「S」と一致するもの

Shitaraba - ele-king

20禁チャート


1
Blipvert - Quantumbuster -Eat Concrete

2
Blipvert - E -Eat Concrete

3
Petr Passive - Kick In The Bass -Basserk

4
Pierce Warnecke - RnBeast -BEE Records

5
Becoming Real - The Thing -Lo Fi Funk

6
Mrs Qeada - Babi - Flogsta Dancehall

7
Propa Tingz - Poor Man Style - Offroad

8
MusSck - Ghetto Village In 2D - Daly City Records

9
Loops Haunt - Joplin - Black Acre Recordings

10
Hack Ira - Ahowa -Another Chance recordings

Various - ele-king

 先日、眠るタイミングを逸したまま夜を過ごし、もうそろそろ寝ようと思ったとき、カーテンがピンク色に染まっていた。それはそれは何とも言えない色合いの朝焼けで、ピンクの雲と、その隙間から見えるブルーのコントラストにしばらく見とれてしまうほどだった。

 クリスタルによって選曲、ミックスされた『メイド・イン・ジャパン "フューチャー" クラシックス』のジャケットの絵は「打ち込みテクノ少年が、自室で夜を徹して夢中で曲をつくって、空が白む頃に窓から見た風景」というコンセプトで描かれたものらしい。国内レーベルからリリースされた日本のテクノ~エレクトロニック・ミュージックをセレクトし、ひとつのストーリーを与えたこのミックスCD は、意外にもオオノ・ユウキによるアコースティックな音色で幕を開け、その後、2000年代の音源と90年代のテクノ黎明期にリリースされた音源が感慨深い邂逅をしながら流麗にミックスされていく。

 前半がリスニング系、後半は4つ打ちのトラックを中心とした2部構成になっていて、先のオオノ・ユウキの生ギターをイントロダクションに、吹き抜ける風を描写したようなイーター、切れのいいブレイクビーツと繊細でドリーミーな電子音が交錯するインナー・サイエンス、まさにエレクトロニックに変換された日没の光景というべきダブリーの"ザ・サンセッツ"、エレクトロニカの中の叙情性を濃縮したようなアメツブ、限られた要素でイマジネーションをフル稼働させる音職人スズキスキー、異能のコンビであるタンツムジークのアンビエント・サイド、アキオ/オキヒデ名義の"ブルー"と続き、ここでシフトチェンジして後半へ。

 福岡の〈サイジジー〉を運営していた稲岡健のユニット、ドローイング・フューチャー・ライフによる無重力感のあるダンス・トラック、エモーションとともにハイウェイを疾走するかのようなmophONEの"dic"、〈トランソニック〉のオーガニゼーションによる"ユーズドUFO"のフロム・タイム・トゥー・タイム(砂原良徳と田中純のユニット)リミックス、オールドスクールなアシッド・テクノを展開したミュートロンとユリ・スズキのユニットであるMY、このミックスCDの首謀者クリスタルとK404のトラックス・ボーイズの曲をチェリーボーイ・ファンクションがリミックスした、90年代の記憶と80年代への憧憬が混ざり合ったようなヴァージョン、映画音楽的で壮大なイメージのヒロシ・ワタナベによる別名義クアドラ、そしてラストはムードマンがやっていたレーベル〈ダブ・レストラン〉のコンピに収録されていたフルクラムの柔らかなサイケ感とノスタルジアが漂う曲でこのストーリーは幕を閉じる。

 収録曲のリリース年が最も古いのが93年のドローイング・フューチャー・ライフの"ザ・デイ・オブ・リターン(ウィズ・ドルフィンズ)"で、いちばん新しいのは2009年のアメツブ"タイム・フォー・ツリーズ"とMY"ア・ミラー・イン・ミラーズ"(MYの曲はかなり以前に録音されたものらしいが)。国産のエレクトロニック・ミュージックのみで構成するということ自体珍しいのだけど、このミックスCDをさらに特別なモノにしているのは、やはり90年代のジャパニーズ・テクノ黎明期のトラックをセレクトしているところだろう。

 今年の6月28日、このミックスCDに連動して企画されたDOMMUNEのプログラムに出演したスズキスキーは、何故か飲み慣れていないウォッカを何杯もあおって泥酔状態になり、クリスタルくんに絡むわレイハラカミくんの頭を叩くわ、ちょっとした放送事故状態を引き起こしていた。そんななか、彼の 93年の最初のリリースが完全個人の自主制作だったという件について「何で?」と問われたとき、スズキスキーは「だって出すところが無かったんだよ!」と即答していたのが個人的に印象に残った。新しい音の波に触れて、居ても立っても居られず機材と格闘して曲を作り、気持ちは無根拠な自信で思いっきり高揚しているものの、どうしていいのやらさっぱりわらず、というのが90年代初頭に日本でテクノを作り始めていた連中のおおよその状態だろう。僕もそうだったから良く解る。

 そこにひとつの勇気を与えたのが、93年に唐突にベルギーの〈R&S〉からリリースされたケンイシイの『ガーデン・オン・ザ・パーム』であり、それをキッカケに海外から日本人がリリースする例が増え、同時に国内の〈サイジジー〉や〈トランソニック〉〈フロッグマン〉〈ダブ・レストラン〉などのレーベルの動きが活発化していく。ようするに自分のやり方でやればいいのだというコトを我々は知ったのだ。

 そんな時代のなかで僕も96年に〈R&S〉傘下の〈アポロ〉からシングルをリリースし、97年には〈サイジジー〉からアルバムを出すこととなる。パンク~ポストパンクの波にリアルタイムに遭遇して曲作りをスタートし、1980年に最初のリリースをしたたものの、その後自分の行き場を見つけられずにいた僕にとって、このDIYで能動的で、さらにダンスという肉体性と祝祭性を併せ持ったムーヴメントは非常に魅力的だったし、自分の価値観が転換される感覚に久々に興奮した。実際、いまさらこんなものを聴いていられるかと、勢い余って持っていた過去のレコードをほとんど売ってしまったほどで、果たしてそれが正しい判断だったかどうかはわからないものの、たしかにそう思わせるだけの重要なターニング・ポイントではあったのである。

 何かが生まれたり、動き出す時というのはすべてそうなのだろうけど、実際にそこに参加した者たちは、まったく客観的ではないし、というか客観的になる余裕がないような状態で、いまから考えるとその頃はみんなちょっとあきれるほどに無防備で無垢だった。元々はかなりバラバラな嗜好や資質をもっていたような連中が、一瞬とはいえテクノという同じ場所に居合わせたのは、やはり特別なことだったのだろう。

 その後はそれぞれがそれぞれの方向に拡散し、さまざまなジャンルのなかでさまざまな試行錯誤がおこなわれていったわけだけれど、そのいっぽうで90年代黎明期のテクノの記憶は長らく放置されたままになっていた。そしてテン年代に入り、90年代にテクノとともに思春期を過ごしたクリスタルくんのような人が、ジャパニーズ・テクノの過去と未来にブリッジを架け、散らばっている点を線で繋ごうとするというのもなかなか感慨深いものがある。無闇に前のめりな姿勢をとっていたアーリー・テクノもたしかにそろそろ再検証すべきときが来たのかもしれない。ノスタルジーを剥ぎ落とし、未来へと繋げるために。

 どうもこのような動きもただの偶然ではないようで、7月28日にはのアキオとスピードメーターが組んだユニット、AUTORAがアルバムをリリースするし、永田一直のファンタスティック・エクスプロージョンも8月アルバム発売とのこと。ここに砂原良徳の9年振りの新作を加えてもいいだろうし、〈サイジジー〉の稲岡くんも久々にヤル気を出しているようだ。ひと回りして何かいろいろ動き出している気配があり、しばらく怠けていた僕も、ちょっと喝を入れられた気分でもある。

 僕はデトロイト・テクノを初めて聴いたとき、すごくファンキーだが、同時にすごく孤独な音楽だと感じたのだけれど、日本のエレクトロニック・ミュージックにもまた別種の孤独な響きがあり、それは夢想的で、ときにキッカイで、ときに過剰なほどロマンティックであったりもする。そして、その夢想の解像度が高いのもひとつの特徴かもしれない(それらは住宅事情の影響で、ヘッドフォンでモニターしながら作るような環境から来ているような気もする)。

 このちょっとした時代の節目を象徴するミックスCDのジャケットに描かれた「打ち込みテクノ少年が、自室で夜を徹して夢中で曲をつくって、空が白む頃に窓から見た風景」にも、その孤独な空気を感じ取ることができる。しかし、それは決して暗澹としたものではなく、そこには心地よい疲労と静寂が存在し、そしてあらゆるイマジネーションが渦巻いている。本作に収録されたアーティストやクリスタルにとってもこれは永遠の原風景であり、そして若い君にとっても同様のはずだ。われわれは大きな流れの途中にいるのだから。

三田格 - ele-king

裏アンビエント・ミュージック・チャート


1
David Behrman - Leopday Night - Lovely Music (87)

2
Jean Guerin - Tacet - Futura Records (71)

3
Biosphere / Deathprod - Nordheim Transformed - Rune Grammofon (98)

4
Flotel - Wooden Beard - Expanding Records (05)

5
Queen Elizabeth - Queen Elizabeth - Echo (94)

6
Oophoi - The Spiral of Time - Aurora (98)

7
坂本龍一 - Comica - Warner (02)

8
Iasos - Inter-Dimensional Music - Unity (75)

9
Stephan Mathieu - Die Entdeckung Des Wetters - Lucky Kitchen (02)

10
Mother Mallard's Portable Masterpiece Company - Like a Duck in Water - Earthquack Recordings (76)

Emeralds- Emeralds - Wagon (09)

- ele-king

★今回、航の音楽を通して自分語りから始めることを許してください。けれども、その恥をさらしてでも書きたいと思ったのが、航のアルバム『Do-Chu』についてです。

 私は1998年に静岡県から上京してきた。上京したばかりの頃、私は渋谷区に住んでいて、大学に通う傍ら、渋谷や下北に小島真由美、CHARA、朝日美穂のライヴに行き、椎名林檎のデビュー・アルバム『幸福論』を何度も聴き、毎週末原宿や表参道を何をするでもなく歩いて、雑誌は『装苑』を毎月買い、ゴダールの『気狂いピエロ』とかを見て、ヒロミックスやしまおまほの存在を気にしながら、いわゆる、なんていうんだろう、恥ずかし気もなくミーハーなオシャレ文化系女子(?)を気取りながら、都会生活を謳歌していた。

 ある日、表参道のストリート・ミュージシャンと会い「今度ライヴやるから来てよ」と言われて、初めて雑誌とかレコード屋さんで目にしたことのない人のライヴに行くことになる。そこで対バンだったのが、「トーマス・ヨハンセン」というバンドだった。私は一瞬にしてそのバンドに心奪われた。配られていたチラシに「トーマス・ヨハンセン/鍵盤楽器奏者募集」とある(私は矢野顕子に憧れて、何を勘違いをしたのか芸大受験をしたのである)。次の日には電話だかメールだかハガキだか忘れたけれど、自意識過剰な私は迷わず連絡していた。話は長くなるのでいろいろと省略するけれども、私は幸運なことにバンド経験なんて何にもないのに、すぐにライヴハウスで演奏することになった。そのなかでも定期的に演奏していたのが、〈渋谷アピア〉という小さなライヴハウスだった。

 その〈渋谷アピア〉が、オシャレ文化系女子のつもりだった私にとっては、もしかしたら人生の矛先を大きく変えた場所のひとつであったかもしれない。南正人、遠藤ミチロウ、火取ゆき、友川カズキ、チバ大三、三上寛といった人たちが出演していて、初めてこの世の裏側にこういう音楽が存在するということを知ったのである。そのライヴハウスでよく名前を見たのが、今回紹介する航(ピアノ、ヴォーカル、作曲)である。

★前置きが長くなったけれど、やっとここから本題に入ります。

 航のプロフィールを見ると、私と同じ1979年生まれ、クラシックを学んで、1998年にライヴ活動をはじめ、ちょうど同時期に〈渋谷アピア〉で活動している。たしかに当時その名前は見たことがあった。十余年を経て、今年初めてこのアルバム・リリースをきっかけに私の担当しているラジオ番組のゲストとして出演していただくことによって対面することになった。彼女の名前を見たときにこれは他人事とは思えなかったので出演をお願いしたのである。
 航はあの頃から、〈渋谷アピア〉の地下水脈のなかでソロ弾き語りライヴをこなし続け、そして藤井郷子さんとのデュオアルバムを経て、2010年このアルバム『Do-Chu』をリリースするに至った。このアルバムの曲すべて、作曲は航本人で、共演者に田村夏樹(tp)、植村昌弘(ds)、公文南光(cello)を迎えている。このアルバムで開花した新しい世界というのが私には充分すぎるほど感じ取ることができて感涙するのである。何かと再会する感動。しかも私の敬愛する藤井郷子/田村夏樹の音楽を経て。

 ラジオ番組に出演してもらったときに、航には自分のアルバム以外に影響を受けた音楽をいくつか持って来ていただくことをお願いした。彼女が持って来てくれたのは、Portishead『Glory Box』とBrigitte Fontaine『 Comme a la Radio』だった。このふたつを彼女は声と楽器が主従関係になっておらず、対等である音楽と指摘していたけれど、この選曲に私はあらためて彼女に惚れ直しもした。

 航の音楽は、ひとつの身体から奏でられる。体の芯から分岐して、細い指先に伝わって繊細に紡ぎ出されるピアノの音と、体内の管を通って喉を振るわせ吐き出される声。こんなふうに私の耳に届いて来た弾き語りは、私が高校生のときに初めて音楽的な衝撃を受け、音楽を志そうと思った矢野顕子『JAPANESE GIRL』(1976)の"電話線"以来である(高校生当時1995年、弾き語りアルバム『ピアノ・ナイトリイ』が出た頃。矢野顕子を全部集めようと思って2枚目にデビュー・アルバムを買った)。
 航の音楽は、こんなふうに私の個人史のなかに浸透して、自分の音楽体験を走馬灯のように振り返らせてくれる力をもちながら、少し大袈裟かもしれないけれど90年代から現在にかけての日本音楽史の裏側を背負った類のない音楽である。2010年それがようやく世間に放たれた。ほんとうにうれしい。いま、90年代オシャレ文化~アンダーグラウンド音楽シーン~アヴァンギャルド音楽シーンを経て、ようやくひとつの身体から奏でられる弾き語りとして、航の音楽が「あなたの耳へ」と届くことになるだろう。

Emeralds - ele-king

 三田格が監修した『裏アンビエント・ミュージック 1960-2010』のなかで、2009年の重要作として大きく取り上げているのがこのエメラルズで、彼は2ページを使って5枚の関連アルバムを紹介している。本のなかで三田格は出たばかりの本作について「クラウトロックへの転身が完全なものとなった」と書いているのだけれど、実際の話、僕はこの作品を聴いてエメラルズを買った。「クラウトロックへの転身」によって彼らはこうして新しいリスナーと出会ったわけである。

 オハイオ州クリーヴランドを拠点とするエメラルズは、マーク・マクガイアー(ギター:三田格が ele-kingで書いているように最近〈ウィアード・フォレスト〉からソロ作品を出している)、スティーヴ・ハウシリト(エレクトロニクス)、ジョン・エリオット(エレクトロニクス)の3人からなるグループで、20代前半という若さながらすでにその筋では名が知れている。親切な"裏アンビエント"の監修者は僕にエメラルズのバックカタログを貸してくれたのでひと通り聴いてみたのだけれど、なるほどたしかにどの作品も面白い。2008年の『ソラー・ブリッジ』は『メタル・マシン・ミュージック』の系譜に位置するフィードバック・ノイズによるアンビエントの傑作で、前作『エメラルズ』にアンビエントのハード・リスナーを納得させるであろう特別な輝きがあるのもわかる。それをノイズと呼ぼうがアンビエントと呼ぼうがドローンと呼ぼうが、音楽作品としての充分な魅力があり、エメラルズはすでにある一定水準を超えているのである。

 また、エメラルズは、グルーパー、ポカホーンティッドオネオトリックス・ポイント・ネヴァーなどなど野心的な連中と同様に、カセットテープとCDRによる作品を実にこまめに発表している。USアンダーグラウンドにおける"テープ・シーン"を代表するグループでもあるのだ。"テープ・シーン"とは超限定のカセットテープと超限定のCDRによる作品発表、あるいはまた(デトロイトのブラック・アンダーグラウンドと同様に)ヴァイナルの復権を唱えるものであり、どうやらデジタル・シーンへの批判的な態度を表明する時代精神のひとつとしても注目されているらしい。

 個々の作品性については『裏アンビエント・ミュージック』を読んでもらうとして......、で、『ダズ・イット・ルック・ライク~』はたしかにクラウトロックにおける"コズミック・ミュージック"と呼ばれたものと近しい。初期のタンジェリン・ドリーム、『ラルフ&フローリアン』、『ツァッカーツァイト』、エレクトロニクスを使いはじめたマニュエル・ゲッチング......。アナログ・シンセサイザーの睡眠的な反復とマクガイアーによるゲッチングを彷彿させるギター演奏は確信犯としてそれをやっているのではないだろうかと思わせる。

 『ダズ・イット・ルック・ライク~』は、『エメラルズ』と同様に多くのリスナーがアプローチしやすい作品でもある。それぞれの楽曲にはそれぞれのアイデアがあり、『エメラルズ』と比べて曲のヴァリエーションもある。ただし......、圧倒的な恍惚感ということで言えばたしかに『エメラルズ』で、『ダズ・イット・ルック・ライク~』には少々重苦しさが入り込んでいる曲もある。そこは好みが分かれるところかもしれないが、バンドはドローンやアンビエントといったカテゴリーの殻を破って、より広いところに行きたいのではないかと思われる。このアルバムを成虫前の「繭のような作品だ」と評していた人がいたけれど、そうした期待を寄せるだけのポテンシャルは『裏アンビエント・ミュージック』のおかげで充分にうかがい知ることができた。
 ちなみに『裏アンビエント・ミュージック』は、音楽快楽主義において目から鱗のカタログである。とりあえずは、この本を読んで自分なりのリストを作成し、中古盤店を探してみるかい(値が上がらないうちに)。

七尾旅人 - ele-king

 不自由さや閉塞感の中に表現の根拠を見いださなければならないというのが、2000年代の日本の状況だった。表現するということの居心地の悪さが、「なぜ表現などということをするのか、そんなことにいまどのくらいの意味があるのか」と無限に自己弁明を強いるような、ややこしい時代。たとえば相対性理論ならば、作品においてもふるまいにおいてもなかば露悪的にポップ・ミュージックという枠組み自体を脱臼させることで、その居心地の悪さを踏み抜こうと試みていたと言えるだろう。

 そうした無限の自己弁明に耐えられないならば、動機に関するメタな考察はいっさい放棄して、あるいは「エンターテイメント」に、あるいは「純文学」に、あるいは......といった具合に制度的なひとつの態度に開き直ることでなんとか創作行為を維持していくような消耗的な時代。ライトノベルやある種のゲーム、アニメの勢いがあったり、AKB48にうかがわれるパッケージ・ビジネスに期待が寄せられたりするムードもそのいち例だろう。こうした状況にどのように向かい合うかという問いの真摯さも、何が"真摯さ"かということが自明ではなくなって――表現における"真摯さ"の価値が崩壊して――シリアスな表現者ほど苦しい闘いを余儀なくされたように思う。「ゼロ年代」という呼称は、そうした状況と分かち難く結びついたものだ。ゼロはリセットの意ではなく、底抜けの空白状態を表すにふさわしい。

 七尾旅人は"真摯な"闘いを続けるアーティストである。七尾旅人の怪しげな格好は、メタ表現者......表現者としての自らに加えられたシニシズムでもあろうが、同時にゼロ年代を漂泊する西行のような、孤高の吟遊詩人の姿にも重なる。踊り念仏の一遍、あるいは空也になぞらえてもいいかもしれない。彼らの共通項は「ライヴ」だ。本作についてなにかを述べようとするならまず彼の近年のライヴの模様について語らねばならないと筆者は考える。

 七尾旅人はライヴという一期一会の場所におけるコミュニケーションを巧みに捏造する。そして例えばポリティカルなテーマ(=ネタ)設定によって、かろうじて外部性をでっちあげる。直接性を保証するはずのライヴにおいても、社会やメディアが高度に複雑化しきった現在では、コミュニケーションなど自明には成立しない。イヴェントやライヴの最中に携帯を広げる姿が目立つというが、メールではなくツイッターであろうし、その様子がストリーミング配信による実況中継で遠隔地の人間にも共有される昨今だ。彼らもまたツイッターに参加する。その真ん中で「つぶやき」を拾い、読みあげる七尾。また曲中でさえ客いじりを中心にしゃべりまくる七尾。そのように、なかば「コミュニケーションのパロディ」といった様相で立ち上がる彼のパフォーマンスは、一いちどの屈折を経ないと相手に繋がらないという、信頼よりは不安が先立つ90年代型の感性と、間接的なコミュニケーション・ツールが爛熟し飽和したゼロ年代に、そのマナーを逆用することで直接性の片鱗を掴もうという企てが交叉したもののように思われる。卓抜な弾き語りと、アイディアに満ちたパフォーマンス、彼自身のカリスマ。持てるものを総合して闘っている印象だ。

 彼の場合、批評性に偏るタイプではなく、実際に素晴らしく音楽的な才能と、音楽に対する純粋なリスペクトがあるところが得難い存在感に繋がっている。「フォーク・シンガーっていかに何もしないかだと思ってるから」ふわっと現れ、なにほどか聴衆を愉しませ、気づけば舞台を去っている。あれ? あの人は何だったんだろう? というような存在になりたい......という趣旨のMCをいつか聞いた。それはまさに詩と音楽と踊り念仏の上人だ。人びとを踊らせ(愉しませ)、メッセージをおいて、どこかへ消える。明晰な七尾は韜晦的な調子で述べるが、おそらくこれは本音だろう。
 
 さて、5枚目となるフル・アルバム『ビリオン・ヴォイシズ』は、こうしたライヴにおいてアニマートに演奏される楽曲のアソートだ。YouTubeなどで拾える名演も多いが、その本尊としてのスタジオ録音といった印象である。また、集められた楽曲は自ずからひとつのテーマ性とストーリーを浮かび上がらせている。アコースティック・ギターの軽快なリフに先導されて頼りない妻子持ちの身上をまくしたてる"アイ・ワナ・ビー・ア・ロック・スター"。単一のリフのみ、あとはヴォーカル・パフォーマンスで聴かせてしまうシンプルな展開。だが作中主体の妄想とともに突如ペダルで起爆、ファズが唸り、ブルージーなリフはヘヴィに強調され、野外フェスのような歓声とともにヒロイックなギター・インプロが延々と続く後奏へと流れ込んでフェイド・アウト。アルバムの冒頭を飾るにふさわしい、期待感のあるナンバーだ。

 スペーシーなサウンドとリズムボックスがネットワーク世界を幻想的に描き出すファンシーなシンセ・ポップ"検索少年"は、クリエイターが自ら楽曲ファイルを販売できる新システム「DIYスターズ」の開発とそれを利用したリリースでも話題になった曲。NHK「みんなのうた」で流れたとしても違和感のない童謡的なメロディとサリュの紗のようなコーラスが効いていて、本作品中では異色なトラックとなっている。
 つづく"シャッター商店街のマイルスデイビス"と"バッド・バッド・スウィング!"はアルバム全体の腰となるパートだろう。琵琶法師もかくや、クラシック・ギターを抱いて語りとも歌唱ともつかない節回しで紡がれつづける言葉、言葉、言葉。ライヴでもハイライトとなるパフォーマンスで、カオスパッドを用いてヴォーカルに変幻自在な表情や遊びが加わる。マイルスのプレイの声真似には微笑が漏れる。似ている。シャッター商店街のシャッターの向こうから突然マイルスが現れ、トランペットを聴かせてくれるくだりだ。すると妄想は次へ次へと連鎖し、いつしか心はサバンナへ。サバンナとカフェを好む作中主体は、その大地を慕って連呼する「帰りたい帰りたい帰りたい......」帰りたいのがいったいサバンナなのかファスト風土化した日本なのか、聴いているうちになんだかわからなくなった。そのまま間髪を入れずに"バッド・バッド・スウィング"。ウッドベースは人々がひしめいて踊る闇を演出し、七尾はそれを早口に描写、ピアノは艶かしく、ドラムは性急に心をあおる。サックスは加藤雄一郎。次第に熱を帯び、咆哮するサックスと七尾のド迫力のスキャットが切り結ぶ圧巻のセッションだ。七尾のプレイ・スタイルとして、批評性が勝るかに見えて実際には極めて洗練された音楽性が楽曲を支配しているという性質が挙げられるが、この曲はその嚆矢といえる。彼の声はほんとうに素晴らしい。非常に醒めた視線と非常にロマンチックな理想に引き裂かれている。そして前者を後者が圧倒しようとするのがよく見てとれる。

 あとは"どんどん季節は流れて"、"Rollin' Rollin'"だろうか。ソング・ライティング以上に表現や歌唱自体に並みならぬ才能をみなぎらせる七尾がブラック・ミュージックに接近するのは、時間の問題だったのだろう。メロウでハート・ウォーミングなR&Bナンバー"どんどん季節は流れて"はライヴでは聴衆に合唱を求められる。ソウルフルな味わいのシンプルな曲で、やはり七尾の歌唱が冴える。"Rollin' Rollin'"は説明不要のフロア・アンセムだ。やけのはらとのコラボ作で、ニュー・ソウルへのオマージュに満ちた切なく幻想的なトラックに、やけのはらの棒立ちのラップが鮮やかに映える。メロディは忘れがたく、ヴォーカルは甘く涼やかだ。一夜と一生と世界が渾然と混ざりあって回転するイメージが、ターンテーブルに重ねられてエンドレスに展開する......わずかにビターな後味を残す、アーバンな雰囲気の名曲である。

 こうした曲の合間を、静かな弾き語りの小品が埋めていく。いずれにも身近な人間の命を愛おしく見つめる視線が織り込まれていて、本作のサブ・テーマを形作っているように見える。"あたりは真っ暗闇"は、さすらいのブルーズメンを自らに重ねたものだろう。愛するものを後へ後へと残して旅する、音楽にしか身寄りのない男たちへの憧れと共感がにじむ。が、そんなロマンチシズムへの自嘲もわずかに宿っている。七尾の下駄に麦わら帽、ひらひらと黒い衣装をまとった「うさん臭い」姿は、全身で「俺についてくるな」と語っているのではないだろうか。実際の自分は「大騒ぎの後まだ生きてる」ことに不思議さを覚えながら、「ちょっとそっちにいってみよう」と思っているだけなのだ(なんだかいい予感がするよ)と。

 人びとを踊らせ、いい予感を残し、自らは去る。今作は七尾自身がこれから歩む道を方向づける重要作ではないだろうか。六波羅蜜寺の有名な空也像は、念仏を唱える口からどんどん阿弥陀が出てくる。ふと見れば、本作ジャケット写真も七尾の口からどんどんと歌われたものが形を成して出てくるデザインだ。それは音楽への敬虔さであると同時に、世界に対する――「ビリオン・ヴォイシズ」に対する――敬虔さの証であるように思われる。彼はけっして安易に世界を否定しない。そしてそれがどう聞かれようとも「心配要らない」と歌う。ミュージシャンとはそのようなものであってほしい。

CHART by JETSET 2010.07.26 - ele-king

Shop Chart


1

FOUR TET

FOUR TET ANGEL ECHOES »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆究極の美を求めて。レフトフィールド・ミニマル頂上リミックスが実現しました!!アルバム冒頭を飾った裁断フィメール・ヴォーカル入り名曲が遂にリミックス・カット。同ベクトルを向く盟友Manitoba改めCaribouによるリミックスを搭載ですっ!!

2

SAMPS

SAMPS S.T. »COMMENT GET MUSIC
遂に到着しましたー★2010年完全マストのニュー・インディ・ダンス・サウンド、Samps!!全てのジャンルを超えて次の新しい基準になること確定。このMexican Summerからの超限定ミニ・アルバムを買わないとこの夏も越せません!!とりあえず今すぐお願いします!!

3

AMERICAN MEN

AMERICAN MEN COOL WORLD »COMMENT GET MUSIC
グラスゴウ/LDN/NYの最強メンバーを取り揃えた豪華過ぎるリミキサー陣に注目です!!Hudson Mohawkeのリリースでお馴染みのグラスゴウ超名門LuckyMeより、ポスト・ロック・バンド音源を当店直撃の豪華メンバーがリミックスした変則Wパックが登場っ!!

4

MADLIB

MADLIB MEDICINE SHOW VOL.7 - HIGH JAZZ (LIMITED DELUXE VERSION) »COMMENT GET MUSIC
今月号も即完必至! Madlibがお届けする至極ハイなジャズ・インストゥルメンタル。コチラのDX限定盤には、CDにも(もちろん通常盤にも)収録されていない5曲入り12"が付いてきます! Blue Note作品を意識したHit&Runによるジャケットも最高です。

5

RAMADANMAN

RAMADANMAN ALLSHORT WORK THEM »COMMENT GET MUSIC
☆特大推薦☆引き算のポスト・ダブステッパーRamadanmanが、またしても時代を塗り替えます!!若き天才ダブステッパーRamadanman。盟友Addison GrooveことHeadhunterのリリースでも話題を集めたSwamp 81から革新の1枚をお届けしますっ!!

6

TORTOISESHELL

TORTOISESHELL THIS GIRL »COMMENT GET MUSIC
本気でTanlines + Tough Allianceな素晴らしさ!!衝撃のオージー・ニュー・バンド登場です。DFAからもリリースするCanyons主宰レーベル、Hole In the Skyから。シドニーの5ピース、Tortoiseshellのデビュー・シングル!!アンセム確定です。

7

JUSTIN VANDERVOLGEN

JUSTIN VANDERVOLGEN CLAPPING SONG »COMMENT GET MUSIC
ニュー・ディスコ・どストライクな2トラックス!!外し無しのNY"Golf Channel"から、"TBD"でのリリースもビッグ・ヒットを記録した元!!!のべーシスト"Justin Vandervolgen"がソロ・リリース!!超強力です。

8

DOMINIK VON SENGER

DOMINIK VON SENGER NO NAME 2009 »COMMENT GET MUSIC
元Phantom Bandの"Dominik Von Senger"がGolf Channelに参戦!!83年リリースのファースト・アルバム"The First"に収録されいた"No Name"。Brennan Greenサポートのもとリワークとなった2009年作が待望の入荷。限定プレスとのことですのでお見逃し無く!!

9

ONRA

ONRA THE ONE FEAT. T3 & WAAJEED »COMMENT GET MUSIC
大好評アルバムから、Slum VillageのT3を迎えた一曲が登場!目玉は何と言ってもWaajeedによるリミックス(しかも2Ver.)でしょう! フランスとデトロイトを繋いだ最高峰の一枚です。

10

JUANA MOLINA

JUANA MOLINA UN DIA (REBOOT REMIX) »COMMENT GET MUSIC
Rebootがまたもや良い仕事しています!!Molokoの98年の名曲"Sing It Back"のリミックスも素晴らしかったCadenza一派の人気、実力共に最高峰のクリエイター、Rebootがアルゼンチンの歌姫Juana Molinaをまたもや再構築!!

Paul White - ele-king

 09年にワン・ハンディッドから2枚のアルバム(『サウンズ・フロム・ザ・スカイライツ』『ザ・ストレンジ・ドリームス・オブ・ポール・ホワイト』)をリリースした後、ヘリオセントリクスやナチュラル・ヨーグルト・バンドなどを抱える〈ストーンズ・スロウ〉のサブ・レーベルに移って3作目。とりあえずジャケット・オブ・ジ・イヤーでしょう。アナログで買えばよかった......(ちなみにアナログは、やはり〈ストーンズ・スロウ〉からギルティ・シンプスンのヴォーカルをフィーチャーした「アンシエント・トレジャー」の12インチがプラスされた3枚組仕様)。

 急にサイケデリック色が濃くなった......といいたいところだけど、60~70年代のソウル及びファンクの再発レーベルでもある〈ナウ-アゲイン〉の趣旨に沿って「セイント・ミカエルの音源にシンセサイザーとパーカッション、そして、ヴォーカルをプラスした」という説明がインナーには記してあり、とはいえ、〈サブリミナル・サウンズ〉からリリースされたセイント・ミカエル『マインド・オブ・ファイアー』をネットで試聴してみると(https://www.discogs.com/St-Mikael-Mind-Of-Fire/release/1892583)、オリジナルはけっこう凄まじいロック演奏なので、どこがどうしてこうなるのか......(仕上がりはいわゆるモンド調ヒップホップになりまくり)。そう、適度な間合いで奇妙な音がこれでもかと盛り込まれ、初期ピンク・フロイドや13thフロアー・エレヴェイターズをヒップホップ・サウンドで聴いているような磁場にあっさりと引き込まれる。あるいは"マーセン・シグナルズ"でも"ダンス・シーン"でも変わった音が楽しいなーという範疇なのに"フライ・ウイズ・ミー"になってくるとリズムだけでどうかしてくるし、"オルガン・セラピー"はテリー・ライリーをヒップホップにしてしまったようだし......。先行シングル「マイ・ギター・ホエールズ」は意外に地味な感じながら、前作も前々作ももっとストレートな音作りだったので、きっとドラッグを覚えたに......いや。

 ドクター・アクタゴンがデ・ラ・ソウル『3フィート・ハイ・アンド・ライジング』をリミックスしたような......といえば、このアルバムもヒップ・ホップの文脈で捕まえることはけして不可能ではないだろうけれど、やはり僕としてはエメラルズエリアル・ピンクのシット・アンド・ギグルズなど、ここのところのサイケデリック・カルチャーの潮流のなかにグサッと位置づけたい(ま、ヒップホップ・ファンが聴くわけもないか)。

CHART by UNION 2010.07.25 - ele-king

Shop Chart


1

SCHERMATE

SCHERMATE Schermate 007 (Purple) SCHERMATE / ITA / »COMMENT GET MUSIC
SCHERMATE新作7番! RARESH、TRAVERSABLE WORMHOLEらがサポート! 生々しいテクスチャーのサンプリング・ソースを加工し複雑なウワモノを構築する、SCHERMATEの特徴が存分に発揮された圧倒的にドープなミニマル! リリースペースが加速してきましたが、まだまだその勢いは衰えません!

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SCHERMATE

SCHERMATE Schermate 008 (LIght Blue) SCHERMATE / ITA / »COMMENT GET MUSIC
SCHERMATE新作8番! RARESH、TRAVERSABLE WORMHOLEらがサポート! 催眠的なヴォイスサンプルのループがやばいA面"Now"、これまでとは一味違うディープハウス・テイストのシンセリフが空間に映えるB面"Sabbla"と、今作もそのクリエイティヴィティーにいささかの衰えもありません! 大スイセン!

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MARCELLUS PITTMAN

MARCELLUS PITTMAN Loneliness Leave Me Alone/Razz09 UNIRHYTHM / US / »COMMENT GET MUSIC
3 CHAIRSの最年少にして唯一無二の存在感を放つデトロイト・ハウスの至宝・MARCELLUS PITTMANのNEW EPがUNIRHYTHMからリリース!! 浮遊感溢れるシンセがシャッフル・ビートと相まって独特の空気を醸し出すA面"Loneliness Leave Me Alone"、緩めのアシッド・シンセをアクセントに使いつつレイドバックしたメロウなサウンドがたまらないB面"Razz09"と、今作もPITTMANNのポテンシャルが遺憾なく発揮された実に魅力的な1枚!

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ROCHA

ROCHA Feel The Love/Night Music INTERNATIONAL FEEL / URG / »COMMENT GET MUSIC
DJ HarveyやReverso 68のリミックスを収録し180グラムというこだわりのプレスでINTERNATIONAL FEELのカタログナンバー1番を飾ったROCHAが待望の新作をドロップ。ヒプノティックでクラシカルな90'sスタイルのハウストラックへ流麗でエレガントなピアノソロをフィーチャー、近年再評価が進む90's初期のディープハウスともリンクする素晴らしい出来栄えに。Bサイドにはオリエンタルな音色を響かせる異質なバレアリック感を醸し出すアンビエントハウス「Night Music」を収録。リミックス盤も同時リリースされておりこちらも要チェック!

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ROCHA

ROCHA Feel The Love (Remix) INTERNATIONAL FEEL / URG / »COMMENT GET MUSIC
オリジナルを越えるリミックス盤というのはなかなか存在しませんがこれは引けを取らないクオリティと断言できる1枚。Aサイドではレジェンダリー・エディットマスターGreg Wilsonによるリミックスヴァージョンで、とことん気持ち良さを突き詰めた万人受け間違いないバレアリックフィール溢れるアンビエントハウス!そしてWelcome Stranger名義で参加したThomas Bullockによるリミックスは対フロアを意識し疾走感溢れるダンストラック。ドープな音の共鳴が脳中枢をフリーズさせるかのようなドヤバイ仕上がりに!

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KYLE HALL

KYLE HALL KMFA Detroit 3 US / CD-R / »COMMENT GET MUSIC
若干19歳、OMAR SのレーベルFXHEでデビューを飾ったのち自身のレーベルWild Oatsを立ち上げて以降、Hyperdub、Warp Records、Royal Oak、Rush Hour、Third Earといった大小様々なUKやヨーロッパのレーベルからトラック、リミックスを発表、現在各国でツアーを行うブレイク必至のアンダーグラウンドプロデューサー。Theo ParrishやMoodymannに影響を受けキャリアをスタートした彼だが、このMIXではBPM124前後でDerrick Mayのように疾走感溢れる流れで19曲収録。デトロイトテクノ・ハウス、シカゴ~ヴォーカルハウスやエクスペリメンタルなミニマル、テクノまで、彼の選曲の幅広さと嗜好をダイジェストで楽しめる。アーチストの手刷り・サイン入りの貴重な1枚。

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STL

STL Travelling Dubs And Echoes EP ECHOCORD / DEN / »COMMENT GET MUSIC
独特の音響ミニマルで人気の高まるSTLがデンマークのECHOCORDに初登場! レーベルカラーに合わせたディープなミニマルダブが炸裂した注目盤!! 深海を揺らめくようなディレイ処理に意識が吹っ飛ぶA面、ECHOSPACEからのEP「Check Mate」を彷彿とさせる研ぎ澄まされた4/4ビートに震えるB-2などさすがの仕上がり! ぜひフロアで爆音で鳴らしてほしい1枚!

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TERRENCE PARKER / テレンス・パーカー

TERRENCE PARKER / テレンス・パーカー Detroit Lost Mix Tapes Vol #1 TPARKER MUSIC / US / »COMMENT GET MUSIC
デトロイトを代表するオールドスクールDJ TERRENCE PARKERによるMIX-CDが、渋谷クラブミュージックショップのリニューアルを記念してディスクユニオン限定入荷!『DETROIT LOST MIX TAPES』と題された本作は「80年代の彼の選曲」をパックしたコンセプチュアルな1枚で、SOUL~P FUNK等ヴォーカルとベースラインを基調に、海賊ラジオショーを彷彿とさせる内容に。スクラッチやカットなどTPの真骨頂とも言うべき多彩なトリックプレイを散りばめ魔法がかった展開は心地よく脳を揺らす。一聴の価値絶対あり!なタイムレスなミックス作品。

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SCOTT FERGUSON

SCOTT FERGUSON Disk Union LTD Mix FERRISPARK / US / »COMMENT GET MUSIC
Moodymann~Theo Parrishのフォロワーとして、デトロイトハウスをリリースするFerrisparkを運営するScott Fergusonが渋谷クラブミュージックショップのリニューアルオープンを記念してミックスCDをリリース。もっさりとしたデトロイトハウスを中心に構成しながらも一筋縄ではいかない展開は絶対予測不可能、ディープでローファイなアーリーシカゴハウス、そしてダンスクラシックへもスムースにシフト。黒いミックスが好きなリスナーの全てのツボを刺激する抜群の内容です。シリアルナンバー&サイン入りの限定100枚。

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DJ COLE MEDINA

DJ COLE MEDINA Disk Union Mix Vol.1 HOUSE ARREST / US / »COMMENT GET MUSIC
DJ COLE MEDINAが本格的なブレイクを迎える前夜、ノベルティ用に製作/配布されたわずか200枚のみの幻のMIX音源。リリース前のAMERICAN STANDARDや盟友EDDIE Cの音源をいち早くプレイした傑作中の傑作がこの1枚。口コミで話題となり再プレスのリクエストを多くいただ音源が、お茶の水クラブミュージックショップ8周年を記念して100枚のみの超限定プレスで入荷!夏にピッタリのスロウなバレアリック~ディスコスタイル、未チェックの方は是非手に入れてください!

Funki Porcini - ele-king

 昔......何年前だろうか、ヨーロッパを列車で旅したことがあった。長い時間をかけてアムステルダムからドイツを南に下っていく列車に乗ったとき、同じ席になった老人と話していたら、「ヨーロッパを旅するならイタリアに行け」と繰り返し言われたことがあった。「ドイツなんかにいることはないだろ。イタリアに行け」、彼はなかば呆れた顔で、その根拠について懸命に説いたものだった。結局、イタリアにはいまだに行ったことがないのだけれど、ファンキ・ポルチーニだったら迷うことなくイタリア行きの飛行機に乗っている。

 ポルチーニは、イタリア料理が好きな人ならよく知っているキノコの名前で、このイギリス人は実際にローマに住んだこともあって、自分の作品のいくつかの曲名にもイタリア語を使っている。イタリア好きのイギリス人がいても珍しいわけではない。昔、日本好きのベルギー人にフランスとベルギーの国境沿いで出会ったことがあるが、彼女は僕に日本の煙草の銘柄をいくつか喋り、いかに自分が日本について詳しいか自慢したものだったが、珍しさで言えばこっちだろう。

 芸術的な観点から言っても、ファンキ・ポルチーニはUKヒップホップ界においても珍しいタイプではない。トリップホッパーとして知られた彼の1995年のファースト・アルバム『ヘッド・フォン・セックス』、そして翌年の『ラヴ、プッシーキャット&カーレックス』(愛、カワイ子ちゃん、そして事故車)は、人生をシリアスに語る日本のヒップホップから見れば珍奇な......というか実にふざけた音楽かもしれないが、この当時のUKの連中はヒップホップからの影響とその情熱をまったくナンセンスでバカバカしい事柄に注いでいた。その最高の拠点が〈ニンジャ・チューン〉だった。

 〈ニンジャ・チューン〉が日本で売れないのはもう仕方がない、文化が違うとしか言いようがないと思っている。DJクラッシュの影響下で日本で盛りあがったことのあるアブストラクト系(つまり、欧米で言うところのトリップホップのことだが)と呼ばれた連中の音楽は、ファンキ・ポルチーニと同じ影響下(ブレイクビーツやドラムンベース、あるいはファンクやジャズ、等々)で生まれながら、しかしまあ、良くも悪くもシリアスだった。洒落の入り込む余地はなく、言葉は悪いかもしれないけれど、眉間にしわの寄った音楽だった。そういう音楽は日本では人に勇気を与える。ファンキ・ポルチーニを聴いたところで、まったく勇気なんて湧いてこない。

 ファンキ・ポルチーニは、極めてイギリスらしい展開なのである。ルーク・ヴァイバートやスクエアプッシャーなんかとも近い。言うなればブレイクビーツ・ミュージックの変化球だ。1999年の3枚目のアルバム『ジ・アルティメイト・エムプティ・ミリオン・パウンズ』(最終的に空の100万ポンド)は、音楽的には行き詰まっていたが、そこを風刺精神で乗り切ろうとしたところもイギリスらしい。そして、2002年の4枚目のアルバム『ファスト・アスリープ』によってファンキ・ポルチーニはそれまでの手法と決別し、ジャジーでアンビエント調の曲のなかに自分の将来を託したのである。微笑みを忘れることなく。

 8年ぶりに見るファンキ・ポルチーニの名前に喜びを覚える人は、5枚目のアルバム『オン』を間違いなく好きになるだろう。何も変わっていないし、まったく変わったとも言える。その本質は同じだが、音楽性はずいぶんと変わったのだ。そしてより良く変わったのだ。

 ムーグ博士へのオマージュ、"ムーグ・リヴァー"なる曲でアルバムははじまる。曲中では、ヘンリー・マンシーニの有名な"ムーン・リヴァー"のメロディが演奏される。ファンキ・ポルチーニらしく微笑ましいはじまりで、それはこのアルバム全体の楽天性を象徴しているようでもある。2曲目の"これは生きる道ではない"はフィルムノワール調のお約束通りのトリップホップだが、ファンキーなビートに優美なピアノ演奏が絡む"ベリーシャ・ビーコン"、あるいはクラスター&イーノを彷彿させる"取るに足らない午後"や"第三の男"といった曲はこのアルバムの目玉として特別な響きを持っている。とくに"第三の男"の上品なアンビエントはロマンティックでさえある。"明るい小さいもの"や"フェルナンド・デル・レイの魔法の手"といったジャジーな曲もアルバムに適度な活力を与え(その演奏が生演奏なのかサンプルなのか、明記されていない)、8年ぶりの新作がなかなかの名盤であることを保証づけている。10点満点で言えば、8点以上のできだ。

 このアルバムを聴いたところで勇気が湧いてくるわけではない。その代わりと言っては何だが、陶酔と微笑みが待っている。ワインを飲みながらキノコを食べよう。

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