUB CIRCUS
06-6241-3822 https://circus-osaka.com

当日は東京と大阪の両会場にてイベントの開催を記念したC.EのTシャツの販売が決定!
CETTT T #2 (イベントTシャツ)
Price: 4,000yen (Tax incl.)
問い合わせ先: Potlatch Limited www.cavempt.com

Joy Orbison
2009年にHot Flush から〈Hyph Mngo〉をリリースしデビューを飾ったのち、〈The Shrew Would Have Cushioned The Blow(Aus Music)〉や〈Ellipsis(Hinge Finger)〉、Boddikaとの共作による〈Swims(Swamp81)〉など精巧かつ念密に構築された楽曲を次々とリリースし続ける傍ら、Lana Del ReyやFour Tet、José Jamesといったアーティストのリミックスを手がけている。ハウスや2ステップ、ジャングル、テクノ、ダブステップ、これらの要素が融合し生まれた〈ガラージハウス〉とはJoy Orbisonの作り出した“音”だと言っても過言ではないだろう。レーベル〈Hinge Finger〉 をThe Trilogy TapesのWill Bankheadと共に立ち上げるなど異質かつ独自な動きを行う中、最近ではBBC RADIO 1の人気プログラムである〈Essential Mix〉に登場するなど、トラックメーカー/プロデューサーとしてはもちろんDJとしても高い人気を誇っている。
https://soundcloud.com/joy-orbison
https://www.residentadvisor.net/dj/joyorbison

■Will Bankhead
メイン・ヴィジュアル・ディレクターを〈Mo’Wax〉で務めたのち、〈PARK WALK〉や〈ANSWER〉といったアパレル・レーベルを経て、〈The Trilogy Tapes(TTT)〉を立ち上げた。現在、前述したTTTやJoy Orbisonとのレーベル〈Hinge Finger〉の運営に加え、〈Honest Jon's Records〉や〈Palace Skateboards〉などのデザインを手がけている。2014年10月には、渋谷ヒカリエで行われた〈C.E〉のプレゼンテーションのアフターパーティでDJを行うため、Anthony NaplesとRezzettと共に来日した。
https://www.thetrilogytapes.com

■DJ NOBU(FUTURE TERROR / Bitta)
FUTURE TERROR、Bitta主宰/DJ。NOBUの活動のスタンスをひとことで示すなら、"アンダーグラウンド"――その一貫性は今や誰もが認めるところである。とはいえそれは決して1つのDJスタイルへの固執を意味しない。非凡にして千変万化、ブッキングされるギグのカラーやコンセプトによって自在にアプローチを変え、 自身のアンダーグラウンドなリアリティをキープしつつも常に変化を続けるのがNOBUのDJの特長であり、その片鱗は、 [Dream Into Dream]〈tearbridge〉, [ON]〈Musicmine〉, [No Way Back] 〈Lastrum〉, [Creep Into The Shadows]〈Underground Gallery〉など、過去リリースしたミックス CDからもうかがい知る事が出来る。近年は抽象性の高いテクノ系の楽曲を中心に、オーセンティックなフロアー・トラック、複雑なテクスチャーを持つ最新アヴァ ン・エレクトロニック・ミュージック、はたまた年代不詳のテクノ/ハウス・トラックからオブスキュアな近代電子音楽など、さまざまな特性を持つクセの強い楽曲群を垣根無くプレイ。それらを、抜群の構成力で同一線上に結びつける。そのDJプレイによってフロアに投影される世界観は、これまで競演してきた海外アーティストも含め様々なDJやアーティストらから数多くの称賛や共感の意を寄せられている。最近ではテクノの聖地〈Berghain〉を中心に定期的にヨーロッパ・ツアーを行っているほか、台湾のクルーSMOKE MACHINEとも連携・共振し、そのネットワークをアジアにまで拡げ、シーンのネクストを模索し続けている。
https://futureterror.net
https://www.residentadvisor.net/dj/djnobu

■Edward Occulus
イラストレーター・グラフィックデザイナー。2011年にToby Feltwell、Yutaka.Hとストリートウエアブランド〈C.E〉を立ち上げた。www.cavempt.com

■Toby Feltwell
英国生まれ。96年よりMo'Wax RecordsにてA&Rを担当。
その後XL Recordingsでレーベル を立ち上げ、Dizzee Rascalをサイン。
03年よりNIGO®の相談役としてA Bathing Ape®やBillionaire Boys Club/Ice Creamなどに携わる。
05年には英国事務弁護士の資格を取得後、東京へ移住。
11年、Sk8ightTing、Yutaka.Hと共にストリートウエアブランドC.Eを立ち上げる。
https://www.cavempt.com/

■1-Drink
TECHNO、HOUSE、BASS、DISCOの境界を彷徨いながら現在にいたる。 DJユニット"JAYPEG"を経て現在は個人活動中。 ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink


interview with trickfinger (John Frusciante) - ele-king


Trickfinger
Trickfinger

Acid Test / Pヴァイン

ElectronicRockHouse

Tower HMV Amazon iTunes

 ジョン・フルシアンテを知らずにこのインタヴューを読む方はおられるだろうか。90年代から2000年代の音楽シーンをいわゆるミクスチャー・スタイルと強烈なファンク・ロックによって風靡し、いまなおその支持の揺らぐことのないモンスター・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ。同バンドのギタリストとして活躍したジョン・フルシアンテは、RHCPには欠員を埋める形で中途加入し、彼らの音に叙情的でエモーショナルな「歌」の力を呼び込んだ──名ギタリストであるとともに名ソングライターとしての力量をも遺憾なく発揮してみせた。一時の脱退から復帰したタイミングで制作された中期の名盤『カリフォルニケイション』におけるフルシアンテの功績は広く評価されるところである。そして2度めの脱退後の彼は、その才と持ち前の求道的な音楽探求と鍛錬の姿勢をよりストイックに追求し、さまざまなアーティストたちに学びながらともにアルバム制作を行っていった。そのなかで近年顕著だったのが、エレクトロニックな表現とダンス・ミュージックへの接近、またはヒップホップとの邂逅だと言えるだろう。今回のインタヴューでは、驚くべきことにそうした音楽性の萌芽と発露がすでにRHCP時代から見られ、かつ、本作が脱退直後につくられていた作品だったということが明らかになっている。新機軸かと思いきやソロ以降のディスコグラフィを倒立させなければならなくなるようなアルバムなのだ。そうしたことに思いをいたしながら耳をかたむけると、きっと新たな驚きと愛着が生まれてくることだろう。
 しかしそれにしても、ジョン・フルシアンテという人は、音楽に対してはいつになっても変わらず生真面目で、迂遠にも思われる努力と勤勉さをもって向かい合うアーティストである。あれだけのリリカルなセンスを持ちながら、まるで頑迷ともいえる彼の信念と音楽哲学──ひいては人間観──はしかし、これまでもずっとリスナーと彼の間の信頼関係を結ぶ強い紐帯でありつづけてきた。そのあたりのゆがみなさはなかば狂気的にすらみえ、また彼の楽聖的な相貌を深めてもいる。
それではどうぞ、日本国内では弊誌一誌、独占インタヴューをお届けしよう。


■trickfinger / トリックフィンガー
レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストとして知られるジョン・フルシアンテによるソロ・プロジェクト。ソロでキャリアを突き詰めたいとして2009年に同バンドを脱退し、ジョシュ・クリングホッファーやマーズ・ヴォルタのオマー・ロドリゲス・ロペス、フガジのイアン・マッケイ、RZAなどさまざまなアーティストとともにいくつかの名義で精力的にアルバムをリリース。2015年4月、本名義では初となる同名アルバム『トリックフィンガー』を発表した。

シーケンサー、コンピュータのようなエレクトロニクスの楽器の場合、限界となるのは自分のマインドだけ。だから、エレクトロニクスを扱うことで、自分の思考プロセスも早くなったんだ。

トリックフィンガー(trickfinger)というプロジェクト名にはどのような意味や意図が込められているのでしょう?

ジョン・フルシアンテ(以下、J):俺の奥さんがつけた名前なんだ。俺があるとき、トリッキーなギター・フレーズを演奏しているのを見て、「あなたはトリックフィンガーね」って(笑)。トリックフィンガーっていう名前の響きがおもしろいと思ったから、使うことにしたんだ。

あなたは近年のソロ作品について語るインタヴューのなかで、繰り返し「人間の知能と機械の知能の競合」というアイディアを語っておられますね。AIが人を超える音楽をつくり得ることがあると考えますか? また、そのときその音楽はどのようなかたちにおいて人の音楽に秀でるのでしょう?

J: そうだね。人間の思考には限界があるんだ。ギター、ベース、キーボードのような楽器を演奏するときは、もちろん思考の訓練にはなるけど、指の限界、それから人間にはふたつの手しかないという限界もある。だからそれぞれの楽器のフィルターを通して音楽に取り組むことになるし、自分の肉体の限界というフィルターも出てくる。それに対して、シーケンサー、コンピュータのようなエレクトロニクスの楽器の場合、限界となるのは自分のマインドだけ。コンピュータは人間よりも素早く計算ができるし、人間より正確だし、人間が通常の楽器を演奏するよりも、コンピュータのほうが正確に指示の通りに動く。だから、エレクトロニクスを扱うことで、自分の思考プロセスも早くなったんだ。
 アシッド・ハウスを作りはじめたときは、180BPMから190BPMの曲を作りたかった。ジャングルも作りたくて。でも俺の思考プロセスがそこまで追いついてなかった。ブレイクビーツで曲を作りはじめる前に、まずステップ・プログラミングをマスターしたかったんだ。それでステップ・プログラミングを学んで2年くらいすると、160PMから190BPMの曲を作れるようになってたんだ。いままで作った曲の中でいちばん早かったのは、250BPMだったよ。それ以上になってくると、ナンセンスになっちゃうよね(笑)。260BPMになってくると、ビートの違いがわからなくなるんだ。早すぎて、四分音符の意味がなくなっちゃう。3、4年のうちに、俺の思考プロセスが、人間の可聴範囲内での速い曲に追いつくようになったんだ。ギターで考えるよりも、脳の回転を早くさせたいと思っていたけど、それが実現した。
 俺はティーンエイジャーの頃は、エディ・ヴァン・ヘイレン、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイのような速弾きのギター・プレイヤーに憧れてたんだ。当時は速弾きができるようになったことが大事だったんだ。ヴェネチアン・スネアズとかスクエアプッシャーを知るようになって、彼らの音楽ではドラムのプログラミングが人間のドラマーが叩けるスピードよりも遥かに速いんだ。それに、人間の速弾きよりもぜんぜんカッコイイ。ヴェネチアン・スネアズとかスクエアプッシャーのドラム・ビートは、人間のドラマーのビートよりもカッコイイんじゃないかな? そして、ミュージシャンなら、自分ができないことに挑戦することが大事なんだよ。俺がドラマーだったら、ヴェネチアン・スネアズとかスクエアプッシャーみたいなビートを叩けるように練習してるよ(笑)。いまの俺は、自分の肉体よりも、脳を使って音楽を作ってるんだ。

3、4年のうちに、俺の思考プロセスが、人間の可聴範囲内での速い曲に追いつくようになったんだ。ギターで考えるよりも、脳の回転を早くさせたいと思っていたけど、それが実現した。

数年来、あなたはコンピュータのプログラミングによって理論的に音を組み上げる実験や研究をつづけてこられたわけですが、そこでとくに(アシッド・)ハウスにフォーカスするのはなぜなのでしょう?

J: ひとつクリアにしたいんだけど、もしかしてこのアルバムは、最近作ったアルバムだと思ってる?

そうですね。

J: このアルバムは8年前に作ったんだ。

すごいですね。知らなかったです。

J:だから最初の質問で、徐々に速いビートを作れるように段階を踏んだ話を説明したんだ。このアルバムの曲は、俺がエレクトロニック・ミュージックを作りはじめたときにできたものだよ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)のツアーが終わって、バンド活動をやめて、自宅のリビング・ルームに機材をセッティングしてひたすら実験してたんだ。エレクトロニック・ミュージックを作りたかったんだけど、まずはアシッド・ハウスからはじめようと思った。アシッド・ハウスから出発して、エイフェックス・ツイン、ルーク・ヴァイバート、ヴェネチアン・スネアズのようなアーティストの流れが誕生したからなんだ。だから、その原点に戻りたかったんだ。ブルースのギタリストになりたかったら、まずはロバート・ジョンソンやアルバート・キングの音楽を勉強するだろ? ルーツをまず勉強しないといけないんだ。アシッド・ハウスから、UKアシッドとかIDMが派生したんだよ。

 エレクトロニック・ミュージックを作りはじめたときは、とてもエキサイティングだった。それまでは、ひとりで音楽を作るというのは、オーヴァーダビングでやるものだと思ってた。ギターをレコーディングしてから、キーボード、ヴォーカル、リード・ギターなどを一つ一つ重ねていくものだと思ってたんだよ。それまでは、そういう方法でホーム・レコーディングをしていた。RHCPをやめる1年前から、エレクトロニクスの機材のマニュアルを読んだり、使い方を習いはじめてね。ホテルとか飛行機の中で、そういう機材を使って練習してたよ。いろいろなアーティストのことについて読んだり、ネットで調べていくうちに、ほとんどのアシッド・ハウスのアーティストは、808を1台と、303を1台と、101を1台繋げて、同期させて音楽を作ってることを知ったんだ。一人のアーティストが機材を操作して演奏してたんだ。当時のアーティストはそれをダイレクトにカセットにレコーディングして、次の日のクラブ・イヴェントでプレイしたわけだ。最初の頃は、そうやって一人の人が音楽を作れることを知らなかったんだ。一人のプロデューサーが、機材をプログラミングして、ツマミをいじったり、パターンをその場で変えて、それをそのままライヴ録音をしてたってことをね。

このアルバムの曲は、俺がエレクトロニック・ミュージックを作りはじめたときにできたものだよ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)のツアーが終わって、バンド活動をやめて──。

俺のアシッド・ハウス・アルバムの楽曲はすべて、CDバーナーにダイレクトにレコーディングしたんだ。それぞれの楽曲では、俺が5台から15台の機材を同期させて演奏してるんだ。それをMackieのミキサーでミックスしながら、CDバーナーにレコーディングしてるわけだよ。だから、オーヴァーダビングはまったくしてないんだ。このアルバムは、RHCPを脱退してから、4ヶ月以内に作ったものなんだ。じつは、『ジ・エンピリアン(The Empyrean)』も同時進行で制作していたんだけど、どっちかというと、アシッド・ハウスのトラックを作ることのほうを優先してたんだ。『ジ・エンピリアン』の制作は、2、3週間の間に1日くらいの作業。それ以外は毎日アシッド・ハウスを作っていた。そして『ジ・エンピリアン』はリリースする意図で制作を進めてたけど、アシッド・ハウスのトラックは、リリースする予定はまったくなかったんだ。それでも、あのときはアシッド・ハウスを作ることがプライオリティだったんだよ。それに、学ぶことが多かったから、作ることがすごく楽しかったんだ。オーヴァーダビングで曲作りをするんじゃなくて、いくつかの機材をプログラミングして、一人でジャム演奏をしているような感覚だったから、エキサイティングだった。他のミュージシャンと演奏するときと同じように興奮したけど、誰も自分の演奏を邪魔する人がいないんだ。他のメンバーと口論になることもないし、説明する必要もないし、指示する必要もないし、指示されることもないんだ。エレクトロニクスで曲を作る場合は、前もってアイデアがなくても曲を作ることができるんだよ。過去に4トラックでレコーディングしたことはあったけど、アシッド・ハウスのトラックを作ったときは、初めて自分でエンジニアリングをしたんだ。オーヴァーダビングをするのではなく、同時にすべての音を一人でレコーディングすることも初めてだった。

『ジ・エンピリアン』と同時期にアシッド・ハウスを作っていたというのは驚きです。

J: 2007年9月にRHCPのツアーが終わった頃には、半分くらい完成してたんだ。そのあとの4ヶ月間は、ほとんどアシッド・ハウスのトラック作りに集中してた。『ジ・エンピリアン』は、2、3週おきに1日くらいしか作業してなかった。いつか完成することはわかっていたけど、べつにどうでもよかったんだ。

俺はトラックにギターを入れるようになったんだけど、オリヴァーはそういうトラックは選ばなかった。

なぜ何枚もソロ・アルバムをリリースしたあとのこのタイミングで、そのアシッド・ハウスのトラック集をリリースしたいと思ったのでしょう?

J: いや、トリックフィンガーのトラック集をリリースするのは、俺のアイデアじゃなかったんだ。じつはリリースされなかったアシッド・ハウスのトラックがまだたくさんあるんだけど、たまたまレーベルを運営してる人が選ばなかっただけなんだよ。アシッド・ハウスのトラックを作った1年後に、友達のアーロン・ファンク(ヴェネチアン・スネアズ)がマスタリングしてくれたんだ。アルバムには8、9曲収録されてるけど、じつは22曲くらい作ったんだ。それをCDに焼いて、20人くらいの友だちにクリスマス・プレゼントとして配ったんだ。あげた人たちはみんな友だちだから、それをネットに上げたりはしない。それで、友だちのマーシーが、アシッド・ハウス・レーベルを運営してるオリヴァーに聴かせたんだ。そしたらオリヴァーがリリースすることに興味をもった。マーシーが、彼のレーベルのレコードを何枚か聴かせてくれて、俺はそれをかっこいいと思った。だから、オリヴァーにOKを出して、彼がどの曲をリリースするかを選んだんだ。俺が焼いたCDには、8、9ヶ月分の曲が入ってたんだけど、たまたまオリヴァーは最初の4ヶ月以内に作った曲だけを選んだんだ。途中から、俺はトラックにギターを入れるようになったんだけど、オリヴァーはそういうトラックは選ばなかった。この作品をリリースするつもりはもともと俺にはなかったから、リリースのアイデアも俺が思いついたわけじゃない。どちらかというと、リリースしないつもりでトラックを作ってたんだけどね。だいぶ前のことだし、俺の歴史の一部だから、みんなに聴かせられるのはうれしいことだけど。

この時期のトラックの後に、あなたのソロ作品でのエレクトロニック・ミュージックとギターやヴォーカルの組み合わせが生まれてきたわけですね?

J:そうなんだ。あの頃のトラックは、まだ俺がビギナーだったし、あまり高い基準を設定してなかったんだ。当時から、メロディのないアブストラクトなエレクトロニック・ミュージックとか、ブラック・サバス的なグルーヴの入ったジャングルを作りたかったけど、まだその技術が俺にはなかったんだ。あの頃がエレクトロニック・ミュージシャンとしての俺の出発点だったんだけど、808ステイトとか、〈Phuture〉からリリースされたものとか、アルマンドとか、80年代のシカゴ・ハウスの連中を模倣しようとしてたんだ。俺が作りたかったタイプの音楽は、まだやり方がわからなかった。でも80年代初期のアシッド・ハウスを真似ることなら、当時の俺にはまだできたんだ。だから、それをやっていた。

エレクトロニック・ミュージックは俺にとって聖域だったし、そのとき俺が演奏していた音楽よりも、レベルが高い音楽だと思っていた。

RHCPに入っていた頃から、シカゴ・ハウスやアシッド・ハウスを聴いてたんですか? もしそうだったら、ぜんぜん予想もしなかったことですね。

J:そうなんだ。当時はインタヴューを受けたときも、あまりそういうことについて話さなかったんだ。エレクトロニック・ミュージックは俺にとって聖域だったし、そのとき俺が演奏していた音楽よりも、レベルが高い音楽だと思っていた。俺が聴いていたエレクトロニック・ミュージックは、クラブで踊るために作られたものか、エイフェックス・ツインやオウテカのように自分をミュージシャンとして高めるために作られている音楽だったんだ。RHCPみたいなポピュラーなバンドだと、レコードを売ることがどうしても第一の目的になってしまう。でも、そういう音楽よりも、エレクトロニック・ミュージックのほうが次元が高いところにあると思った。俺は自分が尊敬するエレクトロニック・プロデューサーの生徒だと思っていたから、あえて彼らの名前を出す立場ではないと思っていたんだ。だから、当時はインタヴューであまり話してなかったけど、1999年にRHCPに戻ったときから、じつはいろいろなテクノ、ハウス、IDMを聴きまくってたんだよ。

誤解を恐れずにいえば、一連のさまざまな取り組みは、ジョン・フルシアンテというギタリストが、ギターという楽器と、ギターによって生み出される音楽とを対象化する作業であるように思われます。あえてギターから遠ざかろうとするように見えるのですが、ちがいますか?
そうだとすればなぜそのようなことを目指すのでしょう?

J: 当時はギターを完全に放棄しようとしてたわけじゃないんだ。あとから徐々にギターを取り入れるようになったんだ。でも、ギターをアシッド・ハウスに入れるんだったら、まずアシッド・ハウスをマスターしないといけないと思ったんだ。いつか、自分が好きな音楽的要素を何でも組み合わせられるようになりたいと思ってたけど、まずは自分が慣れ親しんでない音楽をマスターしたかった。アシッド・ハウス、テクノ、ジャングルを作るには、それなりに時間をかけないといけないし、それができるようになってから、いろいろな要素を融合させようと考えてたんだ。 ギター・プレイヤーというのは、ネックの仕組みとか、指の限界があるから、いろいろな罠に陥りやすい。しかし202、303、101を使うと、ギターのような制限はない。でも当時の俺は、ギターの制限に慣れ親しんでいたから、それを問題だと思ってなかったんだ。アシッド・ハウスを作ることで、自分の音楽的ボキャブラリーと思考プロセスを広げることができたんだ。しばらくすると、マシンを扱うことが、ギターと同じくらいに楽になったんだ。ギターを演奏するのと同じようにマシンを扱えるようになったし、マシンから学んだことを、ギターに応用できるようにもなった。ギタリストの自分と、プログラミングする自分が繋がったんだ。マシンをしばらく使うことで、ギターに由来する典型的なメロディとか音楽的理論に陥らない自分を作り上げることができたんだよ。

ギタリストの自分と、プログラミングする自分が繋がったんだ。ある日突然、アシッド・ハウスを取り入れたロック・スターではないんだよ(笑)。

少しあとから、アシッド・ハウスにギターを組み合わせるようになって、いい曲もできたけど、もともとの目的は一人で音楽を作れるようになることだった。そして、自分が好きな音楽的要素をすべて融合できるようになることだったんだ。でも、アシッド・ハウスの作り方がわからないのに、突然アシッド・ハウスを作って、そこにギターを乗せるような人にはなりたくなかった。『PBX』とか『エンクロージャー』には、アシッドっぽいセクションが曲に入ってるけど、80年代のアシッド・ハウスとはまったくちがうんだ。伝統的なアシッド・ハウスを長年作ってる人が思いつかないようなパートだった。アーロン・ファンクやクリス・マクドナルド、それにザ・ダウトフル・ゲスト名義でリリースしているリビーとコラボレーションでトラックを作ったことがあるよ。スピード・ディーラー・マムズでは、長年いっしょにアシッド・ハウスを作ったこともある。だから、『PBX』や『エンクロージャー』でアシッドの要素を取り入れるというのは、アシッドを長年作った経験のある視点からやってるんだ。ある日突然、アシッド・ハウスを取り入れたロック・スターではないんだよ(笑)。

今作ジャケットのアートワークとして用いられているたくさんの数字は何を意味していますか?

J: 俺は歌詞、アイデアをノートに書き留めるんだけど、全部とってあるんだ。そして曲作りするときに、数値をノートに書き留めないといけないときもある。この時期に使っていたノートには、数字を書き留めたページが何枚かあった。──ロック・バンドと演奏するときは、小節の数を数えながら演奏する必要がないんだな。つまり曲のセクションが終わって、次のパートがどこからはじまるかだいたいわかるんだよ。でもエレクトロニック機材をプログラミングするときは、1小節めから16小節め、17小節めから32小節めの間に何をプログラミングするかを意識しないといけない。いまは意識しなくてもわかることだけど、当時はまだ経験がなかったから、そういった数字を全部書き留めてたんだ。マシンの音が変化するようにプログラミングしないといけなかったんだ。どこからどこまで、どの音を入れたり、何小節めから展開を入れるかとか、そういう数字を書き留めてたんだ。

本作制作の過程や録音時の模様について教えてください。もっともこだわった点、また、もっとも優先したことがらについてもおうかがいしたいです。

J:当時は、それぞれの曲はちがう記事の組み合わせで作ってたんだ。ゼロからの状態で作りはじめて、まずは一つの機材をプログラミングしはじめる。それを別の機材と同期させて、次の機材をプログラミングする。さらに3つめの機材をつなげたり、どんどん音を足していく。一つの機材をプログラミングしてから、もう一つの機材をプログラミングして、2つの機材だけでやりとりができるんだ。既成概念がなくても、機材をいじってる間に、曲ができあがる。テニスとかボクシングの試合みたいに、機材とやりとりしてるような感覚だね。一人でジェム・セッションをしてるような感覚。
 そして徐々にどういう曲にしたいかが見えてきて、そこから機材をソング・モードに変えて作業したりしたんだ。手動でリズム・パターンを変えることもあるし、音を加工させたりもした。エンジニアリングの問題が出てくると、それを自分で解決しないといけなかったし、いつも学ぶことが多かった。ディレイとリヴァーブも何台か持ってるし、Mackieのミキサーも使ったんだ。Rolandのドラム・マシンをいくつかと、Monomachine、Yamaha R8みたいなものも使った。だから、トリックフィンガーの曲ではどれも、いままでやったことがないことに挑戦したかったんだ。しばらくはDIN Syncで機材を同期させてたけど、のちにDin to MIDIコンバーターを入手してから、MonomachineとかYamaha R8とかAkai MPC 3000などのデジタル機材を導入するようになった。DIN SYNCを使っていた頃は、909, 808, 707, 101, 303, 202のみを使ってたけど、途中から80年代半ばの機材も取り入れるようになった。今回のアルバムは、303, 606, 808の使用度が高いね。

オーヴァーダビングがないから、ライヴ・レコーディングみたいなものだった。もちろん、満足いくまで何回かテイクをとったから、厳密にワンテイクとは言えないけどね。

では、今回はコンピュータはいっさい使ってない?

J:そう、いっさい使ってないよ。レコーディングもCDバーナーにしたんだ。

では、ワンテイクでライヴをレコーディングしてるような感じですね。

J: そう、オーヴァーダビングがないから、ライヴ・レコーディングみたいなものだった。もちろん、満足いくまで何回かテイクをとったから、厳密にワンテイクとは言えないけどね。ただ、一人でライヴ・バンドをやってたような感じだったんだ(笑)。

当時からすでにモジュラーシンセも使ってたんですか?

J:そうだね。すべての曲で使ったわけじゃないけど、いくつかの曲では使ってたよ。

イクイップメントやスタジオの環境、アイディアの生まれる環境についてはだいたいそんなところでしょうか。

J:機材はだいたい全部教えたと思うよ。EMT 250、ARP 2500、Doepfer Modular Synthesizer, Roland MC4、Roland 202, 303_, 606, 707, 727, 808, 909も使った。Yamaha R8, Monomachineも使ったね。Machinedrumはたしか使ってなかったと思う。それ以外はあまり使わなかったから、けっこうベーシックなセットアップだった。

マシンからインスパイアされることもあるんですか?

J: マシンを使っていると、事前にアイデアがなくても曲が作れるから楽しいんだ。インプロヴィゼーションで楽器を演奏するのと同じ感覚だよ。トリックフィンガーの曲も、最初はハウスのキックを打ち込むところからスタートして、そこから発展させていった。目の前にある音に対して反応していくうちに、トラックを構築できるんだ。機材をいじっていくうちにアイデアが湧きあがってくる。ポップ・ソングの作曲家の場合は、頭の中にアイデアを思いついてから、それを楽器で演奏するんだけど、そのプロセスとはちがうね。まったくノープランでスタートして、機材をいじっている間にアイデアが見えてくるんだ。メロディが思い浮かんだら、それを202にプログラミングするんだ。でも、202やMonomachineを使って、頭の中のアイデアを形にしていくうちに、想像していたものと、まったくちがう音になることもあるんだ。そういうアイデアがいちばん刺激的だと思う。マシンとの相互作用によって、自分の想像を超えたアイデアが生まれるんだよ。マシンを使ってアシッド・ハウスを作る醍醐味は、最初からアイデアがなくても、曲が作れることなんだ。聴こえてきた音に反応して曲を作っていくんだ。当時は、レコードよりも、とにかくドラム・マシンで作ったシンプルなハウス・ビートが聴きたかった。ドラム・ビートが鳴っていると、それに触発されて別のマシンをいじって、音を重ねていきたくなる。それがとにかく楽しかったね。

いまはコンピュータとトラッキング・ソフトウェアを使っているんですよね?

J:そう。同じ機材を使っているけど、いまは使い方が変わったんだ。いまのほうがドラム・コレクションが増えたんだけど、コンピュータを使って演奏してる。コンピュータを使わずに、606を使ってモジュラーシンセをトリガーさせることもある。ほとんどのドラム・マシンは、コンピュータからトリガーできるから、いままでとはちがう方法でコントロールできるんだ。リズムをずらしたり、ポリリズムを作り出したり、ブレイクビーツっぽいリズムも作り出せるんだ。最初はステップ・プログラミングを学んだけど、そこからマイクロ・リズムを研究するようになったんだ。リズムをずらすことで、もっとキャラクターのあるリズムの作り方を学んだ。コンピュータを使うことで、ドラム・マシンの表現力が広がったんだ。ヴィンテージのRolandのドラム・マシンには、マイクロ・コンピュータが入ってるんだよ。コンピュータを使うことで、ドラム・マシンの脳に入り込んでコントロールできるんだ。機材だけを使っていると、ボタンを使ってプログラミングするしかない。でもコンピュータを使うことで、909に入り込んで、もっと表現力のあるプログラミングができる。909を使って、生のドラマーのようなリズムが作れるんだ。Renoizeのソフトを使って、909の中のコンピュータをコントロールしてるんだ。それがいちばん大きい違いだね。
 トリックフィンガーのそれぞれの曲で、ちがう機材の組み合わせを使ってるんだ。いまは、セットアップは固定されてるし、理想のかたちになったんだ。それもひとつのちがいだね。当時は202を2台持ってたけど、いまは6台持ってるんだ(笑)。当時は303をほとんどの曲で使ってたけど、いまはあまり使わないんだ。

純粋に自分の中にあるエネルギーを表現している音楽が好きなんだ。だからパンクやジャングル、50年代のロックンロール、40年代のカントリーが好きなんだろうな。

他の未発表音源はいつかリリースしますか?

J:このアルバムもそもそもリリースしようと思ってなかったわけだしね。だから、1年後にオリヴァーがまた他の未発表音源をリリースしたいと言ったら、承諾はすると思うよ。でも、自分からリリースしようとは思わない。

最近は何を作ってるんですか?

J:いまは自分のために音楽を作ってるだけなんだ。2013年の12月から、リリースを意識せずに音作りがしたくなったから、しばらくはそのモードで制作してる。ブラック・ナイツの新作が今年リリースされるけど、それは2013年に作ったものなんだ。だいぶ前に完成させたから、もっと早くリリースしたかったけど、5月にリリースされる予定だよ。

最近はどんな音楽を聴いてますか?

J:いつも変化してるよ。最近は音楽を作るときは、サンプリングから作りはじめるんだ。いまはこの作り方がいちばん楽しいし、自由だし、表現力があるんだ。ギタリストとして、俺はいろいろなレコードにインスパイアされたから、RHCPにも楽曲を提供できたんだ。それがなければ、できなかったよ。音楽の歴史を勉強することがインスピレーションになってるんだ。だから、サンプリングをすることで、俺は音楽の歴史を取り入れて、そこからまったく新しい音楽を生み出せるんだ。だから、ギタリストとしてやってたこととアプローチは同じなんだ。サンプリングで心地よく曲を作れるようになるまでしばらく時間がかかったけど、それができるようになってから、自分のソロ作品やヒップホップ作品で多用するようになった。サンプルに対して反応して、そこから曲を作っていくんだ。いまは、とくにアルバムのプランをもたずに曲を作っている。
 それから最近は90年代のジャングルをよく聴いてるよ。あと、80年代のニューヨークで流行ったフリースタイルも大好きなんだ。70年代後半と80年代初期のパンクもよく聴いてるね。ジャームス、ブラック・フラッグ、ザ・ワイパーズ、ミスフィッツみたいなハードコア・パンクのバンドだよ。レコード店に行って、カントリー、フォーク、プログレ、50年代のジャズ、キャット・スティーヴンス、コメディとか、いろいろなレコードを買い漁ったりする。最近ハマってるのは、ジョー・ジャクソンなんだ。幅広くいろいろな音楽を聴いてるよ。ノイズも聴くしね。
 最近、友だちのオーレン・アンバーチがLAにきてライヴをやったのを見たけど、すごくよかった。最近俺が作った曲がノイズの曲だったんだけど、リズムやメロディの要素が入ってないんだ。そういうアプローチも楽しい。ピタ、エクハルト・エーラーズ、ファーマーズ・マニュアルなんかも最近は聴いてるよ。40年代から60年代の音楽を聴くこともあるし、自由でピュアなアプローチで作られてるものが好きなんだ。巧みなものを作ってやろうという意図のある音楽じゃなくて、純粋に自分の中にあるエネルギーを表現している音楽が好きなんだ。だからパンクやジャングル、50年代のロックンロール、40年代のカントリーが好きなんだろうな。有名人になろうとかじゃなくて、純粋に自己表現をしている音楽。だから、ピュアな音楽を聴くことが多い。ミュージシャンがみんな同じ部屋で演奏しているレコーディングが好きだよ。オーヴァーダビングを多用することで、ミュージシャンの技術は落ちたと思うんだ。モダンなバンドは、オーヴァーダビングを多用したり、巧みなエンジニアリングを使って、実際よりも歌が上手いように聴こえさせることができるんだ。そういうバンドよりも、40年代のカントリー・バンドを聴くほうが楽しいね(笑)。

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