![]() Various Artists ホットフラッシュ・レコーディングス・プレゼンツ......バック・アンド・フォース Hotflush Recordings /Pヴァイン・レコード
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DIY主義で成り立っているダブステップ・シーンにはいくつもの魅力的なレーベルがあるが、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は人気レーベルのひとつであり、また、このジャンルにおいて重要なレーベルのひとつでもある。そして、〈ハイパーダブ〉がブリアルを輩出したレーベルとして知られるように、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉は昨年、マウント・キンビーのデビュー・アルバム『クルックス&ラヴァーズ』をリリースしているレーベルとしても知られるようになった。ブリアルとマウント・キンビーといえばジェームス・ブレイクが影響を受けた2トップとも言える存在だが、興味深いのは、〈ハイパーダブ〉を主宰するコード9がレゲエのサウンドシステム文化からの影響を受けているのに対して、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を運営するスキューバは20年前からテクノに親しんでいたばかりか、いまではベルリンで暮らし、高名な〈ベルグハイン〉でレギュラー・パーティをオーガナイズしている。
こうした背景は、スキューバの音楽性ないしはレーベルの方向性にも表れている。〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉には独自の色があり、以下もちろん 褒め言葉として言うが、クロイドンのヤンキーっぽさとも〈ナイト・スラッグス〉のちゃらさとも別種の、やはりテクノ/ハウス臭の強さによってレーベルの色 は構成されている。
〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉にとって最初のコンピレーション・アルバムとなる『バック・アンド・フォース』のリリースを祝して、レーベルの主宰者であり、もうひとつのダブステップをうなが してきたスキューバを名乗る男、ポール・ローズに話を訊いた。
ダブステップは音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDはすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね。
■まずは現在の日本の震災、福島原発について知っていると思いますが、あなたのコメントをもらえますか?
スキューバ:すべてが非現実のように思えるほど、テレビなどで見た映像は悲惨で、心を痛めるものだった。みんなと一緒で、一刻でも早く、復興が実現することを心から願っているよ。日本では素晴らしい経験をいままでさせてもらってるから、みんなの生活が元に戻ることを祈ってる。
■今回、初めてレーベルのコンピレーションをリリースしますね。ようやくそのタイミングが来たという感じですか?
スキューバ:そうだね、ここ最近多くの才能がレーベルに関わってくれるようになって、それをいちどまとめて世間にショーケースしたかったのがまずあった。はじめたときとは趣向が少し違うけど、そのときといまの音もひとつの作品にするのも面白いと思ったし、これからレーベルを通して出てくるアーティストも見せたかった。みんな素晴らしい人ばかりだから、すぐコンパイルできたよ。
■〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉らしい、多様性のある内容になったと思います。だいたいあなたのレコードは、日本ではテクノ系のDJも好んでいるんですよ。
スキューバ:ははは、そうなんだ(笑)。でも納得できる状況だね。たしかにダブステップからはじまった感はあるけど、いまはとくに何のジャンルにこだわっているとかはないし、どちらかと言うとテクノ系のDJの方ほうが回しやすいのかもね。
■初めての取材なので、あなたの個人史についてまずは教えてください。ネットで調べたのですが、あなたは幼少期からピアノを習い音楽に親しんできた。学生時代にコリン・フェイヴァーとコリン・デイルをきっかけにダンス・ミュージックの世界の足を踏み入れて、ジャングル、そして〈ワープ〉のようなテクノに熱中した。とくにオウテカの最初の2枚のアルバムが好きだった。当たってますか? 何か付け足すことは?
スキューバ:その通りだね。90年代なかばはコリン・フィヴァーとコリン・デイルがやっていたラジオ番組をよく聴いていてよ。当時はまだちゃんとしたラジオ番組がいっぱいあったからね。彼らの番組はけっこう幅広いエレクトロニック・ミュージックをかけてて、14~5歳の僕にとってはすごく新鮮だったね。ロンドンではクラブに若くて入れたりして、僕もその直後くらいから行きはじめたりしたんだ。海賊ラジオも聴いたりしてて、そこではジャングルが一時期すごく流行ったり、その後にガレージが来たりしたんだけど、それもチェックしてたね。ダブステップとの出会いはガレージからの流れだったと思うんだけど、いまでも続いてるフォワード(FWD)という月1回のイヴェントがあって、3年ほど何も面白い出来事がなかったような時期の2001年にはじまって、そこでいろんな面白い連中が集まっててね。いまも最前線にいるスクリーム、ベンガやマーラとかみんなそこを通っていったよ。
■卒業後、あなたは6年間の会社勤めを経験したが、それがアホらしくなってドロップアウト、そして2003年、スペクター(Spectr)の名義で、最初の12インチ・シングルをリリースするために、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉を設立する......。
スキューバ:2001年に学業を終えて、仕事に就いたけど、実は2007年くらいまでは辞めなかった(笑)。だからレーベルやりながら働いてたよ、普通に。
■なぜ〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉という名前をつけたんですか?
スキューバ:一時期ブリストルで勉強をしていて、そこでやってたクラブ・イヴェントから名前を取ってるんだ。とくに深い意味はないんだけどね(笑)。
[[SplitPage]]いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。
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■自分で音楽を作りはじめたのはいつからですか?
スキューバ:10代の頃には少し遊びで曲を作ったりしてたけど、大学の頃はずっとDJばっかりだったね。でも学校を卒業してから作りはじめたんだ。2001年に卒業して、2003年に作品を出してるから、2~3年かけて作曲を身に付けていったって感じかな。そんな簡単に出来るものじゃないし、どのプロデューサーもそんなすぐ納得して出せるものもないと思うしね(笑)。
■6年も会社勤めをしていながらそれを辞めて、レーベルをはじめるって、けっこう勇気がいったと思うんですよね。
スキューバ:最初はレーベルやりながら働いてたし、辞めたときには逆にほっとしたというか、やっとこれに集中できるって感じだったかな(笑)。
■当時のあなたはダブステップのシーンとはどういう関係だったのでしょうか?
スキューバ:レーベルは2003年にはじめて、その当時はリンスFMでも番組をやってて、けっこうどっぷり関わってた感じかな。でもみんな最初はファンとして入っていったんだ。僕らもそうで、ゼド・ビアスとかジンクがレジデントをやっていて、彼らはガレージの延長線のようなものを流してて、それが好きで集まってたんだけど、気付いたら自分たちもダブステップという音楽を作ってて、出してて。本当に気付いたらそうなってた、という感じだったよ。
■あなたが知っている初期のダブステップのシーンの良さについて話してもらえますか?
スキューバ:音が独特だったんだ。他に比べられるものがないくらいユニークだった。FWDがやってた場所はすごく小さなハコなのに、バカでかいサウンドシステムを入れてて、ああいう音を聴くにはすごく良かったというのもあったかな。あとは単純に多くの人があまり好きじゃなかったか、まだ聴いたこともなかったという点も魅力的だったね(笑)。
■レーベルが本格的にスタートしたのは2004年ですが、ディスタンスやボックスカッターのような人たちとはどのように出会ったのですか? クラブで知り合って、テープをもらったっていう感じですか?
スキューバ:ディスタンスとかはFWDで出会った仲間だったね。最初の頃から友だちだったという感じ。ボックスカッターはレーベルでは10個目のリリースとかだったと思うけど、その時点ではもうデモとかも送ってもらえてる状況になって、彼はそのなかから出会えたアーティストだね。デモはほとんどの場合ダメなものばっかりだけど、根気強くいろいろ聴いてると、たまにすごい才能に出会えるんだ。ボックスカッターは外部から送られてきた音源で初めて契約に至ったアーティストじゃないかな。
■2008年にあなたはスキューバとしての最初のアルバム『ア・ミューチュアル・アンティパシー』をリリースしますね。素晴らしいアルバムだと思いますが、あなたの音楽はこのとき、すでにダブステップのクリシェから離れています。ダブやテクノ、アンビエント、エレクトロニカなど、よりオープンなエレクトロニック・ミュージックを展開しいています。あなたのこうした展開の背後には何があったんでしょうか?
スキューバ:アルバムというロングプレイヤー(LP)を作るとなると、ある意味自由度が増すと思うんだ。だからアルバムを作ると決めたときはダンス・トラックを単に集めたものとかにしたくなかった。さっきも言ってたけど、いままで自分が影響を受けてきたエレクトロニック・ミュージックはアルバム形式のものが多いんだ。初期のオウテカの2枚、オービタルのセカンド・アルバム、エイフェックス・ツインとかもね。最初から最後まで楽しんで聴けるものを作りたかったし、当時はいろんな人を驚かせたと思う。当然ダブステップだけじゃないし、テンポはそれに近くても、いろんな音を表現できたと思う。
■ダブステップのシーンに対するあなたの気持ちに変化があったのでしょうか? それはあなたがロンドンを離れた理由とも関係があるのでしょうか?
スキューバ:ダブステップ云々でもなかったし、ベルリンに行ったこともあまり関係無かったんだ。というのも、あのアルバムを書いているあいだにちょうど引っ越して、しばらくは部屋にこもって作曲をしていたから、あまり街から影響を受けることもなかった。気持ちに良い変化はあったから、より集中できたというのはあるかもしれないけど。
■ベルリンに移住して良かったことは何ですか?
スキューバ:そうだね、まぁ音楽的にはいろいろあるし、いろんなミュージシャンがいるから、刺激はたくさん受けるね。その上ロンドンよりリラックスしているし、ドイツの首都って感じもしないし、その和やかな空気がいいね。個人的にはあまりどこかのシーンに属するってことはないけど、たくさんの人に出会えて、つねにフレッシュな気分でいれるんだ。ロンドンでは少し飽和状態になってたというか、疲れてきた感じだったから、変化を求めて、ここに来たんだけど、まさに良い意味での変化になってるよ。
■昨年リリースした『トライアンギュレーション』はさらにディープな作品になりましたが、やはりベルリンの音楽シーンからの影響が大きいのでしょうか?
スキューバ:もともと自分はいろんなスタイルの音楽に興味があるんだ。だからそれを分けて表現するのもおかしな話だし、よく名前を変えてやる人もいるけど(自分もそうしたりしてるけど、もうバレてるしね(笑))、僕はそれをひとりのアーティストとしてやりたい。1枚目から2枚目、その後もいろんなスタイルの音を追求してきたし、いろんな方向にいっていると思う。ベルリンのシーンから具体的影響を受けたとかは感じてないね。
[[SplitPage]]もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。
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■さて、コンピレーション・アルバム『バック&フォース』の話に戻したいと思います。個性的なアーティストのいろんなタイプの曲があって、過去と未来を繋げたいという気概を感じたのですが、あなた自身はどのようなコンセプトで選曲したのですか?
スキューバ:みんな仲間なんだ。このレーベルに関わってくれた人、これから関わるような人を収録したって感じだね。リリースがあった人、ある人はもちろん、自分が一緒に仕事をした人、関わった人で素晴らしい才能を持った人を選んだつもりだよ。
■レーベルには若い才能が集まっていますが、まずはマウント・キンビーとの出会いについて教えてください。
スキューバ:彼らもデモを送ってきて、そこから関係がはじまったアーティストなんだ。メンバーの片方のドムがとても不思議でオブスキュアな音源を送ってきてね(笑)。2分間の沈黙の後にスネアが1回鳴るような音とか。すごく興味を惹かれていったのを覚えているよ。そしていまの編成になってから、より自分たちの音を確立させたような感じだし、最初のEPはアンビエントな作品だったけど、すごく反応が良くて。あと彼らはバンド形式でライヴをやるから、それも助かってるんじゃないかな。努力して世界中でツアーをしているしね。
■ジョイ・オービソンのどこをあなたは評価しますか? ジョージ・フィッツジェラルドなんかも似たタイプというか、よりハウス・ミュージックに近い感覚があるように思うのですが。
スキューバ:彼は天性のメロディの持ち主だよ。初期はダブステップ的なことをやっていたかもしれないけど、いまは言う通り、ハウスに近いことをやっているからね。でもそれはすごく努力が必要なことだったと思う。だって、一番か二番を争うようなヒットを出しておいて、そこに背を向けて自分の信じたことをやるってことだからね。その辺も立派だと思う。
■あなた自身のなかで、ハウスやテクノのDJで好きなのは誰ですか?
スキューバ:ちょっとベタだけど、マルセル・デッドマン、ベン・クロック、ステッフィとかカシアスとか好きだね。ステッフィの新作はすごく良かったよ。あとはサージョンとかすごく好きだね。彼のライヴ・セットは最近見たけど最高だったよ。
■ロスカやアントールド、フェルティDLやディーブリッジなど、〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉以外の、他のレーベルや自分のレーベルから作品を出しているキーパーソンの曲を選びましたね。ここにはどんな意図があったんでしょうか?
スキューバ:みんな友人だからさ。ロスカは昔から付き合いがあるし、ディーブリッジもフェルティ・DLもすごく面白いことやってると思うし、仲が良いし。レーベルで具体的にリリースが少なくても、いろいろと一緒にやってる人も多いしね。いろんなスタイルのアーティストがいるこの輪を見せたかったという気持ちもあったかな。
■セパルキュア(マシン・ドラム)のようなアブストラクト・ヒップホップ系のベテランの、他のジャンルのシーンにいた人がいるのも面白いですね。
スキューバ:そうだね。彼らはいまレーベルにとって大事な存在だし、いまアルバムを制作中なんだ。9月頃に出したいと思ってるね。もともとこのレーベルはひとつのジャンルにこだわりたいという意志は最初からなかったし、いまでもない。面白いと思ったエレクトロニック・ミュージックは何でも出していきたいんだ。あと、いまの時代はそのように幅広く、好き勝手にやっても受け入れてくれる時代だと思うんだ。レーベル買いをしてくれる人もいるし、そのような人にも違ったスタイルを提供しないと面白くないしね。でもその幅広い中にもこのレーベルらしいカラーみたいなのはしっかりとあると思うんだ。
[[SplitPage]]個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。
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■さて、あなたはいま、ダブステップというジャンルはどんな位置にいると思いますか? ダブステップはすでに終わって、いまはポスト・ダブステップにあると捉える人もいるし、まだまだシーンは元気だという人もいるし、いろんな解釈があると思いますが。
スキューバ:んー、まぁ終わってないことはたしかだね。この前マイアミに行ってたんだけど、ガンガンかかってたよ(笑)。でもたしかに変わったし、ここ数年の変化を客観的に見るのは面白かったけどね。そしてその変化はジャンルとして成功してきた結果の変化だと思う。それには問題はないんだけど、ただ個人的にいまはまったく興味がないだけなんだ(笑)。数年前は本当につまらなかったけど、ここ1年くらいはダブステップの周辺に面白い派生音楽があると思うし、そこはちょっと気にしてるけど、いまのダブステップを聴いてって言われたら、嫌だね。
■欧米においてこのシーンはここ2~3年で加速的に拡大しましたね。最後にあなたがシーンの拡大を実感したときのことを教えてください。
スキューバ:んー、何かきっかけがあったという風には感じてないけど、徐々にそう感じるようになったかな。もともと自分もダブステップ専門とかじゃないし、レーベルも偶然ダブステップ的なレーベルに見られるようになっただけなんだよね。
■ありがとうございました。日本でお会いできるのを楽しみにしています。
スキューバ:ありがとう。僕も早く日本に戻りたいと思ってるよ!
最後に、『バック・アンド・フォース』に曲を提供している主なプロデューサーの名前を記しておこう。取材でも触れているように、ダブステップ、ファンキー、ミニマル、ハウスなど、実に多様性のある内容だが、ひと言で言えば、現在のベース・ミュージックにおけるテクノ系の総本山としての〈ホットフラッシュ・レコーディングス〉の特徴の出ている好コンピレーションになっている。
■Boxcutter![]() |
Boxcutter / Oneric Planet Mu |
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■dBridge
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dBridge / Fabriclive 50 Fabric |
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■Scuba
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Scuba / Triangulation Hotflush Recordings |
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■FaltyDL
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Falty DL / You Stand Uncertain Planet Mu |
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■George Fitzgerald
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George Fitzgerald / Don't You Hotflush Recordings |
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■Roska
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Roska / Rinse Presents Roska 12 Number One Rinse FM |
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■Mount Kimbie
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Mount Kimbie / Crooks & Lovers Hotflush Recordings |
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■Joy Orbison
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Joy O - Wade In / JelsHotflush Recordings |
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■Untold
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Untold / AnacondaGet Physical |
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■TRG & Dub U
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Cosmin TRG / A Universal CrushRush Hour |
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