DJジンクは彼がハウスに回帰した理由について語る。「初期のジャングルというのは、ハウスと同じエネルギーを持っていた。同じテンポで、同じエレメンツだった」――昨年の7月28日、奇しくも筆者の誕生日に『ガーディアン』はDJジンクの提唱するクラック・ハウスについての記事を掲載している。アシッド・ハウス、アンビエント・ハウス、メタル・ハウス、ラガ・ハウス、プログレッシヴ・ハウス、ディープ・ハウス、ファンキー・ハウス、テック・ハウス、ミニマル・ハウス、マイクロ・ハウス、エレクトロ・ハウス、フィジット・ハウス......、そしてクラック・ハウス。まあ、なにはともあれ、ドラムンベース界のパイオニアのひとりがハウスに向かったとは興味深い話だ。
DJジンクといえば、ジャンプ・アップ・ジャングルのアンセム"スーパー・シャープ・シュート"によって傑出した経歴を築いた人物である。が、彼は2007年にそのジャンルに背を向けている。そしてDJジンクは2008年を息子と一緒に過ごしながら自身が前進するための術を思案したという。そこで生まれたのがクラック・ハウスである。DJジンクは初期のジャングルにしばしば見られたような4/4ドラム・パターンをブレイクビートにブレンドする。そのドライヴするベース音、くらくらするシンセ音、歌と陶酔、それは90年代初頭のレイヴのヴァイブを想起させる。そしてそれはプロデューサーのルーツをより鮮明にする。女性MCのノー・レイを起用した彼の"サブマリンズ"や"キラサウンド"にはジャンプ・アップ・ジャングルと同じようなエネルギーがあるのだ。彼は彼がかつて恋したハウスというルーツに立ち返ってジャングルを再発見したのである――と同紙は記している。
で、まあ本当にその通りなのだよ、これが。昨年末にリリースされた10トラック入りの『クラック・ハウスe.p.』は90年~91年あたりのレイヴ・サウンドの現代版だと言える。これはノスタルジーから来たというわけではない。同紙の取材で、ジンクはこの再発見の契機となったのがスウィッチとシンデンだったことを明かしている。フィジット・ハウスのベースラインがジンクを20年前の倉庫の熱狂へと導いたというのだ。また、同紙でジンクはダブステップへの複雑な気持ちも告白している(UKガラージがドラムンベースを食ってしまうかと心配されたが、むしろ現在はダブステップに有能な新人が持っていかれている――そうだ)。いずれにしてもUKダンス・カルチャーの競争意識、しのぎ合いが新しいスタイルと新しい呼称を生み出しているわけだ。クラック・ハウスはたしかに面白い。シンプルな4つ打ちとベースラインの絡みにしても、ヴォイス・サンプリングにしても、レイドバックしているというよりもダンス・サウンドとしての説得力の強さを感じる。もちろんでっかい倉庫で浴びるように聴きたいけれど、家で流しているだけでも気分は良い。
さて、2010年はUKファンキーの年だと言われているけれど本当にそうなるのだろうか。だが、その前にまだまだダブステップの快進撃も続きそうだ。スキューバのセカンド・アルバムも良かったし......。





















いやー、本当に、ぶっ飛びすぎ!......てか、笑えてくる。壮大な"エイリアン・ミュージック"に出会ってしまったのかもしれないな。黒光りするシンセが痛いくらいにまぶしいぜ。
DJワダの〈イグナイト〉でのアンビエント・セットを終え、天狗食堂で開かれていたDJサチホがオーガナイズする〈リリース・シット〉に駆けつけると、週末の朝に特有のとても良い空気が流れていた。DJはサチホ~スポーツ・コイデ~イナホ~リョウ・オブ・ザ・デックス・トラックスの面子でのローテーションだった。グルーヴがキープされたまま新旧のディープ・ハウスがたんたんと続く。朝の9時をしばらく過ぎると天狗食堂のイナホがロングミックスを聞かせる。足の運びが軽やかだ。スネアに引っかかりがあるが、スマートなミ二マル・ハウスがじょじょに子供の声と水の音、透明感のあるシンセとともに広がっていく。誰も声を上げず首を振りながらその音楽をきいていた。そのトラックここに挙げた。ミルコ・ロコのリカルド・ヴィラロヴォスによるリミックスである。
エルサレム出身でニューヨーク在住のパレスチナ人パーカッショニスト、ラズ・メシナイが率いるバダウイのニュー・シングルを紹介しよう。ラズ・メシナイとは......その名前とバダウイ、サブ・ダブ、ベドウィンといった4つの名義を使い分け、DJスプーキーのホームである〈アスフォデル〉、ビル・ラズウェルのリリースでも知られる〈リオール〉、DJワリーが率いる〈アグリカルチャー〉等から数々の傑作を放ってきた男だ。ニューヨークのアンダーグラウンドを象徴するアーティストであり、ユダヤの政治と宗教をテーマにしたサウンドと彼の芸術、そしてその超絶的なパーカッションのテクニックは多方面で高い評価を得ている。最近ではクロノス・カルッテットやジョン・ゾーンとの競演も話題になった。










